説明

防眩ハードコートフィルム、及びそれを用いた偏光板並びに表示装置

【課題】液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、リアプロジェクションディスプレイ、有機ELディスプレイ、SED等に代表される100ppi以上の高精細表示装置の表示面で、表示輝度を低下させずに、外景の映り込みと表示装置表面のギラツキを防止するのに適した防眩ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、1層以上の防眩ハードコート層を設けた防眩ハードコートフィルムであって、該防眩ハードコート層の表面ヘイズと内部ヘイズをそれぞれ別々の方法により発生させる。表面ヘイズは、2種類以上の相分離する樹脂により形成される凸凹により発生させ、内部ヘイズは屈折率1.55以上、防眩ハードコート層の厚み未満の小さい粒子径顔料による内部散乱により発生させる。実用レベルの防眩性と100ppi以上の高精細パネルに用いた場合のギラツキ、色再現性とコントラストを得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、リアプロジェクションディスプレイ、有機ELディスプレイ、SED、フレキシブルディスプレイ、CRTに代表される各種100ppi以上の高精細表示装置の表示面で、表示輝度を低下させずに、外景の映り込みと表示装置表面のギラツキを防止するのに適した防眩ハードコートフィルム、及びそれを用いた偏光板並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に表示装置などの表面に防眩効果を得るには、有機または無機顔料とバインダー樹脂または硬化性樹脂の混合物を基材に塗布し、配合した有機または無機顔料に起因した表面凸凹を形成することが必要である。しかし、配合した有機または無機顔料により表面凸凹を形成した結果、100ppi以上の高精細パネルに使用した場合、顔料によるレンズ効果と光の回折によりギラツキが発生しやすいという問題が生じる。また、ギラツキを抑制するために、顔料を用いて内部ヘイズを高くする方法が提案されているが、内部ヘイズの発生により、透過率の低下が生じ、表示装置の表示輝度を低下させる。また、内部ヘイズにより塗膜が白っぽくなるため、コントラストの低下が著しい。さらには、内部ヘイズを得るために配合した顔料により同時に表面ヘイズの発生と表面粗さが大きくなるため、画面のギラツキや文字ボケといった画像品位の低下を生じる。
【0003】
特開2002−221610号公報(特許文献1)には、透光性樹脂と透光性微粒子とを含む防眩層が積層された防眩フィルムであって、透光性樹脂と透光性微粒子の屈折率の差が0.3以下であって、透光性樹脂が防眩層の表面より0.1〜0.3μm突出してなる防眩フィルムが記載されている。このような防眩フィルムにおいて、仮に透光性樹脂と透光性微粒子の屈折率の差を0.3とした場合、防眩層中の内部ヘイズが大きく、塗膜が白っぽくなるため、透過率とコントラストの低下が著しい。
【0004】
特開2000−267086号公報(特許文献2)には、互いに層分離しやすい複数の種類の樹脂を混合した混合樹脂液を塗布する工程を含む、反射型液晶表示装置用電極基板の製造方法が記載されている。また、特開2001−305316号公報(特許文献3)には、少なくとも2種類の樹脂部を互いに分散保持する構成により、凸凹が形成されてなる樹脂層を有する反射板が記載されている。しかし、これらの基板または反射板は、ディスプレイ内部に使用されるため、表面の映り込み、コントラストの低下は考慮されておらず、解決課題が異なる。
【0005】
特開2004−126495号公報(特許文献4)では、ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む液状組成物を、透明プラスチックフィルムに塗布又は流延し、溶媒を蒸発させ、スピノーダル分解により層分離構造を形成したヘイズ20〜50%の防眩フィルムについて記載されている。しかし、スピノーダル分解により得られたフィルムは、内部ヘイズに比べ表面ヘイズがほとんどであり、表面ヘイズが高い場合、防眩性は非常に高い一方、透過率とコントラストの低下、ギラツキが著しい。
特開2007−58204号公報(特許文献5)には、顔料を含まず、少なくとも2種類の相分離する樹脂を含む防眩ハードコート層を設け、内部ヘイズが0.5%以下、表面ヘイズ/内部ヘイズが2.0以上である防眩ハードコートフィルムが記載されている。しかし、内部ヘイズ小さく表面ヘイズが高い場合、防眩性、透過率やコントラストは実用レベルだが、ギラツキの低下が著しい。
【0006】
特開平6−16851号公報(特許文献6)では、透明基材上にハードコート層を設けた後に賦型フィルムをラミネートし、硬化した後に賦型フィルムを剥離してハードコート層表面に凸凹を付与する方法も提案されている。しかし、この方法では硬化前のハードコート層の塗膜が硬いと賦型フィルムの微細な凸凹を忠実にハードコート層に反映させることが難しい。これを改善するために硬化前のハードコート層の塗膜を軟らかくすると、ラミネート時にハードコート層が流動し易く膜厚が不均一になり易くなり、両者のバランスをとることが困難であるという課題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−221610号公報
