説明

防犯構造体

【課題】蝶番、ヒンジ等の回動部材が破壊されるのを防止して、自動販売機、金庫等の収納体に適用して、高い盗難防止効果を発揮することのできる防犯構造体を提供する。
【解決手段】収納部10と、前記収納部10の前面に配置された開閉扉20と、前記開閉扉20と前記収納部10との接触部のうち前記開閉扉の回動部材を取り付けられた扉取付部材21を含みつつ一部又はその全部を覆うように開閉扉20、収納部10又はその両方に防護壁30を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金庫、自動販売機等の収納体前面に配置される開閉扉のこじ開けを防止する防犯構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
金庫、自動販売機等の収納体は収納部に開閉扉を取り付けて、この開閉扉で収納部の開口を閉じ施錠して内部の収容物を保管している。こうした収納体の開閉扉がバール等の器具を用いて無理矢理こじ開けられ、内部の商品や金銭が盗難されることがある。
【0003】
こうした問題を解消するために、自動販売機の扉の前面及び左右をガードするコノ字型ロックアーム1とこれを扉7の前方で回転及び横スライドできるように支持する支持部4及びアーム先端部を自動販売機本体6にロックさせるためのロックユニット2とで構成された盗難防止が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−187315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした金庫や自動販売機による盗難は、例え収納体にロックアームを組み付けたとしても、蝶番側が破壊されて開閉扉を開けて内部の金銭が搾取されることがあり、開閉側のみのロックでは十分に収容物を盗難から防止することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、蝶番、ヒンジ等の回動部材が破壊されるのを防止して、自動販売機、金庫等の収納体に適用して、高い盗難防止効果を発揮することのできる防犯構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような課題を解決するために、本発明が採った手段は以下の通りである。
【0008】
本発明に係る開閉扉の防犯構造体は、収納部と、
前記収納部の前面に配置された端部に回動部材を備えた扉取付部材で取り付けられた開閉扉と、
前記開閉扉と前記収納部との接触部のうち、少なくとも1つの前記回動部材を備えた扉取付部材の一部を含みつつ一部又はその全部を覆うように開閉扉、収納部又はその両方に設けられている防護壁と、を備えているものである。
【0009】
係る構成を採用することにより、少なくとも開閉扉の回動部材、例えば蝶番、ヒンジ等が防護壁によって保護されているので、バールや電動工具等の工具が挿入できなくなる。従って、蝶番やヒンジ等の回動部材が壊されて開閉扉が開けられるのを防止することができる。また、防護壁で開閉扉と収納部との接触部を広く覆うようにすればするほど、開閉扉と収納部との間でバールや電動のこぎり等の工具を挿入する箇所を減らすことができ、より高い防犯効果を備えた開閉扉の防犯構造体を提供することができる。
【0010】
また、本発明に係る開閉扉の防犯構造体としては、防護壁が前記収納部の側面及び背面の一部又は全部を覆うものであってもよい。
【0011】
係る構成を採用することによって、防護壁が、側面及び背面の一部又は全部、又は側面、背面及び上部面の一部又は全部まで覆っているので、さらに、バールや電動のこぎり等の工具を挿入できる箇所を少なくすることができる。また、側面及び背面で連結させて、全体形状を収納体の周囲から覆い被せることができる形態に作製して、従来市販されている収納体に被せれば、開閉扉の防犯構造体とすることができ、汎用性が高くなる。
【0012】
さらに、本発明に係る開閉扉の防犯構造体としては、前記防護壁に回動可能に取り付けられ、前記開閉扉の正面の少なくとも1部を覆うように閉塞固定可能な防御部材を備えていてもよい。
【0013】
係る構成を採用することによって、開閉扉の正面に防御部材が設けられるので、いわば二重に正面側が保護されることになり、より高い防犯構造体とすることができる。すなわち、例え開閉扉と収納部の接触部にバール等を差し込んで開閉扉を開けようとしても、防御部材によって開閉扉が開けられるのを防止することができる。
【0014】
さらに、本発明に係る開閉扉の防犯構造体としては、前記防御部材が開口部を有していてもよい。
【0015】
