防波構造物
【課題】非越波性能を得るために沖側壁面の上部が沖側にせり出す形状を有していても当該沖側壁面に対する波圧を低減できる防波構造物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、沖に面して立設される防波構造物10であって、上部に沖側から到来する波をはね返すように沖側にせり出す形状を有する沖側壁面20を備え、沖側壁面20は、波をはね返すときの当該波の案内方向αに沿って交互に繰り返される凹凸を有し、この凹凸は、沖側壁面20の案内方向αにおいて、沖側から見て奥行の最も深いところから沖側にせり出した部分の少なくとも一部に設けられることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、沖に面して立設される防波構造物10であって、上部に沖側から到来する波をはね返すように沖側にせり出す形状を有する沖側壁面20を備え、沖側壁面20は、波をはね返すときの当該波の案内方向αに沿って交互に繰り返される凹凸を有し、この凹凸は、沖側壁面20の案内方向αにおいて、沖側から見て奥行の最も深いところから沖側にせり出した部分の少なくとも一部に設けられることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾、海岸沿岸域において、波浪越波、波力から船舶や陸上の人命、建築物等を防護する防波堤や岸壁等の護岸用の防波構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
護岸用の防波構造物としては、例えば、図12に示されるような直立型ケーソン112を用いた直立護岸110が従来、用いられていた。
【0003】
この直立護岸110では、沖側から到来する波が垂直方向に立ち上がる沖側壁面114にぶつかることでその進行が止められ、これにより波力から船舶や人命等が防護される。しかし、十分な非越波性能を得るためには、天端高さを高くしたり、沖側壁面114の前側(沖側)に消波ブロックを積み上げる必要があった。
【0004】
そこで、沖側壁面114の上部が沖側から到来する波をはね返すように沖側にせり出す形状を有する護岸(防波構造物)が開発された。具体的には、例えば、特許文献1に記載の護岸120(図13参照)のように、沖側壁面122の上部に沖側から到来する波をはね返すように沖側に傾斜する上部傾斜部124を設けることで、天端高さを低く抑えながら高い非越波性能を得ることができた。この護岸120を用いることで、沖側壁面122の前側に消波ブロックを積み上げなくても越波を低減することができるため、砂浜や磯等の自然環境を消波ブロックで埋めなくてもよかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−241323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の沖側壁面122に上部傾斜部124を有するような防波構造物120では、直立護岸に比べて天端高さを抑えながらも高い非越波性能を得られるが、その反面、沖側壁面122に対する波圧が直立護岸よりも大きくなる傾向がある。これは、沖側から到来して沖側壁面122に衝突する水塊の運動方向をその上部傾斜部124によって強制的に沖向きに変えるためである。
【0007】
このように波圧が大きくなると、沖側壁面122の各部位に作用する波圧の垂直成分が防波構造物を上方に押し上げるように作用し、これにより防波構造物の損傷や防波構造物が不安定となる等が懸念された。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、非越波性能を得るために沖側壁面の上部が沖側にせり出す形状を有していても当該沖側壁面に対する波圧を低減できる防波構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明は、沖に面して立設される防波構造物であって、上部に沖側から到来する波をはね返すように沖側にせり出す形状を有する沖側壁面を備え、前記沖側壁面は、前記波をはね返すときの当該波の案内方向に沿って交互に繰り返される凹凸を有し、この凹凸は、前記沖側壁面の前記案内方向において、沖側から見て奥行の最も深いところから前記沖側にせり出した部分の少なくとも一部に設けられることを特徴とする。
【0010】
このように沖側壁面が上部に沖側にせり出す形状を有することにより、沖側から当該沖側壁面に到来した波を沖側にはね返すため、越波を低減することができる。しかも、沖側壁面によって波をはね返すときに、当該壁面に沿って案内される波がその進行方向に繰り返される凹凸の凸部とぶつかることで崩され、これにより、沖側壁面に対する波圧が低減する。
【0011】
本発明に係る防波構造物においては、前記凹凸は、前記沖側壁面の前記案内方向において、沖側から見て奥行の最も深いところから前記沖側にせり出した部分の全域で交互に繰り返されること、が好ましい。
【0012】
種々の潮位条件及び波浪条件において波が沖側壁面によってはね返されるときにこの波が沖側壁面に沿って進む可能性が高い範囲(即ち、案内方向において沖側から見て奥行の最も深いところから沖側にせり出した部分)の全域において凹凸が繰り返されるため、当該壁面に沿って案内される波を確実に崩すことができ、これにより沖側壁面に対する波圧を効果的に低減することができる。
【0013】
さらに、前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域が、前記沖側壁面の下端から当該壁面に沿って上端側を見たときに当該沖側壁面の水平方向における50%以上の範囲に存在すれば、沖側壁面全体に対する波圧を効果的に低減することができる。
【0014】
前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域は、水平方向若しくは略水平方向に均一な断面形状を有してもよい。
【0015】
かかる構成によれば、沖側壁面の水平方向において凹凸が交互に繰り返される均一な断面形状を有する領域全体で効果的な波圧の低減が可能となる。
【0016】
この場合、前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域では、前記沖側壁面に沿って案内される波の進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面が前記凹凸の一部に形成されていれば、沖側壁面に沿って案内される波がその進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面にぶつかるため、この波がより効果的に崩される。
【0017】
また、前記沖側壁面の凹凸は、水平方向若しくは略水平方向に延び、前記案内方向に間隔をおいて平行若しくは略平行に並ぶ複数本の突条の表面と、前記案内方向に隣り合う突条同士の間に位置する底面とにより画定されてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、案内される波がその進行方向と直交若しくは略直交する方向に延びる突条とぶつかって崩されるため、沖側壁面の水平方向において突条が延びている領域全体で効果的な波圧の低減が可能となる。
【0019】
この場合、前記突条が、前記沖側壁面に沿って案内される波の進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面を有することで、沖側壁面に沿って案内される波がその進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面にぶつかるため、突条が波をより効果的に崩すことができる。
