説明

防煙避難用具

【課題】簡易かつ安価な構成の防煙避難用具で手軽に5〜10分間程度の通常の空気の呼吸を可能にして、火災等の現場からの安全な脱出の可能性を高める。
【解決手段】少なくとも口を覆うように頭に装着可能なマスク1と、畳まれた収納状態から開放されると自動的に拡張させる弾性部材2aを有する主空気袋2と、前記主空気袋に接続されており、畳まれた収納状態から開放されると自動的に拡張させる弾性部材3cを有し、その筒状の拡張形状の両端部を互いに接続することにより利用者の首周りに装着可能なリング状をなす副空気袋3と、前記副空気袋と前記マスクとを連通させる二本の空気通路4,5と、前記空気通路の一方を介して空気を前記副空気袋から前記マスクへ向けてのみ通流させる吸気用通気弁6と、前記空気通路の他方を介して空気を前記マスクから前記副空気袋へ向けてのみ通流させる排気用通気弁7と、を具えてなる防煙避難用具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災等の現場から煙や有毒ガス等を吸い込まずに避難するための避難用具に関し、特には、短時間で自動的に拡張して使用可能となる簡易な避難用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災等の現場から煙や有毒ガス等を吸い込まずに避難するには、5〜10分間程度通常の空気を呼吸できれば足りることが多い。
【0003】
一方、従来の避難用具として、高圧の酸素を収容した酸素タンクを具えるマスク(特許文献1参照)等が知られている。
【特許文献1】実用新案登録第3047604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の酸素タンクを具えるマスク等の複雑で高価な避難用具は知られていたものの、5〜10分間程度の通常の空気の呼吸を可能にする簡易かつ安価な避難器具がなかったため、呼吸困難等によって火災等の現場から脱出できなくなる場合が多いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、請求項1記載のこの発明の防煙避難用具は、少なくとも利用者の口を覆うように利用者の頭に装着可能なマスクと、畳まれた収納状態から開放されると当該主空気袋を自動的に拡張させる弾性部材を有し、前記マスクへの空気の供給と前記マスクから排出された空気の収容とに用いられる主空気袋と、前記主空気袋に接続されており、畳まれた収納状態から開放されると当該副空気袋を自動的に拡張させる弾性部材を有し、その筒状の拡張形状の両端部を互いに接続可能とされ、その両端部の接続により利用者の首周りに装着可能なリング状をなし、前記主空気袋とともに前記マスクへの空気の供給と前記マスクから排出された空気の収容とに用いられる副空気袋と、前記副空気袋または前記主空気袋と前記マスクとを連通させる二本の空気通路と、前記空気通路の一方を介して空気を前記副空気袋または前記主空気袋から前記マスクへ向けてのみ通流させる吸気用通気弁と、前記空気通路の他方を介して空気を前記マスクから前記副空気袋または前記主空気袋へ向けてのみ通流させる排気用通気弁と、を具えてなるものである。
【0006】
また請求項2記載のこの発明の防煙避難用具は、少なくとも利用者の口を覆うように利用者の頭に装着可能なマスクと、前記マスクへの空気の供給と前記マスクから排出された空気の収容とに用いられる主空気袋と、前記主空気袋に接続されており、畳まれた収納状態から開放されると当該副空気袋を自動的に拡張させる弾性部材を有し、筒状の拡張形状の両端部を互いに接続可能とされ、その両端部の接続により利用者の首周りに装着可能なリング状をなし、前記主空気袋とともに前記マスクへの空気の供給と前記マスクから排出された空気の収容とに用いられ、前記筒状の拡張状態から人力で圧縮されると前記主空気袋へ空気を供給するポンプとして機能する副空気袋と、前記副空気袋または前記主空気袋と前記マスクとを連通させる二本の空気通路と、前記空気通路の一方を介して空気を前記副空気袋または前記主空気袋から前記マスクへ向けてのみ通流させる吸気用通気弁と、前記空気通路の他方を介して空気を前記マスクから前記副空気袋または前記主空気袋へ向けてのみ通流させる排気用通気弁と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