【特許文献2】特開2000−267086号公報
【特許文献3】特開2001−305316号公報
【特許文献4】特開2004−126495号公報
【特許文献5】特開2007−58204号公報
【特許文献6】特開平6−16851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、リアプロジェクションディスプレイ、有機ELディスプレイ、SED、フレキシブルディスプレイ、CRT等に代表される各種表示装置の表示面で、表示輝度を低下させずに、外景の映り込みと100ppi以上の高精細表示装置表面のギラツキを防止するのに適した防眩ハードコートフィルム、及びそれを用いた偏光板並びに表示装置を提供することである。
さらに、本発明の他の課題は、各種100ppi以上の高精細表示装置の表示面で、色再現性とコントラストを高く維持できる防眩ハードコートフィルム、及びそれを用いた偏光板並びに表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、防眩ハードコートフィルムにおいて、a)防眩ハードコート層の表面ヘイズと内部ヘイズをそれぞれ別々の方法により発生させることを必須とし、好ましくは、b)表面ヘイズは特定の樹脂Aと特定の樹脂Bの相分離により形成される凸凹により発生させ、かつ内部ヘイズは前記樹脂A及び/又は樹脂Bと屈折率が異なる顔料、好ましくは前記樹脂A及び/又は樹脂Bと屈折率が異なり、その屈折率が1.55以上であって、さらに平均粒子径が防眩ハードコート層の厚み未満である顔料による内部散乱により発生させること、c)防眩ハードコート層表面の中心線平均粗さが0.05μm以上0.25μm未満、突起間距離が100μm以下、表面ヘイズが0.7%以上6.5%以下、かつ鉛筆硬度が2H以上であること、d)防眩ハードコート層の内部ヘイズを発生させる顔料として、平均粒子径1.0μm以上であって防眩ハードコート層の厚み未満の球形ポリスチレンを使用すること、e)ヘイズ値が8.0%以上60.0%未満で、かつ防眩ハードコート層の全光線透過率の低下が1.5%以下、とすることにより、各種表示装置の表示面に装着した際、表示輝度を低下させずに、外景の映り込みと100ppi以上の高精細表示装置表面のギラツキを防止し、色再現性とコントラストを高く維持できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
第1の発明は、透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、少なくとも1層の防眩ハードコート層を設けた防眩ハードコートフィルムであって、前記防眩ハードコート層は、下記に示す樹脂Aと樹脂Bと顔料を含み、防眩ハードコート層の表面ヘイズは該樹脂Aと該樹脂Bの相分離により形成される凸凹により発生させ、かつ内部ヘイズは前記樹脂A及び/又は樹脂Bと屈折率の異なる顔料による内部散乱により発生させることを特徴とする防眩ハードコートフィルムである。
樹脂A:電離放射線硬化型樹脂
樹脂B:電離放射線硬化型樹脂またはポリマー
【0011】
第2の発明は、透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、少なくとも1層の防眩ハードコート層を設けた防眩ハードコートフィルムであって、前記防眩ハードコート層は、下記に示す樹脂Aと樹脂Bと顔料を含み、防眩ハードコート層の表面ヘイズは該樹脂Aと該樹脂Bの相分離により形成される凸凹により発生させ、かつ内部ヘイズは、前記樹脂A及び/又は樹脂Bと屈折率が異なり、その屈折率が1.55以上であって、さらに平均粒子径が防眩ハードコート層の厚み未満である顔料による内部散乱により発生させることを特徴とする防眩ハードコートフィルムである。
樹脂A:電離放射線硬化型樹脂
樹脂B:電離放射線硬化型樹脂またはポリマー
【0012】
第3の発明は、前記防眩ハードコート層表面の中心線平均粗さが0.05μm以上0.25μm未満、突起間距離が100μm以下、表面ヘイズが0.7%以上6.5%以下、かつ鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載の防眩ハードコートフィルムである。
第4の発明は、前記防眩ハードコート層の内部ヘイズを発生させる顔料として、平均粒子径が1.0μm以上であって前記防眩ハードコート層の厚み未満の球形ポリスチレンを使用することを特徴とする第1乃至第3の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムである。
【0013】
第5の発明は、ヘイズ値が8.0%以上60.0%未満で、かつ防眩ハードコート層の全光線透過率の低下が1.5%以下であることを特徴とする第1乃至第4の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムである。
第6の発明は、透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、帯電防止層と第1乃至第5の発明のいずれかに記載の防眩ハードコート層を設けたことを特徴とする防眩ハードコートフィルムである。
【0014】
