説明

降温用噴霧システム

【課題】冷却エネルギー効率が良く、噴霧されたミストが効果的に蒸散し、液滴のまま落下することのない降温用噴霧システムを提供する。
【解決手段】降温用噴霧システムは、加圧された水をミストとして噴霧して対象の空間の温度を低下する降温用噴霧システムにおいて、1つの端部に設けられたオリフィスから上記オリフィスを頂点とした錐状の噴霧領域に上記加圧された水をミストとして噴霧する噴霧ノズルと、上記噴霧ノズルの他の端部に接続され、上記加圧された水を上記噴霧ノズルに配水する配水管と、が備えられ、上記錐状の噴霧領域の中心線が、上記オリフィスからミストが噴霧される方向に向かって上記オリフィスを横切る水平面に対して下向きに上記噴霧領域の噴角の半分以上傾けられている、または、上記水平面に対して上向きに上記噴霧領域の噴角の半分に角度5度を加算した値以上傾けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、博覧会のパビリオンなど集客施設に設けられ、ミストの蒸散による潜熱による冷却作用を用いる降温用噴霧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の降温用噴霧システムは、集客施設などの入口またはその付近に設置された噴霧ノズル、その噴霧ノズルに加圧水を供給するポンプ、ポンプから噴霧ノズルに加圧水が配水される配水管から構成されている。そして、冷却が必要になったとき、その噴霧ノズルからミストを噴霧させ、ミストの蒸散にともなう潜熱によって集客施設を冷却している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−109341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、噴霧されたミストが合体した液滴の地上への落下を防ごうとして、水平に向けてミストを噴霧した場合、噴霧されたミストが風の水平方向成分により水平方向に流されて噴霧ノズルや配水管に衝突してそれらの表面で結露し、それが大きな液滴となって、液滴のまま落下し、下を通りかかった人を濡らすという問題がある。
また、ミストの蒸散を早めるために、噴霧されるミストの直径を小さくしようとして、高圧空気を用いて2流体噴流とした場合、ミストの平均粒径を10μm以下にすることができるが、高圧空気を供給するために非常に大量のエネルギーを消費しなければならず、冷却エネルギー効率が悪いという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、冷却エネルギー効率が良く、噴霧されたミストが効果的に蒸散し、液滴のまま落下することのない降温用噴霧システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる降温用噴霧システムは、加圧された水をミストとして噴霧して対象の空間の温度を低下する降温用噴霧システムにおいて、1つの端部に設けられたオリフィスから上記オリフィスを頂点とした錐状の噴霧領域に上記加圧された水をミストとして噴霧する噴霧ノズルと、上記噴霧ノズルの他の端部に接続され、上記加圧された水を上記噴霧ノズルに配水する配水管と、が備えられ、上記錐状の噴霧領域の中心線が、上記オリフィスからミストが噴霧される方向に向かって上記オリフィスを横切る水平面に対して下向きに上記噴霧領域の噴角の半分以上傾けられている、または、上記水平面に対して上向きに上記噴霧領域の噴角の半分に角度5度を加算した値以上傾けられている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係わる降温用噴霧システムの効果は、オリフィスを横切る水平面よりも下向きに錐状のミストが噴霧されるので、噴霧されたミストが風の水平方向成分に流されても噴霧ノズルや配水管に衝突することがなく、噴霧ノズルや配水管などにミストが当たって液滴となり、下方に落下して、噴霧ノズルや配水管などの下方にいる人を濡らすということを防止できる。また、オリフィスを横切る水平面より上向きに錐状のミストを噴霧するとき、ミストを水平に向けて噴霧する場合と異なり、配水管などにミストが当たって液滴となり、下方に落下して、配水管などの下方にいる人を濡らすことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる降温用噴霧システムの構成図である。図2は、実施の形態1に係わる噴霧ヘッドの平面図である。図3は、実施の形態1に係わる噴霧ヘッドの断面図である。図4は、実施の形態1に係わる噴霧ノズルの中心軸に沿った断面図である。図5は、噴霧ノズルからミストが噴霧される様子を表す図である。図6は、加圧水供給装置の構成図である。図7は、ミスト制御盤の機能ブロック図である。図8は、ミストの噴霧のタイミングチャートである。
