説明

除害装置

【課題】逆火現象や高温ガスの循環流の発生を防止でき、装置の稼動効率の向上を図るのに好適な除害装置を提供する。
【解決手段】除害装置1は、真空ポンプPから排気されるガスを処理対象ガスとして燃焼により除害する燃焼炉2と、真空ポンプPから排気されるガスを処理対象ガスとして燃焼炉2へ導く通常ライン配管3と、真空ポンプPから排気されるガスを燃焼炉2以外へ導くバイパスライン配管5と、通常ライン配管3とバイパスライン配管5とを選択的に切り換えるライン切り換えバルブ6と、を備え、更に、通常ライン配管3内に不活性ガスを供給することにより通常ライン配管3内にライン切り換えバルブ6から燃焼炉2へ向うガスの流れを形成する手段として、ガス供給手段8が設けられるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプから排気されるガスを燃焼により除害(無害化)する除害装置に関し、特に、燃焼炉からその上流の配管へ火炎や高温ガスが逆流する現象(以下「逆火現象」という)や高温ガスの循環流を防止し、装置の稼動効率の向上を図れるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の除害装置(以下「従来装置100」という)の説明図である。同図の従来装置100は、真空ポンプPから排気されるガスを処理対象ガスとして燃焼により除害する燃焼炉2と、真空ポンプPから排気されるガスを処理対象ガスとして燃焼炉2へ導く通常ライン配管3と、真空ポンプPから排気されるガスを燃焼炉2以外のガス処理部4へ導くバイパスライン配管5と、通常ライン配管3とバイパスライン配管5とを選択的に切り換えるライン切り換えバルブ6と、を備えている。
【0003】
そして、図4の従来装置100においては、装置の起動時など、燃焼炉2の炉内温度が除害可能な温度に到達していない状態の時や、真空ポンプPにおいて大流量のプロセスガスを排気する動作(初期排気)が行われる時に、ライン切り換えバルブ6の操作によって使用する配管をバイパスライン配管5に切り換えることで、真空ポンプPから排気されるガスをバイパスライン配管5で燃焼炉2以外のガス処理部4へ導くようにしている。初期排気時にバイパスライン配管5を使用するのは、排気ポンプPから排気される大流量のガスが通常ライン配管3を通じて燃焼炉2に導入されるとしたら、その大流量のガスによって燃焼炉2の火炎が吹き消されてしまうおそれがあるためである。なお、前記バイパスライン配管5を備えた除害装置については、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
また、図4の従来装置100においては、大流量のガスを燃焼により除害する際の燃焼効率の向上を図るために、通常ライン配管3の下流側が複数の分岐配管32として分岐した構造になっていて、それぞれの分岐配管32から燃焼炉2に処理対象ガス(真空ポンプPから排気されるガス)を供給する構成になっている。
【0005】
さらに、図4の従来装置100では、ライン切り換えバルブ6の操作により使用する配管がバイパスライン配管5から通常ライン配管3に切り換えられている場合において、例えば真空ポンプPから排気されるガスの流量が減少すること等により、燃焼炉2における燃焼速度(炎が伝達する速度)に比べて通常ライン配管3から燃焼室21に流れるガスの速度の方が遅くなる場合がある。このようにガスの速度が遅い場合、燃焼炉2と反対側へ燃え広がろうとする炎が生じやすくなる。このような場合に逆火現象が発生するため、図4の従来装置100では、通常ライン配管3の上流に温度センサ9を設けて、逆火現象を検知するようにしている。
【0006】
しかしながら、図4の従来装置100にあっては、通常ライン配管3を介して燃焼炉2に処理対象ガス(真空ポンプから排気されるガス)を供給して、燃焼による処理対象ガスの除害を行っている状態において、例えば初期排気のため、ライン切り換えバルブ6の操作によって使用する配管が通常ライン配管3からバイパスライン配管5に切り換えられる場合がある。この場合は、それまで通常ライン配管3を流れていた処理対象ガスの流れが突然消滅し、ライン切り換えバルブ6近傍において通常ライン配管3内が負圧になることによって、通常ライン配管3内で逆火現象が発生するという問題がある。
