説明

防滑性床材

【課題】 本発明は紫外線硬化型塗料の皮膜を表面に有する床材であって、初期・長期の耐汚染性及び初期・長期の防滑性を兼ね備え、靴底の摩耗も少なく、清掃性も損なわない床材を提供することを目的とする。
【解決手段】
係る課題を解決するために本発明の講じた手段は、熱可塑性樹脂製シート基材の上に、紫外線硬化型塗料からなる表面保護膜を設け、表面に丸みを帯びた凹凸形状を有し凹部と凸部の差が50μm以上である防滑性床材とすることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物、バス、電車等に施工される床材に関するもので、特に屋外の廊下や階段、厨房、トイレ、バス、電車などの水濡れしやすい場所に適した防滑性床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、床材に凹凸形状を設けて防滑性を付与することが行なわれており、耐汚染性を向上させるために紫外線硬化型塗料を塗布する方法も併用されていた(例えば、特許文献1参照)。この方法では、乾燥時の防滑性能は有しているものの、水濡れ時の防滑性は十分にあるとは言えなかった。また、凹凸の角部分や、立ち上がり部分は塗料が薄くなるため、摩耗により紫外線硬化型塗料がすぐに擦り減ってしまい、耐汚染性の継続が難しいという問題があった。これらのことを解決するためには、紫外線硬化型塗料の皮膜を厚くする必要があり、紫外線硬化型塗料は高価なため、コスト高につながってしまう。
また、凹凸の凹部に汚れが溜まりやすく、清掃しにくいという問題もあった。
【0003】
他に、防滑性を付与するために粒子を用いる方法があるが、これもまた、立ち上がり部分や粒子の頂点部分で紫外線硬化型塗料の皮膜が薄くなりやすく、紫外線硬化型塗料が摩耗し、長期の耐汚染性に問題があった(例えば、特許文献2参照)。さらに、粒子は鋭角形状のため、靴底が削れてゴミとなり、汚染の原因となっていた。このような現状から、初期・長期の防滑性及び初期・長期の耐汚染性を兼ね備えた床材の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−122604号公報
【特許文献2】特開昭60−052681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は紫外線硬化型塗料の皮膜を表面に有する床材であって、初期・長期の耐汚染性及び初期・長期の防滑性を兼ね備え、靴底の摩耗も少なく、清掃性も損なわない床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
係る課題を解決するために本発明の講じた手段は、 熱可塑性樹脂製シート基材の上に、紫外線硬化型塗料からなる表面保護膜を設け、表面に丸みを帯びた凹凸形状を有し凹部と凸部の差が50μm以上である防滑性床材とすることであり(請求項1)、この際、紫外線硬化型塗料が平均粒子径100〜200μmの球状粒子を含有し、該球状粒子により上記表面に丸みを帯びた凹凸形状を有し凹部と凸部の差が50μm以上である防滑性床材とすることであり(請求項2)、熱可塑性樹脂製シート基材にエンボス加工を施し、そのエンボス加工面に紫外線硬化型塗料を塗布した後、紫外線を照射しながらエンボス加工温度以上に加熱することにより、紫外線硬化型塗料を硬化すると共に、上記表面に丸みを帯びた凹凸形状を有し凹部と凸部の差が50μm以上である防滑性床材とすることであり(請求項3)、請求項3に記載の防滑性床材の紫外線硬化型塗料が平均粒子径100〜200μmの球状粒子を含有し、請求項2と請求項3を組合わせたかたちの防滑性床材とすることであり(請求項4)、さらに紫外線硬化型塗料が平均粒子径5〜20μmの微細粒子を含有する防滑性床材とすることである(請求項5)。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防滑性床材は、表面に丸みを帯びた凹凸形状を有し凹部と凸部の差が50μm以上である故、初期・長期の防滑性及び初期・長期の耐汚染性が得られ、靴底も摩耗しにくく清掃性も損なわない。さらに、紫外線硬化型塗料に微細粒子を混合することにより上記凹部と凸部の差が50μm以上であり且つ丸みを帯びた凹凸の凸部上面にも微細粒子が存在するため、防滑性床材の表面に微細な凹凸構造ができ、水濡れ時も防滑性が効果的に発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の具体的な実施態様について説明する。
