説明

防腐・防カビ性薬剤組成物および防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法

【課題】
含水率が高い未乾燥木材を防腐・防カビ処理するための防腐・防カビ性薬剤組成物、及び含水率が低い防腐・防カビ性乾燥木材を製造する方法を提供する。
【解決手段】
ベンズイミダゾール−2−イルカルバミン酸メチル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−スルホニルメチルピリジン、2−メチルイソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト等の防腐・防カビ剤を含有する、含水率が30重量%以上の未乾燥木材の防腐・防カビ処理を行うための防腐・防カビ性薬剤組成物、及び、含水率が30重量%以上の未乾燥木材を前記組成物で処理した後、人工乾燥することにより、含水率が25重量%以下の乾燥木材を得る防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未乾燥木材を防腐・防カビ処理するための防腐・防カビ性薬剤組成物、および、未乾燥木材を該薬剤組成物で処理した後、人工乾燥する防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、丸太から製剤した直後の製品は、伐倒後の生材に近い含水率を示し、針葉樹の辺材では100〜200重量%程度、同じく心材で30〜60重量%程度、広葉樹では辺材と心材の違いがなく60〜200重量%程度の範囲ある。このような生材は飽水状態に近いので、菌に侵されにくく、保存には比較的適した状態にあるといえる。これに対し、乾燥が進行中の木材では、菌の繁殖に必要な水分と酸素がほどほどに供給され、菌害を生じやすくなる。例えば、十分に乾燥していない製材品を材面の湿度が高くなるような状態で貯蔵していると、樹種によっては、カビや変色が発生する場合がある。
【0003】
このような不都合を避けるべく、従来から、木材を防腐・防カビ剤で処理することが行われてきた。例えば、切り出した木材を製材化してグリン材とし、このグリン材を防腐・防カビ剤を含有する薬液(水溶液)中に浸漬することにより、防腐・防カビ性グリン材として出荷することが行われてきた。
また、このようなグリン材を防腐・防カビ処理するための防腐・防カビ性薬剤組成物も数多く開発されている(例えば、特許文献1〜4など)。
【0004】
一方、生木と言われる切り出したばかりの木材は含水率が高いため、強度が弱く、形状も安定していない。また、時間の経過とともに乾燥し、乾燥していく過程で収縮し、割れや反りが発生しやすい。
このため、近年においては、生木を、キルン式乾燥装置などの乾燥装置により、人工的に乾燥(人工乾燥)して、含水率が25重量%以下の乾燥木材(KD材ともいう)とする方法が開発されている。
【0005】
このようにして得られる乾燥木材は、耐久性に優れ、腐りにくく、カビ類などの発生も少ないものであるが、防腐・防カビの効果は不十分であり、より耐久性に優れ、腐りにくく、カビ類の発生のない乾燥木材の開発が要望されているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開平2−22207号公報
【特許文献2】特開平2−233603号公報
【特許文献3】特開平3−251508号公報
【特許文献4】特開平7−133205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、含水率が高い未乾燥木材を防腐・防カビ処理するための防腐・防カビ性薬剤組成物、および、この防腐・防カビ性薬剤組成物を用いて未乾燥木材の防腐・防カビ処理を行った後、人工乾燥することにより、含水率が低い、防腐・防カビ性乾燥木材を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、未乾燥木材の状態で、特定の防腐・防カビ性薬剤組成物を用いて防腐・防カビ処理を行った後に、人工乾燥を行うと、効率よく防腐・防カビ性乾燥木材が製造できることを見出した。
【0009】
また、人工乾燥を行う方式として、内壁がアルミニウムなどの腐食性金属材料から形成されてなるキルン式乾燥装置を用いる方法を採用する場合であっても、特定の防腐・防カビ剤を含有する薬液により防腐・防カビ処理を行ったものであれば、該キルン式乾燥装置の内壁が腐食することがないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明の第1によれば、含水率が30重量%以上の未乾燥木材を、防腐・防カビ処理するための防腐・防カビ性薬剤組成物であって、ベンズイミダゾール−2−イルカルバミン酸メチル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−スルホニルメチルピリジン、2−メチルイソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、メチレンビスチオシアネート、n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、および(RS)−1−p−クロロフェニル−4,4−ジメチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ペンタン−3−オールからなる群から選ばれる少なくとも一種の防腐・防カビ剤を含有することを特徴とする防腐・防カビ性薬剤組成物が提供される。
【0011】
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物は、キルン式乾燥装置の内壁を構成する金属材料に対して耐腐食性であることが好ましく、アルミニウムまたはステンレスに対して耐腐食性であることがより好ましい。