【0007】
前記のような通常ライン配管3内の逆火現象による火炎を温度センサ9が検知することにより、安全上、図4の従来装置100は非常停止を強いられ、装置の稼動効率が悪くなるという不具合もある。
【0008】
ところで、ライン切り換えバルブ6の操作によって使用する配管が通常ライン配管3に切り換えられている場合だけでなく、バイパスライン配管5に切り換えられている場合も、図4の従来装置100の燃焼炉2内は常に図示しないポンプによって排気されている。しかしながら、バイパスライン配管5への切り換えにより燃焼炉2内に処理対象ガスが殆ど無い状態では、前記のような図示しないポンプでの燃焼炉2内の排気によって通常ライン配管3から燃焼炉2に向うガスの流れを形成することは困難であり、前記図示しないポンプによる燃焼炉2内の排気だけで逆火現象の発生を有効に防止することはできない。
【0009】
また、図4の従来装置100のように通常ライン配管3の下流側を複数の分岐配管32として分岐した構造では、分岐配管32の位置などに起因する配管コンダクタンス(ガスの流れやすさ)の違いにより、燃焼炉2内の高温ガスがいずれか1つ又は複数の分岐配管32を逆流し、これら以外の別の分岐配管32を経由して燃焼炉2へ戻るといった意図しない高温ガスの循環流が発生し、分岐配管32が焼損するおそれもある。焼損した分岐配管32を交換する作業中は除害装置自体を停止しなければならず、装置の稼動効率が悪くなる。
【0010】
特に、図4の従来装置100では、分岐配管32ごとに、圧力計10を設置し、かつ、設置した圧力計10の保護のため、分岐配管32と圧力計10とを結ぶ圧力導入管11に少量の窒素ガスを導入しているが、このように導入される窒素ガスが前記逆火現象や高温ガスの循環流を生み出す要因のひとつになっていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−47269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは逆火現象や高温ガスの循環流の発生を防止でき、装置の稼動効率の向上を図るのに好適な除害装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、真空ポンプから排気されるガスを処理対象ガスとして燃焼により除害する燃焼炉と、前記真空ポンプから排気されるガスを前記処理対象ガスとして前記燃焼炉へ導く通常ライン配管と、前記真空ポンプから排気されるガスを前記燃焼炉以外へ導くバイパスライン配管と、前記通常ライン配管と前記バイパスライン配管とを選択的に切り換えるライン切り換えバルブと、を備えた除害装置において、前記通常ライン配管内に不活性ガスを供給することにより前記通常ライン配管内に前記ライン切り換えバルブから前記燃焼炉へ向うガスの流れを形成するガス供給手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
前記本発明において、前記ガス供給手段による前記不活性ガスの供給は、前記ライン切り換えバルブの操作によって使用する配管が前記通常ライン配管から前記バイパスライン配管に切り換えられた時より開始されるようにすることができる。
【0015】
また、前記本発明において、前記ガス供給手段による前記不活性ガスの供給は、前記ライン切り換えバルブの操作によって使用する配管が前記バイパスライン配管に切り換えられている状態で、前記燃焼炉の炉内温度が除害可能な温度に達する前より開始されるようにすることができる。
【0016】
前記本発明において、前記通常ライン配管から前記バイパスライン配管への切り換えは、前記切り換えバルブに対して出力されるバルブ切り換え信号に基づいて行われ、前記ガス供給手段による前記不活性ガスの供給は、前記バルブ切り換え信号に基づいて開始されるように構成してもよい。