係る構成を採用することによって、開閉扉の正面に防御部材が存在しても、例えば、自動販売機を使用する場合のコイン口や商品取り出し口に手を差し入れることができ、また、缶ジュースやペットボトル等の商品表示を視認することができるようになる。
【0016】
さらに、本発明に係る開閉扉の防犯構造体としては、前記防御部材は前記開閉扉の正面全体又は1部を覆った状態で施錠する施解錠装置を備えていてもよい。
【0017】
係る構成を採用することによって、前記防御部材の閉塞固定状態を施解錠装置で、自在に施解錠して開閉可能にしたり、不可能にしたりすることができる。また、開閉扉と防御部材との両方に施解錠装置が存在することになり、内容物を盗難しようとする場合、防御部材の施解錠装置及び開閉扉の施解錠装置の2つを破壊しなければならなくなる。よって、開閉扉を開けるのに時間が掛かるようになるため、防犯効果の高いものとなる。
【0018】
さらに、本発明に係る開閉扉の防犯構造体としては、前記防護壁は、左側面に設けられた第1防護壁と、右側面に設けられた第2防護壁とを備え、前記第1防護壁及び前記第2防護壁は、それぞれの防護壁に対して回動可能に取り付けられた第1防御部材と第2防御部材とを有し、前記第1防御部材と前記第2防御部材は、閉塞した状態で違いに固定可能な施解錠装置を備えてもよい。
【0019】
係る構成を採用することにより、防御部材によって開閉扉を保護できることに加え、仮に施解錠装置を破壊して第1防御部材及び第2防御部材を開いたとしても、防御部材や第2回動部材が邪魔となり、開閉扉の接触部をこじ開けるのをてこずらせることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る開閉扉の防犯構造体としては、前記施解錠装置は、鍵部と把持部とその間に配置される柄部と、を備えた鍵部材と、少なくとも一部から前記柄部を挿入可能な鍵挿入部と前記鍵挿入部に連結され前記柄部を移動可能な第1柄部移動溝部とを有する第1板部材と、前記第1柄部移動溝部に前記柄部が挿入された前記鍵部材の前記鍵部を通過させる第1鍵通過部を有する鍵通過部材と、前記第1鍵通過部を通過された前記鍵部で施解錠可能に形成された施解錠部と、
を備えた錠前部材を備えていてもよい。
【0021】
係る構成を採用すれば、鍵部材の柄部が第1板部材の第1柄部移動溝部を移動して、かつ、鍵部が鍵通過部材の第1鍵通過部を通過しなければ、鍵部が施解錠部材に到達することができない。このように鍵部が施解錠部材へ到達するために、一定の径路を通過しなければならない構成を採用したことによって、施解錠装置の外側から鍵、ピッキング用具等の部材を施解錠部材に接触させることができない。従って、施解錠部材がピッキング等の悪意のある手段で施解錠されにくくなる。また、施解錠部材の外側には、第1板部材、鍵通過部材が存在するので、ドリル等の破壊手段も施解錠部材へ到達させづらくできる。結果として、泥棒等がかぎを破壊するのを躊躇させることができ、仮に破壊工作を行っても時間が掛かるので、その間に泥棒を発見し易くなる。
【0022】
さらにまた、本発明に係る開閉扉の防犯構造体としては、さらに、前記第1板部材と前記鍵通過部材との間に配置され、前記第2鍵通過部と前記第2柄部移動溝部とを有している1又は2以上の中間部材を備えてもよい。
【0023】
係る構成を採用すれば、鍵部が施解錠部へ到達するのに、柄部が第1板部材の第1柄部移動溝部を移動した後、鍵部が鍵通過部材の第1鍵通過部を通過するまでの間に、さらに柄部が中間部材の第2柄部移動溝部を通過し、鍵部が前記第2鍵通過部を通過しなければならない。そのため、鍵部が施解錠部に到達するためには、さらに複雑な径路を辿ることになり、施解錠部がピッキング等の悪意のある手段で施解錠され難くなる。なお、中間部材の枚数を増加することによって、より複雑な径路とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、防護壁は少なくとも開閉扉の回動部材、例えば蝶番、ヒンジ等を保護するように覆うことにより、バールや電動工具等の工具を挿入することを防止することができる。結果として、自動販売機や金庫等の盗難防止効果を一段と高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1には、本発明の第1実施形態に係る開閉扉の防犯構造体の斜視図及び平面図が示されている。
【図2】図2には、本発明の第2実施形態に係る開閉扉の防犯構造体の斜視図及び平面図が示されている。
【図3】図3には、本発明の第3実施形態に係る開閉扉の防犯構造体の斜視図及び平面図が示されている。
【図4】図4には、本発明の第4実施形態に係る開閉扉の防犯構造体の斜視図が示されている。
【図5】図5には、本発明の第5実施形態に係る開閉扉の防犯構造体の斜視図が示されている。
