説明

防食コア取付け用工具

【課題】水道管に明けた分岐用の穴に防食コアを取付ける取付け工具で、防食コアを簡単に装着することのできる取付け工具を提供する。
【解決手段】取付け工具1は工具本体2と取付けリング43とで構成する。工具本体は、大径部33、中径部34、小径部35、第1傾斜部36、第2傾斜部37、第3傾斜部38、第4傾斜部39、リング取付け部40を備える。取付けリングは切欠き47が形成され、弾性的に縮径可能である。取付けリングは底部44の穴46がリング取付け部の溝41に嵌って取付けリングに取付けられる。防食コア51は、取付け工具の下側から工具に嵌め込み、取付けリングを縮径させながらこれを乗り越えさせることにより取付け工具に装着できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管に防食コアを取付けるために使用する取付け工具に関する。さらに詳細に言えば、その工具への防食コアの装着が簡単に行うことができる取付け工具に関する。
【背景技術】
【0002】
水道本管から分岐管へ分岐するために例えばサドル分水栓を本管に取り付け、該分水栓を貫通して穿孔工具を挿入して本管に分岐用の穴を明ける。そしてこの穴及びその周囲における管の腐食を防止するために、例えば特許第3464825号に開示された防食コアをこの穴に取り付ける。この防食コアを取り付けるために専用の取付け工具が使用され、同特許にその先行技術の一例が開示されている。以下、図8を参照してこの先行技術に係る取付け工具を簡単に説明する。
【0003】
図8は、特許第3464825号に開示された取付け工具81を用いて防食コア75を水道の本管71に明けた穴72に取付ける方法を示している。符号73は本管71に取付けたサドル分水栓であり、その下部通水路74の部分のみを図示してある。コア75は工具81に装着された状態で分水栓73内を貫通して挿入され、穴72に取付けられる。
【0004】
工具81は工具本体82と、本体82の下端部にネジ結合で取付けられるヘッド89とで構成されている。工具本体82は上側から径の大きい順に大径部83、中径部84、小径部85が形成され、さらに、小径部85と中径部84との間の第1傾斜部86、中径部84の上側の第2傾斜部87、さらに大径部83に繋がる第3傾斜部88とを備えている(大径部83より上の部分の図示は省略してある。)。コア75を工具81に装着するには、先ずヘッド89を工具本体82から取外し、コア75を工具本体82へ下端側から図示のように工具本体82の装着し、ヘッド89を工具本体82に取り付ける。コア75の径方向内方へ鉤状に曲がった下端部79の内径がヘッド89の外形より小さいので、コア75は工具から外れない。
【0005】
この状態で工具81を分水栓73内を貫通して挿入すると、コア75の下側筒部78が穴72に嵌り、鍔部76が穴72の周囲で本管71上に載る。コア75の内径は下方へ向かって漸次径が小さくなっており、工具81をさらに押し下げると、先ずコア75の下端部79が工具本体82の第1傾斜部86により、次いで中径部84により外方へ押し広げられ、コア75は抜止めされる。また、コア75の下側筒部78も中径部84により外方へ広げられ、その外周上に取付けられたゴムなどのシール部材78aが穴72の内周へ圧縮状態で押付けられる。さらに工具81を押し下げると、工具本体82の第2傾斜部87によりコア75の上側筒部77が押し広げられ、その外周上に取付けられたゴム製のシール部材77aが分水栓73の下部通水路74の内周面に圧縮状態で押付けられる。コア75の上端が工具本体82の第3傾斜部に当たると、この傾斜は急なため抵抗が大きくなり、作業者に取付け作業完了を知らせる。工具本体82の中径部84の外径はヘッド89の外径より大きく、コア75の内径は丈方向全ての位置でヘッド89の外径より大きくなっており、この状態で工具81を引くと、穴72と分水栓73に取付けられたコア75をその位置に残し、コア75に邪魔されることなく、工具81だけを引抜くことができる。コアの取付けを行う度に以上の操作を繰返すこととなる。
【0006】
【特許文献1】特許第3464825号特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで上記従来の取り付け工具では、コアを工具に装着する度に先ずヘッドを工具本体から取外し、コアの装着後にヘッドを再度工具本体に取付ける作業が必要となり、コアの工具への装着に手間と時間が掛かる。
【0008】
本願発明は上記従来の取付け工具の問題点に鑑みなされたものであり、防食コアを簡単に短時間に装着することのできる、防食コアの取付け用工具を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の水道管に防食コアを取付けるために使用する取付け工具においては、その取付け工具を軸状の工具本体と、該工具本体に取り付けられ、弾性的に縮径可能な取付けリングとで構成した。取付けリングは、取付け工具に装着された防食コアをその上に支持して、取付け工具から外れるのを阻止する。取付けリングは弾性的に縮径可能であるので、これを縮径させることにより防食コアを取付け工具に装着することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては上記の通りの構成を採用したので、防食コアを取付け工具に装着するには、防食コアを取付け工具に嵌め、軸方向に移動させながら取付けリングを縮径させてそれを乗越えさせるだけで良く、他の作業は一切必要ないので、作業がきわめて簡単で、作業効率が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。先ず図1乃至図3を参照して本発明の第1の実施の形態に係る取付け工具1を説明する。図1は取付け工具1の側断面図で、これに装着する防食コアの側断面図と一緒に示してある。図2は防食コアを取付け工具に装着した状態を示し、図3は取付け工具を構成する取付けリングの一例を示す図である。