【0017】
前記本発明において、前記不活性ガスの供給量は、少なくとも前記通常ライン配管内で前記ライン切り換えバルブから前記燃焼炉へ向う前記処理対象ガスの流量と同等量であるものとしてもよい。
【0018】
前記本発明において、前記不活性ガスは、窒素ガスとして説明しているが、窒素ガス以外の不活性ガスを採用してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明にあっては、除害装置の具体的な構成として、通常ライン配管内に不活性ガスを供給することにより通常ライン配管内にライン切り換えバルブから燃焼炉へ向うガスの流れを形成するガス供給手段を設けた。このため、例えば、ライン切り換えバルブの操作による通常ライン配管からバイパスライン配管への切り換え時に、通常ライン配管内にライン切り換えバルブから燃焼炉に向うガスの流れを強制的に形成でき、そのようなガスの流れによって前述の逆火現象や高温ガスの循環流の発生を防止することができる。したがって、逆火現象による除害装置の非常停止がなくなること、及び、高温ガスの循環流による配管の破損や破損した配管の交換のために除害装置を停止することがなくなり、除害装置の稼動効率の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態である除害装置(ライン切り換えバルブの操作によって使用する配管がバイパスライン配管に切り換えられている状態)の説明図。
【図2】図1の除害装置の起動から通常停止までの同装置の運転状態を示したタイムチャート図。
【図3】図1の除害装置1の起動からその後に非常停止が行われたときの同装置の運転状態を示したタイムチャート図。
【図4】従来の除害装置(ライン切り換えバルブの操作によって使用する配管がバイパスライン配管に切り換えられている状態)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、願書に添付した図面を参照しながら説明する。
【0022】
《除害装置の概要》
図1は、本発明の一実施形態である除害装置の説明図である。同図の除害装置1は、真空ポンプPから排気されるガスを燃焼によって除害する燃焼炉2と、真空ポンプPから排気されるガスを燃焼炉2へ導く通常ライン配管3と、真空ポンプPから排気されるガスを燃焼炉2以外へ導くバイパスライン配管5と、通常ライン配管3とバイパスライン配管5とを選択的に切り換えるライン切り換えバルブ6と、燃焼炉2及びライン切り換えバルブ6を含む機器類を統括制御する制御部(以下「除害装置制御部7」という)とを備えている。また、同図の除害装置1は、前記通常ライン配管3内へ不活性ガスを供給することにより前記通常ライン配管3内に前記ライン切り換えバルブ6から前記燃焼炉2へ向うガスの流れを形成する手段として、ガス供給手段8を設けている。本実施形態では、真空ポンプPから排気されるガスをバイパスライン配管5によりガス処理部4(例えば本除害装置1を設置する工場内の既設のガス処理施設など)へ導くようにしているが、ガス処理部4以外へ前記ガスを導くようにしてもよい。
【0023】
《燃焼炉2の詳細構成》
前記燃焼炉2は、燃焼室21と、その燃焼室21に連通する複数(図1の例では6つ)の燃焼通路22Aを備えた燃焼ヘッド22とを備えており、真空ポンプPから排気されるガスは、通常ライン配管3から燃焼ヘッド22の各燃焼通路22Aを経由して燃焼室21に流入するように構成してある。燃焼室21では燃焼によってガスを除害するが、このガスの除害は燃焼ヘッド22の各燃焼通路22Aでも行われる。
【0024】
《通常ライン配管3の詳細構成》
前記通常ライン配管3は、主配管31と、主配管31から分岐した複数(図1の例では6つ)の分岐配管32とからなるとともに、主配管31の上流端をライン切り換えバルブ6に連通接続し、それぞれの分岐配管32の下流端を燃焼炉2の燃焼ヘッド22に連通接続することにより、ライン切り換えバルブ6を介して、真空ポンプPから排気されるガスを燃焼炉2へ導くように構成してある。
