説明

防護柵の構造と構築方法

【課題】現場での溶接作業が発生せず、足場の組み立て、解体が不要で天候にも左右されない防護柵を提供する。
【解決手段】地中に固定する受圧支柱1と、受圧支柱1の外側に沿わせて取り付ける外付けガイド2と、平行する外付けガイド2の間に挿入するパネル3とより構成する。受圧支柱1と外付けガイド2とは拘束部材4によって固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護柵の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
法面の裾部分に設置して、法面からの崩壊土砂、落石の道路面への転出を阻止するための防護柵が知られている。
【特許文献1】特開2001−164520号公報。
【特許文献2】特開2005−61119号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記したような従来構築されている防護柵の構造にあっては、次のような問題点がある。
<1> 防護柵として従来は、H型鋼の支柱のフランジ間の隙間に木製の矢板を落とし込んで取り付けるのが一般的であった。その場合に木製の矢板は繰り返して使用することができず不経済であった。
<2> H型鋼に木製の矢板、鋼製の矢板を落とし込んだだけであると、H型鋼のフランジとフランジの間隔が広く、その間隔に対して矢板の厚さは薄いので、落石などの衝撃で外れる可能性があった。
<3> H型鋼のフランジに鋼製の矢板を溶接して固定する構造では、H型鋼のフランジの間隔が広くても確実に固定できる。しかし溶接作業は雨天では行うことができず、熟練を要する不経済な作業であった。さらに溶接には足場が必要となり、溶接後には足場を解体するという不経済な作業も必要となる。
<4> 支柱と支柱との間に矢板を落とし込む構造であるが、H型鋼などの支柱を地中に立てる場合に穴を掘ってコンクリートで固定する方法を採用している。そのために、立て込む位置の誤差が生じやすく、正確な間隔を維持することが困難である。

