説明

防火システムおよび防火システムの制御方法

【課題】ハロンベースの防火システムに代わる、航空用途に適した防火システムを提供する。
【解決手段】防火システム用のプログラム可能な制御装置(126)は、書き換え可能なメモリモジュール(260)およびプロセッサモジュール(262)、並びに複数のセンサ入力部(210,212,214,216,218,222,272)および制御信号出力部(230,232,236,238,240,242,250,274)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化物防火システムに取って代わる防火システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防火システムは、航空機、ビルおよび収容領域を有する他の構造物で使用されることが多い。防火システムは、一般に、ハロンなどのハロゲン化物防火剤を使用する。しかし、ハロンは、大気のオゾン層破壊の一因であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ビルや他の構造物では、ハロンベースの防火システムを他のものに交換している。航空用途でこのようなシステムを他のものに交換することは、非航空用途に比べて空間および重量の制限がより大きな問題となるために困難なことが多い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の不活性供給ガスを提供するように設けられた高圧不活性ガス供給源と、第2の不活性供給ガスを提供するように設けられた低圧不活性ガス供給源と、を有する防火システムが開示されている。高圧不活性ガス供給源は、低圧不活性ガス供給源よりも高圧である。防火システムは、さらに、高圧および低圧の不活性ガス供給源と連結されて第1および第2の不活性供給ガスを分配する分配ネットワークを含む。防火システムは、さらに、少なくとも分配ネットワーク、低圧不活性ガス供給源および高圧不活性ガス供給源に接続されたプログラム可能な制御装置を含む。プログラム可能な制御装置は、高圧および低圧の不活性ガス供給源を作動させる命令を格納できる書き換え可能なメモリ要素を少なくとも有する。
【0005】
また、防火システムのためのプログラム可能な制御装置も開示されている。プログラム可能な制御装置は、センサ信号を受信可能な複数の入力部、防火システム要素に命令を送信可能な複数の出力部、および命令を格納するコンピュータ可読媒体を有する。プログラム可能な制御装置は、火災警報信号入力を監視し、火災警報信号が検知されたときに空気管理システムを停止することによって危険区域を隔離し、高圧不活性ガス供給源から危険区域に不活性ガスを注入し、低圧不活性ガス供給源を作動して危険区域に不活性ガスの連続的な流れを導く。
【0006】
さらに、防火システムを制御する方法が開示されている。この方法は、プログラム可能な制御装置を使用して火災警報信号入力を監視し、火災警報信号が検知されたときにプログラム可能な制御装置から第1の信号を出力して危険区域を隔離し、プログラム可能な制御装置から第2の信号を出力して高圧不活性ガス供給源から分配システムに不活性ガスを放出し、プログラム可能な制御装置から第3の信号を出力して低圧不活性ガス供給源から分配システムに不活性ガスを連続的に放出することを含む。
【0007】
本発明の上述およびその他の特徴は、以下の実施形態および図面によって最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】例示的な防火システムの説明図である。
【図2】防火システムとともに使用されるプログラム可能な制御装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、火災のおそれを抑制するために使用可能な例示的な防火システム10の選択された部分を示している。防火システム10は、(概略的に示した)航空機12で使用可能である。例示的な防火システム10は、他の種類の構造物でも使用可能である。
【0010】