【0020】
前記案内方向と直交し且つ水平方向と直交する方向における前記突条の高さ寸法よりも、前記案内方向における前記底面の幅寸法が大きいことが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、沖側壁面に案内される波が、案内方向に平行若しくは略平行に並ぶ各突条間の底面まで確実に入り込み、この入り込んだ波が突条の側面全体とぶつかることにより効果的に崩される。即ち、突条の間隔が狭いと案内される波が底面まで入り込めないため突条の突出側先端部分としかぶつからず、波があまり崩されない。
【発明の効果】
【0022】
以上より、本発明によれば、非越波性能を得るために沖側壁面の上部が沖側にせり出す形状を有していても当該沖側壁面に対する波圧を低減できる防波構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る防波構造物を設置した状態の断面斜視図である。
【図2】前記防波構造物の縦断面図である。
【図3】図2の沖側壁面の一部拡大図である。
【図4】他実施形態に係る防波構造物における沖側壁面の一部拡大断面図である。
【図5】他実施形態に係る防波構造物における沖側壁面の一部拡大断面図である。
【図6】他実施形態に係る沖側壁面の突条の形状を説明するための図である。
【図7】(A)は、沖側壁面において突起部が縦横に並んだ防波構造物の一部拡大斜視図であり、(B)は、沖側壁面において突起部が千鳥状に並んだ防波構造物の一部拡大斜視図である。
【図8】他実施形態に係る防波構造物を設置した状態の縦断面図である。
【図9】実験1において、横軸を現地換算した突条高さHとし、縦軸を波圧低減率としたときの実験結果を示すグラフである。
【図10】実験1において、横軸を突条高さHに対する突条幅Bの比、B/Hとし、縦軸を波圧低減率としたときの実験結果を示すグラフである。
【図11】実験2において、横軸を突条幅Bに対する底面幅Dの比、D/Bとし、縦軸を波圧低減率としたときの実験結果を示すグラフである。
【図12】従来の直立護岸を設置した状態の縦断面図である。
【図13】従来の沖側壁面の上部に上部傾斜部が設けられた防波構造物を設置した状態の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施形態に係る防波構造物は、防波堤や岸壁等の護岸用に用いられるものである。本実施形態の防波構造物は、図1及び図2に示されるように、砂と捨石マウントからなる基礎Kの上に沖に面するように設置される。尚、基礎Kは、このような構成に限らず、任意の公知の構成としてもよい。また、このような基礎Kは防波構造物10を設置するのに必須ではない。
【0026】
防波構造物10は、沖に面する沖側壁面20と、天端面12と、陸側壁面14と、底面15とを備える。天端面12は、防波構造物の上端(天端)において水平方向に拡がる面であり、陸側壁面14は、陸側で垂直方向に起立した面であり、底面15は、当該防波構造物10を設置したときに基礎K等と接する面である。
【0027】
沖側壁面20は、沖側から岸に向って凹む湾曲面状であり、上部側に沖側に向って迫り出すように傾斜する上部傾斜部22と、下部側に沖側に向って迫り出すように陸側に傾斜する下部傾斜部24とを有する。
【0028】
上部傾斜部22は、沖側から到来する波を受けて沖側にはね返すことにより越波を防止する部位である。具体的に、上部傾斜部22は、沖側から到来した波を当該上部傾斜部22に沿って上端側に案内することにより波の進行方向を沖向きに変える。そのため、上部傾斜部22は、沖側から到来した波を上部傾斜部22(又は沖側壁面20)の上端側に案内し易いように湾曲している。この上部傾斜部22は、到来する波を受けることができるように、海岸に設置される場合であれば、干潮時及び満潮時を含めて、常に静水面Sの高さ位置を含む領域であって、設計最大波高を有する波W(図2参照)による引き波時の水面高さ位置より下側から沖側壁面20の天端高さ位置まで形成されている。
【0029】
尚、設計最大波高とは、この防波構造物10が設置される海域で想定される最大波高をいい、防波構造物10の設計を行うために設定するものである。また、本実施形態の防波構造物10には、沖側壁面20の上部傾斜部22の上側に鉛直面16が存在するが、この鉛直面16は、沖側壁面20の上部傾斜部22の一部として波を受けてはね返す機能を果たすものではなく、上部傾斜部22の最上位置部分が、上部傾斜部22として波を受けてはね返す際に作用する波圧に耐え、且つ構造物として必要な一定の強度を得るために必要な厚みを形成するものである。そのため、本実施形態において、このような鉛直面16の部分は、沖側壁面20に含めないものとする。
【0030】
沖側壁面20は、沖側から到来する波をはね返すときの当該波の案内方向(図2の矢印αの方向)に沿って交互に繰り返される凹凸を有する。この沖側壁面20における凹凸が交互に繰り返される領域は、水平方向若しくは略水平方向に均一な断面形状を有する。この凹凸は、沖から到来した波が沖側壁面20(上部傾斜部22)によってはね返されるときに当該沖側壁面20に沿って案内される波を崩し、これにより、沖側壁面20に対する波圧を低減する。本実施形態では、この凹凸が案内方向αにおいて沖側壁面20の全域に(即ち、沖側壁面20の案内方向αにおける下端から上端まで)設けられている。
【0031】
尚、この凹凸は、沖側壁面20の案内方向αにおいて全域に設けられなくてもよい。例えば、凹凸は、沖側壁面20の案内方向αにおいて、上部傾斜部22(即ち、沖側から見て奥行の最も深い位置26から沖側にせり出した部分の先端28まで)の全域で交互に繰り返されてもよい。この範囲(上部傾斜部22)は、種々の潮位条件及び波浪条件において波が沖側壁面20によってはね返されるときに、この波が沖側壁面20に沿って進む可能性が高い範囲である。そのため、上部傾斜部22の案内方向αにおける全域で凹凸が交互に連続して繰り返されていれば、当該壁面20に沿って案内される波が凹凸の凸部とぶつかって崩され、これにより沖側壁面20に対する波圧を効果的に低減することができる。但し、凹凸は、沖側壁面20の案内方向αにおいて、上部傾斜部22の一部に設けられていてもよい。この場合、沖側壁面20における凹凸が繰り返される領域において、波圧を低減することができる。
【0032】
具体的に、沖側壁面20の凹凸は、水平方向に延び、案内方向αに間隔をおいて平行若しくは略平行に並ぶ複数本(本実施形態では5本)の突条30の表面と、案内方向αに隣り合う突条30同士の間に位置する底面32とにより画定されている。
【0033】
突条30は、図3にも示されるように、断面形状が矩形状で案内方向αの幅寸法が一定となるように水平方向若しくは略水平方向に延びている。即ち、突条30は、水平方向若しくは略水平方向に均一な断面形状を有する。本実施形態の突条30は、沖側壁面20において水平方向の一方端から他方端まで連続している。この突条30の表面は、案内方向αに対して直交する一対の起立面34a,34bと、これら一対の起立面34a,34bの突出側の先端部同士を接続する天面36と、からなる。一対の起立面34a,34bのうち案内方向αと対向する起立面(直交面)34aは、沖側壁面20に沿って案内される波とぶつかり、この波を崩す。
【0034】
底面32は、案内方向αに隣り合う突条30,30において互いに対向する起立面34a,34bの間に位置し、案内方向αの幅寸法が一定となるように水平方向若しくは略水平方向に延びる面である。本実施形態の底面32は、案内方向αに沿って滑らかな面である。
【0035】
