説明

防水透湿性布帛および衣料

【課題】カットファイバーを含む樹脂層を積層することにより、カットファイバーがキラキラとひかる趣向性に優れた外観を呈する、スポーツ衣料、ユニフォーム衣料、レインコートなどの用途に適した、防水透湿性布帛および衣料を提供する。
【解決手段】布帛の片面に防水透湿層が積層され、さらにその上に、カットファイバーを含む樹脂層が部分的にまたは全面に積層されていることを特徴とする防水透湿性布帛および該布帛を用いてなる衣料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、趣向性に優れた外観を有する防水透湿性布帛および衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ衣料、ユニフォーム衣料、雨衣などの用途において、ポリウレタンやポリエステルなどの防水透湿性フィルムを布帛に積層した防水透湿性布帛が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。また、特許文献5などでは、防水透湿層に白色の樹脂を部分的に積層することにより優れた外観品位を有する防水透湿性布帛が提案されている。
しかしながら、趣向性に優れた外観を有する防水透湿性布帛はこれまであまり提案されていない。
【0003】
【特許文献1】特許第3718422号公報
【特許文献2】欧州特許第783016号明細書(EP 0783016 B1)
【特許文献3】特許第3668762号公報
【特許文献4】特開2002−61009号公報
【特許文献5】特開2007−296797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は趣向性に優れた外観を有する防水透湿性布帛および衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、布帛の片面に防水透湿層を積層し、さらにその上に、カットファイバーを含む樹脂層を積層することにより、カットファイバーがキラキラと光るため見た目が面白くなることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「布帛Aの片面に防水透湿層Bが積層され、さらにその上に、カットファイバーを含む樹脂層Cが部分的にまたは全面に積層されていることを特徴とする防水透湿性布帛。」が提供される。
【0007】
その際、前記防水透湿層Bの上に、無機微粒子含む樹脂層Dが積層され、その上に前記カットファイバーを含む樹脂層Cが積層されていることが好ましい。また、前記カットファイバーにおいて、長さが30〜4000μm、かつ繊度が0.003〜15dtexであることが好ましい。また、前記カットファイバーにおいて、単繊維横断面形状が断面扁平度2〜6の扁平断面であることが好ましい。また、前記カットファイバーが光学干渉機能を有する繊維であることが好ましい。また、前記カットファイバーがポリエステル繊維であることが好ましい。
【0008】
本発明の防水透湿性布帛において、前記布帛Aが、ポリエステル繊維で構成された、織物または編物であることが好ましい。また、前記防水透湿層Bが、厚さが5〜30μmの無孔質フィルムで形成されることが好ましい。また、前記カットファイバーを含む樹脂層Cが、面積比10〜80%で防水透湿層Bまたは樹脂層Dを被覆し、かつ連続的なパターンを有することが好ましい。また、布帛全体におけるポリエステルの重量比が50%以上であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記に記載された防水透湿性布帛を用いてなる衣料が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、趣向性に優れた外観を有する防水透湿性布帛および衣料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、防水透湿層Bがラミネーションされる布帛Aを構成する繊維としては特に限定されず、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アセテート繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、炭素繊維、綿や羊毛などの天然繊維など例示される。なかでも、ポリエステル繊維がリサイクル性の点で好ましい。
【0011】