かかるこの発明の防煙避難用具にあっては、当該防煙避難用具の利用者が、主空気袋および副空気袋を収納バッグ等から取り出して収納状態から開放すると、それら主空気袋および副空気袋のうち少なくとも副空気袋が有する弾性部材の弾性で、例えば副空気袋の両端部の開口部等から空気を取り入れながら少なくとも副空気袋が自動的に筒状に拡張し、主空気袋も弾性部材を有する場合はその弾性で主空気袋も自動的に拡張し、副空気袋がポンプとして機能する場合はその副空気袋の機能により主空気袋が空気を供給されて拡張する。そして利用者が、頭に装着したマスクで少なくとも口を覆うとともに、筒状の副空気袋を首の周りに廻してその両端部を接続すると、二本の空気通路と吸気用通気弁および排気用通気弁とを介して、主空気袋および副空気袋内の空気がマスクに供給されるとともに、そのマスクから排出された空気が主空気袋および副空気袋内に収容される。
【0008】
従ってこの発明の防煙避難用具によれば、主空気袋および副空気袋内の空気がマスクとの間で循環しつつ呼気に供されるので、高圧の酸素タンクのない簡易かつ安価な構成で手軽に5〜10分間程度の通常の空気の呼吸を可能にし得て、火災等の現場からの安全な脱出の可能性を高めることができる。
【0009】
しかもこの発明の防煙避難用具によれば、主空気袋および副空気袋を収納バッグ等から取り出して収納状態から開放すると、それら主空気袋および副空気袋のうち少なくとも副空気袋が有する弾性部材の弾性力で、それら主空気袋および副空気袋のうち少なくとも副空気袋が自動的に拡張するので、火災等の現場で短時間で容易に使用可能な状態にすることができ、さらに、主空気袋も弾性部材を有する場合はその弾性で主空気袋も自動的に拡張するのでより短時間で使用可能な状態にすることができ、また副空気袋がポンプとして機能する場合は主空気袋を強制的に拡張させることができる。
【0010】
なお、この発明においては、前記主空気袋が、畳まれた収納状態から開放されると当該主空気袋を自動的に拡張させる弾性部材を有していても良く、このようにすれば、主空気袋を弾性部材で自動的に拡張させつつ、副空気袋をポンプとして機能させて主空気袋の拡張を助けることができるので好ましい。
【0011】
また、この発明においては、前記マスクに、煙および有毒ガスから目を保護するとともに視界を確保するための透明なシールド手段が付帯していても良く、このようにすれば、避難時にシールド手段で視界の確保が容易になるので好ましい。
【0012】
さらにこの発明においては、前記マスクが、畳まれた収納状態から開放されると当該マスクを自動的に拡張させる弾性部材を有していても良く、このようにすれば、マスクも、収納バッグ等から取り出して収納状態から開放すると、弾性部材の弾性力で自動的にかつ短時間で拡張するので、火災等の現場で容易に装着することができる。
【0013】
さらにこの発明においては、前記空気通路が、畳まれた収納状態から開放されると当該空気通路を自動的に伸張させる弾性部材を有していても良く、このようにすれば、空気通路も、収納バッグ等から取り出して収納状態から開放すると、弾性部材の弾性力で自動的にかつ短時間で伸張するので、火災等の現場で容易に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の防煙避難用具の一実施例を人への装着状態で示す側面図、図2は、その実施例の防煙避難用具を人への装着状態で示す正面図、図3(a),(b)は、上記実施例の防煙避難具の主空気袋および副空気袋を展開状態で示す背面図および側面図、図4(a),(b)は、上記実施例の防煙避難具のマスクおよびエアホースをそれぞれ示す正面図、図5(a),(b)は、上記実施例の防煙避難具の副空気袋の両端部の構成を示す説明図およびその副空気袋のポンプとしての動きを示す説明図である。