【図6】図6には、本発明の第5実施形態に係る開閉扉の防犯構造体の第1防御部材及び第2防御部の開閉状態を示す平面図が示されている。
【図7】図7には、本発明の第5実施形態に係る開閉扉の防犯構造体の別実施形態の斜視図が示されている。
【図8】図8には、本発明の第5実施形態に係る開閉扉の防犯構造体の別実施形態の斜視図が示されている。
【図9】図9には、本発明に係る開閉扉の防犯構造体の防御部材に取り付けられる施解錠装置の斜視図である。
【図10】図10には、本発明に係る開閉扉の防犯構造体の防御部材に取り付けられる施解錠装置の鍵部材の側面図が示されている。
【図11】図11には、本発明に係る開閉扉の防犯構造体の防御部材に取り付けられる施解錠装置の平面断面図が示されている。
【図12】図12には、本発明に係る開閉扉の防犯構造体の防御部材に取り付けられる施解錠装置の錠前部材を分解した斜視図が示されている。
【図13】図13には、本発明に係る開閉扉の防犯構造体の防御部材に取り付けられる施解錠装置の平面断面図が示されている。
【図14】図14には、本発明に係る開閉扉の防犯構造体の防御部材に取り付けられる別実施形態の施解錠装置の鍵部材が示されている。
【図15】図15には、本発明に係る開閉扉の防犯構造体の防御部材に取り付けられる別実施形態の施解錠装置の錠前部材を分解した斜視図が示されている。
【図16】図16には、本発明に係る開閉扉の防犯構造体の防御部材に取り付けられる別実施形態の施解錠装置の錠前部材を構成する第1板部材、中間部材及び鍵通過部材を並列にならべた模式図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、自動販売機に応用した例を図面に沿って、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一の符号が付されている。
【0027】
(第1実施形態)
第1実施形態の開閉扉の防犯構造体100は、図1に示されるように、収納部10と、片開きの開閉扉20と、防護壁30とを備えている。
【0028】
収納部10は、商品、金銭等を収容する部材であり、例えば、自動販売機であれば、缶ジュース、PETボトル、ビール、たばこといった商品を収容し、かつ売上金を収容する箱体である。収容部は、その用途に応じて適宜選択されるものであり、特に限定するものではない。
【0029】
開閉扉20は、開閉扉20の一側方に蝶番、ヒンジ等の回動部材を備えた扉取付部材21で取り付けられて、一方側からのみ開閉できる扉である。右開き、左開きは問わない。第1実施形態では、上面と下面にヒンジ(回動部材)21が設けられた右開きの開閉扉を用いている。
【0030】
防護壁30は、収納部10の外枠に沿って形成された板状の枠体をなし、収納部10に取り付けられている。防護壁30は、開閉扉20側、すなわち正面側に板状の枠体が突出するように形成されている。従って、開閉扉20を閉じた状態のとき、防護壁30は、収納部10と開閉扉20との接触部Aの上面、両側面を覆うように配置される。さらに、防護壁30は、上面端部にある回動部材の扉取付部材21の回動部分のうち、少なくとも接触部Aに位置する部分を覆うように配置される。
【0031】
係る構成によって、扉取付部材21は、防護壁30に覆われているので、バールや電動のこぎり等の工具を接触部Aに位置する扉取付部材21に接触させることが困難になり、高い防犯機能を有する開閉扉の防犯構造体100とすることができる。また、第1実施形態においては、扉取付部材21のみではなく、収納部10の上面、両側面をも覆っているので、バールや電動のこぎり等を上面、両側面からも挿入することが困難になり、高い防犯機能を有するものとなる。
【0032】
(第2実施形態)
第2実施形態の開閉扉の防犯構造体100が図2に示されている。第2実施形態の開閉扉の防犯構造体100が、収納部10と、片開きの開閉扉20と、防護壁30とを備えている点は第1実施形態と同様である。また、収納部10と片開きの開閉扉20の構造は第1実施形態と同様である。
【0033】
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では防護壁30が収納部10に設けられているのに対し、第2実施形態では防護壁30の蝶番側以外が開閉扉20に設けられている点が異なる。防護壁30は、開閉扉10の外枠に沿うように形成された板状の枠体をなし、収納部側10、すなわち、裏側に板状の枠体が突出するように開閉扉20に取り付けられている。また、左側面の防護壁30は、収納部10に接触部Aを覆うように、開閉扉20側、すなわち正面側に板状の枠体が突出するように収納部10に形成されている。従って、開閉扉20を閉じた状態のとき、防護壁30は、収納部10と開閉扉20との接触部Aの上面、側面を覆うように配置される。さらに、防護壁30は、上面端部にある回動部材の扉取付部材21の回動部分のうち、少なくとも接触部Aに位置する部分を覆うように配置される。
