説明

防耐火性能を有する軒裏構造

【課題】特殊材料及び技術を用いることなく防耐火性能試験をクリアーし得る構成とすることができ、しかも、鼻隠し部分を意匠的に優れたものとすることができる防耐火性能を有する軒裏構造を提供することを課題とする。
【解決手段】外壁材8と鼻隠し下地材10との間の間隙に軒天換気材9を配置し、鼻隠し下地材10の厚さを30mm以上とすると共に、鼻隠し下地材10を隠蔽する化粧材11の厚さを16mm以上とするようにした。軒天換気材9は、横長の背板12と、背板12の内側面に定着される帯状熱膨張材14と、通気孔が設けられていて、背板12の内側面下部から斜め上方に延びる通気面15と、通気面15の端部を垂直方向に折曲延長して形成される対向壁16と、背板12の外側面下部に水平方向に延びるように形成される固定板20とから成るものとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防耐火性能を有する軒裏構造に関するものであり、より詳細には、建築基準法に基づく軒裏の準耐火性能及び防火性能試験(以下単に「耐火性能試験」とする)をクリアーし得る防耐火性能を有する軒裏構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅耐久性及び室内温熱環境向上の要求に伴い、小屋裏換気の重要性が増大してきている。小屋裏換気のために、軒先に換気口を設けることが考えられるが、軒先に換気口、即ち、開口を設けることは、防火上の規制対象となるため、耐火性能試験に合格しない限り、実施することができない(棟に換気口を設ける場合については、規制がない。)。
【0003】
耐火性能試験は、建築基準法に基づいて財団法人建材試験センター等において実施されており、その試験は、所定の試験体を加熱炉内に入れて、その試験面全面を一様に所定時間加熱して裏面温度を測定し、所定温度に達するまでに何分かかるかにより、その性能の評価がなされる。
【0004】
詳細には、試験体裏面の3ヶ所以上を測定点とし、各測定点の測定温度の平均が、外気温+140℃を越えるまでの所要時間が観察され、それが30分を超えていれば防火性、45分を超えていれば準耐火性、60分を超えていれば耐火性の評価が受けられることになる。但し、測定点の1点でも外気温+180℃を越えると、不適正という評価がなされる。本発明においては、45分耐火性能、即ち、準耐火性のクリアーを企図している。
【0005】
また、近年、宅地の狭小化及びデザイン性の観点(シンプルモダン系)等から、軒のない住宅(通称、軒ゼロ型)が増えてきた。しかるに、耐火性能試験は、軒ゼロ型の住宅に対しては有効ではなかったため、近年、その試験方法の運用の見直しがなされている。
【0006】
ところで、軒ゼロ型住宅で使用される部材は、その殆どが、21mm厚又は24mm厚の鼻隠し下地材を用いた上に、0.35mm厚程度の板金を被覆したものであるが、その場合、換気口の防火性能に関係なく、通常の納まりでは耐火性能試験をクリアーすることができないことが判明した。そこで、実際の現場において、極力特別な技術や材料を用いることなく万人に施工が可能であって、しかも耐火性能試験をクリアーすることができる納まり形状の提案が要望されているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3898831号公報
【特許文献2】特開2010−59722号公報
【特許文献3】特開2009−299410号公報
【特許文献4】特開2006−144496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記要望に応えるためになされたものであって、実際の現場において、極力特別な技術や材料を用いることなく万人に施工が可能であって、しかも耐火性能試験をクリアーすることが可能な防耐火性能を有する軒裏構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、外壁材と鼻隠し下地材との間の間隙に、熱膨張材を組み込んだ軒天換気材を配置し、前記鼻隠し下地材及び前記鼻隠し下地材を隠蔽する化粧材として、前記鼻隠し下地材の厚さを30mm以上とし、前記化粧材の厚さを16mm以上とすることを特徴とする防耐火性能を有する軒裏構造である。
【0010】
一実施形態においては、前記軒天換気材は、横長の背板と、前記背板の内側面に定着される帯状熱膨張材と、適宜通気孔が設けられていて、前記背板の内側面下部から斜め上方に延びる通気面と、前記通気面の端部を垂直方向に折曲延長して形成される対向壁と、前記背板の外側面下部に水平方向に延びるように形成される固定板とから成るものとされ、また、一実施形態においては、前記軒天換気材の背板の内側面上部と前記対向壁との間に、上下方向に抜ける通気路を多数有する通気材が配設される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述したとおりであって、本発明に係る軒裏構造においては、鼻隠し下地材の厚さと前記化粧材の厚さは、それらの資材における火炎の進行速度と耐火性についての法定時間との観点から、鼻隠し下地材は厚さ30mm以上とされ、化粧材は厚さ16mm以上とされることにより、45分耐火性に十分対応可能となり、以て、居住者を火の危険から守ることが可能となる効果がある。
【0012】