以下では、一つの突条30における一対の起立面34a,34b間の距離を突条幅Bと称し、底面32から天面36までの距離(詳しくは、案内方向αと直交し且つ水平方向と直交する方向の距離)を突条高さHと称し、隣り合う突条30同士の対向する起立面34a,34b間の距離を底面幅Dと称する(図3参照)。
【0036】
沖側壁面20におけるこれら突条高さH、突条幅B、底面幅Dの各値は、沖側壁面20に対する波圧の低減性能に大きく影響する。例えば、底面幅Dが狭すぎると底面部32まで波が入り込むことなく突条30の天面36に沿って波が進むためあまり崩れず、沖側壁面20に対する波圧があまり低減しない。また、突条高さHが低すぎると、案内される波があまり崩れず、沖側壁面20に対する波圧があまり低減しない。そのため、突条高さH、突条幅B、底面幅Dの各値は、当該防波構造物を設置する場所の潮位条件や波浪条件等に基づいて、適宜、設定される。
【0037】
本実施形態の沖側壁面20では、突条高さHよりも突条幅Bの方が大きく、突条高さHよりも底面幅Dの方が大きくなるように各値が設定されている。このように、本実施形態の沖側壁面20では、突条高さHよりも底面幅Dが大きくなるようにして、案内される波が底面32まで入り込み、この波が突条30の起立面34a全体と確実にぶつかるようにしている。具体的には、沖側壁面20における突条30の突条高さHが10cm、突条幅Bが40cm、底面幅Dが40cmである。尚、本実施形態の防波構造物10は、天端高さが4m、水平方向の長さが4m、沖側壁面20の沖側の先端28から奥行の最も深い位置26までの水平距離(図2のD参照)が2mである。
【0038】
このような防波構造物10は、鉄筋コンクリートによって形成されている。具体的に、防波構造物10は、以下のように製造される。
【0039】
先ず、鉄骨や金属製の棒材等が所定の形に組み上げられ骨組みが形成される。この骨組みの周囲が所定の型枠により囲まれる。そして、この型枠内にコンクリートが流し込まれ、このコンクリートが固まることで防波構造物10が形成される。この場合、前記の骨組み及びそれを囲う型枠によって沖側壁面20の凹凸形状が他の部位と一体に形成される。
【0040】
尚、防波構造物10の具体的な製造方法は、これに限定されない。例えば、図13に示される従来の防波構造物のような凹凸のない湾曲面(沖側壁面)を有する防波構造物が形成され、後から突条が形成されてもよい。具体的には、前記湾曲面において、突条が形成される部位のコンクリートがはつられる。このはつられた部位に鉄筋やアンカーボルト等が打ち込まれ、その後、突条を形成するための型枠が組まれる。この型枠内にコンクリートが流し込まれて固まることによって、沖側壁面に前記凹凸が形成される。また、凹凸のない湾曲面に、凹凸形状の部材を固着するようにしてもよい。
【0041】
以上のような防波構造物10によれば、沖側壁面20が上部に沖側にせり出す形状を有するため、沖側から当該沖側壁面20に到来した波を沖側にはね返し、これにより、越波を低減することができる。しかも、沖側壁面20によって波をはね返すときに、当該壁面20に沿って案内される波がその進行方向(案内方向α)に平行若しくは略平行に並ぶ複数本の突条30と次々にぶつかることで崩され、これにより、沖側壁面20に対する波圧を低減することができる。
【0042】
また、各突条30が沖側壁面20において水平方向の一方端から他方端まで連続して延びているため、沖側壁面20の水平方向の全域において、波圧の低減が効果的に行われる。
【0043】
また、各突条30が起立面34aをそれぞれ有することで、沖側壁面20に対する波圧の低減がより効果的に行われる。即ち、起立面34aは、沖側壁面20に沿って案内される波の進行方向αに対して直交する面であるため、この起立面34aにぶつかった波を効果的に崩すことができる。
【0044】
尚、本発明の防波構造物は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0045】
突条30の具体的な形状は、限定されない。例えば、図3に示されるように、本実施形態の突条30は矩形状の断面形状を有するが、図4(A)に示されるように、角部を円弧131にした矩形状の断面形状を有する突条30Aであってもよい。この場合、沖側壁面20に沿って案内される波がぶつかる起立面134aの面積が小さくなるが、角部が欠けることを防ぐことができる。また、図4(B)及び図4(C)に示されるように、突条30B、30Cの起立面234a,334aは、波の案内方向αと直交していなくてもよい。このように案内方向αと対向する起立面234a,334aを案内方向αに対して突出方向先端側が後方となるように傾斜させることで、突条30B,30Cに波がぶつかったときの起立面234a,334aに加わる力が低減され、突条30B,30Cが損傷し難くなる。また、沖側壁面20に案内される波がぶつかる部位に平面(起立面)がなくてもよい。即ち、図4(D)に示されるように、突条30Dにおける波がぶつかる面が湾曲していてもよい。このような形状であっても、波が沖側壁面20に沿って案内されるとこの波が各突条30Dにぶつかることで崩され、これにより沖側壁面20に対する波圧が低減される。
【0046】
本実施形態では、突条30の断面形状が矩形状であるため、案内方向αに隣り合う突条30,30間に底面32を要するが、凹凸形状によっては、底面32を要しない。即ち、案内方向αに沿って凹凸を繰り返し且つ水平方向に均一な断面形状を有していれば、例えば、図5(A)や図5(B)に示される沖側壁面20A,20Bのような形状であってもよい。具体的には、図5(A)の沖側壁面20Aのように、起立面を形成するように急激に立ち上がる部位がなく、なだらかに凹凸が繰り返される形状であってもよい。このような凹凸であっても、沖側壁面20Aに案内される波がその案内方向αにおいて凸部50Aと次々にぶつかって崩されるため、沖側壁面20Aに対する波圧を低減することができる。また、図5(B)の沖側壁面20Bのように、凸部50Bの頂き部分から次の凸部50Bに向って高さが徐々に低くなるような形状であってもよい。このような凹凸であっても、沖側壁面20Bに案内される波がその案内方向αにおいて凸部50Bと次々にぶつかることができ、これにより波が崩され沖側壁面20Bに対する波圧が低減される。特に、図5(B)に示される沖側壁面20Bのように、案内方向αに対して直交若しくは略直交する直交面(起立面34a)が案内方向αに所定間隔で並ぶような凹凸であれば、底面32がなくても本実施形態の矩形状の突条30が設けられた沖側壁面20と同様に案内される波を効果的に崩すことができ、これにより沖側壁面20Bに対する波圧を効果的に低減することができる。また、沖側壁面20Bにおいて、凸部50Bの頂(角部)が他の部位に比べ、波との衝突によって欠けやすいため、この頂(角部)を案内方向αに沿った面にしてもよい(図5(B)の破線参照)。
【0047】
沖側壁面の突条は、本実施形態のように、水平方向若しくは略水平方向に真っ直ぐでなくてもよい。例えば、図6(A)に示される沖側壁面20Cのように、突条30Eが波打つように曲がっていてもよい。
【0048】
また、図6(B)に示されるように、沖側壁面20Dの突条30Fは、水平方向に対して傾斜していてもよい。この場合、各突条30Fの水平方向に対する傾斜角が45°未満であれば、沖側壁面20Dに案内されてはね返される波を効果的に崩すことができる。
【0049】
沖側壁面の凸部は、本実施形態のように水平方向に連続する突条30でなくてもよい。例えば、水平方向に間欠な突条であってもよく、図7(A)及び図7(B)に示されるような、水平方向若しくは略水平方向に互いに間隔をおいて並ぶ複数の突起部50であってもよい。このような形状であっても、沖側壁面20E,20Fに案内される波がこれら突起部50とぶつかることで当該波を崩すことができる。