【0025】
図1の除害装置1では、ライン切り換えバルブ6の下流で、かつ、通常ライン配管3の上流(具体的には主配管31の上流)に、熱電対などの温度センサ(以下「管内温度センサ9」という)を設置することで、通常ライン配管3内で生じ得る逆火を検知できるように構成してある。また、同図の除害装置1では、管内温度センサ9の上流から通常ライン配管3内に少量の不活性ガス(本例では窒素ガス)を供給することにより、管内温度センサ9を逆火から保護している。なお、この管内温度センサ9で検知した温度は温度検知信号として除害装置制御部7へ出力される。
【0026】
また、図1の除害装置1においては、通常ライン配管3を構成するそれぞれの分岐配管32に、圧力計10を設置することにより、通常ライン配管3の内部圧力を監視できるように構成してある。また、同図の除害装置1では、圧力計10の保護のため、分岐配管32から圧力計10へ計測対象圧力を導入する圧力導入管11に、少量の不活性ガス(本例では窒素ガス)を供給している。
【0027】
《バイパスライン配管5の詳細構成》
前記バイパスライン配管5は、その上流端をライン切り換えバルブ6に連通接続し、その下流端を燃焼炉2以外のガス処理部4に連通接続することにより、ライン切り換えバルブ6を介して、真空ポンプPから排気されるガスを前記ガス処理部4へ導くように構成してある。
【0028】
《ライン切り換えバルブ6の詳細構成》
前記ライン切り換えバルブ6は、例えば3方弁からなるとともに、除害装置制御部7から出力されるバルブ切り換え信号に基づいて作動し、使用する配管を通常ライン配管3からバイパスライン配管5に切り換えたり、バイパスライン配管5から通常ライン配管3に切り換えたりする手段として機能する。
【0029】
《ガス供給手段8の詳細構成》
前記ガス供給手段8は、ライン切り換えバルブ6より下流で、管内温度センサ9より上流の通常ライン配管3(図1の例では主配管31)に、不活性ガスのガス供給管81を接続するとともに、そのガス供給管81に設けてある開閉バルブ82の操作により、図示しない不活性ガス供給装置からガス供給管81を通じて通常ライン配管3内に不活性ガス(本例では窒素ガス)を供給したり、その供給を停止したりすることができるように構成してある。
【0030】
通常ライン配管3内でライン切り換えバルブ6から燃焼炉2へ向う処理対象ガス(排気ポンプから排気されるガス)の流れ(オンライン流)が存在するときは、オンライン流によって逆火現象は抑制される。しかしながら、ライン切り換えバルブ6の操作によって使用する配管が通常ライン配管3からバイパスライン配管5に切り換えられた時は、前記オンライン流が突然消滅し、ライン切り換えバルブ6近傍で通常ライン配管3内が負圧になり、それまで抑制されていた逆火現象が発生し易くなる。また、使用する配管がバイパスライン配管5に切り換えられている状態で、燃焼炉2の炉内温度が除害可能な温度に達した時も、前記オンライン流が存在しないことから、同様に逆火現象が発生し易くなると考えられる。
【0031】
そこで、図1の除害装置1では、ライン切り換えバルブ6の操作によって使用する配管が通常ライン配管3からバイパスライン配管5に切り換えられた時に、ガス供給手段8から通常ライン配管3内へ不活性ガスの供給を開始したり、ライン切り換えバルブ6の操作によって使用する配管がバイパスライン配管5に切り換えられている状態で、燃焼炉2の炉内温度が除害可能な温度に達する前より、ガス供給手段8から通常ライン配管3内へ不活性ガスの供給を開始したりすることで、前記オンライン流と同等な流れが通常ライン配管3内に形成されるようにして、逆火現象の発生を防止している。
【0032】
以上のことより、ガス供給手段8による不活性ガスの供給量は、少なくとも前記オンライン流(通常ライン配管3内でライン切り換えバルブ6から燃焼炉2へ向う処理対象ガスの流れ)の流量と同等量であることが望ましい。なお、バイパスライン配管5に流れるガスの流量がオンライン流の流量と略等しいなら、ガス供給手段8による不活性ガスの供給量は、少なくともバイパスライン配管5に流れるガスの流量と同等量としてもよい。
