説明

防蟻方法およびこれに用いられる袋体

【課題】作業性に優れた基礎際の防蟻方法、およびこれに用いる袋体を提供する。
【解決手段】この防蟻方法は、粒状または小片状の防蟻材15が水溶性を有する多孔質の不織布によって包まれた袋体19を、立ち上がり部13の内側面13aとこの立ち上がり部13に囲まれた水平部21の上面21aとの境界である基礎際に沿って、または水平部21から上方に延設された配管25の側面25aと水平部21の上面21aとの境界である周縁部に沿って配置する工程と、前記不織布の表面に水をかける工程と、前記不織布の溶解中または溶解後に、前記防蟻材15を前記基礎際側または前記周縁部側に押圧する工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎における防蟻方法およびこれに用いられる袋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の基礎に防蟻処理を施す方法として種々の技術が提案されている。例えば特許文献1には、基礎の内側に溝を掘り、粒状の防除剤を収容した紙質の袋体を前記溝内に敷設し、前記溝に土壌を埋め戻した後、その部分に注水する害虫防除施工法が開示されている。この施工法では、紙質の袋に水分または物理的衝撃を与えることによって袋を損壊させて袋に収容されていた防除剤を土壌に接触させ、防虫成分の土壌への浸透を図ることを目的としている。この特許文献1のように袋体の上に土を被せてこの土に水をかける方法では、土が吸水および保水するので、この土を介して袋体に水を接触させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−284641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、基礎構造がベタ基礎構造、土間コンクリート構造などである場合には、基礎の内側の表面はコンクリートで構成されているので、溝を掘る必要がある特許文献1の技術を適用することは困難である。また、特許文献1の技術では基礎の内側に溝を掘る必要があるので作業効率がわるく改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業性に優れた防蟻方法およびこれに用いられる袋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方法は、地盤から上方に立設された基礎の立ち上がり部とこの立ち上がり部に囲まれた水平部とを有する基礎構造における防蟻方法である。この防蟻方法は、粒状または小片状の防蟻材が水溶性を有する多孔質のシート部材によって包まれた袋体を、前記立ち上がり部の内側面と前記水平部の上面との境界部に沿って、または前記水平部から上方に延設された配管の側面と前記水平部の上面との境界部に沿って配置する工程と、前記袋体における前記シート部材の表面に水または水と防蟻薬剤を含む液体をかける工程と、前記シート部材の溶解中または溶解後に、前記防蟻材を前記境界部側に押圧する工程と、を備えている。
【0007】
この方法では、防蟻材を包む袋が水溶性を有する多孔質のシート部材により形成されているので、袋体が前記境界部に沿って配置された後、シート部材の表面に水または水と防蟻薬剤を含む液体がかけられると、多孔質であるその表面は水または前記液体を効率よく吸い込む。吸い込まれた水または前記液体の一部はシート部材の多数の微細な孔内に保持され、吸い込まれた水または前記液体の他の一部はシート部材をしみ通ってシート部材内に入り込む。このように多孔質のシート部材によって袋を構成することによって、従来のように土を介して袋体に水を接触させる必要がなくなるので、溝を掘らずに袋体を境界部に沿って配置可能となる。
【0008】
仮に、特許文献1のように紙質の袋を用いた袋体を、溝を掘らずに境界部に沿って配置し、この袋体の表面に水を直接かけた場合、多くの水は袋体の表面をつたって流れ落ちてしまう。したがって、袋が吸水するまでに長時間かかり、多くの水を供給する必要があるので、依然として作業性の点で問題がある。
【0009】
一方、本発明の方法では、上記したように吸水性に優れた多孔質のシート部材によって袋が形成されているので、従来のように水が袋の表面をつたって流れ落ちるのを抑制することができる。しかも、袋を構成する材料が多孔質であるので、多数の孔の分だけ材料の使用量を少なくできる。
【0010】
以上のことから、この方法によれば、シート部材により形成された袋が優れた吸水性を有しているので、溝を掘らずに前記境界部に設置可能となり、また、袋が溶解するまでの時間を短縮することができ、しかも水の供給量も従来より少なくできるので、作業性が向上する。