この例では、防火システム10は、閉鎖空間14a,14bで起こりうる火災のおそれを抑制するために航空機12に設置されている。閉鎖空間14a,14bは、貨物室、電子機器室、車輪収納室または防火が望ましい他の閉鎖空間である。閉鎖空間は、アクセスドア25も含みうる。アクセスドア25は、アクセスドア25の開閉状態を検知可能なセンサをそれぞれ含む。防火システム10は、第1の不活性供給ガス18を提供する高圧不活性ガス供給源16と、第2の不活性供給ガス22を提供する低圧不活性ガス供給源20と、を含む。高圧不活性ガス供給源16は、この例では、低圧不活性ガス供給源20からの第2の不活性供給ガス22よりも高い質量流量で第1の不活性供給ガス18を提供する。閉鎖空間14a,14bは、さらに、通気孔23のネットワークによってそれぞれ空気管理システム21に接続されている。
【0011】
高圧不活性ガス供給源16および低圧不活性ガス供給源20は、第1および第2の不活性供給ガス18,22を分配する分配ネットワーク24に連結されている。この例では、第1および第2の不活性供給ガス18,22は、どこで火災のおそれが検知されたかによって閉鎖空間14a、閉鎖空間14b、またはこれらの両方に分配される。航空機12は、他の閉鎖空間を含んでもよく、第1および第2の不活性供給ガス18,22をこれらの閉鎖空間のいくつかまたは全てに分配するように、これらの閉鎖空間も分配ネットワーク24に連結される。
【0012】
防火システム10は、さらに、第1の不活性供給ガス18および第2の不活性供給ガス22が分配ネットワーク24を通してそれぞれどのように分配されるかを制御するように、少なくとも分配ネットワーク24、高圧不活性ガス供給源16および低圧不活性ガス供給源20と動作可能に接続された制御装置26を含む。制御装置26は、さらに、空気管理システム21および換気ネットワーク23に動作可能に接続されてもよい。制御装置26は、図2に示すようにプロセッサモジュールとメモリモジュールとを含む。例示的な制御装置26は、第1の不活性供給ガス18および/または第2の不活性供給ガス22が閉鎖空間14a,14bに分配されるか否か、そしてどのような質量および質量流量で分配されるかを制御する。
【0013】
防火システム10の制御装置26は、主制御装置(図示省略)、航空機12の複数の分散制御装置(図示省略)、低圧不活性ガス供給源20の制御装置62、機上のフライトコンピュータ(図示省略)などの他の機上制御装置や警報システム27と通信している。他の制御装置や警報システム27は、閉鎖空間14a,14bの火災を検知して検知した火災のおそれに応じて火災信号を発する火災検知システムを含む航空機12の他のシステムと通信していてもよい。他の例では、警報システム27は、航空機12の閉鎖空間14a,14bの火災のおそれを検知する専用のセンサを含む。
【0014】
一例では、制御装置26は、警報システム27からの火災信号に応じて、閉鎖空間14aにまず第1の不活性供給ガス18を放出する。第1の不活性供給ガス18は、閉鎖空間14aの酸素濃度を12%などの所定の閾値より下に減少させる。酸素濃度が所定の閾値より下がると、制御装置26は、酸素濃度が所定の閾値より下に容易に保たれるように、閉鎖空間14aに第2の不活性供給ガス22を放出する。
【0015】
閉鎖空間14a,14bは、さらに、対応する閉鎖空間14a,14bの大気組成の酸素濃度レベルを検知する少なくとも1つの酸素センサ36をそれぞれ含むことができる。酸素センサ36は、制御装置26と通信しており、酸素濃度を示す信号をフィードバックとして制御装置26に送信する。低圧不活性ガス供給源20は、窒素富化空気の酸素濃度を示すフィードバック信号を制御装置26に提供する1つまたは複数の酸素センサ(図示省略)も含みうる。閉鎖空間14a,14bは、制御装置26にフィードバック信号を提供する温度センサ(図示省略)、圧力センサ(図示省略)または煙感知器(図示省略)を含んでもよい。これらの機能にそれぞれ対応するセンサは、酸素センサ36のセンサクラスタに含むこともできる。
【0016】
この例では、所定量の第1の不活性供給ガス18は、12%の閾値よりも酸素濃度を下げ、制御装置26は、続いて低圧不活性ガス供給源20から第2の不活性供給ガス22を放出する。制御装置26は、第2の不活性供給ガス22を放出すると同時に、第1の不活性供給ガス18の分配を減少させるか、あるいは完全に停止する。第2の不活性供給ガス22は、制御装置26により放出されない場合には燃料タンクに流れる。放出されると、制御装置26は、火災のおそれに応じて分配ネットワーク24内の流れを閉鎖空間14aに分流する。
【0017】
