説明

防水螺子止め構造

【課題】
締結時に於けるゴムワッシャの損傷、好ましくない変形の発生を防止し、ゴムワッシャの劣化を防止し、シャーシ締結部の防水性能の経時的劣化を防止する。
【解決手段】
ボルト頭4と締結部5との間に防水ワッシャ6が介在される防水螺子止め構造であって、前記防水ワッシャは前記締結部に密着するゴムワッシャ8と該ゴムワッシャに一体化されたワッシャ7からなり、該ワッシャと前記ボルト頭部との間にサブワッシャ9が介設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は野外等に設置され、或は屋外で使用され、防水機能を要求される電子機器に於ける防水螺子止め構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野外等に設置され、或は屋外で使用される電子機器には、防水機能が要求され、シャーシを締結する螺子止部も防水構造となっている。
【0003】
図5〜図7に於いて従来の防水螺子止め構造について説明する。
【0004】
図5は通信機器のシャーシ1を示しており、図示では該シャーシ1が2分体構造となっており、シャーシベース2にシャーシカバー3がボルト4によって締結される様になっている。尚、図5、図6中、5はボルト締結の為平面に形成された締結部である。
【0005】
又、該締結部5を防水構造とする為、防水ワッシャ6が用いられる。該防水ワッシャ6は、金属製の平ワッシャ7とゴム等弾性材料から成るワッシャ(以下ゴムワッシャと称す)8が一体となったものである。該ゴムワッシャ8を介在して前記ボルト4によって締結することで、前記ゴムワッシャ8が圧縮変形して前記締結部5に密着し、前記ボルト4の嵌通部を密封する。尚、前記シャーシベース2と前記シャーシカバー3との接合部にはシールリング(図示せず)が挾設され、前記シャーシベース2と前記シャーシカバー3との接合部は水密となっている。
【0006】
上記従来の防水螺子止め構造に於いて、前記ボルト4の捩込みによって前記ゴムワッシャ8が圧縮変形するが、該ゴムワッシャ8が圧縮され前記締結部5に密着することで、該締結部5と前記ゴムワッシャ8との間には大きな摩擦力が発生する。又、前記ボルト4の頭は前記平ワッシャ7に押圧された状態で回転されるので、該平ワッシャ7には大きな回転力が作用し、前記ゴムワッシャ8に捩れ変形が発生する。
【0007】
前記締結部5と前記ゴムワッシャ8間の摩擦力より、前記ボルト4からの回転力の方が大きい場合は、前記ゴムワッシャ8は前記締結部5と擦れながら回転し、摩擦による損傷を発生する虞れがある。又、前記締結部5と前記ゴムワッシャ8間の摩擦力が前記ボルト4からの回転力より大きい場合は、前記ゴムワッシャ8が捩れた状態となる。いずれの場合も、経時的劣化の原因となり、防水機能が低下する虞れがある。
【0008】
【特許文献1】特開平8−200345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み、締結時に於けるゴムワッシャの損傷、好ましくない変形の発生を防止し、ゴムワッシャの劣化を防止し、シャーシ締結部の防水性能の経時的劣化を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ボルト頭と締結部との間に防水ワッシャが介在される防水螺子止め構造であって、前記防水ワッシャは前記締結部に密着するゴムワッシャと該ゴムワッシャに一体化されたワッシャからなり、該ワッシャと前記ボルト頭部との間にサブワッシャが介設された防水螺子止め構造に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボルト頭と締結部との間に防水ワッシャが介在される防水螺子止め構造であって、前記防水ワッシャは前記締結部に密着するゴムワッシャと該ゴムワッシャに一体化されたワッシャからなり、該ワッシャと前記ボルト頭部との間にサブワッシャが介設されたので、ワッシャとサブワッシャ間で、又サブワッシャとボルト頭間で滑りを生じ、ボルトによる締結時にボルトから前記ゴムワッシャへの回転力が軽減され、該ゴムワッシャの損傷、経時的劣化が防止されるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0013】
図1は、図6のA−A矢視相当図であり、図1中、図6中で示したものと同等のものには同符号を付してある。又、シャーシ1の構造についても図5で示したものと同様であるので、説明を省略する。
【0014】
本発明では、ボルト4で締結する場合、締結部5に当接する様に、防水ワッシャ6を設け、該防水ワッシャ6にサブワッシャ9を重ね、前記ボルト4を前記サブワッシャ9、前記防水ワッシャ6を貫通してシャーシベース2に締結する。
【0015】
前記サブワッシャ9の材質としては、鋼材、ステンレス鋼等の金属材料、或は摩擦抵抗の少ない合成樹脂材料のものが使用される。
【0016】
