説明

除塵装置、及び、沈砂及び篩渣の除去方法

【課題】装置の維持管理を容易にすると共に、作業停止中に大量の砂礫分が本除塵装置の下部に堆積した場合でも、作業再開を容易に行うことが可能な除塵装置を提供する。
【解決手段】流水中から篩渣を除去するためのスクリーンと、該スクリーンの幅方向両側部に設けられ、チェーンを構成するリンクが一方向にのみ所定の角度まで回動可能に連結された一対の無終端チェーンと、前記一対の無終端チェーンに接続され、前記一対の無終端チェーンの回転に伴って、前記スクリーン下部の水路底部に堆積した沈砂及び前記スクリーンに捕捉された篩渣を掻き揚げる掻き板と、前記無終端チェーン上部の水面上に設けられ、前記無終端チェーンを駆動するための駆動スプロケットと、前記無終端チェーン下降側のチェーン内側の一部を支持する支持手段と、該支持手段の位置を変位させて、前記無終端チェーン最下端の高さ位置を調節可能とする位置調節手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場等に流入する流水中の篩渣を除去すると共に、水路内に堆積する沈砂類を除去する除塵装置、及び、沈砂及び篩渣の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場等においては、流入原水中のプラスチック、髪の毛、木の葉、木片、スカム等のごみを予め除塵装置で除去したうえで処理工程に送っている。前記除塵装置により除去された分離物は篩渣と呼ばれている。
【0003】
前記流入原水中の篩渣を除去する除塵装置は、通常下水処理場等に原水を引き込む水路内に設けられる。水路底部、特に除塵装置のスクリーン下部近傍の水路底部には、流入原水によって運ばれてきた砂礫類が堆積し、除塵装置による篩渣の除去機能を低下させる場合がある。そのため、定期的に水路底部に堆積した砂礫類(沈砂)の除去作業を行なう必要がある。
【0004】
これに対し、特開平4−126505号公報(特許文献1)には、流水中の篩渣と沈砂とを同時に掻き揚げて除去することができる装置として、「沈砂し渣掻揚機」についての記載がある。この特許文献1に記載の「沈砂し渣掻揚機」は、沈砂池内に設ける沈砂掻揚用バケットコンベアの各バケットにレーキを備えると共に、この沈砂池の上流側水路に配設するバースクリーンの下部に水平状のスクリーン水平部を連接し、池底に沿って運行されるバケット兼用レーキをこのスクリーン水平部よりバースクリーンへと移行させて、沈砂とし渣を同時に掻き揚げるものである。
【特許文献1】特開平4−126505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の「沈砂し渣掻揚機」には以下のような問題がある。
【0006】
(1)特許文献1に記載の「沈砂し渣掻揚機」は、水中部に、エンドレスチェーンを案内するための従動スプロケットホイール、ガイドローラ、ガイドレール等の機械部分を必要とし、当該機械部分は沈砂等による磨耗が避けられない。そのため、この「沈砂し渣掻揚機」、特に、前記従動スプロケットホイール、ガイドローラ、ガイドレール等の機械部分は日常点検が不可欠となるにもかかわらず、これらの個所が常時水中に没しているため、目視点検ができず、維持管理上大きな問題となっている。
【0007】
(2)また、水中の機械部分を点検、修理するためには、沈砂池内の下水を抜いて、沈砂池を空にしてからでないと実施できないため、作業が非常に長時間且つ煩雑で、作業工数及び費用が嵩む。
【0008】
(3)特許文献1に記載の「沈砂し渣掻揚機」は、塵芥類を捕捉する目的で沈砂池の流入側にバースクリーンを設け、このバースクリーンをレーキまたはバケット兼用レーキで掻き揚げるようにしている。しかし、前記レーキまたはバケット兼用レーキは、沈砂池の流出(下流)側から流入(上流)側に向かって沈砂を掻き寄せ、次いでこれを掻き揚げるようにしているので、前記バースクリーンの下部は、これらが通過できるだけのクリアランスを設ける必要が生じる。また、前記バースクリーンの下部は、当該部位から塵芥類が沈砂池内に入り込まないようにするために、前記バースクリーンの下端を沈砂池底面と平行に流出側に向かって少なくともバケットやレーキ、またはバケット兼用レーキの取付け間隔よりも延長する必要がある。