第7の発明は、前記防眩ハードコート層および/または前記帯電防止層上に、反射防止層を形成することを特徴とする第1乃至第6の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムである。
第8の発明は、前記透明プラスチックフィルムがトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする第1乃至第7の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムである。
【0015】
第9の発明は、第1乃至第8の発明のいずれかに記載された防眩ハードコートフィルムを用いることを特徴とする偏光板である。
第10の発明は、第1乃至第8の発明のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムが、ディスプレイの最表面に設けられたことを特徴とする表示装置である。
【0016】
すなわち、本発明では、表面ヘイズと内部ヘイズを別々の方法により発生させることにより、表面ヘイズによる防眩効果と内部ヘイズによるギラツキ軽減(低減)を各々コントロールすることにより前記の課題を達成することができる。防眩効果は、特定の樹脂Aと特定の樹脂Bの相分離により形成される凸凹により発生させ、好ましくは表面の中心線平均粗さが0.05μm以上0.25μm未満、突起間距離が100μm以下、表面ヘイズが0.7%以上6.5%以下にコントロールする。また、内部ヘイズによるギラツキ軽減は、前記樹脂A及び/又は樹脂Bと屈折率が異なる顔料、好ましくは前記樹脂A及び/又は樹脂Bと屈折率が異なり、その屈折率が1.55以上であって、さらに平均粒子径が防眩ハードコート層の厚み未満である顔料、特に平均粒子径1.0μm以上であって防眩ハードコート層の厚み未満の球形ポリスチレン顔料を使用することにより、表面ヘイズを発生させずに内部散乱のみを得ることで達成される。このような表面ヘイズと内部ヘイズをコントロールし、好ましくは防眩ハードコートフィルムのヘイズを8.0%以上60.0%未満で、かつ防眩ハードコート層の全光線透過率の低下を1.5%以下とすることにより、実用レベルの防眩性と100ppi以上の高精細パネルに用いた場合のギラツキ、色再現性とコントラストを得ることが出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各種100ppi以上の高精細表示装置の表示輝度を低下させずに、外景の映り込みと表示装置表面のギラツキを防止し、色再現性とコントラストを高く維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の防眩ハードコートフィルムは、防眩ハードコート層の表面ヘイズと内部ヘイズをそれぞれ別々の方法により発生させることを特徴とする。ここで、内部ヘイズとは、防眩ハードコート層表面に、顔料を含有しないクリアーコートを施し、表面ヘイズを0にした際のヘイズで、以下のようにして求められる。
内部ヘイズ=(表面ヘイズを0にした防眩ハードコートフィルムのヘイズ)−(透明プラスチックフィルムのヘイズ)
【0019】
また、表面ヘイズとは、以下のようにして求められる。
表面ヘイズ=(防眩ハードコートフィルムのヘイズ)−(表面ヘイズを0にした防眩ハードコートフィルムのヘイズ)
【0020】
本発明において、防眩ハードコート層の表面ヘイズのみを発生させ防眩効果を得るには、相分離する樹脂A及び樹脂Bの少なくとも2種類の成分が含まれるコーティング組成物を透明プラスチックフィルム上に塗布した後に、該樹脂Aと該樹脂Bとがスピノーダル分解により相分離し、均一な表面凹凸を形成させる。また、顔料によって表面ヘイズを発生させていないため、表面ヘイズを発生させるための防眩ハードコート層の内部ヘイズは限りなく0%に近くなる。
樹脂A、樹脂Bの組合せの好ましい例として、少なくとも1つの樹脂Aが電離放射線硬化型樹脂で、少なくとも1つの樹脂Bが電離放射線硬化型樹脂またはポリマーである。
【0021】
樹脂A、樹脂Bとして、例えば、多官能オリゴマーまたは多官能モノマー、あるいは(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ポリシラン系樹脂、ポリイミド系樹脂、またはフッ素系樹脂等などを用いることができる。これらの樹脂は、オリゴマーであってもよい。
【0022】
上述の多官能オリゴマーまたは多官能モノマーとしては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリレートとの脱アルコール反応物、具体的には、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレートなどを用いることができる。
【0023】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂などが挙げられる。
【0024】
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−ノルボルネン系共重合体などが挙げられる。
【0025】
ポリエーテル系樹脂としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート系樹脂などが挙げられる。
【0026】