【0034】
よって、第2実施形態は、第1実施形態と同様の効果を有する。さらに、防護壁の厚さとして、開閉扉の厚さα以上の突き出し長さβを有して形成するとよい。突き出し長さαが長ければ長いほど、バールや電動のこぎり等の工具を差し込みづらくなるからである。
【0035】
(第3実施形態)
第3実施形態の開閉扉の防犯構造体100が図3に示されている。第3実施形態の開閉扉の防犯構造体100が収納部10と、片開きの開閉扉20と、防護壁30とを備えている点は第1実施形態と同様である。また、収納部10、片開きの開閉扉20の構造は、第1実施形態と同様である。
【0036】
第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では、防護壁30が収納部10のみに設けられているのに対し、第3実施形態では収納部10及び開閉扉20の両方に防護壁30が設けられている点が異なる。防護壁30aは、開閉扉20側、すなわち正面側に板状の枠体が突出するように形成されている。さらに、別の防護壁30bが、開閉扉20側に板状の枠体が開閉扉20を閉じた場合に、前述の防護壁30aの外側から覆うように収納部10に取り付けられている。また、防護壁30bが開閉扉側、すなわち正面側に板状の枠体が突出するように形成されている。従って、開閉扉20を閉じた場合には、防護壁30aと防護壁30bが重なって配置される。よって、バールや電動のこぎり等の工具を各防護壁30aと30bとの間に差し込んだとしても、30aが邪魔をして接触部Aに工具を到達させることができなくなる。
【0037】
(第4実施形態)
第4実施形態の開閉扉の防犯構造体100は、図4に示されている。第4実施形態の開閉扉の防犯構造体100が収納部10と、片開きの開閉扉20と、防護壁30とを備えている点は第1実施形態と同様である。また、収納部10、片開きの開閉扉20の構造は、第1実施形態と同様である。
【0038】
第4実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では、防護壁30が収納部10に設けられているのに対し、第4実施形態では防護壁30を完全に別部材で作製してある。図4に示されるように、両側面にある防護壁30は、上端、中央、下端からそれぞれ背面側裏側まで延設されている。また、上面にある防護部材30は左右の両端から背面裏側まで延設されている。係る構成を採用することによって、収納部10全体を周囲から覆うように防護壁30を形成することができる。従って、例えば、市販の自動販売機を使用しても、単に本防護壁を被せるだけで、収納部10と開閉扉20との接触部Aの上面、両側面を覆うように配置することができ、さらに、上面端部にある扉取付部材21の回動部分を含むように覆うことができる。
【0039】
係る構成を採用することによって、市販の収納体、例えば、自動販売機、金庫等に被せるように配置すれば、高い防犯構造を有する開閉扉の防犯構造体100とすることができる。
【0040】
なお、側面及び上面から延設される防護壁30は、図4に示されるように、一部のみ延設する必要はなく、側面、上面の全体を覆うように形成してもよい。
【0041】
(第5実施形態)
第5実施形態の開閉扉の防犯構造体100は、図5、6に示されている。収納部10と、片開きの開閉扉20と、防護壁30とを備えている点は第1実施形態と同様である。収納部10、片開きの開閉扉20の構造は、第1実施形態と同様であるが、収納部10と片開きの開閉扉20とを回動させる扉取付部材21として、ヒンジではなく側面に設けられた蝶番を使用している。
【0042】
第5実施形態における防護壁30は、収納体正面から見て左側面に設けられた第1防護壁30cと、右側面に設けられた第2防護壁30dとを備えている。図6aに示されるように、第1防護壁30cは、板状の部材が収納部10、開閉扉20、左側面側の接触部A’及び蝶番21を覆うように取り付けられている。さらに、第1防護壁30cは開閉扉20側に突出するように、すなわち正面側に突出するように形成されている。第1防護壁30cの正面側突出の先端には、板状部材からなる第1防御部材50aが、蝶番からなる第2回動部材40aにおいて第1防護壁30cと回動自在となるように設けられていて、閉じた場合には開閉扉の一部正面を覆うことができる。一方、第2防護壁30dは、収納部10と開閉扉20と右側面側の接触部A”を覆うように、かつ開閉扉20から正面側に突出するように、板状部材が右側面の収納部10に取り付けられている。第2防護壁30dの正面側突出部の先端には、第2防護壁30dと第2回動部材40bで回動自在となるように第2防御部材50bが設けられていて、閉じた場合に開閉扉20の一部正面を覆うことができる。第1防御部材50aと第2防御部材50bとは、図6bに示されるように、それぞれの先端は互いに一部が重なりあうように、第2防御部材の先端が屈曲されている。第2防御部材50bには、開口部70が設けられていて、商品が展示されている部位や、金銭を投入する部位、金銭を取り出す部位、商品を取り出す部位等が開口されて、視認できたり、金銭の投入や、金銭又は商品を取り出したりすることができる。
