説明

防災マスク

【課題】従来品よりさらに長時間CO除去性能を維持できるとともに、火災消火時の高湿度環境下でもCO除去性能を発揮し得る、耐久性および耐湿度性に優れた防災マスクを提供する。
【解決手段】防災マスクの吸収缶に充填するCO除去剤として、例えば押出し成型法で成型したCu−Mn複合酸化物に、例えば塩化ルテニウムなどのRu化合物をRu換算で好ましくは0.2〜1.0質量%含浸させて作製したCO除去剤を用いる。さらには、CO除去剤の前処理剤として活性炭および/または添着活性炭を用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般の火災や種々の製造プロセスにおいて発生する有害ガスから、特に生命に危険を及ぼす可能性が高い一酸化炭素(CO)を除去する防災マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年わが国では、火災により毎年数千人の人命が失われており、そのうちの半数以上がCO中毒によるものと推定されている。したがって、火災発生時に安全な場所への避難完了までの一定時間CO中毒から被災者を守ることができるように、少しでも耐久時間(CO除去性能を維持できる時間)の長い防災マスクが求められている。
【0003】
[従来技術1]
従来、防災マスクのCO除去剤としては、Cu−Mn複合酸化物系のホプカライト触媒等のCO酸化触媒が用いられてきた。
【0004】
[従来技術2]
また、Cu−Mn複合酸化物にRu化合物を担持した有害ガス除去剤を用いてCOを除去する方法が記載されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】国際公開97/11779号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術1のホプカライト触媒等のCO酸化触媒は、高湿度環境下では急激にCO酸化活性が低下するため、同触媒を用いた一部の防災マスクには「吸湿すると能力が低下する」旨が明記されている。このため、例えば放水による消火活動が進められ、高湿度(例えば湿度80%以上)となった環境下では、この触媒を用いた防災マスクでは十分なCO除去効果が得られるとは考え難い。
【0006】
また、上記従来技術2の有害ガス除去剤は、自動車トンネルや地下自動車道など、せいぜい100ppm程度のCO濃度を対象としたものであり、火災時に発生する1000ppm以上の高CO濃度に対する有効性は検証されていない。また、この有害ガス除去剤は、湿度60%程度までの環境下での使用しか想定していないが、上述したように、火災消火時の環境下ではさらに高湿度の環境下で使用することが必要となる。
【0007】
そこで本発明の目的は、従来品よりさらに長時間CO除去性能を維持できるとともに、火災消火時の高湿度環境下でもCO除去性能を発揮し得る、耐久性および耐湿度性に優れた防災マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、Cu−Mn複合酸化物とRu化合物とを含むCO除去剤を用いることを特徴とする防災マスクである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記Ru化合物が塩化ルテニウムである請求項1に記載の防災マスクである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記CO除去剤が、前記Ru化合物をRu換算で0.2〜1.0質量%含有するものである請求項1または2に記載の防災マスクである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記CO除去剤が、前記Ru化合物を前記Cu−Mn複合酸化物に含浸法で担持させてなるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の防災マスクである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記Cu−Mn複合酸化物が、押出し成型法で成型されてなるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の防災マスクである