説明

防水積層材を備えた電力ケーブル

【課題】鉛からなる従来の防水バリヤーに代わることのできる、可撓性の非電気絶縁性防水バリヤー層を備えた電力ケーブルを提供する。
【解決手段】防水バリヤー積層材を含む電力ケーブル。電力ケーブルの主要な技術的特徴は、前記防水バリヤー積層材3が、非絶縁性である最終的な積層材3を構成する少なくとも2個の非絶縁性ポリマーの箔の層2a、2bの間に積層された金属からなる箔1を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水バリヤーを備えた電力ケーブル、たとえば、水中高圧ケーブルに関する。さらに、本発明は、そのような防水バリヤーを構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海中ケーブルを設置する際に、電気的絶縁破壊に至る可能性のある水分からケーブルの絶縁材を保護する必要がある。たとえば、ポリマーまたは油浸紙から構成されるケーブルの絶縁材において、水分が一定のレベルを上回ると、時間を経て電気的絶縁破壊に至る可能性がある水トリーイングの可能性がある。種々のケーブル構造において、種々のタイプの防水バリヤーが使用されているが、防水バリヤーに使用される主要な材料は、鉛である。高圧電力ケーブルの場合には、特にそうである。鉛は、この点に関し、信頼性のある頑丈な被覆材料ではあるが、いくつかのよく知られた欠点も有する。特に、大型の高圧水中ケーブルについて、鉛は総重量に大きく寄与するので重量の問題は重要である。重いケーブルは、バリューチェーンの全体において、すなわち、製造、輸送、保管及び配置の際にコストがかかる。ケーブルが経済的な寿命に達した場合にも、重いケーブルを廃棄するにはコストがかかる。大きな水深に水中ケーブルを配置することは、ケーブル中のひずみが大きくなりうるので、特に問題である。
【0003】
鉛についての別の問題は、ケーブルが動的に使用される場合、すなわち、ケーブルが固定位置で使用されない場合である。鉛の被覆は疲労限度が低く、動的な応用には適していない。さらに、鉛は環境にやさしくないと考えられており、市場によっては、鉛を置き換えることが要求される。
【0004】
長い高圧水中ケーブルについて、容量性電荷及びその結果としての電流が、対処しない場合には問題を生じる。このような電流は、半径方向に海水中に導かれ、ケーブルに沿って長手方向に導かれないのが好ましい。このことは、ケーブルにおいて、絶縁層の代わりに非絶縁層を使用することにより達成される。一つの代替案は、海中ケーブルにおいては都合がよくはないが、定期的な間隔で制御しながらキャパシタンスの放電を行うことである。不連続な配置ケーブルを使用することの追加コストを考慮すると、この代替案は排除される。
【0005】
防水バリヤーとして使用される他の金属材料の中で、たとえば、波形をつけた管による保護として、アルミニウムは最もよく応用される。アルミニウムの密度は、2.7kg/dm3であり、鉛は、11.4kg/dm3である。しかし、そのような波形をつけたアルミニウムのバリヤーは、通常、海中ケーブルではなく陸上ケーブルで使用される。海中ケーブルは、異なった、しばしばより厳しい要求仕様を有する。
【0006】
ケーブルにおける鉛被覆の利点の一つは、その可塑性である。ケーブル業界は、長年にわたり、たとえば5mmの厚さの鉛をケーブルに施してきた。そのようなケーブルは、なお、造作なく配置することができる。
【0007】
特許文献1において、たとえば、アルミニウム・プラスチック積層材の形の防水バリヤーを備えた光ファイバーケーブルが開示されている。光ファイバーケーブルにおいて、水トリーイングの問題は存在しない。当該技術において、容量性電荷を大地(ここでは、海水)へ放出する半導電性ポリマー層を含む層とともに積層された金属防水バリヤーを含む、材料及び中高電圧ケーブルに使用することを意図した積層材が、なお提示されている。
【0008】
特許文献2は、金属スクリーンのすぐ下の内側の、水で膨張するテープを記載している。同じ文献に、外側のポリマーの被覆の下に配置され、貼り付けられた薄いアルミニウム箔であって、水の侵入に対するバリヤーとして機能するアルミニウム箔を有する他の実施形態が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】GB2105486
【特許文献2】WO0146965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、鉛からなる従来の防水バリヤーに代わることのできる、可撓性の非電気絶縁性防水バリヤー層を備えた電力ケーブルを提供することを求めるものである。その最も重要な利点は、可撓性と防水バリヤー全体が極めて軽量であるという概念である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、防水積層材を備えた電力ケーブルであって、前記防水積層材は、非絶縁性である最終的な積層材を構成する少なくとも2個の非絶縁性ポリマーの箔の層の間に積層された金属からなる一つの箔を含む電力ケーブルが提供される。