【0011】
また、この方法では、シート部材の溶解中または溶解後に、防蟻材を前記境界部側に押圧するので、防蟻材全体の形状を整えることができるとともに、防蟻材と前記境界部およびその周辺の面(立ち上がり部の内側面および水平部の上面)との隙間、および防蟻材の粒同士または小片同士の隙間を小さくすることができる。これにより、防蟻効果をより高めることができる。
【0012】
前記押圧工程において、前記防蟻材が前記境界部に沿って前記立ち上がり部の前記内側面または前記配管の前記側面と面状に接触する側面接触部と、前記防蟻材が前記境界部に沿って前記水平部の前記上面と面状に接触する水平接触部とを形成するのが好ましい。
【0013】
この方法では、防蟻材を立ち上がり部の内側面または配管の側面と面状に接触させて防蟻材と立ち上がり部または配管との接触面積を大きくするとともに、防蟻材を上面と面状に接触させて防蟻材と水平部との接触面積を大きくして防蟻効果をさらに高めることができる。
【0014】
前記押圧工程において、端部に押圧面を有する押圧部材を用いて前記防蟻材を押圧することにより、前記側面接触部の上端部と前記水平接触部の先端部との間に跨り、鉛直方向に対して傾斜した傾斜面状の被押圧部を形成するのが好ましい。
【0015】
この方法では、防蟻材の押圧時に前記押圧部材を用いるので被押圧部を効率よく所望の形状に押圧でき、作業性が向上する。また、前記側面接触部の上端部と前記水平接触部の先端部との間に跨る前記被押圧部を傾斜面状に成形することで、防蟻材と立ち上がり部との接触高さをより大きくできるとともに、防蟻材と水平部の接触幅をより大きくできる。これにより、防蟻材と立ち上がり部の内側面との接触面積、および防蟻材と水平部の上面との接触面積をより大きくできるので、防蟻効果をさらに高めることができる。
【0016】
前記配置工程の前に、前記境界部およびその周辺に水をかける工程をさらに備えている場合には、この工程後の配置工程において袋体が前記境界部に沿って配置されたときに、予め湿り気を帯びた前記境界部およびその周辺を、袋体のシート部材の表面に接触させることができる。これにより、立ち上がり部の内側面または水平部の上面に対向するシート部材の表面にも水を効果的に接触させることができるので、袋が溶解するまでの時間をさらに短縮することができる。
【0017】
本発明の方法は、前記基礎構造がベタ基礎構造または土間コンクリート構造である場合に好適である。
【0018】
本発明の袋体は、建築物の基礎構造における防蟻処理に用いられる袋体である。この袋体は、粒状または小片状の防蟻材と、水溶性を有する多孔質のシート部材により形成され、前記防蟻材を包む袋と、を備えている。防蟻材としては例えば尖角形状のガラス片が挙げられ、前記シート部材としては例えばポリビニルアルコール系繊維を主成分とする不織布が挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、袋が溶解するまでの時間を短縮することができ、しかも水の供給量も従来より少なくできるので、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかる袋体を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる防蟻方法において配置工程の前に基礎際近傍および配管の周縁部近傍に水をかける工程を示す斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の一実施形態にかかる防蟻方法において袋体を配置する工程を示す斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図4】(a)および(b)は、図3の配置工程において配置される隣り合う袋体同士の位置関係をそれぞれ示す正面図である。
【図5】(a)は、入隅の基礎際における袋体同士の位置関係を示す斜視図であり、(b)は、出隅の基礎際における袋体同士の位置関係を示す斜視図である。(c)は、入隅の基礎際に配置される袋体の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる防蟻方法において袋の表面に水をかける工程を示す斜視図である。
