説明

降下搬送機

【課題】物品の供給位置で正確に停止及び発進を繰り返し、揺れや振動、騒音を発することなく静かに周回走行する、重力を利用した降下搬送機を提供する。
【解決手段】降下搬送機1は、枠体10の上部及び下部に対をなす輪体21、22と、輪体21、22に張架される無端条体30と、無端条体30に保持される搬送台40を備え、また、停止装置50と減速装置60を備える。減速装置60は、減速装置回転軸、減速歯車、ロータリーダンパーを備える。また、停止歯車及び/又は減速歯車が回転軸にワンウエイクラッチを介して取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重力を利用して連続的に物品を上方から下方に搬送する降下搬送機に関し、特に、誤作動を起こすことなく、揺れや振動、騒音を発することなく、確実に搬送することができる降下搬送機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、物品を所定の高さに位置するベルトコンベアから、これより一段低い位置のベルトコンベアに搬送する場合があり、この場合には上位コンベアと下位コンベアとの間に降下搬送機を設けることになる。そして、特許文献1には、重力をエネルギー源として用いる降下搬送機が紹介されている。
【0003】
すなわち、図8及び図9に示すように、特許文献1に記載された降下搬送機101は、床上に立設される枠体110の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体121、122と、両輪体121、122間に張架されて周回走行する一対の無端条体130と、無端条体130に保持される複数の搬送台140とを備え、物品を上方の供給位置191から下方の排出位置192へ重力により搬送するものである。そして、搬送台140を供給位置191で停止及び発進させるための停止装置150を備えている。
【0004】
この停止装置150は、図10に示すように、箱体159内に収められて枠体110に固定されている。そして、箱体159内に回転自在に設けられた停止装置回転軸151と、搬送台140の一部に係合する歯面を備え停止装置回転軸151に取り付けられる停止歯車152と、停止装置回転軸151の回転を停止するためのロックロッド153と、このロックロッド153に係合する歯面を備え停止装置回転軸151に取り付けられるロック歯車154とを備えている。ロックロッド153は、通常、ばね等の付勢によりロック歯車154に係合しているので、停止装置回転軸151の回転がロックされた状態となっている。
【0005】
搬送台140は、物品を載せる載置部141と、載置部141の一端側下方に設けられる支持部142とを備えている。載置部141の一端側両サイドには、無端条体130に取り付けるために突出したピン143を備え、各ピン143には、上側ローラー144が取り付けられている。また、支持部142の下方両サイドには、下側ローラー145が取り付けられている。
【0006】
搬送台140は、ピン143を介して一対の無端条体130に取り付けられ、ピン143を軸として回転自在の状態となっている。このため、枠体110に設けられたガイドによって両ローラー144、145を拘束することにより、搬送台140の姿勢を強制することができる。すなわち、上昇過程では載置面がほぼ垂直となるようにガイドされ、下降過程では載置面が水平となるようにガイドされる。
【0007】
停止装置回転軸151の回転がロックされた状態で、空の搬送台140が供給位置191に到達すると、搬送台140の上側ローラー144が停止歯車152の歯面に係止され、これによって無端条体130及び搬送台140が一斉に停止する。
【0008】
供給位置191で停止している搬送台140は、上位のコンベアから物品を受け取ると、その物品の重量によってピン143を中心とする回転モーメントを生ずる。このため、支持部142の下端部が、ロックロッド153の一端を押すことになり、ロックロッド153の他端がロック歯車154から外れて、ロックが解除される。
【0009】
ロックが解除されると、停止装置回転軸151が回転可能となり、物品に働く重力により、無端条体130及び搬送台140が周回を開始する。しかし、搬送台140がロックロッド153の一端から離れた瞬間に、再びロックロッド153がロック歯車154に係合して、停止装置回転軸151をロック状態とする。そして、次の搬送台140が供給位置191で停止することになる。
【0010】
このようにして、各搬送台140は、順次供給位置191で物品を受け取ることができる。一方、排出位置192では、搬送台140を傾斜させることにより物品を払い出すようになっている。したがって、電力等の動力を使用することなく、物品を上位コンベアから下位コンベアに移載することができる。
【0011】
特許文献2には、図11に示すような降下搬送機102が記載されている。前述の降下搬送機101が、2対の上部輪体121と2対の下部輪体122を備えていたのに対して、この降下搬送機102は、1対の上部輪体121と1対の下部輪体122を備えている。また、下部案内部材115を備えて、物品を下部輪体122の下で払い出すことが示されている。
【0012】
