説明

防錆塗料用エマルション樹脂組成物

【解決手段】
本発明はエチレン性不飽和単量体の重合体が、重量平均分子量10000〜70000、ガラス転移温度0〜60℃、体積平均粒径80〜150nmである樹脂粒子(A)、分子量100〜200、比重0.7〜1.5、沸点100〜300℃、引火点20℃以上の有機溶剤(B)、亜硝酸塩(C)、水(D)を含有し、樹脂粒子(A)/有機溶剤(B)/亜硝酸塩(C)/水(D)の重量比率が100/1〜20/0.1〜1/50〜200であることを特徴とする防錆塗料用エマルション樹脂組成物である。
【効果】
耐水性、防錆性、光沢に優れるエマルション樹脂組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性、防錆性、光沢、に優れる防錆塗料用エマルション樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のシャーシやその他の金属部品、タンク、橋梁、水道管、機械等の金属性構築物、建造物の防錆には、従来から防錆塗料が用いられてきた。防錆塗料では省エネルギー、環境、公害等の面より溶剤系から水系への移行が望まれており、各種の検討がなされている。しかしながら、水系の塗料では、耐水性、防錆性、光沢の面で溶剤系塗料に劣っていた。
【特許文献1】特開昭63-199772号公報
【特許文献2】特開平06‐306325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、最低限量の溶剤を使用することにより、耐水性、防錆性、光沢
の面で、溶剤系塗料に劣らない性能を有する水系防錆塗料用エマルション樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述した課題を解決するため鋭意検討した結果、エマルションの粒径、分子量、ガラス転移温度を規定することにより造膜性が向上し、優れた耐水性、光沢を有し、タックやブロッキングも防止できる塗膜が得られることも見出した。さらに本エマルションに特定の溶剤及び亜硝酸塩を含有させることにより、溶剤系塗料に全く劣ることのない光沢と防錆性を有する塗膜が得られることを見出した。
【0005】
すなわち、本発明はエチレン性不飽和単量体の重合体が、重量平均分子量10000〜70000、ガラス転移温度0〜60℃、体積平均粒径80〜150nmである樹脂粒子(A)、分子量100〜200、比重0.7〜1.5、沸点100〜300℃、引火点20℃以上の有機溶剤(B)、亜硝酸塩(C)、水(D)を含有し、樹脂粒子(A)/有機溶剤(B)/亜硝酸塩(C)/水(D)の重量比率が100/1〜20/0.1〜1/50〜200であることを特徴とする防錆塗料用エマルション樹脂組成物である。また、樹脂粒子(A)のエチレン性不飽和単量体組成がスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、及びカルボキシル基含有ビニル単量体を含む樹脂粒子(A)100重量部中のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体組成が1〜8重量部であることが好ましい防錆塗料用エマルション樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、最低限量の溶剤を使用することにより、耐水性、防錆性、光沢の面で、溶剤系塗料に劣らない性能を有する水系防錆塗料用エマルション樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係るエマルション樹脂組成物について具体的に説明する。
【0008】
<樹脂粒子(A)>
本発明における、エチレン性不飽和単量体の重合体を含む樹脂粒子(A)の体積平均粒径は、塗料の塗工性、光沢及び保存安定性の面から、80〜150nmが好ましく、100〜130nmがさらに好ましい。尚、本発明において、体積平均粒子径はマイクロトラックUPA(ハネウェル社製)を用いて測定された値である。
【0009】
また、樹脂粒子(A)の重量平均分子量は、耐水性、防錆性、光沢の面から、10000〜70000が好ましく、20000〜50000がさらに好ましい。該分子量に調整するために、乳化重合の際に、分子量調整剤として、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メタリルスルホン酸ナトリウム、および四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用できる。尚、本発明における重量平均分子量は、GPC SYSTEM−11(SHODEX製、カラムKF806L×3)により測定された値である。
【0010】
また、樹脂粒子(A)のガラス転移温度は、光沢及びブロッキング防止の面から0〜60℃が好ましく、20〜50℃がさらに好ましい。尚、本発明におけるガラス転移温度は、樹脂粒子(A)の自然乾燥物についてDSC220(セイコーインスツルメンツ製)により昇温速度10℃/分で測された値である。
【0011】