【0012】
図1において、取付け工具1は工具本体2と取付けリング15とで構成される。工具本体2は、前述の従来例と同様に略円柱状の部材で大径部3、中径部4、小径部5、第1傾斜部6、第2傾斜部7、第3傾斜部8を備えている。そしてこの工具本体2は小径部5の下側にさらに第4傾斜部9を経て小径部5より径の小さいリング取付け部10を備え、その取付け部10の丈方向略中央に取付け溝11が形成されている。
【0013】
図3は取付けリング15を示し、(イ)は断面図、(ロ)は底面図である。リング15は例えばプラスチックなどで作られ、円環の一部を切欠いた形をして、その外周側は丈の略中央部が径方向外方へ向かって凸になっている。このリング15は、工具本体2の取付け溝11に図1に示す如く取り付けられ、自由状態ではリング15の内周と溝11の底部との間に隙間が存在する。リング15は外方から力が加わると弾性変形して径が縮小し、外力が除かれると元に戻る。このリング15は必要に応じて工具本体2から取外すことができる。
【0014】
図1の取付け工具1の下方に示されているのは防食コア21の断面図である。この防食コア21は前述の従来例で示したコアとは下端部の形状において若干異なるが、これは本発明の取付け工具の構成に由来するものではなく、従来例で示したコアの取付けに本発明の取付け工具を使用できることは勿論である。また、その下端部の形状の相違も本質的なものではない。このコア21の構成は従来例のコアの構成の説明から容易に理解できるので、その詳細な説明は省略する。
【0015】
図2は取付け工具1にコア21を装着した状態を示す断面図である。コア21は従来例と同じく鍔部22、上側筒部23、下側筒部24を備え、その貫通孔26は下側に向かって径が漸次小さくなるようにテーパ状になっている。また、下側筒部24の下端部25は内周側が内側へ突出している。貫通孔26の径は上側筒部23において工具本体2の中径部4の外径より大きく、下側筒部24において小径部5の外径より大きくなっているが、下端部25の内方へ突出した部分の最小径は、自由状態での取付けリング15の外径より小さい。しかし前述の如くリング15には切欠き16があり、力が加わると縮径するので、下端部25をしてリング15を乗越えさせ、図示の如くコア21を工具1に装着することができる。下端部25がリング15を乗越えるとリング15は元の状態に戻るので、コア21が工具1から外れることはない。
【0016】
工具1に取付けたコア21を水道管に取付ける操作は、前述した従来例と略同様である。従来例に関して説明したようにコア21を装着した工具1を分水栓に挿通し、コア21の下側筒部24を水道管に明けた穴に嵌め、さらに工具1を押し下げて行くと、コアの下端部25は工具本体2の第4傾斜部9、小径部5、第1傾斜部6、中径部4により広げられ、下側筒部24は中径部4により、上側筒部23は第2傾斜部7により拡径される。すなわちこの実施の形態では、工具本体2の第4傾斜部から第3傾斜部に至る部分が防食コア21の各部分を拡径する作用をする作用部で、その下側にリング取付け部10が設けられていることとなる。そして工具本体2の中径部4の外径は自由状態での取付けリング15の外径より大きいので、拡径後のコア21は工具1の抜取りの妨げにはならない。
【0017】
図4は図3に示した取付けリング15に代わって使用可能なリングの各種形状を示す図であり、それぞれ(イ)は断面図、(ロ)は底面図である。図には4種類示したが、この形状に限定されない。材料はプラスチックに限定されないが、弾性を有すること、一部を切欠いて工具本体2の溝10への着脱が可能であること、自由状態においてその内周と取付け溝の底部との間に隙間があり、その外径が装着するコアの下端部の最小内径部の内径より大きいことなどが必要であることはリング15の場合と同じである。これらの取付けリングは形状が簡単で、きわめて安価に製造できる。
【0018】
図5乃至図7は第2の実施の形態を示し、それぞれ第1の形態に関する図1、2、3に対応するものであり、この取付け工具31も工具本体32と取付けリング51とで構成される。工具本体31の形状は第1の実施の形態でのそれと細部において若干の差異はあるが、基本形状は同じである。すなわち、工具本体31は大径部33、中径部34、小径部35、第1傾斜部36、第2傾斜部37、第3傾斜部38、第4傾斜部39、小径部35よりさらに小径のリング取付け部40を備え、その取付け部40に取付け溝41が形成され、この取付け溝41に取付けリング43が図5に示すように取付けられる。
【0019】
取付けリング43は図7の(イ)縦断面図及び(ロ)底面図に示されるように、第1の実施の形態で使用したものとは異なりカップ形をしている。本明細書においてはこのような形状のものを含めて「リング」と表現する。すなわち、工具本体に取付けられ、取付け工具に装着した防食コアが外れないように保持する作用をする部材を、その具体的な形状にとらわれず全て「取付けリング」と称することとする。
【0020】
