説明

防虫剤、衣料害虫の防除方法、防虫組成物

【課題】 防虫剤の有効期間が1年間のような長期にわたる場合であっても、その有効期間の残余を適切に表示できるようにする。
【解決手段】 本発明の防虫剤は、シート担体に、プロフルトリンと、脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物と、エーテル化合物とを含有する防虫組成物を担持させている。
そして、脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物は、プロフルトリン1重量部に対して0.3〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が0.7〜1.3であり、25℃における粘度が20〜50cPであり、分子量が250〜350であるものが用いられている。また、エーテル化合物は、プロフルトリン1重量部に対して0.5〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が2.0×103〜4.0×103であり、20℃における粘度が3〜10cPであり、分子量が100〜150であるものが用いられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防虫剤、衣料害虫の防除方法、防虫組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イガ、コイガ等の衣料害虫による食害等の加害から衣類を保護するために種々の防虫剤が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−129844
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、防虫剤の有効期間が例えば1年間のような長期にわたる場合には、その期間中の安定した防虫成分の揮散を行うこと、また、その有効期間の残余を適切に表示する期間表示機能を有する基材との組合せて製造並びに使用する際に、必ずしも十分満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、これらの課題を解決すべく検討した結果、有効成分として知られるプロフルトリンをかかる目的に用いる際に、優れた効果を有する防虫剤を見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の1.〜6.の通りである。
1. シート担体に、
(A) プロフルトリン、
(B) プロフルトリン1重量部に対して0.3〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が0.7〜1.3であり、25℃における粘度が20〜50cPであり、分子量が250〜350である脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物;
及び
(C) プロフルトリン1重量部に対して0.5〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が2.0×103〜4.0×103であり、20℃における粘度が3〜10cPであり、分子量が100〜150であるエーテル化合物;
を含有する防虫組成物を担持させてなることを特徴とする防虫剤。
2. プロフルトリン、脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物及びエーテル化合物の合計担持割合が、シート担体1000重量部に対して150〜300重量部である1.記載の防虫剤。
3. シート担体が、該シート担体に担持された防虫組成物の揮散量の変化に応じて、その揮散の途中及び終点の少なくとも2つの時期を視認することができる期間表示機能を有するシート担体である1.又は2.記載の防虫剤。
4. 脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物がクエン酸トリエチルであり、エーテル化合物が3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールである1.〜3.いずれか一項記載の防虫剤。
5. 1.〜4.いずれか一項記載の防虫剤を、衣料害虫の生息場所又は衣料害虫の侵入場所に配置し、防虫成分の有効量を揮散させて行うことを特徴とする衣料害虫の防除方法。
6. (A) プロフルトリン、
(B) プロフルトリン1重量部に対して0.3〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が0.7〜1.3であり、25℃における粘度が20〜50cPであり、分子量が250〜350である脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物;
及び
(C) プロフルトリン1重量部に対して0.5〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が2.0×103〜4.0×103であり、20℃における粘度が3〜10cPであり、分子量が100〜150であるエーテル化合物;
を含有する防虫組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、優れた効果を有する防虫剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の防虫剤はシート担体に、
(A) プロフルトリン、
(B) プロフルトリン1重量部に対して0.3〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が0.7〜1.3であり、25℃における粘度が20〜50cPであり、分子量が250〜350である脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物;