【0012】
また、本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物においては、前記含水率が30重量%以上の未乾燥木材が、防腐・防カビ処理した後、人工乾燥することにより、含水率が25重量%以下の乾燥木材を製造するための木材であることが好ましい。
【0013】
本発明の第2によれば、含水率が30重量%以上の未乾燥木材を、本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物で処理した後、人工乾燥することにより、含水率が25重量%以下の乾燥木材を得ることを特徴とする防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法が提供される。
本発明の防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法においては、含水率が30重量%以上の未乾燥木材を、本発明で処理した後、キルン式の乾燥装置を用いて人工乾燥することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、未乾燥木材の状態で防腐・防カビ処理するための防腐・防カビ性薬剤組成物が提供される。
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物は、防腐・防カビ性処理を行った後に、内壁がアルミニウムなどの腐食性金属材料から形成されてなるキルン式乾燥装置を用いて人工乾燥した場合であっても、該キルン式乾燥装置の内壁が腐食することがないものである。
【0015】
本発明によれば、本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物を用いて、未乾燥木材の防腐・防カビ処理した後、人工乾燥することにより、防腐・防カビ性乾燥木材を製造することができる。
本発明の製造方法によれば、未乾燥木材の防腐・防カビ性処理を行った後に、内壁がアルミニウムなどの腐食性金属材料から形成されてなるキルン式乾燥装置を用いて人工乾燥した場合であっても、長期にわたり安定して、防腐・防カビ性乾燥木材を製造することができる。
【0016】
本発明の製造方法により得られる防腐・防カビ性乾燥木材は、優れた防腐・防カビ性を有し、乾燥後において、再度防腐・防カビ処理を行う必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、1)防腐・防カビ性薬剤組成物、および、2)防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法に項分けして、詳細に説明する。
【0018】
1)防腐・防カビ性薬剤組成物
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物は、含水率が30重量%以上の未乾燥木材を、防腐・防カビ処理するための防腐・防カビ性薬剤組成物である。
また本発明に用いる防腐・防カビ性薬剤組成物は、ベンズイミダゾール−2−イルカルバミン酸メチル(カルベンダジム、Carbendazim、BCM、CAS番号10605−21−7、既存化学物質番号5−465)、2,3,5,6−テトラクロロ−4−スルホニルメチルピリジン(TCMSP、CAS番号13108−52−6、既存化学物質番号9−857)、2−メチルイソチアゾリン−3−オン(MIT、CAS番号2682−20−4、既存化学物質番号5−5235)、4−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT、CMI、CAS番号26172−55−4、既存化学物質番号9−378)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン(DCOIT、CAS番号64359−81−5、既存化学物質番号5−6165)、2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン(OIT、CAS番号26530−20−1、既存化学物質番号5−5246)、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト(IPBC、CAS番号55406−53−6、既存化学物質番号2−3456)、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール(TCMTB、CAS番号21564−17−0、既存化学物質番号5−3424)、メチレンビスチオシアネート(MBT、CAS番号6317−18−6)、n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(ブチルBIT、CAS番号4299−07−4、既存化学物質番号5−6512)、および(RS)−1−p−クロロフェニル−4,4−ジメチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ペンタン−3−オール(テブコナゾール、Tebuconazol、CAS番号107534−96−3)からなる群から選ばれる少なくとも一種を活性成分として含有する。
【0019】
これらの化合物(以下、「活性成分」ということがある)は、木質材料に対して、防腐・防カビ作用を有するものとして公知である。
本発明においては、これらの活性成分を一種単独で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。
【0020】
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物において、上記活性成分の含有量(2種以上からなる場合には合計量)は、組成物全体に対して、通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%である。