なお、図2は、噴霧ヘッドを図3のBB断面から下方に見た一部断面図である。また、図3は、噴霧ヘッドを図2のAA断面から水平方向に見た断面図である。
【0009】
実施の形態1に係わる降温用噴霧システム1は、図1に示すように、地上から縦立された2本の柱2の先端にそれぞれ設けられた噴霧ヘッド3A、噴霧ヘッド3Aに供給される加圧水が配水される子配水管4、子配水管4を介して加圧水を供給する加圧水供給装置5、周囲の温度と湿度を測定して加圧水供給装置5に送信する温湿度計6が備えられている。加圧水供給装置5には水道7から水が供給されている。なお、2本の柱2を例に挙げて説明するが、冷却する施設の大きさに従って適宜本数を定めればよい。
また、噴霧ヘッド3Aは、地上から縦立されている柱の先端に設けられたことを記載したが、天井から吊り下げられても良い。
【0010】
噴霧ヘッド3Aは、図2に示すように、子配水管4を通して配水された加圧水を6個の噴霧ノズル10に均等に圧力が掛かるよう分配する噴霧ヘッダ11A、噴霧ヘッダ11Aから噴霧ノズル10を所定の距離離すために設けられる6本の延長配管12A、加圧水をミストにして噴霧する6個の噴霧ノズル10から構成されている。そして、噴霧ノズル10の設置高度は、4mである。なお、噴霧ノズル10の設置高度は、ミストの平均粒径および最大粒径に依存して定められる。
ここで、6個の噴霧ノズル10を噴霧ヘッド3Aに設けることを記載したが、これに限定されず、噴霧ノズル10は1個からN個であれば良い。
【0011】
噴霧ヘッダ11Aは、図2、図3に示すように、中心軸が鉛直方向に配された6角柱状の空洞15Aが内部に形成されている6角柱である。そして、6角柱の下側の端面の中心に子配水管4が連結される孔16が設けられ、外側と6角柱状の空洞15Aとが連通されている。また、6角柱の各側面の中心に延長配管12Aが連結される孔17が設けられ、外側と6角柱状の空洞15Aとが連通されている。加圧水は片方の端面の孔16から注水され、6個の側面の孔17から延長配管12Aに給水されていく。噴霧ヘッダ11Aは、ステンレスからできている。
【0012】
延長配管12Aは、図3に示すように、円筒管であり、噴霧ヘッダ11Aの側面に垂直に一方の端部が取り付けられ、長手方向に下向きに彎曲し、他方の端部では、噴霧ヘッダ11Aの下側の端面を含む水平面から円筒管の中心軸が角度θ22.5度お辞儀するように傾いている。延長配管12Aは、ステンレスからできている。
その延長配管12Aの他方の端部には、直管18が取り付けられ、そこに噴霧ノズル10が嵌合されている。なお、1つの直管18から分岐して圧力変換器(株式会社共和電業製、型式PVD−100ka、測定レンジ0〜10MPa)14が取り付けられて、噴霧ノズル10の加圧水受け空洞21に掛かる水圧を計測し、それを噴霧水圧としている。通常は、この噴霧水圧と高圧ポンプの出力水圧との関係を予め求めておいて、高圧ポンプの出力水圧を管理することにより、噴霧水圧を管理する。なお、水圧の測定には、ブルドン管圧力計などを用いてもよい。また、直管18は、ステンレスからできている。
このように接続された噴霧ノズル10の中心軸は、噴霧ヘッダ11Aの下側の端面を含む水平面から角度θ22.5度下方に傾いている。
【0013】
噴霧ノズル10は、図4に示すように、略円筒状のハウジング20を有している。そして、円筒状のハウジング20の中心軸に沿って、延長配管12Aから供給された加圧水を受ける上流側の径が下流側の径より大きい2段の円柱状の加圧水受け空洞21、感圧逆止弁22を収納し、加圧水受け空洞21の下流側の径より大きく、一端が中心軸方向に突き出されたリブ23により外縁部が仕切られた弁収納空洞24、駒25を収納し、リブ23の下流側に位置し、加圧水受け空洞21の上流側の径と等しい円柱状の空洞26およびその空洞26に連なる漏斗状の空洞27からなる噴流生成空洞28、漏斗状の空洞27の先端に連なるオリフィス29が連なって設けられている。