及び
(C) プロフルトリン1重量部に対して0.5〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が2.0×103〜4.0×103であり、20℃における粘度が3〜10cPであり、分子量が100〜150であるエーテル化合物;
を含有する防虫組成物を担持させてなるものである。
【0008】
本発明におけるプロフルトリンに対する相対揮散速度とは、それを測定しようとする物質(以下、被験物質と記す。)をシート担体に担持させた被験物質担持体の一定条件における揮散に伴う被験物質担持体重量の経時変化から求められる揮散速度定数と、同様にプロフルトリンをシート担体に担持させたプロフルトリン担持体の同条件における揮散に伴うプロフルトリン担持体重量の経時変化から求められる揮散速度定数との比から算出することができる。
【0009】
本発明に用いられる(A)プロフルトリンとは、例えば特開2005−295810に記載される化合物であり、市販されるものをそのまま用いることができる。
【0010】
本発明に用いられる(B) プロフルトリンに対する相対揮散速度が0.7〜1.3であり、25℃における粘度が20〜50cPであり、分子量が250〜350である脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物としては、例えばクエン酸トリエチル等のクエン酸アルキルエステルが挙げられる。
【0011】
本発明に用いられる(C) プロフルトリンに対する相対揮散速度が2.0×103〜4.0×103であり、20℃における粘度が3〜10cPであり、分子量が100〜150であるエーテル化合物としては、例えば3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールが挙げられる。
【0012】
本発明の防虫剤は、シート担体に、前記の(A) プロフルトリン、(B) プロフルトリン1重量部に対して0.3〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が0.7〜1.3であり、25℃における粘度が20〜50cPであり、分子量が250〜350である脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物;及び(C) プロフルトリン1重量部に対して0.5〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が2.0×103〜4.0×103であり、20℃における粘度が3〜10cPであり、分子量が100〜150であるエーテル化合物を含有する防虫組成物を担持させることにより製造できるものである。
【0013】
本発明において防虫組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で(A) プロフルトリン、(B) プロフルトリン1重量部に対して0.3〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が0.7〜1.3であり、25℃における粘度が20〜50cPであり、分子量が250〜350である脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物;及び(C) プロフルトリン1重量部に対して0.5〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が2.0×103〜4.0×103であり、20℃における粘度が3〜10cPであり、分子量が100〜150であるエーテル化合物のほかに、MGK264、ピペロニルブトキサイド、サイネピリン500等のピレスロイド用共力剤、BHT等の酸化防止剤、2−(2−ヒドロキシ−5−ターシャリーオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ)等の紫外線吸収剤、チモール、PCMX、OPP等の防菌防カビ剤、香料等を含有させることができる。
【0014】
かかる防虫組成物のシート担体への担持量は、その形状、材質や、本発明の防虫剤の使用形態等に応じて任意に設定し得るものであるが、防虫組成物全量で、シート担体1000重量部に対して通常150〜300重量部の割合、好ましくは180〜280重量部の割合である。
【0015】
かかる防虫組成物のシート担体への担持の方法としては、シート担体に満遍なく塗布することも可能であるが、シート担体の1箇所又は2箇所以上で局所的に滴下する方法によって行うことができる。この方法の場合には、防虫組成物が速やかにシート担体全体に満遍なく拡散して担持させることが可能であり、本発明の防虫剤を効率的に製造することができる。かかる局所的な滴下の場合の滴下面積はシート担体の厚さによっても異なるが、通常は局所的な滴下をしようとする平面全体の面積の5〜30%程度である。
【0016】
本発明に用いられるシート担体は、防虫組成物を担持可能であればその材質は特に限定されるものではなく、例えば板紙、ろ紙、合成繊維混抄紙等の紙材、不織布、フェルト状織物、無機繊維シート等を用いることができる。本発明の防虫剤は、例えば国際特許公開WO2003/052721号パンフレット等に記載のシート担体が該シート担体に担持された防虫組成物の揮散量の変化に応じて、その揮散の途中及び終点の少なくとも2つの時期を視認することができる期間表示機能を有するシート担体、所謂、期間インジケーターである場合に特に有用である。
【0017】
期間インジケーターとしては、例えば、液体透過性を有する基材と、該基材上に部分的に積層された液体透過性で光に対し低屈折率の材料からなる表示部とによって構成することができる。そして、表示部は、光に対し低屈折率を呈する微粉粒体(例えば、合成非晶質シリカ微粉、含水非晶質二酸化ケイ素、超微粉末含水ケイ酸等の無定形シリカが挙げられる。)にバインダー(例えば、酢酸ビニル、EVA、NBR、SBR、アクリル系等のラテックスが挙げられる。)を混合してなる表示部形成材を基材表面に塗布することによって形成することができる。該表示部は厚みの異なる2以上の領域を有しているが、表示部形成材の単位面積あたりの塗布量を変えることにより、表示部の各領域を異なった厚みとすることができる。