かかるポリエステル繊維を構成するポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエステル系エラストマー、ポリエチレンテレフタレートの、重縮合による製造に際し、酸成分中にナトリウムスルホイソフタル酸を共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレートなどのカチオン可染ポリエステル、酸成分がテレフタル酸及びイソフタル酸からなり、グリコール成分がエチレングリコールからなる高収縮ポリエステルなど特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレートがより好適に用いられる。かかるポリエステル樹脂としては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステル樹脂であってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステル樹脂でもよい。さらには、繊径が1μm以下のポリエステルナノファイバーでもよく、ポリ乳酸やステレオコンプレックスポリ乳酸などの生分解性を有するポリエステル繊維でもよい。
【0012】
前記布帛Aを構成する繊維(マルチフィラメント)の単糸繊維繊度、総繊度、フィラメント数は特に限定されないが、ソフトな風合いを得る上で、それぞれ単糸繊維繊度0.1〜3.0dtex、総繊度10〜200dtex、フィラメント数10〜300本の範囲内であることが好ましい。単糸繊維の横断面形状も、通常の丸、三角、扁平、くびれ付扁平など特に制限されない。また、繊維中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤(酸化チタンなど)、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0013】
基布としての布帛Aの形態は、織物、編物、不織布など特に限定はされないが、その引裂強力の強さなどから好ましくは編物、織物、さらに好ましくは織物が用いられる。
【0014】
前記布帛Aにおいて、その目付けが30〜900g/m(好ましくは40〜700g/m)の範囲内であることが好ましい。また、布帛Aは、必要に応じて撥水加工や蓄熱加工、吸汗加工などの後加工を施しても良いが、より好適には雨水をはじくように撥水加工が用いられる。その際、上記撥水加工に用いられる撥水剤としては、パラフィン系撥水剤やポリシロキサン系撥水処理剤、フッ素系撥水処理剤などの公知のものが使用でき、その処理も一般に行われているパディング法、スプレー法などの公知の方法で行えばよい。
【0015】
前記布帛Aがポリエステル繊維で構成される場合、染色に用いる染料は分散染料、カチオン性染料など特に限定はされないが、カチオン性染料はカチオン性染料で染色可能な繊維を選択する必要があるため、より汎用性が高い分散染料を染色に用いるほうが好適である。
【0016】
前記布帛Aが染色されている場合、アウトドアやユニフォームなどのアウター衣料は汚れが目立ちにくい色にするほうが良いため、白色以外の色、例えば黒色、紺色、青色、緑色などで染色されていることが好ましい。
【0017】
次に、防水透湿層Bとしては、特に限定されるものではないが透湿性を有する無色透明のポリエステルフィルムで形成されることが好ましい。上記フィルムがポリエステルフィルムでない場合、一般にウレタン樹脂やポリテトラフロロエチレンが用いられるが、これらはリサイクルに向かないため衣料に使用後、廃棄処分されることなる。一方、ポリエステルは、ケミカルリサイクル処理により再度ポリエステルの原料として再生可能であり何度でもリサイクル使用できる点で省資源かつ環境保全できる。このポリエステルフィルムは、無色透明であることが好ましい。白色または淡色のフィルムである場合、基布となるポリエステル布帛において、染色に使用した分散染料が防水透湿層のフィルム側の面に移行昇華し、斑のあるまだら模様となり著しく外観を損なってしまうおそれがある。これを回避するには、基布であるポリエステル布帛の色が白色や淡色に限定されてしまい商品のバリエーションが下がってしまうおそれがある。また、ポリエステルフィルムが、無色透明でなく黒色または濃色のフィルムである場合、基布で染色に使用した分散染料が防水透湿層のフィルム側の面に移行昇華し、斑のあるまだら模様となり概観を損なう問題は生じないが、基布が白色や淡色の場合、フィルムの色が透けてしまい基布の色が濁ってしまい外観を損なってしまうおそれがある。
【0018】
また、上記無色透明ポリエステルフィルムは透湿性を有するが、該フィルムは、透湿性を有するポリエステルを主成分とする無孔質フィルムであることが好ましい。ポリエステルフィルムが多孔質フィルムである場合、無色透明にはなり得ないからである。ポリエステルに透湿性を付与するには、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコールをポリエステルに共重合する方法が好適に用いられる。
【0019】
前記のポリエステルフィルムに用いられる透湿性を有するポリエステルとしては、例えばポリエーテル−エステル系エラストマーが挙げられる。上記ポリエーテル−エステル系エラストマーは、長鎖エステル単位および短鎖エステル単位からなり、該短鎖エステル単位は、全ポリエーテル−エステル系エラストマーの30〜70重量%の範囲にあることが好ましい。上記短鎖エステル単位の割合が、30重量%未満であるポリエーテル−エステル系エラストマーは比較的低融点であって、加工性が不良であり、また、該短鎖エステル単位が、70重量%を超えるポリエーテル−エステル系エラストマーの場合には、比較的高融点であり、加工性が不良である。