【図7】(a)は、本発明の一実施形態にかかる防蟻方法において防蟻材を基礎際側に押圧する工程を示す斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態にかかる防蟻方法を示す。(a)は、袋体を配置する工程を示す断面図であり、(b)は、防蟻材を基礎際側および配管の周縁部側に押圧する工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態にかかる防蟻方法およびこれに用いられる袋体ついて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態にかかる袋体19は、建築物の基礎構造における防蟻処理に用いられるものであり、水溶性を有する多孔質の不織布からなる棒状の袋17と、この袋17中に収容された粒状または小片状の防蟻材15とを備えている。袋17は、略長方形の不織布を二つに折り曲げて三方の周縁部17aを接着したものである。この袋体19の長手方向の両方の端部17b,17bは、端部側に向かうにつれて先細る形状(テーパー状)を有している。
【0023】
水溶性の不織布としては、屋外での防蟻処理における作業性の観点から、その溶解温度が常温近くであるものが好ましい。このような不織布としては、例えばポリビニルアルコール系繊維を主成分とするものなどが挙げられる。具体例を挙げると、ポリビニルアルコール系繊維を主成分とする不織布としては、例えばクラレ社製の「クラロンK−II(WN2)」などを用いることができる。
【0024】
また、本実施形態の不織布は、多孔質であるので吸水性を有しており、例えばポリビニルアルコールなどの樹脂をシート状に成形した樹脂フィルムなどと比較すると、後述する袋体に水をかける工程において水が袋の表面をつたって流れ落ちるのを抑制できる。また、樹脂フィルムを用いて袋を形成する場合と比較して、多孔質の不織布を用いて形成された袋は、弾性的な反発力が小さいので、後述する基礎際23およびその周辺の面(立ち上がり部13の内側面13aおよび水平部21の上面21a)にフィットしやすい。したがって、これらの面13a,21aと防蟻材15との隙間を小さくすることができる。
【0025】
粒状または小片状の防蟻材15としては、複数の粒子または複数の小片からなるものであってもよく、これらの粒子または小片に防蟻薬剤を被覆または混入したものであってもよい。粒子または小片の大きさは、特に限定されないが、長手方向の寸法が0.3〜10mm程度であるのが好ましい。
【0026】
粒子または小片としては、例えば無機質粒子(砂、軽石、ゼオライト、ガラス、スラグ陶磁器の粉砕物、シリカゲル、シラス、ひる石、珪砂、クレータルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、珪藻土、硫酸マグネシウム)、活性炭、合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA(エチレン− 酢酸ビニルアルコール共重合体)、PVC(ポリ塩化ビニル)、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ナイロン等)等が挙げられる。また、粒子または小片として、ホウ素系化合物、コレマナイト、尖角形状のガラス片等のように、粒子自体または小片自体に防蟻性能を有するものを用いてもよい。尖角形状のガラス片としては例えば液晶用ガラス薄片を用いることができる。
【0027】
防蟻薬剤としては、例えばピレスロイド様薬剤(シラフルオフェン、エトフェンプロックス等)、ピレスロイド系薬剤(ビフェントリン、サイパーメストン、デルタメスリン、パーメスリン、ペルメスリン、アレスリン、トラロメスリン等)、カーバメント系薬剤( プロボクスル、フェノブカルブ、セビン等)、クロルニコチル系薬剤(イミダクロプリド、アセタプリド、クロチアニシン等)、ニトロガニリン系薬剤(ジノテフラン等)、有機リン系殺虫剤(ホキシム、テトラクロクピンホス、フェニトロチオン、プロベタンホス等)、ピラゾール系薬剤(フィブロニル等)、クロルフェノール系薬剤(4−プロモ−2,5−ジクロルフェノール(BDCP)等)、フェニルピロール系(クロルフェナビル等)、ヒバ油、ウコン、カプリン酸、ヤシ油、パーム油等が挙げられる。
【0028】
次に、本実施形態にかかる防蟻方法について、基礎構造が土間コンクリート構造である場合を例に挙げて説明する。
【0029】
まず、図2に示すように、立ち上がり部13の内側面13aと水平部21の上面21aとの境界である基礎際(境界部)23の近傍に予め適量の水をかけて基礎際23およびその周辺を湿らせておく。すなわち、基礎際23近傍の内側面13aおよび上面21aに水をかける。なお、図2には図示されていないが、水平部21はその周囲が立ち上がり部13により囲まれている。同様に、水平部21から上方に延設された配管25の側面25aと水平部21の上面21aとの境界である周縁部(境界部)27の近傍に予め適量の水をかけて周縁部27およびその周辺を湿らせておく。すなわち、周縁部27近傍の側面25aおよび上面21aに水をかける。
