説明

除去容易な印刷インク層を形成する印刷方法

【課題】除去容易な印刷インク層を形成する印刷方法を提供する。
【解決手段】除去容易な印刷インク層を形成する印刷方法であって、
基材上に、ポリビニルアルコールを添加した水性フレキソインキをシルクスクリーン印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷して印刷インク層を形成することからなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去容易な印刷インク層を形成する印刷方法に関するものであり、詳細には、除去容易な印刷インク層を形成する印刷方法であって、
基材上に、ポリビニルアルコールを添加した水性フレキソインキをシルクスクリーン印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷して印刷インク層を形成することからなる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を防止するために、CO2の削減が重要な課題となり、その観点から、種々の製品の回収・再利用(リサイクル化)が広範囲に推進されている。
紙、不織布、織布等を基材とする製品又はこれらの基材を部分的に含む製品の回収・再利用を実施する場合、該基材上に印刷された印刷インク層を除去する必要がある。
【0003】
引用文献1は、印刷古紙からの再生紙製造に使用するための、インキ除去性に優れ、白色度が高く残存インキ数の少ない脱墨パルプの生産を可能とする脱墨剤を開示する。
ここで、引用文献1に記載の脱墨剤は、印刷古紙を細断、離解して調製されるパルプスラリーに適用するためのものであり、そしてそれにより、脱墨されたパルプスラリーから再生紙が製造されることとなる。
【0004】
引用文献2は、印刷がなされた紙及び不織布のような再生可能な基材を、上述のような細断、離解等の操作を行うことなく、そのままの形態で再利用するために、前記基材からの印刷インクの除去を容易にする印刷インク除去剤を開示している。
また、引用文献2は、高い温水溶解性を示す、(変性)ポリビニルアルコールを含む印刷インク除去剤を、基材と印刷インク層との間に介在させて印刷物を製造することにより、該印刷物を温水に浸漬するだけで、印刷インク層を基材より容易に分離除去する方法を記載するものであるため、これを用いれば、インク除去操作による基材繊維の強度低下を抑えることができ、それにより、印刷がなされた紙及び不織布のような再生可能な基材の回収・再生を繰り返し行うことを可能とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−200484号公報
【特許文献2】特開2010−001408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、容易に除去することが可能で、発色が良好で且つ生産性が高いシルクスクリーン印刷による印刷インク層を形成するための印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、引用文献2に記載されるように、高い温水溶解性を示す、(変性)ポリビニルアルコールを含む印刷インク除去剤を、基材と印刷インク層との間に介在させるのではなく、印刷インクに直接(変性)ポリビニルアルコールを添加してこれを基材上に印刷し、印刷された面に架橋剤を処理して印刷インク層を形成することにより、低温の水では除去されないものの、温アルカリ水等で処理することにより容易に除去され得る印刷インク層が形成されることを見出した。
しかし、例えば、回収・再生を繰り返し行うための不織布等を基材とする物品の印刷に
適するシルクスクリーン印刷で、上記のような容易に除去され得る印刷インク層を形成するために、シルクスクリーン印刷用のインクに(変性)ポリビニルアルコール等を添加すると、インクの粘度が高くなり過ぎ、そのため、シルクスクリーン印刷により良好な印刷物を得ることが困難となるという問題が生じ、また、該インクに粘度を低く調整するために水を添加すると、今度は、隠蔽力が低下し、それにより発色が悪くなり、加えて、乾燥時間が長くなり、それにより生産性が低下するという新たな問題が生じることが判明した。
【0008】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、グラビア印刷やフレキソ印刷に用いられるような低粘度の水性フレキソインクに(変性)ポリビニルアルコールを添加してこれを基材上にシルクスクリーン印刷することで、形成された印刷層は、高い隠蔽力を示し、それにより発色が良好になり、加えて、乾燥時間が短いため、生産性が高くなり、また、形成された印刷インク層は、架橋剤による処理の後、低温の水では除去されないものの、洗剤を含む温アルカリ水で処理するか又は超音波照射条件下温アルカリ水で処理することにより容易に除去され得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)除去容易な印刷インク層を形成する印刷方法であって、
