説明

防護シ−ト

【課題】本発明は、低温下においても柔軟性に富み、作業性が非常によいのみならず、難燃性や耐摩耗性を備え、しかも、防護シ−トの摩損による防護機能の喪失を有効に防止することができる、防護シ−トを提供するものである。
【解決手段】防護シート1は柔軟剤を添加せしめた難燃性ポリエチレン樹脂でもって積層シ−ト状にカレンダ−加工せしめている。また、摩耗度を検知すべく各積層シ−ト部2・3・4を各々色違い状に着色せしめている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護シ−トに関し、さらに詳細には、高低圧架空配電線を建築現場の仮設足
場や造営物の突出し看板等の接近から防護せしめるべく、高圧縁回し支持碍子付近や変圧
器周りの電線等に巻付けて使用する防護シ−トに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の防護シ−トとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主体とする
積層シ−ト状のもの、あるいは、塩素化ポリエチレンを主体とする単層シ−ト状のもの
(特開昭64−43903号公報参照)などが知られている。
そして、上述の如く構成された防護シ−トは、高圧縁回し支持碍子付近や変圧器周りの
電線など形状が複雑な個所に巻付け、建築現場の仮設足場等から高低圧架空配電線を防護
せしめるものとされている。
【特許文献1】特開昭64−43903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のエチレン−酢酸ビニル共重合体を主体とする防護シ−トは、柔軟性に
富み、被防護物に対して非常に馴染み易く、低温下においても柔軟性が損なわれないため
に広く用いられているものである。
しかしながら、かかる防護シ−トは、低質量のシ−ト材を用い、また、積層シ−ト部間
に空気が存在することから、燃焼を防止せしめるための構造としては不十分である。さら
に、防護シ−トが飛散物等により汚損した場合などにおいては、地絡により発火して焼損
事故に繋がる危険性があるものである。
【0004】
また、上記の塩素化ポリエチレンを主体とする防護シ−トは、難燃性に対して優れた性
状を呈する反面、低温時の硬度が比較的高く、作業性の点において問題が生じるものであ
る。さらに、被防護物に巻付けて固定した場合においてもその形状の癖が残り、復元性に
劣るものであって、再使用には不向きである。
【0005】
なお、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体、および塩素化ポリエチレンを主体とする防
護シ−トには、両者とも摩耗度を検知する手段が施されていないものである。このため、
使用時に街路樹などが接触して摩損し、防護機能を喪失して由々しき問題を生起せしめる
おそれがあるものである。
【0006】
本発明は、かかる従来例の課題を解決し、低温下においても柔軟性に富み、作業性がよ
いのみならず、難燃性や耐摩耗性を備えた防護シ−トを提供しようとするものである。さ
らに、摩耗度を検知する手段を備え、防護シ−トの摩損による防護機能の喪失を有効に防
止することができる防護シ−トを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1記載の発明は、柔軟剤を添加せしめた難
燃性ポリエチレン樹脂でもって積層シ−ト状にカレンダ−加工せしめてなることを特徴と
する、防護シ−トを要旨とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、摩耗度を検知すべく各積層シ−ト部を各々色違い状に着色せし
めてなることを特徴とする、請求項1記載の防護シ−トを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1記載の発明は、上述のように構成されているから、低温下においても
柔軟性や復元性に富み、作業性が非常によいのみならず、難燃性や耐摩耗性に優れ、防護
シ−トとしての機能を有効に発揮することができ、しかも、再使用に供することが出来る
ものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、上述のように構成されているから、使用時における摩耗度を積
層シ−ト部の色変化により検知せしめ、防護シ−トの摩損による防護機能の喪失を有効に
防止せしめることが出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における難燃性ポリエチレン樹脂は、ポリエチレンに難燃剤を配合せしめたもの
で、例えば、超低密度ポリエチレンに有機ハロゲン系難燃剤や有機リン酸系難燃剤、ある
いは、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤を配合せしめたものを好適に用いる。そして
、かかる難燃性ポリエチレン樹脂には柔軟剤を添加せしめ、低温下における柔軟性や復元
性を付与せしめる。
【0012】
上記の柔軟剤としては、エチレンとα−オレフィンのコオリゴマ−、パラフィン系軟化
剤、芳香族系軟化剤、ナフテン系軟化剤、ペトロラタムなどの石油系軟化剤;コ−ルタ−
ル、クマロン・インデン樹脂などのコ−ルタ−ル系軟化剤;脂肪酸および脂肪酸塩、脂肪
油、ワックスなどの脂肪油系軟化剤;ポリブデン、ポリイソブチレンなどの液状重合体;
フェノ−ル・アルデヒド樹脂、スチレン樹脂、低分子可塑剤などの合成軟化剤、あるいは
、スチレン系共重合体やオレフィン系重合体などの熱可塑性エラストマ−などの少くとも
一種を用いる。
【0013】
本発明における防護シ−トは、難燃性ポリエチレン樹脂に所要の柔軟剤を添加し、積層
シ−ト状にカレンダ−加工せしめる。カレンダ−加工せしめるための装置や方法について
は制限がなく、公知のカレンダ−成形機を用いて公知の方法により行なう。このさい、防
護シ−トは、好ましくは三層の積層シ−ト状に形成せしめると共に、摩耗度を適正に検知
せしめるべく各積層シ−ト部を各々色違い状に着色せしめる。着色剤としては、チタン白
、亜鉛華、弁柄、朱、群青、チタン黄、黄鉛、カ−ボンブラック等の無機顔料、イソイン
ドリノン、ハンザイエロ−A、キナクリドン、パ−マネントレッド4R、フタロシアニン
ブル−、アニリンブラック等の有機顔料(或いは染料を含む)などを用いる。また、防護
シ−トの厚さは、例えば2mm、サイズは75cm×60cm、75cm×38cm、あ
るいは38cm×37.5cmなど用途に応じて適宜所要の厚さやサイズに形成せしめる