【0020】
前記ポリエーテル-エステル系エラストマーの酸成分は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、または、これらのエステル形成性誘導体から選ばれた少なくとも1種が挙げられるが、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が例示される。
【0021】
もちろん、このような酸成分の一部(通常は、全酸成分を基準として30モル%以下)は、他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていてもよい。なお、上記ポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤などが必要に応じて配合されていてもよい。
【0022】
前記ポリエーテル−エステル系エラストマーの長鎖エステル単位のグリコール成分としては、ポリエチレングリコール、ポリ1,2−プロピレングリコール、ポリ1,3−プロピレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体などのポリアルキレングリコールのうち少なくとも1種が挙げられるが、満足できる透湿性を得るためにはポリエチレングリコールが最も好ましく例示され、その平均分子量が600〜8,000の範囲にあるものが好ましい。上記平均分子量が600未満であると、満足できる機械的物性が得られず、一方、該平均分子量が8,000を超えた場合には、相分離のためにポリエーテル-エステルの調製において問題を引き起こす場合がある。
【0023】
また、ポリエーテル−エステル系エラストマーの短鎖エステル単位のグリコール成分は、エチレングリコールおよびテトラメチレングリコールからなり、該エチレングリコールおよびテトラメチレングリコール中に占めるテトラメチレングリコールのモル分率が70モル%未満のものが好ましく使用される。上記テトラメチレングリコールが70モル%を超えると、フィルム層自体は柔軟となるが、布帛とのモジュラス差が大きすぎるため、耐揉み性が悪く、フィルム層と布帛の界面に剥離が生じやすい。上記テトラメチレングリコールのモル分率のさらに好ましい範囲は、70モル%未満〜50モル%以上の範囲である。
【0024】
前記ポリエーテル−エステル系エラストマーからなるフィルムを作成する方法としては、公知の方法、例えば、インフレーション法やダイ押出し法により得た、厚さが好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmの均一なフィルムを使用するものがよい。上記フィルムの厚さが5μm未満の場合には、ラミネートの作業が困難となり均一な耐水圧が得られないおそれがあり、また防水透湿層の強度が著しく低下してしまい、一方、フィルムの厚さが30μmを超える場合には、透湿性が低下するおそれがあり、また防水透湿層の曲げ硬さが硬くなってしまうことで布帛全体が硬くなり衣料に適さないものとなってしまう。
得られたフィルムは、種々の方法、例えば、熱処理、ミシン掛け、あるいは、接着剤の使用により付着することができる。
【0025】
なお、前記ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとしては、上記以外に、例えば「主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなるハードセグメントと、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなるソフトセグメントとを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体であってもよい。このポリエステルブロック共重合体の詳細は、例えば特開平11−170461号公報の段落「0009」〜「0015」に詳述されている。
【0026】
次に、前記防水透湿層Bの上に、カットファイバーを含む樹脂層Cが部分的にまたは全面に積層されている。かかるカットファイバーにより、カットファイバーがキラキラと光るため見た目が面白くなり趣向性が向上する。
【0027】
前記カットファイバーにおいて、長さが30〜4000μm(より好ましくは50〜500μm)、かつ繊度が0.003〜15dtex(好ましくは1〜7dtex)の範囲内であることが好ましい。また、かかるカットファイバーにおいて、単繊維横断面形状が断面扁平度2〜6の扁平断面であると、カットファイバーがキラキラと光りやすく趣向性が向上し好ましい。特に、特許第3356438号公報に記載されたような光学干渉機能を有する繊維が好ましい。
【0028】