このような構造のため、当該装置の運転停止中に、集中豪雨や台風等で大量の砂礫分を含む下水が流入して来た場合には、前記沈砂池底面と平行に流出側に延長したスクリーンと池底面との間にあるバケットやレーキ、またはバケット兼用レーキは、前記スクリーンと池底に挟まれた状態で沈砂に埋没してしまうこととなり、文字通り逃げ場を失った状態となって運転不能に陥るという重大な問題がある。一旦このような事態になれば、自動での復旧は到底不可能であり、沈砂池を空にした上で、沈砂に埋もれたバケットやレーキ、またはバケット兼用レーキを手作業で掘り出さなければならず、非常な労力と費用が発生する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、装置の点検、修理が池上から容易に行うことができ、装置の維持管理を容易にすると共に、沈砂及び篩渣の掻き揚げ作業停止中に集中豪雨や台風等で大量の砂礫分を含む下水が流入し、この砂礫分が本除塵装置の下部に堆積した場合でも、作業再開を容易に行うことが可能な除塵装置、及び、沈砂及び篩渣の除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は次の発明により解決される。
[1]流水中から篩渣を除去するためのスクリーンと、
該スクリーンの幅方向両側部に設けられ、チェーンを構成するリンクが一方向にのみ所定の角度まで回動可能に連結された一対の無終端チェーンと、
前記一対の無終端チェーンに接続され、前記一対の無終端チェーンの回転に伴って、前記スクリーン下部の水路底部に堆積した沈砂及び前記スクリーンに捕捉された篩渣を掻き揚げる掻き板と、
前記無終端チェーン上部の水面上に設けられ、前記無終端チェーンを駆動するための駆動スプロケットと、
前記無終端チェーン下降側のチェーン内側の一部を支持する支持手段と、
該支持手段の位置を変位させて、前記無終端チェーン最下端の高さ位置を調節可能とする位置調節手段と
を備えたことを特徴とする除塵装置。
[2]上記[1]において、支持手段が、駆動スプロケットの駆動軸を支点として回動可能に構成され、
位置調節手段が、前記支持手段の位置を、前記支点を中心に回動させて変位させることを特徴とする除塵装置。
[3]上記[1]又は[2]に記載の除塵装置を用いた水路内の沈砂及び篩渣の除去方法であって、
沈砂及び篩渣の掻き揚げ作業停止時に、無終端チェーン下降側のチェーン内側の一部を支持する支持手段の位置を作業位置から変位させ、無終端チェーン最下端の位置を水路底面から所定の高さ位置に引き上げておき、
停止後の作業開始時に、前記支持手段の位置を、前記作業位置に戻すことを特徴とする水路内の沈砂及び篩渣の除去方法。
[4]上記[3]において、停止後における作業開始後は、支持手段の位置が作業位置に戻るまで、無終端チェーン最下端の高さ位置が水路底部に堆積した沈砂の堆積高さと略同一になるように支持手段の位置を調節しながら作業を行うことを特徴とする水路内の沈砂及び篩渣の除去方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置の点検、修理が池上から容易に行うことができ、装置の維持管理を容易にすると共に、沈砂及び篩渣の掻き揚げ作業停止中に集中豪雨や台風等で大量の砂礫分を含む下水が流入し、この砂礫分が本除塵装置の下部に堆積した場合でも、作業再開を容易に行うことが可能な除塵装置、及び、沈砂及び篩渣の除去方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明に係る除塵装置の一実施形態を示す概略構成図である。図1は水路の横方向から見た概略構成図、図2は水路の正面から見た概略構成図である。なお、本発明装置の本質的部分でない構造物等は図示を省略している。
【0014】
図1及び図2に示すように、本発明にかかる除塵装置は、流水中から篩渣を除去するためのスクリーン1と、該スクリーン1の幅方向両側部に設けられ、チェーンを構成するリンクが一方向にのみ所定の角度まで回動可能に連結された一対の無終端チェーン2と、その両端部がそれぞれ前記一対の無終端チェーン2に接続され、前記一対の無終端チェーン2の回転に伴って、前記スクリーン1下部の水路底部に堆積した沈砂及び前記スクリーン1に捕捉された篩渣を掻き揚げる掻き板3と、前記無終端チェーン2上部の水面上に設けられ、前記無終端チェーン2を駆動するための駆動スプロケット4と、前記無終端チェーン2下降側のチェーン内側の一部を支持する支持手段5と、該支持手段5の位置を調節して前記無終端チェーン2の位置を変位させ、無終端チェーン2最下端の高さ位置を調節可能とする位置調節手段6とを備えたものである。