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、活性炭および/または添着活性炭を、前記CO除去剤の前処理剤として用いる請求項1〜5のいずれか1項に記載の防災マスクである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、Cu−Mn複合酸化物とRu化合物とを含むCO除去剤を用いることで、従来品よりさらに長時間CO除去性能を維持できるとともに、火災消火時の高湿度環境下でもCO除去性能が発揮できる、耐久性および耐湿度性に優れた防災マスクが提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る防災マスクに用いられるCO除去剤は、Cu−Mn複合酸化物とRu化合物とを含むものとする。
【0017】
上記CO除去剤に含まれるCu−Mn複合酸化物は、酸化Cuと酸化Mnとの単純な(物理的な)混合物ではなく、両金属(Cu、Mn)原子が酸素原子を介して化学的に結合した複合酸化物である。
【0018】
このCu−Mn複合酸化物は、例えば両金属化合物を溶解した水溶液に、アルカリを添加することによって、両金属化合物を水酸化物として共沈させて複合水酸化物を生成させ、それをさらに酸化して複合酸化物化することによって調製することができる。なお、このCu−Mn複合酸化物は、フェントン反応によって常温付近でも酸化力を発現するといわれており、従来のCO除去用の防災マスクに活用されている。
【0019】
また、上記CO除去剤に含まれるRu化合物としては、塩化ルテニウム、ルテニウム酸カリウムなどのルテニウム酸塩、硝酸ルテニウム等が好ましいものとして例示される。これらのRu化合物のうち特に水溶性のものは、後述の含浸の際に好適であり、しかも水溶性のRu化合物を用いた場合に特に大きなCO除去性能の向上が認められる。この理由としては、Ru化合物を水溶液の状態で添加した場合には、単に粉末の状態で添加した場合に比べてRu化合物の分散性が高まり、Ruの利用効率が向上するためと考えられる。
【0020】
上記Ru化合物のうち、ルテニウム酸塩は長期保管の間に酸化ルテニウムに変質しやすく、また、硝酸ルテニウムは高価であるのに対して、塩化ルテニウムは水溶性であるうえ、取扱いが容易で、化合物として安定であり、かつ、低価格であるため、最も好ましいRu化合物である。
【0021】
上記CO除去剤中に占めるRu化合物の含有量としては、CO除去活性の十分な向上効果を得るため、Ru換算で0.2〜1.0質量%(以下、「質量%」を単に「%」と表記する。)とするのが好ましい。すなわち、0.2%未満では有為な性能向上効果が得られず、いっぽう、1.0%超では、性能向上効果が飽和し、余分に添加したRu化合物が無駄になるからである。より好ましいRu化合物の含有量は0.2〜0.5%である。
【0022】
本発明に係る防災マスクに用いるCO除去剤の形状およびサイズは、通気性に劣る1mm未満の粉末を避ければ特に制約はなく、形状としては例えば円柱状、球状、破砕状のものなどを用いることができ、サイズとしては通気性を確保できる、すなわち圧力損失の問題を生じない、例えば1〜3mm程度のものが好適である。
【0023】
本発明に係るCO除去剤の製造方法としては、いくつかの方法を適用することができる。例えば、Cu−Mn複合酸化物の粉末を上述した方法で調製した後、このCu−Mn複合酸化物粉末にRu化合物を添加し混合して成型する方法(混練法)や、Cu−Mn複合酸化物粉末を例えば円柱状に成型した後に、Ru化合物の水溶液を含浸させ、乾燥する方法(含浸法)などが挙げられる。なお、成型に際して成型のためのバインダ、例えばアルミナゾルなどを添加することは、例えば10%程度の一般的な添加量であれば特に支障を生じるものではない。
【0024】
これらの製造方法の中では、含浸法によってRu化合物を添加する方法を採用することで、特に大きなCO除去性能の向上が認められる。この理由は明らかではないが、混練法の場合は、CO除去剤の内部まで均一にRu化合物が分散するのに対して、含浸法の場合は、被処理ガスに接触するCO除去剤の表面近傍のRu化合物濃度が高くなり、このようなRu化合物の分布状態がCO除去に適しているものと推定される。
【0025】