例示的な低圧不活性ガス供給源20は、窒素富化空気などの不活性ガスの流れを航空機12に提供する機上の不活性ガス発生装置(OBIGGS)である。窒素富化空気は、大気よりも高い窒素濃度を有する。供給される窒素富化空気は、第2の不活性供給ガス22として使用可能である。例えば、低圧不活性ガス供給源20は、米国特許第7273507号または米国特許第7509968号に開示された装置と同様のものとすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
第2の不活性供給ガス22は、加圧された第1の不活性供給ガス18よりも低圧であり、第1の不活性供給ガス18よりも低い質量流量で供給される。より低い質量流量は、酸素濃度を12%の閾値より低く保つことを意図したものである。つまり、第1の不活性供給ガス18は、酸素濃度を急速に低下させ、第2の不活性供給ガスは、酸素濃度を12%より下に保つ。このようにして、防火システム10は、低圧不活性ガス供給源20の継続的に供給可能な不活性ガスを使用することで、高圧不活性ガス供給源16の限りのある高圧不活性ガスの量を節約する。
【0019】
フライトプロファイルのある時点で、第2の不活性供給ガス22の供給中に閉鎖空間14a内の酸素濃度が所定の閾値を超えた場合には、制御装置26は第2の不活性供給ガス22の制御装置62と通信し、供給される窒素富化空気によって要求される不活性雰囲気が希釈されることがないように供給量を調整するとともに、酸素濃度を閾値より下に維持するために続いて追加の第1の不活性供給ガス18を放出することもできる。いくつかの例では、追加の第1の不活性供給ガス18の放出は、酸素濃度が所定の閾値に接近し始めるとき、または酸素濃度の増加率が増加率閾値を超えたときに開始される。
【0020】
他の例では、閉鎖空間14aの所定の閾値は、13%の酸素濃度レベルよりも低い。閾値は、11.5%〜12%などの範囲として示すこともできる。閾値を13%より下に設定することの根拠は、貨物室内の乗客貨物に含まれうるエーロゾル物質の引火が、12%より低い酸素濃度では制限される(場合によっては防止される)ことである。他の例では、閾値は、海面気圧で地上に待機している航空機12の空の貨物室における第1の不活性供給ガス18の常温放出(例えば、火災でない場合)に基づいて定められる。
【0021】
この例では、高圧不活性ガス供給源16は、加圧された不活性ガス供給源である。高圧不活性ガス供給源16は、複数の貯蔵タンク28a−28dを含む。4つの貯蔵タンク28a−28dが示されているが、他の実施例では追加の貯蔵タンクまたはより少ない貯蔵タンクが使用可能である。各々の貯蔵タンク28a−28dは、窒素、ヘリウム、アルゴンまたはこれらの組合せなどの加圧された不活性ガスを保持する。不活性ガスは、二酸化炭素などの微量の他のガスも含みうる。
【0022】
加圧された不活性ガス供給源16は、貯蔵タンク28a−28dと分配ネットワーク24の間に連結されたマニホルド42を含む。マニホルド42は、貯蔵タンク28a−28dから加圧された不活性ガスを受け入れるとともに、分配ネットワーク24への第1の不活性供給ガス18として流量調整弁を通して調整された流量を供給する。流量調整弁は、全開状態と全閉状態とを有する。流量調整弁は、流量を変更するために全開状態と全閉状態との間の中間状態も有しうる。マニホルド42は、制御装置26に接続されており、これにより、制御装置26による貯蔵タンク28a−28dの制御が容易になっている。
【0023】
各々の貯蔵タンク28a−28dは、制御装置26と通信するバルブ29も含みうる。バルブ29は、対応する貯蔵タンク28a−28dからマニホルド42に加圧ガスの流れを放出する。選択的に、バルブ29は、対応する貯蔵タンク28a−28d内のガス圧力および温度を測定する圧力変換器および温度変換器を含む。バルブ29は、圧力および温度をフィードバックとして制御装置に提供する。圧力フィードバック、温度フィードバックまたはこれらの両方が、貯蔵タンク28a−28dの状態(例えば、準備状態の予想)を監視し、どの貯蔵タンク28a−28dを開放すべきかを決定し、開放のタイミングを決定し、放出量を決定し、または開放が禁止された貯蔵タンク28a−28dを検知するために使用可能である。
【0024】
例示的な分配ネットワーク24は、フローバルブ31も含む。各々のフローバルブ31は、制御装置26と通信しており、制御装置により開閉可能である。フローバルブ31は、周知の種類のフローバルブ31であり、閉鎖空間14a,14bへの所望の流量特性に基づいて選択される。分配ネットワークを含む防火システムのさらに他の例は、2010年5月22日出願の係属中の米国特許出願第12/470817号、名称「防火システムおよび方法」に記載されている。