特許文献3には、図12に示すような降下搬送機103が記載されている。そして、搬送台140が上部輪体121を周回するときの騒音を防止するための発明が記載されている。すなわち、1対の上部輪体121は、同一の軸線を有しながら同一の回転軸で連結されておらず、搬送台140は、回転軸に邪魔されることなく、上部輪体121を通過することができる。
【0013】
載置面を垂直状態から水平状態へ変える際に、搬送台140の通過が回転軸で邪魔される場合には、搬送台140は270度回転しつつ周回する必要がある。これに対して、通過が回転軸で邪魔されない場合には、搬送台140は逆方向に90度回転するだけでよい。この90度の回転を行うために、載置部141の他端側両サイドに突部146が設けられ、枠体110に設けられたスライドレール116に突部146を係止して周回するようになっている。
【0014】
しかしながら、これらの降下搬送機101、102、103には、次のような解決すべき課題が残されている。
第1の課題は、搬送台140が供給位置191で停止する際に、搬送台140と停止歯車152、或いはロックロッド153とロック歯車154が激突して、大きな騒音を発することである。また、この衝撃で停止装置回転軸151がバウンドして少し逆転し、ロックロッド153がロック歯車154から外れてロックが解除されるという、誤作動を生じることである。
【0015】
第2の課題は、搬送台140が供給位置191で停止する際に、載置部141の慣性力によりピン143を中心とする回転モーメントを生じ、支持部142の下端部がロックロッド153の一端を押して、ロックが解除されるという誤作動を生じることである。或いは、ロック歯車154の歯面155が平面であることによる力のアンバランスにより、ロックが解除されるという誤作動を生じることである。
【0016】
第3の課題は、搬送台140が供給位置191以外の場所で異常停止し、物品の受け渡しができない状態となることがあり、その回復に手間取ることである。同様に、作業を停止した際に、供給位置191と排出位置192との間に、物品を載せた搬送台140が何個か残った状態となることである。
【0017】
第4の課題は、搬送台140が供給位置191で停止したときに、その裏側で(すなわち上昇過程にある側で)無端条体130が瞬間的に緩んで大きく撓み、続いてその反動により、無端条体130及び搬送台140が大きく揺れや振動を起こすことである。また、これにより騒音が増加することである。
【0018】
第5の課題は、特許文献3に記載された方法、すなわち上部輪体121が同一の回転軸で連結されていない場合に、1対の無端条体130の同期が取れずに、搬送台140の載置面が水平にならなかったり、上下のローラー144、145がガイド111、112等から外れたりすることである。また、搬送台140の突部146が、スライドレール116から外れることである。
【特許文献1】特開2006−206263号公報
【特許文献2】特開2007−45540号公報
【特許文献3】特開2007−112549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、前記第1〜第5の課題を解決することである。すなわち、搬送台が供給位置で正確に停止すると共に、物品を受け渡された時点で正確に発進することである。また、搬送台は、上昇過程では載置面がほぼ垂直となるようにガイドされ、下降過程では載置面が水平となるようにガイドされることである。また、上部輪体及び下部輪体で正確に姿勢を変更することである。
そして、揺れや振動、騒音を発することなく、静かに周回走行することである。
さらに、異常停止を起こしても、速やかに対応できることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る降下搬送機は、床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて周回走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される複数の搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送機であって、前記搬送台を前記供給位置で停止及び発進させるための停止装置を備え、前記停止装置は、前記枠体に回転自在に設けられた停止装置回転軸と、前記搬送台の一部に係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられる停止歯車と、前記停止装置回転軸の回転を停止するためのロックロッドと、該ロックロッドに係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられるロック歯車とを備えるという基本的手段を採用し、かつ、前記停止に先立って前記搬送台を減速させるための減速装置を備え、前記減速装置が、前記枠体に回転自在に設けられた減速装置回転軸と、前記搬送台の一部に係合する歯面を備え前記減速装置回転軸に取り付けられる減速歯車と、前記減速装置回転軸の回転を減速するためのロータリーダンパーとを備えている手段を採用している。
【0021】
