説明

降雪現象表示方法

【課題】本発明の課題は、不規則な落下運動を行う大量の雪粒を3次元・コンピュータ・グラフィックスでリアルタイムに表示するための計算処理を減少できる降雪現象表示方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、CPU21、GPU22、及び表示器23を有する3次元・コンピュータ・グラフィックス・システムを用いて降雪現象を表示する降雪現象表示方法であって、CPU21により雪粒や風力に乱数で計算した風力を揺らがせる力・雪粒を揺らがせる力を用いて雪粒の座標を降雪現象を表示する雪粒の数だけ計算し、GPU22によりCPU21で算出した各雪粒の座標の距離(奥行き)に応じた各雪粒の大きさを計算し、表示器23にCPU21で算出した各雪粒の座標へGPU22で算出した各雪粒の大きさで各雪粒を表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CPU(Central Processing Unit:演算処理装置)、GPU(Graphics Processing Unit:描画処理装置)、及び表示器を有する3次元・コンピュータ・グラフィックス・システムを利用し、降雪現象をリアルタイムで表示する降雪現象表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ・グラフィックス・システムの発展により、ピクセル単位でシェーディング(陰影の計算と描画)を行うことで繊細なグラフィックスの描画が可能になっているが、多数の粒子の表示を行うには、コンピュータによる計算量が急激に増加してしまうため、グラフィックス・ハードウェアの追加や、少ない計算量でリアルな映像表示を行うための個々の工夫により、パフォーマンスの向上が行われている。
【0003】
従来、3次元・コンピュータ・グラフィックスにおいて粒子の操作をするシステムはパーティクル・システム(粒子法)と呼ばれており、パーティクル・システムによって降雪現象を表現する場合、一般的に3次元空間の上部に値する場所から下部に値する場所へ粒子を落下させ、降雪現象を表現している。
【特許文献1】特開2002−216154号公報
【特許文献2】特開2003−337958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は不規則な形状の雪粒のランダムな落下運動の例を示すイメージ図である。図5に示すように、3次元・コンピュータ・グラフィックスでより現実に近い降雪現象を表示しようとする場合、不規則な形状の雪粒11,12,13は地面15に落下する際、「環境(風力・風向等)」・「雪粒ごとの不規則な形状による空気抵抗の違い」に影響され、不規則な落下運動を行う。
【0005】
降雪現象における雪粒は大量であるため、この不規則な落下運動の計算を雪粒に適用するには膨大な計算量が必要となる。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、不規則な落下運動を行う大量の雪粒を3次元・コンピュータ・グラフィックスでリアルタイムに表示するための計算処理を減少でき、その計算処理の負荷によるリアルタイム性の維持・コンピュータのパフォーマンス向上を行い得る降雪現象表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、CPU、GPU、及び表示器を有する3次元・コンピュータ・グラフィックス・システムを用いて降雪現象を表示する降雪現象表示方法であって、下記の式A及び式Bを用いて雪粒の座標を降雪現象を表示する雪粒の数だけ前記CPUにより計算するステップと、前記CPUで算出した各雪粒の座標の距離(奥行き)に応じた各雪粒の大きさを前記GPUにより計算するステップと、前記CPUで算出した各雪粒の座標へ前記GPUで算出した各雪粒の大きさで前記表示器に各雪粒を表示するステップとよりなることを特徴とする。
【0008】
SD(XYZ)=FOW(XYZ)+WS(XYZ)+SS(XYZ)…………式A
SP(XYZ)=P(XYZ)+SD(XYZ)×T(t)……………式B
ただし、
P(XYZ)はPositionで雪粒の発生座標(3次元の座標XYZ)
SD(XYZ)はSnow Distanceで単位時間あたりの雪粒の移動量(3次元の座標XYZ)
FOW(XYZ)はForce Of Windで風力(風が雪粒に与える力)による単位時間あたりの移動量(3次元の座標XYZ)
