説明

防汚塗膜およびそれを使用した便座装置

【課題】汚れが付着し難く、かつ汚れが除去しやすい防汚塗膜を提供することを目的とする。
【解決手段】基材1表面上に、有機高分子とシリコーン成分とからなる塗膜2を形成し、シリコーン成分は前記有機高分子を構成する特性基を有する固定したシリコーン成分と、有機高分子を構成する特性基で変性された遊離したシリコーン成分とを含む防汚塗膜2である。これにより、防汚塗膜2表面において、撥水、撥油性を持つ防汚性に優れたシリコーン塗膜を表面に形成し、表面は水が接触することで水がぬれ広がる性質を持っており、汚れが接触する前に塗膜2表面上に水がぬれ広がり汚れ成分を固着させない、もしくは、汚れが接触した後、塗膜2表面と汚れ成分との間に水が浸入し、汚れを浮かび上がらせる性質を持つことで、汚れ除去性能に優れた防汚塗膜2を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水と接触することにより高い防汚性を発揮する防汚塗膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅設備、家庭電化製品、車両などは、鉄、ステンレス等の金属材料、ガラス、ホーロー、タイル、衛生陶器等の無機材料、ポリプロピレン(以下、PPと記す)やABS樹脂、PS、FRP等のプラスチック材料などが部材として使用されており、防汚性能を付与する方法としてフッ素系など撥水、撥油性を持つ材料で防汚が施されている。また、水のある環境下で使用される場合の防汚として、親水性のシリカや光触媒酸化チタンを利用して、水により疎水性成分である汚れを浮かび上がらせることで防汚性を付与する例がある。特許文献によると、水のある環境下で使用される部材において、基材表面に無機質の親水性物質と光触媒機能を有する親水性物質からなる層が形成されていることにより、疎水性の汚れ成分が表面に付着しにくく、基材表面に光触媒機能を有する物質が存在することにより、汚れ成分に極性成分がある場合でも、吸着成分が時間の経過とともに、光触媒により分解されるので、表面の疎水化を有効に防止でき、充分な膜強度を有し、かつ長期にわたり安定的に汚れを付着しにくく、また光を照射することにより表面に極性成分が吸着してもそれらを光触媒機能により分解するとともに、表面の親水性が回復する。
【特許文献1】特許第3147710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術では、撥水、撥油性を持つフッ素系の材料を用いた防汚性材料では、疎水性の汚れ、例えば油汚れが強固に付着した場合、防汚性材料も汚れ成分も疎水性であるため水を弾き、汚れの除去を難しくする。また、特許文献にあるような、光触媒を用いた親水性膜を形成した防汚性材料では、親水性の面に極性基が結合しやすく汚れが強固に付着しやすい。汚れ除去の方法は、光が当たることで防汚性材料の表面と汚れ成分との結合を切断し、親水性表面に水が濡れ広がることで、表面との結合が切れた汚れ成分を浮かび上がらせ汚れを落とす。しかし、これには継続的な光照射と継続的な水との接触が必要である。さらに、光触媒表面は無機酸化物であるため、無機物を含む汚れは固着しやすく汚れに対して万能であるとはいえない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、このような課題を解決するものであり、基材表面上に、有機高分子とシリコーン成分とからなる塗膜を形成し、シリコーン成分は前記有機高分子を構成する特性基を有する固定したシリコーン成分と、有機高分子を構成する特性基で変性された遊離したシリコーン成分とを含む防汚塗膜である。
【0005】
これにより、防汚塗膜表面において、撥水、撥油性を持つ防汚性に優れたシリコーン塗膜を表面に形成し、表面は水が接触することで水がぬれ広がる性質を持っており、汚れが接触する前に塗膜表面上に水がぬれ広がり汚れ成分を固着させない、もしくは、汚れが接触した後、塗膜表面と汚れ成分との間に水が浸入し、汚れを浮かび上がらせる性質を持つことで、汚れ除去性能に優れた防汚塗膜を提供することができる。
【発明の効果】
【0006】
塗膜に含まれるシリコーン成分が撥水性、防汚性に優れており汚れの付着を抑制し、さらに水との接触により、塗膜表面でぬれ広がることで汚れ成分の付着抑制もしくは汚れ成