本発明に使用されるエチレン性不飽和単量体は、特に制限されるものではないが、具体例としては、例えば、ラジカル重合に通常使用される単量体を挙げることができ、メチル−、エチル−、イソプロピル−、n−ブチル−、イソブチル−、n−アミル−、イソアミル−、n−ヘキシル−、2−エチルヘキシル−、オクチル−、デシル−、ドデシル−、オクタデシル−、シクロヘキシル−、フェニル−、ベンジル−等のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等;スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基を有する類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ誘導体;N−メチルアミノエチルアクリレート、N−メチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルアミノエステル類;ビニルピリジン等のモノビニルピリジン類;ジメチルアミノエチルビニルエーテル等のアルキルアミノ基を有するビニルエーテル類;N−(2−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド等のアルキルアミノ基を有するアミド類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有する類;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル類、スチレンスルホン酸ナトリウム等の不飽和スルホン酸塩類;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート等のジアクリル酸エステルまたはジメタクリル酸エステル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;その他エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルアミド、クロロプレン等がある。これらのエチレン性不飽和単量体は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0012】
これらのエチレン性不飽和単量体の中でも、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、カルボキシル基含有類、アミド基含有類、水酸基含有類の中から選択するのがより好ましく、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル類、カルボキシル基含有類の組み合わせがさらに好ましい。
【0013】
<有機溶剤(B)>
本発明における有機溶剤(B)の分子量は、光沢の面から、100〜200が好ましく、120〜140がさらに好ましい。また、有機溶剤(B)の比重は、光沢、塗料の保存安定性の面から、0.7〜1.5が好ましく、0.77〜0.82がさらに好ましい。
また、有機溶剤(B)の沸点は、光沢、塗膜からの揮発防止の面から、100〜300℃が好ましく、130〜200℃がさらに好ましい。また、有機溶剤(B)の引火点は、保存管理の面から、21℃以上が好ましく、30℃以上がさらに好ましい。
【0014】
このような有機溶剤(B)として、工業ガソリン4号、5号、コールタールナフサ1号、2号、3号、テレビン油、ミネラルスピリット等が好ましく、汎用性の面でミネラルスピリットが最も好ましい。また、樹脂粒子(A)/有機溶剤(B)の重量比率は、耐水性、防錆性、光沢の面から、100/1〜20が好ましく、100/5〜15がさらに好ましい。また有機溶剤(B)は、その全量または一部が樹脂粒子(A)の重合時に重合系内に存在していてもよいし、樹脂粒子(A)の重合後に混合してもよい。
【0015】
<亜硝酸塩(C)>
本発明における亜硝酸塩(C)は、汎用性、コストの面から、亜硝酸ナトリウムが好ましく、耐水性、防錆性、光沢の面から、樹脂粒子(A)/亜硝酸塩(C)の重量比率は100/0.1〜1が好ましく、100/0.1〜0.4がさらに好ましい。
樹脂粒子(A)/水(D)の重量比率は、塗工性、速乾性、コストの面から100/50〜200が好ましく、100/70〜130がさらに好ましい。本発明に用いられる水としては特に制限はなく、精製水、蒸留水及び水道水を用いることができる。
【0016】
<エマルション樹脂組成物(E)>
樹脂粒子(A)の製造は通常の乳化重合法により行われる。用いられる界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンプロペニルアルキルフェニル硫酸アンモニウム等のアニオン系界面活性剤;脂肪酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、シュガー脂肪酸部分エステル、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミン、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびメチルセルロース等のノニオン系界面活性剤;アルキルアンモニウムクロライド、トリメチルアルキルアンモニウムブロマイド、アルキルピリジニウムクロライド、およびカゼイン等の両性界面活性剤; 水溶性多価金属塩類などが挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。界面活性剤の使用量は特に限定されないが、通常単量体に対して0.1〜5重量%程度である。
【0017】