【0015】
ここで、前記スクリーン1としては、例えば、バースクリーン等を用いることができる。前記スクリーン1を、水路を遮るように設置することで、水路内を通る流水中の篩渣をスクリーン1で捕捉し、流水中から篩渣を除去することが可能となる。なお、前記スクリーン1の設置方法に特に制限はないが、図1に示すように、鉛直方向から水の流れ方向に若干の角度、例えば、75°程度の角度をもたせて傾斜させることが好ましい。
【0016】
前記無終端チェーン2は、前記スクリーン1の幅方向両側部に、2本を一対として、それぞれスクリーン1側端部に沿って上下方向に設けられる。前記無終端チェーン2の軌道は、前記スクリーン1に直交する面内で回転するように、図示しないレール等により保持されている。
【0017】
前記チェーン2を構成するリンクは、それぞれの連結部において、一方向にのみ所定の角度まで回動可能なように構成されている。これは、例えば、外リンクと内リンクの2種類のリンクを交互に連結して構成するチェーンにおいて、外リンクの内縁と外縁には側方に張り出した係止部を設け、内リンクの長手方向の両端には両リンクが所定角度内向きに屈折したときに前記の外縁の係止部に係合し、両リンクが直線状になったときに、前記内縁の係止部に係合する形状の突接部を設けることで達成することができる。
【0018】
前記無終端チェーン2の動きを、図3を用いてより詳しく説明する。無終端チェーン2の内リンク21の長手方向の両端には、全体が側面からみて長い台形を形成するように突接部22が設けられ、この内リンク21に連結される外リンク23には、前記突接部22に係合する係止部24がその内縁と外縁とから側方に張り出すように設けられている。そして、内リンク21と外リンク23は、図3に示すように、前記突接部22と係止部24との相互作用により0度と所定角度(α度)との間において、内向きにだけ屈折できるようになっている。すなわち、両リンクが直線状になつたときには内リンク21の突接部22の台形の下辺部が外リンク23の内縁の係止部24に当接し、両リンクがα度、内向きに屈折したときには突設部22の台形の斜辺部が外縁の係止部24に当接するように形成されている。
【0019】
なお、前記無終端チェーン2の構造は、上記構造に限られるものではなく、チェーン2を構成するリンクが、それぞれの連結部において、一方向にのみ所定の角度まで回動可能なように構成されているものであれば本発明に適用できる。
【0020】
前記掻き板3は、その両端部がそれぞれ前記一対の無終端チェーン2に接続され、前記一対の無終端チェーン2の回転に伴って、前記スクリーン1下部の水路底部に堆積した沈砂及び前記スクリーン1に捕捉された篩渣を掻き揚げる。前記掻き板3は、板状の部材の横側面が無終端チェーン2の進行方向に対し略直交する向きに、且つ、外側に向かって突出するように、その両端部が無終端チェーン2を構成するリンクに接続される。なお、前記掻き板3の外端縁には、篩渣及び沈砂の掻き揚げを効率的に行うために、爪部を設けることが好ましい。
【0021】
前記掻き板3は、無終端チェーン2に所定の間隔で取り付けられるが、その取り付け数及び取り付け間隔は、操業状況、設置場所等を考慮して適宜変更され得る。
【0022】
また、前記掻き板3は、例えば、バケットとレーキ、又は、バケット兼用のレーキにより構成することもできる。
【0023】
前記駆動スプロケット4は、減速機モータ等により回転され、前記一対の無終端チェーン2を駆動する。ここで、前記駆動スプロケット4は、無終端チェーン2上部の水面上に設けられる。前記駆動スプロケット4を水面上に設けることで、沈砂等による磨耗を防止でき、また、駆動部の点検、修理が池上から容易に行うことができるので、装置の維持管理が容易となる。
【0024】
なお、図1及び図2では、前記駆動スプロケット4を、1つの無終端チェーンに対してその上部に1組だけ設ける場合を示しているが、スプロケットの数は1組に限定されるものではなく、左右一対の無終端チェーンに対して2組以上設け、その内の少なくとも1組を駆動スプロケット、他を従動スプロケット又はガイドローラとするようにしてもよい。2組以上設ける場合でも、それぞれのスプロケットは水面上に設けるのが維持管理上望ましい。
【0025】