分の除去を容易にするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の発明は、基材表面上に、有機高分子とシリコーン成分とからなる塗膜を形成し、前記シリコーン成分は前記有機高分子を構成する特性基を有する固定したシリコーン成分と、前記有機高分子を構成する特性基で変性された遊離したシリコーン成分とを含む防汚塗膜であり、また前記特性基は親水性の高い特性基であり、前記防汚塗膜は表面が乾燥している時には撥水性を示し、水が接すると水がぬれ広がり、さらに汚れ成分と前記防汚塗膜との間に水が存在もしくは浸入する防汚塗膜である。
【0008】
これにより、有機高分子成分と前記有機高分子成分と親和性の高い遊離したシリコーン成分が相溶することで、前記防汚塗膜表面において、シリコーン成分が隈なく分散し、また、自由度の高い遊離成分であることから親水性の高い特性基を有するシリコーン成分は、水を主成分とする液体成分が接触すると前記防汚塗膜表面上で水がぬれ広がる現象を引き起こす。その結果、防汚塗膜表面上に水がぬれ広がった汚れを固着させない層を形成するか、または、汚れが付着した後、水が接触すると、汚れと塗膜との間に水が浸入し汚れを浮かび上がらせる効果がある。さらに、塗膜自体がシリコーン成分を含むことで表面が低エネルギーとなっており汚れと表面との固着を弱いものとしている。これらによって、防汚性が高い防汚塗膜を基材表面上に形成することができる。
【0009】
第2の発明は、特に第1の発明において、固定したシリコーン成分は塗料中に含まれ塗膜形成後に塗膜に固定したシリコーン成分であり、前記塗料は前記シリコーン成分を含有するアクリル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料もしくはそれらの混合塗料のいずれかであり、遊離したシリコーン成分はシリコーンオイル成分であり、前記塗料に前記シリコーンオイルを添加した塗料を基材に塗布し硬化させて形成する防汚塗膜である。
【0010】
これにより、固定したシリコーン成分を含有する塗料はシリコーンオイル成分を良く分散させ、塗料にシリコーンオイルを添加することで、基材への塗布、硬化させた後の塗膜において高い防汚性を持った、水が接触することで水がぬれ広がるシリコーン層を形成する。
【0011】
第3の発明は、特に第2の発明において、シリコーン成分を含有するアクリル系塗料は、アクリル変性シリコーン樹脂を含む防汚塗料で、シリコーンオイルは前記防汚塗料の主成分である有機高分子を構成する特性基を有する変性シリコーンオイルである。
【0012】
これにより、親和性の高い変性シリコーンオイルを添加することで分散性を良くし防汚性を高めるとともに、塗料にシリコーンオイルを添加することで、基材への塗布、硬化させた後の塗膜において高い防汚性を持った、水が接触することで水がぬれ広がるシリコーン層を形成する。
【0013】
第4の発明は、特に第3の発明において、変性シリコーンオイルがアクリル変性シリコーンオイルである防汚塗膜である。
【0014】
これにより、親和性の高い変性シリコーンオイルを添加することで分散性を良くし防汚性を高めるとともに、塗料にシリコーンオイルを添加することで、基材への塗布、硬化させた後の塗膜において高い防汚性を持った、水が接触することで水が濡れ広がるシリコーン層を形成する。
【0015】
第5の発明は、特に第1の発明において、特性基がシリコーン側鎖に導入された変性シリコーン成分を有する防汚塗膜である。
【0016】
これにより、シリコーン側鎖に特性基が存在することで水が接触した際、防汚塗膜表面上に水がぬれ広がる効果を高めることができる。この結果、防汚塗膜表面上の水のぬれ広がりや汚れ成分と防汚塗膜表面との間に水が浸入しやすくなる。
【0017】
第6の発明は、第1〜5のいずれか1つの発明の防汚塗膜を、少なくとも便座に施した便座装置である。
【0018】
これにより、糞便や尿等の汚れが付着しにくい便座にすることができ、また付着した汚れが乾燥しても除去しやすく、衛生的で使い勝手の良い便座装置を提供することができる。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における防汚塗膜の断面模式図である。(a)は水の量が少なかった場合など防汚塗膜表面全体に水を主成分とする液体がぬれ広がっていない状態の模式図である。(b)は水の量が十分にあり、防汚塗膜全体に水を主成分とする液体がぬれ広がっている状態の模式図である。
【0020】