【0015】
この実施例の防煙避難用具は、図1および図2に示すように、マスク1と、主空気袋2と、その主空気袋2に気密に結合された副空気袋3と、二本の空気通路としての二本のエアホース4,5と、副空気袋3の長手方向一端部横の開口部3aに設けられた逆止弁である吸気用通気弁6と、副空気袋3の長手方向他端部横の開口部3bに設けられた逆止弁である排気用通気弁7とを具えている。
【0016】
ここで、マスク1は、図4(a)にも示すように、当該避難用具の利用者Pの口と鼻とを含めた顔全体を当該マスクで覆うために頭頂部から顎まで当るようにした縦長の略長円形の環状ワイヤからなる全体枠1aと、その利用者の両目を囲むようにした横長の略長円形の環状ワイヤからなるゴーグル枠1bと、それら全体枠1aおよびゴーグル枠1bを全面的に気密に覆う、例えばフッ素樹脂等の透明かつ軟質の耐熱性樹脂シート1cと、その樹脂シート1cの、ゴーグル枠1bの下側の位置に設けられた開口部に気密に固着された、二本のエアホース4,5を気密に接続するためのコネクタ1dと、全体枠1aを頭部に固着するために後頭部に掛け渡される伸縮可能なバンド1eと、全体枠1aを包む軟いパッド1fとを有しており、ゴーグル枠1bの左右端部は、パッド1fの左右部分の上下方向中央部にそれぞれ結合されており、そのパッド1fの左右部分の上下方向中央部には、バンド1eの左右端部も結合されている。
【0017】
これにより、樹脂シート1cが張り渡されたはゴーグル枠1bは、煙および有毒ガスから目を保護する透明なシールド手段として機能する。また全体枠1aおよびゴーグル枠1bはそれぞれ、可撓性を持つ環状ワイヤからなるので、手で捻りながら二つ折りにして畳むことで小さくしてバッグ等の収納場所に収納することができ、その収納場所から出して解放するとそれ自身の弾性力で自動的に拡張して元の略長円形に復元する。
【0018】
主空気袋2は、マスク1に空気を供給するとともに、そのマスク1から排出された空気を収容するためのもので、図3(a),(b)にも示すように、耐熱性を持つとともに空気の通流を阻止する合成樹脂製の布状物からなり、内部にマスク1の全体枠1aおよびゴーグル枠1bと同様の、互いに結合した二本の環状ワイヤからなる、弾性部材としての弾性フレーム2aを有していて、それらの弾性フレーム2aを全体枠1aおよびゴーグル枠1bと同様に手で捻りながら二つ折りにして押し潰すことで、折りたたみ式テントのように外径、厚さとも小さく畳んでバッグ等の収納場所に収納することができ、その収納場所から出して解放すると弾性フレーム2aの弾性力で自動的に拡張する。この主空気袋2の上端中央部には、副空気袋3の下部の長手方向中央部に連通する大きな開口部2bが設けられている。
【0019】
主空気袋2の下部の両側にはそれぞれ、この主空気袋2を胴体に装着するためのベルト2cが設けられ、これらのベルト2cの先端部には胴回りの大小に対応可能なように、互いに任意の位置で接合可能な面ファスナ2dが設けられている。ベルト2cにはまた、救助を呼ぶための笛9がクリップで嵌着されている。
【0020】
副空気袋3は、主空気袋2内に空気を充填するポンプとしても機能するもので、図3(a),(b)にも示すように、主空気袋2と同様、耐熱性を持つとともに空気の通流を阻止する合成樹脂製の布状物からなり、長い筒状をなすとともにその内部に、例えば端に近づくほど外径が小さくなるコイルスプリングからなる、弾性部材としての弾性フレーム3cを有していて、図5(b)に示すように押し潰すことで、提灯のように小さく畳んで主空気袋2と一緒にバッグ等の収納場所に収めることができ、その収納場所から出して解放すると、弾性フレーム3cの弾性力で自動的に拡張する。
【0021】
この副空気袋3の下部の長手方向中央部には大きな開口部3dが設けられており、副空気袋3の下部中部と主空気袋2の上端中央部とは、それらの開口部3d,2b同士が連通するように気密にかつ一体的に結合されている。