【0043】
重なりあった部分には、鍵によって開閉可能な施解錠装置80が取り付けられていて、自在に施錠及び解錠を行うことができる。
【0044】
こうして作製された開閉扉の防犯構造体100は、自動販売機の収納部10と開閉扉20の左右の接触領域Aが覆われているので、バールや電動のこぎり等の工具によってこじ開けるのが非常に困難なものとなる。また、自動販売機の収納部10と開閉扉20の左右の接触領域は、蝶番にバールや電動のこぎり等の工具等を挿入しようとしても、第1防護壁30cと第1防御部材50aとの間、第2防護壁30dと第2防御部材50bとの間には蝶番40a、40bが存在するため、この蝶番40a、40bが邪魔になって、バールや電動のこぎり等の工具が非常に挿入しづらく、また、挿入したとしても開閉作業が非常に行いづらくなる。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態で何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施し得るものである。
【0046】
例えば、上述した実施形態においては、第2防御部材50bとして、ほぼ正面全体を覆うことができる板状を使用しているが、図7に示されるように、第2防御部材50bの上下の幅を狭く開閉扉の一部のみを覆うことができるように形成してもよい。さらに、図8に示されるように、第2防御部材bを丸い棒状に形成して平行に配し、その先端に第1防御部材50aと重なり合うような第2突出部を有する長尺の板状体51bを設けた形態にしてもよい。係る構成を採用しても上述の効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、例えば、上述した実施形態においては、第1防護壁10a及び第2防護壁10bは収納部10に取り付けられているが、図7に示されるように、第1防護壁10a及び第2防護壁10bを背面まで延長して、周囲を覆うように形成してもよい。
【0048】
また、施解錠装置については、鍵によって開閉可能な施解錠装置、暗唱番号入力方式、カード方式、非接触ICチップ方式等種々の施錠装置が用いられている。より防犯機能を高めるために、以下の構成の施解錠装置を用いてもよい。実施形態の施解錠装置105は、図9に示されるように、鍵部材110と錠前部材120とを備えている。
【0049】
鍵部材110は、図10に示されるように、鍵部111、柄部112及び把持部113を備えている。鍵部111は、施解錠部150(図11参照)に直接挿入又は係止されて施解錠動作を行う部分であり、鍵穴差し込み式のキーである。柄部112は、鍵部111と把持部113とを連結する部分であり、本実施形態においては、柄部112は断面円形の長尺ロッドに形成されている。把持部113は、柄部112及び鍵部111を移動させたり、回転させたりするための部位である。本実施形態においては、棒状体が柄部112とT字型をなすように取り付けられ把持部113をなしている。
【0050】
錠前部材120は、図9、図11に示されるように、第1板部材130、鍵通過部材140及び施解錠部150を備えている。
【0051】
第1板部材130は錠前部材120で最も表面側に配置される板部材であり、図12に示されるように第1柄部移動溝部131が設けられている。第1柄部移動溝部131には溝が迷路状に設けられていて、鍵部材110の鍵部111は第1板部材130の表裏を通過することができないが、鍵部材110の柄部112は溝に沿って自在に移動することができる。迷路の形状は特に限定するものではない。施解錠する際には柄部112を通過させる必要のない溝を設けてもよい(例えば131b)。当然、迷路は複雑に形成すればするほど、鍵部111を正しい径路で辿らせるのが困難になり、ピッキング等の防止効果が高まる。第1柄部移動溝部131には、溝内に鍵部111の柄部112を挿入することができるように、その一部に鍵を挿入することができる大きさの穴で形成された鍵挿入部132が設けられている。
【0052】