また、本発明の請求項2に係る降下搬送機は、前記基本的手段を採用し、かつ、前記停止歯車及び/又は前記ロック歯車が、前記停止装置回転軸にワンウエイクラッチを介して取り付けられている手段を採用している。また、本発明の請求項3に係る降下搬送機は、前記基本的手段を採用し、かつ、前記ロック歯車の前記歯面が、凹んだ円弧状に形成されている手段を採用している。また、本発明の請求項4に係る降下搬送機は、前記基本的手段を採用し、かつ、前記搬送台が、前記供給位置に停止しているときに前記物品の載置を検知する荷重センサーと、前記物品の載置を検知したときに前記ロック歯車から前記ロックロッドを解除するロック解除座とを備えている手段を採用している。また、本発明の請求項5に係る降下搬送機は、前記基本的手段を採用し、かつ、異常停止時において、前記無端条体を周回走行させ、一つの前記搬送台を前記供給位置で停止させる駆動装置を備えている手段を採用している。また、本発明の請求項6に係る降下搬送機は、前記基本的手段を採用し、かつ、対をなす前記上部輪体が、その共通する軸線とは別の軸線上に回転自在に設けられた同期回転軸を介して相互に連結され、前記同期回転軸が回転抵抗を負荷されている手段を採用している。また、本発明の請求項7に係る降下搬送機は、前記基本的手段を採用し、かつ、前記搬送台が、前記物品を載せる載置面から上方に突出する邪魔板を備え、上昇過程では前記載置面がほぼ垂直となるようにガイドされ、下降過程では前記載置面が水平となるようにガイドされ、前記上部輪体を周回する過程では前記邪魔板が拘束されることにより姿勢の変更が行われる手段を採用している。
【発明の効果】
【0022】
本発明の降下搬送機は、上記の手段を採用することにより、前述の課題を解決することができる。すなわち、請求項1に記載の減速装置の採用により搬送台の走行が減速され、第1の課題が解決される。また、請求項2に記載のワンウエイクラッチを備えた停止歯車の採用により衝撃が減少し第1の課題が解決される。また、請求項3に記載の円弧形状の歯面を供えたロック歯車の採用、或いは、請求項4に記載の荷重センサー及びロック解除座を備えた搬送台の採用により、誤作動によるロック解除がなくなり、第2の課題が解決される。また、請求項5に記載の駆動装置の採用により異常停止への対応が早くなり、第3の課題が解決される。また、ここでワンウエイクラッチを採用することにより無端条体等の大きな揺れや振動が解消され第4の課題が解決される。また、請求項6に記載の同期回転軸を採用することにより、周回走行におけるトラブルが解消し、第5の課題が解消される。また、同期回転軸に回転抵抗を負荷することにより、請求項1と同様に第1の課題が解決される。また、請求項7に記載の邪魔板を備えた搬送台を採用することにより、周回走行におけるトラブルが解消し、第5の課題が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図に示す実施例により説明するが、これらの図は本願発明を何ら限定するものではない。
本発明の降下搬送機1は、図1に示すように、床上に立設される枠体10の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体21、22と、両輪体21、22間に張架されて周回走行する一対の無端条体30と、無端条体30に保持される複数の搬送台40とを備え、物品を上方の供給位置91から下方の排出位置92へ重力により搬送するものである。そして、搬送台40を供給位置91で停止及び発進させるための停止装置50を備えている。
【0024】
搬送台40は、図2に示すように、物品を載せる載置部41と、載置部41の一端側下方に設けられる支持部42とを備えている。載置部41の一端側には、ピン43が両端部を突出させて設けられ、これにより無端条体30に取り付けることができる。また、ピン43の両側には、上側ローラー44が取り付けられ、支持部42の下方両サイドには、下側ローラー45が取り付けられている。
【0025】
搬送台40は、ピン43を介して一対の無端条体30に取り付けられ、ピン43を軸として回転自在の状態となっている。このため、枠体10に設けられたガイドによって両ローラー44、45を拘束することにより、搬送台40の姿勢を強制することができる。すなわち、上昇過程では載置面がほぼ垂直となるようにガイドされ、下降過程では載置面が水平となるようにガイドされる。
【0026】
搬送台40は、載置部41の一端側上方に突出する邪魔板46を備えている。邪魔板46は、搬送台40が上部輪体21を周回する際の姿勢変更に重要な役割を持っている。また、搬送台40は、物品が載置されたことを検知する荷重センサー47と、載置の検知により作動するロック解除座48を備えている。これらは、供給位置91における搬送台40の停止・発進に重要な役割を持っている。
【0027】
停止装置50は、図3に示すように、箱体59内に収められて枠体10に固定される。そして、箱体59内に回転自在に設けられた停止装置回転軸51と、搬送台40の一部に係合する歯面を備え停止装置回転軸51に取り付けられる停止歯車52と、停止装置回転軸51の回転を停止するためのロックロッド53と、ロックロッド53に係合する歯面を備え停止装置回転軸51に取り付けられるロック歯車54とを備えている。
【0028】
ロックロッド53は、通常、ばね等(図示せず)の付勢によりロック歯車54に係合しているので、停止装置回転軸51の回転がロックされた状態となっている。停止装置回転軸51がロックされた状態で、空の搬送台40が供給位置91に到達すると、搬送台40のピン43が停止歯車52の歯面に係止され、これによって無端条体30及び搬送台40が一斉に停止し、上位コンベアからの物品を待ち受ける状態となる。