また、樹脂Bに使用される電離放射線硬化型樹脂として好ましいものは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化可能な多官能アクリレートからなるものが挙げられる。分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート、多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物とアクリル酸とをエステル化することによって得ることができるポリエステル(メタ)アクリレート、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0027】
上記オリゴマー及び樹脂として、上記骨格構造を2種類以上からなる共重合体であってもよく、上記骨格構造とそれ以外のモノマーからなる共重合体であっても良い。
【0028】
本発明における樹脂A及び樹脂Bは、それぞれ、互いに反応し架橋する官能基を有しているのが好ましい。このような官能基を互いに反応させることによって、コーティング組成物によって得られる防眩ハードコート層のハード性と耐擦傷性を向上させることができる。このような官能基しては、例えば、水酸基、酸無水物基、イミノ基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、エチレン性不飽和基、シラノール基、アクリロイル基、オキサゾリン基、カルボニル基などが挙げられる。また、ここで言う互いに反応し架橋する官能基とは、樹脂Aと樹脂Bのみを混合しただけでは反応は進行しないが、触媒または硬化剤を併せて混合することにより、互いに反応するものも含まれる。ここで使用できる触媒としては、例えば、光開始剤、ラジカル開始剤、酸・塩基触媒、金属触媒などが挙げられる。使用できる硬化剤としては、例えば、メラミン硬化剤、(ブロック)イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤などが挙げられる。
【0029】
本発明の樹脂A及び樹脂Bの少なくとも2種類の樹脂成分が含まれるコーティング組成物中には、溶媒が含有される。溶媒としては、前記樹脂Aと樹脂Bの溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分(樹脂A、樹脂Bを含む複数の樹脂及び電離放射線硬化型樹脂、触媒、硬化剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類、アミド類などが例示できる。また、溶媒は混合して使用することもでき、その際、樹脂Aの良溶媒、樹脂Bの良溶媒を混合して使用してもよい。
【0030】
100ppi以上の高精細表示装置表面に防眩ハードコートフィルムを用いた場合のギラツキは、防眩ハードコート表面の形状に大きく影響される。ギラツキを小さくするためには、防眩ハードコート層表面の中心線平均粗さが0.05μm以上0.25μm未満、突起間距離が100μm以下とし、中心線平均粗さと突起間距離のバランスにより表面ヘイズが0.7%以上6.5%以下であることが重要である。中心線平均粗さが0.05μm未満の場合、突起高さが低いため十分な防眩効果が得られず、0.25μm以上の場合は、フィルムの視認性が低下すると共にギラツキも悪化する。また、突起間距離が100μmを超える場合は、十分な防眩性が得られない。表面ヘイズが0.7%未満の場合、十分な防眩性が得られず、6.5%を超えた場合は、色再現性の低下、ギラツキの悪化が生じる。
【0031】
防眩ハードコート層の内部ヘイズのみを効率的に発生させるためには、前記樹脂A及び/または樹脂Bと屈折率が異なっており、好ましくは屈折率1.55以上の防眩ハードコート層の厚み未満の小さい顔料を使用することにより、表面ヘイズを発生させずに内部ヘイズのみが得られる。内部ヘイズを発生させる顔料としては、顔料の屈折率が1.55以上の有機微粒子または無機微粒子を用いることができる。顔料としては、アルミナ(屈折率=1.76)、ジルコニア(屈折率=2.13)、酸化チタン(屈折率=2.50)、酸化スズ(屈折率=2.00)、酸化亜鉛(屈折率=1.90)等の無機微粒子、アクリルスチレン樹脂(屈折率=1.55)、スチレン樹脂(屈折率=1.59)等のポリマービーズが挙げられる。
本発明においては、球形のアクリルスチレン樹脂、スチレン樹脂のポリマービーズが最も好ましい。
【0032】
また、内部ヘイズのみを得、ギラツキを防止するためには、顔料の平均粒子径が重要となる。内部ヘイズを効率よく発生させるためには、1.0μm以上の粒径が好ましい。また、防眩ハードコート層の厚さに対し顔料の平均粒子径は小さいことが必要であり、好ましくは10.0μm以下が好ましい。防眩ハードコート層の厚さ以上の場合は防眩層の表面に顔料に起因した凸凹が発生し、ギラツキ悪化の原因となる。また、10.0μmを超える場合、防眩ハードコート層内に均一に配置し、表面に凸凹を発生させないことが難しくなる。
【0033】
防眩ハードコート層の厚さは、1.0μm以上25.0μm未満の範囲にすることが必要で、好ましくは2.0μm以上20μm未満、特に好ましくは3.0μm以上15.0μm未満である。防眩ハードコート層の厚さが1.0μm未満では、耐擦傷性、鉛筆硬度等が劣る。厚さが25.0μm以上では、カールが発生し易くなる。また、表示装置の薄型化などに対応できない。