この含浸法を採用する場合、含浸材料としてCu−Mn複合酸化物の押出し成型品、打錠成型品または破砕品を用いることができるが、特に押出し成型品を用いた場合に、最も大きくCO除去性能が向上するのが認められる。この理由も明確ではないが、成型品と破砕品との相違、成型品間では成型圧力の相違等により、各含浸材料の空隙率が異なり、Ru化合物の含浸状況などに差異が生じると考えられ、なかでも押出し成型品は最も空隙率が大きくなり、CO除去性能の向上に最も好ましいRu化合物の含浸状況が得られるものと考えられる。
【0026】
以上の方法によって得られたCu−Mn複合酸化物とRu化合物とを含むCO除去剤は、従来のCu−Mn複合酸化物のみを含むCO除去剤に比べて、高湿度環境下において大きくCO除去性能が低下しない特性を有している。この理由も明らかではないが、Ru化合物がCO除去剤中でルテニウム錯体の形態となり、共存水分を配位子として捕捉することで、水分の影響を抑制している可能性が考えられる。
【0027】
以上の方法で得られたCO除去剤は、CO除去を目的とした各種防災マスクの吸収缶に充填して用いることできる。例えば、面体に吸収缶を直付けした直結型と呼ばれるタイプの防災マスクや、ホースを介して面体と吸収缶が連結された隔離型と呼ばれるタイプの防災マスクなど、いずれのタイプの防災マスクにも用いることができる。
【0028】
これらの防災マスクの吸収缶へのCO除去剤の充填量は、目標とする耐久時間に応じて調整すればよいが、直結型の場合は30〜200g、隔離型の場合は100〜400g程度とすればよい。
【0029】
また、上記CO除去剤は、単独で用いても高いCO除去性能を得ることができるものであるが、その前段に、SOxなどの共存成分や水分の除去を目的とした前処理剤、例えば活性炭や添着活性炭を用いることは、より好ましい使用形態である。活性炭および添着活性炭はそれぞれ単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。添着活性炭の添着物としては、SOxなどの酸性成分除去に有効な塩基性化合物、例えばCa化合物、Na化合物、K化合物などを例示することができる。
【実施例1】
【0030】
まず、CO除去剤のCO除去性能に及ぼすCu−Mn複合化合物へのRu化合物の添加の有無の影響、およびRu化合物を添加する場合におけるRu化合物の種類の影響を調査するため、以下の性能評価試験を実施した。
【0031】
[発明例1]
硫酸銅と硫酸マンガンを溶解させた水溶液に、この水溶液を攪拌しつつ水酸化カリウム水溶液を1時間かけて滴下し、銅とマンガンの複合水酸化物を析出させ、これに過マンガン酸カリウム水溶液を加えて攪拌することによって、複合水酸化物を酸化し、Cu−Mn複合酸化物を含む沈殿物を得た。この沈殿物をろ過して回収した後、水を加えて水酸化カリウム等を水洗除去し、この水洗物を110℃で2時間加熱することによって、Cu−Mn複合酸化物の乾燥物を得た。
【0032】
この乾燥物を十分に粉砕した後、アルミナゾルを添加し混合して直径1.5mmのダイスから押し出し、これを再度乾燥したのち3mm以下の長さに切断することによって、円柱状のCu−Mn複合酸化物の押出し成型品を得た。
【0033】
そして、この押出し成型品に、所定量の塩化ルテニウム水溶液を噴霧し、再度乾燥することによって、Ru化合物を含浸したCO除去剤を作製した。
【0034】
このCO除去剤の成分組成は、Mn:51%、Cu:14%、Ru:0.51%であった。
【0035】
このCO除去剤を、内径80mmの円筒状容器に充填高さ20mm(総充填量100.5cm)となるように充填し、防災マスクの吸収缶を想定した除去剤充填層を作製した。
【0036】
そして、この除去剤充填層について、「消防庁通達248号 火災避難用保護具等の試験方法」に準じ、以下の条件でCO除去性能を調査した。すなわち、上記除去剤充填層に、2500ppmのCOを含む空気を30L/分、20℃、相対湿度65%の条件で供給し、除去剤充填層出口から排出される空気中のCO濃度を測定し、上記通達で基準とされている「350ppm以下」を維持しうる時間(以下、「<350ppm持続時間」という。)を求めた。
【0037】
[発明例2,3]
上記発明例1では、CO除去剤の作製の際にRu化合物として塩化ルテニウムを用いたが、発明例2では硝酸ルテニウム、発明例3ではルテニウム酸カリウムを用いた。そして、発明例1と同じ方法・条件で除去剤充填層を作製し、発明例1と同様の方法でCO除去性能を調査した。
