説明

防磁装置

【課題】交番磁界を鍋などの調理具に作用させて、調理具に発生する誘導電流で調理具を加熱するIHコンロでは、調理具が載置されている上方に向かって放出される磁束の一部が空中へと漏洩し、IHコンロの周りに拡がる。従来からこのような漏洩磁束を減少させるため各種の防磁手段が考案されているが、IHコンロ内に設けるものでは上方に漏洩する磁束を有効に防止することができない。
【解決手段】IHコンロを磁性体からなる板状の防磁装置2,3で囲繞し、漏洩した磁束LFを防磁装置2,3に引き込むことにより、漏洩磁束が外部に拡がらないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IHコンロから放出される漏洩磁束が広がらないようにする防磁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IHコンロと呼ばれる電磁調理器具では、鍋などの調理具が載置される天板で上面が覆われている。この天板の下方には加熱コイルが設置されており、加熱コイルから放出される交番磁界によって調理具に誘導電流が発生し、その誘導電流によって調理具自体が発熱する。
【0003】
加熱コイルで発生する磁束は全て調理具内を通過するわけではなく、いくらかは外部へと漏洩する。そこで、加熱コイルの下方にフェライト性の板材を設置して磁束の方向を絞り込むと共に、磁束の漏洩量を少なくするため防磁手段をIHコンロ内に設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−294434号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の防磁手段をIHコンロ内に設けても、天板上の調理具に磁束を作用させなければ調理具が加熱されないので、天板を通過して上方へ向かう磁束の一部は、IHコンロ内に防磁手段を設けてもIHコンロの外部へと漏洩する。従って、防磁手段をIHコンロ内にのみ設けていたのでは磁束の漏洩を完全に防止することはできない。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、外部に漏洩した磁束が広がらないようにする防磁装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明による防磁装置は、カウンタトップに開設された窓状の取付穴内に吊設されるIHコンロから放出される漏洩磁束の拡がりを防止する防磁装置であって、カウンタトップの下面に設置され、IHコンロを囲繞する磁性体からなる防磁板で構成したことを特徴とする。
【0007】
天板を通過してIHコンロの上方に放出される磁束の一部は、天板上の調理具に入らず、空中へと漏洩する。その漏洩した磁束はIHコンロの外周を通って再びIHコンロ内に帰って行く。その漏洩磁束の通路近傍に防磁板を設置すると、漏洩磁束は磁気抵抗の大きい空間より磁気抵抗の小さい防磁板へと流れる。防磁坂内に入った漏洩磁束は防磁坂内を通ってIHコンロへと帰還する。
【0008】
防磁板はIHコンロの筐体に当接していた方が、漏洩磁束の期間路の磁気抵抗が小さくなり望ましい。ところが、防磁板がIHコンロの筐体に当接する位置に防磁板を固定すると、IHコンロを取り付けることができない。そこで、上記防磁板の少なくとも一部がIHコンロの筐体に当接するように移動自在に構成すれば、IHコンロを取り付ける際には、防磁板が退避しており、IHコンロを散り付けたあと、防磁板をIHコンロの筐体に当接させることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明は、IHコンロを磁性体からなる防磁板で囲繞したので、IHコンロの外部に漏洩した磁束を防磁板に集め、防磁装置内を通してIHコンロへと帰還させるので、漏洩磁束が空間へ拡がることが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照して、1はIHコンロであり、木製のカウンタトップCTに取り付けられている。図2に示すように、カウンタトップCTにはIHコンロ1の筐体11より大きな窓状の取付穴WHが開設されており、IHコンロ1はカウンタトップCTの上方から筐体11をこの取付穴WH内に挿入するようにセットして、カウンタトップCTに吊設されている。なお、筐体11は磁性体である鋼板で形成されている。
【0011】
本発明による防磁装置は筐体11と同じく磁性体である鋼板で形成された1対のステイ部材2と、同じく1対のスライド部材3とか構成されている。図3を合わせて参照して、ステイ部材2はカウンタトップCTの下面にネジ21で固定されている。そして、スライド部材3はこのステイ部材2とカウンタトップCTの下面との間にスライド自在に挟持されている。
【0012】
図4に示すように、スライド部材3には半抜き加工により、各々4個のボス31が形成されている。一方、ステイ部材2にはこれらボス31が挿入される長穴状のガイド穴22が形成されている。
【0013】
IHコンロ1をカウンタトップCTに取り付ける際にはスライド部材3を外側に移動させておき、筐体11に干渉しないようにする。そして、IHコンロ1の取付が完了すると、スライド部材3を筐体11側にスライドさせて、スライド部材3の先端部32を筐体11に当接させる。なお、先端部32と筐体11との当接面積を広く確保するため、先端部32を下方に90度折り曲げた。
【0014】
以上の構成で、IHコンロを作動させると、図4に示すように、IHコンロ1の天板10を貫通して情報に漏洩した磁束LFはそのまま大きく空中に拡がろうとするが、磁気抵抗の小さいスライド部材3やステイ部材2が設置されているので、スライド部材3などに磁束LFが吸い寄せられ、スライド部材3やステイ部材2の設置部分より外側に拡がらなくなる。そして、スライド部材3やステイ部材2に吸い寄せされた磁束LFはスライド部材3やステイ部材2内に入り、それらの内部を通って筐体11へと移動する。そして、筐体11からIHコンロ1内部へと磁束LFが帰還する。
【0015】
ところで、上記実施の形態では防磁装置であるステイ部材2とスライド部材3とをカウンタトップCTに保持させたが、IHコンロ1の筐体11やその他の場所に保持させてもよい。
【0016】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】防磁装置の構成を示す平面図
【図3】III-III断面図
【図4】IV-IV断面図
【符号の説明】
【0018】
1 コンロ
2 ステイ部材
3 スライド部材
10 天板
11 筐体
21 ネジ
22 ガイド穴
31 ボス
32 先端部
CT カウンタトップ
LF 磁束
WH 取付穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンタトップに開設された窓状の取付穴内に吊設されるIHコンロから放出される漏洩磁束の拡がりを防止する防磁装置であって、カウンタトップの下面に設置され、IHコンロを囲繞する磁性体からなる防磁板で構成したことを特徴とする防磁装置。
【請求項2】
上記防磁板の少なくとも一部がIHコンロの筐体に当接するように移動自在に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の防磁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−152926(P2008−152926A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336492(P2006−336492)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)
【Fターム(参考)】