【0025】
この例では、制御装置26は、第1の不活性供給ガス18および第2の不活性供給ガス22の分配を制御するために、選択的にフローバルブ31の開閉を指令する。例えば、フローバルブ31は、火災のおそれが検知されたか否かによって流れを通過させる開状態および流れを遮断する閉状態をそれぞれ有する。火災のおそれがないときは、いくつかのフローバルブ31は通常閉じており、いくつかのフローバルブ31は通常開いている。
【0026】
分配ネットワーク24は、第1の閉鎖空間14aにおける不活性ガス出口60aと第2の閉鎖空間14bにおける不活性ガス出口60bを有する。各々の不活性ガス出口60a,60bは、分配ネットワーク24から第1の不活性供給ガス18および/または第2の不活性供給ガス22を分配する複数のオリフィス63を含む。
【0027】
閉鎖空間14a,14bは、それぞれ上部容積32を上部容積32の下に位置するビルジ容積34から分離する床64を含みうる。例えば、上部容積32は、貨物室でありうる。航空機によっては、床64は密閉されておらず、上部容積32とビルジ容積34との間に空気の流れがある。通気孔を有する種類の床は、シール、シャッター、膨張式シールなどのシール部材30を備えることができ、シール部材30は、火災のおそれに応じてビルジ容積34を上部容積32から封止して容積および漏れを制限するように制御装置26によって制御可能であり、これにより、不活性ガス供給源16,20の両方で要求される不活性ガスの量が最小化される。このような容積および漏れを最小化するシステムは、容積および漏れ減少システムと呼ばれる。
【0028】
制御装置26は、低圧不活性ガス供給源20の制御装置と通信して不活性ガス供給源20の動作を制御することができる。例えば、制御装置26は、火災が発生した閉鎖空間14a,14bにおける酸素濃度の検知または航空機12のフライトサイクルに応じて、第2の不活性供給ガス22の酸素濃度および/または流量を調整する。
【0029】
制御装置26は、さらに、第1の不活性供給ガス18が十分な質量流量で閉鎖空間14a,14bに供給されるように、フィードバックに応じて複数の貯蔵タンク28a−28bの開放を制御する。例えば、制御装置26へのフィードバックは、前に選択された不活性ガス供給源16が期待される速度で放出を行っていないことを示しうる。この場合には、制御装置26は、他の貯蔵タンク28a−28dを開放して、例えば、酸素濃度を所望の閾値よりも低下させるように所望の質量流量を提供する。
【0030】
さらに、制御装置は、防火システム10内の動作不良に対処するようにプログラム可能である。例えば、もしフローバルブ31の1つが機能しなければ、制御装置26は、これに応じて他のフローバルブを開閉して、第1または第2の不活性供給ガス18,22の分配経路を切り換える。
【0031】
いくつかの例では、制御装置26へのフィードバックとしてバルブ29の圧力変換器から貯蔵タンク圧力が提供され、貯蔵タンク28a−28dが空の状態に近づいていることを制御装置26が特定することを可能にする。この点について、いずれかの貯蔵タンク28a−28dの圧力が完全に低下すると、制御装置26は他の貯蔵タンク28a−28dの1つを開放し、閉鎖空間14a,14bへの第1の不活性供給ガス18の質量流路の制御を容易にする。制御装置26は、圧力および温度のフィードバックを航空機12のフライトサイクルに関する既知の情報と組み合わせて、貯蔵タンク28a−28dの将来的な保守の決定に利用することもできる。例えば、制御装置26は、貯蔵タンク28a−28dの1つからのガスのゆっくりとした漏れを検知し、漏れ量を計算することによって、航空機12の利用サイクルで都合がよく、かつ圧力が低すぎるレベルまで低下する前の将来的な交換時期を確定することができる。
【0032】
図2を参照すると、例示的な制御装置126は、プロセッサ262、メモリ260および防火システム10の作動に使用される例示的な入力部および出力部を有する。制御装置126は、図1の制御装置26の一実施例を示している。制御装置126は、入力として、図1の他の機上制御装置または警報システム27からの主警報信号または火災信号を入力部210で受信し、(ガス圧力などの)貯蔵タンク28a−28dの状態を示す信号を入力部212で受信し、空気管理システムの状態を示す信号を入力部214で受信し、第2の不活性供給ガス22の酸素濃度を示す信号216を不活性ガス供給源制御装置62から受信し、酸素濃度を示す酸素センサ36からの信号を入力部218で受信する。二次的な入力部220が、メモリモジュールに接続され、メモリモジュール260の変更、そしてこれによる格納された制御装置の命令の変更および更新を可能にする。