【0022】
さらに、副空気袋3の長手方向両端部には耐熱性を持つ可撓性合成樹脂製の円盤状部材3e,3fがそれぞれ気密に設けられ、図5(a)に示すように、それらの円盤状部材3e,3fにはそれぞれ、開口部3gが設けられるとともに手を入れるための伸縮可能なベルト3hが設けられており、図5(b)に示すように、円盤状部材3e,3fとベルト3hとの間に手を入れて開口部3gを塞ぎながら円盤状部材3e,3fを中央部へ向けて両手で押すと、副空気袋3が縮まってその内部の空気が開口部3dから主空気袋2の開口部2bを通って主空気袋2内に流入する。そして開口部3gを開けながら両手の間隔を広げれば副空気袋3は開口部3gから空気を吸入しながら弾性フレーム3cの弾性力で自動的に拡張する。
【0023】
また円盤状部材3e,3fは、図5(a)に矢印で示すように押し付けあうことで、図2に示すように、互いに気密に嵌まり合うことができ、その状態では、円盤状部材3e,3fの開口部3gは何れも縮んだベルト3hで閉止されていて、図2に示すように、副空気袋3は円盤状部材3e,3fで仕切られた環状の内部空間を持って利用者の頭の周囲に嵌まるドーナツ状の袋になる。
【0024】
二本のエアホース4,5は、各々耐熱性を持つ可撓性合成樹脂からなるとともに内部にコイルスプリングからなる、弾性部材としての弾性フレーム4c,5cを有していて、図4(b)にも示すように、一本の筒状の連結部材8にそれぞれ一端部4a,5aを連結されるとともに、互いに略同一の長さとされており、吸気用のエアホース4はその他端部4bを、副空気袋3の一端部(図3(a)では右端部)横の開口部3aに設けられた吸気用通気弁6に嵌着され、また排気用のエアホース5はその他端部5bを、袋状ポンプ3の一端部(図3(a)では左端部)横の開口部3bに設けられた排気用通気弁7に嵌着される。そして連結部材8は、マスク1の下部のコネクタ1dに嵌着される。これにより、吸気用通気弁6は、吸気用のエアホース4を通して空気を副空気袋3の一端部からマスク1へ向けてのみ通流させ、排気用通気弁7は、排気用のエアホース5を通して空気をマスク1から副空気袋3の他端部へ向けてのみ通流させる。
【0025】
二本のエアホース4,5はまた、副空気袋3と同様に長手方向に押し潰すことで、小さく畳んでバッグ等の収納場所に収めることができ、その収納場所から出して解放すると、弾性フレーム4c,5cの弾性力で自動的に拡張する。
【0026】
かかる実施例の防煙避難用具にあっては、図1,2に示すように、当該避難用具の利用者Pが避難する際、収納場所からマスク1を取り出して自動拡張させ、そのマスク1を頭に装着してマスク1で口と鼻と目を覆うとともに、収納場所から主空気袋2と副空気袋3とを取り出して自動拡張させ、主空気袋2の拡張が充分でない場合は副空気袋3で上述の如くして周囲の空気を空気袋2に充填してから、副空気袋3の両端部を両手で持って主空気袋2を背中に回し、次いで副空気袋3の両端部の円盤状部材3e,3fを互いに嵌め合わせて副空気袋3を首の周囲でドーナツ状にしてから、主空気袋2の二本のベルト2cを胴体の前に回して面ファスナ2dで緩みがないように繋ぐことで主空気袋2を胴体に装着し、さらに収納場所からエアホース4,5および連結部材8を取り出して自動拡張させ、それらエアホース4,5を副空気袋3の吸気用通気弁6および排気用通気弁7に結合するとともに連結部材8をマスク1のコネクタ1dに結合すると、二本のエアホース4,5と吸気用通気弁6および排気用通気弁7とを介して、主空気袋2および副空気袋3内の空気が副空気袋3の一端部からマスク1に供給されるとともに、そのマスク1から排出された空気が副空気袋3の他端部から副空気袋3および主空気袋2内に収容される。
【0027】
従ってこの実施例の防煙避難用具によれば、主空気袋2および副空気袋3内の空気がマスク1との間で循環しつつ呼気に供されるので、高圧の酸素タンクのない簡易かつ安価な構成で手軽に5〜10分間程度の通常の空気の呼吸を可能にし得て、火災等の現場からの安全な脱出の可能性を高めることができる。