【0033】
ガス供給手段8による不活性ガスの供給量は、前記同等量より少なくしたり多くしたりすることも可能である。しかし、その供給量が前記同等量より少なくなると、その減少割合に応じて逆火現象の抑制効果が薄れ、逆火現象を防止することができない。この一方、かかる供給量が前記同等量より極端に多くなると、燃焼炉2の火炎を吹き消してしまうという不具合が生じる。
【0034】
《除害装置制御部7の詳細構成》
前記除害装置制御部7は、少なくとも下記(1)から(7)の機能を有する。
(1)図1の除害装置1を起動するスイッチ(以下「起動スイッチ」という)のONをトリガとして、図示しない燃料供給装置に対して燃料供給開始信号を出力することで、燃料供給装置から燃焼炉2へ燃料と空気の混合燃料ガスを供給させる機能。
(2)真空ポンプPの図示しないポンプ制御装置から出力される後述の初期排気信号や前述の温度検知信号を受信する機能。
(3)前記初期排気信号の受信をトリガとして、ライン切り換えバルブ6に対してバルブ切り換え信号を出力する機能。
(4)受信した前記温度検知信号より通常ライン配管3内の温度を監視し、通常ライン配管3内の温度が逆火現象時の温度かどうかを判定することで、通常ライン配管3内における逆火現象を検知する機能。
(5)逆火現象の検知をトリガとして、前記燃料供給装置に対して燃料供給停止信号を出力することにより、燃料供給装置から燃焼炉2への前記混合燃料ガスの供給を停止させる機能。
(6)ガス供給手段8の開閉バルブ82に対してバルブ開信号やバルブ閉信号を出力することにより、当該開閉バルブ82を操作し、ガス供給手段8から通常ライン配管3内への不活性ガスの供給を開始させたり停止させたりする機能。
(7)燃焼炉2に設けた図示しない温度センサ(以下「炉内温度センサ」という)から出力される温度検知信号を受信し、受信した温度検知信号に基づいて燃焼炉2内の温度を監視する機能。
【0035】
《除害装置1の動作説明》
次に、図1の除害装置の動作について図2、図3を基に説明する。
【0036】
図2は、図1の除害装置1の起動から通常停止までの同装置の運転状態を示したタイムチャート図である。このタイムチャート図を参照すると、図1の除害装置1では、時刻t0で起動スイッチをONにすることにより、図示しない燃料供給装置から燃焼炉2に対して燃料と空気の混合燃料ガスが供給され、時刻t0直後の着火により燃焼炉2において燃焼を開始する。そして、燃焼開始から所定時間を経過した時刻t1で燃焼炉2の炉内温度が除害可能温度を超え(着火完了)、同時刻t1より処理対象ガス(真空ポンプPから排気されるガス)の燃焼による除害が可能になる。
【0037】
着火による燃焼開始から燃焼炉の炉内温度が除害可能温度を超える(着火完了)までの間(時刻t0直後からt1)は、除害準備中のため、燃焼炉2において、真空ポンプPから排気されるガスを燃焼により除害することはできない。このため、図1の除害装置1では、その間(時刻t0直後からt1)、ライン切り換えバルブ6により使用する配管を通常ライン配管3からバイパスライン配管5へ切り換え、真空ポンプPから排気されるガスをバイパスライン配管5で燃焼炉2以外のガス処理部4へ送るようにしている。
【0038】
また、図1の除害装置1では、着火完了により除害可能になったら、その後の例えば時刻t2で、ライン切り換えバルブ6により使用する配管をバイパスライン配管5から通常ライン配管3に切り換え、真空ポンプPから排気されるガスを処理対象ガスとして通常ライン配管3で燃焼炉2へ送る。
【0039】
《逆火発生例 その1》
ところで、着火完了の時刻t1から通常ライン配管3に切り換る時刻t2までの間は、前述の通り、真空ポンプPから排気されるガスがバイパスライン配管5で燃焼炉2以外のガス処理部4に送られるので、通常ライン配管3内にライン切り換えバルブ6から燃焼炉2へ向う処理対象ガスの流れ(オンライン流)は生じない。このため、その間(時刻t1からt2)は逆火現象や高温ガスの循環流が発生し易くなる。