【0033】
出力は、受信した入力に応答する信号でありうる。例えば、閉鎖空間14a,14bの1つにおける火災のおそれに応じて、制御装置126は対応する閉鎖空間14a,14bを危険区域として指定し、出力部230から制御信号を出力することによって指定された危険区域への第1の不活性供給ガス18の流れを発生させる。さらに、制御装置126は、出力信号232を用いて、火災のおそれに対処するために開放される貯蔵タンク28a−28dの番号を指定することもできる。制御装置126は、出力タイマ信号236を使用して、貯蔵タンク28a−28dの開放のタイミングを制御してもよい。例えば、制御装置126は、防火の効果および続いて貯蔵タンク28a−28dの開放のタイミングを判断するために使用可能な酸素濃度、温度または他の入力を示すフィードバック信号を受信する。
【0034】
制御装置126は、さらに、受信した入力信号に基づいて火災のおそれに対する応答を遅延もしくは中止することができる。一例として、閉鎖空間14a,14bの1つで火災のおそれが検知された場合に、制御装置126は火災信号を入力部210で受信する。制御装置126は、続いて、どの閉鎖空間14aで火災発生のおそれがあるかを特定し、出力部230からの危険区域選択および分流バルブ制御の信号を使用して閉鎖空間14a,14bを隔離する信号を出力する。これにより、閉鎖空間14a,14bに連結された空気管理システム21が停止する。制御装置126は、空気管理システムのオンオフ制御入力部214に接続された一般的なセンサを使用して空気管理システム21の状態を検知する。このようにして、制御装置126は、空気管理システム21が完全に停止するまでさらなる応答を遅延することができる。
【0035】
他の例として、制御装置126は、アクセスドア状態入力部222で閉鎖空間14a,14bのアクセスドア25の開閉状態を示すドア開閉状態信号を受信してもよい。この場合に、制御装置126は、閉鎖空間のドア状態がアクセスドア25が閉じていることを示すまで火災のおそれに対する応答を遅延するか、火災のおそれに対する応答を完全に取り消すことができる。
【0036】
他の例として、制御装置26は、第2の不活性ガス供給源20の制御装置62と通信し、これにより、不活性ガス供給源20への投入空気をどこから引き込むかを制御することができる。さらに、制御装置26は、投入空気の供給源から引き込まれる投入空気の流量を制御することもできる。例えば、制御装置26は、第2の不活性ガス供給源20が火災のない閉鎖空間14a,14bの1つから空気を引き込むようにするか、航空機12のフライトサイクルに基づいて投入空気の供給源を制御しうる。
【0037】
制御装置126は、火災のおそれを抑制するとともに第1の不活性供給ガス18の質量流量を制御して過度の圧力を防止するために、入力を使用して貯蔵タンク28a−28dの開放順序を決定することもできる。一連の開放順序が決定されると、出力部242からの制御出力として制御信号が制御装置126からマニホルド42に送信される。制御装置126は、さらに、OBIGGSガス分配ネットワーク24に制御可能に接続された出力部238からの出力信号を用いてOBIGGSで発生したガスを危険区域に導くことができる。制御装置126は、閉鎖空間14a,14bの酸素レベルを評価し、閉鎖空間14a,14bの酸素濃度が閾値を超えた場合に、出力部240からの制御信号を利用して予備の貯蔵タンク28a−28dを作動させることもできる。制御装置126は、さらに、出力部250からの制御信号出力を利用してOBIGGSを制御し、これにより、危険区域に連続的に導かれるガスの量をより細かく制御することができる。
【0038】
制御装置126は、さらに、制御装置の命令を格納する(書き換え可能なメモリ要素またはコンピュータ可読媒体とも呼ばれる)メモリモジュール260と共にプロセッサモジュール262を含む。メモリモジュール260は、設置者が制御装置126に接続して格納された命令を変更し、これによって制御装置126を完全に交換することなく防火システム要素を新しい要素に更新または交換することを可能にする入出力接続部220を含む。制御装置126は、入力部272に未割当ての入力を有し、出力部274に未割当ての出力を有する。未割当ての入力部272および出力部274と書き換え可能なメモリモジュール260との組合せにより、新しい防火システム要素の追加または交換システム要素の使用が可能となる。