【0050】
沖側壁面の水平方向において案内方向αに凹凸が繰り返される領域は、本実施形態のように水平方向の全域に(即ち、水平方向の一方端から他方端まで)形成されなくてもよく、沖側壁面の下端から当該壁面に沿って上端側を見たときに(図7(A)において矢印βの方向)、沖側壁面の水平方向における50%以上の範囲に凹凸が形成されていればよい。このような範囲に凹凸が形成されていれば、沖側壁面全体に対する波圧を効果的に低減することが可能となる。
【0051】
また、沖側壁面は、上部傾斜部及び下部傾斜部の両方を備えなくてもよく、図8に示されるように、沖側壁面20Gの上部側に沖側にせり出す部位(上部傾斜部22)が設けられていれば、沖から到来した波をはね返して越波を効果的に防ぐことができる。この場合、凹凸が案内方向αにおいて沖側壁面20Gの全域に設けられてもよく、図8に示されるように、案内方向αにおいて上部傾斜部22の全域に設けられてもよい。尚、下部傾斜部のない沖側壁面20Gにおいても、少なくとも上部傾斜部22の一部に凹凸が設けられていれば、当該部位において沖側壁面20Gに対する波圧の低減を図ることができる。
【実施例1】
【0052】
上記実施形態の防波構造物における沖側壁面の凹凸による波圧の低減効果を確認するために、縮尺1/20の防波構造物モデル(沖側壁面の高さ14cm、モデル全高16cm)を作成し、2次元造波水槽を用いた水理実験を行った。尚、以下の実験で防波構造物の正面側(沖側)の海底の勾配は1/10、防波構造物モデルの設置水深は11cmとした。
<実験1>
突条幅Bを20mm(現地換算:40cm)とし、突条高さHを1.5mm、3mm、5mm、7.5mm、10mm、12.5mm(現地換算:3cm、6cm、10cm、15cm、20cm、25cm)とし、突条幅Bに対する底面幅Dの比、D/Bを1とした各種モデルを用意し、波圧測定実験を行った。小型波圧計は、防波構造物モデルにおける沖側壁面の案内方向の中央部に取り付けた。尚、基準モデルとして凹凸なしの滑らかな湾曲面からなる沖側壁面を有する防波構造物モデルでも実験した。
【0053】
これらの各防波構造物モデルに波高10cm、周期1秒(現地換算:波高2m、周期4.47秒)の規則波を作用させて波圧計測し、防波構造物の沖側壁面の平均波圧を算出した。
【0054】
その結果を以下の表1及び図9及び図10に示す。
【0055】
【表1】
図9に示すグラフは、横軸を現地換算した突条高さHとし、縦軸を波圧低減率としている。この波圧低減率は、凹凸を有する沖側壁面における波圧が凹凸なしの沖側壁面における波圧と同じ場合を1としている。図9に示されるように、突条高さHが10〜15cmのときに波圧低減率が最も小さくなり、突条高さHがそれよりも低くなっても高くなっても波圧低減率が増加する。この結果から、波圧低減率が0.8以下の効果的な範囲(有意な範囲)は、突条高さHが5〜20cmの範囲であることがわかった。
【0056】
また、図10に示すグラフは、横軸を突条高さHに対する突条幅Bの比、B/Hとし、縦軸を波圧低減率として表1の実験結果を整理したものである。この結果から、波圧低減率が0.8以下の効果的な範囲(有意な範囲)は、B/Hが2〜8の範囲であることがわかった。
<実験2>
次に、突条幅Bを20mm(現地換算:40cm)、突条高さHを5mm(現地換算:10cm)とし、底面幅Dを10mm、15mm、20mm、25mm、30mm(現地換算:20cm、30cm、40cm、50cm、60cm)とした各種モデルを用意し、波圧測定実験を行った。小型波圧計は、実験1と同様に、防波構造物モデルにおける沖側壁面の案内方向の中央部に取り付けた。また、実験1と同様に、基準モデルとして凹凸なしの滑らかな湾曲面からなる沖側壁面の防波構造物モデルでも実験した。
【0057】
これらのモデルに波高10cm、周期1秒(現地換算:波高2m、周期4.47秒)の規則波を作用させて波圧計測し、防波構造物の沖側壁面の平均波圧を算出した。
【0058】
その結果を以下の表2及び図11に示す。
【0059】
【表2】
図11に示すグラフは、横軸を突条幅Bに対する底面幅Dの比、D/Bとし、縦軸を波圧低減率としている。この波圧低減率は、凹凸を有する沖側壁面における波圧が凹凸なしの沖側壁面における波圧と同じ場合を1としている。図11に示されるように、D/Bが1のときに波圧低減率が最も小さくなり、D/Bがそれよりも小さくなっても大きくなっても波圧低減率が増加する。この結果から、波圧低減率が0.8以下の効果的な範囲(有意な範囲)はD/Bが0.7〜1.5の範囲であることがわかった。
【符号の説明】
【0060】
10 防波構造物
20 沖側壁面
22 上部傾斜部(沖側壁面の案内方向において、沖側から見て奥行の最も深いところから沖側にせり出した部分)
24 下部傾斜部
30 突条
32 底面
B 突条幅
D 底面幅
H 突条高さ
S 静水面
W 波
α はね返す波の案内方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾、海岸沿岸域において、波浪越波、波力から船舶や陸上の人命、建築物等を防護する防波堤や岸壁等の護岸用の防波構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
護岸用の防波構造物としては、例えば、図12に示されるような直立型ケーソン112を用いた直立護岸110が従来、用いられていた。
【0003】
この直立護岸110では、沖側から到来する波が垂直方向に立ち上がる沖側壁面114にぶつかることでその進行が止められ、これにより波力から船舶や人命等が防護される。しかし、十分な非越波性能を得るためには、天端高さを高くしたり、沖側壁面114の前側(沖側)に消波ブロックを積み上げる必要があった。
【0004】
そこで、沖側壁面114の上部が沖側から到来する波をはね返すように沖側にせり出す形状を有する護岸(防波構造物)が開発された。具体的には、例えば、特許文献1に記載の護岸120(図13参照)のように、沖側壁面122の上部に沖側から到来する波をはね返すように沖側に傾斜する上部傾斜部124を設けることで、天端高さを低く抑えながら高い非越波性能を得ることができた。この護岸120を用いることで、沖側壁面122の前側に消波ブロックを積み上げなくても越波を低減することができるため、砂浜や磯等の自然環境を消波ブロックで埋めなくてもよかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−241323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の沖側壁面122に上部傾斜部124を有するような防波構造物120では、直立護岸に比べて天端高さを抑えながらも高い非越波性能を得られるが、その反面、沖側壁面122に対する波圧が直立護岸よりも大きくなる傾向がある。これは、沖側から到来して沖側壁面122に衝突する水塊の運動方向をその上部傾斜部124によって強制的に沖向きに変えるためである。
【0007】
このように波圧が大きくなると、沖側壁面122の各部位に作用する波圧の垂直成分が防波構造物を上方に押し上げるように作用し、これにより防波構造物の損傷や防波構造物が不安定となる等が懸念された。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、非越波性能を得るために沖側壁面の上部が沖側にせり出す形状を有していても当該沖側壁面に対する波圧を低減できる防波構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明は、沖に面して立設される防波構造物であって、上部に沖側から到来する波をはね返すように沖側にせり出す形状を有する沖側壁面を備え、前記沖側壁面は、前記波をはね返すときの当該波の案内方向に沿って交互に繰り返される凹凸を有し、この凹凸は、前記沖側壁面の前記案内方向において、沖側から見て奥行の最も深いところから前記沖側にせり出した部分の少なくとも一部に設けられることを特徴とする。