重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用されているものであればよく、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化塩類、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等である。必要に応じて還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤として使用することもできる。重合開始剤の使用量は特に限定されないが、単量体に対して0.1〜3重量%程度である。
エマルションを製造するには通常、前期の界面活性剤、重合開始剤の存在下に、エチレン性不飽和単量体を一括、分割、あるいは連続的に添加して重合を行う。その際、重合は窒素パージ下に重合温度20〜90℃で行われる。
【0018】
上記のようにして得られるエマルションの中和用いる塩基性物質としては、具体的には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属; ヒドロキシルアミン、水酸化アンモニウム、ヒドラジン等の無機アミン;アンモニア、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アミン;酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水素化ストロンチウム、水酸化バリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等の、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の弱酸塩等を挙げることができる。
【0019】
また、本発明のエマルション樹脂組成物には、必要に応じて、架橋剤を加えてもよい。架橋剤としては、例えば、多価金属イオンや、多価金属イオンのアンモニア及びアミン錯体(特にNH3を配位したもの)等が挙げられる。上記多価金属イオンとしては、水中に少なくとも1重量%程度の顕著な溶解性を有する酸化物、水酸化物または塩基性塩、酸性塩または中性塩の形態で組成物に添加することができる、ベリリウム、カドミウム、銅、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ビスマス、アンチモン、鉛、コバルト、鉄、ニッケル、または他の多価金属イオンが挙げられる。上記多価金属イオンのアンモニア錯体及びアミン錯体の形成が可能なアミンとしては、例えば、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、及びエチレンジアミン等が挙げられる。また、アルカリ性pH範囲で可溶化可能な有機酸の多価金属錯体塩も用いることができる。また、酢酸イオン、グルタミン酸イオン、ギ酸イオン、炭酸イオン、サリチル酸イオン、グルコール酸イオン、オクトン酸イオン、安息香酸イオン、グルコン酸イオン、蓚酸イオン及び乳酸イオン等の陰イオンも用いられる。また配位子がグリシンまたはアラニン等の二座アミノ酸である多価金属キレートも用いられる。また、その他の架橋剤として、アルキル化メラミン等の尿素樹脂系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジド系架橋剤等及びこれら架橋剤を水性化したもの等が挙げられる。
本発明のエマルション樹脂組成物のpHは、安定性の面から、5〜10が好ましく、6〜9がさらに好ましい。
【0020】
さらに、本発明のエマルション樹脂組成物には、必要に応じて、ワックス(牛脂及び豚脂等の水添硬化ロウ、ラノリン、ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、モンタン誘導ワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、アマイドワックス、ポリエチレンワックスまたはそのカルボキシル変性ワックス、酸化ポリエチレンワックスまたはそのカルボキシル変性ワックス、ポリプロピレンワックスまたはそのカルボキシル変性ワックス、酸化ポリプロピレンワックスまたはそのカルボキシル変性ワックス、グリコール変性酸化ポリプロピレンワックス、エチレン−アクリル酸共重合ワックス)、アルカリ可溶性樹脂等のレベリング剤、造膜助剤、可塑剤、浸透剤、分散剤、香料、殺菌剤、殺ダニ剤、防かび剤、防腐剤、紫外線吸収剤、消泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料(たとえばチタン白、ベンガラ、フタロシアニン、カーボンブラック、パーマネントイエロー等)、充填剤(たとえば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、カオリン、雲母、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム等)などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0021】
本発明のエマルション樹脂組成物を塗工する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば浸せき塗工、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、ハイドロバーコーター、トランスファロールコーター、リバースコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、フローコーター、ロールコーター、刷毛塗りなどが挙げられ、基体の一部、もしくは全面に塗工することができる。
