説明

防蟻性能を有する基礎の構築方法

【課題】 基礎に用いられる断熱材をシロアリによる食害から確実に防止でき施工も簡単な防蟻性能を有する基礎の構築方法を提供すること。
【解決手段】 捨てコンクリート5上に一対の板状の断熱材(11,21)を所定距離隔てて立設させて型枠10を形成し、防蟻用のメッシュシート材30をその一端部31が当該型枠10の外側の断熱材11と当該捨てコンクリート5との間を通って当該両断熱材(11,21)間のコンクリート充填空間15に達しかつ他端部32が当該外側断熱材11の外方に配設される盛り土7から所定距離L2だけ突出するように当該型枠10の外側断熱材11の外表面12に沿わせ、当該両断熱材(11,21)間のコンクリート充填空間15にコンクリートを打設して基礎1の立ち上がり部2および内方の土間コンクリート3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロアリの食害被害を防除するのに好適な防蟻性能を有する基礎の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、木造建物のシロアリ防除技術として、物理的工法(ケミカルフリー法)が注目されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に係る発明は、建物の外周部分に設けられた立ち上がり部52と基礎 スラブ53とを有するべた基礎51 の立ち上がり部52の外側面に密着した断熱材61の内部をシロアリが通過して軸組及び床組へ侵入するのを物理的に防止する防蟻構造であって、当該断熱材52の外側面をステンレスメッシュ81で被覆したものとされている。このステンレスメッシュ81は、シロアリの分泌物に耐性の耐腐食材料製とされかつ編み目の孔がシロアリ種の頭部最大寸法より小径とされている。
【特許文献1】特開2000−179060号公報
【特許文献2】特開2000−110268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1の発明の場合、理論的には、シロアリの断熱材61への入り込みはステンレスメッシュ81で防止できるようにみえるが、実際は例えば図6に示すように、捨てコンクリート55の上面は完全な平坦ではなく幾分の凹凸を有しており、断熱材61(断熱材61に密着するステンレスメッシュ81)の下端が直線状に形成されていても、当該捨てコンクリート55と断熱材61(ステンレスメッシュ81)の下端との間に隙間が開く部分が生じる。あるいは、図7および図8に示すように、捨てコンクリート55の上面は平坦で形成されているが、断熱材61(ステンレスメッシュ81)の下端が直線状ではなく凹凸を有していれば、当該捨てコンクリート55と断熱材61(ステンレスメッシュ81)の下端との間に隙間が開く部分が生じてしまう。そのため、現実には、シロアリは、捨てコンクリート55と断熱材61(ステンレスメッシュ81)の下端との間の隙間部分から当該断熱材61部分に入り込んで食害を起こしてしまうことになる。
【0004】
なお、特許文献2に示すように、ステンレスメッシュ(81)の下端部を折り曲げて捨てコンクリート(55)上面にセメントで接着させることも提案されているが、上記したように捨てコンクリート(55)の上面に凹凸が有ると、ステンレスメッシュ(81)の下端部が捨てコンクリート(55)上面から離れてしまう部分(隙間となる部分)が生じてしまうことがあり、シロアリは当該隙間から断熱材(61)に入り込み食害を起こしてしまう。
【0005】
本発明の目的は、基礎に用いられる断熱材をシロアリによる食害から確実に防止でき施工も簡単な防蟻性能を有する基礎の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、防蟻構造を備えた基礎の構築方法において、捨てコンクリート上に一対の板状の断熱材を所定距離隔てて立設させて型枠を形成し、防蟻用のメッシュシート材をその一端部が当該型枠の外側の断熱材と当該捨てコンクリートとの間を通って当該両断熱材間のコンクリート充填空間に達しかつ他端部が当該外側断熱材の外方に配設される盛り土から所定距離だけ突出するように当該型枠の外側断熱材の外側面に沿わせ、当該両断熱材間のコンクリート充填空間にコンクリートを打設して基礎の立ち上がり部および内方の土間コンクリートを形成してなる防蟻構造を備えた基礎の構築方法である。防蟻用のメッシュシート材は、特許文献1で開示されたように、シロアリの分泌物に耐性でかつ少なくとも約70のショワ硬度を有する耐腐食材料製とされかつ編み目の孔がシロアリ種の頭部最大寸法より小径のものを使う。