【0014】
そして、弁収納空洞24には、加圧水受け空洞21の下流側の開口21aを開閉する感圧逆止弁22が挿入されている。
感圧逆止弁22は、加圧水受け空洞21の下流側の開口21aに当接したとき、加圧水の流れを遮断する遮断球30、一端が遮断球30に当接し遮断球30に所定のバネ圧が掛けられるように撓んで他端がリブ23に固定されるバネ31から構成されている。所定のバネ圧は、加圧水受け空洞21における水圧が1MPaに達したときに遮断球30と加圧水受け空洞21の開口21aとが離間するようにバネ31のバネ定数が設定されている。なお、所定のバネ圧を低く設定すると、離間したとき高圧に達するまでに時間がかかり径の大きな水滴が噴霧されることになる。また、所定のバネ圧が噴霧水圧に近いと、遮断球30が開口21aから充分に離間できないので、水量に制約を受けてしまう。このような理由から所定のバネ圧は、0.4〜1.5MPaが好ましい。
【0015】
さらに、噴流生成空洞28では、加圧水を旋回噴流として噴出し、漏斗状の空洞27の内側面に衝突させるための駒25が円柱状の空洞26の内側面に接しながら噴霧ノズル10の中心軸方向に摺動しながら移動する。駒25には、側面に螺旋状の溝32が掘られ、その溝32と円柱状の空洞26の内側面とにより加圧水を旋回して噴出する旋回流路が形成される。
【0016】
次に、噴霧ノズル10において加圧水が噴霧される手順について説明する。
加圧水受け空洞21に加圧水が注水され、水圧が所定の値に達すると、遮断球30を押して加圧水が弁収納空洞24内に流れ込む。
そして、リブ23の中央に形成された孔23aから加圧水が駒25の一方の端面を押して駒25が噴霧ノズル10の中心軸に沿って漏斗状の空洞27の方向に移動され、駒25の側面の溝32を通って加圧水が旋回されながら通過し、溝32の端部から噴流される。
この噴流が漏斗状の空洞27の内側面に衝突して、衝突噴流になりミストとしてオリフィス29から噴霧される。
【0017】
次に、噴霧されたミストについて説明する。この発明におけるミストは、小さな径の水滴を意味する。そして、ミストの平均粒径は、噴霧ノズル10の中心軸上でオリフィス29の先端から50mm離れた箇所でレーザ回折法により測定した体面積平均粒径(ザウター平均径と称す。)を用いる。レーザ回折法において、レーザ回折粒径測定器(Malvern Instruments社製、マスターサイズーS型、使用レーザ:HeーNeレーザ)を用いて、5回同様に測定し、その平均値をミストの平均粒径として用いている。
実施の形態1で使用した噴霧ノズル10から噴霧水圧6MPaのときザウター平均粒径が20μmであった。なお、噴霧水圧が低いとミストの平均粒径が大きくなるとともに噴霧流量が少なくなり、冷却効果が小さくなってしまう。また、噴霧水圧が高いとミストの平均粒径が小さくなるとともに噴霧流量が多くなるが、高すぎると配管などに大きな衝撃波が加わり、安全上好ましくない。これらの理由から噴霧水圧は、2MPa〜10MPaの間が好ましい。なお、ミストの平均粒径として、レーザ回折粒径測定器を用いて測定しているが、他にドプラー位相粒径測定器などを用いて測定してもよい。このとき、測定器の種類により、平均粒径が異なるので、同一条件で噴霧したミストを測定して対比することが必要である。例えば、噴霧ノズル10から噴霧水圧6MPaのときに噴霧されたミストの90%体積粒径が60μm、10%体積粒径が3μmであった。
【0018】
次に、ミストの噴霧の様子について説明し、噴霧領域を定義する。ミストは、図5に示すように、オリフィス29の近傍では、噴霧ノズル10の中心軸上に中心線を有し、オリフィス29の出口を頂点とする円錐内に噴霧される。この円錐の領域を噴霧領域34と称し、円錐の頂角を噴角35と称す。また、この噴霧領域34の側面を噴霧外縁36と称す。
この噴霧領域34は、オリフィス29の形状を調整することにより円錐の噴角35を調整することができる。円錐の噴角35を狭くすると、ミストが遠くまで飛来するし、円錐の噴角35を広くすると、ミストが噴霧ノズル10の近くに漂うことになる。通常は噴角35を45度くらいにすることが好ましいが、45度に限るものではない。