前記支持手段5は、前記無終端チェーン2下降側のチェーン内側の一部を支持するものである。ここで、前記支持手段5としては、例えば、図1に示すような、下降側のチェーン内側の一部を支持するガイドレール5等を用いることができる。なお、前記支持手段5としては、図1に示すようなガイドレールの他にも、例えば、図1中に点線で示すような下降側のチェーン内側の一部を支持するアーム形状の支持部材5aを用いることもできる。さらに、前記支持手段5としては、図1に示すようなガイドレールのかわりに、滑車を用いたガイドローラ(図示せず)を用いることもできる。
【0026】
また、前記支持手段5には、この支持手段5の位置を変位させて、前記無終端チェーン2の軌道を変位させ、無終端チェーン2最下端の高さ位置を調節可能とする位置調節手段6が取り付けられている。
【0027】
前記位置調節手段6としては、例えば、電動シリンダー、液圧シリンダー、空圧シリンダー、電動ボールねじ、ワイヤロープと巻取ドラム、ワイヤロープとシリンダー、ラックとピニオン、伝動ローラーチェーンとスプロケット、リンク機構のいずれか、またはこれらを組み合わせた装置を用いることができ、これらを前記支持手段5に取り付けることによって位置を変位させることが可能となる。
【0028】
ここで、前記支持手段5として、図1に示すような、下降側のチェーン内側の一部を支持するガイドレール5を用いる場合には、前記ガイドレール5は、前記駆動スプロケット4の駆動軸を支点として回動可能に構成することが好ましい。さらに、このような構成において、前記位置調節手段6が、前記ガイドレール5の位置を、前記支点である駆動スプロケット4の駆動軸を中心に回動させて変位させるように取り付けられる。
【0029】
このような構成とすることで、前記駆動スプロケット4から送り出される無終端チェーン2がスムーズに前記ガイドレール5に案内され、チェーン外れ等のトラブルを未然に防止することが可能となる。
【0030】
また、前記支持手段5として、図1に点線で示すような、アーム形状の支持部材5aを用いる場合は、前記支持部材5aを、位置調節手段6として、例えば、電動シリンダー、液圧シリンダー、空圧シリンダー、電動ボールねじ、ワイヤロープと巻取ドラム、ワイヤロープとシリンダー、ラックとピニオン、伝動ローラーチェーンとスプロケット、リンク機構のいずれか、またはこれらを組み合わせた駆動装置6aにより変位可能に構成することで用いることができる。
【0031】
以上のような装置構成において、駆動スプロケット4を、駆動させることにより、一対の無終端チェーン2は、それぞれが連動して略長円状に回転する。図1においては、駆動スプロケット4を紙面に向かって反時計回りに駆動させることにより、無終端チェーン2は、前記支持手段5上を下降し、水路底面近くで屈曲され、前記スクリーン1に沿って上昇し、前記駆動スプロケット4に戻る、ことを繰り返して回転する。このとき、前記無終端チェーン2に取り付けられた掻き板3は、前記スクリーン1下部の水路底部に堆積した沈砂及び前記スクリーン1に捕捉された篩渣を掻き揚げながら上昇する。
【0032】
前記水路底面近くに位置する無終端チェーン2の屈曲部では、図3に示すように、内リンク21の突接部22の台形斜辺部が外リンク23の外縁の係止部24に係合して、α度だけ屈折し、後続するリンクも順次同様にして屈折することで、水中にスプロケット等を設けなくとも、全体として直径dの円弧を描きながら円滑に屈曲し回転していく。
【0033】
このように、本発明においては無終端チェーン2を除き、水中部に機械部分が無いため、日常点検や修理等の作業を池上から容易に行うことが可能となる。
【0034】
水路底面近くで屈曲された無終端チェーン2は、前記スクリーン1に沿って上昇するが、ここでは、図示しない支持部材であるレール等に案内され、掻き板3が前記スクリーン1に摺接する如く所定の間隔をあけて上昇していく。
【0035】
ここで、前記掻き板3によって掻き揚げられた沈砂及び篩渣は、前記駆動スプロケット4で反転される際に、例えば、前記駆動スプロケット4の下方に設けられた流水トラフ10内に落下し、搬送される。このような搬送手段として、流水トラフは、沈砂及び篩渣を飛散させることなく搬送することが可能であるので、衛生的に沈砂及び篩渣を移送するのに優れている。しかし、前記搬送手段は、前記流水トラフに限定されるものではなく、スクリューコンベア、フライトコンベア等であっても構わない。