【0021】
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物は、上記活性成分の一種または二種以上のほか、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤などの界面活性剤;リン酸塩、リン酸水素塩などのpH調整剤;乳化剤;グリコール類、水などの溶剤;を含有する。
【0022】
これらの界面活性剤、pH調整剤、乳化剤、溶剤などは、それぞれ一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物に用いる、界面活性剤、pH調整剤、乳化剤、溶剤などは、特に制限されず、工業用防腐・防カビ性組成物に含有させることができるものとして従来公知のものを用いることができる。
【0024】
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物の具体例としては、特開平2−22207号公報、特開平2−233603号公報、特開平3−251508号公報、特開平7−133205号公報、特開平8−157304号公報、特開平10−130108号公報、特開平11−130610号公報、特開平11−228302号公報、特開2003−73213号公報、特開2003−267806号公報、特開2005−47056号公報、特開2003−73211号公報、特開2005−47056号公報などが挙げられる。
【0025】
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物の特に好ましい具体例としては、ミルカット88A,ミルカット88B(いずれも日本曹達(株)の商品名)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物は、キルン式乾燥装置の内壁を構成する金属材料に対して耐腐食性であることが好ましく、アルミニウムまたはステンレスに対して耐腐食性であることがより好ましい。これらについては、後述する本発明の防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法の項で詳細に説明する。
【0027】
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物が処理の対象とする未乾燥木材は、含水率が30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上の木質材料である。木質材料としては、含水量が30重量%以上のものであれば、特に制限されない。また、未乾燥木材の大きさや形状なども、特に制限されない。具体的には、生木を適当な大きさに切断し、樹皮部分を剥離したもの(製材前の半製品)が挙げられる。
【0028】
また、後述するように、本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物においては、前記含水率が30重量%以上の未乾燥木材が、防腐・防カビ処理した後、人工乾燥することにより含水率が25重量%以下の乾燥木材を製造するための未乾燥木材であることが好ましい。
【0029】
未乾燥木材の含水率の測定法としては、全乾法(試験片を105℃の恒温乾燥器中で恒量に達するまで乾燥し、乾燥前後の重量差の乾燥後重量に対する百分率をもって含水率とする方法)と、電気式含水率計による方法とがある。このうち正確なのは前者であるが、手間と時間を要するため、現場では後者によることが多い。また、電気式含水率計には、抵抗型と高周波型がある。
【0030】
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物により含水率が30重量%以上の未乾燥木材を処理する方法としては、未乾燥木材の少なくとも表面部に本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物の塗膜を形成することができる方法であれば、特に制限されない。
【0031】
例えば、本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物(または本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物の水希釈液)中に未乾燥木材を浸漬する方法、未乾燥木材の表面部に本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物(または本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物の水希釈液)をハケまたはローラにより塗布する方法、未乾燥木材の表面部に本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物(または本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物の水希釈液)をスプレーコートする方法などが挙げられる。なかでも、操作性の観点から、本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物(または本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物の水希釈液)中に未乾燥木材を浸漬する方法が好ましい。
【0032】
なお、本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物の水希釈液を用いる場合には、水の希釈倍率は、特に制限されないが、通常10〜1000倍、好ましくは50〜500倍である。また、希釈に用いる水としては、水道水、井戸水、工業用水、蒸留水、イオン交換水などが挙げられるが、不純物の少ないものが好ましい。