基材上に、ポリビニルアルコールを添加した水性フレキソインキをシルクスクリーン印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷して印刷インク層を形成することからなる方法、
(2)基材上に、ポリビニルアルコールを添加した水性フレキソインキをシルクスクリーン印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷することにより形成された印刷インク層を、洗剤を含む温アルカリ水で処理するか又は超音波照射条件下温アルカリ水で処理することからなる、印刷インク層を除去する方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、容易に除去することが可能で、発色が良好で且つ生産性が高いシルクスクリーン印刷による印刷インク層を形成するための印刷方法が提供される。
上記印刷方法により印刷された、紙、不織布、織布等の基材は、形成された印刷インク層が、常温の水では除去されないものの、洗剤を含む温アルカリ水で処理するか又は超音波照射条件下温アルカリ水で処理することにより容易に取り除くことができる。
【0011】
本発明の印刷方法を使用して製造される印刷物は、リサイクル(再生)処理を行う際、品質及び強度を殆ど低下させることなく再生可能であるため、回収・再生を繰り返し行うことを可能とするものであり、従って、該印刷物は、実用的な価値が高いものといえる。
また、印刷インク層を除去した後の廃水は、例えば、環境負荷が低く安全性の高い無機系凝集剤を用いる凝集・濾過処理を行うだけで、排水溝への排水が可能であり、従って、本発明の印刷方法は、製造コスト及び環境面においても利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明の印刷方法は、基材上に、ポリビニルアルコールを添加した水性フレキソインキをシルクスクリーン印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷して印刷インク層を形成することからなる。
また、本発明は、上記の方法で形成された印刷インク層を、洗剤を含む温アルカリ水で処理するか又は超音波照射条件下温アルカリ水で処理することからなる、印刷インク層を除去する方法にも関する。
【0013】
本発明の印刷方法に使用し得る基材としては、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、合成紙、合成樹脂フィルム及びシート、織布並びに不織布などが挙げられるが、従来、顔料印刷がなされる基材であれば特に制限はない。織布としては、木綿、絹、麻などの天然素材の織布であってもよく、不織布としては、リサイクルの容易さ、強度、成形性等の面から、素材としてポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布又はアクリル樹脂不織布が好ましく、なかでも、再生が容易なポリプロピレン不織布が好ましい。
また、基材の形態としては、リサイクル可能な買物袋が好ましく、特に、ポリプロピレン不織布を基材として構成される買物袋が好ましい。
【0014】
本発明の印刷方法に使用する水性フレキソインキは、グラビア印刷やフレキソ印刷に用いられるような低粘度の水性フレキソインクであれば特に限定されるものではない。
上記水性フレキソインキに使用し得る顔料としては、一般的な水性フレキソインキに使用されている各種の無機顔料や有機顔料が挙げられ、具体的な無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛など有色顔料、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルクなどの体質顔料等を挙げることができ、具体的な有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。
上記顔料は、1種だけを使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
上記水性フレキソインキには、上述の顔料に加えて、アルカリ可溶型の水溶性樹脂、エマルジョン樹脂等のビヒクル、ワックスや消泡剤等の補助剤等を添加することができる。