【0010】
このように沖側壁面が上部に沖側にせり出す形状を有することにより、沖側から当該沖側壁面に到来した波を沖側にはね返すため、越波を低減することができる。しかも、沖側壁面によって波をはね返すときに、当該壁面に沿って案内される波がその進行方向に繰り返される凹凸の凸部とぶつかることで崩され、これにより、沖側壁面に対する波圧が低減する。
【0011】
本発明に係る防波構造物においては、前記凹凸は、前記沖側壁面の前記案内方向において、沖側から見て奥行の最も深いところから前記沖側にせり出した部分の全域で交互に繰り返されること、が好ましい。
【0012】
種々の潮位条件及び波浪条件において波が沖側壁面によってはね返されるときにこの波が沖側壁面に沿って進む可能性が高い範囲(即ち、案内方向において沖側から見て奥行の最も深いところから沖側にせり出した部分)の全域において凹凸が繰り返されるため、当該壁面に沿って案内される波を確実に崩すことができ、これにより沖側壁面に対する波圧を効果的に低減することができる。
【0013】
さらに、前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域が、前記沖側壁面の下端から当該壁面に沿って上端側を見たときに当該沖側壁面の水平方向における50%以上の範囲に存在すれば、沖側壁面全体に対する波圧を効果的に低減することができる。
【0014】
前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域は、水平方向若しくは略水平方向に均一な断面形状を有してもよい。
【0015】
かかる構成によれば、沖側壁面の水平方向において凹凸が交互に繰り返される均一な断面形状を有する領域全体で効果的な波圧の低減が可能となる。
【0016】
この場合、前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域では、前記沖側壁面に沿って案内される波の進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面が前記凹凸の一部に形成されていれば、沖側壁面に沿って案内される波がその進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面にぶつかるため、この波がより効果的に崩される。
【0017】
また、前記沖側壁面の凹凸は、水平方向若しくは略水平方向に延び、前記案内方向に間隔をおいて平行若しくは略平行に並ぶ複数本の突条の表面と、前記案内方向に隣り合う突条同士の間に位置する底面とにより画定されてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、案内される波がその進行方向と直交若しくは略直交する方向に延びる突条とぶつかって崩されるため、沖側壁面の水平方向において突条が延びている領域全体で効果的な波圧の低減が可能となる。
【0019】
この場合、前記突条が、前記沖側壁面に沿って案内される波の進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面を有することで、沖側壁面に沿って案内される波がその進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面にぶつかるため、突条が波をより効果的に崩すことができる。
【0020】
前記案内方向と直交し且つ水平方向と直交する方向における前記突条の高さ寸法よりも、前記案内方向における前記底面の幅寸法が大きいことが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、沖側壁面に案内される波が、案内方向に平行若しくは略平行に並ぶ各突条間の底面まで確実に入り込み、この入り込んだ波が突条の側面全体とぶつかることにより効果的に崩される。即ち、突条の間隔が狭いと案内される波が底面まで入り込めないため突条の突出側先端部分としかぶつからず、波があまり崩されない。
【発明の効果】
【0022】
以上より、本発明によれば、非越波性能を得るために沖側壁面の上部が沖側にせり出す形状を有していても当該沖側壁面に対する波圧を低減できる防波構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る防波構造物を設置した状態の断面斜視図である。
【図2】前記防波構造物の縦断面図である。
【図3】図2の沖側壁面の一部拡大図である。
【図4】他実施形態に係る防波構造物における沖側壁面の一部拡大断面図である。
【図5】他実施形態に係る防波構造物における沖側壁面の一部拡大断面図である。
【図6】他実施形態に係る沖側壁面の突条の形状を説明するための図である。
【図7】(A)は、沖側壁面において突起部が縦横に並んだ防波構造物の一部拡大斜視図であり、(B)は、沖側壁面において突起部が千鳥状に並んだ防波構造物の一部拡大斜視図である。
【図8】他実施形態に係る防波構造物を設置した状態の縦断面図である。
【図9】実験1において、横軸を現地換算した突条高さHとし、縦軸を波圧低減率としたときの実験結果を示すグラフである。
【図10】実験1において、横軸を突条高さHに対する突条幅Bの比、B/Hとし、縦軸を波圧低減率としたときの実験結果を示すグラフである。
【図11】実験2において、横軸を突条幅Bに対する底面幅Dの比、D/Bとし、縦軸を波圧低減率としたときの実験結果を示すグラフである。
【図12】従来の直立護岸を設置した状態の縦断面図である。
【図13】従来の沖側壁面の上部に上部傾斜部が設けられた防波構造物を設置した状態の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施形態に係る防波構造物は、防波堤や岸壁等の護岸用に用いられるものである。本実施形態の防波構造物は、図1及び図2に示されるように、砂と捨石マウントからなる基礎Kの上に沖に面するように設置される。尚、基礎Kは、このような構成に限らず、任意の公知の構成としてもよい。また、このような基礎Kは防波構造物10を設置するのに必須ではない。
【0026】
防波構造物10は、沖に面する沖側壁面20と、天端面12と、陸側壁面14と、底面15とを備える。天端面12は、防波構造物の上端(天端)において水平方向に拡がる面であり、陸側壁面14は、陸側で垂直方向に起立した面であり、底面15は、当該防波構造物10を設置したときに基礎K等と接する面である。
【0027】
沖側壁面20は、沖側から岸に向って凹む湾曲面状であり、上部側に沖側に向って迫り出すように傾斜する上部傾斜部22と、下部側に沖側に向って迫り出すように陸側に傾斜する下部傾斜部24とを有する。
【0028】
上部傾斜部22は、沖側から到来する波を受けて沖側にはね返すことにより越波を防止する部位である。具体的に、上部傾斜部22は、沖側から到来した波を当該上部傾斜部22に沿って上端側に案内することにより波の進行方向を沖向きに変える。そのため、上部傾斜部22は、沖側から到来した波を上部傾斜部22(又は沖側壁面20)の上端側に案内し易いように湾曲している。この上部傾斜部22は、到来する波を受けることができるように、海岸に設置される場合であれば、干潮時及び満潮時を含めて、常に静水面Sの高さ位置を含む領域であって、設計最大波高を有する波W(図2参照)による引き波時の水面高さ位置より下側から沖側壁面20の天端高さ位置まで形成されている。