【0022】
本発明のエマルション樹脂組成物から形成される被膜の乾燥温度は、室温でもかまわないが、40〜200℃で5〜600秒間加熱することもできる。本発明のエマルション樹脂組成物を塗工する基材としてはプラスチック、金属、紙、木材、繊維、皮革、ガラス、ゴム、セラミック、コンクリート等が挙げられ、形状は、フィルム、シート、板状、繊維状、各種成形体等が挙げられ、特に制限されるものではないが、金属の防錆用塗料の原料とすることが好ましい。
【0023】
本発明のエマルション樹脂組成物を応用できる用途は、特に限定されるものではないが例えば、下記のような材料のコーティング剤、接着剤として使用することができる。例えば、合板、集成材、単層積層材等の木質材料、床、壁、天井、内装タイル、煉瓦等の建築材料、及び道路舗装、橋梁の防水、補修、補強や基礎部、目地部、鋼構造物の防錆等の土木材料、及び自動車の内装部品、外装部品、シャーシ、エンジン部品やブレーキ部品等の自動車材料、及び車両の屋根、風道、化粧板、断熱材、窓、床、ドア等の鉄道車両材料、及びアルミニウム合金、チタニウム合金、FRP等の構造材料を主とする航空、宇宙用材料、及び半導体、電池、ケーブル材料、磁性ディスクやテープ、小型モーター、圧電素子、導電材料、センサ、感光材料、端末(電話機、ファクシミリ等)用材料、銅ばり積層板材料等の電気電子材料、及び光ファイバ等の光部品を主とする通信機器材料、及びカメラ、時計、計測機器、複写機等に用いられる精密、OA機器用材料、スキー、アーチェリー、ゴルフ、テニス等のスポーツ用具材料、靴の甲材、底、しん材、ヒール、トップリフト、中敷等のはきもの材料、及び植毛加工用バインダー等の繊維植毛材料、及び紙、プラスチック、アルミニウムはく等を基材フィルムとする包装材料、及び表紙、見返し、背等の製本材料、及びピアノ、エレクトーン、電子楽器等の楽器材料、たんす、棚、机、椅子、ソファ等の家具材料、及び人工関節、人工骨や血管、皮膚の接着、縫合、歯科の矯正、補綴、保存等の領域で用いられる医療材料等が挙げられる。特に、自動車のシャーシやその他部品の防錆塗料用原料に使用するのが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示して本発明を説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
【0025】
[製造例]
エマルション樹脂組成物(E)の製造例
(E−1)
温度計、撹拌機、窒素導入管、冷却管、2本の滴下漏斗を備えたフラスコを用いて合成を行った。2本の滴下漏斗のうち1本に、スチレン60部、ブチルアクリレート30部、アクリロニトリル7部、メタクリル酸2部、アクリルアミド1部、溶剤としてミネラルスピリット10部、連鎖移動剤(分子量調整剤)として、t−ドデシルメルカプタン1部、ラウリル硫酸ナトリウム0.3部及びイオン交換水40部を混合し、ホモミキサーにて乳化した乳化液を入れ、もう一方の滴下漏斗には、触媒としての過硫酸カリウム0.5部をイオン交換水5部に溶解した溶液を入れた。フラスコ中にはラウリル硫酸ナトリウム0.4部をイオン交換水60部に溶解し、フラスコ中を窒素雰囲気にし、フラスコを湯浴により80℃に加温保持し、250rpmで攪拌しながら、2本の滴下漏斗中の溶液を4時間かけてフラスコ内に滴下して反応を行った。滴下終了後、更に4時間攪拌を行い、冷却後10%アンモニア水2部を添加し中和後、10%亜硝酸ナトリウム水2部を添加し、不揮発分46.0%、pH=7.5のエマルション(E−1)を得た。得られたエマルションの体積平均粒径は115nm、重量平均分子量は32000、ガラス転移温度は31℃であった。
【0026】
エマルション(E−1)の製造例において、開始剤の過硫酸カリウムを0.5部から0.2部に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−2)を得た。不揮発分45.9%、pH=7.7、体積平均粒径は99nm、重量平均分子量は53000、ガラス転移温度は38℃であった。
【0027】
エマルション(E−1)の製造例において、開始剤の過硫酸カリウムを0.5部から1.0部に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−3)を得た。不揮発分46.2%、pH=7.4、体積平均粒径は142nm、重量平均分子量は19000、ガラス転移温度は25℃であった。
エマルション(E−1)の製造例において、ミネラルスピリットをテレビン油に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−4)を得た。不揮発分46.1%、pH=7.5、体積平均粒径は117nm、重量平均分子量は30000、ガラス転移温度は30℃であった。
【0028】
エマルション(E−1)の製造例において、ミネラルスピリットを10部から5部に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−5)を得た。不揮発分47.2%、pH=7.5、体積平均粒径は118nm、重量平均分子量は32000、ガラス転移温度は35℃であった。