鍵通過部材140は、鍵部111を通過させて最終的に施解錠部150へ通じる第1鍵通過部141として穴が形成されている。すなわち、施解錠部150は第1鍵通過部141の真裏に配置される。また、第1鍵通過部141は、第1板部材130の第1柄部移動溝部131を移動している鍵部111を通過させることができるように、第1柄部移動溝部131の存在する部分の裏側に設置される。また、鍵通過部材140は、鍵部111が第1板部材130と鍵通過部材140との間を移動できるように、第1板部材130と鍵通過部材140との間に鍵部111より若干広い間隙を設けて裏側に配置されている。第1板部材130と鍵通過部材140との周囲には、第1板部材130と鍵通過部材140との間隙内を外部から視認することができないように、側壁170を設けることが好ましい。周囲を覆うことで第1鍵通過部141の位置が外部から認識することができなくなり、第三者による施解錠部へのピッキング等の意欲を削ぐことができる。鍵通過部材140は、完全に別部材として作製して施解錠部150の相当位置に取り付けてもよいが、図11に示されるように開閉扉180の一部として形成してもよい。
【0053】
施解錠部150は、特に限定するものではなく、外側から物理的操作によって施解錠することができる形態のものであれば、種々の錠前を用いることができる。先述したように、施解錠部150は、鍵通過部材140の鍵通過部141の裏側に配置され、第1鍵通過部141を通過した鍵部111によって、施解錠部150は施解錠される。
【0054】
以上詳述した実施形態の施解錠装置105は、以下のようにして使用される。まず、鍵部材110を第1板部材130の鍵挿入部132から差し込み、鍵部111を第1板部材130と鍵通過部材140との間隙に配置する。そして、鍵部材110の柄部112を第1柄部移動溝部131内で移動させて、鍵部材110を第1鍵通過部141の位置(131a)まで移動させる。次に、鍵部111を第1鍵通過部141に通過させて鍵部111を施解錠部150の鍵穴に係合させる。さらに、鍵部材110を回転することにより施解錠部150は施解錠される。
【0055】
このように鍵挿入部132から施解錠部150までの径路を迷路状に形成することで、施解錠部150の位置が外からでは確認できなく、又は確認しづらくすることができ、鍵穴へ鍵部111を到達させづらくできる。これにより、悪意をもった第三者による施解錠部150の破壊やピッキングによる解錠を防止することができる。
【0056】
(別実施形態)
別実施形態の施解錠装置105は、図13に示されるように、鍵部材110と錠前部材120とを備えている。
【0057】
鍵部材110は、上記実施形態と同様に、鍵部111、柄部112及び把持部113を備えている。別実施形態の鍵部111は、第1実施形態の鍵部が差し込み式のキー形状であったのに対し、図14に示されるように外径が扁円形であって、全体が略扁円形凹状に形成されている。
【0058】
さらに、鍵部材110の柄部112の内部には、摺動可能に棒状体114が内挿されている。棒状体114は、柄部112内部に配置された弾性部材115で把持部113側へ付勢されていて、通常は先端が鍵部111表面より内側に配置されている。棒状体114の把持部側端部には、棒状体114を押圧する円形の押圧部116が設けられていて、押圧部116を押圧することによって、棒状体114は鍵部111表面より外側へ突き出すことになる。
【0059】
錠前部材120は、第1板部材130、中間部材160、鍵通過部材140及び施解錠部150を備えている。
【0060】
第1板部材130は、施解錠装置105で最も表面側に配置される板部材であり、第1柄部移動溝部131が設けられている点は、上述の実施形態と同様である。鍵挿入部132は、迷路上の第1柄部移動溝部131の一部が第1板部材130の端辺まで連続した開口で形成されている。第1柄部移動溝部131には、図15に示されるように、溝に沿って符号が付されている。
【0061】
中間部材160は、鍵通過部材140と第1板部材130との間に配置される部材であり、1又は2以上の中間部材160が配置される。別実施形態においては、図13,15に示されるように、3枚の中間部材160が鍵通過部材140と第1板部材130との間に配置されている。それぞれ第1板部材130と中間部材160aとの間、各中間部材(160a〜160c)同士の間、及び中間部材160cと鍵通過部材140との間には、それぞれ鍵部111が移動できる程度の間隙が形成されている。中間部材160は、図16に示されるように鍵部111の扁円形状とほぼ同様又は若干大きい扁円形の第2鍵通過部162と、この第2鍵通過部162に連続した第2柄部移動溝部161(161a〜161c)が形成されている。第2柄部移動溝部161は、第1板部材130の溝全体と同じ形状の溝又は、その一部と同様の形状に設けられている。従って、第1板部材130を通過した鍵部111は、第1柄部移動溝部131、第2柄部移動溝部161を移動しながら、それぞれの第1鍵通過部141、第2鍵通過部162(162a〜162c)を通過させなければ、施解錠部150に到達させることができない。