【0040】
そこで、図1の除害装置1においては、時刻t2でバイパスライン配管5から通常ライン配管3への切り換えが行われる前より(図2の例では時刻t0)、ガス供給手段8から通常ライン配管3内へ不活性ガスの供給を開始することで、前記オンライン流と同等な流れが通常ライン配管3内に生成されるようにして、逆火現象や高温ガスの循環流の発生を防止している。なお、図2の例では、通常ライン配管3への切換えが行われる前より不活性ガスの供給を開始する手段として、時刻t0での起動スイッチのONをトリガとして、除害装置制御部7からガス供給手段8の開閉バルブ82に対してバルブ開信号を出力するようにしているが、これとは別の方式で不活性ガスの供給を開始してもよい。
【0041】
前述のように着火完了の時刻t1から逆火現象や高温ガスの循環流が発生しやすくなるから、着火完了と同時刻t1から前記不活性ガスの供給を開始する方法も考えられる。しかし、不活性ガスの供給によって前記オンライン流と同等な流れを通常ライン配管3内に生成するには多少時間がかかるので、着火完了の時刻t1より少し早めに不活性ガスの供給を開始することが好ましいと考えられる。
【0042】
前記のように時刻t2で通常ライン配管3に切り換えられた後は、真空ポンプPから排気されるガスが通常ライン配管3を通って燃焼炉2へ移行し、通常ライン配管3内にライン切り換えバルブ6から燃焼炉2へ向う処理対象ガスの流れ(オンライン流)が形成され、オンライン流によって逆火現象や高温ガスの循環流の発生は防止される。そのため、図1の除害装置1では、通常ライン配管3への切り換えに連動して、時刻t2で、ガス供給手段8から通常ライン配管3内への不活性ガスの供給を停止している。なお、このような通常ライン配管3への切り換えと不活性ガスの供給停止との連動は、例えば、除害装置制御部7からライン切り換えバルブ6に対して出力されるバルブ切り換え信号と同時に、ガス供給手段8の開閉バルブ82に対してバルブ閉信号を出力する方式によって実現してもよい。
【0043】
《逆火発生例 その2》
次に、時刻t3では、真空ポンプPにおいて大流量のプロセスガスを排気する動作(初期排気)が開始され、この初期排気の開始と継続を知らせる初期排気信号が真空ポンプPの図示しないホンプ制御装置から除害装置制御部7に対して出力される。かかる初期排気信号を受信した除害装置制御部7は、初期排気信号の受信をトリガとして、ライン切り換えバルブ6に対してバルブ切り換え信号を出力する。これにより、図1の除害装置1においては、ライン切り換えバルブ6により使用する配管を通常ライン配管3からバイパスライン配管5へ切り換え、真空ポンプPから排気される大流量のプロセスガスをバイパスライン配管5で燃焼炉2以外のガス処理部4へ送る。
【0044】
ところで、初期排気の開始時刻t3からその終了時刻t4までの間は、前述の通り、真空ポンプPから排気されるガスがバイパスライン配管5で燃焼炉2以外のガス処理部4に送られることから、通常ライン配管3内においてライン切り換えバルブ6から燃焼炉2へ向う処理対象ガスの流れ(オンライン流)は消滅する。このため、その間(時刻t3からt4)は逆火現象や高温ガスの循環流が発生し易くなる。
【0045】
そこで、図1の除害装置1においては、時刻t3で通常ライン配管3からバイパスライン配管5への切り換えが行われる動作に連動して、使用する配管が通常ライン配管3からバイパスライン配管5に切り換えられた時よりガス供給手段8から通常ライン配管3内へ不活性ガスの供給を開始することで、前記オンライン流と同等な流れが通常ライン配管3内に生成されるようにして、逆火現象及び高温ガスの循環流の発生を防止している。なお、このようなバイパスライン配管5への切り換えと不活性ガスの供給開始との連動は、例えば、除害装置制御部7からライン切り換えバルブ6に対して出力されるバルブ切り換え信号と同時に、ガス供給手段8の開閉バルブ82に対してバルブ開信号を出力する方式によって実現してもよい。