【0036】
定常状態における作業においては、前記水路底面近くに位置する無終端チェーン2の屈曲部の位置は、掻き板3が水路底面から所定のクリアランスが確保されるように、前記位置調節手段6により前記支持手段5の位置を調節することにより調整される。
【0037】
このような定常状態における前記支持手段5の位置を作業位置と呼ぶ。
【0038】
本発明にかかる水路内の沈砂及び篩渣の除去方法は、沈砂及び篩渣の掻き揚げ作業停止時に、前記無終端チェーン2下降側のチェーン内側の一部を支持する支持手段5の位置を、前記作業位置から変位させ、前記無終端チェーン2最下端の位置を水路底面から所定の高さ位置に引き上げておき、停止後の作業開始時に、前記支持手段5の位置を、前記作業位置に戻すものである。
【0039】
前記沈砂及び篩渣の掻き揚げ作業停止時とは、一般的には、一日の作業終了時であるが、それ以外でも、長時間、例えば数時間以上にわたり作業が停止するような場合も該当する。
【0040】
前記水路底面から所定の高さ位置とは、前記作業停止中に、前記スクリーン1下部の水路底部に堆積する沈砂の堆積高さ以上の高さ位置をいい、操業実績等により決定される。なお、集中豪雨や台風等で大量の砂礫分を含む下水が流入してくることが予想される場合には、前記所定の高さ位置は、集中豪雨や台風等の影響を考慮して、高くする方向に修正される。
【0041】
これにより、停止後の作業開始時、特に、作業停止中に集中豪雨や台風等で大量の砂礫分を含む下水が流入して来た場合にも、作業再開を容易に行うことが可能となる。
【0042】
停止後の作業開始時に、前記支持手段5の位置を、前記作業位置に戻す。ここで、スクリーン1下部の水路底部に沈砂が堆積している場合、前記無終端チェーン2は、堆積している沈砂と接触した位置で屈曲する。この状態で、前記駆動スプロケット4を回転させて無終端チェーン2を駆動させることにより、水路底部に堆積した沈砂が徐々に除去されていき、やがて定常状態での位置に無終端チェーン2の屈曲部が戻ることとなる。
【0043】
ここで、停止後における作業開始後は、前記支持手段5の位置が前記作業位置に戻るまで、無終端チェーン2最下端の高さ位置が水路底部に堆積した沈砂の堆積高さと略同一になるように支持手段5の位置を調節しながら作業を行うことが好ましい。つまり、停止後の作業開始時に、無終端チェーン2の最下端の位置が水路底部に堆積した沈砂に接するように前記支持手段5の位置を調節し、その後、前記無終端チェーン2を駆動させ、前記支持手段5の位置を水路底部に堆積した沈砂の高さに合わせて徐々に下げてゆき、支持手段5の位置が作業位置に戻るまで上記位置調節を行うものである。なお、前記水路底部に堆積した沈砂の堆積高さを測定する方法としては、例えば、汚泥界面計のような検知手段を用いてもよい。
【0044】
このように、無終端チェーン2最下端の高さ位置を水路底部に堆積した沈砂の堆積高さと略同一になるように調節することで、前記無終端チェーン2の重さが沈砂との接触部分にかかることがない。これにより、水路底部に堆積した沈砂を上から順に、過負荷なく掻き取って行くことが可能となるので、より効率的に沈砂及び篩渣の除去が可能となる。
【0045】
図4は、本発明に係る除塵装置の他の実施形態を示す概略構成図であり、水路の横方向から見た概略構成図である。なお、図1及び図2同様に、本発明装置の本質的部分でない構造物等は図示を省略している。
【0046】
図4に示した例は、図1の装置構成において、無終端チェーン2上部の水面上に、駆動スプロケット4の他に、従動スプロケット7を別途設けたものである。ここで、他の構成部分については、図1及び図2と同様であるので、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図4に示す装置を用いた水路内の沈砂及び篩渣の除去方法も図1及び図2の場合と同様である。ここで、前記従動スプロケット7は、動力源を持たずに、チェーン2の動きに従って回転するものである。
【0047】
図4においては、駆動スプロケット4の無終端チェーン2入り側、つまり、無終端チェーン2の回転方向上流側に従動スプロケット7を設けている。図4に示すように、駆動スプロケット4のチェーン2の回転方向上流側に従動スプロケット7を設ける構成とすることで、前記従動スプロケット7入り側のチェーン2には、常に張力がかかる状態となり、チェーン2の外れを防止する効果がより大きくなる。これは、チェーン2と従動スプロケット7との噛み合いがより確実に行われるからである。ただし、駆動スプロケット4に対し、常に無終端チェーン2の回転方向上流側に従動スプロケット7を設けなければならないわけではなく、装置構成や個々の部材の配置により適宜変更され得るものである。