上記水性フレキソインキは、例えば、50ないし200mPa・sの範囲の粘度に調整するのが好ましい。
上記水性フレキソインキとしては、合成品及び市販品の何れも使用することができる。
【0015】
上記水性フレキソインキに添加し得るポリビニルアルコールとしては、ポリビニルアルコールとして使用されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アルコキシ基、エステル基、アルキレンエーテル基など各種の修飾基を有する変性ポリビニルアルコールを使用することもできる。
好ましいポリビニルアルコールとしては、変性ポリビニルアルコールが挙げられ、具体的には、アセトアセチル化ポリビニルアルコールが挙げられる。
上記ポリビニルアルコールの中で、アセトアセチル化ポリビニルアルコールは、例えば、ポリビニルアルコールを酢酸溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加させる方法、ポリビニルアルコールをジメチルホルムアミド又はジオキサンなどの溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法、或いは、ポリビニルアルコールにジケテンガス又は液状ジケテンを直接接触させる方法等により製造することができる。
【0016】
上記ポリビニルアルコールの好ましい鹸化度は、90%以上であり、97.5%以上がより好ましい。
上記ポリビニルアルコールは、1種だけを使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
上記ポリビニルアルコールとしては、合成品及び市販品の何れも使用することができるが、市販品としては、例えば、日本合成化学株式会社製のゴーセノール(登録商標)(例えば、ゴーセファイマーZ−320、Z−200、Z−410、Z−420、Z−220等)、クラレ社製のポバール(登録商標)又は電気化学工業社製のデンカポバール(登録商標)等を用いることができる。
上記ポリビニルアルコールの使用量は、ポリビニルアルコール添加後の水性フレキソインキの粘度が、シルクスクリーン印刷に適するような量となるのが好ましく、例えば、使用する水性フレキソインキ100質量部に対して、0.5ないし10質量部、好ましくは
、1ないし5質量部の範囲である。
尚、ポリビニルアルコール添加後の水性フレキソインキの粘度は、好ましくは、1000ないし50000mPa・sの範囲であり、3000ないし20000mPa・sの範囲がより好ましい。
【0017】
上記印刷インクには、ポリビニルアルコール以外の他の高分子を添加することもできる。
上記高分子としては、ポリビニルアセタール、セルロース系ポリマー〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;エーテル結合を有するポリマーであるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE);アミド基またはアミド結合を有するポリマーであるポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、並びに、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類などのような水溶性高分子が挙げられる。
上記印刷インクに上記高分子を添加する際の使用量は、印刷インクの総質量に基づいて、0.25ないし2質量%、好ましくは、0.4ないし1.3質量%の範囲である。
上記印刷インクには、上記に加えて、アルカリ可溶型の水溶性樹脂、エマルジョン樹脂等のビヒクル、ワックスや消泡剤等の補助剤等を添加することができる。
消泡剤を加えるのが好ましい。
【0018】
上記で調製した印刷インクは、基材上にシルクスクリーン印刷される。
シルクスクリーン印刷する場合、該印刷に使用するネットボードのメッシュは特に限定されるものではないが、例えば、120ないし250メッシュ、具体的には、120、150、200、250メッシュのものを用いることができる。
具体的には、例えば、150メッシュの紗などが挙げられる。
上記により基材上に印刷された印刷インクは、必要に応じて加熱等を行って乾燥させるのが好ましい。
加熱を行う際の温度としては、印刷インクに悪影響を及ぼさない加熱条件であれば特に限定されないが、例えば、70ないし80℃程度が好ましく、その際の乾燥時間としては、7ないし15秒程度が好ましい。
室温にて乾燥させる場合の乾燥時間は、5分ないし1時間を採用することができ、好ましくは、8分ないし30分が挙げられる。
上記の操作で形成される印刷インク層の厚さは、例えば、3ないし30μm、好ましくは、5ないし20μmの範囲である。