【0039】
プロセッサモジュール262は、ハードウェア、ソフトウェアまたはこれらの組合せとして実現可能である。プロセッサモジュール262は、入力部210,212,214,216,218,222,272から入力値を受け取り、メモリモジュール260に格納された命令に基づいて制御装置の出力部230,232,234,236,238,240,242,250,274に適切な出力を決定し、これにより、制御装置126による上述の制御機能の実行を可能にする。
【0040】
いくつかの例では、メモリモジュール260は取外し可能である。メモリモジュール260が取り外し可能であれば、入出力接続部220はメモリモジュール260自体に設けられ、メモリモジュール260を取り外すとともに、メモリモジュール260を取り外した状態でメモリモジュール260に格納された命令を変更することができる。制御装置126は、概略的に示されているが、制御装置126は、標準的なプログラム可能なマイクロコントローラ、CPUを含む制御装置または他のあらゆる種類のプログラム可能な制御装置である。
【0041】
図示の実施例には、特徴部の組合せが示されているが、開示された種々の実施例の利点を実現するために全ての特徴部を組み合わせる必要はない。つまり、開示された実施例に従って設計されたシステムは、いずれか1つの図面に示された特徴部や図面に概略的に示された部分を必ずしも全て含む必要はない。なお、1つの例示的な実施例の選択された特徴部は、他の例示的な実施例の選択された特徴部と組み合わせることができる。
【0042】
本発明の好適実施例を開示したが、当業者であれば、特定の改良も本発明の範囲内に含まれることが分かるであろう。このため、本発明の真の範囲および内容を判断するには、以下の請求項の検討が必要である。
【符号の説明】
【0043】
126…制御装置
260…メモリ
262…プロセッサ
210,212,214,216,218,222,272…入力部
230,232,236,238,240,242,250,274…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の不活性供給ガスを提供するように設けられた高圧不活性ガス供給源と、
高圧不活性ガス供給源よりも低い圧力を有し、第2の不活性供給ガスを提供するように設けられた低圧不活性ガス供給源と、
高圧不活性ガス供給源および低圧不活性ガス供給源に連結され、第1の不活性供給ガスおよび第2の不活性供給ガスを分配する分配ネットワークと、
少なくとも分配ネットワーク、低圧不活性ガス供給源および高圧不活性ガス供給源と動作可能に接続されて、高圧不活性ガス供給源および低圧不活性ガス供給源を制御し、かつ高圧不活性ガス供給源および低圧不活性ガス供給源を作動させる命令を格納できる書き換え可能なメモリ要素を少なくとも含むプログラム可能な制御装置と、を有することを特徴とする防火システム。
【請求項2】
少なくとも1つのセンサをさらに有し、このセンサは、前記プログラム可能な制御装置に通信可能に結合されており、これにより、前記プログラム可能な制御装置によって、大気組成、ドアの開閉状態、大気圧および煙の少なくとも1つが検知可能となっていることを特徴とする請求項1記載の防火システム。
【請求項3】
前記書き換え可能なメモリ要素は、再プログラム可能であり、防火システムの構成要素の追加、変更、除去に対応することを特徴とする請求項1記載の防火システム。
【請求項4】
前記プログラム可能な制御装置は、火災信号に応じて空気管理システムを停止することを特徴とする請求項3記載の防火システム。
【請求項5】
前記書き換え可能なメモリ要素は、空気管理システムが完全に停止したことに応じて、前記プログラム可能な制御装置に火災のおそれに対する応答を開始させることを特徴とする請求項4記載の防火システム。
【請求項6】
前記プログラム可能な制御装置は、プロセッサモジュールさらに含むことを特徴とする請求項1記載の防火システム。
【請求項7】
前記プロセッサモジュールは、ソフトウェアモジュールであることを特徴とする請求項6記載の防火システム。
【請求項8】
前記プロセッサモジュールは、ハードウェアモジュールであることを特徴とする請求項6記載の防火システム。
【請求項9】
防火システム用のプログラム可能な制御装置であって、
センサ信号を受信可能な複数の入力部と、
防火システムの構成要素に命令を送信可能な複数の出力部と、