【0029】
エマルション(E−1)の製造例において、亜硝酸ナトリウムを2部から1部に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−6)を得た。不揮発分46.2%、pH=7.6、体積平均粒径は114nm、重量平均分子量は31000、ガラス転移温度は31℃であった。
【0030】
エマルション(E−2)の製造例において、t−ドデシルメルカプタンを1部から0部に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−7)を得た。不揮発分46.1%、pH=7.7、体積平均粒径は98nm、重量平均分子量は88000、ガラス転移温度は45℃であった。
エマルション(E−2)の製造例において、フラスコ初期水中に仕込むラウリル硫酸ナトリウムを0.4部から1部に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−8)を得た。不揮発分45.9%、pH=7.4、体積平均粒径は71nm、重量平均分子量は92000、ガラス転移温度は44℃であった。
【0031】
エマルション(E−3)の製造例において、t−ドデシルメルカプタンを1部から3部に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−9)を得た。不揮発分45.9%、pH=7.5、体積平均粒径は140nm、重量平均分子量は7500、ガラス転移温度は19℃であった。
エマルション(E−1)の製造例において、ミネラルスピリットを工業ガソリン3号に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−10)を得た。不揮発分45.2%、pH=7.3、体積平均粒径は120nm、重量平均分子量は28000、ガラス転移温度は33℃であった。
【0032】
エマルション(E−1)の製造例において、ミネラルスピリットを10部から0部に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−11)を得た。不揮発分48.2%、pH=7.5、体積平均粒径は119nm、重量平均分子量は33000、ガラス転移温度は38℃であった。
エマルション(E−1)の製造例において、亜硝酸ナトリウムを2部から0部に変更した以外は同様の方法で製造し、エマルション(E−12)を得た。不揮発分45.5%、pH=7.5、体積平均粒径は116nm、重量平均分子量は30000、ガラス転移温度は31℃であった。
【0033】
塗料の製造例
エマルション(E−1〜12)各100重量部に対して、イオン交換水50部に顔料としてカーボンブラックを3部、分散剤としてポイズ532A(花王製)0.6部、消泡剤としてSNデフォーマー381(サンノプコ製)0.6部を予め分散させた液を配合し、最終的に不揮発分30%となるようにイオン交換水を加えて塗料とした。
評価方法
試験板SPCC−SB鋼板(JIS G 3141)にバーコーターにて各エマルション(E−1〜12)を乾燥膜厚が50〜60μmとなるように塗布し、温度23℃、湿度55%にて24時間自然乾燥し、試験片を得た。
各試験片に対して、50℃の温水中に浸漬し60分後の塗膜状態を観測する耐水性試験、JIS K 5400 9.1に準ずる防錆性試験[塩水噴霧試験(CASS90:スガ試験機製)]、JIS K 5400 7.6に準ずる鏡面光沢度(60度)の評価を行った。評価基準は、耐水性、防錆性については塗膜状態変化なしを合格、光沢については90以上を合格とした。
【0034】
【表1】


【0035】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和単量体の重合体が、重量平均分子量10000〜70000、ガラス転移温度0〜60℃、体積平均粒径80〜150nmである樹脂粒子(A)、分子量100〜200、比重0.7〜1.5、沸点100〜300℃、引火点21℃以上の有機溶剤(B)、亜硝酸塩(C)、水(D)を含有し、樹脂粒子(A)/有機溶剤(B)/亜硝酸塩(C)/水(D)の重量比率が100/1〜20/0.1〜1/50〜200であることを特徴とする防錆塗料用エマルション樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂粒子(A)のエチレン性不飽和単量体組成がスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、及びカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を含み、樹脂粒子(A)100重量部中のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体組成が1〜8重量部であることを特徴とする請求項1に記載の防錆塗料用エマルション樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−52247(P2006−52247A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233025(P2004−233025)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】