取付けリング43は前述のようにカップ形をしており、底部44と底部44の外周部から上方へ、上に向かうに従って径が大きくなる周壁部45とを備えている。底部44の中央には穴46が明いており、この穴46の径は工具本体32のリング取付け部40に形成された溝41の底部の径より若干大きくなっている。また、リング43には底部44と周壁部45に渡って切欠き47が1つ形成されている。この切欠き47を利用してリング43の底部44を工具本体32の溝41に嵌め、図5に示すようにリング43を工具本体32に取付けることができる。取付けた際には穴46の内周と溝41の底部との間に隙間が形成される。そして、力が加わることによりリング43は縮径し、力が除かれると元に戻る。
【0021】
図5で工具31の下方に示されたのは、工具31に装着される防食コア51の断面図である。このコア51は第1の実施の形態に関連して説明したコア21とは若干形状が異なり、従来例に関連して説明したコアと略同じ形状をしており、鍔部52、上側筒部53、下側筒部54、下端部55を備え、内部の貫通孔は下側に向かうに連れて径が小さくなるようにテーパ状になっており、下端部55は内側に向かって鉤状に曲がっている。
【0022】
このコア51も従来例或いは第1の実施の形態で説明したコアと同様に、工具31の下端部40側から工具31に嵌め込み、取付けリング43を縮径させてそれを乗越えてその上側に移動させると、リング43が元の位置に戻る。この状態でコア51の下端部55の最小内径部55aがリング43の周壁部45の上端面上に載り、支持される。これによりコア51が工具31から外れなくなる。コア51の水道管の穴への取付け方についての説明は省略する。この取付けリング43の場合、周壁部45が設けられており、コア51を装着する際にその周壁部45が底部44において支持された片持梁のように変形するので、その変形がきわめて柔軟で抵抗が少ない。したがって、コア装着時の磨耗がきわめて少ないという利点がある。
【0023】
上記において具体的に二つの実施の形態について説明したが、工具の工具本体の形状及び取付けリングの形状或いはそれらの取付け工具を使用して取付ける防食コアの形状が上に説明したものに限定されるものではない。取付ける防食コアの形状に合わせて工具本体、取付けリングの形状、寸法等は適宜設定される。また、取付ける防食リングは上に説明したように水道管の穴と分水栓の下部通水路の両方へ密着させるタイプに限定されるものではなく、例えば水道管の穴のみへ密着させるタイプのものにも本発明は適用可能であり、取付ける防食コアの形状に適合するように工具の具体的形状は決定される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る取付け工具と防食コアとを示す縦断面図である。
【図2】図1の取付け工具に防食コアを装着した状態を示す縦断面図である。
【図3】第1の実施の形態で使用する取付けリングを示す図である。
【図4】第1の実施の形態で使用できる他の取付けリングの例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る取付け工具と防食コアとを示す縦断面図である。
【図6】図5の取付け工具に防食コアを装着した状態を示す縦断面図である。
【図7】第2の実施の形態で使用する取付けリングを示す図である。
【図8】取付け工具の従来例及びそれを用いて防食コアを取付ける方法を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1、31:取付け工具 2、32:工具本体 3、33:大径部 4、34:中径部 5、35:小径部 6、36:第1傾斜部 7、37:第2傾斜部 8、38:第3傾斜部 9、39:第4傾斜部 10、40:リング取付け部 11、41:溝 15、43:取付けリング 16、47:切欠き 44:底部 45:周壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管に防食コアを取付けるために使用する取付け工具において、前記取付け工具は、軸状の工具本体と、該工具本体に取り付けられ、弾性的に縮径可能な取付けリングとで構成され、前記取付けリングは、前記取付け工具に装着された前記防食コアをその上に支持し、取付け工具から外れるのを阻止することを特徴とする、取付け工具。
【請求項2】
請求項1記載の取付け工具において、前記工具本体は、前記防食コアを水道管に取付けるために前記防食コアに作用する作用部と、該作用部の下側に形成されたリング取付け部とを備え、前記取付けリングは前記リング取り付け部に取付けられることを特徴とする、取付け工具。
【請求項3】
請求項2記載の取付け工具において、前記取付け部には円周方向に伸びる溝が形成され、前記取付けリングはその一部が前記溝に嵌る嵌合部と、前記防食コアを支持するコア支持部とを備え、自由状態において前記嵌合部の内周と前記溝の底との間にクリアランスがあり、前記コア支持部は前記溝の外側に位置することを特徴とする、取付け工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−170396(P2006−170396A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367099(P2004−367099)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(390006736)株式会社日邦バルブ (14)
【Fターム(参考)】