【0029】
供給位置91で停止している搬送台40は、上位のコンベアから物品を受け取ると、その物品の重量によって荷重センサー47が下方へ押し下げられる。そうすると、これと一体に形成されているロック解除座48がピン43を中心に回転してロックロッド53の一端を押すことになり、ロックロッド53の他端がロック歯車54の歯面から外れて、ロックが解除される。
【0030】
ロックが解除されると、停止装置回転軸51が回転可能となり、物品に働く重力により、無端条体30及び搬送台40が周回を開始する。しかし、ロック解除座48がロックロッド53の一端から離れた瞬間に、ロックロッド53が、再びばねの付勢によりロック歯車54に係合し、停止装置回転軸51をロック状態とする。これにより、次の搬送台40が供給位置91で停止することになる。
【0031】
このようにして、各搬送台40は、順次供給位置91で物品を受け取ることができる。一方、排出位置92では、下部案内部材15によって搬送台40が傾斜することにより物品を払い出すようになっている。したがって、電力等の動力を使用することなく、物品を上位コンベアから下位コンベアに移載することができる。本発明の降下搬送機における基本的要素は、以上の通りである。
【0032】
本発明の降下搬送機1は、搬送台40の停止に先立って、搬送台40を減速させるための減速装置60を備えている。減速装置60は、搬送台40が供給位置91に近づいた段階で、ブレーキを掛けて減速するシステムであり、搬送台40と停止歯車52間の衝撃力、或いはロックロッド53とロック歯車54間の衝撃力を緩和することができる。この結果、停止時の衝撃音が解消され、誤作動によるロック解除の問題も解消される。
【0033】
減速装置60は、図4に示すように、箱体69内に収められて枠体10に固定される。そして、箱体69内に回転自在に設けられた減速装置回転軸61と、搬送台40の一部に係合する歯面を備え減速装置回転軸61に取り付けられる減速歯車62と、減速装置回転軸61の回転を減速するためのロータリーダンパー63と、減速装置回転軸61からロータリーダンパー63へ動力を伝達する動力伝達装置64とを備えている。図4において、動力伝達装置64は、2つの歯車65、66により構成されている。
【0034】
搬送台40が減速装置60の近傍を通過すると、搬送台40の上側ローラー44が減速歯車62の歯面に係合し、これによって減速装置回転軸61が回転する。この回転力は、動力伝達装置64を介してロータリーダンパー63に伝達される。そして、ロータリーダンパー63の回転抵抗により減速装置回転軸61の回転にブレーキが掛かり、搬送台40の走行が減速されることになる。
【0035】
減速装置60が有効に作用するために、搬送台40は、無端条体30に所定の間隔で取り付けられている必要がある。減速装置60は、停止装置50の下方に位置して、物品が載置された搬送台40により作動されることが好ましい。停止装置回転軸51と減速装置回転軸61との軸間距離は、例えば、停止装置50と減速装置60とを最短距離で位置させる場合、搬送台40の取り付けピッチよりも若干短くする。そうすると、空の搬送台40が停止装置50に接近して停止するまでの一定区間を通過する間、その下の搬送台40のピン43が減速歯車62に係合してブレーキが掛かることになる。
【0036】
ロータリーダンパーは、シリコーンオイル等の粘性抵抗を利用する回転系のダンパーであり、外部からの回転に対して制動力を与えることができる。制動力を与える回転方向は、一方向のみでも良いし、両方向であっても良い。
【0037】
本発明の降下搬送機1は、前述の停止装置50において、停止歯車52及び/又はロック歯車54が、停止装置回転軸51に対してワンウエイクラッチを介して取り付けられている。ワンウエイクラッチは、市販の一般的なものを利用することができる。さらに、Oリングを併用することにより、作動効果をより確実なものとすることができる。すなわち、ワンウエイクラッチと停止歯車52(ロック歯車54)の間にOリングを設けることによって、ロック歯車54がロックロッド53を強く締め付けて、ロック解除が困難となることを防ぐことができる。
【0038】
これらの手段を採用することにより、ロック歯車54−停止装置回転軸51−停止歯車52の相互間の結合が緩やかになり、ロックロッド53とロック歯車54間とが激突しても、バウンド現象が解消され、誤作動によるロック解除を生じないようにすることができる。また、上述の減速装置60と併用すると、相乗効果によって静かで誤作動のない停止装置50とすることができる。
【0039】
さらに、本発明の降下搬送機1は、ロック歯車54の歯面55が、凹んだ円弧状に形成されている。したがって、ロックロッド53がロック歯車54に係合しているときに、相互に作用する力のアンバランスにより、ロックが解除されるという誤作動の問題も解消されている。
【0040】
本発明の降下搬送機1は、搬送台40が、供給位置91に停止しているときに物品の載置を検知する荷重センサー47と、物品の載置を検知したときにロック歯車54からロックロッド53を解除するロック解除座48とを備えている。荷重センサー47とロック解除座48は一体に形成され、ピン43を中心として回転可能に取り付けられている。
【0041】