【0029】
尚、設計最大波高とは、この防波構造物10が設置される海域で想定される最大波高をいい、防波構造物10の設計を行うために設定するものである。また、本実施形態の防波構造物10には、沖側壁面20の上部傾斜部22の上側に鉛直面16が存在するが、この鉛直面16は、沖側壁面20の上部傾斜部22の一部として波を受けてはね返す機能を果たすものではなく、上部傾斜部22の最上位置部分が、上部傾斜部22として波を受けてはね返す際に作用する波圧に耐え、且つ構造物として必要な一定の強度を得るために必要な厚みを形成するものである。そのため、本実施形態において、このような鉛直面16の部分は、沖側壁面20に含めないものとする。
【0030】
沖側壁面20は、沖側から到来する波をはね返すときの当該波の案内方向(図2の矢印αの方向)に沿って交互に繰り返される凹凸を有する。この沖側壁面20における凹凸が交互に繰り返される領域は、水平方向若しくは略水平方向に均一な断面形状を有する。この凹凸は、沖から到来した波が沖側壁面20(上部傾斜部22)によってはね返されるときに当該沖側壁面20に沿って案内される波を崩し、これにより、沖側壁面20に対する波圧を低減する。本実施形態では、この凹凸が案内方向αにおいて沖側壁面20の全域に(即ち、沖側壁面20の案内方向αにおける下端から上端まで)設けられている。
【0031】
尚、この凹凸は、沖側壁面20の案内方向αにおいて全域に設けられなくてもよい。例えば、凹凸は、沖側壁面20の案内方向αにおいて、上部傾斜部22(即ち、沖側から見て奥行の最も深い位置26から沖側にせり出した部分の先端28まで)の全域で交互に繰り返されてもよい。この範囲(上部傾斜部22)は、種々の潮位条件及び波浪条件において波が沖側壁面20によってはね返されるときに、この波が沖側壁面20に沿って進む可能性が高い範囲である。そのため、上部傾斜部22の案内方向αにおける全域で凹凸が交互に連続して繰り返されていれば、当該壁面20に沿って案内される波が凹凸の凸部とぶつかって崩され、これにより沖側壁面20に対する波圧を効果的に低減することができる。但し、凹凸は、沖側壁面20の案内方向αにおいて、上部傾斜部22の一部に設けられていてもよい。この場合、沖側壁面20における凹凸が繰り返される領域において、波圧を低減することができる。
【0032】
具体的に、沖側壁面20の凹凸は、水平方向に延び、案内方向αに間隔をおいて平行若しくは略平行に並ぶ複数本(本実施形態では5本)の突条30の表面と、案内方向αに隣り合う突条30同士の間に位置する底面32とにより画定されている。
【0033】
突条30は、図3にも示されるように、断面形状が矩形状で案内方向αの幅寸法が一定となるように水平方向若しくは略水平方向に延びている。即ち、突条30は、水平方向若しくは略水平方向に均一な断面形状を有する。本実施形態の突条30は、沖側壁面20において水平方向の一方端から他方端まで連続している。この突条30の表面は、案内方向αに対して直交する一対の起立面34a,34bと、これら一対の起立面34a,34bの突出側の先端部同士を接続する天面36と、からなる。一対の起立面34a,34bのうち案内方向αと対向する起立面(直交面)34aは、沖側壁面20に沿って案内される波とぶつかり、この波を崩す。
【0034】
底面32は、案内方向αに隣り合う突条30,30において互いに対向する起立面34a,34bの間に位置し、案内方向αの幅寸法が一定となるように水平方向若しくは略水平方向に延びる面である。本実施形態の底面32は、案内方向αに沿って滑らかな面である。
【0035】
以下では、一つの突条30における一対の起立面34a,34b間の距離を突条幅Bと称し、底面32から天面36までの距離(詳しくは、案内方向αと直交し且つ水平方向と直交する方向の距離)を突条高さHと称し、隣り合う突条30同士の対向する起立面34a,34b間の距離を底面幅Dと称する(図3参照)。
【0036】
沖側壁面20におけるこれら突条高さH、突条幅B、底面幅Dの各値は、沖側壁面20に対する波圧の低減性能に大きく影響する。例えば、底面幅Dが狭すぎると底面部32まで波が入り込むことなく突条30の天面36に沿って波が進むためあまり崩れず、沖側壁面20に対する波圧があまり低減しない。また、突条高さHが低すぎると、案内される波があまり崩れず、沖側壁面20に対する波圧があまり低減しない。そのため、突条高さH、突条幅B、底面幅Dの各値は、当該防波構造物を設置する場所の潮位条件や波浪条件等に基づいて、適宜、設定される。
【0037】
本実施形態の沖側壁面20では、突条高さHよりも突条幅Bの方が大きく、突条高さHよりも底面幅Dの方が大きくなるように各値が設定されている。このように、本実施形態の沖側壁面20では、突条高さHよりも底面幅Dが大きくなるようにして、案内される波が底面32まで入り込み、この波が突条30の起立面34a全体と確実にぶつかるようにしている。具体的には、沖側壁面20における突条30の突条高さHが10cm、突条幅Bが40cm、底面幅Dが40cmである。尚、本実施形態の防波構造物10は、天端高さが4m、水平方向の長さが4m、沖側壁面20の沖側の先端28から奥行の最も深い位置26までの水平距離(図2のD参照)が2mである。
【0038】
このような防波構造物10は、鉄筋コンクリートによって形成されている。具体的に、防波構造物10は、以下のように製造される。
【0039】
先ず、鉄骨や金属製の棒材等が所定の形に組み上げられ骨組みが形成される。この骨組みの周囲が所定の型枠により囲まれる。そして、この型枠内にコンクリートが流し込まれ、このコンクリートが固まることで防波構造物10が形成される。この場合、前記の骨組み及びそれを囲う型枠によって沖側壁面20の凹凸形状が他の部位と一体に形成される。
【0040】
尚、防波構造物10の具体的な製造方法は、これに限定されない。例えば、図13に示される従来の防波構造物のような凹凸のない湾曲面(沖側壁面)を有する防波構造物が形成され、後から突条が形成されてもよい。具体的には、前記湾曲面において、突条が形成される部位のコンクリートがはつられる。このはつられた部位に鉄筋やアンカーボルト等が打ち込まれ、その後、突条を形成するための型枠が組まれる。この型枠内にコンクリートが流し込まれて固まることによって、沖側壁面に前記凹凸が形成される。また、凹凸のない湾曲面に、凹凸形状の部材を固着するようにしてもよい。
【0041】
以上のような防波構造物10によれば、沖側壁面20が上部に沖側にせり出す形状を有するため、沖側から当該沖側壁面20に到来した波を沖側にはね返し、これにより、越波を低減することができる。しかも、沖側壁面20によって波をはね返すときに、当該壁面20に沿って案内される波がその進行方向(案内方向α)に平行若しくは略平行に並ぶ複数本の突条30と次々にぶつかることで崩され、これにより、沖側壁面20に対する波圧を低減することができる。
【0042】
また、各突条30が沖側壁面20において水平方向の一方端から他方端まで連続して延びているため、沖側壁面20の水平方向の全域において、波圧の低減が効果的に行われる。
【0043】
また、各突条30が起立面34aをそれぞれ有することで、沖側壁面20に対する波圧の低減がより効果的に行われる。即ち、起立面34aは、沖側壁面20に沿って案内される波の進行方向αに対して直交する面であるため、この起立面34aにぶつかった波を効果的に崩すことができる。
【0044】