前記プログラム可能な制御装置に複数のステップを実行させる命令を格納するコンピュータ可読媒体と、を有し、上記のステップは、
火災警報信号入力を監視し、
火災警報信号が検知されたときに、空気管理システムを停止することにより危険区域を隔離し、
高圧不活性ガス供給源から前記危険区域に不活性ガスを注入し、
低圧不活性ガス供給源を作動させて、前記危険区域に不活性ガスの流れを導くステップをそれぞれ含むことを特徴とする防火システム用のプログラム可能な制御装置。
【請求項10】
プロセッサモジュールをさらに有することを特徴とする請求項9記載の防火システム用のプログラム可能な制御装置。
【請求項11】
低圧不活性ガス供給源を作動させるステップは、低圧不活性ガス供給源からの供給ガスを閉鎖空間に導き、これにより、該閉鎖空間の酸素濃度を所定の閾値よりも低く維持することを含むことを特徴とする請求項9記載の防火システム用のプログラム可能な制御装置。
【請求項12】
前記複数の入力部は、
少なくとも1つの火災警報信号入力部と、
ぞれぞれ1つの不活性ガス容器に対応する、複数の高圧不活性ガス容器センサ入力部と、を含むことを特徴とする請求項9記載の防火システム用のプログラム可能な制御装置。
【請求項13】
少なくとも1つのドア状態センサ入力部をさらに含むことを特徴とする請求項12記載の防火システム用のプログラム可能な制御装置。
【請求項14】
前記複数の出力部は、複数のバルブ制御出力部を含み、それぞれのバルブ制御出力部は、分配ネットワークのバルブの動作を制御する制御信号を送信可能であり、これにより、前記プログラム可能な制御装置によって分配ネットワークを通るガスの流れの制御が可能となっていることを特徴とする請求項9記載の防火システム用のプログラム可能な制御装置。
【請求項15】
前記複数の出力部は、複数の高圧不活性ガス容器制御出力部を含み、それぞれの高圧不活性ガス容器制御出力部は、高圧不活性ガス容器の1つに制御信号を送信可能であり、これにより、高圧不活性ガス容器から不活性ガスが分配システムに放出可能となっていることを特徴とする請求項9記載の防火システム用のプログラム可能な制御装置。
【請求項16】
前記複数の出力部は、少なくとも1つの制御出力部を含み、この制御出力部は、火災のおそれに応じて前記危険区域に連結された空気管理システムを停止させることを特徴とする請求項9記載の防火システム用のプログラム可能な制御装置。
【請求項17】
前記コンピュータ可読媒体は、再プログラム可能であることを特徴とする請求項9記載の防火システム用のプログラム可能な制御装置。
【請求項18】
プログラム可能な制御装置を使用して火災信号入力を監視し、
火災信号に応じて前記プログラム可能な制御装置から第1の信号を出力し、これにより、火災を含む危険区域を隔離し、
前記プログラム可能な制御装置から第2の信号を出力し、これにより、高圧不活性ガス供給源から分配システムに不活性ガスを放出させ、
前記プログラム可能な制御装置から第3の信号を出力し、これにより、低圧不活性ガス供給源から前記分配システムに不活性ガスを放出させるステップをそれぞれ含むことを特徴とする防火システムの制御方法。
【請求項19】
火災信号に応じて容積および漏れ減少システムを作動させることをさらに含み、これにより、火災のおそれを抑制するために要求される不活性ガスの量を減少させることを特徴とする請求項18記載の防火システムの制御方法。
【請求項20】
投入空気が危険区域以外の供給源から得られるように、機上の不活性ガス発生装置(OBIGGS)を制御することをさらに含むことを特徴とする請求項18記載の防火システムの制御方法。
【請求項21】
前記制御装置は、アクセスドア状態信号によりアクセスドアが閉じているという指示が提供されるまで、第1の信号、第2の信号、および第3の信号を出力するステップを遅延することを特徴とする請求項18記載の防火システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−468(P2012−468A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135046(P2011−135046)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(510079477)キッダ テクノロジーズ,インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】