【0030】
次に、図3(a)および(b)に示すように、袋体19を基礎際23および周縁部27に沿って配置する。図4(a)に示す配置形態では、隣り合う袋体19の先端部同士が突き合わされて接触するように各袋体19が配置されている。
【0031】
また、図4(b)に示すように、隣り合う袋体19のうち、一方の袋体19の端部17bの上に他方の袋体19の端部17bが重なるように各袋体19を配置してもよい。この配置形態の場合、袋体19の端部17bが図1に示すように先細る形状であるときには、端部17b同士を重ねた部分の高さが他の部分よりも過度に大きくなるのを抑制することができる。これにより、後述する押圧工程において押圧部材29により防蟻材15を押圧するときに、押圧作業の作業性がよくなり、押圧後の外観(仕上がり)も良好になる。具体例を挙げると、例えば袋体19の長手方向の寸法が500mm程度であり、太さ(厚み)が30mm程度である場合、端部17b同士の重なり部分の寸法は、例えば30mm〜40mm程度とするのがよい。
【0032】
図5(a)に示す入隅の基礎際23および図5(b)に示す出隅の基礎際23においては、隣り合う袋体19の端部間に隙間が生じやすいので、一方の袋体19の端部17bの上に他方の袋体19の端部17bが重なるように袋体19を配置するのが好ましい。これらの場合も上記と同様に、袋体19の端部17bが先細る形状であるのが好ましい。
【0033】
また、入隅の基礎際23においては、図5(c)に示すような三角錐形状を有する袋体19を用いてもよい。この袋体19は、水溶性を有する多孔質の不織布からなる袋17内に防蟻材15が収容されている。この袋体19は、入隅に配置されたときに手前側に露出する表面以外の3つの表面が立ち上がり部13の内側面13aおよび水平部21の上面21aと面接触するように、入隅の形状に対応して成形されている。したがって、基礎際13のコーナー部分にフィットしやすく、防蟻効果を高めることができる。
【0034】
次に、図6に示すように、袋体19の袋17の表面に水または水と防蟻薬剤を含む液体をかける。本実施形態では、スプレー31を用いて袋17に水または前記液体をかけているがこれに限定されず、例えば水または前記液体をホースから直接吐出させるなど、他の方法を用いてもよい。
【0035】
袋17にかける前記液体としては、例えば既に例示した上記防蟻薬剤から選ばれる1つまたは複数と水とを含む液体を用いることができる。具体的には、前記液体としては、例えばヒバ油の乳化溶液を水で希釈した液体を用いることができる。このように水と防蟻薬剤とを含む液体を袋17にかけることにより、袋17が溶解した後、ヒバ油などの防蟻薬剤が粒状または小片状の防蟻材15の表面に被覆される。これにより、袋17に水をかける場合と比較して、防蟻効果をより高めることができる。特に、防蟻材15としてホウ素系化合物、コレマナイト、尖角形状のガラス片等のように粒子自体または小片自体に防蟻性能を有するものを用いて、かつ、前記液体を袋17にかける場合には、それぞれの防蟻性能の相乗効果を得ることができる。これにより、防蟻材15の使用量を低減することができる。
【0036】
最後に、図7(a)および(b)に示すように、袋17の溶解中または溶解後に、防蟻材15を基礎際23側に押圧する。同様に、袋17の溶解中または溶解後に、防蟻材15を周縁部27側に押圧する。このとき、同図に示すような押圧部材29を用いて防蟻材15を押圧してもよい。この押圧部材29は、防蟻材15を押圧する平面状の押圧面33aを有する板状部33と、この板状部33の幅方向の中央付近に取り付けられ、押圧面33aに対して垂直な方向に延びる棒状の把持部35とを有している。
【0037】
押圧部材29により押圧される防蟻材15の被押圧部15aは、鉛直方向に対して内側面13aから上面21aに向かって傾斜した傾斜面状に成形される。被押圧部15aは、基礎際23に沿って延び、平面状に形成されている。防蟻材15は、基礎際23に沿って内側面13aと面状に接触する側面接触部15bと、基礎際23に沿って上面21aと面状に接触する水平接触部15cとを有している。被押圧部15aは、側面接触部15gの上端部と水平接触部15cの先端部との間に跨っている。すなわち、基礎際23に沿った延設方向に垂直な防蟻材15の断面は略三角形に成形されている。配管25の周縁部27に沿って配置された防蟻材15は、上記と同様に、周縁部27に沿って側面25aと面状に接触する側面接触部15bと、周縁部27に沿って上面21aと面状に接触する水平接触部15cとを有している。