荷重センサー47は、物品を乗せるまではその一部が載置面の上方に突出し、その状態を保つように、ばね等によって付勢されている。物品が載置されると、物品の重量によって、突出部が載置面まで押し下げられる。そして、ピン43を軸に回転して、ロック解除座48がロックロッド53の一端を押すことになる。これにより、ロックロッド53の他端がロック歯車54から外れ、ロックが解除される。
【0042】
したがって、従来の搬送台140のように、搬送台40が停止する際に、ピン43を中心とする回転モーメントが発生してロックが解除されるという誤作動を生じることはない。しかも、減速装置60の採用により搬送台40は停止する前に減速されるので、回転モーメントは小さくなり、誤作動の発生を確実に防止することができる。
【0043】
本発明の降下搬送機1は、異常停止時において無端条体30を周回走行させ、一つの搬送台40を供給位置91で停止させる駆動装置70を備えている。図5に示すように、駆動装置70は、モーター71により下部輪体22の回転軸72を駆動するシステムであり、ロータリーダンパー73及び動力伝達装置74を介して駆動する。図5において、動力伝達装置74は2つの歯車75、76により構成されている。
【0044】
モーター71は、計装用の低電圧(例えば24V)で使用できるものが好ましく、減速比の大きなウォームギアを備えていることが好ましい。また、ロータリーダンパー73は、減速装置60で使用したものと同様に、シリコーンオイル等の粘性抵抗を利用するダンパーであるが、ワンウエイクラッチを備えて一方向のみに回転するものが好ましい。
【0045】
ロータリーダンパー73を備えることにより、搬送台40が停止した状態でもモーター71を駆動させることができる。したがって、ラフな操作で取り扱うことが可能である。また、ワンウエイクラッチを備えることにより、モーター71が停止した状態でも、問題なく搬送台40の周回走行を行うことができる。
【0046】
また、作業終了時においては、供給位置91と排出位置92の間にある搬送台40に物品が載置されたまま残されるので、これらを全て排出させることが好ましい。このため、前述の停止装置50においてソレノイド等を設けて、ロック歯車54に係合しているロックロッド53を強制的に外せるようにしておくことが好ましい。強制的にロックを解除した状態で、駆動装置70により搬送台40を走行させると、全ての搬送台40から物品を排出させることができる。
【0047】
さらに、ロータリーダンパー73がワンウエイクラッチを備えることにより、搬送台40が停止したときに上昇過程において瞬間的に発生する無端条体30の緩みと撓みが緩和されるので、これに伴う無端条体30及び搬送台40の大きな揺れと振動を防止することができる。また、これに伴う騒音を防止することができる。
【0048】
本発明の降下搬送機1は、図6に示すように、対をなす上部輪体21が、その共通する軸線とは別の軸線上に回転自在に設けられた同期回転軸81を介して相互に連結されている。対をなす上部輪体21の同期が得られることにより、搬送台40の姿勢が正確に保持されることになり、また、上下のローラー44、45がガイドから外れることもなくなる。
【0049】
また、同期回転軸81は、直接的に又は間接的に回転抵抗を負荷されている。例えば、同期回転軸81に動力伝達装置84を介してロータリーダンパー83を接続することにより、同期回転軸81に直接的に回転抵抗を負荷することができる。また、一つの上部輪体21の回転軸82に動力伝達装置84を介してロータリーダンパー83を接続することにより、同期回転軸81に間接的に回転抵抗を負荷することができる。ロータリーダンパー83の代わりに、ディスクブレーキ87を使用することもできる。
【0050】
同期回転軸81に回転抵抗を負荷することにより、特に、搬送する物品が重量物であるような場合でも、高速で暴走することなく、安全に周回走行をすることができる。そして、上述の減速装置60と同様に、停止時の衝撃音の問題、及び誤作動によるロック解除の問題を解消することができる。なお、搬送する物品の重量がランダムに変化する場合には、エンコーダーやステップモータ(図示せず)等を用いることにより、上記回転抵抗の負荷を自動調節することもできる。
【0051】
本発明の降下搬送機1は、搬送台40が、物品を載せる載置面から上方に突出する邪魔板46を備えている(図2)。そして、上昇過程では載置面がほぼ垂直となるようにガイドされ、下降過程では載置面が水平となるようにガイドされると共に、上部輪体21を周回する過程では邪魔板46が拘束されることにより姿勢の変更が行われる。
【0052】
図7に示すように、搬送台40は、上昇過程では載置部41がガイド11に拘束され、載置面がほぼ垂直となるようにガイドされて上昇する。上部輪体21に近づくとガイド11による拘束から開放されて40〜50度回転し、ピン43を中心に回転自由に吊り下げられた状態となる。この状態で上部輪体21を周回すると、邪魔板46がストッパー14に当接することにより拘束され、20〜30度回転する。続いて、下側ローラー45がガイド12により拘束されると共に、上側ローラー44がガイド13に拘束されて載置面が水平となるまで回転し、下降過程に移って行く。
【0053】
邪魔板46とストッパー14とは、確実に当接させることができる。そして、邪魔板46の当接面がストッパー14に滑らかに当接するので、騒音を発することもない。したがって、搬送台40は、上部輪体21を確実に、静かに周回することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の降下搬送機の一例を示す概略全体図である。