【0019】
次に、上記で基材上に印刷された印刷インクの表面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷する。
上記架橋剤としては、ポリビニルアルコールを架橋させて耐水性を付与し得る化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、多価金属化合物、ホウ素化合物、アミン化合物、ヒドラジン化合物、ヒドラジド化合物、シラン化合物、メチロール基含有化合物、アルデヒド基含有化合物、エポキシ化合物、チオール化合物、イソシアネート化合物等を用いることができるが、例えば、ヒドラジド化合物等が好ましく、具体的には、アジピン酸ヒドラジド(ADH)等が挙げられる。
上記架橋剤は単独で用いることもできるが、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記架橋剤は、例えば、水溶液として印刷インクの表面上に塗布、噴霧又は印刷される。
上記架橋剤の水溶液は、架橋剤を0.5ないし3質量%含み、好ましくは、0.5ない
し2質量%含む。
上記架橋剤の水溶液の使用量は、使用する架橋剤の質量が、印刷で使用したポリビニルアルコールの質量の、0.5ないし3%程度、特に、0.5ないし2%程度となるような量とするのが好ましい。
塗布、噴霧又は印刷の方法は、通常使用される方法を用いることができる。
例えば、上記印刷方法は、上述の印刷インクの印刷方法と同様の操作で行うことができる。
架橋剤の水溶液を塗布、噴霧又は印刷した後、必要に応じて加熱・乾燥等を行うことにより、基材上に印刷インク層が形成される。
上記乾燥条件としては、例えば、70ないし80℃程度の温度で、7ないし15秒程度が乾燥させた後、室温で、24時間ないし200時間、好ましくは、48時間ないし120時間乾燥させる。
【0020】
基材上に形成された印刷インク層は、低温の水、例えば、常温の水等には溶解しないが、洗剤を含む温アルカリ水(例えば、pHが11以上、温度が、例えば、36ないし60℃の範囲の水)に接触(浸漬)したとき又は超音波照射条件下で温アルカリ水(例えば、pHが11以上、温度が、例えば、36ないし60℃の範囲の水)に接触(浸漬)したときには、容易に溶解して基材から除去され得るものとなる。即ち、上記印刷インク層は、日常生活における使用においては除去されないものの、再利用を行う際には容易に除去可能であり、そのため、本発明の印刷方法は、再利用が想定された日常生活で使用する製品への使用において、非常に有利である。
【0021】
例えば、ポリビニルアルコールとしてアセトアセチル化ポリビニルアルコールを添加した水性フレキソインキを基材上に印刷し、該印刷インクの表面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷する際、架橋剤としてアミン化合物を用いた場合、下記のような架橋構造を形成する。
【化1】

また、架橋剤としてヒドラジド化合物を用いた場合、下記のような架橋構造を形成する。
【化2】

また、架橋剤としてアルデヒド基含有化合物を用いた場合、下記のような架橋構造を形成する。
【化3】

また、架橋剤としてメチロール基含有化合物を用いた場合、下記のような架橋構造を形成する。
【化4】

また、架橋剤として多価金属化合物を用いた場合、下記のような架橋構造を形成する。
【化5】

上記のようにポリビニルアルコールとして、アセトアセチル化ポリビニルアルコールを用い、種々の架橋剤で処理して形成された架橋構造は、酸性には溶けにくいものの、アルカリ性には溶けやすい性質を有することになる。
以下、上記で形成された印刷インク層の除去方法に付き説明する。
上記印刷インク層は、洗剤を含む温アルカリ水で処理するか又は超音波照射条件下温アルカリ水で処理することにより除去される。
本発明で使用する温アルカリ水とは、pHが、例えば、10ないし13、好ましくは11以上、具体的には、11ないし12で、温度が、例えば、36ないし60℃の範囲の水を意味する。
尚、上記pHは、水酸化ナトリウム等の塩基を添加することにより容易に調整することができる。
【0022】
本発明で使用する洗剤としては、洗剤として使用されているものであれば特に限定されるものではないが、例えば、界面活性剤、安定化剤、粘度調整剤及び酵素等を含む組成物である。
本発明で使用する洗剤に含まれる界面活性剤の量は、洗剤の質量に基づき、約5ないし90質量%の範囲であり、約25ないし70質量%の範囲が好ましい。