【0033】
本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物(または本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物の水希釈液)中に未乾燥木材を浸漬する時間は、特に制限されず、通常、数分から数時間である。
【0034】
以上のようにして得られる防腐・防カビ処理を行った未乾燥木材を人工乾燥することにより、含水率が25重量%以下である防腐・防カビ性の乾燥木材を得ることができる。得られた防腐・防カビ性の乾燥木材は、耐久性にきわめて優れ、腐りにくく、カビ類などの発生も少ないものである。
【0035】
2)防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法
本発明の防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法は、含水率が30重量%以上の未乾燥木材を本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物で処理した後、人工乾燥することにより、含水率が25重量%以下の乾燥木材を得ることを特徴とする。
【0036】
本発明の製造方法において用いることができる、含水率が30重量%以上の未乾燥木材や防腐・防カビ性薬剤組成物は、前記本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物で列記したものと同様のものが使用できる。また、含水率が30重量%以上の未乾燥木材を本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物で処理する方法も、前記本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物で説明した方法と同様の方法が採用できる。
【0037】
防腐・防カビ処理が施され未乾燥木材を人工乾燥する方法としては、含水率が25重量%以下である防腐・防カビ性の乾燥木材を得ることができる方法であれば特に制限されない。例えば、蒸気式乾燥法、高周波・熱風複合乾燥法、高周波加熱減圧乾燥法、熱風加熱減圧乾燥法、燻煙乾燥法などが挙げられる。これらの中でも、未乾燥木材を密閉空間内に収容し、熱風を送り込んで未乾燥木材を所望の含水率の木材となるまで乾燥を行う、キルン式乾燥装置を用いる方法が好ましい。
【0038】
従来公知のキルン式乾燥装置の内壁部は、ステンレスまたはアルミニウムなどの金属材料から形成されているものが多い。本発明においては、本発明の防腐・防カビ性薬剤組成物を用いて未乾燥木材の防腐・防カビ処理を行っている。従って、内壁部がアルミニウムのような腐食性金属材料から形成されている場合であっても、防腐・防カビ性薬剤組成物により腐食することはなく、長期にわたり安定して、防腐・防カビ性乾燥木材を製造することができる。
【0039】
キルン式乾燥装置による乾燥時間は、未乾燥木材の樹種、大きさなどにもよるが、通常、数日から120日程度である。
【0040】
本発明の製造方法により、含水率が25重量%以下であって、含水率を所望の値に調整した防腐・防カビ性の乾燥木材を得ることができる。得られる防腐・防カビ性の乾燥木材は、耐久性にきわめて優れ、腐りにくく、カビ類などの発生も少ないものである。
また、本発明の製造方法により得られる防腐・防カビ性乾燥木材は、優れた防腐・防カビ性を有し、乾燥後において、再度防腐・防カビ処理を行う必要がないものであるw。
【実施例】
【0041】
以下、実施例および比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は,以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液調製(1)
防腐・防カビ活性成分として、4,5−ジクロロ−2−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、および3−ヨード−2−プロピルブチルカーバメートを含有する薬剤組成物(商品名:ミルカット88A、日本曹達(株)製)1gを、イオン交換水99gに希釈して防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液(1)を得た。
【0043】
(実施例2)防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液調製(2)
防腐・防カビ活性成分として、ベンズイミダゾール−2−イルカルバミン酸メチル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−スルホニルメチルピリジン、2−メチルイソチアゾリン−3−オン、および5−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オンを含有する薬剤組成物(商品名:ミルカット88B、日本曹達(株)製)1gを、イオン交換水99gに希釈して防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液(2)を得た。
【0044】
(実施例3)防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液調製(3)