【0034】
防眩ハードコート層のヘイズは、8.0%以上60.0%未満が好ましく、10.0%以上50.0%以下が特に好ましい。ヘイズが高い場合(60.0%以上)、ギラツキが軽減されるが、透過率、コントラスト、色再現性の低下が生じる。また、8.0%未満の場合は、100ppi以上の高精細表示体に使用した場合、ギラツキの発生が大きい。
また、防眩ハードコート層の全光線透過率の低下が1.5%以下であることが好ましい。
なお、防眩ハードコ−ト層は少なくとも1層を設ければよいが、2層以上を設けてもよい。防眩ハードコ−ト層を2層以上設ける場合、少なくとも最表層の中心線平均粗さが0.05μm以上0.25μm未満、突起間距離が100μm以下、表面ヘイズが0.7%以上6.5%以下、かつ鉛筆硬度が2H以上であることを満たすことが好ましい。
【0035】
さらに、性能改良のため、本発明の効果を変えない範囲で、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤等を含有することができる。なお、上記帯電防止剤は、防眩ハードコート層に含有してもよいし、帯電防止剤を含有する帯電防止層を別に設けてもよい。
【0036】
本発明では、帯電防止性能を付与する目的で、分子内に導電性ユニットを組み込んだ高分子量タイプの導電性ポリマーまたは金属酸化物を含有する塗工層を形成する。分子量の小さい界面活性剤タイプは、帯電防止性能が経時で低下することとブリーディングの観点で、本用途には適さない。
高分子タイプの導電性ポリマーとしては、ポリエチレンオキシドタイプ、ポリエーテルエステルアミドタイプ、エチレンオキシド・エピハロヒドリン共重合タイプ、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合タイプといったポリエーテル型、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート共重合タイプ、4級アンモニウム塩基含有マレイミド共重合タイプ、4級アンモニウム塩基含有メタクリルイミド共重合タイプといった4級アンモニウム塩型、ポリスチレンスルホン酸ソーダといったスルホン酸型、カルボベタイングラフト共重合タイプといったベタイン型、高分子電荷移動型結合体等を挙げることができる。4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート共重合ポリマーを用いた場合に、特に良好な効果を発現する。ゲルパーミエーションクロマログラフィー(GPC)を用いたポリエチレン標準換算により求められた平均重量分子量が50000〜500000が好ましい。分子量が小さい場合は、造膜性が低く、ブロッキングを起こしやすい。分子量が大きい場合は、バインダーとの相溶性が悪く、不均一な塗料となると共に凝集物が多発する。含有量としては、バインダーを含む固形分100重量部中に対して、10重量部以上40重量部未満である必要がある。少なすぎると、表面への水分子の吸着が十分に起こらず、帯電防止性能が発現しない。多すぎると耐擦傷性の低下が著しい。
【0037】
金属酸化物の帯電防止剤として酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウムなどの金属酸化物微粒子を用いる。尚、比較的少量の添加で良好な帯電防止性が得られる事から、アンチモンをドープした酸化錫(SnO)又は酸化亜鉛(ZnO)を用いる事が好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径は300nm以下が好ましく、より好ましくは平均粒子径100nm以下である。すなわち、ハードコート層の透明性を確保する為に、金属酸化物微粒子の平均粒子径を可視光波長領域よりも小さくする必要がある。尚、金属酸化物微粒子の平均粒子径とは、動的散乱法により求められた平均粒子径を指す。金属酸化物微粒子の含有量は、バインダーを含む固形分100重量部中に対して、15.0重量%〜70.0重量%である事が好ましい。含有量が少なすぎる場合、金属酸化物微粒子同士の接触機会が減少し、ネットワーク形成ができないため、良好な帯電防止性を得る事ができない。一方含有量が多すぎる場合、帯電防止層の透明性及び耐擦傷性が著しく低下する。
【0038】
その他の帯電防止剤として、ポリチオフェン系導電性ポリマー、リチウムイオン系導電剤を用いることができる。
【0039】
帯電防止層に使用するバインダーは、電離放射線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが使用でき、特に限定されるものではないが、耐擦傷性や硬化時間が短い等の点で電離放射線硬化型樹脂が好ましい。電離放射線硬化型樹脂は、電子線または紫外線等を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、及びエポキシアクリレート系樹脂等の中から適宜選択することができる。熱硬化型樹脂は、熱によって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、メラミン系樹脂、アルキッド系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、ウレタン系樹脂、イソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル・メラミン系樹脂等のいずれか、あるいは混合系が挙げられ、適宜選択することが出来る。