【0038】
この押圧工程は、袋17の溶解中に行ってもよいが、袋17の溶解後に行うのが好ましい。袋17の溶解中に行うと、袋17の一部が押圧面33aに付着することがあるが、袋17の溶解後に押圧工程を行うことにより袋17の押圧面33aへの付着を抑制できる。
【0039】
図8(a)および(b)は本発明の他の実施形態にかかる防蟻方法を示している。図8(a)および(b)に示す実施形態では、基礎構造がベタ基礎構造である。このベタ基礎構造の場合も上記と同様の手順で基礎際23および配管25の周縁部27の防蟻処理を施すことができる。すなわち、まず、基礎際23の近傍および周縁部27の近傍に予め適量の水をかけておき、ついで、図8(a)に示す配置工程において基礎際23および周縁部27に沿って袋体19を配置する。その後、袋17の表面にスプレー31などを用いて水をかける。ついで、図8(b)に示すように、袋17の溶解中または溶解後に、防蟻材15を基礎際23側および周縁部27側に押圧する。
【0040】
以上説明したように、上記実施形態では、防蟻材15を包む袋17が水溶性を有する多孔質の不織布により形成されているので、袋体19が基礎際23および周縁部27に沿って配置された後、袋17の表面に水がかけられると、多孔質であるその表面は水を効率よく吸い込む。吸い込まれた水の一部は不織布の多数の微細な孔内に保持され、吸い込まれた水の他の一部は不織布をしみ通って不織布内に入り込む。このように多孔質の不織布によって袋17を構成することによって、従来のように水が袋の表面をつたって流れ落ちるのを抑制することができる。しかも、袋17を構成する材料が多孔質であるので、多数の孔の分だけ材料の使用量を少なくできる。したがって、上記実施形態によれば、袋17が溶解するまでの時間を短縮することができ、しかも水の供給量も従来より少なくできるので、作業性が向上する。このように上記実施形態の防蟻方法は、作業性に優れているので、床下にもぐって作業が必要になるリフォーム時などに好適である。
【0041】
また、上記実施形態では、不織布の溶解中または溶解後に、防蟻材15を基礎際23側および周縁部27側に押圧するので、防蟻材15全体の形状を整えることができるとともに、防蟻材15と基礎際23およびその周辺の面13a,21aとの隙間、防蟻材15と周縁部27およびその周辺の面25a,21aとの隙間、並びに防蟻材15の粒同士または小片同士の隙間を小さくすることができる。これにより、防蟻効果をより高めることができる。
【0042】
また、上記実施形態では、前記押圧工程において、防蟻材15が基礎際23に沿って立ち上がり部13の内側面13aまたは配管25の側面25aと面状に接触する側面接触部15bと、防蟻材15が基礎際23に沿って水平部21の上面21aと面状に接触する水平接触部15cとを形成している。これにより、防蟻材15を立ち上がり部13の内側面13aと面状に接触させて防蟻材と立ち上がり部13との接触面積を大きくするとともに、防蟻材15を上面21aと面状に接触させて防蟻材15と水平部21との接触面積を大きくして防蟻効果をさらに高めることができる。
【0043】
また、上記実施形態では、前記押圧工程において、端部に押圧面33aを有する押圧部材29を用いて防蟻材15を押圧することにより、側面接触部15bの上端部と水平接触部15cの先端部との間に跨り、鉛直方向に対して傾斜した傾斜面状の被押圧部15aを形成している。このように防蟻材15の押圧時に押圧部材29を用いるので被押圧部15aを効率よく所望の形状に押圧でき、作業性が向上する。また、側面接触部15bの上端部と水平接触部15cの先端部との間に跨る被押圧部15aを傾斜面状に成形することで、防蟻材15と立ち上がり部13との接触高さをより大きくできるとともに、防蟻材15と水平部21の接触幅をより大きくできる。これにより、防蟻材15と立ち上がり部13の内側面15aとの接触面積、および防蟻材15と水平部21の上面21aとの接触面積をより大きくできるので、防蟻効果をさらに高めることができる。
【0044】