【0007】
上記した構成の請求項1の発明の場合、上記したコンクリート充填空間にコンクリートを打設すれば、防蟻用のメッシュシート材の一端部は捨てコンクリートと打設されたコンクリート(基礎の立ち上がり部)との間に隙間なく封入される。そのため、型枠の外側の断熱材の下端面はメッシュシート材で完全に被覆されるとともにその内側面は上記基礎の立ち上がり部で完全に被覆される。なお、捨てコンクリートに凹凸があっても、外側の断熱材の下端部が直線状でなくとも、上記した外側の断熱材の下端面はメッシュシート材で完全に被覆される。また、型枠の外側の断熱材の外側面はメッシュシート材で覆われるので完全に被覆される。したがって、型枠の外側の断熱材へはシロアリはメッシュシート材に阻まれ入り込めない。なお、メッシュシート材は、コンクリート打設後に、外側の断熱材の下端面を被覆している部分よりも外側の部分を内方に折り曲げて当該断熱材の外側面に沿わせてもよく、コンクリート打設前に外側の断熱材の下端面を被覆する部分よりも外側の部分を内方に折り曲げて当該断熱材の外側面に沿わせてもよい。
【0008】
一方、型枠の内側の断熱材は、その内側面および下端面が上記基礎の立ち上がり部と土間コンクリートと捨てコンクリートによって完全に被覆される。したがって、型枠の内側の断熱材へはシロアリは入り込めない。 以上より、シロアリによる両断熱材の食害は確実に防止される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、施工が簡単で基礎に用いられる断熱材をシロアリによる食害から確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0011】
本発明に係る防蟻構造を備えた基礎1の構築方法は、図1に示すように、捨てコンクリート5上に一対の板状の断熱材(11,21)を所定距離隔てて立設させて型枠10を形成し、防蟻用のメッシュシート材30をその一端部31が当該型枠10の外側の断熱材11と当該捨てコンクリート5との間を通って当該両断熱材(11,21)間のコンクリート充填空間15に達しかつ他端部32が当該外側断熱材11の外方に配設される盛り土7から所定距離L2だけ突出するように当該型枠10の外側断熱材11の外側面12に沿わせ、図2に示すように、当該両断熱材(11,21)間のコンクリート充填空間15にコンクリートを打設して基礎1の立ち上がり部2および内方の土間コンクリート3を形成して成るものである。
【0012】
なお、断熱材11は、所定長さ(図1中紙面と直交方向の長さ)の板状断熱材を所定個数繋げて形成されている。また、断熱材21も、所定長さ(図1中紙面と直交方向の長さ)の板状断熱材を所定個数繋げて形成されている。外側の断熱材11は、その下端面13が捨てコンクリート5の上面に当接するように配設される。内側の断熱材21は、その下端面23が捨てコンクリート5の上面から所定距離離れて配設される。基礎1の立ち上がり部2および内方の土間コンクリート3を一緒に形成するためである。いずれも断熱性に富む材料から形成されている。なお、両断熱材(11,21)の距離を一定に保つ保持部材(図示省略)が設けられている。また、コンクリート充填空間15中へ入れられる鉄筋も図示を省略する。
【0013】
なお、防蟻用のメッシュシート材30は、図4に示すように、シロアリの分泌物に耐性でかつ約70以上のショワ硬度を有する耐腐食材料製とされかつ編み目の孔36はシロアリの進入を阻止できる大きさ(例えば、シロアリの頭部最大寸法より小径のもの)とされている。この実施形態では、メッシュシート材30は、ステンレス鋼ワイヤー35等から形成されている。なお、シロアリとは、シロアリ目(等翅類)の総称である。例えば、ヤマトシロアリやイエシロアリが挙げられる。
【0014】