【0018】
上記のように、表示部の各領域で厚みが異なっているため、基材の表面からの高さが異なり、これによって、各々の領域での表示の表現に時間差が生じるため、液体残存量に対して段階的な表示が可能となる。すなわち、含有液体が揮散するにつれて、表示部形成材の単位面積当たりの塗布量が多く基材表面からの高さが高い領域ほど、基材からの液体の移行が不足して早く表示される。また、表示部形成材の単位面積当たりの塗布量が最も少なく基材からの高さが最も低い領域は、最も遅く表示される。したがって、本発明においてシート担体としてかかる期間インジケーターを採用する場合には、防虫組成物の揮散量の変化に応じて、その揮散の途中と終点との少なくとも2つの時期を視認することができる。
【0019】
次に、期間インジケーターの具体例を示す。図1は期間インジケーターの正面図であり、図2の(i)〜(iv)はこの期間インジケーターに防虫組成物を担持させた防虫剤Aであって、防虫組成物の揮散が終了するまでの表示部の各領域の表示状況の経過を示している。
期間インジケーターaは、紫色に着色された基材10の表面上に、液体透過性で液体含有時に光に対し低屈折率となる白色無機顔料の微粒粉体とバインダーとからなる表示部形成材を部分的に塗布し、領域11、12、13からなる白色の表示部を設けたものである。領域11は大きな三角形、領域12は小さな三角形、領域13は『完了』の文字からなる。領域11、12、13の順に表示部形成材の単位面積当たりの塗布量を小さくしたため、領域11、12、13の順に基材表面からの高さが低くなっている。
【0020】
図2は、図1に示される期間インジケーターaをシート担体として用い、ここに領域11、12、13の表示を隠蔽するための十分な量の防虫組成物を担持させて防虫剤Aとしたものについて、その揮散の各段階での表示の状態を表わしたものである。
図2(i)は、製造直後の防虫剤Aである。この状態では各領域11、12、13は実質的に認識できなくなっている。
図2(ii)は、図2(i)の状態から防虫組成物が少し揮散した状態の防虫剤Aである。この状態では、表示部形成材の面積も塗布量も最も大きい領域11が、基材10の表面の呈色とコントラストの小さい淡紫色の三角形として認識することができ、他の領域12、13は認識できなくなっている。
図2(iii)は、図2(ii)から更に防虫組成物の揮散が進行した状態の防虫剤Aである。この状態では、基材表面の呈色とのコントラストがやや大きく白さの増した領域11が認識され、領域12が、基材表面の呈色とのコントラストの小さな淡紫色の三角形として認識され、領域13は認識できなくなっている。
図2(iv)は、図2(iii)から更に防虫組成物の揮散が進行して、多くの防虫組成物が揮散した状態の防虫剤Aである。この状態では、領域11の大きい三角形と領域12の小さい三角形はほぼ白色ではっきりと表示され、淡紫色の領域13である『完了』の文字が認識されている。
更に揮散が進行して、防虫組成物がほとんど消失すると、領域11、12、13はいずれも白さを増し、防虫組成物を担持させる前の期間インジケーターaの表示部と同様の白さを呈する。
【0021】
本発明の防虫剤Aにおける各段階の表示部の呈色の開始は、表示部の表面近くに空隙が発生し始めたときであるが、表示部の下部は依然として液体で満たされているため表示部の隠蔽性は低く、基材表面の色が淡色化した色合いを示す。例えば基材が紫色の場合、その紫色が淡色化して淡紫色を呈する。防虫組成物の揮散が進むにつれ表示部下部まで空隙発生が拡がっていくときも、基材に液体が含有されている限り表示部への供給が途絶えることはないため、表示部は揮散が完了するまで徐々に空隙が増加していくので、表示の呈色(白色化)も徐々に進むのである。表示部の塗布量が多くなるほど表示部の総空隙量が増加し、表示部内の空隙を満たすための必要量も増大するため、揮散によって基材中の防虫組成物含有量が減少していくと、供給量不足が早く到来し、表示が早く始まるのである。
従って、本発明は、表示部形成材の塗布量または塗布面積及びそれらを組み合わせて調製するだけで表示の発現時期が異なり、多様な表示を可能にするため、利用者の注意を喚起しやすい効果をも有する期間インジケーター機能を有する防虫剤を提供できる。
【0022】
本発明における防虫剤Aは、そのまま、衣料害虫の生息場所又は衣料害虫の侵入場所などに配置して使用することができるが、プラスチック製の容器などに拡散が可能な状態で収納して使用することができる。
【0023】
例えば、図3〜図5に示されるように、表板21、裏板22とを有する収納容器20を用いて、防虫組成物を担持させたシート担体(期間インジケーターa)である防虫剤Aを収納して保持することができる。
収納容器20の表板21及び裏板22は、網状であって厚み方向に通気性のある板である。そして、表板21と裏板22とによって、開閉することができ、図5に示される開状態で防虫剤A(期間インジケーターa)を出し入れすることができる。そして、図3、図4に示される閉状態では、表板21と裏板22との間に防虫剤Aを挟んで、防虫剤Aを保持することができる。
【0024】
なお、開閉動作は、表板21と裏板22との間に形成された接続部25を折り曲げるようにして行われる。また、閉状態を維持する係止部26が、接続部25とは反対側に形成されており、係止部26を用いて閉状態を維持する。
【0025】
そして、防虫剤Aが保持された状態では、防虫剤Aの期間インジケーターaに担持された防虫組成物の揮散が可能であり、衣料が保管されている空間に配置することにより衣料害虫などを防除することができる。