上記界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及びこれらの混合物等が挙げられる。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、線状アルキルベンゼンスルホネート、αオレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、アルキルエステルスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルアルコシスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアルコシカルボキシレート、アルキルアルコキシレートスルフェート、サルコシネート、タウリネート等が挙げられ、両性界面活性剤としては、例えば、アミンオキシド界面活性剤、アミドプロピルベタイン等が挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、例えば、(i)アルキルフェノールのポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンオキシド縮合物、(ii)脂肪族アルコールと約1〜約25モルのエチレンオキシドとの縮合生成物であるアルコールエトキシレート等が挙げられる。
【0023】
本発明で使用する洗剤は、好ましくは、酵素としてアミラーゼ酵素を含む。
本発明で使用する洗剤は、例えば、液体食器洗浄用洗剤等が挙げられ、好ましい市販の洗剤の具体例としては、ジョイ(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製の液体食器洗浄用洗剤)等が挙げられる。
温アルカリ水に添加する洗剤の量は、温アルカリ水100質量部に対して、0.05ないし1質量部、好ましくは、0.1ないし0.3質量部の範囲である。
【0024】
洗剤を含む温アルカリ水を用いる処理は、通常、印刷インク層が形成された基材を、洗剤を含む温アルカリ水に浸漬することにより行われる。
上記の処理時間は、30ないし60分間程度行えば、十分である。
また、超音波照射条件下温アルカリ水で処理することによる上記印刷インク層の除去は、印刷インク層が形成された基材を、温アルカリ水に浸漬し、超音波振動を加えることにより達成される。
上記の処理時間は、30ないし60分間程度行えば、十分である。
【0025】
上記印刷インク層の除去処理を行った後、処理された基材を取り出し、必要な場合は水洗等を行なった後、乾燥する。
上記操作は、例えば、遠心機を用いる脱水によっても行うことができる。
印刷インク層を除去した後の廃水は、例えば、環境負荷が低く安全性の高い無機系凝集剤を用いる凝集・濾過処理を行うだけで、排水溝への排水が可能である。
上記無機系凝集剤としては、例えば、ベントナイト等が挙げられる。
凝集剤としては、また、硫酸アルミニウムとカチオン澱粉アクリルアミド重合物の混合物等を用いることもできる。
無機系凝集剤としては、市販の無機系凝集剤を用いることができ、例えば、エコマックス TW−20(アイサン工業株式会社製)等が挙げられる。
使用する凝集剤は、廃液100mLに対して、0.1ないし10gの範囲、好ましくは、0.5ないし2gの範囲である。
【0026】
本発明の印刷方法を使用することによって、印刷インク層を表面に有する製品、例えば、不織布を基材とする買物袋等のリサイクル(再生)処理をする際、従来のように多くの工程を必要とせず、またそれら工程において使用される薬品等も必要としないので、製造工程における製造コスト及び環境への負荷を低減することができる。
例えば、小売店で配布される、紙、不織布又は織布製の買物袋におけるロゴマークの印
刷に使用した場合、該ロゴマークは雨に濡れたくらいでは除去されないものの、回収後は、容易に前記ロゴマークを除去でき、再度、同小売店の又は異なる小売店のロゴマークを印刷すれば、容易に再利用できるため、このような使用において、省力・省資源、環境保全の点から非常に優れている。
【実施例】
【0027】
以下、本発明について実施例を挙げて詳述するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1
1)ポリプロピレン不織布への印刷
市販の白色の水性フレキソインク(東洋インク製造株式会社製:不織布対応)100gにポリビニルアルコール(ゴーセファイマーZ−410:鹸化度97.5〜98.5mol%:日本合成化学株式会社製)3gを添加し、攪拌器で混ぜながら粘度を調整して印刷インクを調製した。
上記で調製した印刷インクを、目付が100g/m2のポリプロピレンスパンボンド不織布に、150メッシュの紗を用いてシルクスクリーン印刷した。
インク厚は、10μm程度であった。