尚、本発明の防波構造物は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0045】
突条30の具体的な形状は、限定されない。例えば、図3に示されるように、本実施形態の突条30は矩形状の断面形状を有するが、図4(A)に示されるように、角部を円弧131にした矩形状の断面形状を有する突条30Aであってもよい。この場合、沖側壁面20に沿って案内される波がぶつかる起立面134aの面積が小さくなるが、角部が欠けることを防ぐことができる。また、図4(B)及び図4(C)に示されるように、突条30B、30Cの起立面234a,334aは、波の案内方向αと直交していなくてもよい。このように案内方向αと対向する起立面234a,334aを案内方向αに対して突出方向先端側が後方となるように傾斜させることで、突条30B,30Cに波がぶつかったときの起立面234a,334aに加わる力が低減され、突条30B,30Cが損傷し難くなる。また、沖側壁面20に案内される波がぶつかる部位に平面(起立面)がなくてもよい。即ち、図4(D)に示されるように、突条30Dにおける波がぶつかる面が湾曲していてもよい。このような形状であっても、波が沖側壁面20に沿って案内されるとこの波が各突条30Dにぶつかることで崩され、これにより沖側壁面20に対する波圧が低減される。
【0046】
本実施形態では、突条30の断面形状が矩形状であるため、案内方向αに隣り合う突条30,30間に底面32を要するが、凹凸形状によっては、底面32を要しない。即ち、案内方向αに沿って凹凸を繰り返し且つ水平方向に均一な断面形状を有していれば、例えば、図5(A)や図5(B)に示される沖側壁面20A,20Bのような形状であってもよい。具体的には、図5(A)の沖側壁面20Aのように、起立面を形成するように急激に立ち上がる部位がなく、なだらかに凹凸が繰り返される形状であってもよい。このような凹凸であっても、沖側壁面20Aに案内される波がその案内方向αにおいて凸部50Aと次々にぶつかって崩されるため、沖側壁面20Aに対する波圧を低減することができる。また、図5(B)の沖側壁面20Bのように、凸部50Bの頂き部分から次の凸部50Bに向って高さが徐々に低くなるような形状であってもよい。このような凹凸であっても、沖側壁面20Bに案内される波がその案内方向αにおいて凸部50Bと次々にぶつかることができ、これにより波が崩され沖側壁面20Bに対する波圧が低減される。特に、図5(B)に示される沖側壁面20Bのように、案内方向αに対して直交若しくは略直交する直交面(起立面34a)が案内方向αに所定間隔で並ぶような凹凸であれば、底面32がなくても本実施形態の矩形状の突条30が設けられた沖側壁面20と同様に案内される波を効果的に崩すことができ、これにより沖側壁面20Bに対する波圧を効果的に低減することができる。また、沖側壁面20Bにおいて、凸部50Bの頂(角部)が他の部位に比べ、波との衝突によって欠けやすいため、この頂(角部)を案内方向αに沿った面にしてもよい(図5(B)の破線参照)。
【0047】
沖側壁面の突条は、本実施形態のように、水平方向若しくは略水平方向に真っ直ぐでなくてもよい。例えば、図6(A)に示される沖側壁面20Cのように、突条30Eが波打つように曲がっていてもよい。
【0048】
また、図6(B)に示されるように、沖側壁面20Dの突条30Fは、水平方向に対して傾斜していてもよい。この場合、各突条30Fの水平方向に対する傾斜角が45°未満であれば、沖側壁面20Dに案内されてはね返される波を効果的に崩すことができる。
【0049】
沖側壁面の凸部は、本実施形態のように水平方向に連続する突条30でなくてもよい。例えば、水平方向に間欠な突条であってもよく、図7(A)及び図7(B)に示されるような、水平方向若しくは略水平方向に互いに間隔をおいて並ぶ複数の突起部50であってもよい。このような形状であっても、沖側壁面20E,20Fに案内される波がこれら突起部50とぶつかることで当該波を崩すことができる。
【0050】
沖側壁面の水平方向において案内方向αに凹凸が繰り返される領域は、本実施形態のように水平方向の全域に(即ち、水平方向の一方端から他方端まで)形成されなくてもよく、沖側壁面の下端から当該壁面に沿って上端側を見たときに(図7(A)において矢印βの方向)、沖側壁面の水平方向における50%以上の範囲に凹凸が形成されていればよい。このような範囲に凹凸が形成されていれば、沖側壁面全体に対する波圧を効果的に低減することが可能となる。
【0051】
また、沖側壁面は、上部傾斜部及び下部傾斜部の両方を備えなくてもよく、図8に示されるように、沖側壁面20Gの上部側に沖側にせり出す部位(上部傾斜部22)が設けられていれば、沖から到来した波をはね返して越波を効果的に防ぐことができる。この場合、凹凸が案内方向αにおいて沖側壁面20Gの全域に設けられてもよく、図8に示されるように、案内方向αにおいて上部傾斜部22の全域に設けられてもよい。尚、下部傾斜部のない沖側壁面20Gにおいても、少なくとも上部傾斜部22の一部に凹凸が設けられていれば、当該部位において沖側壁面20Gに対する波圧の低減を図ることができる。
【実施例1】
【0052】
上記実施形態の防波構造物における沖側壁面の凹凸による波圧の低減効果を確認するために、縮尺1/20の防波構造物モデル(沖側壁面の高さ14cm、モデル全高16cm)を作成し、2次元造波水槽を用いた水理実験を行った。尚、以下の実験で防波構造物の正面側(沖側)の海底の勾配は1/10、防波構造物モデルの設置水深は11cmとした。
<実験1>
突条幅Bを20mm(現地換算:40cm)とし、突条高さHを1.5mm、3mm、5mm、7.5mm、10mm、12.5mm(現地換算:3cm、6cm、10cm、15cm、20cm、25cm)とし、突条幅Bに対する底面幅Dの比、D/Bを1とした各種モデルを用意し、波圧測定実験を行った。小型波圧計は、防波構造物モデルにおける沖側壁面の案内方向の中央部に取り付けた。尚、基準モデルとして凹凸なしの滑らかな湾曲面からなる沖側壁面を有する防波構造物モデルでも実験した。
【0053】
これらの各防波構造物モデルに波高10cm、周期1秒(現地換算:波高2m、周期4.47秒)の規則波を作用させて波圧計測し、防波構造物の沖側壁面の平均波圧を算出した。
【0054】
その結果を以下の表1及び図9及び図10に示す。
【0055】
【表1】
図9に示すグラフは、横軸を現地換算した突条高さHとし、縦軸を波圧低減率としている。この波圧低減率は、凹凸を有する沖側壁面における波圧が凹凸なしの沖側壁面における波圧と同じ場合を1としている。図9に示されるように、突条高さHが10〜15cmのときに波圧低減率が最も小さくなり、突条高さHがそれよりも低くなっても高くなっても波圧低減率が増加する。この結果から、波圧低減率が0.8以下の効果的な範囲(有意な範囲)は、突条高さHが5〜20cmの範囲であることがわかった。
【0056】
また、図10に示すグラフは、横軸を突条高さHに対する突条幅Bの比、B/Hとし、縦軸を波圧低減率として表1の実験結果を整理したものである。この結果から、波圧低減率が0.8以下の効果的な範囲(有意な範囲)は、B/Hが2〜8の範囲であることがわかった。
<実験2>
次に、突条幅Bを20mm(現地換算:40cm)、突条高さHを5mm(現地換算:10cm)とし、底面幅Dを10mm、15mm、20mm、25mm、30mm(現地換算:20cm、30cm、40cm、50cm、60cm)とした各種モデルを用意し、波圧測定実験を行った。小型波圧計は、実験1と同様に、防波構造物モデルにおける沖側壁面の案内方向の中央部に取り付けた。また、実験1と同様に、基準モデルとして凹凸なしの滑らかな湾曲面からなる沖側壁面の防波構造物モデルでも実験した。