【0046】
時刻t4で初期排気が終了した後は、真空ポンプPから排気されるガスが処理対象ガスとして通常ライン配管3を通って燃焼炉2へ移行し、通常ライン配管3内にライン切り換えバルブ6から燃焼炉2へ向う処理対象ガスの流れ(オンライン流)が形成され、このオンライン流によって逆火現象が防止される。
【0047】
そのため、図1の除害装置1においては、初期排気が終了した時点(時刻t4)での通常ライン配管3への切り換えに連動して、ガス供給手段8から通常ライン配管3内への不活性ガスの供給を停止している。なお、このような通常ライン配管3への切り換えと不活性ガスの供給停止との連動もまた、先に説明した方式によって実現してもよい。
【0048】
前記のように通常ライン配管3を通じて燃焼炉2へ送られた処理対象ガス(真空ポンプから排気されたガス)は、燃焼によって除害され、外部へ排気される。
【0049】
《逆火発生例 その3》
また、図1の除害装置1では、時刻t6で起動スイッチをOFFとすることにより、通常停止の処理動作として、(A)ライン切り換えバルブ6による通常ライン配管3からバイパスライン配管5への切り換え動作を行うとともに、(B)燃焼炉2への混合ガスの供給停止等といった消火動作と、(C)ガス供給手段8から通常ライン配管3内への不活性ガスの供給動作を開始する。
【0050】
前記(C)の不活性ガスの供給動作は、具体的には、起動スイッチのOFFをトリガにして、時刻t6より除害装置制御部7において図示しないタイマが作動し、同時刻t6よりガス供給手段8から通常ライン配管3内へ不活性ガスの供給を開始することにより、前記オンライン流と同等な流れを通常ライン配管3内に形成するものである。そして、前記タイマで測定した時間が所定時間(停止シーケンス)を経過したら、ガス供給手段8による不活性ガスの供給は停止される。
【0051】
起動スイッチのOFFにより行われる前記消火動作の開始直後は、燃焼炉2内に燃え残りの火炎や高温ガスが存在するため、バイパスライン配管5への切り換えによって逆火現象や高温ガスの循環流が発生する可能性が考えられる。しかし、図1の除害装置1においては、先に説明したように起動スイッチのOFFと同時に行われる消火動作の開始(時刻t6)から通常ライン配管3内へ不活性ガスの供給を行うことにより、通常ライン配管3内に前記オンライン流と同等な流れが生成されるようにしているので、燃え残りの火炎や高温ガスによる逆火現象及び高温ガスの循環流の発生を防止することができる。
【0052】
図3は、図1の除害装置1の起動からその後に非常停止が行われたときの同装置の運転状態を示したタイムチャート図である。なお、この図3のタイムチャート図において時刻t0からt4までの間に行われる同図の除害装置1の動作は、先に図2のタイムチャート図で説明した動作と同様であるため、その詳細説明は省略し、時刻t4以降に行われる除害装置の動作について説明する。
【0053】
時刻t5で、管内温度センサ9から出力される温度検知信号に基づいて除害装置制御部7が逆火現象を検出したら、図1の除害装置1においては、その逆火現象の検知をトリガにして、非常停止の処理動作、具体的には(A)ライン切り換えバルブ6による通常ライン配管3からバイパスライン配管5への切り換え動作を行うとともに、(B)前述の消火動作と(C)ガス供給手段8から通常ライン配管3内への不活性ガスの供給動作を開始する。
【0054】
その後、同図の除害装置1では、起動スイッチのOFFをトリガにして、時刻t6より除害装置制御部7において図示しないタイマが作動し、このタイマで測定した時間が所定時間(停止シーケンス)を経過したら、ガス供給手段8による不活性ガスの供給は停止する。
【0055】
なお、起動スイッチのOFFをトリガにして行われる不活性ガスの供給停止は、例えば前述の図示しない炉内温度センサで検出した燃焼炉2の炉内温度が逆火現象の生じない温度に達したら不活性ガスの供給を停止する方式を採用することもできる。