このように噴角35を調整することにより、噴霧領域34がオリフィス29を横切る水平面の下方に位置することができる。
【0019】
そして、風が吹いていないとき、ミストが蒸散することにより周囲の空気が冷却され、下降気流が発生するので、噴霧されたミストは、下降気流にともなって降下していく。そして、下降の途中でミストが蒸散しつくす。ミストが蒸散することにより潜熱が空気から奪われ、空気が冷やされる。
一方、地面に水平の風が吹いているとき、ミストは下降しながら風の方向に流されていく。しかし、噴霧ヘッダ11Aの下側端面を含む水平面より下方に噴霧外縁36が位置するので、ミストが水平に流されても、噴霧ヘッダ11Aに当たることがない。
また、噴霧領域34が柱2や子配水管4からみてオリフィス29の先端から離れており、そのオリフィス29の先端が延長配管12Aにより柱2や子配水管4から離れているので、ミストが水平方向に流されても、延長配管12Aの長さだけ移動する間に拡散や蒸散してしまうので、ミストが柱2や子配水管4に当たることがない。
また、延長配管12Aが下向きに彎曲しているので、上向きの風が吹かないとミストが延長配管12Aに当たることが防げる。
【0020】
加圧水供給装置5は、図6に示すように、高圧ポンプ40、高圧ポンプ40の下流側に配設された元弁41、主配水管42内の水を排水する流路を開閉する排水弁43、各噴霧ヘッド3Aへの加圧水の供給を選択する選択弁44、高圧ポンプ40および各種弁を制御するミスト制御盤45から構成されている。選択弁44は、子配水管4がそれぞれ接続されている。ミスト制御盤45に、温湿度計6で計測された乾球温度および湿球温度が入力される。
【0021】
そして、元弁41と選択弁44とは、主配水管42で連通され、主配水管42の途中から分岐する排水配管46により排水弁43が主配水管42に連通されている。主配水管42、排水配管46、子配水管4はそれぞれステンレスからできている。また、高圧ポンプ40と元弁41とは、ゴム製のブレードホース47により連通され、容積式の高圧ポンプ40により発生する脈動を平滑化している。
また、加圧水中に含まれる塵埃を取り除くために、高圧ポンプ40の出口に図示しない20μm角開口のフィルタが介在されている。
また、主配水管42、子配水管4、噴霧ヘッド3Aにスケールが沈積しないように、金属イオンの少ない加圧水を供給するために、高圧ポンプ40に図示しない軟水器から軟水化された水が供給されている。
【0022】
ミスト制御盤45は、図7に示すように、温湿度計6により計測された乾球温度および湿球温度に基づいて噴霧の可否を判断する噴霧判断手段50、噴霧可の場合、噴霧量を算出して、高圧ポンプ40からの給水量を制御する給水量制御手段51、高圧ポンプ40および各種弁を制御する噴霧シーケンス制御手段52、湿り空気線図が記憶されている空気線図データベース53を有している。このミスト制御盤45は、CPU、RAM、ROM、インタフェース回路を有するコンピュータから構成されている。
【0023】
次に、加圧水を高圧ポンプ40から供給するシーケンスについて図8を参照して説明する。
ミスト制御盤45の噴霧シーケンス制御手段52は、まず元弁41を開放する。同時に排水弁43を開放する。
次に、噴霧シーケンス制御手段52は、高圧ポンプ40をONして、加圧水をブレードホース47から主配水管42に送水する。そうすると、主配水管42内に残っている空気が排水弁43から水と一緒に押し出されて、主配水管42内が均一な水圧が掛かるようになる。
次に、噴霧シーケンス制御手段52は、排水弁43を閉じる。それにより、主配水管42内の水圧が所望の水圧、例えば、6MPaに達する。
次に、噴霧シーケンス制御手段52は、噴霧を行う噴霧ヘッド3Aに連なる選択弁44を開放して、加圧水が子配水管4を経由して噴霧ヘッド3Aに供給される。このときの加圧水受け空洞21に注水されて加わる水圧は4秒の間にほぼ0MPaから6MPaに達する。このように水圧が1MPa以上になると、噴霧ノズル10の感圧逆止弁22が開放されてミストの噴霧が開始される。
【0024】
逆に、ミストの噴霧を終了するときには、噴霧シーケンス制御手段52は、排水弁43を開放して主配水管42内の水圧を減少させる。そうすると、加圧水受け空洞21の水圧が1MPa以下に低下するので、感圧逆止弁22が閉まり、ミストの噴霧が終了される。