【0038】
[比較例1]
上記発明例1と同様にCu−Mn複合酸化物の押出し成型品を作製して、Ru化合物を添加せずにCO除去剤を作製した。そして、このRu化合物を含まないCO除去剤を用いて発明例1と同じ方法・条件で除去剤充填層を作製し、発明例1と同様の方法でCO除去性能を調査した。
【0039】
〔性能評価試験結果1〕
表1に上記CO除去性能を調査した結果を示す。同表より明らかなように、発明例1〜3に示すCu−Mn複合化合物にRu化合物を添加して得られたCO除去剤からなる除去剤充填層は、比較例1に示すRu化合物を含まないCu−Mn複合化合物のみを含む従来のCO除去剤からなる除去剤充填層に比べて、格段に長い時間CO濃度を350ppm以下に維持できることがわかった。また、Cu−Mn複合化合物に添加するRu化合物としては、本実施例で用いたRu化合物のなかでは、塩化ルテニウムが最も向上効果が大きいことがわかった。
【表1】

【実施例2】
【0040】
次に、CO除去性能に及ぼすCO除去剤中におけるRu化合物の含有量の影響を調査するため、以下の性能評価試験を実施した。
【0041】
[発明例4〜9]
上記発明例1におけるRu化合物のRu換算による添加量(0.51%)を0.12〜1.12%の範囲で種々変化させてCO除去剤を作成した。そして、発明例1と同様の方法・条件で除去剤充填層を作製し、発明例1と同様の方法でCO除去性能を調査した。
【0042】
〔性能評価試験結果2〕
表2に上記CO除去性能を調査した結果を、上記発明例1および比較例1とともに示す。同表より明らかなように、Ru化合物のRu換算による添加量が0.2〜1.0%の場合(発明例5〜8)には、Ru化合物を含まない従来のCu−Mn複合酸化物のみからなる場合(比較例1)に比べて、明確に長い時間CO濃度を350ppm以下に維持できることがわかった。特にRu化合物のRu換算による添加量が0.2〜0.5%の場合(発明例5,6,1)には、Ru化合物の添加量の増加に応じて顕著にCO除去性能が向上するのが認められる。
【0043】
いっぽう、Ru化合物のRu換算による添加量が0.2%未満の場合(発明例4)には、比較例1に比べて「<350ppm持続時間」が長くなるものの、その改善の程度は大きくなく、また、添加量が1.0%超の場合(発明例9)には、添加量1%の場合(発明例8)と比べて「<350ppm持続時間」に大差がなく、添加効果が飽和するのが認められる。
【表2】

【実施例3】
【0044】
次に、CO除去性能に及ぼすCu−Mn複合酸化物へのRu化合物の添加方法の影響を調査するため、以下の性能評価試験を実施した。
【0045】
[発明例10]
上記発明例1では、Cu−Mn複合酸化物にRu化合物を添加する方法として含浸法を用いたが、本発明例では、以下のような混練法を用いた。すなわち、発明例1と同様の方法でCu−Mn複合酸化物の粉末乾燥物を得た後、このCu−Mn複合酸化物の粉末乾燥物に塩化ルテニウム水溶液を添加し、再度乾燥し、Cu−Mn複合酸化物とRu化合物とを含む粉末を得た。この粉末にアルミナゾルを添加し混練したのち直径1.5mmのダイスから押し出し、これを再度乾燥し、3mm以下の長さに切断することによって、Ru化合物を混練したCu−Mn複合酸化物の押出し成形品を作製した。そして、発明例1と同様の方法・条件で除去剤充填層を作製し、発明例1と同様の方法でCO除去性能を調査した。なお、このCO除去剤の成分組成は、Mn:51%、Cu:14%、Ru:0.50%であった。
【0046】
〔性能評価試験結果3〕
表3に上記CO除去性能を調査した結果を、上記発明例1および比較例1とともに示す。同表より明らかなように、含浸法でRu化合物を添加する方法(発明例1)に比べれば劣るものの、混練法でRu化合物を添加する方法(発明例10)を用いても明確なCO除去性能の向上効果が認められた。
【表3】

【実施例4】
【0047】
次に、CO除去性能に及ぼす含浸材料の形態の影響を調査するため、以下の性能評価試験を実施した。
【0048】
[発明例11,比較例2]