本発明に使用する熱可塑性樹脂製シート基材の熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−アクリレート共重合体,ポリエチレン系,ポリプロピレン系,アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、天然ゴム,ネオプレン,イソプレン,ポリブタジエン,NBR,SBR等のゴム、ポリオレフィン系,スチレン系,ポリエステル系,ポリウレタン系等の熱可塑性エラストマーなどに各種添加剤を混合し、カレンダー加工や押出加工等でシート状に加工したものが挙げられる。
【0009】
これらの熱可塑性樹脂製シート基材は、単層でも、2層以上の複数層でも良く、その中に発泡層を設けても良い。また、裏面及び/又は中間に寸法安定性、施工時の接着性の向上を目的として編物、織物、不織布、紙等を積層することも可能である。また、熱可塑性樹脂製シート基材表面に印刷フイルムをラミネートして意匠付与しても良い。厚みは通常の床材と同様でよく、1.0〜5.0mm程度が一般的である。
【0010】
本発明に使用する紫外線硬化型塗料に使用するベース樹脂としては、ラジカル重合型の不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の一般的なオリゴマーを用いたものが挙げられ、中でも、強靭性、耐薬品性、密着性の良いウレタンアクリレートが好ましい。これらの2種類以上の混合物でもよく、また、粘度調整や塗料の皮膜硬さ調整のために単官能、2官能、多官能アクリルモノマーを添加してもよい。
【0011】
本発明でいう凹部と凸部の差が50μm以上であり且つ丸みを帯びた凹凸形状とは、凸部と凹部の差が50μm以上であって、凸部R(曲率半径)が50μm以上である凹凸形状のことをいい、概ね凸部に角のない凹凸のことである。
凸部と凹部の差が50μm未満の凹凸については靴底が削れる影響は少ないためその凸部に丸みを帯びていなくても差し支えない。
【0012】
以下に、紫外線硬化型塗料に球状粒子を混合することにより、凹部と凸部の差が50μm以上であり且つ表面に丸みを帯びた凹凸を形成する方法(球状粒子法)について説明する。
本発明の球状粒子は、けい砂、カーボランダム、アランダム、セラミックス、シリカ、ガラス等の無機質粒子、アクリル、スチレン等の架橋ポリマー粒子などが使用でき、これらは単独で使用してもよく2種類以上を併用しても良い。
【0013】
また、これらの球状粒子は、着色したもの、芳香性、抗菌性などの機能を付与したものを使用しても良い。球状粒子の形状は清掃性、加工性の観点から真球が最も好ましいが、製造上、コストの面から、若干偏平していても良く、長径と短径の比は長径/短径=1/1〜5/1の範囲がよい。これらの球状粒子の長径は100〜200μmの範囲が好ましく、より好ましくは100〜150μmである。この100〜200μmの範囲内であれば、防滑性床材表面に形成される凹部と凸部の差が50μm以上となり防滑性に優れ、粒子の剥落も少なくなる。これらの球状粒子の添加部数は紫外線硬化型塗料100重量部に対して10〜50重量部の範囲が好ましく、より好ましくは20〜40重量部である。
【0014】
これら球状粒子を混合した紫外線硬化型塗料の塗布量は30〜150g/m2の範囲が好ましく、混合する球状粒子の粒径が100〜150μmの場合は、紫外線硬化型塗料の塗布量は50〜100g/m2が特に好ましい。
【0015】
これら球状粒子を混合した紫外線硬化型塗料はスポンジロールコーター、スプレーなどの塗装方法により熱可塑性樹脂製シート基材に塗布することができ、続いて紫外線を照射し硬化させる。球状粒子の凸部上面に紫外線硬化塗料の皮膜が形成され、防滑性・耐汚染性を付与することができる。上記球状粒子凸部上面の紫外線硬化型塗料皮膜の膜厚は5〜50μmの範囲がよく、より好ましくは15〜30μmである。上記膜厚を確保するために、紫外線硬化塗料の粘度は1〜10mPa・sの範囲が好ましい。
【0016】