【0028】
しかも、この実施例の防煙避難用具によれば、主空気袋2および副空気袋3が、畳まれた収納状態から開放されるとで自動的に拡張するものであることから、主空気袋2および副空気袋3内へ空気が自動的に充填されるので、緊急時に短時間で容易に使用可能な状態にすることができる。
【0029】
また、この実施例の防煙避難用具によれば、副空気袋3がポンプとしても機能するものであるので、弾性フレーム3cの弾性のみでは主空気袋2が充分に拡張しない場合等に副空気袋3で主空気袋2の拡張を助けることができる。
【0030】
さらに、この実施例の防煙避難用具によれば、マスク1に、煙および有毒ガスから目を保護する透明なシールド手段が付帯しているので、避難時にシールド手段で視界を容易に確保することができる。
【0031】
さらに、この実施例の防煙避難用具によれば、マスク1も、畳まれた収納状態から開放されると当該マスク1を自動的に拡張させる全体枠1aおよびゴーグル枠1bを有していることから、マスク1も、収納バッグ等から取り出して収納状態から開放すると全体枠1aおよびゴーグル枠1bの弾性力で自動的にかつ短時間で拡張するので、火災等の現場で容易に装着することができる。
【0032】
さらに、この実施例の防煙避難用具によれば、二本のエアホース4,5も、畳まれた収納状態から開放されると当該エアホース4,5を自動的に伸張させる弾性フレーム4c,5cを有していることから、二本のエアホース4,5も、収納バッグ等から取り出して収納状態から開放すると、弾性フレーム4c,5cの弾性力で自動的にかつ短時間で伸張するので、火災等の現場で容易に用いることができる。
【0033】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば、主空気袋2は、弾性フレーム2aを有していず、副空気袋3のポンプとしての機能で拡張されるものでも良く、また、マスク1は、鼻と口だけを覆うものとしても良い。さらに、主空気袋2を胴体の前後に振り分けて二つ具えるようにして、呼吸可能な空気量を増やしても良い。さらに、二本のエアホース4,5は、副空気袋3でなく主空気袋2に接続しても良い。そしてこの発明の防煙避難用具は、高圧の酸素を収容した酸素タンクと組合せて用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
かくしてこの発明の防煙避難用具によれば、主空気袋および副空気袋内の空気がマスクとの間で循環しつつ呼気に供されるので、高圧の酸素タンクのない簡易かつ安価な構成で手軽に5〜10分間程度の通常の空気の呼吸を可能にし得て、火災等の現場からの安全な脱出の可能性を高めることができる。
【0035】
しかもこの発明の防煙避難用具によれば、主空気袋および副空気袋を収納バッグ等から取り出して収納状態から開放すると、それら主空気袋および副空気袋のうち少なくとも副空気袋が有する弾性部材の弾性力で、それら主空気袋および副空気袋のうち少なくとも副空気袋が自動的に拡張するので、火災等の現場で短時間で容易に使用可能な状態にすることができ、さらに、主空気袋も弾性部材を有する場合はその弾性で主空気袋も自動的に拡張するのでより短時間で使用可能な状態にすることができ、また副空気袋がポンプとして機能する場合は主空気袋を強制的に拡張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の防煙避難用具の一実施例を人への装着状態で示す側面図である。
【図2】上記実施例の防煙避難用具を人への装着状態で示す正面図である。
【図3】(a),(b)は、上記実施例の防煙避難具の主空気袋および副空気袋を展開状態で示す背面図および側面図である。
【図4】(a),(b)は、上記実施例の防煙避難具のマスクおよびエアホースをそれぞれ示す正面図である。
【図5】(a),(b)は、上記実施例の防煙避難具の副空気袋の両端部の構成を示す説明図およびその副空気袋の動きを示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 マスク