上記発明例1および比較例1では、含新材料としてCu−Mn複合酸化物の押出し成形品を用いたが、発明例11および比較例2では、以下のような破砕品を用いた。すなわち、発明例1と同様の方法でCu−Mn複合酸化物の粉末乾燥物を得た。この粉末乾燥物にアルミナゾルを混合し、乾燥して固化物を得た後、これを破砕し、篩で分級して粒度1〜3mmの破砕品を作製した(比較例2)。このCu−Mn複合酸化物の破砕品に塩化ルテニウム水溶液を添加し混合した後、再度乾燥してRu化合物を含浸させたCu−Mn複合酸化物の破砕品を作製した(発明例11)。そして、これらの破砕品を用いて発明例1と同様の方法・条件で除去剤充填層を作製し、発明例1と同様の方法でCO除去性能を調査した。なお、このCO除去剤の成分組成は、Mn:51%、Cu:14%、Ru:0.51%であった。
【0049】
〔性能評価試験結果4〕
表4に上記CO除去性能を調査した結果を、上記発明例1および比較例1とともに示す。同表より明らかなように、押出し成形品に含浸した場合(発明例1)に比べれば劣るものの、破砕品に含浸した場合(発明例11)にも明確なCO除去性能の向上効果が認められた。
【表4】

【実施例5】
【0050】
次に、CO除去性能に及ぼす前処理剤併用の影響を調査するため、以下の性能評価試験を実施した。
【0051】
[発明例12,13,比較例3,4]
上記発明例1および比較例1では、CO除去剤のみを充填した除去剤充填層を用いたが、発明例12,13および比較例3,4では、以下のように前処理剤を併用した除去剤充填層を用いた。すなわち、上記円筒状容器の上流側(ガス入口側)に、前処理剤として充填高さ10mmの水酸化カリウム添着活性炭(2mm粒状)を追加して除去剤充填層を作製した。そして、発明例1と同様に相対湿度65%のガス条件でCO除去性能を調査した。さらに、相対湿度を80%に高めたガス条件にてもCO除去性能を調査した。
【0052】
〔性能評価試験結果5〕
表5に上記CO除去性能を調査した結果を、上記発明例1および比較例1とともに示す。同表より明らかなように、従来のCu−Mn複合酸化物のみからなるCO除去剤層の上流側に添着活性炭層を設けると、相対湿度65%のガスに対しては「<350ppm持続時間」がわずかに長くなったが(比較例1→比較例3)、相対湿度を80%に上昇させると、CO除去性能が顕著に低下し(比較例3→比較例5)、比較例1に比べて大幅にCO除去性能が劣ることがわかった。
【0053】
いっぽう、Ru化合物を含むCO除去剤を用いた場合には、CO除去剤層の上流側に添着活性炭層を設けたことによるCO除去性能の向上効果は、相対湿度65%のガスに対しては上記従来のCu−Mn複合酸化物のみからなるCO除去剤と同程度であるものの(発明例1→発明例12)、相対湿度を80%に上昇させてもCO除去性能の低下度合いが上記「比較例3→比較例5」に比べて格段に軽微であり(発明例12→14)、高湿度下においても前処理剤を併用することで発明例1とほぼ同等のCO除去性能が確保できることがわかった。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu−Mn複合酸化物とRu化合物とを含むCO除去剤を用いることを特徴とする防災マスク。
【請求項2】
前記Ru化合物が塩化ルテニウムである請求項1に記載の防災マスク。
【請求項3】
前記CO除去剤が、前記Ru化合物をRu換算で0.2〜1.0質量%含有するものである請求項1または2に記載の防災マスク。
【請求項4】
前記CO除去剤が、前記Ru化合物を前記Cu−Mn複合酸化物に含浸法で担持させてなるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の防災マスク。
【請求項5】
前記Cu−Mn複合酸化物が、押出し成型法で成型されてなるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の防災マスク。
【請求項6】
活性炭および/または添着活性炭を、前記CO除去剤の前処理剤として用いる請求項1〜5のいずれか1項に記載の防災マスク。

【公開番号】特開2007−130231(P2007−130231A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326174(P2005−326174)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【出願人】(000130259)株式会社コベルコ科研 (174)
【Fターム(参考)】