印刷後、10分間自然乾燥し、印刷面上に、アジピン酸ヒドラジド(ADH)の1%水溶液(使用したポリビニルアルコールの質量の1%となる量)を、噴霧して、印刷インク層が形成されたポリプロピレン不織布を製造した。
形成された印刷インク層は、常温の水では全く除去されなかった。
実施例2
白色の水性フレキソインクを藍色の水性フレキソインク(東洋インク製造株式会社製)に代えた以外は実施例1と同様の操作を行うことにより印刷インク層が形成されたポリプロピレン不織布を製造した。
形成された印刷インク層は、常温の水では全く除去されなかった。
【0028】
2)印刷インク層の除去(処理:洗剤を含む温アルカリ水)
上記で製造した印刷インク層が形成された実施例1及び2のポリプロピレン不織布並びに比較として、シルクスクリーン印刷用インク(白)を用いて製造したポリプロピレン不織布を用い、洗剤としてジョイ(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製の液体食器洗浄用洗剤:界面活性剤(42% アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、安定化剤、粘度調整剤、酵素等を含む。)を添加した温アルカリ水(pH11:温度36ないし60℃)400mLに浸漬して印刷インク層がどの程度除去されたかを目視にて評価した。
結果を表1に示す。
尚、表1中、洗剤添加量は、温アルカリ水100質量部に対する洗剤の質量部数を示す。
【表1】

表1から明らかなように、実施例1及び2の印刷物は、上記条件において、処理時間30分で印刷インク層を十分に除去し得ることが判った。
一方、シルクスクリーン印刷用インクを用いて製造した比較の印刷物は、上記条件では、印刷インク層を十分に除去できないことが判った。
上記実施例1及び2の印刷物から印刷インク層を除去した後、残った廃水に、エコマックス TW−20D(アイサン工業株式会社製:無機系凝集剤)を2.8g添加し、生成した凝集物を濾過分離し、pH調整(中和)するだけで、排水溝へ排水することが可能な位まで浄化された。
尚、濾別した固形物は、天日乾燥等でドライアップした後、産業廃棄物として処理することができる。
【0029】
2)印刷インク層の除去(処理:超音波照射条件下温アルカリ水)
上記で製造した印刷インク層が形成された実施例1及び2のポリプロピレン不織布を、温アルカリ水(pH11:温度40℃)400mLに浸漬して超音波振動を加え、印刷インク層がどの程度除去されたかを目視にて評価した。
結果を表2に示す。
【表2】

表2から明らかなように、実施例1及び2の印刷物は、上記条件において、処理時間30分で印刷インク層を十分に除去し得ることが判った。
上記実施例1及び2の印刷物から印刷インク層を除去した後、残った廃水に、エコマックス TW−20D(アイサン工業株式会社製:無機系凝集剤)を2.8g添加し、生成した凝集物を濾過分離し、pH調整(中和)するだけで、排水溝へ排水することが可能な位まで浄化された。
尚、濾別した固形物は、天日乾燥等でドライアップした後、産業廃棄物として処理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の印刷方法を使用することにより、印刷がなされた紙、織布及び不織布のような再生可能な基材から印刷インクを簡易な操作で取り除くことができ、それにより、前記基材を新たな基材に再生、再利用することが容易となるため、本発明の印刷方法は、環境保全・資源節約の点において非常に有用な方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除去容易な印刷インク層を形成する印刷方法であって、
基材上に、ポリビニルアルコールを添加した水性フレキソインキをシルクスクリーン印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷して印刷インク層を形成することからなる方法。
【請求項2】
基材上に、ポリビニルアルコールを添加した水性フレキソインキをシルクスクリーン印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷することにより形成された印刷インク層を、洗剤を含む温アルカリ水で処理するか又は超音波照射条件下温アルカリ水で処理することからなる、印刷インク層を除去する方法。

【公開番号】特開2012−201747(P2012−201747A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66155(P2011−66155)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(598110219)株式会社アクシス (24)
【Fターム(参考)】