【0040】
帯電防止層の膜厚は、特に限定しないが、コストや膜強度の観点から0.08μm以上10.00μm未満、好ましくは0.10μm以上5.00μm未満が好適である。
帯電防止層は、透明プラスチックフィルムに対し、防眩ハードコート層と同じ側に設けてもよいし、その反対側に設けてもよい。また、両側(両面)に設けてもよい。防眩ハードコート層の上に帯電防止層を形成する場合、表面の凸凹を所定の中心線粗さと突起間距離に維持するように形成することが必要である。塗工の工程数、帯電防止層による透過率の低下、コストの観点から、片側に塗工することが好ましい。
【0041】
本発明においては、表面反射率低減のため、上記防眩ハードコート層、および/または上記帯電防止層上に反射防止層を形成することができる。反射防止層の形成材料は、防眩ハードコート層や帯電防止層よりも低い屈折率材料が用いられる。反射防止層を形成する材料としては、例えば、フッ素やシリコン等を分子内に含有した紫外線または熱硬化型アクリル樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン、チタンテトラエトキシド等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料が挙げられる。耐擦傷性の面からは、無機成分含有量が多い材料が優れる傾向にあり、特にゾル−ゲル系材料が好ましい。
【0042】
また、反射防止層の形成材料には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フッ化マグネシウム、セリア等をアルコール溶媒に分散したゾル等を添加しても良い。その他、金属塩、金属化合物などの添加剤を適宜に配合することができる。
反射防止層の膜厚は、防眩ハードコート層表面の反射率を小さくするという点で、100nm前後が好適である。
【0043】
本発明の防眩ハードコートフィルムは、透明プラスチックフィルム上に防眩ハードコート層を形成して得られる。本発明の防眩ハードコートフィルムに使用する透明プラスチックフィルムは、透明なシートまたはフィルム状のものが好ましく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテルフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリシクロオレフィンフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等を挙げることができる。本発明の防眩ハードコートフィルムにおいては、特に光学異方性が無いという特徴から液晶表示体に偏光板の部材として広く使用されているトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)を使用することが好ましい。
【0044】
本発明において、使用する透明プラスチックフィルムの厚さは、5μm以上2000μm未満、好ましくは15μm以上500μm未満、特に好ましくは20μm以上200μm未満の範囲から選択できる。
【0045】
本発明の防眩ハードコートフィルムは、上述の防眩ハードコート層、帯電防止層、反射防止層の塗料組成物を公知の塗工装置を用いて透明な支持体上に形成することによって得られる。公知の塗工装置としては、マイクログラビアコーター、グラビアコーター、マイヤーバーコーター、ダイコーター等の塗工装置を使用できる。塗工時の塗料組成物の粘度、濃度は使用する塗工装置により、適切な値に調整できる。
【0046】
本発明の防眩ハードコートフィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、リアプロジェクションディスプレイ、有機ELディスプレイ、SED、フレキシブルディスプレイ、CRT等に代表される特に100ppi以上の高精細表示装置の表示面に設けることが好適である。
また、本発明の防眩ハードコートフィルムは、偏光板に用いることも好適である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」は特に明示しない限り、「重量部」を表わす。
[実施例1]
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:フジタック、富士フィルム社製)の一方の面に、下記表1の塗料組成物1をバーコーターにて塗工し、80℃のドライヤーで希釈溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用い300mJ/cm2の紫外線光を照射し、防眩ハードコートフィルムを得た。このときの塗工層の厚みは7.0μmであった。
【0048】
【表1】

【0049】
なお、塗料組成物は、溶剤(エタノール+トルエン)中に、攪拌しながら他の化合物を順次添加し、均一になるまで常温で溶解して作製した。
【0050】
[実施例2]