基材1に防汚塗膜2が化学的結合もしくは物理的結合もしくはアンカー効果により密着している。基材1は鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料や、ガラス、ホーロー、タイル、衛生陶器等の無機材料や、PPやABS、PS、FRP等のプラスチック材料など特に限定されるものではないが、PPなどではプライマーと呼ばれる基材と塗膜との中間層が必要となる場合がある。
【0021】
PPを基材としてプライマーに変性PPを用いる。変性PPは塩素化PPあるいはPPの一部にマレイン酸やオレイン酸などのカルボン酸を導入した変性PPである。塩素化PPを用いた場合、塩素が脱離し遊離してしまい、周りの金属などを腐食させる可能性があるので、周りに金属製の部品等がある場合、非塩素化の変性PPからなるものが望ましい。
【0022】
鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料、ガラス、ホーロー、タイル、衛生陶器等の無機材料、PPやABS、PS、FRP等のプラスチック材料などは住宅設備、家庭電化製品、車両などの部材として広く使用されており防汚塗膜を被覆した防汚性を有する部品を用いた幅広い製品を提供することが可能である。
【0023】
防汚塗膜2は有機高分子と固定したシリコーン成分と、遊離したシリコーン成分とからなり、固定したシリコーン成分は有機高分子を構成する特性基を有するため有機高分子と親和性が高く塗料の硬化後に形成され、塗膜中に分散して存在する。遊離したシリコーン成分は有機高分子を構成する特性基を有するため有機高分子と固定したシリコーン成分と親和性が高く相溶しており、また、親水性を有する特性基であるため、水が接触することで水がぬれ広がる防汚塗膜2となる。
【0024】
水を主成分とする液体3は、汚れ成分4が付着する前に防汚塗膜2表面上に形成されているか汚れ成分4が付着した後に水が防汚塗膜2表面上をぬれ広がり汚れ成分4と防汚塗膜2表面との間に侵入する場合とがある。汚れ成分4と防汚塗膜2との間に水を主成分とする液体3が存在することで汚れ成分4の固着を抑制し防汚性を高める働きがある。水を主成分とする液体は、水や清掃のためにつくられた洗浄成分を含むものであってもかまわない。
【0025】
次に防汚塗膜の作成方法について説明する。アクリルシリコーン系塗料あるいはウレタ
ンシリコーン系塗料など、防汚性をもつシリコーン成分を含有する塗料を用いる。本実施の形態1では、アクリル変性シリコーン樹脂を含む塗料を用いた。
【0026】
変性シリコーンオイルはアクリルシリコーン系塗料100gに対し、1g〜20g(1〜20重量部)程度の添加が望ましい。これは、添加量が少ないと遊離したシリコーン成分が少なくなるため防汚効果が小さくなり、多いと遊離したシリコーン成分が多くなり防汚塗膜表面に過度に浮き出てくるため、防汚塗膜表面がシリコーンオイルで濡れたようになってしまうという課題がある。また、添加量が多いと塗膜表面の硬度が低下するため変性シリコーンオイルの添加量は10重量部以下であることが望ましい。
【0027】
変性シリコーンオイルとしては、側鎖型、両末端型、片末端型がある。側鎖型のものが防汚塗膜2表面上での水を主成分とする液体3のぬれ広がり性がよく防汚性を向上させるには望ましい。
【0028】
また、変性シリコーンオイルの変性の種類としては水との親和性が高い特性基であることが望ましく、アクリルシリコーン塗料を用いた場合、アクリル変性シリコーンオイルが防汚塗膜2表面上での水を主成分とする液体3のぬれ広がり性がよく防汚性を向上させた。アクリル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料など使用する塗料との親和性、防汚塗膜2表面上での水を主成分とする液体3のぬれ広がり性がよい変性シリコーンオイルを選択することが望ましい。
【0029】
アクリルシリコーン系二液硬化型塗料を例として詳しく説明する。アクリルシリコーン系二液硬化型塗料の主剤と硬化剤とを5:1で混合し、それにアクリル変性シリコーンオイルを5重量部添加、攪拌し、基材1に塗布した。その後、十分に塗料に含まれる有機溶剤を蒸発乾燥させた後、シリコーン成分を防汚塗膜2表面に移行させる目的と、塗膜を硬化させる目的でエージングを行う。エージング条件は塗料によって異なっているが、本実施の形態で用いたアクリルシリコーン系塗料では100℃程度の温度で1〜2時間程度が望ましい。
【0030】