【0012】
必要に応じて、前記防水バリヤー用に、前記積層材が、前記防水バリヤーによって保護されるべき前記電力ケーブルの内部の周囲に巻かれるか、または、巻きつけられるときに、前記積層材の少なくとも一つの面が、前記積層材の他方の面につながるように構成される。
【0013】
必要に応じて、前記防水バリヤー用に、前記非絶縁性ポリマーの箔の少なくとも一つが、前記積層材が、防水バリヤーによって保護されるべき前記電力ケーブルの内部の周囲に巻かれるか、または、巻きつけられるときに、非絶縁性ポリマーの箔を前記積層材の他方の面に貼り付けるようにする接着剤を含み、前記接着剤及び貼り付けることは、一緒に貼り付けられる層を絶縁しないように構成される。
【0014】
必要に応じて、前記防水バリヤー用に、前記非絶縁性ポリマーの箔の少なくとも一つが、他方のポリマーの箔とは異なる性質を有する。
【0015】
必要に応じて、前記防水バリヤー用に、前記非絶縁性ポリマーの箔の少なくとも一つが、他方のポリマーの箔とは異なる弾性を有する。
【0016】
本発明は、また、本発明による電力ケーブルに使用される防水バリヤー積層材に関する。本発明による防水バリヤー積層材の主要な技術的特徴は、非絶縁性である最終的な積層材を構成する少なくとも2個の非絶縁性ポリマーの箔の層の間に積層された金属からなる箔を含むことである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による電力ケーブルに含まれる防水バリヤー積層材の透視図である。
【図2】本発明による電力ケーブルであって防水バリヤー積層材を含む電力ケーブルの断面図である。
【図3】図2に示された電力ケーブルの特定部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、本発明による、電力ケーブルに含まれる防水バリヤー積層材の好ましい実施形態について、3個の層1、2a及び2bが示されている。中央には、アルミニウムまたは他の同様の金属の箔1であって、以下において金属またはアルミニウムと呼称する箔があり、両側には半導電性のポリマー層2a及び2bがくっつけられている。アルミニウムは、防水バリヤー及び導電層として機能するためのものであり、どのような厚さであってもよい。好ましい実施形態において、アルミニウムは、約10マイクロメータの厚さである。
【0019】
ポリマー層2a及び2bは、たとえば、ポリオレフィンなどの半導電性のポリマーフィルムから構成されてもよい。これらのフィルム2a及び2bは、たとえば、ポリエチレンを含有するカーボンブラックを含むことによって、半導電性とされる。これらの層の厚さも広範囲に変化してよく、好ましい実施形態において、各々は、約50マイクロメータの厚さを有してもよい。
【0020】
半導電性層2a及び2bは、積層材3をより頑強に、取り扱いやすく、アルミニウム層1自身のように脆くなくするのに寄与する。アルミニウム箔1も、層2a及び2bで両側を保護された場合に、電食に対してよりよく保護される。
【0021】
異なった箔の層1、2a及び2bは、構成する際に異なった方法で互いにくっつけることができる。一つの方法は、適切な接着剤で一緒に貼り付けることである。本来の性質によるか、または塗布の仕方により、層1、2a及び2bを互いに絶縁させない接着剤層であってもよい。
【0022】
本発明に異なった種類の接着剤を想定してもよい。ケーブルの製造中に存在する熱を利用してホットメルトを使用してもよい。
【0023】
異なった箔の層1、2a及び2bを互いにくっつける他の方法は、押出コーティングとして、これらを熱及び/または圧力によって一緒に接続することである。層1、2a及び2bを一緒に接続することは、非絶縁性の箔2a及び2bを製造するプロセスにおいて行ってもよい。
【0024】
基本的なアイディアは、特別に設計されたアルミニウム箔積層材を含む、電気的に非絶縁性の防水バリヤー構造を作成することである。市販されている積層材は、所望の電気的性質を有しない。
【0025】
高圧水中ケーブルに対する材料において、ケーブル内の種々の層が、電気絶縁系の外側において、非絶縁性であることが極めて重要である。ケーブル内の当該層が非絶縁性であれば、容量性電流は、ケーブルに沿って長手方向に導かれることはなく、反対に、直接、すなわち放射状に、海水中に導かれる。
【0026】
ケーブルにおける、本発明を使用した典型例が図2に示されている。このケーブルの種々の層に対する符号は、以下の表1に示されている。
【表1】

【0027】