そして、排水弁43が開放されてから約3秒経過後高圧ポンプ40をOFFし、選択弁44を閉じる。その後、元弁41と排水弁43とを閉じる。
【0025】
このように、主配水管42内の水圧を所望の値に一旦安定したのち、子配水管4に給水することにより、噴霧ノズル10に給水される加圧水の水圧が数秒の間で0MPaから6MPaに変化することができる。そして、感圧逆止弁22が急激に開放され、水圧の低い状態で噴霧される時間を短くすることができるので、水圧が低い状態で噴霧されたときにみられる大きな粒径のミストが殆ど噴霧されることがない。
また、排水弁43を開放すると主配水管42内の水圧が急激に低下し、感圧逆止弁22が急激に閉められ、水圧の低い状態で噴霧される時間が短くすることができるので、水圧が低い状態で噴霧されたときにみられる大きな粒径のミストが殆ど噴霧されることがない。
【0026】
次に、ミストの噴霧量の設定方法について図9、図10を参照しながら説明する。
なお、前提として噴霧されたミストは少なくとも1分間で蒸散される。延長配管15cmの先端から噴霧されたミストは、1m内に存在しているとして、噴霧量を定める。
噴霧判断手段50は、温湿度計6から入力される乾球温度DT(℃)および湿球温度WT(℃)から湿り空気線図に基づき相対湿度RH(%)を算出する。例えば、図9に示すように、乾球温度DTが30℃、湿球温度WTが20℃であった場合、湿り空気線図の横軸に表されている湿球温度WTの20℃から縦軸方向に延ばして相対湿度100%の線と交わる露点DPを求める。その露点DPから横軸方向に延ばして絶対湿度AH(kg/kg’)を求める。図9に示される例では、絶対湿度AHが0.015(kg/kg’)である。さらに、露点DPから横軸方向に延ばされた線と湿り空気線図の横軸に表されている乾球温度DTが30℃から縦軸方向に延ばされた線との交点Bを求める。そして、交点Bが交わる相対湿度RH(%)を求める。図9の場合、相対湿度RHは65%である。
【0027】
次に、噴霧判断手段50は、相対湿度RHが75%以上の場合、ミストを噴霧しても相対湿度が高すぎることになるため感覚温度が下がったと感じられないので、ミストの噴霧を行わない。逆に、相対湿度RHが75%未満の場合、ミストを噴射することにより感覚温度が下がったと感じられるのでミストの噴霧を行う。
【0028】
次に、給水量制御手段51は、温湿度計6の乾球温度DTが暑い閾値HHTTH(図9、図10において太い一点鎖線で示してある。)、または少し暑い閾値LHTTH(図9、図10において太い点線で示してある。)以上であるか否かを判断し、噴霧量を求める。すなわち、図9に示すように、乾球温度DTが予め定められた少し暑い閾値LHTTH以上の場合、湿り空気線図に基づき、交点Bが交わる等エンタルピの線と乾球温度DTより1℃低い温度から縦軸方向に延ばされた線との交点Cを求める。そして、交点Cから横軸方向に延ばして絶対湿度AH’(kg/kg’)を求める。そして、絶対湿度AH’から絶対湿度AHを減算して、ミストの噴霧量JW(kg)を求める。この噴霧量JWが1分間に1mの空間に噴霧することにより、1℃温度を低下することのできる量である。図9においては、絶対湿度AHが0.015(kg/kg’)、絶対湿度AH’が0.0155(kg/kg’)であるので、ミストの噴霧量JWは、0.0005(kg)となる。そして、1分間に1m当たり0.0005(kg)のミストを噴霧することにより1℃冷却することができる。
【0029】
また、図10に示すように、乾球温度DTが予め定められた暑い閾値HHTTH以上の場合、湿り空気線図に基づき、交点Eが交わるエンタルピの線と乾球温度DTより2℃低い温度から縦軸方向に延ばされた線との交点Fを求める。そして、交点Fから横軸方向に延ばして絶対湿度BH’(kg/kg’)を求める。そして、絶対湿度BH’から絶対湿度BHを減算して、ミストの噴霧量JW(kg)を求める。図10において、絶対湿度BHが0.0198(kg/kg’)、絶対湿度BH’が0.0208(kg/kg’)であるので、ミストの噴霧量JWは、0.001(kg)となる。そして、1分間に1m当たり0.001(kg)のミストを噴霧することにより2℃冷却することができる。
【0030】