なお、塗布方法は、ディップ、スプレー、スピンコーター、スクリーン印刷、ローラー塗り、ハケ塗りなどが可能で、特に限定されるものではない。膜厚も特に限定されるものではないが、乾燥後膜厚として5μm〜30μm程度が望ましい。これより薄いと、擦ることによって防汚塗膜が破れやすくなり、またこれより厚いと基材1との密着力が低下することとなる。
【0031】
このように作成された防汚性塗膜は防汚性に優れたものであり、住宅設備部材、家庭電化製品部材、車両部材への利用で生活の様々な汚れに対して効果的である。生活環境で想定される汚れとして、食べ物や飲み物、調味料、油煙などの汚れ、手垢、大便、小便など人由来の汚れ、タバコ由来の汚れ、埃など、さらに、これらが複合した汚れがある。家庭電化製品は食べ物や飲み物、調味料、油煙などの汚れ、手垢、大便、小便など人由来の汚れ、タバコ由来の汚れ、埃など、さらに、これらが複合した汚れが付着し得る環境に置かれるが、家庭電化製品筐体に防汚性に優れた防汚性塗膜を利用することで掃除のしやすさが向上する。また、トイレットペーパーやティッシュペーパー、キッチンペーパーなど身近においてあるもので手軽に拭取ることができる。さらに、外壁、窓、橋や鉄塔など構造物や車両の外装、便器など水が使用により流されるものに利用することで自動的に洗浄される仕組みとして利用することも可能である。
【0032】
用途として、炊飯ジャー、冷蔵庫などの食べ物、飲み物、調味料などが付着する調理器具、照明器具などのスイッチやパソコンのキーボードなど人の手に触れるもの、換気扇、トイレ周り、浴槽など、外壁、窓、橋や鉄塔など構造物、車両の外装、便器、便座、浴室
、食器洗い乾燥機や洗濯機の内装などにも使用することができ、防汚効果が求められる様々な製品や部材に用いることができる。
【0033】
(実施の形態2)
図2は本発明の第2の実施の形態におけるトイレ装置の外観模式図である。トイレ装置は、便器10と、便器10の上部に設置された便座装置11から構成され、便座装置11は便器10上部に設置された本体12と、前記本体12に回動自在に枢支され、使用者が座るための便座13と便蓋14等から構成されている。
【0034】
なお、便座装置11は人体の局部を洗浄する洗浄機能を備えた便座装置であっても良い。その場合、水道から洗浄水の供給を受けるための給水配管(図示せず)および壁面のコンセントから電源供給を受けるための電気ケーブル(図示せず)が備えてあり、便座13は加熱手段を内蔵するものでもよい。
【0035】
便座13は、座る人の荷重に耐えたり、酸、アルカリ、アルコール等を含むトイレ用洗剤に耐えたりできるよう、PP製であることが多い。PPは一般的に防汚性に優れるが、油脂成分をよく染み込んでしまうという欠点がある。よって、便座13、特に裏側の普段目立たないところに尿や便等が付着すると、その油脂成分が染み込み、黄ばみ汚れの原因となる。また、それら汚れが乾いてしまうと、乾拭きでは除去しにくいという問題もある。
【0036】
本実施の形態では、PP製の便座13表面に、完全非結晶性PPに無水マレイン酸を2%変性させた変性PPを主成分とするプライマーをスプレーで塗布し、常温で10分間乾燥後、アクリル変性シリコーンオイルを5重量部添加したアクリルシリコーン系二液硬化型塗料を塗り、常温で3分程度乾燥後、100℃で60分間乾燥、エージングを行い、防汚塗膜を形成させた。なお、便座13は曲面や出っ張り部分などがあるため、塗布方法はスプレーもしくはディップが望ましく、これらの方法により均一に斑なく塗布することができる。
【0037】
次に、防汚性について記述する。使用者が便座13に座り、小便あるいは大便を行うと、その跳ね返りが便座13の裏に付着する。また、洗浄機能を備えた便座装置の場合、大便の後お尻を洗浄することにより便を含んだ温水が便座13の裏に付着することとなる。しかしながら、便座13に本発明の防汚塗膜を形成しておくことで、防汚塗膜に含有されるシリコーン成分の撥水性により、これら汚れを付きにくくすることができる。また、便座13の裏側は見えにくく、このような汚れが放置されて乾燥し便座13に固着してしまうことがある。このような場合でも、油脂成分の染み込みがなく、シリコーン成分と汚れとの結合力が小さいため、市販の掃除用具やぬれゾウキン等で簡単に取り除くことができる。なお、防汚塗膜に抗菌剤を含有させることにより、抗菌性と防汚性をあわせ持つ便座13を実現できる。
【0038】
また、本実施の形態では便座装置11の便座13においてのみ防汚性について記述したが、これに限定するものではなく、便座装置11の本体12、便器10、便蓋14、便座装置11を制御するリモコン(図示なし)、洗浄水を噴射するノズル(図示なし)などにも適用可能で、特に人為的なメンテナンスを行うことが困難な洗浄水を噴射するノズルに適用した場合、使用後毎回ノズルに付着した汚れを少ない水流により洗浄することが可能となり、清潔性を高めたノズルを実現できる。