前記カットファイバーの繊維種類としては特に限定されず、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アセテート繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、炭素繊維、綿や羊毛などの天然繊維など例示される。なかでも、ポリエステル繊維がリサイクル性の点で好ましい。
【0029】
前記樹脂層Cを形成する樹脂の種類としては特に限定されるものではないが、多孔質ウレタン樹脂、無孔質ウレタン樹脂などの透湿性ウレタン系樹脂、無透湿性ウレタン系樹脂、上記のような透湿性ポリエステル系樹脂、無透湿性ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂などが用いられるが、得られる防水透湿性布帛のリサイクル性から、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0030】
また、樹脂層Cにおいて、前記カットファイバーの樹脂重量に対する重量比は5〜20重量%の範囲内であることが好ましい。カットファイバーの重量比が5重量%よりも小さいと本発明の主目的である十分な趣向性が得られないおそれがある。逆に、カットファイバーの重量比が20重量%よりも大きいと、樹脂層Cの表面がざらざらとしたものになってしまうおそれがある。
【0031】
本発明の防水透湿性布帛において、前記樹脂層Cは防水透湿層Bに直接積層されていてもよいが、前記防水透湿層Bの上に、無機微粒子含む樹脂層Dが積層され、その上に前記カットファイバーを含む樹脂層Cが積層されていることが好ましい。
【0032】
例えば、防水透湿層Bの上に、無機微粒子含む樹脂層Dが全面に積層され、その上に前記カットファイバーを含む樹脂層Cが部分的に積層されていると、樹脂塗布面をさらさらとべとつきの少ない手触りにすることができ好ましい。その際、無機微粒子は、樹脂塗布面をさらさらとべとつきの少ない手触りにするためにシリカが好適であり、重量比で1〜16重量%含有される半透明樹脂であることが好適である。ここで、無機微粒子が1重量%より小さい場合は、光沢の軽減効果が小さいものとなってしまう。また、無機微粒子が16重量%より大きい場合は、樹脂塗布面が必要以上にざらざらとしたものになってしまう。また、樹脂層Dを形成する樹脂の種類は樹脂層Cを形成する樹脂と同様のものでよい。
【0033】
また、前記カットファイバーを含む樹脂層Cが、面積比10〜80%で防水透湿層Bまたは樹脂層Dを被覆し、かつ連続的なパターンを有することが好ましい。ここで、該面積比が10%より小さいと連続的なパターンを維持することが難しくなり、趣向性がより一層向上し好ましい。逆に、該面積比が80%より大きいと防水透湿性布帛の透湿性を低下させてしまうおそれがある。この面積比は、さらに好ましくは20〜75%である。ここで、連続的なパターンとは、特に限定されるものではないが、それぞれの樹脂が分離せずに直線や曲線などによって連結され防水透湿層全体を一定のパターンで被覆していることが好ましい。
【0034】
なお、樹脂層Cを防水透湿層Bまたは樹脂層Dを被覆し連続的なパターンで積層するには、あらかじめ連続的なパターンの柄を形成したグラビアロールによって樹脂層Cをプリントするなどの手段を用いればよい。なお、上記パターンの目付けは、乾燥膜厚で、通常、0.1〜20g/m、好ましくは0.5〜10g/m程度である。
【0035】
本発明において、防水透湿性布帛をケミカルリサイクルし、再度、ポリエステル原料として再生するには、布帛全体のポリエステルが好ましくは重量比50%以上、さらに好ましくは70%以上であることが重要である。ここで、ポリエステルの重量比率が50%より小さいとリサイクル効率が低下してしまいコストアップやエネルギー消費量アップしてしまう。リサイクル効率を上げるためにはできる限りポリエステル比率を高めるほうがよい。そのため、防水透湿性布帛の構成は特に限定されるものではないが、ポリエステルマルチフィラメント繊維のみからなる基布およびポリエステルフィルムで構成することが好ましい。
【0036】
ここで、基布とフィルムをラミネーションする接着剤や、フィルム上に全面に積層する透湿性樹脂、防水透湿層に積層させる樹脂についてもポリエステル系樹脂であることが好ましい。しかし、布帛全体における重量はわずかであるため必須ではない。
【0037】
本発明の防水透湿性布帛において、カットファイバーを含む樹脂層Cが表面に現れているので、カットファイバーが光を反射してキラキラと光るため、見た目が面白く趣向性に優れる。
【0038】
次に、本発明の衣料は前記の防水透湿性布帛を含む衣料である。かかる衣料は前記の防水透湿性布帛を含むので、カットファイバーが光を反射してキラキラと光るため、見た目が面白く趣向性に優れる。かかる衣料としてはスポーツ衣料、ユニフォーム衣料、雨衣などが含まれる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)厚み
走査型電子顕微鏡を用いて試料の断面を撮影(n数5)しその平均値を求めた。
(2)外観