【0057】
これらのモデルに波高10cm、周期1秒(現地換算:波高2m、周期4.47秒)の規則波を作用させて波圧計測し、防波構造物の沖側壁面の平均波圧を算出した。
【0058】
その結果を以下の表2及び図11に示す。
【0059】
【表2】
図11に示すグラフは、横軸を突条幅Bに対する底面幅Dの比、D/Bとし、縦軸を波圧低減率としている。この波圧低減率は、凹凸を有する沖側壁面における波圧が凹凸なしの沖側壁面における波圧と同じ場合を1としている。図11に示されるように、D/Bが1のときに波圧低減率が最も小さくなり、D/Bがそれよりも小さくなっても大きくなっても波圧低減率が増加する。この結果から、波圧低減率が0.8以下の効果的な範囲(有意な範囲)はD/Bが0.7〜1.5の範囲であることがわかった。
【符号の説明】
【0060】
10 防波構造物
20 沖側壁面
22 上部傾斜部(沖側壁面の案内方向において、沖側から見て奥行の最も深いところから沖側にせり出した部分)
24 下部傾斜部
30 突条
32 底面
B 突条幅
D 底面幅
H 突条高さ
S 静水面
W 波
α はね返す波の案内方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沖に面して立設される防波構造物であって、
上部に沖側から到来する波をはね返すように沖側にせり出す形状を有する沖側壁面を備え、
前記沖側壁面は、前記波をはね返すときの当該波の案内方向に沿って交互に繰り返される凹凸を有し、この凹凸は、前記沖側壁面の前記案内方向において、沖側から見て奥行の最も深いところから前記沖側にせり出した部分の少なくとも一部に設けられることを特徴とする防波構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の防波構造物において、
前記凹凸は、前記沖側壁面の前記案内方向において、沖側から見て奥行の最も深いところから前記沖側にせり出した部分の全域で交互に繰り返されることを特徴とする防波構造物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防波構造物において、
前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域は、前記沖側壁面の下端から当該壁面に沿って上端側を見たときに当該沖側壁面の水平方向における50%以上の範囲に存在することを特徴とする防波構造物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の防波構造物において、
前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域は、水平方向若しくは略水平方向に均一な断面形状を有することを特徴とする防波構造物。
【請求項5】
請求項4に記載の防波構造物において、
前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域では、前記沖側壁面に沿って案内される波の進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面が前記凹凸の一部に形成されていることを特徴とする防波構造物。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防波構造物において、
前記沖側壁面の凹凸は、水平方向若しくは略水平方向に延び、前記案内方向に間隔をおいて平行若しくは略平行に並ぶ複数本の突条の表面と、前記案内方向に隣り合う突条同士の間に位置する底面とにより画定されることを特徴とする防波構造物。
【請求項7】
請求項6に記載の防波構造物において、
前記突条は、前記沖側壁面に沿って案内される波の進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面を有することを特徴とする防波構造物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の防波構造物において、
前記案内方向と直交し且つ水平方向と直交する方向における前記突条の高さ寸法よりも、前記案内方向における前記底面の幅寸法が大きいことを特徴とする防波構造物。
【請求項1】
沖に面して立設される防波構造物であって、
上部に沖側から到来する波をはね返すように沖側にせり出す形状を有する沖側壁面を備え、
前記沖側壁面は、前記波をはね返すときの当該波の案内方向に沿って交互に繰り返される凹凸を有し、この凹凸は、前記沖側壁面の前記案内方向において、沖側から見て奥行の最も深いところから前記沖側にせり出した部分の少なくとも一部に設けられることを特徴とする防波構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の防波構造物において、
前記凹凸は、前記沖側壁面の前記案内方向において、沖側から見て奥行の最も深いところから前記沖側にせり出した部分の全域で交互に繰り返されることを特徴とする防波構造物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防波構造物において、
前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域は、前記沖側壁面の下端から当該壁面に沿って上端側を見たときに当該沖側壁面の水平方向における50%以上の範囲に存在することを特徴とする防波構造物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の防波構造物において、
前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域は、水平方向若しくは略水平方向に均一な断面形状を有することを特徴とする防波構造物。
【請求項5】
請求項4に記載の防波構造物において、
前記沖側壁面における凹凸が交互に繰り返される領域では、前記沖側壁面に沿って案内される波の進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面が前記凹凸の一部に形成されていることを特徴とする防波構造物。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防波構造物において、
前記沖側壁面の凹凸は、水平方向若しくは略水平方向に延び、前記案内方向に間隔をおいて平行若しくは略平行に並ぶ複数本の突条の表面と、前記案内方向に隣り合う突条同士の間に位置する底面とにより画定されることを特徴とする防波構造物。
【請求項7】
請求項6に記載の防波構造物において、
前記突条は、前記沖側壁面に沿って案内される波の進行方向に対して直交若しくは略直交する直交面を有することを特徴とする防波構造物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の防波構造物において、
前記案内方向と直交し且つ水平方向と直交する方向における前記突条の高さ寸法よりも、前記案内方向における前記底面の幅寸法が大きいことを特徴とする防波構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−214238(P2011−214238A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80910(P2010−80910)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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