上記した構成の防蟻構造を備えた基礎1の構築方法は、上記したコンクリート充填空間15に図2に示すようにコンクリートを打設すれば、防蟻用のメッシュシート材30の一端部31は捨てコンクリート5と打設されたコンクリート(基礎の立ち上がり部2となる)との間に隙間なく封入される。そのため、型枠10の外側の断熱材11の下端面13はメッシュシート材30で完全に被覆されるとともにその内側面は上記基礎1の立ち上がり部2で完全に被覆される。なお、捨てコンクリート5の上面に凹凸があっても、あるいは外側の断熱材11の下端部13が直線状でなくとも、上記した外側の断熱材11の下端面13はメッシュシート材30で完全に被覆される。また、外側の断熱材11の外側面12の盛り土7から距離L2の部分はメッシュシート材30で覆われるので完全に被覆される。したがって、型枠の外側の断熱材へはシロアリは、メッシュシート材30に阻まれ入り込めない。
【0015】
なお、メッシュシート材30は、コンクリート打設後に、図2に示すように、外側の断熱材11の下端面13を被覆している部分よりも外側の部分を内方に折り曲げて当該断熱材11の外側面12に沿わせてもよく、コンクリート打設前に外側の断熱材11の下端面13を被覆する部分よりも外側の部分を内方に折り曲げて当該断熱材11の外側面12に沿わせてもよい。図1および図3中、39はメッシュシート材30を外側の断熱材11の外側面12に止める止め具である。また、このメッシュシート材30の全長L0は、外側の断熱材11の下端面13を被覆する部分よりも外側の部分(長さL4)が盛り土7の捨てコンクリート5からの高さL1に当該盛り土7からの突出長さL2とを足し合わせた長さとなるように選定されている。外側の断熱材11の外側面12には、モルタルが塗布される(モルタル層17)。
【0016】
一方、型枠10の内側の断熱材21は、その内側面22および下端面23が上記基礎1の立ち上がり部2と土間コンクリート3と捨てコンクリート5によって完全に被覆される。したがって、型枠10の内側の断熱材21へはシロアリは勿論入り込めない。
【0017】
以上より、シロアリによる両断熱材(11,21)の食害は確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る防蟻構造を備えた基礎の構築方法を説明するための図である。
【図2】基礎の施工を説明するための図である。
【図3】基礎の施工を説明するための図である。
【図4】メッシュシート材を説明するための図である。
【図5】従来の基礎の構築方法を説明するための図である。
【図6】従来の基礎の構築方法の欠点を説明するための図である。
【図7】従来の基礎の構築方法の欠点を説明するための図である。
【図8】従来の基礎の構築方法の欠点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0019】
1 基礎
2 基礎の立ち上がり部
3 土間コンクリート
5 捨てコンクリート
7 盛り土
9 土台
10 型枠
11 外側の断熱材
12 外側面
13 下端面
15 コンクリート充填空間
21 内側の断熱材
30 メッシュシート材
31 一端部
32 他端部
35 ワイヤー
36 網み目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防蟻構造を備えた基礎の構築方法において、
捨てコンクリート上に一対の板状の断熱材を所定距離隔てて立設させて型枠を形成し、防蟻用のメッシュシート材をその一端部が当該型枠の外側の断熱材と当該捨てコンクリートとの間を通って当該両断熱材間のコンクリート充填空間に達しかつ他端部が当該外側断熱材の外方に配設される盛り土から所定距離だけ突出するように当該型枠の外側断熱材の外側面に沿わせ、当該両断熱材間のコンクリート充填空間にコンクリートを打設して基礎の立ち上がり部および内方の土間コンクリートを形成してなる防蟻構造を備えた基礎の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−274545(P2006−274545A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91101(P2005−91101)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(598167914)
【Fターム(参考)】