防腐・防カビ活性成分として、4,5−ジクロロ−2−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、および3−ヨード−2−プロピルブチルカーバメートを含有する薬剤組成物(商品名:ミルカット88A、日本曹達(株)製)1g、防腐・防カビ活性成分として、ベンズイミダゾール−2−イルカルバミン酸メチル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−スルホニルメチルピリジン、2−メチルイソチアゾリン−3−オン、および5−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オンを含有する薬剤組成物(商品名:ミルカット88B、日本曹達(株)製)1gを、イオン交換水98gに希釈して防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液(3)を得た。
【0045】
(比較例1)
トリクロロフェノール5.34g、水酸化ナトリウム1.12g、およびイオン交換水3.54gを混合し、プレ調製液を得た。このプレ調製液1gをイオン交換水49gに希釈して防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液(4)を得た。
【0046】
耐腐食性試験(1)
実施例1〜3、および比較例1で調製した、防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液(1)〜(4)を用いて、以下の耐腐食性試験を行った。
テストピースとして、90(縦)×50(横)×0.95(厚み)アルミニウム板を4枚用意した。このアルミ板の表面をイオン交換水およびメタノールで十分に洗浄した後、乾燥して、密閉容器にそれぞれ入れた。そこへ、実施例1〜3、および比較例1で調製した、防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液(1)〜(4)を10ml入れて密閉し、80℃で120時間放置した。
【0047】
その後、容器からアルミニウム板を取りだし、このアルミ板の表面をイオン交換水およびメタノールで十分に洗浄した後、乾燥したのち、表面を目視で観察した。
【0048】
また、対照として、防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液を入れない場合(比較例2)、イオン交換水のみを入れた場合(比較例3)、水道水を入れた場合(比較例4)も同様に耐腐食性試験を行い、同様にして評価した。
【0049】
目視観察の結果、表面に変化がない場合をA、わずかに白化した場合をB、白化が認められる場合をC、激しく白化した場合をD、黒化した場合をEで評価した。評価結果を第1表に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
第1表より、実施例1〜3の防腐・防カビ性薬剤組成物の薬液(1)〜(3)を入れた場合では、比較例1やイオン交換水のみを入れた場合(比較例3)、水道水を入れた場合(比較例4)の場合に比して、アルミウム板の表面の白化の程度が低いことがわかる。
【0052】
このことは、実施例1〜3の薬液を実施例1〜3の防腐・防カビ性薬剤組成物を使用して、未乾燥木材を防腐・防カビ処理した後、内壁部が腐食しやすいアルミニウムから形成されたキルン式乾燥装置により人工乾燥を行う場合であっても、該装置の内壁部の腐食はほとんど進行しないので、長期にわたり安定して、防腐・防カビ性乾燥木材を製造できることを示しているといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水率が30重量%以上の未乾燥木材を、防腐・防カビ処理するための防腐・防カビ性薬剤組成物であって、ベンズイミダゾール−2−イルカルバミン酸メチル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−スルホニルメチルピリジン、2−メチルイソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、メチレンビスチオシアネート、n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、及び(RS)−1−p−クロロフェニル−4,4−ジメチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ペンタン−3−オールからなる群から選ばれる少なくとも一種の防腐・防カビ剤を含有することを特徴とする防腐・防カビ性薬剤組成物。
【請求項2】
キルン式乾燥装置の内壁を構成する金属材料に対して耐腐食性であることを特徴とする請求項1に記載の防腐・防カビ性薬剤組成物。
【請求項3】
アルミニウムまたはステンレスに対して耐腐食性である請求項1または2に記載の防腐・防カビ性薬剤組成物。
【請求項4】
前記未乾燥木材が、防腐・防カビ処理した後、人工乾燥することにより含水率が25重量%以下の乾燥木材を製造するための木材である請求項1〜3のいずれかに記載の防腐・防カビ性薬剤組成物。
【請求項5】
含水率が30重量%以上の未乾燥木材を、請求項1〜4のいずれかに記載の防腐・防カビ性薬剤組成物で処理した後、人工乾燥することにより、含水率が25重量%以下の乾燥木材を得ることを特徴とする防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法。
【請求項6】
含水率が30重量%以上の未乾燥木材を、請求項1〜4のいずれかに記載の防腐・防カビ性薬剤組成物で処理した後、キルン式の乾燥装置を用いて人工乾燥することを特徴とする請求項5に記載の防腐・防カビ性乾燥木材の製造方法。

【公開番号】特開2007−191437(P2007−191437A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11779(P2006−11779)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】