説明

防錆ワックス組成物

【課題】有害揮発性有機物の発生がなく、塗布後に流れ落ちない防錆ワックス組成物を提供する。
【解決手段】
本発明は防錆ワックス組成物に関し、更に詳しくは、ナフテン系鉱油ワックス、防錆添加剤、アルキド樹脂、および添加剤を含有する防錆ワックス組成物において、酸化石油ワックスとマイクロスタリンワックスが最適比で混合されたワックスを使用し、防錆添加剤として石油スルホン酸カルシウムとジノニルナフタレンスルホン酸バリウムを混合することで防錆性が向上し、また、作業時に揮発有機成分が減少するため自動車車体部位用ワックスとして適用できる優れた防錆ワックス組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防錆ワックス組成物に関し、更に詳しくは、ナフテン系鉱油ワックス、防錆添加剤、アルキド樹脂、および添加剤を含有する防錆ワックス組成物において、酸化石油ワックスとマイクロスタリンワックスが最適比で混合されたワックスを使用し、防錆添加剤として石油スルホン酸カルシウムとジノニルナフタレンスルホン酸バリウムを混合することで防錆性が向上し、また、作業時に揮発有機成分が減少するため自動車車体部位用ワックスとして適用できる優れた防錆ワックス組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車産業では自動車の室内だけでなく自動車製造作業場も有害物質を遮断しようとする努力がなされている。特に自動車製造過程で車体溶接部位の防錆目的に使用されている既存の防錆ワックスは、溶剤にワックスおよび添加剤などを希釈して塗布され、その後、溶剤の揮発により車体にワックスと添加剤のみ残されて防錆がなされる。したがって、このような防錆ワックスは塗布後、工場内では別途換風機などを利用し、乾燥時に揮発する溶剤を作業場内から除去する必要があった。
【0003】
このように防錆目的で使用されるワックスの有害揮発性有機化合物を低減するために大韓民国公開特許第10−2006−0021198号のようにイオン交換水を組成物に添加した水溶性防錆ワックスのような技術もあるが、このような技術は防錆ワックスに含まれた水を蒸発させるために高い温度で乾燥しなければならない短所があった。
したがって、自動車用防錆ワックスとして、揮発成分を排出せず、且つ別途の加熱乾燥装備を必要としない既存ワックスと同等の性能を有する防錆性能のワックスの開発が切実に求められている。
【特許文献1】大韓民国公開特許第10−2006−0021198号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は揮発成分を有する溶剤の代わりにナフテン系鉱油を使用し、塗布後に前記ナフテン系鉱油が流れ落ちる問題を解決するため、アルキド樹脂を組成物に塗布して流れ落ちるのを防止することで、作業時に有害揮発性有機物の発生がなく、且つ別途の高温乾燥装置を必要としない、防錆性能が溶剤形防錆ワックスと同等のワックス組成物を開発した。
【0005】
本発明の目的は有害揮発性有機物の発生がなく、塗布後に流れ落ちない防錆ワックス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ナフテン系鉱油10〜20重量%、酸化石油ワックスとマイクロスタリンワックスが10:5〜15:10重量比で混合されたワックス15〜25重量%、石油スルホン酸カルシウムとジノニルナフタレンスルホン酸バリウムが10:35〜20:45重量比で混合された防錆添加剤45〜65重量%、アルキド樹脂10〜30重量%、および、その他の添加剤0.5〜2重量%、を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防錆ワックス組成物は有害揮発性有機成分の排出が改善され、2次流動性、塗膜、ゴムに対する影響が既存の防錆ワックスと同等であり、作業環境も改善され、自動車などの防錆ワックスとして適用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の防錆ワックス組成物についてより具体的に説明する。
本発明はナフテン系鉱油、ワックス、防錆添加剤、アルキド樹脂、および添加剤を含有した防錆ワックス組成物に関し、酸化石油ワックスとマイクロスチレンワックスが最適比で混合されたワックスを使用し、防錆添加剤として石油スルホン酸カルシウムとジノニルナフタレンスルホン酸バリウムを混合し、その他の添加剤を含有する防錆ワックス組成物であり、作業時に有害揮発性有機物が発生するという問題点を改善し、防錆性が向上された防錆ワックス組成物に関するものである。
【0009】
本発明では、オイルにワックス、防錆添加剤、アルキド樹脂、および添加剤を溶解させる。これは、防錆ワックスの噴霧を容易に行うために使用するもので、炭化水素が主成分であり、原油の常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して流出した油を分離して得る。オイルは引火点によって区分されるが、一般的なオイルの場合、芳香族成分が含まれているため精製方法によっては発癌性物質が含まれることもある。
【0010】
従って、本発明では一般的なオイルを使用せずに高度に精製されたナフテン系鉱油を使用し、オイルの粘度は100℃を基準に3cSt、引火点は100℃以上であり、その含量は10〜20重量%のものを使用する。前記含量が10重量%未満の場合、粘度が過度に高いため噴霧ができず、20重量%を超過する場合、乾燥時間が過度に長くなるため噴霧後に前記ナフテン系鉱油が流れ落ちてしまうという問題点が発生する。
【0011】