このような降温用噴霧システム1は、オリフィス29から噴霧される錐状のミストがオリフィス29を横切る水平面よりも下方にあるので、風の水平方向成分により流されても子配水管4などにミストが当たって液滴となり、下方に落下して、子配水管4などの下方にいる人を濡らすことを防止することができる。
【0031】
また、地面から立ち上がった子配水管4が噴霧ヘッダ11Aに下側の端面において接続され、噴霧されたミストが風に流されても延長配管12Aにより子配水管4から離間されているので、ミストが子配水管4や噴霧ヘッダ11A上で結露し、水滴が下方に落ちることがない。
【0032】
また、延長配管12Aにより噴霧ノズル10を広い空間に分散して配設できるので、少ない子配水管4で広い空間に噴霧できる。
また、噴霧ヘッダ11Aに予め延長配管12Aおよび噴霧ノズル10を工場で取り付けておき、現地で噴霧ヘッド3Aを子配水管4に接続すれば良いので、現場での作業を簡略化することができる。
【0033】
なお、延長配管12Aが同一の長さ、彎曲も同様とした例について説明したが、例えば、長さが長い延長配管12Aを彎曲の小さいものにし、長さの短い延長配管12Aを彎曲の大きなものにしてもよい。このようにすると、より均等にミストを噴霧することができる。このように、延長配管12Aの長さや彎曲の度合いはそれぞれ異なっていても、錐状の噴霧領域が噴霧ヘッダ11Aの下面を含む水平面より下方になるように噴霧ノズル10からの噴角と噴霧ノズル10の中心軸の水平面からの傾きを調整すれば、噴霧ヘッド3Aにミストが結露して水滴が滴下することを防げる。
【0034】
また、延長配管12Aが長くすることができる場合、噴霧ノズル10の中心軸の水平面からの傾きを小さくし、延長配管12Aが長くすることができない場合、噴霧ノズル10の中心軸の水平面からの傾きを大きくしてもよい。すなわち、長さの長い延長配管12A、例えば、25cmの場合、噴霧ノズル10の中心軸を水平面から30度傾けることにより、液滴の落下が見られないとき、延長配管12Aの長さを15cmとすると、噴霧ノズル10の中心軸を水平面から40度傾けることにより、液滴の落下が見られなくなる。
【0035】
また、延長配管12Aを彎曲して噴霧ノズル10の中心軸を噴霧ヘッダ11Aの下面を含む水平面から下方に傾けているが、その傾ける角度と噴霧領域の噴角との関係を説明する。この発明においては、少なくとも錐状の噴角の半分、例えば、噴角が60°、70°、80°の場合、水平面から30°、35°、40°以上傾くように延長配管12Aを彎曲する。但し、柱2が地面から縦立されており、さらに柱2に沿って子配水管4が配設されているので、噴霧外縁が鉛直以上に柱2側に入るとミストが柱2に当たってしまう。そこで、噴霧ヘッダ11Aの下方に柱2や子配水管4がある場合、噴霧外縁が鉛直以上に柱側に寄らないようにすることが必要である。
【0036】
実施の形態2.
図11は、この発明の実施の形態2に係わる噴霧ヘッドの断面図である。
実施の形態2に係わる噴霧ヘッド3Bは、実施の形態1の噴霧ヘッド3Aの彎曲した延長配管12Aの替わりに真っ直ぐな延長配管12Bが用いられており、さらに延長配管12Bの先端に直管18の替わりにベンド管19が用いられていることが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ番号を付記して説明を省略する。図11は、図3に対応した噴霧ヘッド3Bの断面図である。
実施の形態2に係わる噴霧ヘッド3Bは、噴霧ヘッダ11Aから6本の真っ直ぐな延長配管12Bが水平方向に延ばされ、延長配管12Bの先端に、それぞれ22.5°ベンド管19がお辞儀するようにして接続されている。ベンド管19の先端は水平方向から22.5度下向きに彎曲しており、その先端に噴霧ノズル10が接続されている。
【0037】
このように、ベンド管19を用いて噴霧ノズル10の中心軸が噴霧ヘッダ11Aの下面を含む水平面から22.5度傾けられているので、図5に示されるのと同様に、噴霧外縁36が噴霧ヘッダ11Aの下面を含む水平面を横切らずにミストが噴霧され、ミストが水平方向の風に流されても噴霧ノズル10から離間した噴霧ヘッダ11Aや子配水管4に結露することがない。
また、肉厚の厚い延長配管12Bを彎曲することがないので、簡単に噴霧ノズル10の中心軸を傾けることができる。
【0038】
実施の形態3.