試験者3名により、フィルム側表面から見た外観を目視判定し、3級:見た目が面白く趣向性に優れる、2級:普通である、1級:見た目が面白くなく趣向性に劣る、の3段階に評価した。
【0040】
[実施例1]
基布(布帛A)として通常のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸84dtex/72filを経糸および緯糸に用いて緯2重織組織の生機を織成した後、撥水加工を含む通常の染色工程にて分散染料(日本化薬(株)社製、Kayalon Polyester Black BR-SF)により黒色に染色したポリエステル織物を得た(目付100g/m)。その後、デュポン(株)製の無孔質透湿性透明ポリエステルフィルム(防水透湿層B)をウレタン系接着剤でラミネーションした(フィルム16g/m、接着剤12g/m)。
【0041】
さらに、上記防水透湿性布帛のフィルム側に、ポリウレタン系樹脂にシリカを固形分比で4重量%含有させた、ポリウレタン系樹脂(樹脂層D)を全面(目付7g/m)にコーティングし、乾燥後、140℃で1分間乾熱処理した。
【0042】
さらに樹脂層Dの上に、カット長(繊維長)150μm、繊度2.3dtexの丸断面ポリエチレンテレフタレート繊維カットファイバーをポリウレタン系樹脂に固形分比で10重量%含有させたポリウレタン系樹脂をグラビアコーターにより4mm角の連続的な格子柄(面積比30%、目付6g/m)をプリントすることにより樹脂層Cを形成し、乾燥後、140℃で1分間乾熱処理し防水透湿性布帛を得た。
【0043】
得られた防水透湿性布帛において、ポリエステルフィルム上に積層されたカットファイバーを含む樹脂による格子柄がくっきりと見え、趣向性に優れるものであった(3級)。また、フィルム側カットファイバーが浮き出ており、さらさらとしたドライな風合いであった。
また、ポリエステルが布帛全体の重量比83%であり、リサイクルによる効率が良いも
のであった。
【0044】
次いで、該防水透湿性布帛を用いて、樹脂層側表面が肌側となるようウインドブレーカー(スポーツ衣料)を縫製したところ、カットファイバーが光を反射してキラキラと光るため、見た目が面白く趣向性に優れるものであった。また、樹脂層側表面において、さらさらとべとつきの少ない手触りであった。
【0045】
[比較例1]
実施例1において、樹脂層Cを積層しないこと以外は実施例1と同様にした。得られた防水透湿性布帛は、さらさらとしたドライな風合いを有するものであったが、趣向性に劣るものであった(1級)。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、趣向性に優れた外観を有する防水透湿性布帛および衣料が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛Aの片面に防水透湿層Bが積層され、さらにその上に、カットファイバーを含む樹脂層Cが部分的にまたは全面に積層されていることを特徴とする防水透湿性布帛。
【請求項2】
前記防水透湿層Bの上に、無機微粒子含む樹脂層Dが積層され、その上に前記カットファイバーを含む樹脂層Cが積層されている、請求項1に記載の防水透湿性布帛。
【請求項3】
前記カットファイバーにおいて、長さが30〜4000μm、かつ繊度が0.003〜15dtexである、請求項1または請求項2に記載の防水透湿性布帛。
【請求項4】
前記カットファイバーにおいて、単繊維横断面形状が断面扁平度2〜6の扁平断面である、請求項1〜3のいずれかに記載の防水透湿性布帛。
【請求項5】
前記カットファイバーが光学干渉機能を有する繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載の防水透湿性布帛。
【請求項6】
前記カットファイバーがポリエステル繊維である、請求項1〜5のいずれかに記載の防水透湿性布帛。
【請求項7】
前記布帛Aが、ポリエステル繊維で構成された、織物または編物である、請求項1〜6のいずれかに記載の防水透湿性布帛。
【請求項8】
前記防水透湿層Bが、厚さが5〜30μmの無孔質フィルムで形成される、請求項1〜7のいずれかに記載の防水透湿性布帛。
【請求項9】
前記カットファイバーを含む樹脂層Cが、面積比10〜80%で防水透湿層Bまたは樹脂層Dを被覆し、かつ連続的なパターンを有する、請求項1〜8のいずれかに記載の防水透湿性布帛。
【請求項10】
布帛全体におけるポリエステルの重量比が50%以上である、請求項1〜9のいずれかに記載の防水透湿性布帛。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載された防水透湿性布帛を用いてなる衣料。

【公開番号】特開2009−255378(P2009−255378A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106734(P2008−106734)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】