本発明で使用するワックスは飽和炭化水素を主成分としたもので、被膜形成物質として適用し、防錆性も付与する。前記ワックスは被膜形成時、水分通過を遮断する障壁の役割を有する。前記ワックスは融点が高いほど撥水性が良くなり、温度に対する感応性が高くなる。ワックスは飽和炭化水素であるため温度に対する反応性が高く、低温で粘度が急激に増加する現象が起きるため、本発明では1種類のみ使用せず、酸化石油ワックスとマイクロスタリンワックスを10:5〜15:10重量比で混合して使用する。
前記重量比が10:5未満である場合、塗布後にワックスが容易に流れ落ちて車体に錆が発生し、15:10重量比を超過する場合、防錆性は良好であるが乾燥時間が長くなる問題点が発生する。
【0012】
前記酸化石油ワックス(Oxidized Petroleum Wax)は融点が80℃、全酸価17.5mgKOH/gを特徴とするワックスである。またマイクロスタリンワックス(一般的にマイクロワックスと呼ぶ)は高粘度潤滑蒸留分(Lude distillate)と脱アスファルト残渣油(Deasphalted oil from residue)などから溶剤抽出法により脱ろうされたワックスであり、初期には無定形ワックス(Amorphous wax)とも呼ばれ、側鎖型飽和炭化水素が主成分の針状形で接着性のある白色または黄色のワックスである。
【0013】
油分との親和力が大きいため油分からの分離が簡単でなく、パラフィンワックスに比べて油分含量が高い方である。前記マイクロワックスは別の種類のワックス(鉱物性、植物性ワックス)と調和されて融点および硬度を高めるのに使用される。マイクロワックスは側鎖型飽和炭化水素を有しており、温度による粘度変化が相対的に少ないため最初に使用した酸化石油ワックスの温度による粘度変化の弱点を補完する役割も有する。
【0014】
このようなマイクロワックスは融点が70℃で、全酸価が1.5mgKOH/gであることが特徴である。ワックスの含量は、15〜25重量%の範囲で使用し、15重量%未満の場合、防錆性が低下して防錆ワックスの機能を果たすことができず、粘度が過度に低くなり塗布後に流れ落ちてしまう。
また、25重量%を超過する場合、防錆性は良好であるが乾燥時間が長くなるという問題が発生する。
【0015】
本発明で使用する防錆添加剤は石油スルホン酸カルシウムとジノニルナフタレンスルホン酸バリウムを10:35〜20:45重量比で使用し、10:35重量比未満の場合、防錆性が低くなり、20:45重量比を超過する場合、2次流動性が悪くなる問題が発生する。
【0016】
金属塩のスルホン酸は世界的に最も多く適用されている防錆添加剤で、アルキル基の種類によって防錆性に違いの発生することが知られている。酸素原子の二重結合からなる金属塩スルホン酸が金属と化学的に吸着を行うため、錆の原因となる水分と酸素の金属表面への付着を遮断する効果がある。また、スルホン酸は金属イオンを付着させて石鹸を作るが、この金属イオンの種類による差異はスルホン酸の性質を左右させる。一般的にバリウムが最も高い防錆性を示し、カルシウムイオンを付着したものは耐熱性が優れている。
【0017】
このようなスルホン酸はただ防錆性のみを付与するのではなく、溶液システムに添加するワックスを安定化させる効果もあり、流動性を付与する。本発明に使用される石油スルホン酸カルシウムは融点が182℃であり、全酸価が45mgKOH/gであるものを使用し、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウムは液状で絶対粘度が10000cPのものを使用し、含量が45〜65重量%の範囲で使用する。45重量%より少ない場合、防錆性能が落ち、65重量%を超過する場合、2次流動性が悪くなる。
【0018】
本発明で使用するアルキド樹脂は多塩基酸と多価アルコールを反応させたエステルを基本とし、再び脂肪酸または油を反応させて得られる成分で、不揮発分100%の樹脂である。前記アルキド樹脂は40℃での動粘度が31cSt、全酸価が22mgKOH/gであるものを使用し、含量は10〜30重量%が適当である。10重量%未満の場合、防錆ワックスが流れ落ちる問題が発生し、30重量%を超過する場合、貯蔵安定性が低くなる。
【0019】
本発明で使用するその他の添加剤は防錆ワックスの気泡生成を抑制する抑泡剤、車体表面に付いている水分を塗布時に効果的に防錆ワックスに吸収させる界面活性剤、アルキド樹脂を酸化させる乾燥剤、保管時に露出表面の早期硬化を防止するスキン防止剤などの中から選択された少なくとも1種の混合物を使用し、その使用量は0.5〜2重量%である。0.5重量%未満の場合、アルキド樹脂が乾燥しないため容易に流れ落ち、2重量%を超過する場合、すぐに乾燥するため噴霧ができないという問題が発生する。前記抑泡剤はアクリルポリマー、界面活性剤は脂肪酸エステル、乾燥剤はコバルト触媒、表面スキン防止剤はオキシム化合物を使用する。
本発明の防錆ワックス組成物の製造方法は特別に限定しない。
【0020】
以下、本発明を下記実施例1〜3によって更に具体的に説明するが、これらは本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を制限しない。
【実施例】
【0021】
表1に表す通り、各成分を常温で攪拌器によって混合した後、防錆ワックス組成物を製造し、下記試験を行ってその結果を表2に表した。
【0022】
(比較例1)
実施例1と同様に実施するが、ワックスはソルベント・ナフサの含量が55%のものを除外し、その他は同様の組成物で下記試験方法を行ない結果を表2に表した。
【0023】
(比較例2)
大韓民国公開特許第10−2006−0021198号の実施例1で製造した水溶性防錆ワックス。
【表1】