WS(XYZ)はWind Shakerで風力を揺らがせる力による単位時間あたりの移動量(3次元の座標XYZ)
SS(XYZ)はSnow Shakerで雪粒自体を揺らがせる力による単位時間あたりの移動量(3次元の座標XYZ)
SP(XYZ)はSnow Positionで雪粒の座標(3次元の座標XYZ)
T(t)はTimeで単位時間(雪粒の発生から消滅までの時間t)
【発明の効果】
【0009】
本発明の降雪現象表示方法は、雪粒ごとの不規則な落下運動の計算(物理学上の正しい計算)を行わなくても、発生させた降雪現象が見る人間に目の錯覚を起こさせ、現実の降雪現象のように雪粒が不規則な落下運動をしているように見える視覚効果をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態に係るCPU、GPU、及び表示器を有する3次元・コンピュータ・グラフィックス・システムを示す構成説明図である。図1において、21はCPU、22はGPU、23は表示器であり、CPU21、GPU22、及び表示器23は3次元・コンピュータ・グラフィックス・システムを構成して降雪現象を表示する。
【0012】
図1に示すように、CPU21は下記の式A及び式Bを用いて雪粒の座標を降雪現象を表示する雪粒の数だけ計算する。
【0013】
SD(XYZ)=FOW(XYZ)+WS(XYZ)+SS(XYZ)…………式A
SP(XYZ)=P(XYZ)+SD(XYZ)×T(t)……………式B
ただし、
P(XYZ)はPositionで雪粒の発生座標(3次元の座標XYZ)
SD(XYZ)はSnow Distanceで単位時間あたりの雪粒の移動量(3次元の座標XYZ)
FOW(XYZ)はForce Of Windで風力(風が雪粒に与える力)による単位時間あたりの移動量(3次元の座標XYZ)
WS(XYZ)はWind Shakerで風力を揺らがせる力による単位時間あたりの移動量(3次元の座標XYZ)
SS(XYZ)はSnow Shakerで雪粒自体を揺らがせる力による単位時間あたりの移動量(3次元の座標XYZ)
SP(XYZ)はSnow Positionで雪粒の座標(3次元の座標XYZ)
T(t)はTimeで単位時間(雪粒の発生から消滅までの時間t(更新レート))
すなわち、上記の式Aでは、FOW(XYZ)と乱数処理で算出したWS(XYZ)と乱数処理で算出したSS(XYZ)を3次元空間の座標として足し合わせ、単位時間あたりの雪粒の移動量SD(XYZ)を算出し、式Bでは、式Aで算出されたSD(XYZ)と雪粒の落下開始から消滅するまでの時間T(t)を掛け合わせ、雪粒の発生座標(初期座標)P(XYZ)と足し合わせることで、1粒の雪粒の発生から消滅までの落下運動計算を行っている。この雪粒を大量に表示させるために雪粒の発生座標P(XYZ)にも幅を持たせ、降雪現象で表示する雪粒の数Nだけ計算する。CPU21で算出したSP(XYZ)はGPU22に出力される。
【0014】
GPU22は、前記CPU21で算出したSP(XYZ)が入力され、各雪粒の座標の距離(奥行き)に応じた各雪粒の大きさを計算して表示器23に出力する。
【0015】
表示器23はGPU22からの信号が入力され、前記CPU21で算出した各雪粒の座標へ前記GPU22で算出した各雪粒の大きさで各雪粒を同時に表示することで大量の雪粒の落下運動を模擬することが可能である。
【0016】
次に、1粒の雪粒の場合における具体的計算例を示す。
【0017】
[1] 雪粒Xの移動量:WS(XYZ)・SS(XYZ)は雪粒ごとに乱数で値を決定する。
【0018】
SD(1.6,−0.1,0.3)=FOW(1.5,0.0,0.0)
+WS(0.1,0.0,0.2)+SS(0.0,―0.1,0.1)
[2] 雪粒Xの発生座標+単位時間あたりの雪粒Xの移動
[2−1] 雪粒Xの描画座標
SP(4.6,9.9,4.7)=P(3.0,10.0,5.0)
+SD(1.6,−0.1,0.3)×T(1)
[2−2] 雪粒Xの描画座標
SP(6.2,9.8,4.4)=P(3.0,10.0,5.0)
+SD(1.6,−0.1,0.3)×T(2)
[2−3] 雪粒Xの描画座標
SP(7.8,9.7,4.1)=P(3.0,10.0,5.0)
+SD(1.6,−0.1,0.3)×T(3)