【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために、本発明の防護柵の構造は地中に固定する受圧支柱と、受圧支柱の外側に沿わせて取り付ける外付けガイドと、
平行する外付けガイドの間に挿入するパネルとより構成し、受圧支柱と外付けガイドとは拘束部材によって固定して構成したものである。
また本発明の防護柵の構築方法は、法面の裾などの地表に一定間隔で受圧支柱を立て込み、受圧支柱に外付けガイドを取り付け、外付けガイドの側面の縦溝にパネルの縦板を挿入して構築するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の防護柵の構造は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
1) 現場での溶接作業が発生しないから、そのための足場の組み立て、解体が不要で天候にも左右されない。したがって迅速な作業が可能であり、その結果、現場周辺の交通規制の日時を大幅に短縮することができる。
2) 特殊な技能者である溶接工を必要としないから、経済的な構築を行うことができる。
3) H型鋼の法面側に外付けガイドを取り付ければ、落石などの衝撃をH型鋼で受けることができ、大きな強度を期待できる。
4) H型鋼の道路側に外付けガイドを取り付ければ、道路側から見て凹凸がほとんど発生せず、良好な景観を呈することができる。
5) 外付けガイドに挿入したパネルは簡単に上方向に引き上げることができる。そのために土砂の崩壊、落石があった場合にパネルを引き上げて堆積した土砂、落石を容易に撤去することができる。
6) 受圧支柱と外付けガイド、外付けガイドとパネルは、すべて簡単に組み立ててあるだけである。したがって簡単に解体して再利用することができる。
7) 受圧支柱と外付けガイドとの取り付けは、短冊板とボルトの組み合わせである。したがって受圧支柱の設置位置が多少不正確であっても、受圧支柱と外付けガイドの位置をズラして外付けガイドの位置は正確に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0007】
<1>全体の構成。
本発明の防護柵は、地中に固定する受圧支柱1と、受圧支柱1の外側に沿わせて取り付ける外付けガイド2と、平行する外付けガイド2の間に挿入するパネル3とよって構成する。
そして、受圧支柱1と外付けガイド2とは拘束部材4によって固定して構成する。
【0008】
<2>受圧支柱。
受圧支柱1は、パネル3に加わった落石などの衝突のエネルギーを支持するための支柱である。
広く市販されている安価な支柱として例えばH型鋼を使用する。
この受圧支柱1の下部を、地面に掘った穴に挿入し、その周囲をコンクリートで固めて固定する。
この際に前記したように、コンクリートの締固めの振動、衝撃などで受圧支柱1の位置がずれることがある。
しかし、本発明の構造では受圧支柱1の位置が多少不正確であっても、後述する外付けガイド2の取り付け位置をズラすことによって、受圧支柱1の設置位置の誤差を吸収することができる。
【0009】
<3>外付けガイド2。
外付けガイド2は、パネル3の端部に突設した縦板を挿入してガイドするための部材である。
あえて受圧支柱1のほかに、このような外付けガイド2を用いる理由は、前記したような受圧支柱1の設置位置の誤差の吸収だけでなく、H型鋼のフランジの間隔が、パネル3の厚さに比較して大きすぎ、そのままでは使用できないという理由による。
外付けガイド2は、受圧支柱1と接する面と直交する側面に縦溝21を形成した縦長の部材であり、この縦溝21にパネル3の端部に突設した縦板31が挿入できるように構成してある。
簡単な構造としては、図2,3に示すように断面がC字状のチャンネル材を向かい合わせに配置し、その間に間隔保持材32として断面がロ字状のボックス材を介在させて構成することができる。
その場合に、チャンネル材の端部のL型部が向かい合って形成する空間が縦溝21となり、その縦溝21がパネル3の挿入時のガイド機能を果たす。
【0010】
<4>拘束部材4。
受圧支柱1の長手方向の表面に、外付けガイド2の長手方向を重ねて沿わせて一体化する。
しかしそのために、溶接は使用しない。
溶接に代わって拘束部材4を使用する。
この拘束部材4は、受圧支柱1の表面と裏面に配置する2枚の短冊板41と、表面と裏面の短冊板41の間を貫通したボルト42によって構成する。
短冊板41とは、鋼製の長方形の板材であるが、その長さは受圧支柱1の幅よりも十分に長く形成する。
この短冊板41の両端に、受圧支柱1の幅よりも広い間隔で、ボルト42を挿入するボルト穴43を開口しておく。
特に複数個所にボルト穴43を開口しておくと、取り付けの位置の修正に便利である。
この場合の位置の修正の意味について再度説明する。
前記したように受圧支柱1は必ずしも正確な位置に設置できるとはいえず、あるいは多少傾斜して立て込まれる場合もある。
一方、受圧支柱1と受圧支柱1の間に配置するパネル3は工場生産した鋼製の部材であるからその水平方向の幅や直角性はミリ単位で正確である。
こうした現場で立て込む部材の精度と、工場生産の部材との精度の相違を吸収するために、受圧支柱1と外付けガイド2の取り付けに拘束部材4を使用するのが本発明の特徴である。
受圧支柱1に拘束部材4を取り付けるのは、受圧支柱1の両側に短冊板41を配置し、受圧支柱1を挟む状態で両側の拘束部材4の穴にボルト42を貫通してナットで締め付ければ拘束部材4を受圧支柱1に強固に取り付けることができる。