【図2】搬送台の一例を示す概略図である。
【図3】停止装置の一例を示す概略図である。
【図4】減速装置の一例を示す概略図である。
【図5】駆動装置の一例を示す概略図である。
【図6】同期回転軸の一例を示す概略図である。
【図7】搬送台が上部輪体を周回走行する状態を示す説明図である。
【図8】従来の降下搬送機を示す概略側面図である。
【図9】図8に示す降下搬送機の概略正面図である。
【図10】従来の停止装置を示す概略図である。
【図11】従来の他の降下搬送機を示す概略図である。
【図12】従来の搬送台が上部輪体を周回走行する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1、101、102、103 降下搬送機
10、110 枠体
11、12、13、111、112 ガイド
14 ストッパー
15、115 下部案内部材
21、121 上部輪体
22、122 下部輪体
30、130 無端条体
40、140 搬送台
41、141 載置部
42、142 支持部
43、143 ピン
44、144 上側ローラー
45、145 下側ローラー
46 邪魔板
47 荷重センサー
48 ロック解除座
50、150 停止装置
51、151 停止装置回転軸
52、152 停止歯車
53、153 ロックロッド
54、154 ロック歯車
55、155 歯面
59、69、159 箱体
60 減速装置
61 減速装置回転軸
62 減速歯車
63、73、83 ロータリーダンパー
64、74、84 動力伝達装置
65、66、75、76 歯車
70 駆動装置
71 モーター
72、82 回転軸
81 同期回転軸
87 ディスクブレーキ
91、191 供給位置
92、192 排出位置
116 スライドレール
146 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて周回走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される複数の搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送機であって、
前記搬送台を前記供給位置で停止及び発進させるための停止装置を備え、前記停止装置は、前記枠体に回転自在に設けられた停止装置回転軸と、前記搬送台の一部に係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられる停止歯車と、前記停止装置回転軸の回転を停止するためのロックロッドと、該ロックロッドに係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられるロック歯車とを備え、
かつ、前記停止に先立って前記搬送台を減速させるための減速装置を備え、前記減速装置が、前記枠体に回転自在に設けられた減速装置回転軸と、前記搬送台の一部に係合する歯面を備え前記減速装置回転軸に取り付けられる減速歯車と、前記減速装置回転軸の回転を減速するためのロータリーダンパーとを備えていることを特徴とする降下搬送機。
【請求項2】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて周回走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される複数の搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送機であって、
前記搬送台を前記供給位置で停止及び発進させるための停止装置を備え、前記停止装置は、前記枠体に回転自在に設けられた停止装置回転軸と、前記搬送台の一部に係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられる停止歯車と、前記停止装置回転軸の回転を停止するためのロックロッドと、該ロックロッドに係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられるロック歯車とを備え、
かつ、前記停止歯車及び/又は前記ロック歯車が、前記停止装置回転軸にワンウエイクラッチを介して取り付けられていることを特徴とする降下搬送機。
【請求項3】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて周回走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される複数の搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送機であって、
前記搬送台を前記供給位置で停止及び発進させるための停止装置を備え、前記停止装置は、前記枠体に回転自在に設けられた停止装置回転軸と、前記搬送台の一部に係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられる停止歯車と、前記停止装置回転軸の回転を停止するためのロックロッドと、該ロックロッドに係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられるロック歯車とを備え、
