説明

防音材

【課題】 ガラス繊維やロックウールは連続気泡が構成された優れた防音材であるが、健康被害の恐れがあり将来使用不可能になる可能性が高い。しかし、それに変わる安価で優れた機能を有する防音材は少ない。
【解決手段】 木粉とフライアッシュとデンプン糊を混合して固結し、連続気泡成形物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防音材に関する。
【背景技術】
【0002】
特開S53−96234に木粉とゴム粉と合成樹脂接着剤を混合一体化した土木建築用ブロックはある。
【0003】
特願2001−173300に窯業系建材を製造するための必要配合量とされたセメント、珪砂、フライアッシュ等の無機粉体材料と、発泡プラスチックの粗粉砕物を粉砕機に供給し、前記発泡プラスチックの粗粉砕物が平均粒径0.2mm以下となるまでこれらを混合粉砕した建材はある。
【0004】
製紙スラッジなどのセルロース繊維とデンプン糊を混練した粘着媒体に木粉、粉炭、焼却灰より選ばれる1以上の物質を混練して成形体を得る特願2005−294240がある。
【0005】
特願2001−173300は耐久性、防火性を目的にした建材である。
【0006】
特願2005−294240は廃棄物の再利用と断熱を目的にしたものであるが、セルロースを使う場合はセルロースが水に分散しないとダマになって混合不可能であるため製法が全く違ってくる。また、どちらも吸音性が発揮される10μ〜1mmの広範囲に亘る連続気泡体の形成はできず、防音材としては不適切である。
【0007】
本発明は防音を目的にして、産業廃棄物である木粉やフライアッシュをデンプン系接着剤で結着させたものであり、製紙スラッジなどのセルロースを使用するものとは違った機能や製造方式になる。
【特許文献1】特願2001−173300
【特許文献2】特願2005−294240
【特許文献3】特開昭53−96234
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
防音材として使用されているものには、現在ロックウールやグラスウールがある、グラスウールやロックウールはコスト、耐火性、断熱性、防音性、柔軟性に優れた防音材であるが、アスベスト同様に健康を阻害する恐れが大きいため、カナダやEUでは既に使用禁止であり、近い将来世界的に使用禁止になると推測される。
【0009】
人が聴覚できる音は20HZ〜20KHZと幅があり、これを減衰させるためには多様な細孔分布を有する連続気泡体が適しているため、防音材はグラスウールやロックウールといった耐熱繊維をフエルト状にしたものが一般的である。
【0010】
これらの防音材は軽量で価格が安いため、これらに代わる防音材はコストを抑える必要があり、そのためには産業廃棄物を活用できる構造が望ましく、環境を保護するためにはバイオマス資材が望ましい。
【0011】
特殊なものでは鉛や発泡アルミニュウムなど金属を使用したものもあるが、吸音性は劣りコストも高いため使用範囲は限られる。
【0012】
本発明は健康を阻害せずに一定の強度を有し、コストが安く、防音性に優れ耐火性を有する吸音材を得ることが課題であり、環境やコストに配慮して産業廃棄物を有効に活用できる防音材を得ることも課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
優れた防音材を得るためには連続気泡体が構成される成形体を作る必要があり、振動を吸収する材料を用いるのが望ましい。
【0014】
本発明は環境を配慮して、またコストを低減するために、バイオマス原料であり、コストの安いデンプン糊をバインダーとして使用し、これを除けば、バイオマス原料の木粉と産業廃棄物のフライアッシュであり、デンプン糊以外は全て廃棄物だけを材料として使用することが可能になるように考えられた防音材である。
【0015】
デンプン糊は、水で溶いたデンプン類の粉をアルカリ溶液または加熱によって得る。アルカリで糊化したデンプン糊は加熱によって糊化したものに比べて粘度が高く、デンプン使用量が少なくて済む。
【0016】
デンプン糊はコストが安く、特に小麦粉をアルカリで糊化したデンプン糊は粘度が高いため水分比率10倍程度が適切な粘度となる。よって木粉とフライアッシュや石灰を接着する場合では、乾燥に伴う水分蒸発によって空隙が生じやすく、連続気泡体が成形しやすい。
【0017】
一方で、主要成形原料は、長さが2〜30mmを中心とした木粉であり、30ミクロン前後の粒状体であるフライアッシュや消石灰である。
木粉と一定量のフライアッシュを加えて混合すると、木粉の周りがフライアッシュで覆われた混合物ができる。これにデンプン糊を加えて混合混練して成形原体を得る。
【0018】
これに一定の圧力を加え板状に成形して乾燥させると、乾燥過程で接着剤中の水が木粉の毛管作用によって移動して、接着剤の多くは木粉間および木粉とフライアッシュや消石灰間に留まって、水分が蒸発すると固化して相互を結着させる。
【0019】
このとき木粉間、フライアッシュや消石灰間、木粉とフライアッシュや消石灰間に5〜1000ミクロンの細孔を多く有する防音機能に優れた連続気泡体になり、比重は0.5以下で軽量である。
【0020】
また木由来の性質から一定程度の柔軟性があり復元性があるため振動も吸収する性質を有する。
【0021】
細孔の大きさは木粉の大きさに比例するが、一定のばらつきは発生する。しかし、ばらつきがあっても一定範囲であれば吸音性を大きく阻害しない。むしろ一定範囲であれば、ばらつきによって低周波域から高周波域に亘る音声を広範囲に吸収することができるため、長さが2mm〜30mm程度であれば混ぜ合わせて使用できる。木粉は製材過程の木屑や廃屋の木材からも得ることができる。
【0022】
また、ケナフ粉や竹粉も木粉と形状や特性がよく似ているため木粉同様に使用できる。更に、樹脂処理されたケナフ粉や竹粉や木粉も同様に使用できる。
【0023】