図12は、この発明の実施の形態3に係わる噴霧ヘッドの断面図である。
実施の形態3に係わる子配水管4は、図12に示すように、施設の天井から垂れ下げられている。そして、その垂れ下げられた子配水管4の先端に噴霧ヘッド3Cが接続されている。これ以外は実施の形態1の噴霧ヘッド3Aと同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
噴霧ヘッダ11Cは、6角柱の上面の中心に子配水管4と接続する孔16が設けられている。
【0039】
このように上方から子配水管4を下ろすことができると、延長配管12Aの長さを短くしても子配水管4にミストが結露することがないので、軽量な噴霧ヘッド3Cを提供することができる。
また、噴霧ノズル10の中心軸をより大きく噴霧ヘッダ11Cの下面を含む水平面から傾けることができるので、地面近くをより冷却することができる。
【0040】
実施の形態4.
図13は、この発明の実施の形態4に係わる噴霧ヘッドの断面図である。
実施の形態4に係わる噴霧ヘッド3Dは、実施の形態3に係わる噴霧ヘッド3Cと噴霧ヘッダ11Dの形状が異なる。また、延長配管12Aを省略したことが異なっている。その他は、実施の形態3の噴霧ヘッド3Cと同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0041】
実施の形態4に係わる噴霧ヘッダ3Dは、6角柱と頭切の6角錐が重ねられた外形を有し、内部に6角柱と頭切の6角錐が重ねられた空洞が設けられている。そして、6角柱の上端面の中心に空洞に連なる孔が設けられ、6角錐の6面の側面に法線方向に空洞に連なる孔が設けられている。この6角柱の上端面の中心に設けられた孔に子配水管4が接続されている。また、6角錐の側面に設けられた孔に噴霧ノズル10が直管18を介して接続されている。
【0042】
このように、噴霧ノズル10が直接噴霧ヘッダ11Dに接続されているので、小形の噴霧ヘッド3Dを提供することができる。
【0043】
実施の形態5.
図14は、この発明の実施の形態5に係わる噴霧ヘッドの断面図である。
実施の形態5に係わる噴霧ヘッド3Eは、実施の形態1に係わる噴霧ヘッド3Aと噴霧ノズル10から噴霧される噴霧領域34が水平面から上方に向いている点が異なっており、その他は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
実施の形態5に係わる噴霧ヘッド3Eでは、噴霧ヘッダ11Eの6面の側面のそれぞれの中心に設けられた孔17に一端が水平に接続された延長配管12Eの他端が水平面から上方に彎曲し、他端の断面が水平面から27.5度傾いている。噴霧ノズル10の中心軸が他端の断面に垂直になるようにして噴霧ノズル10が他端に固定されている。このようにミストを上向きに噴霧するとき、ミストの下降の効果を考慮して、噴霧領域の噴霧外縁が噴霧ヘッダ11Eの上面を含む水平面に対して5°以上傾くように、噴霧ノズル10の中心軸が噴霧ヘッダ11Eの上面を含む水平面に対して角度θ’27.5°傾けてある。
【0044】
なお、実施の形態5においては、噴霧ノズル10の中心軸を噴霧ヘッダ11Eの上面を含む水平面に対して上向きに噴角45度の半分22.5度に5度加算した値だけ傾ける例を取り上げたが、中心軸が水平面に対して上向きに垂直になるように延長配管12Aを彎曲させてもよい。
【0045】
このように、噴霧ノズル10の中心軸が噴霧ヘッダ11Eの上面を含む水平面に対して角度θ’27.5度傾けられているので、噴角45度の噴霧領域にミストが噴霧されたとき、ミストが風に流されても水平面を横切るまでにはミストが蒸散して、噴霧ヘッダ11Eや子配水管4にミストが結露することがない。
また、噴霧ヘッダ11Eの上面を含む水平面に対して噴霧領域の噴霧外縁が5°以上傾けているので、ミストがその水平面にまで降下する時間的余裕ができ、その間にミストを蒸散することができる。
また、上方に噴霧するので、地面に近くから噴霧でき、地面の付近の冷却効果を上げることができる。
【0046】
実施の形態6.