かつ、前記ロック歯車の前記歯面が、凹んだ円弧状に形成されていることを特徴とする降下搬送機。
【請求項4】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて周回走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される複数の搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送機であって、
前記搬送台を前記供給位置で停止及び発進させるための停止装置を備え、前記停止装置は、前記枠体に回転自在に設けられた停止装置回転軸と、前記搬送台の一部に係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられる停止歯車と、前記停止装置回転軸の回転を停止するためのロックロッドと、該ロックロッドに係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられるロック歯車とを備え、
かつ、前記搬送台が、前記供給位置に停止しているときに前記物品の載置を検知する荷重センサーと、前記物品の載置を検知したときに前記ロック歯車から前記ロックロッドを解除するロック解除座とを備えていることを特徴とする降下搬送機。
【請求項5】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて周回走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される複数の搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送機であって、
前記搬送台を前記供給位置で停止及び発進させるための停止装置を備え、前記停止装置は、前記枠体に回転自在に設けられた停止装置回転軸と、前記搬送台の一部に係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられる停止歯車と、前記停止装置回転軸の回転を停止するためのロックロッドと、該ロックロッドに係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられるロック歯車とを備え、
かつ、異常停止時において、前記無端条体を周回走行させ、一つの前記搬送台を前記供給位置で停止させる駆動装置を備えていることを特徴とする降下搬送機。
【請求項6】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて周回走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される複数の搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送機であって、
前記搬送台を前記供給位置で停止及び発進させるための停止装置を備え、前記停止装置は、前記枠体に回転自在に設けられた停止装置回転軸と、前記搬送台の一部に係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられる停止歯車と、前記停止装置回転軸の回転を停止するためのロックロッドと、該ロックロッドに係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられるロック歯車とを備え、
かつ、対をなす前記上部輪体が、その共通する軸線とは別の軸線上に回転自在に設けられた同期回転軸を介して相互に連結され、前記同期回転軸が回転抵抗を負荷されていることを特徴とする降下搬送機。
【請求項7】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて周回走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される複数の搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送機であって、
前記搬送台を前記供給位置で停止及び発進させるための停止装置を備え、前記停止装置は、前記枠体に回転自在に設けられた停止装置回転軸と、前記搬送台の一部に係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられる停止歯車と、前記停止装置回転軸の回転を停止するためのロックロッドと、該ロックロッドに係合する歯面を備え前記停止装置回転軸に取り付けられるロック歯車とを備え、
かつ、前記搬送台が、前記物品を載せる載置面から上方に突出する邪魔板を備え、上昇過程では前記載置面がほぼ垂直となるようにガイドされ、下降過程では前記載置面が水平となるようにガイドされ、前記上部輪体を周回する過程では前記邪魔板が拘束されることにより姿勢の変更が行われることを特徴とする降下搬送機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−42911(P2010−42911A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208578(P2008−208578)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(392024909)ホクショー株式会社 (16)
【Fターム(参考)】