また、鼻隠し部分は、鼻隠し下地材を無機質系その他の化粧材で覆う構成とされるため、種々の意匠性に富んだ化粧材の採用が可能となり、以て、鼻隠し部分を意匠的に優れた構成とすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る防耐火性能を有する軒裏構造の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る防耐火性能を有する軒裏構造の他の実施形態の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る防耐火性能を有する軒裏構造の一実施形態を構成する軒天換気材の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。図1、2は、本発明に係る防耐火性能を有する軒裏構造の、それぞれ異なる実施形態を示す図である。そこに示される軒裏構造は、柱2及び軒桁3から成る構造材1の上側に、垂木5と野地板6から成る屋根材4を配すると共に、構造材1の外側に通気胴縁7を介して外壁材8を配し、外壁材8の上部に軒天換気材9を挟んで鼻隠しを配して構成される。
【0015】
鼻隠しは、軒天換気材9の一側面(背板)が当接する鼻隠し下地材10と、鼻隠し下地材10を隠蔽する無機質系その他の化粧材11とから成り、45分耐火性の観点から、鼻隠し下地材10の厚さを30mm以上とし、化粧材11の厚さを16mm以上とする。
【0016】
このように、鼻隠し下地材10の厚さを30mm以上とし、化粧材11の厚さを16mm以上とするのは、鼻隠し下地材10及び化粧材11に対して火炎が1mm進行するのに約1分かかるとの知見に基づくものであり、本出願人は、実際にこの数値の試験体にて、耐火性能試験(45分耐火性)をクリアーしている。なお、鼻隠し下地材10と化粧材11の厚みの上限は特にないが、それは、重量、施工性、外観等の観点から自ずと規制されてくる。
【0017】
本発明に係る軒裏構造において用いる軒天換気材9は、例えば、図3に示されるように、横長の背板12と、背板12の内側面に定着される帯状の熱膨張材14と、適宜通気孔18が設けられていて、背板12の内側面下部から斜め上方に延びる通気面15と、通気面15の端部を垂直方向に折曲延長して形成される対向壁16と、背板12の外側面下部に水平方向に延びるように形成される固定板20とを含んで構成されるものであり、通例、対向壁16の外側面に、施工時に対向壁16と外壁8との間に挟まれて圧潰状態となってその部分の気密・水密を保持する、クッション材17が貼着される。
【0018】
また、背板12の外側面の下部に、水平に延びる固定板20が配設される。固定板20は、背板12の全長に亘るように形成してもよいし、部分的に設けることとしてもよい。通例、固定板20には、釘を打ち込むための釘穴21が形成される。このように固定板20を設けた場合は、軒天換気材9を外壁材8と鼻隠し下地材10との間の間隙に設置する際、固定板20を鼻隠し下地材10の下面にあてがい、釘穴21を通して釘打ちしたり、接着したりすることにより、軒天換気材9を簡単確実に定位置に固定することができるようになる。
【0019】
このように軒天換気材9は、背板12、熱膨張材14、通気面15、対向壁16及び固定板20で構成することができるが、図示した実施形態のように、更に、上下方向に抜ける通気路13aを多数有する横長の通気材13を含むこともある。この通気材13は、背板12の内側面上部と対向壁16とに挟まれるように配設される。
【0020】
本発明に係る軒裏構造は、基本的には、従来の場合と同様にして施工することができる。軒天換気材9は、その背板12が鼻隠し下地材10の内側面に当接するようにして、外壁材8と鼻隠し下地材10との間に形成される間隙内に挿入設置する。上述したように、固定板20を設けた場合は、軒天換気材9の定位置固定が容易となる。
【0021】
この構成の軒裏構造においては、鼻隠し部分が、例えば、火炎が1mm進行するのに約1分かかる厚さが30mm以上の鼻隠し下地材10と、厚さが16mm以上の化粧材11とから構成されることにより、法定の45分耐火性に十分対応可能となり、この軒裏構造を採用することにより、居住者を火の危険から守りつつ、小屋裏換気を行うことが可能となる。そして更に、鼻隠し部分を構成する化粧材として、種々の意匠性に富んだものを採用することにより、鼻隠し部分の意匠性を向上させることができる。
【0022】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに更に異なる実施形態を構成することができることは明白である。従って、この発明は添付請求の範囲において限定した以外は、その特定の実施形態に制約されるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1 構造材
2 柱
3 軒桁
4 屋根材
5 垂木
6 野地板
7 通気胴縁
8 外壁材
9 軒天換気材
10 鼻隠し下地材
11 化粧材
12 背板
13 通気材
14 熱膨張材
15 通気面
16 支持壁
17 クッション材
18 通気孔
20 固定板
21 釘穴
22 折り返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁材と鼻隠し下地材との間の間隙に軒天換気材を配置し、前記鼻隠し下地材の厚さを30mm以上とすると共に、前記鼻隠し下地材を隠蔽する化粧材の厚さを16mm以上とすることを特徴とする防耐火性能を有する軒裏構造。
【請求項2】
前記軒天換気材は、横長の背板と、前記背板の内側面に定着される帯状熱膨張材と、適宜通気孔が設けられていて、前記背板の内側面下部から斜め上方に延びる通気面と、前記通気面の端部を垂直方向に折曲延長して形成される対向壁と、前記背板の外側面下部に水平方向に延びるように形成される固定板とから成るものとされる、請求項1に記載の防耐火性能を有する軒裏構造。
【請求項3】
前記軒天換気材の背板の内側面上部と前記対向壁との間に、上下方向に抜ける通気路を多数有する通気材が配設される、請求項2に記載の防耐火性能を有する軒裏構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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