ここで、一般的にフライアッシュは粉炭の焼却灰の呼称であるが、製紙スラッジの焼却灰のような、粒状が50ミクロン以下の灰であればよく、粉体化できる無機質の産業廃棄物であれば混入することができる。
【0024】
防音材には不燃性が求められるが、連続気泡体は空気の流通が良いので、木や高分子繊維や接着剤のような可燃性の材料では非常に燃えやすい構造であるため、ロックウールやガラスウールが多く使用されている。しかし、フライアッシュや消石灰は概ね10〜30ミクロン粒状であり、木の表面を覆うことで、燃焼に必要な空気が遮断されて難燃性になる。
【0025】
本発明は、一定の大きさの木粉とフライアッシュを使い、木粉とフライアッシュ間、木粉間、フライアッシュ間の隙間を細孔として利用する吸音材であるのが特徴の一つである。
また、水溶性接着剤を使用し、水が蒸発する性質も利用して微細孔や細孔を有する成形物を造ることも特徴の一つである。
また本発明の防音材は、接着剤を除く全ての材料が産業廃棄物を利用できるため環境に良く、コストが安いことが特徴の一つである。
また、無機質以外はバイオマス材料であり、環境に良いことも特徴の一つである。
本発明はこのような4つの特徴を提供する防音材である。
【0026】
また、本発明は5〜1000ミクロンを主とした細孔を有する空気層が大きな成形物を造るためになされたものであり、防音材としての機能を有するため、細孔を阻害しなければ、木粉以外の破砕物はどのようなものでも1〜30パーセント、望ましくは1〜20パーセントは混入ができる。
【0027】
安定的に供給できるのであれば、木粉の替りにケナフ粉や竹粉を使用しても構造的には大きく変わらないため問題はない。
【0028】
請求項1では木粉とフライアッシュや消石灰とデンプン糊を混合して成形原料を得るものである。
【0029】
請求項2では粉炭を加えて、吸着機能を付加したものである。
【発明を実施するための最良の方法】
【0030】
デンプン粉には小麦粉が適当であり、小麦粉1に対して水9で溶き、水酸化ナトリウム20%のアルカリ溶液1を加えて撹拌して得た小麦粉のデンプン糊がよい。
強度を強くしたい場合は糊を多くすればよいが、コスト面からは、例えば木粉は10〜30パーセント望ましくは16〜28パーセント、フライアシュや消石灰20〜50パーセント望ましくは30〜40パーセント、デンプン糊30〜50 望ましくは35〜45パーセントである。
【発明の効果】
【0031】
原料はコストを抑えるために産業廃棄物であるフライアッシュや木屑を使用して、コストを低減すると伴に環境負担を軽減させた。
【0032】
デンプン糊中、例えば小麦粉は水で5〜20倍に溶いてアルカリでアルファー化して接着剤として使用できるため、接着剤としては非常に安価であり、強度的にも問題はない。
【0033】
フライアッシュ、木屑は無料であリコストにはならないばかりか、廃棄料としてトン当たりフライアッシュが5、000円の収入になり原料コストは非常に安価になる。
【0034】
よって、産業廃棄物を活用した、非常に安くて環境によい優れた吸音材ができる。また本防音材は水溶性接着剤で接着されているため、吸水させた後撹拌すれば接着剤が溶解して素材に分解されるので、再利用が可能であり環境を汚染しない。
【0035】
成形は適切な水分量にして混合物を充填した後、プレス機で圧縮成形するのが望ましく、圧力調整によって細孔調整や強度調節もできる。
成形後は乾燥させる。木粉とフライアッシュや消石灰の混合物であるため歪力が残らないが、大きな板にした場合は水の蒸発が大きいほうが収縮するので、成形物全体を均一に乾燥させる。
【発明の効果】
【0036】
木屑はバイオマス材料であり廃棄物である、フライアッシュは廃棄物であり、消石灰は廃棄石膏ボードの破砕粉が使用できる。デンプン糊はバイオマス材料である。本発明は環境に負荷を与えない材料で、しかも安価で優れた性能を有する吸音材を得ることができる。
【実施例】
【0037】
フライアッシュ90重量、木粉50重量を混合した後加水して混合する。これに小麦1を水10で溶きアルカリ処理した小麦糊を100重量加えて混合した後、任意の形にプレス成形して乾燥すると、0.48±0.2の比重の吸音材になる。
【0038】
図1の工程図に沿って説明すると、小麦粉重量10に水重量90を加えて混合撹拌し、アルカリ溶液を加えて混合撹拌してデンプン糊1を得る。
【0039】
一方で木粉50重量とフライアッシュ100重量を混合し水重量50を加えて混合して木粉フライアッシュ混合物2を得る。
【0040】
木粉フライアッシュ混合物2にデンプン糊1を加えて混合撹拌して、木粉フライアッシュ成形原料3を得る。
【0041】
必要に応じて木粉フライアッシュ成形原料3に粉炭、ケナフ粉、樹脂破砕物を加え、混合して任意の大きさに成形し乾燥して、防音材の成形体4を得る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
防音材のほか空気層を多く有するため断熱材としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】生産工程図である。
【符号の説明】
【0044】
1 デンプン糊
2 木粉フライアッシュ混合物
3 木粉フライアッシュ成形原料
4 成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木粉と、フライアッシュまたは消石灰のいずれかまたは双方と、デンプン糊を混合して固結した防音材
【請求項2】
請求項1に粉炭を加えた防音材

【図1】
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【公開番号】特開2009−138507(P2009−138507A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341621(P2007−341621)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(393007341)株式会社アイテツ (4)
【Fターム(参考)】