【0056】
以上説明した本実施形態の除害装置にあっては、その具体的な構成として、通常ライン配管3内に不活性ガスを供給することにより通常ライン配管3内にライン切り換えバルブ6から燃焼炉2へ向うガスの流れを形成する手段として、ガス供給手段8を設けた。このため、本除害装置1の起動時など、燃焼炉2の炉内温度が除害可能な温度に到達していない状態の時に、ライン切り換えバルブ6の操作によって使用する配管がバイパスライン配管5に切り換えられている場合や、前述の初期排気が行われる時に使用する配管がバイパスライン5に切り換えられた場合でも、ガス供給手段8から通常ライン配管3内への不活性ガスの供給により、通常ライン配管3内にライン切り換えバルブ6から燃焼炉2に向うガスの流れが強制的に形成され、そのようなガスの流れによって逆火現象や高温ガスの循環流の発生を防止することができる。したがって、逆火現象による除害装置1の非常停止がなくなること、及び、高温ガスの循環流による配管の焼損や焼損した配管の交換のために除害装置を停止することがなくなり、除害装置1の稼動効率の向上を図れる。
【符号の説明】
【0057】
1 除害装置
2 燃焼炉
21 燃焼室
22A 燃焼通路
22 燃焼ヘッド
3 通常ライン配管
31 主配管
32 分岐配管
4 ガス処理部
5 バイパスライン配管
6 ライン切り換えバルブ
7 制御部(除害装置制御部)
8 ガス供給手段
81 ガス供給管
82 開閉バルブ
9 温度センサ(管内温度センサ)
10 圧力計
11 圧力導入管
100 従来の除害装置(従来装置)
P 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプから排気されるガスを処理対象ガスとして燃焼により除害する燃焼炉と、
前記真空ポンプから排気されるガスを前記処理対象ガスとして前記燃焼炉へ導く通常ライン配管と、
前記真空ポンプから排気されるガスを前記燃焼炉以外へ導くバイパスライン配管と、
前記通常ライン配管と前記バイパスライン配管とを選択的に切り換えるライン切り換えバルブと、を備えた除害装置において、
前記通常ライン配管内に不活性ガスを供給することにより前記通常ライン配管内に前記ライン切り換えバルブから前記燃焼炉へ向うガスの流れを形成するガス供給手段を設けたこと
を特徴とする除害装置。
【請求項2】
前記ガス供給手段による前記不活性ガスの供給は、前記ライン切り換えバルブの操作によって使用する配管が前記通常ライン配管から前記バイパスライン配管に切り換えられた時より開始されること
を特徴とする請求項1に記載の除害装置。
【請求項3】
前記ガス供給手段による前記不活性ガスの供給は、前記ライン切り換えバルブの操作によって使用する配管が前記バイパスライン配管に切り換えられている状態で、前記燃焼炉の炉内温度が除害可能な温度に達する前より開始されること
を特徴とする請求項1に記載の除害装置。
【請求項4】
前記通常ライン配管から前記バイパスライン配管への切り換えは、前記ライン切り換えバルブに対して出力されるバルブ切り換え信号に基づいて行われ、
前記ガス供給手段による前記不活性ガスの供給は、前記バルブ切り換え信号に基づいて開始されること
を特徴とする請求項2に記載の除害装置。
【請求項5】
前記不活性ガスの供給量は、少なくとも前記通常ライン配管内で前記ライン切り換えバルブから前記燃焼炉へ向う前記処理対象ガスの流量と同等量であること
を特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の除害装置。
【請求項6】
前記不活性ガスは、窒素ガスであること
を特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の除害装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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