【0014】
本発明における難燃性ポリエチレン樹脂は、上記の柔軟剤の外、本発明の特性を損なわ
ない範囲で使用目的に応じて各種の添加剤や補助資材を配合することができる。そして、
これらの添加剤や補助資材としては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯
電防止剤、滑剤、充填剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤などを挙げることが出来る。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図3は本発明の一実施例を示すもので、同図中、1は難燃性ポリエチレン樹脂
に所要の柔軟剤を添加せしめて積層シ−ト状にカレンダ−加工された防護シ−ト、2・3
・4は該防護シ−ト1を構成する表層シ−ト部と中間層シ−ト部と裏層シ−ト部で、該表
裏層シ−ト部2・4は各々黄色に着色されると共に、中間層シ−ト部3は黒色に着色され
ている。
その他、5は架空配電線、6は電線防護管、7は高圧ピン碍子、8は耐張碍子、9は固
定用テ−プを各々示す。
【0016】
そして、上述の如く構成された実施例は、高圧縁回し支持碍子付近や変圧器周りなど複
雑な形状を呈する架空配電線5に被覆状に巻付けて防護せしめる。
例えば、図2に図示するように、電線防護管6付き架空配電線(図示略)を支持せしめ
る高圧ピン碍子7付近においては、防護シ−ト1を電線保護管6の外周面に沿ってその一
端より他端に向けて巻付け、架空配電線と共に高圧ピン碍子7の頭部を被覆せしめたのち
、固定用テ−プ9を巻付けて固定し、架空配電線を確実に防護せしめる。このさい、防護
シ−ト1は柔軟剤を添加せしめた難燃性ポリエチレン樹脂でもって積層シ−ト状にカレン
ダ−加工せしめられているから、低温下においても柔軟性に富み、巻付け作業を非常に容
易に、しかも確実に行うことが出来るのみならず、復元性を有するものであって、ひいて
は、防護シ−ト1を再使用に供することが出来て非常に経済的である。また、防護シ−ト
1は難燃性や耐摩耗性に優れ、防護シ−ト1としての機能を有効に発揮することが出来る
のみならず、たとえ摩耗した場合においても、表層シ−ト部2・中間層シ−ト部3・裏層
シ−ト部4が各々色違い状に着色されているから、摩耗度を容易に検知せしめ、防護シ−
ト1の摩損による防護機能の喪失を有効に防止せしめることが出来るものである。
【0017】
また、図3に図示するように、電線防護管6付き架空配電線5の引留クランプ個所を引
留クランプカバ−(図示略)にカバ−せしめた個所においては、防護シ−ト1を耐張碍子
8の一部と共に引留クランプカバ−に被覆状に巻付けたのち、固定用テ−プ9を巻付けて
固定せしめ、架空配電線5を確実に防護せしめる。
このさい、上記の使用例と同様に、防護シ−ト1の巻付け作業を非常に容易に、しかも
確実に行うことが出来るなど、同旨の作用効果を奏するものである。
【0018】
なお、上記実施例において、防護シ−ト1は表層シ−ト部2と中間層シ−ト部3と裏層
シ−ト部4とにより三積層シ−ト状とされているが、これに限定されるものでなく、必要
に応じてその積層シ−ト部数を増減せしめてもよいものである。また、表裏層シ−ト部2
・4は黄色に、中間層シ−ト部3は黒色に各々着色されているが、これに限定されるもの
でなく、必要に応じて適宜所要の色でもって色違い状に着色せしめてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例を示す一部を破砕した斜視図である。
【図2】実施例の使用状態を示す側面図である。
【図3】実施例の他の使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 防護シ−ト
2 表層シ−ト部
3 中間層シ−ト部
4 裏層シ−ト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟剤を添加せしめた難燃性ポリエチレン樹脂でもって積層シ−ト状にカレンダ−加工
せしめてなることを特徴とする、防護シ−ト。
【請求項2】
摩耗度を検知すべく各積層シ−ト部を各々色違い状に着色せしめてなることを特徴とす
る、請求項1記載の防護シ−ト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−297978(P2009−297978A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153721(P2008−153721)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2008年4月8日発行の 「電気新聞」に発表
【出願人】(000180357)株式会社四電工 (11)
【出願人】(000207311)大東電材株式会社 (14)
【Fターム(参考)】