熱可塑性樹脂製シート基材にエンボス加工を施し、そのエンボス加工面に紫外線硬化型塗料を塗布し、紫外線を照射しながらエンボス加工温度以上に加熱することにより、紫外線硬化型塗料を硬化すると共に、凹部と凸部の差が50μm以上であり且つ丸みを帯びた凹凸を形成する方法(逆絞法)を説明する。
先ず、130〜180℃の温度でメカニカルエンボス加工法などにより、熱可塑性樹脂製シート基材に凹凸をつける。エンボス加工の深さは0.05〜0.8mmが好ましく、より好ましくは0.4〜0.6mmである。この0.05〜0.8mmの範囲内であれば適度な防滑性、耐汚染性(清掃性)が得られ、且つ、引き続き行なわれる紫外線硬化型塗料硬化時のヒビ割れが発生しにくくなる。前記凹部と凸部の差が50μm以上であり且つ丸みを帯びた凹凸のデザインは特に制約はないが、方向性の無い物、靴底に常に10個以上の凸部が接するものが防滑性の観点から望ましい。
【0017】
次にエンボス加工された熱可塑性樹脂製シート基材にスポンジロールコーター、スプレー等の塗工方法により紫外線硬化型塗料を塗布する。塗布の厚みは20〜150μmが好ましく、摩耗性、コストの観点から50〜100μmの範囲がより好ましい。
【0018】
紫外線硬化型塗料を塗布した熱可塑性樹脂製シート基材をエンボス加工で加えた温度以上、望ましくはエンボス加工時の温度より20℃以上高めに加熱しながら紫外線を照射し塗料を硬化するとともに熱可塑性樹脂製シート基材自身がエンボス加工前の平らな状態に戻り、エンボス凹部に塗布された紫外線硬化型樹脂が盛り上がり、防滑性・耐汚染性を付与することができる。紫外線硬化型塗料皮膜の膜厚を確保するために、紫外線硬化塗料の粘度は1〜10mPa・sの範囲が好ましい。上記した球状粒子法と逆絞法を併用することも可能であり、これら2法を組合わせることで防滑性はさらに向上する。
【0019】
また、防滑性向上のために5〜20μmの微細粒子を紫外線硬化型塗料に添加することが好ましい。この微細粒子はけい砂、カーボランダム、アランダム、セラミックス、シリカ、ガラス、粉末架橋ポリマー、籾殻、胡桃粉などが使用でき、これらは単独で使用してもよく2種類以上を併用しても良い。また、これらの微細粒子は、着色したもの、芳香性、抗菌性などの機能を付与したものを使用しても良い。
【0020】
この微細粒子の粒径は5〜20μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜20μmである。この5〜20μmの範囲内であれば、前記の球状粒子法、逆絞法により形成した凹凸の凸部上面にも微細粒子が存在することになり、防滑性床材表面に微細な凹凸ができて、水濡れ時も防滑性が効果的に発揮でき、凹凸への外観の影響(意匠性の低下)が少ない。微細粒子の添加量は紫外線硬化型塗料100重量部に対して、1〜50重量部の範囲が好ましい。また、微細粒子の添加量と材質を選択することにより、艶出し或いは艶消しの紫外線硬化型塗料にすることができる。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
<実施例1>
表1に示す配合組成物を180℃でカレンダー法にて成形し、2.0mmの塩化ビニル樹脂製シート基材を作製した。この基材に表1に示す紫外線硬化型塗料をスポンジコーターにて70g/m塗布し硬化させて防滑性床材を得た。
【0023】
<実施例2>
表1に示す配合組成物を170℃でカレンダー法にて成形し、2.0mmの塩化ビニル樹脂製シート基材を得た。そのシートに140℃にて深さ0.4mmの点状パターンのエンボスを施し、表1に示す紫外線硬化型塗料をスプレーにより80g/m塗布し、180℃に加熱しながら紫外線を照射し紫外線硬化型塗料を硬化させて防滑性床材を得た。
【0024】
<実施例3>
表1に示す配合組成物を160℃でカレンダー法にて成形し、2.0mmのエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂製シート基材を得た。この基材に表1に示す紫外線硬化型塗料をスポンジコーターにて70g/m塗布し硬化させて防滑性床材を得た。
【0025】
<実施例4>
紫外線硬化型塗料にガラスパウダー(不定形、平均粒径:10μm)を添加しないこと以外は実施例1と同様に操作し防滑性床材を得た。
【0026】
<比較例1>
紫外線硬化型塗料に、ガラスビーズ(球状、平均粒径:100μm)とガラスパウダー(不定形、平均粒径:10μm)を添加せず、替わりにアルミナ(不定形、平均粒径:100μm)を添加すること以外は実施例1と同様に操作し防滑性床材を得た。