収納容器20の表板21には、フック23が形成されており、引っかけて配置することができる。
【0026】
表示部の各領域11、12、13が、表板21側となるように防虫剤Aを配置する。そして、収納容器20の表板21には、各領域11、12、13に対応する位置に開口部27が形成されており、図4に示されるように、各領域11、12、13の表示が開口部27から見ることができ、各領域11、12、13の変化をそのまま見て確認することができる。
【0027】
また、図6や図7に示されるような、収納容器30を用いることができる。収納容器30は、凹部32と鍔部33とを有する皿材31と、鍔部33に密着する蓋材35とを有しており、防虫剤A(期間インジケーターa)は凹部32に収納することができる。
そして、凹部32には開口36が形成されており、開口36から防虫組成物の揮散と、表示部の各領域11、12、13の外部からの確認が可能となっている。
【0028】
収納容器30に収納される防虫剤Aの大きさは、開口36の大きさよりも大きく、使用時などに、防虫剤Aが開口36から脱出することがないような構造となっている。
なお、防虫組成物が担持された期間インジケーターaである防虫剤Aを収納容器30に収納する際は、蓋材35を密着させる前に行われる。
【0029】
上記した収納容器20、30は樹脂製であるが、樹脂の種類は限定されることはない。また、収納容器20、30を樹脂以外の材料を用いて形成してもよい。
【0030】
さらに、製造後、防虫組成物の揮散を使用開始までに防止するため、密閉材を用いて密閉することができる。
そして、この密閉材による密閉は、使用する形態、すなわち、上記した収納容器20、30のような、通気性を有する容器に格納した上で、密閉材で覆うことにより行われる。具体的には、衣料防虫用途等に使用するまでの期間はプラスチックフィルム、アルミラミネート等の密封材などによって密封保存されており、使用時には密閉材を取り外すなどして開放し、この開放された状態で、イガ、コイガ、ヒメマルカツオブシムシ等の衣料害虫の生息場所又は衣料害虫の侵入場所に設置することにより、衣料害虫を防除できる。かかる衣料害虫の生息場所又は衣料害虫の侵入場所としては、例えば衣装ケース、和ダンスの引き出し、洋ダンス及びクローゼット等の収納空間が挙げられる。
また、このような侵入場所に防虫剤を配置した場合、防虫成分の有効量が揮散するようにすることが望ましい。具体的には、かかる収納空間1m3あたりにプロフルトリン担持量に換算して100〜300mg程度となる量の1個又は2個以上の本発明の防虫剤を設置することにより、6ヶ月以上の防虫効果を発揮することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を製造例及び試験例等の実施例により具体的に示すが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0032】
まず、本発明の防虫剤の製造例を示す。
【0033】
製造例1
図1及び図2に示される形状の3つの時期を視認可能な期間表示機能を有するシート担体(47mm×15mm、厚さ1mm、重量0.36g)の期間表示面の中心付近に、プロフルトリン、クエン酸トリエチル及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノ−ルを混合した防虫組成物(混合割合(重量比)プロフルトリン:クエン酸トリエチル:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノ−ル=2:1:1.25)66.5mgを滴下することにより、領域11、12及び13の表示が隠蔽され、期間表示面全体が基材の色を呈する本発明防虫剤(1)を得た。
【0034】
製造例2
図6、図7に示される収納容器30の皿材31(ポリプロピレン製)を鍔部33が上側となるように置き、凹部32に、図1及び図2に示される形状の3つの時期を視認可能な期間表示機能を有するシート担体(47mm×15mm、厚さ1mm、重量0.36g)を表示部の各領域11、12、13が下側となるように入れた。
次に、該シート担体の表示部の各領域11、12、13と反対側(上面)の中心付近に、プロフルトリン、クエン酸トリエチル及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノ−ルを混合した防虫組成物(混合割合(重量比)プロフルトリン:クエン酸トリエチル:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノ−ル=1:1:0.7)75mgを滴下した。そして、この滴下により、領域11、12及び13の表示が隠蔽され、期間表示面全体が基材の色を呈する状態となる。
さらに、鍔部33の上側から蓋材35(ポリプロピレン(内層)/ポリエチレンテレフタレート(外層)の二層フィルム)で覆い、ヒートシールし、収納容器入りの本発明防虫剤(2)を得た。
【0035】
製造例3
図1及び図2に示される形状の3つの時期を視認可能な期間表示機能を有するシート担体(120mm×40mm、厚さ1mm、重量2.54g)の期間表示面の互いに適当な間隔を有する滴下位置5箇所に、プロフルトリン、クエン酸トリエチル及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを混合した防虫組成物(混合割合(重量比)プロフルトリン:クエン酸トリエチル:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール=16:20:19)合計550mgを滴下した。そして、領域11、12及び13の表示が隠蔽され、期間表示面全体が基材の色を呈する状態となった。これを、図3〜図5で示される収納容器20に収納することにより、収納容器入りの本発明防虫剤(3)を得た。
【0036】
本発明防虫剤が期間表示機能を有する防虫剤である場合の視覚的な効果について試験例に示す。