【0048】
なお、図4に示す構成とすることで、例えば、流水トラフ10の設置可能スペースを、図1の場合と比較して広く確保することが可能となり、より効率的な位置に流水トラフ10を設置することが可能となる。また、前記従動スプロケット7を設けることにより、図1の場合と比較して、支持手段5としてのガイドレール5の設置角度をより垂直にすることができる。これにより、位置調節手段6によるガイドレール5の位置の変位を、より少ない力で行うことが可能となり、前記位置調節手段6の負荷を小さくでき、装置の小型化による設置費用及び運転費等の低減を図ることが可能となるメリットを有する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る除塵装置の一実施形態を示す概略構成図であり、水路の横方向から見た概略構成図である。
【図2】本発明に係る除塵装置の一実施形態を示す概略構成図であり、水路の正面から見た概略構成図である。
【図3】本発明に係る除塵装置を構成する無終端チェーンの屈曲部での動きを説明するための説明図である。
【図4】本発明に係る除塵装置の他の実施形態を示す概略構成図であり、水路の横方向から見た概略構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1 スクリーン
2 無終端チェーン
21 内リンク
22 突設部
23 外リンク
24 係止部
3 掻き板
4 駆動スプロケット
5 支持手段(ガイドレール)
6 位置調節手段
7 従動スプロケット
10 流水トラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水中から篩渣を除去するためのスクリーンと、
該スクリーンの幅方向両側部に設けられ、チェーンを構成するリンクが一方向にのみ所定の角度まで回動可能に連結された一対の無終端チェーンと、
前記一対の無終端チェーンに接続され、前記一対の無終端チェーンの回転に伴って、前記スクリーン下部の水路底部に堆積した沈砂及び前記スクリーンに捕捉された篩渣を掻き揚げる掻き板と、
前記無終端チェーン上部の水面上に設けられ、前記無終端チェーンを駆動するための駆動スプロケットと、
前記無終端チェーン下降側のチェーン内側の一部を支持する支持手段と、
該支持手段の位置を変位させて、前記無終端チェーン最下端の高さ位置を調節可能とする位置調節手段と
を備えたことを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
支持手段が、駆動スプロケットの駆動軸を支点として回動可能に構成され、
位置調節手段が、前記支持手段の位置を、前記支点を中心に回動させて変位させることを特徴とする請求項1に記載の除塵装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の除塵装置を用いた水路内の沈砂及び篩渣の除去方法であって、
沈砂及び篩渣の掻き揚げ作業停止時に、無終端チェーン下降側のチェーン内側の一部を支持する支持手段の位置を作業位置から変位させ、無終端チェーン最下端の位置を水路底面から所定の高さ位置に引き上げておき、
停止後の作業開始時に、前記支持手段の位置を、前記作業位置に戻すことを特徴とする水路内の沈砂及び篩渣の除去方法。
【請求項4】
停止後における作業開始後は、支持手段の位置が作業位置に戻るまで、無終端チェーン最下端の高さ位置が水路底部に堆積した沈砂の堆積高さと略同一になるように支持手段の位置を調節しながら作業を行うことを特徴とする請求項3に記載の水路内の沈砂及び篩渣の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−68703(P2006−68703A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258277(P2004−258277)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】