本発明の実施形態では降雪現象における雪粒の落下運動を計算する際、雪粒や風力に乱数で計算した「揺らぎ」を持たせることが新しく、「風力」に加え雪粒ごとに「風力を揺らがせる力(雪粒に影響する一定ではない風力を表現する値)」・「雪粒を揺らがせる力(不規則な形状の雪粒が持つ空気抵抗の違いを表現する値)」という値を定義し、雪粒の落下運動計算へ追加する。
【0019】
図2は本発明の実施形態に係る3次元空間の風向を示すイメージ図である。すなわち、雪粒の落下運動計算で使用する「風力」は「環境」のパラメータとして風力(風が雪粒に与える力)の他に3次元空間の軸方向と「正」・「負」で指定する風向も含んだ値とし、新たに追加した「風力を揺らがせる力」・「雪粒を揺らがせる力」は、「雪粒ごとの不規則な形状による空気抵抗の違い」のような不規則な値のパラメータとして、分布幅の狭い乱数で計算した値を代入して使用する。
【0020】
図3は本発明の実施形態に係る風力の影響を受けながらも不規則な落下運動をする雪粒を示すイメージ図である。図3において、31は雪粒発生地点、32は雪粒消滅地点である。すなわち、上記の値を1粒の雪粒ごとに計算することで、各雪粒は環境(風力・風向)の影響を受けながらも、乱数で算出された「風力の揺らがせる力」・「雪粒を揺らがせる力」によって、雪粒は不規則な方向に落下し、これを雪粒の発生地点31・雪粒の消滅地点32等の3次元空間の座標値と組み合わせて大量に表示して見せることで、不規則な降雪現象を表示するための膨大な計算量や、リアルタイム性の非維持・コンピュータのパフォーマンス低下の課題を解決することが可能である。
【0021】
図4は本発明の実施形態に係る実際に決められた座標幅の中に雪粒を降らせる様子を示す説明図である。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るCPU、GPU、及び表示器を有する3次元・コンピュータ・グラフィックス・システムを示す構成説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る3次元空間の風向を示すイメージ図である。
【図3】本発明の実施形態に係る風力の影響を受けながらも不規則な落下運動をする雪粒を示すイメージ図である。
【図4】本発明の実施形態に係る実際に決められた座標幅の中に雪粒を降らせる様子を示す説明図である。
【図5】不規則な形状の雪粒のランダムな落下運動の例を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0024】
21…CPU、22…GPU、23…表示器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPU、GPU、及び表示器を有する3次元・コンピュータ・グラフィックス・システムを用いて降雪現象を表示する降雪現象表示方法であって、
下記の式A及び式Bを用いて雪粒の座標を降雪現象を表示する雪粒の数だけ前記CPUにより計算するステップと、
前記CPUで算出した各雪粒の座標の距離(奥行き)に応じた各雪粒の大きさを前記GPUにより計算するステップと、
前記CPUで算出した各雪粒の座標へ前記GPUで算出した各雪粒の大きさで前記表示器に各雪粒を表示するステップと
よりなることを特徴とする降雪現象表示方法。
SD(XYZ)=FOW(XYZ)+WS(XYZ)+SS(XYZ)…………式A
SP(XYZ)=P(XYZ)+SD(XYZ)×T(t)……………式B
ただし、
P(XYZ)はPositionで雪粒の発生座標(3次元の座標XYZ)
SD(XYZ)はSnow Distanceで単位時間あたりの雪粒の移動量(3次元の座標XYZ)
FOW(XYZ)はForce Of Windで風力(風が雪粒に与える力)による単位時間あたりの移動量(3次元の座標XYZ)
WS(XYZ)はWind Shakerで風力を揺らがせる力による単位時間あたりの移動量(3次元の座標XYZ)
SS(XYZ)はSnow Shakerで雪粒自体を揺らがせる力による単位時間あたりの移動量(3次元の座標XYZ)
SP(XYZ)はSnow Positionで雪粒の座標(3次元の座標XYZ)
T(t)はTimeで単位時間(雪粒の発生から消滅までの時間t)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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