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:フジタック、富士フィルム社製)の一方の面に、下記表2の塗料組成物2をバーコーターにて塗工し、80℃のドライヤーで希釈溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用い300mJ/cm2の紫外線光を照射し、防眩ハードコートフィルムを得た。このときの塗工層の厚みは10.0μmであった。
【0051】
【表2】

【0052】
[実施例3]
塗料組成物において、下記表3の塗料組成物3を用いた以外は、実施例2と同様にして防眩ハードコートフィルムを得た。
【0053】
【表3】

【0054】
[実施例4]
塗料組成物において、下記表4の塗料組成物4を用いた以外は、実施例2と同様にして防眩ハードコートフィルムを得た。
【0055】
【表4】

【0056】
[実施例5]
厚さ75μmのポリエステルフィルム(商品名:A4100、東洋紡社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして防眩ハードコートフィルムを得た。
[実施例6]
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:フジタック、富士フィルム社製)の一方の面に、下記表5の塗料組成物5をバーコーターにて塗工し、80℃のドライヤーで希釈溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用い300mJ/cm2の紫外線光を照射し、帯電防止層を形成した。このときの塗工層の厚みは1.00μmであった。帯電防止層の上に、実施例2に記載の防眩ハードコート層を形成し、帯電防止防眩ハードコートフィルムを得た。
【0057】
【表5】

【0058】
[実施例7]
実施例2に記載の防眩ハードコート層を形成した後、その上に、テトラエトキシシランに1.0N−塩酸を触媒に用いた反射防止剤をオーバーコートした。その後、120℃で1分間乾燥することにより反射防止層を形成し、反射防止防眩ハードコートフィルム得た。このときの反射防止層の厚みは100nmであった。
【0059】
[比較例1]
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:フジタック、富士フィルム社製)の一方の面に、下記表6の塗料組成物6をバーコーターにて塗工し、80℃のドライヤーで希釈溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用い300mJ/cm2の紫外線光を照射し、防眩ハードコートフィルムを得た。このときの塗工層の厚みは7.0μmであった。
【0060】
【表6】

【0061】
[比較例2]
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:フジタック、富士フィルム社製)の一方の面に、下記表7の塗料組成物7をバーコーターにて塗工し、80℃のドライヤーで希釈溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用い300mJ/cm2の紫外線光を照射し、防眩ハードコートフィルムを得た。このときの塗工層の厚みは5.0μmであった。
【0062】
【表7】

【0063】
[比較例3]
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:フジタック、富士フィルム社製)の一方の面に、下記表8の塗料組成物8をバーコーターにて塗工し、80℃のドライヤーで希釈溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用い300mJ/cm2の紫外線光を照射し、防眩ハードコートフィルムを得た。このときの塗工層の厚みは5.0μmであった。
【0064】
【表8】

【0065】
[比較例4]
塗料組成物において、下記表9の塗料組成物9を用いた以外は、実施例1と同様にして防眩ハードコートフィルムを得た。
【0066】
【表9】

【0067】
<測定方法>
上記各実施例及び各比較例で得られた防眩ハードコートフィルムについて、下記の項目についてそれぞれ評価を行い、結果を表13に纏めて示した。
・ヘイズ:ヘイズメーターHM150(村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
・内部ヘイズ:防眩ハードコートフィルムの防眩ハードコート層表面に、顔料を含有しないクリアーコートを施し、表面ヘイズを0にした。
内部ヘイズ=(表面ヘイズを0にした防眩ハードコートフィルムのヘイズ)−(透明プラスチックフィルムのヘイズ)
・表面ヘイズ=(防眩ハードコートフィルムのヘイズ)−(表面ヘイズを0にした防眩ハードコートフィルムのヘイズ)
・透過率低下:試料の透過率をヘイズメーターHM150(村上色彩技術研究所製)を用いて測定し、下記の式より求めた。
透過率低下=防眩ハードコートフィルムの透過率−透明プラスチックフィルムの透過率
・ギラツキ:150ppiのパネル上にサンプルを貼り合せ、目視でギラツキを評価した。非常に良好:◎、実用レベルで良好:○、不良:×
・鮮明性:写像性測定機ICM−1DP(スガ試験器社製)を使用し、JIS K 7105に準拠して測定し、光学櫛の合計値を記載した。鮮明性150以上;非常に良好◎、鮮明性100〜149;良好○、鮮明性99以下;不良×
・防眩性:フィルム表面の反射度合を目視によって評価した。非常に良好:◎、良好:○、やや不良:△、不良:×