また、上記実施形態では、前記配置工程の前に、基礎際23の周辺および周縁部27の周辺に予め水をかけておく工程をさらに備えているので、内側面13a、上面21a、および側面25aを予め湿らせておくことができる。したがって、この工程後の配置工程において袋体19が基礎際23および周縁部27に沿って配置されたときに、立ち上がり部13の内側面13a、水平部21の上面21aまたは配管25の側面25aに面する袋17の表面にも水を効果的に接触させることができる。これにより、袋17が溶解するまでの時間をさらに短縮することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、上記実施形態では、配置工程の前に基礎際近傍および周縁部近傍に予め水をかけておく工程を備えている場合を例に挙げて説明したが、この工程は必ずしも必須ではない。予め水をかけておく工程を省いた場合であっても、袋の材料として多孔質の不織布を用いているので、基礎際または周縁部に沿って袋体を配置した後、袋の表面に水をかけると、袋の裏側(基礎際側または周縁部側)にも水を浸透させて行き渡らせることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、押圧部材の押圧面が平面である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。押圧面は、例えば把持部側に凹む凹面であってもよく、先端側に凸の凸面であってもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、入隅および出隅の基礎際において袋体の端部同士を重ねる場合を例に挙げて説明したが、上記したように多孔質の不織布を用いて形成された袋は弾性的な反発力が小さいので、1本の袋体の中ほどをほぼ直角に折り曲げた状態でこの袋体を入隅または出隅の基礎際に沿って配置することもできる。
【0048】
また、上記実施形態では、シート部材として、不織布を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。シート部材としては、不織布の他、例えば織物、編物、網状物などを用いることもできる。
【符号の説明】
【0049】
11 地盤
13 立ち上がり部
15 防蟻材
15a 被押圧部
15b 側面接触部
15c 水平接触部
17 袋
19 袋体
21 水平部
21a 水平部の上面
23 基礎際
25 配管
25a 配管の側面
27 周縁部
29 押圧部材
29a 押圧面
31 スプレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤から上方に立設された基礎の立ち上がり部とこの立ち上がり部に囲まれた水平部とを有する基礎構造における防蟻方法であって、
粒状または小片状の防蟻材が水溶性を有する多孔質のシート部材によって包まれた袋体を、前記立ち上がり部の内側面と前記水平部の上面との境界部に沿って、または前記水平部から上方に延設された配管の側面と前記水平部の上面との境界部に沿って配置する工程と、
前記袋体における前記シート部材の表面に水または水と防蟻薬剤を含む液体をかける工程と、
前記シート部材の溶解中または溶解後に、前記防蟻材を前記境界部側に押圧する工程と、を備えた防蟻方法。
【請求項2】
前記押圧工程において、前記防蟻材が前記境界部に沿って前記立ち上がり部の前記内側面または前記配管の前記側面と面状に接触する側面接触部と、前記防蟻材が前記境界部に沿って前記水平部の前記上面と面状に接触する水平接触部とを形成する、請求項1に記載の防蟻方法。
【請求項3】
前記押圧工程において、端部に押圧面を有する押圧部材を用いて前記防蟻材を押圧することにより、前記側面接触部の上端部と前記水平接触部の先端部との間に跨り、鉛直方向に対して傾斜した傾斜面状の被押圧部を形成する、請求項2に記載の防蟻方法。
【請求項4】
前記配置工程の前に、前記境界部およびその周辺に水をかける工程をさらに備えた、請求項1〜3のいずれかに記載の防蟻方法。
【請求項5】
前記基礎構造がベタ基礎構造または土間コンクリート構造である、請求項1〜4のいずれかに記載の防蟻方法。
【請求項6】
建築物の基礎構造における防蟻処理に用いられる袋体であって、
粒状または小片状の防蟻材と、
水溶性を有する多孔質のシート部材により形成され、前記防蟻材を包む袋と、を備えた袋体。
【請求項7】
前記防蟻材が尖角形状のガラス片である、請求項6に記載の袋体。
【請求項8】
前記シート部材がポリビニルアルコール系繊維を主成分とする不織布である、請求項6または7に記載の袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−248779(P2010−248779A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99042(P2009−99042)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000196750)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】