【0027】
<比較例2>
表1に示す配合組成物を170℃でカレンダー法にて成形し、2.0mmの塩化ビニル樹脂製シート基材を得、その表面にコイン状の絞付けを行い比較例2とした。
【0028】
これら実施例1〜4と比較例1〜2について、防滑性、靴底の摩耗性、清掃性に関して以下の評価方法及び評価基準により評価を行った。
<評価方法及び評価基準>
【0029】
[防滑性]
JIS A 5705に記載されている「O−Y PSM試験機」を使用し、乾燥時と水濡れ時の防滑性を求めた。
防滑性はC.S.R値で示され、大きいほど滑らないとされる。また、乾燥時と水濡れ時のC.S.R値の差が小さいものほど、水濡れ時には安全であると言われている。
(乾燥時) ○:C.S.R値が0.7以上、
×:C.S.R値が0.7より小さい
(水濡れ時)○:C.S.R値が0.6以上
△:C.S.R値が0.6〜0.5
×:C.S.R値が0.5より小さい
【0030】
[靴底の摩耗性・汚染性・清掃性]
実施例、比較例で得られた防滑性床材の上に、靴底を模したゴム片を載置し、このゴム片に1kgの垂直荷重をかけて、100mmの幅で水平に50往復させる。この時のゴム片の減量を測定し靴底の摩耗性とした。また、防滑性床材の汚染性を目視で判定し、このゴムの削りカスをブラシで掃いて、清掃性を評価した。
(靴底の摩耗性) ○:50mg以下、
△:50〜200mg
×:200mgより大きい
(汚染性) ○:汚れがない
△:汚れが目立たない
×:明らかな汚れがある
(清掃性) ○:ブラシで簡単に掃ける
△:ブラシで掃ける
×:ブラシで落ちない
【0031】
【表1】

単位:重量部
K法:球状粒子法 G法:逆絞法
【0032】
表1から明らかなように、実施例1〜4は評価項目の全てで問題なく、比較例1の丸みを帯びていないアルミナによる凹凸では、靴底の摩耗性に劣り、比較例2のエンボス加工を施しただけの防滑床材では汚染性、清掃性に劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、初期・長期の防滑性及び初期・長期の耐汚染性の優れた防滑性床材が得られ、靴底も摩耗しにくく清掃性も損なわないため、防滑性及び耐汚染性を必要とする分野で広く使用することができ、さらに、紫外線硬化型塗料に微細粒子を混合することにより、水濡れ時も防滑性が効果的に発揮できるため、屋外の廊下や階段、厨房、トイレ、バス、電車などの水濡れしやすい場所に適した防滑性床材である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製シート基材の上に、紫外線硬化型塗料からなる表面保護膜を設け、表面に丸みを帯びた凹凸形状を有し凹部と凸部の差が50μm以上であることを特徴とする防滑性床材。
【請求項2】
紫外線硬化型塗料が平均粒子径100〜200μmの球状粒子を含有し、該球状粒子により上記表面に丸みを帯びた凹凸形状を有し凹部と凸部の差が50μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の防滑性床材。
【請求項3】
熱可塑性樹脂製シート基材にエンボス加工を施し、そのエンボス加工面に紫外線硬化型塗料を塗布した後、紫外線を照射しながらエンボス加工温度以上に加熱することにより、紫外線硬化型塗料を硬化すると共に、上記表面に丸みを帯びた凹凸形状を有し凹部と凸部の差が50μm以上であることを特徴とする請求項1に記載防滑性床材。
【請求項4】
紫外線硬化型塗料が平均粒子径100〜200μmの球状粒子を含有することを特徴とする請求項3に記載の防滑性床材。
【請求項5】
紫外線硬化型塗料が平均粒子径5〜20μmの微細粒子を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の防滑性床材。




































【公開番号】特開2006−316578(P2006−316578A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142740(P2005−142740)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】