・色再現性:防眩ハードコート処理の反対面に黒スプレー処理をし、黒濃度を測定した。2.10以上;非常に良好◎、2.05〜2.10;良好○、2.05以下;不良×
・中心線平均粗さ及び突起間距離:接触式表面粗さ計SE-30K(小坂研究所社製)を使用し評価した。
・塗膜密着度:JIS K 5400の碁盤目テストにより評価した(隙間間隔1mm)。
・鉛筆硬度:HEIDON14を使用し、JIS K 5400に準拠して実施した。2H以上であることが望ましい。
【0068】
【表10】

【0069】
表10の結果より以下のことが分かる。
すなわち、顔料を全く含有しない比較例1の防眩ハードコートフィルムに比べ、防眩ハードコート層の表面ヘイズと内部ヘイズをそれぞれ別々の方法により発生させることを必須とし、樹脂Aと樹脂Bの相分離により形成される凸凹により表面ヘイズによる防眩効果を発生させ、表面の中心線平均粗さが0.05μm以上0.25μm未満、突起間距離が100μm以下、表面ヘイズを0.7%以上6.5%以下とし、内部ヘイズは、樹脂A及び/又は樹脂Bと屈折率が異なり、屈折率1.55以上であって防眩ハードコート層の厚み未満の小さい粒子径顔料により発生させ、ヘイズ値を8.0%以上60.0%未満とした実施例1〜7は、いずれも100ppi以上の高精細表示装置表面のギラツキを防止し、色再現性とコントラストを高く維持できた。これに対し、表面ヘイズと内部ヘイズを顔料を用いて発生させた比較例2と3は、鮮明性、色再現性の低下が著しかった。また、2種類の樹脂を用いたが、顔料を全く含有せず、内部ヘイズは低いが表面の中心線平均粗さが大きい比較例4は、ギラツキと色再現性の低下が著しいことが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、少なくとも1層の防眩ハードコート層を設けた防眩ハードコートフィルムであって、前記防眩ハードコート層は、下記に示す樹脂Aと樹脂Bと顔料を含み、防眩ハードコート層の表面ヘイズは該樹脂Aと該樹脂Bの相分離により形成される凸凹により発生させ、かつ内部ヘイズは前記樹脂A及び/又は樹脂Bと屈折率の異なる顔料による内部散乱により発生させることを特徴とする防眩ハードコートフィルム。
樹脂A:電離放射線硬化型樹脂
樹脂B:電離放射線硬化型樹脂またはポリマー
【請求項2】
透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、少なくとも1層の防眩ハードコート層を設けた防眩ハードコートフィルムであって、前記防眩ハードコート層は、下記に示す樹脂Aと樹脂Bと顔料を含み、防眩ハードコート層の表面ヘイズは該樹脂Aと該樹脂Bの相分離により形成される凸凹により発生させ、かつ内部ヘイズは、前記樹脂A及び/又は樹脂Bと屈折率が異なり、その屈折率が1.55以上であって、さらに平均粒子径が防眩ハードコート層の厚み未満である顔料による内部散乱により発生させることを特徴とする防眩ハードコートフィルム。
樹脂A:電離放射線硬化型樹脂
樹脂B:電離放射線硬化型樹脂またはポリマー
【請求項3】
前記防眩ハードコート層表面の中心線平均粗さが0.05μm以上0.25μm未満、突起間距離が100μm以下、表面ヘイズが0.7%以上6.5%以下、かつ鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記防眩ハードコート層の内部ヘイズを発生させる顔料として、平均粒子径が1.0μm以上であって前記防眩ハードコート層の厚み未満の球形ポリスチレンを使用することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項5】
ヘイズ値が8.0%以上60.0%未満で、かつ防眩ハードコート層の全光線透過率の低下が1.5%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項6】
透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、帯電防止層と請求項1乃至5のいずれかに記載の防眩ハードコート層を設けたことを特徴とする防眩ハードコートフィルム。
【請求項7】
前記防眩ハードコート層および/または前記帯電防止層上に、反射防止層を形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項8】
前記透明プラスチックフィルムがトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された防眩ハードコートフィルムを用いることを特徴とする偏光板。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の防眩ハードコートフィルムが、ディスプレイの最表面に設けられたことを特徴とする表示装置。


【公開番号】特開2008−299007(P2008−299007A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144005(P2007−144005)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(502368059)日本製紙ケミカル株式会社 (86)
【Fターム(参考)】