【0024】
<試験方法>
(1)不揮発分:不揮発分は試料約2gを平底容器に採取し、その重さを計り、105〜110℃に調節された強制換気乾燥機の中で3時間加熱した後、デシケーター中で冷却した後、重さを測定し、下記の式によって算出した。
不揮発分(重量%)=不揮発分(g)/試料採取量(g)×100
(2)塩水噴霧試験:KSM2109によって実施した。
(3)粘度:ブルックフィールド粘度計を使用して評価した。
【0025】
(4)2次流動性:溶剤で洗浄した0.8t×70×150mmの鋼板(SPCC)に防錆剤を100μになるように塗布し、24時間放置した後、80±5℃の雰囲気の中で垂直に24時間ぶら下げた後、流動長さ(mm)を測定した。
(5)塗膜に対する影響:KSM5400(塗料一般の試験方法)に凖して評価した。
(6)ゴムに対する影響:KSM5400(塗料一般の試験方法)に凖して評価した。
【0026】
【表2】

【0027】
以上の結果によると、実施例1〜3は比較例1〜2より不揮発分が多く、作業時に排出される有害揮発性有機成分が大きく改善され、粘度も優れている。



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフテン系鉱油10〜20重量%、
酸化石油ワックスとマイクロスタリンワックスが10:5〜15:10重量比で混合されたワックス15〜25重量%、
石油スルホン酸カルシウムとジノニルナフタレンスルホン酸バリウムが10:35〜20:45重量比で混合された防錆添加剤45〜65重量%、
アルキド樹脂が10〜30重量%、および
抑泡剤、乾燥剤、界面活性剤および表面スキン防止剤の中から選択された少なくとも1種の混合物であるその他の添加剤0.5〜2重量%、
を含有することを特徴とする防錆ワックス組成物。
【請求項2】
前記抑泡剤はアクリルポリマーであることを特徴とする請求項1記載の防錆ワックス組成物。
【請求項3】
前記乾燥剤はコバルト触媒であることを特徴とする請求項1記載の防錆ワックス組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤は脂肪性エステルであることを特徴とする請求項1記載の防錆ワックス組成物。
【請求項5】
前記表面スキン防止剤はオキシム化合物であることを特徴とする請求項1記載の防錆ワックス組成物。

【公開番号】特開2008−38123(P2008−38123A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261153(P2006−261153)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】