このケーブルにおいて、導体5が、素線5の間の空間を埋める半導電性の充填剤6とともにケーブルの中心にある。この外側に、半導電性ポリマーからなる導体スクリーン7が、導体を集合させておくために配置されている。つぎに、この外側に、絶縁体及び絶縁体スクリーンを含む絶縁体の層8がみられる。この外側に、水分、及び場合によっては酸素に対するバリヤーとして、本発明の金属箔積層材3がある。さらに外側に、第1のポリマーの被覆9がみられる。このポリマーは、侵入した水分を吸収することのできる、吸収型であってもよい。この外側の第2のポリマーの別の被覆10は、水分に対するバリヤー用のものである。この外側に、ケーブルを強化し、設計された摩擦を含むように、テープ11,13及び外装12,14の2個のセットが示されている。ポリプロピレン・ヤーンを備えたビチューメンの2個の層15,16が、さらなる機械的な保護のために、上部に加えられている。1以上の層が、所望の厚さを構成するためにしばしば使用される。
【0028】
本詳細な説明は、本発明が、ケーブル構造においてどのように実施することができるかの一実施例だけに関するものであるが、本発明は、この唯一の実施例に限定されない。
【0029】
アルミニウム箔の半導電性積層材の機能は、第一に、高圧ケーブルの絶縁系を水分がないように保持することである。第二に、アルミニウム箔の半導電性積層材は、酸素バリヤーとして機能する。このことは、このような積層材は、絶縁系の外側であり、機械的保護被覆、ポリプロピレン・ヤーン、ビチューメンなどを備えた外装などのケーブルの機械的保護の内側に置かれる、さまざまな構造に含めることができることを意味する。アルミニウム積層材箔は、容量性電流を放射状に導くように、半導電性であるように設計される。
【0030】
積層材の位置は、たとえば、ポリマー被覆などの層と吸収テープまたは他の種類の接着剤との間、または吸収テープや他の種類の接着剤の上のポリマー被覆の間が有利である。
【0031】
ケーブルのある区間は、アルミニウム箔の半導電性の積層材で設計し、ケ−ブルの他の区間はアルミニウム箔の絶縁性積層材で設計するように積層材の箔を使用することもできる。そのようなケーブルの後者の区間は、海上の風車へケーブルを接続するために有利に使用することができる。
【0032】
全ての層が導電性かまたは半導電性であるケーブル設計は、絶縁スクリーンと接続した金属導体層の必要及び海中ケーブルにおける金属層と外装との間の相互接続の必要をなくすので、他の選択肢よりも好ましい。
【0033】
防水バリヤーとして鉛の代わりにアルミニウム積層材を使用することによって得られる他の利点は、環境によりやさしいことである。これは、ケーブルの寿命の最後において重要である。
【0034】
本明細書及び特許請求の範囲において、「積層材」という用語は、「防水バリヤー積層材」を意味する。同様に、「非絶縁」は「電気的に非絶縁」を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水積層材を含む電力ケーブルであって、前記防水積層材(3)は、非絶縁性である最終的な積層材(3)を構成する少なくとも2個の非絶縁性ポリマーの箔の層(2a、2b)の間に積層された金属からなる箔(1)を含む電力ケーブル。
【請求項2】
前記積層材(3)が、前記防水バリヤーによって保護されるべき前記電力ケーブルの内部の周囲に巻かれるか、または、巻きつけられるときに、前記積層材(3)の少なくとも一つの面が、前記積層材(3)の他方の面につながるように構成される請求項1に記載の電力ケーブル。
【請求項3】
前記非絶縁性ポリマーの箔(2a、2b)の少なくとも一つが、前記積層材(3)が、防水バリヤーによって保護されるべき前記電力ケーブルの内部の周囲に巻かれるか、または、巻きつけられるときに、非絶縁性ポリマーの箔を前記積層材(3)の他方の面に貼り付けるようにする接着剤を含み、前記接着剤及び貼り付けることは、一緒に貼り付けられる層を絶縁しないように構成される請求項1に記載の電力ケーブル。
【請求項4】
前記非絶縁性ポリマーの箔の少なくとも一つ(2a)が、他方のポリマーの箔(2b)とは異なる性質を有する請求項1から3のいずれかに記載の電力ケーブル。
【請求項5】
前記非絶縁性ポリマーの箔の少なくとも一つ(2a)が、他方のポリマーの箔(2b)とは異なる弾性を有する請求項4に記載の電力ケーブル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電力ケーブルに使用される防水バリヤー積層材であって、非絶縁性である最終的な積層材(3)を構成する少なくとも2個の非絶縁性ポリマーの箔の層(2a、2b)の間に積層された金属からなる箔(1)を含む防水バリヤー積層材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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