図15は、この発明の実施の形態6に係わる降温用噴霧システムの構成図である。
実施の形態6に係わる降温用噴霧システム1Fは、実施の形態1の降温用噴霧システム1と異なり、噴霧ヘッダ11Aを介さずに、子配水管4に直接複数の噴霧ノズル10をそれぞれ延長配管12Aを介して接続されていることが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0047】
このように、子配水管4に間隔を空けて噴霧ノズル10が接続されているので、直線的に長い、例えば入口通路等に、降温用噴霧システム1Fを設置しようとするとき、適切な構成である。そして、延長配管12Aにより噴霧ノズル10が子配水管4から離間されているので、ミストが子配水管4などに結露して液滴が滴下することを防げる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる降温用噴霧システムの構成図である。
【図2】この発明の噴霧ヘッドの一部横断面図である。
【図3】この噴霧ヘッドの断面図である。
【図4】噴霧ノズルの中心軸に沿った断面図である。
【図5】噴霧ノズルからミストが噴霧される様子を表す図である。
【図6】加圧水供給装置の構成図である。
【図7】ミスト制御盤の機能ブロック図である。
【図8】ミストの噴霧のタイミングチャートである。
【図9】噴霧量を決めるための値が記入された湿り空気線図である。
【図10】他の条件の下、噴霧量を決めるための値が記入された湿り空気線図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係わる噴霧ヘッドの断面図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係わる噴霧ヘッドの断面図である。
【図13】この発明の実施の形態4に係わる噴霧ヘッドの断面図である。
【図14】この発明の実施の形態5に係わる噴霧ヘッドの断面図である。
【図15】この発明の実施の形態6に係わる降温用噴霧システムの構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1、1F 降温用噴霧システム、2 柱、3A〜3E 噴霧ヘッド、4 子配水管、5 加圧水供給装置、6 温湿度計、7 水道、10 噴霧ノズル、11A、11C、11D、11E 噴霧ヘッダ、12A、12B、12E 延長配管、14 圧力変換器、15A 空洞、16、17 孔、18 直管、19 ベンド管、20 ハウジング、21 空洞、21a 開口、22 感圧逆止弁、23 リブ、23a 孔、24 弁収納空洞、25 駒、26、27 空洞、28 噴流生成空洞、29 オリフィス、30 遮断球、31 バネ、32 溝、34 噴霧領域、35 噴角、36 噴霧外縁、40 高圧ポンプ、41 元弁、42 主配水管、43 排水弁、44 選択弁、45 ミスト制御盤、46 排水配管、47 ブレードホース、50 噴霧判断手段、51 給水量制御手段、52 噴霧シーケンス制御手段、53 空気線図データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された水をミストとして噴霧して対象の空間の温度を低下する降温用噴霧システムにおいて、
1つの端部に設けられたオリフィスから上記オリフィスを頂点とした錐状の噴霧領域に上記加圧された水をミストとして噴霧する噴霧ノズルと、
上記噴霧ノズルの他の端部に接続され、上記加圧された水を上記噴霧ノズルに配水する配水管と、
が備えられ、
上記錐状の噴霧領域の中心線が、上記オリフィスからミストが噴霧される方向に向かって上記オリフィスを横切る水平面に対して下向きに上記噴霧領域の噴角の半分以上傾けられている、または、上記水平面に対して上向きに上記噴霧領域の噴角の半分に角度5度を加算した値以上傾けられていることを特徴とする降温用噴霧システム。
【請求項2】
上記配水管から配水された水を複数の上記噴霧ノズルに分配する噴霧ヘッダが備えられることを特徴とする請求項1に記載する降温用噴霧システム。
【請求項3】
上記噴霧ヘッダからそれを中心にして水平に径方向に延び、先端に上記噴霧ノズルが接続され、上記錐状の噴霧領域の中心線を傾けるために彎曲された延長配管が備えられることを特徴とする請求項2に記載する降温用噴霧システム。
【請求項4】
上記噴霧ヘッダからそれを中心にして水平に径方向に真っ直ぐに延びる延長配管と、
一端に上記延長配管が接続され、他端に上記噴霧ノズルが接続され、上記錐状の噴霧領域の中心線を傾けるために彎曲されたベンド管と、
が備えられることを特徴とする請求項2に記載する降温用噴霧システム。
【請求項5】
上記配水管は、水平方向に延び、
水平方向かつ上記配水管からそれに垂直に延ばされ、先端に上記噴霧ノズルが接続され、上記錐状の噴霧領域の中心線を傾けるために彎曲された延長配管が備えられることを特徴とする請求項1に記載する降温用噴霧システム。
【請求項6】
上記延長配管の長さは、上記中心線の上記水平面からの傾きが大きいほど短いことを特徴とする請求項3または5に記載する降温用噴霧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−177575(P2006−177575A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369038(P2004−369038)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、16年度経済産業省中部経済産業局地域新生コンソーシアム研究開発事業「ドライミスト蒸散効果によるヒートアイランド抑制システムの開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)
【出願人】(592055864)株式会社トーキン (1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】