【0039】
他にも、便器10の内部には特に大便の付着はブラシなどでの掃除の必要性があり、掃除の必要頻度が減らすことのできる防汚性の付与が望まれる。便器10は多くの場合、陶器製であることが多い。陶器製である場合、表面に凹凸が多いこと、また、表面と汚れと
結合しやすいことなどから防汚性を付与することは掃除頻度を減らすために望まれている。また、樹脂製の場合においても、掃除頻度を減らすことはやはり望まれており、更なる防汚性の向上が望まれる。
【0040】
防汚塗膜を被覆した便器は、水を流すたびに汚れを浮かび上がらせ汚れ除去を容易なものとし、また、使用前、特に大便に使用する前に便器表面を事前に水を流すなど行ない、水で覆っておくことで汚れの付着を抑制し更に防汚性を高めることとなる。事前に水を吹きかける装置を有していることがより望ましい。
【0041】
このようにして作製したトイレ装置の便座13および便器10は、糞便や尿の汚れなどを付着しにくくし、また付着し乾燥しても除去しやすくするなどの高い防汚効果を有する。
【0042】
上記と同様に浴室の壁面や床面、浴槽、トイレの床面、排水溝、排水管、キッチンシンク、洗面台、換気扇、窓、床、壁などを代表とする住宅設備の部材、特に水周り設備の部材に防汚塗膜を施すことで、防汚性の高い商品として提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明にかかる防汚塗膜は、特に水と接するもので高い効果を得ることができるので、住宅設備や家庭電化製品等のうち、特に水回りの機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)は本発明の第1の実施の形態における防汚塗膜の表面に少量の水が付着している状態を示す模式図、(b)は防汚塗膜の表面に多量の水が付着している状態を示す模式図
【図2】本発明の第2の実施の形態におけるトイレ装置の外観図
【符号の説明】
【0045】
1 基材
2 防汚塗膜
11 便座装置
13 便座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面上に、有機高分子とシリコーン成分とからなる塗膜を形成し、前記シリコーン成分は前記有機高分子を構成する特性基を有する固定したシリコーン成分と、前記有機高分子を構成する特性基で変性された遊離したシリコーン成分とを含む防汚塗膜であり、また前記特性基は親水性の高い特性基であり、前記防汚塗膜は表面が乾燥している時には撥水性を示し、水が接すると水がぬれ広がり、さらに汚れ成分と前記防汚塗膜との間に水が存在もしくは浸入することを特徴とする防汚塗膜。
【請求項2】
固定したシリコーン成分は塗料中に含まれ塗膜形成後に塗膜に固定したシリコーン成分であり、前記塗料は前記シリコーン成分を含有するアクリル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料もしくはそれらの混合塗料のいずれかであり、遊離したシリコーン成分はシリコーンオイル成分であり、前記塗料に前記シリコーンオイルを添加した塗料を基材に塗布し硬化させて形成する請求項1に記載の防汚塗膜。
【請求項3】
シリコーン成分を含有するアクリル系塗料は、アクリル変性シリコーン樹脂を含む防汚塗料で、シリコーンオイルは前記防汚塗料の主成分である有機高分子を構成する特性基を有する変性シリコーンオイルである請求項2記載の防汚塗膜。
【請求項4】
変性シリコーンオイルはアクリル変性シリコーンオイルである請求項3に記載の防汚塗膜。
【請求項5】
特性基がシリコーン側鎖に導入された変性シリコーン成分を有する請求項1に記載の防汚塗膜。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の防汚塗膜を、少なくとも便座の表面に施した便座装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−256450(P2009−256450A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106494(P2008−106494)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】