前記サブワッシャ9が前記ボルト4の頭との間に介在することで、該ボルト4を過度に締付けた時に、平ワッシャ7と前記サブワッシャ9間で滑り、又該サブワッシャ9と前記ボルト4の頭との間で滑りを生じ、ゴムワッシャ8への回転力の伝達を減少させ、該ゴムワッシャ8の捩り変形を軽減する。
【0017】
捩り変形の軽減により、前記ゴムワッシャ8の損傷防止、経時的劣化の防止が図れる。
【0018】
図2は、本発明の第2の実施の形態を示しており、第2の実施の形態では、防水ワッシャ12とシャーシカバー3との係合により、前記防水ワッシャ12の回転を規制し、ゴムワッシャ13に捩り変形が発生しない様にしたものである。尚、図2中、図6中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0019】
前記シャーシカバー3にはボルト締結用の締結部5が凹設され、該締結部5の終端部にはボルト挿通孔を中心とした多角形(図示では6角形)の一部(以下ボルト係合部11)が形成される。
【0020】
前記防水ワッシャ12は6角形状に形成されており、前記ゴムワッシャ13、平ワッシャ14共に6角形状であり、両者は一体化されている。前記防水ワッシャ12の6角形状は前記締結部5の6角形状より若干小径となっており、前記防水ワッシャ12は前記締結部5に挿入可能となっている。
【0021】
前記防水ワッシャ12を前記締結部5と前記ボルト4の頭との間に介在させ、該ボルト4で締結することで、ボルト嵌通部を密封できる。又前記ボルト4締付け時に前記防水ワッシャ12に前記ボルト4からの回転力が作用するが、前記防水ワッシャ12は前記ボルト係合部11と係合して回転が拘束される。従って、前記ゴムワッシャ13には圧縮力のみ作用し、無用の捩れは発生しない。
【0022】
前記締結部5は、前記防水ワッシャ12と相似形の6角形の凹部としてもよい。又、前記防水ワッシャ12の平ワッシャ14を矩形形状とし、該平ワッシャ14の幅寸法と前記締結部5の幅寸法とを同寸法とすれば、前記締結部5の終端部を多角形状にしなくてもよい。要は、前記平ワッシャ14が前記締結部5に係合し、回転が規制される形状となっていればよい。
【0023】
図3、図4は第3の実施の形態を示している。尚、図3、図4中、図1、図2中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0024】
第3の実施の形態では、防水ワッシャ12を介在させボルト4によって締結している。
【0025】
前記防水ワッシャ12は、平ワッシャ7、ゴムワッシャ8を重合させ、両者を一体化している。前記平ワッシャ7の上面には突起15を所要数、図示では円周4等分した位置に4個突設している。前記突起15の形状は半円球状、又は球状に類似する形状となっており、前記ボルト4の頭部に当接して円滑な滑りを生じさせるものである。又、前記平ワッシャ7の材質としては、前記ボルト4の頭部との間で摩擦係数が少ない合成樹脂としてもよく、或は金属で表面処理して、摩擦抵抗が軽減する様にしてもよい。
【0026】
前記突起15を形成することで、前記平ワッシャ7と前記ボルト4の頭部間での滑りがよくなり、前記ゴムワッシャ8に伝達される回転力が少なくなり、該ゴムワッシャ8の捩り変形が減少する。
【0027】
捩り変形の軽減により、前記ゴムワッシャ8の損傷防止、経時的劣化の防止が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す要部側面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態を示す斜視図である。
【図4】該第3の実施の形態の要部断面図である。
【図5】通信機器のシャーシの一例を示す斜視図である。
【図6】従来の防水螺子止め構造を示す斜視図である。
【図7】従来の防水螺子止め構造の要部側面図である。
【符号の説明】
【0029】
3 シャーシカバー
4 ボルト
5 締結部
9 サブワッシャ
11 ボルト係合部
12 防水ワッシャ
13 ゴムワッシャ
14 平ワッシャ
15 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト頭と締結部との間に防水ワッシャが介在される防水螺子止め構造であって、前記防水ワッシャは前記締結部に密着するゴムワッシャと該ゴムワッシャに一体化されたワッシャからなり、該ワッシャと前記ボルト頭部との間にサブワッシャが介設されたことを特徴とする防水螺子止め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−2365(P2009−2365A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160961(P2007−160961)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】