【0062】
鍵通過部材140は、上述の実施形態における鍵通過部材と同様であるので、説明を省略する。なお、第1板部材130、中間部材160、鍵通過部材140の側面は、内側が視認できないように側面は塞がれている点も同様である。
【0063】
施解錠部150は、別実施形態においては図13に示されるように、開閉扉の扉枠側に設けられたボルト穴と、このボルト穴と螺合するボルトとで形成されている。ボルトの頭は、外径が鍵部の扁円形と同様の形状である。また、ボルトの頭には、鍵部材110の柄部112内部の棒状体114が嵌挿される嵌挿孔151が形成されている。従って、鍵部111をボルトの頭に被せる際に、押圧部116を押して棒状体114をこの嵌挿孔51に挿入することによって、鍵部111とボルトの互いの位置関係が固定され、鍵部111をボルトの頭に被せ易くなる。そして、鍵部111をボルトの頭に被せて回すことによって、施解錠部150は施解錠される。係る形状の鍵部111と施解錠部150を採用することで、特殊な形状の頭部に適合させた鍵部でなければ、頭部全体を掴んで施解錠させることができなくなる。
【0064】
以上詳述した別実施形態の施解錠装置105は、以下のようにして使用される。まず、鍵部材110を第1板部材130の鍵挿入部132(「こ」の位置)から差し込み、鍵部111を第1板部材130と第1中間部材160aとの間隙に配置する。そして、鍵部材110の柄部112を第1柄部移動溝部131内で「の」を経由しつつ移動させて、鍵部材110を第2鍵通過部162aの位置(「ほ」の位置)まで移動させる。そして、この位置で鍵部111を第1中間部材160aの裏面側に通過させて、第1中間部材160aと中間部材160bとの間隙に配置する。このとき、鍵部111の形状と第2鍵通過部162aの形状は、扁円形をなしているため、鍵部111を特定の回転方向にしなければ、鍵部111を通過させることができない。次に、鍵部材110の柄部112を、第1柄部移動溝部131、第2柄部移動溝部161a内で移動させながら「ほ」の位置から「う」を経由して「こ」の位置まで移動させる。さらに、鍵部111を先ほどと同様に回転方向を第2鍵通過部162bと適合させて第2中間部材160bの第2鍵通過部162bを通過させる。同様にして、鍵部材110の柄部112を、第1柄部移動溝部131、第2柄部移動溝部161a、161b内で移動させながら「こ」の位置から「う」の位置まで移動させる。そして、鍵部111を先ほどと同様に回転方向を第2鍵通過部162cと適合させて第3中間部材160cの第2鍵通過部162cを通過させる。さらに、鍵部材110の柄部112を、第1柄部移動溝部131、第2柄部移動溝部161a、161b及び161c内で移動させながら「う」の位置から「に」、「い」を経由して「よ」の位置まで移動させる。ついで、鍵部111を第1鍵通過部141に通過させる。こうして鍵部111を施解錠部150に到達させ、鍵部111を施解錠部150に被せて回転させることにより施解錠される。
【0065】
別実施形態においては、実施形態における効果に加えて以下の効果を有する。第2柄部移動溝部を迷路状に形成した複数の中間部材が奥行き方向へ並設されている上、各中間部材に鍵部が通過する箇所が特定されているので、鍵部材が迷路状を移動しながら順次奥側(施解錠部材側)へ移動させなければならない。従って、中間部材の枚数が多くなればなるほど鍵部材を施解錠部材へ移動させるのを難しくでき、時間が掛かるようになる。よって、悪意をもった第三者による施解錠部の破壊やピッキングによる解錠を躊躇させることができる。また、解錠自体も非常に困難なものとなる。また、ドリル等を使用した鍵荒らしの方法を使用したとしても、施解錠部まで到達させるために複数枚の中間部材を破壊しなければならないので、非常に時間が掛かることになる。
【0066】
さらに、鍵挿入部から施解錠部まで到達する径路が複雑になるため、本来の使用者がその径路を忘れてしまったり、分からなくなったりする場合が考えられる。しかし、径路に符号を付しておけば、この符号によって径路を理解できるようにしておけば、使用者は径路を間違えることなく速やかに施解錠部まで鍵部材を到達させることができる。例えば、別実施形態の場合には、「こ、の、ほ、う、こ、う、に、い、く、よ」と柄部を移動させていけば、施解錠部に到達させることができる。このように語呂合わせにしておくと、記憶するのに便利である。
【0067】