【0037】
試験例
製造例1で得られた本発明防虫剤(1)を40℃の恒温槽に入れて放置し、経時的にその期間表示面の変化を観察した、4日後には領域11、5日後には領域12、6日後には領域13が順次に白く呈色し、本発明防虫剤(1)に担持させた防虫組成物の残量が容易に視認できた。
【0038】
また、相対揮散速度を以下のように測定して確認した。
25mm×50mmの濾紙(No.2濾紙:東洋濾紙株式会社製)にプロフルトリン約200mgを含浸させ、薬剤含浸紙を調製した。該薬剤含浸紙を室温下で放置し、所定時間経過後にその重量を測定することにより、薬剤含浸紙中のプロフルトリン残存率を算出した。試験開始18日後までのプロフルトリン残存率の経時的な変化から、当該試験におけるプロフルトリンの揮散速度定数aを次式の式1により求めた(2反復)。
Y=Exp(−aT) ……(式1)
Y:時間T経過後のプロフルトリン残存率
a:揮散速度定数
T:薬剤含浸紙放置時間
【0039】
また、プロフルトリンの代わりにクエン酸トリエチル(25℃における粘度:35.2cP)、及び、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(20℃における粘度:6.2cP)を用いて同様の試験を行い、各々の揮散速度定数とプロフルトリンの揮散速度定数の比から、それぞれのプロフルトリンに対する相対揮散速度を求めた。
その結果、プロフルトリンに対する相対揮散速度は、クエン酸トリエチルが1.0であり、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールが2.6×103であった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の防虫剤のシート担体の一例である期間インジケーターの模式正面図である。
【図2】(i)〜(iv)は、図1に示される期間インジケーターに防虫組成物を担持させた時点から防虫組成物が揮散して表示部の各領域が段階的に発現していく状態を示す模式平面図である。
【図3】本発明の防虫剤を収納している収納容器を示す正面図である。
【図4】図3に示した防虫剤を収納している収納容器の使用後の状態を示した正面図である。
【図5】図3に示した収納容器の開状態を示した正面図である。
【図6】本発明の防虫剤を収納している別の収納容器での使用後の状態を示す正面図である。
【図7】図6におけるX−X部を示した断面図である。
【符号の説明】
【0041】
11、12、13 領域
20、30 収納容器
A 防虫剤
a 期間インジケーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート担体に、
(A) プロフルトリン、
(B) プロフルトリン1重量部に対して0.3〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が0.7〜1.3であり、25℃における粘度が20〜50cPであり、分子量が250〜350である脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物;
及び
(C) プロフルトリン1重量部に対して0.5〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が2.0×103〜4.0×103であり、20℃における粘度が3〜10cPであり、分子量が100〜150であるエーテル化合物;
を含有する防虫組成物を担持させてなることを特徴とする防虫剤。
【請求項2】
プロフルトリン、脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物及びエーテル化合物の合計担持割合が、シート担体1000重量部に対して150〜300重量部である請求項1記載の防虫剤。
【請求項3】
シート担体が、該シート担体に担持された防虫組成物の揮散量の変化に応じて、その揮散の途中及び終点の少なくとも2つの時期を視認することができる期間表示機能を有するシート担体である請求項1又は2記載の防虫剤。
【請求項4】
脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物がクエン酸トリエチルであり、エーテル化合物が3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールである請求項1〜3いずれか一項記載の防虫剤。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか一項記載の防虫剤を、衣料害虫の生息場所又は衣料害虫の侵入場所に配置し、防虫成分の有効量を揮散させて行うことを特徴とする衣料害虫の防除方法。
【請求項6】
(A) プロフルトリン、
(B) プロフルトリン1重量部に対して0.3〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が0.7〜1.3であり、25℃における粘度が20〜50cPであり、分子量が250〜350である脂肪族カルボン酸アルキルエステル化合物;
及び
(C) プロフルトリン1重量部に対して0.5〜1.3重量部の、プロフルトリンに対する相対揮散速度が2.0×103〜4.0×103であり、20℃における粘度が3〜10cPであり、分子量が100〜150であるエーテル化合物;
を含有する防虫組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−44853(P2008−44853A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218901(P2006−218901)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(500423307)三和インセクティサイド株式会社 (2)
【Fターム(参考)】