1a 全体枠
1b ゴーグル枠
1c 樹脂シート
1d コネクタ
1e バンド
1f パッド
2 主空気袋
2a,3c,4c,5c 弾性フレーム
2b,3a,3b,3d,3g 開口部
2c,3h ベルト
2d 面ファスナ
3 副空気袋
3e,3f 円盤状部材
4,5 エアホース
4a,5a 上端部
4b,5b 下端部
6 吸気用通気弁
7 排気用通気弁
8 連結部材
9 笛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも利用者の口を覆うように利用者の頭に装着可能なマスクと、
畳まれた収納状態から開放されると当該主空気袋を自動的に拡張させる弾性部材を有し、前記マスクへの空気の供給と前記マスクから排出された空気の収容とに用いられる主空気袋と、
前記主空気袋に接続されており、畳まれた収納状態から開放されると当該副空気袋を自動的に拡張させる弾性部材を有し、その筒状の拡張形状の両端部を互いに接続可能とされ、その両端部の接続により利用者の首周りに装着可能なリング状をなし、前記主空気袋とともに前記マスクへの空気の供給と前記マスクから排出された空気の収容とに用いられる副空気袋と、
前記副空気袋または前記主空気袋と前記マスクとを連通させる二本の空気通路と、
前記空気通路の一方を介して空気を前記副空気袋または前記主空気袋から前記マスクへ向けてのみ通流させる吸気用通気弁と、
前記空気通路の他方を介して空気を前記マスクから前記副空気袋または前記主空気袋へ向けてのみ通流させる排気用通気弁と、
を具えてなる防煙避難用具。
【請求項2】
少なくとも利用者の口を覆うように利用者の頭に装着可能なマスクと、
前記マスクへの空気の供給と前記マスクから排出された空気の収容とに用いられる主空気袋と、
前記主空気袋に接続されており、畳まれた収納状態から開放されると当該副空気袋を自動的に拡張させる弾性部材を有し、筒状の拡張形状の両端部を互いに接続可能とされ、その両端部の接続により利用者の首周りに装着可能なリング状をなし、前記主空気袋とともに前記マスクへの空気の供給と前記マスクから排出された空気の収容とに用いられ、前記筒状の拡張状態から人力で圧縮されると前記主空気袋へ空気を供給するポンプとして機能する副空気袋と、
前記副空気袋または前記主空気袋と前記マスクとを連通させる二本の空気通路と、
前記空気通路の一方を介して空気を前記副空気袋または前記主空気袋から前記マスクへ向けてのみ通流させる吸気用通気弁と、
前記空気通路の他方を介して空気を前記マスクから前記副空気袋または前記主空気袋へ向けてのみ通流させる排気用通気弁と、
を具えてなる防煙避難用具。
【請求項3】
前記主空気袋は、畳まれた収納状態から開放されると当該主空気袋を自動的に拡張させる弾性部材を有することを特徴とする、請求項2記載の防煙避難用具。
【請求項4】
前記マスクには、煙および有毒ガスから目を保護するとともに視界を確保するための透明なシールド手段が付帯していることを特徴とする、請求項1から3までの何れか記載の防煙避難用具。
【請求項5】
前記マスクは、畳まれた収納状態から開放されると当該マスクを自動的に拡張させる弾性部材を有することを特徴とする、請求項1から4までの何れか記載の防煙避難用具。
【請求項6】
前記空気通路は、畳まれた収納状態から開放されると当該空気通路を自動的に伸張させる弾性部材を有することを特徴とする、請求項1から5までの何れか記載の防煙避難用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−296032(P2007−296032A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125019(P2006−125019)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(591211917)川田建設株式会社 (18)
【Fターム(参考)】