なお、本発明は上述した実施形態で何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施し得るものである。
【0068】
例えば、上述した実施形態においては、鍵部材の鍵部は、鍵穴への差し込み式のキー形状、又は全体外径が扁円形の略扁円形凹状に形成したが、これらに限定されるものではなく、図17に示すように、施解錠装置の鍵部111及び施解錠部150の一方又は両方に、ICチップ等の情報の記録や演算をするために集積回路が搭載して、非接触式で開閉可能な施解錠装置としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
防犯構造体 100、収納部 10、開閉扉 20、扉取付部材 21、防護壁 30、30a、30b、第1防護壁 30c、第2防護壁 30d、第2回動部材 40a、第2回動部材 40b、第1防御部材 50a、第2防御部材 50b、開口部 70、施解錠装置 80、施解錠装置 105、鍵部材 110、鍵部 111、柄部 112、把持部 113、棒状体 114、弾性部材 115、押圧部 116、錠前部材 120、第1板部材 130、第1柄部移動溝部 131、鍵挿入部 132、鍵通過部材 140、第1鍵通過部 141、施解錠部 150、中間部材 160、第2柄部移動溝部 161、第2鍵通過部 162、側壁 170、開閉扉 180

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部と、
前記収納部の前面に配置された端部に回動部材を備えた扉取付部材で取り付けられた開閉扉と、
前記開閉扉と前記収納部との接触部のうち、少なくとも1つの前記回動部材を備えた扉取付部材の一部を含みつつ一部又はその全部を覆うように開閉扉、収納部又はその両方に設けられている防護壁と、を備えることを特徴とする開閉扉の防犯構造体。
【請求項2】
前記防護壁が前記収納部の側面及び背面の一部又は全部、又は側面、上部面及び背面の一部又は全部を覆うものであることを特徴とする請求項1記載の開閉扉の防犯構造体。
【請求項3】
前記防護壁に回動可能に取り付けられ、前記開閉扉の正面の少なくとも1部を覆う用に閉塞可能な防御部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の開閉扉の防犯構造体。
【請求項4】
前記防御部材は、開口部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の防犯構造体。
【請求項5】
前記防御部材は前記開閉扉の正面全体又は1部を覆った状態で固定可能な施解錠装置を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の開閉扉の防犯構造体。
【請求項6】
前記防護壁は、左側面に設けられた第1防護壁と、右側面に設けられた第2防護壁とを備え、
前記第1防護壁及び前記第2防護壁は、それぞれの防護壁に対して回動可能に取り付けられた第1防御部材と第2防御部材とを有し、
前記第1防御部材と前記第2防御部材が閉塞した状態で相互に固定可能な施解錠装置を備えていることを特徴とする請求項5に記載の開閉扉の防犯構造体。
【請求項7】
前記施解錠装置は、
鍵部と把持部とその間に配置される柄部と、を備えた鍵部材と、
少なくとも一部から前記柄部を挿入可能な鍵挿入部と前記鍵挿入部に連結され前記柄部を移動可能な第1柄部移動溝部とを有する第1板部材と、前記第1柄部移動溝部に前記柄部が挿入された前記鍵部材の前記鍵部を通過させる第1鍵通過部を有する鍵通過部材と、前記第1鍵通過部を通過された前記鍵部で施解錠可能に形成された施解錠部と、を備えた錠前部材と、
を備えていることを特徴とする請求項5又は6記載の開閉扉の防犯構造体。
【請求項8】
さらに、前記第1板部材と前記鍵通過部材との間に配置され、前記第2鍵通過部と前記第2柄部移動溝部とを有している1又は2以上の中間部材を備えてなることを特徴とする請求項7記載の開閉扉の防犯構造体。
【請求項9】
鍵部及び錠前部材の一方又は両方に、情報の記録や演算をするために集積回路が搭載されており、非接触方式にて施解錠可能であることを特徴とする請求項7又は8記載の防犯構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−261187(P2010−261187A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111889(P2009−111889)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(391028155)株式会社山辰組 (11)
【Fターム(参考)】