【0011】
<5> 拘束部材4と外付けガイド2の取り付け。
受圧支柱1の両側に拘束部材4を取り付けただけでは意味がなく、実際にはそれに先立って1枚の短冊板41と外付けガイド2とを一体化しておく。
そのため拘束部材4の2枚の短冊板41のうちの1枚の短冊板41の外側、すなわち受圧支柱1と接する面とは反対側の面に係合突起44を突設する。
一方、外付けガイド2には係合突起44の挿入孔を開口しておき、短冊板41の係合突起44と、外付けガイド2の挿入孔とを係合することによって一体化する。
その場合に係合突起44を挿入孔に挿入しても、そのまま抜け出してしまうことがないように構成する必要がある。
そのために、例えば係合突起44は首の長い横長のブロックとし、挿入孔22は縦長の穴として形成し、短冊板41を縦方向に立てた状態でその係合突起44を挿入孔22に挿入し、その後に短冊板41を水平方向に回転すれば、横長のブロックが縦長の挿入孔22に係合してしまい、そのままでは抜け出すことができず、両者を確実に一体化することができる。(図4)
ただし以上の記載は一例であって、同様の機能を果たすことが出来る他の構造を採用することもできる。
【0012】
<6> パネル3。
受圧支柱1の間、正確には外付けガイド2の間に配置するパネル3は、矩形の鋼製の板体である。
ただし、外付けガイド2の縦溝21に挿入ができるように、パネル3の両端には鉛直方向に縦板31が突設してある。
この縦板31は平面視、T字状に突設させ、その幅を外付けガイド2の縦溝21の幅よりも狭くしておけば、縦溝21の内部を通して垂直方向にスライドさせることができる。
【0013】
<7> 構築方法。
次に本発明の防護柵の構築方法について説明する。
【0014】
<8>受圧支柱1の設置。
まず、法面の裾などの地表に一定間隔で受圧支柱1を立て込む。
この間隔は、挿入するパネル3の水平方向の幅に近い寸法となる。
そのために地表から一定深さで穴を掘り、その内部にH型鋼などの受圧支柱1を立て込んで穴の内部にコンクリートを打設して固定する。
【0015】
<9>外付けガイド2の取り付け。
受圧支柱1の設置が終わったら、受圧支柱1の側面に外付けガイド2を取り付ける。
外付けガイド2は、受圧支柱1の法面側への取り付け、あるいは道路側への取り付けが可能である。
外付けガイド2を受圧支柱1の法面側へ取り付けると、落石などがあった場合にその衝撃は受圧支柱1で効果的に受けることができる。
外付けガイド2を受圧支柱1の道路側へ取り付けると、道路側から見た場合にパネル3と外付けガイド2の外側表面とがほぼ同一平面を形成するので、長距離にわたって凹凸のない平滑な平面を形成することができ、良好な景観を呈することができる。
【0016】
<10>パネル3の挿入。
その後に、対向する外付けガイド2の側面の縦溝21に、1枚のパネル3の縦板31を上から挿入してゆく。
パネル3の高さは、外付けガイド2の縦方向の長さに比較して短いから、数枚のパネル3を挿入することによって、外付けガイド2の上端まで空間をパネル3でカバーすることができる。
こうして防護柵が完成する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の防護柵の実施例において、パネル3を外付けガイド2に取り付ける前の状態の説明図。
【図2】外付けガイド2を受圧支柱1に取り付ける構造の実施例の説明図。
【図3】受圧支柱1と外付けガイド2とパネル3の関係を説明する平面図。
【図4】短冊板の取り付けの説明図。
【図5】完成した防護柵の斜視図。
【符号の説明】
【0018】
1:受圧支柱1
2:外付けガイド2
21:縦溝21
3:パネル3
31:縦板31
4:拘束部材4
41:短冊板41
42:ボルト42
44:係合突起44

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に固定する受圧支柱と、
受圧支柱の外側に沿わせて取り付ける外付けガイドと、
平行する外付けガイドの間に挿入するパネルとより構成し、
受圧支柱と外付けガイドとは拘束部材によって固定して構成した、
防護柵。

【請求項2】
請求項1記載の拘束部材は、
受圧支柱の表面と裏面に配置する2枚の短冊板と、
表面と裏面の短冊板の間を貫通したボルトによって構成し、
1枚の短冊板の係止突起と、外付けガイドの挿入孔との係合によって構成した、
防護柵。

【請求項3】
請求項1記載の外付けガイドには、
受圧支柱と接する面と直交する側面に縦溝を形成し、
この縦溝にパネルの端部に突設した縦板が挿入できるように構成した、
防護柵。
【請求項4】
法面の裾などの地表に一定間隔で受圧支柱を立て込み、
受圧支柱に外付けガイドを取り付け、
外付けガイドの側面の縦溝に、パネルの縦板を挿入して構築する、
防護柵の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−285823(P2008−285823A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129276(P2007−129276)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(593139374)株式会社エムオーテック (10)
【Fターム(参考)】