説明

除湿体及びこれを備えたデシカント除湿装置

【課題】再生効率、除湿性能の高い除湿体、および該除湿体を備えたデシカント除湿装置を提供する。
【解決手段】除湿材24と、金属、金属酸化物又は金属硫化物から形成され、粒子径が1〜500μmである熱伝導率が大きい微粒子44を、除湿剤と微粒子の混合比が10〜40重量%となるように混合し、バインダ46で保持して除湿体を形成するとともに、該バインダでデシカント除湿装置の除湿ロータの母材40に除湿体塗布層48を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被乾燥ガス、例えば空気に含まれた水分を吸湿する除湿体及びこれを備えたデシカント除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気中に含まれた水分を除去するために除湿材が広く利用されている。除湿材は、空気中の水分を吸着して除去するとともに、高温の空気にさらされると吸着している水分を放出して再生され、このような特性を利用して低湿度から高湿度まで広範囲の湿度領域において除湿および加湿を行う調湿機能が得られる。
【0003】
このような除湿材の調湿機能を利用したものとして例えばデシカント除湿装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。デシカント除湿装置は、除湿材を担持した円板状の除湿ロータを備え、この除湿ロータが駆動源によって吸着域及び再生域を通して回転される。除湿ロータは、その厚み方向に平行な通風孔が設けられたハニカム状構造、コルゲート状構造などの通風構造に構成され、この通風構造の表面、即ち通風孔の表面に除湿材が塗布されて担持される。
【0004】
このデシカント除湿装置においては、吸着域では、除湿ロータの通風孔内を通過する間に、除湿材により空気中の水分が吸着され、水分を放出した空気が所定の場所に供給され、これによって、この場所が除湿空気によって調湿される。一方、再生域では、空気が加熱された後に除湿ロータを通り、この加熱空気が除湿ロータの通風孔を通過する間に、除湿材に吸着された水分が奪い取られて除湿材が再生され、水分を奪い取った空気が、その使用場所に送給される。また、再生された除湿材は、除湿ロータの回転によって吸着域に移動し、このように除湿ロータが連続的に回転することによって、吸着域における水分吸着と再生域における水分脱離が交互に繰り返して遂行される。
【0005】
除湿材としては、一般的に、塩化リチウムなどの化学吸湿材や、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、吸湿性高分子などの物理吸湿材が広く用いられている。特に、シリカゲルや吸湿性高分子は水分吸湿量が多く、また安価に入手することができるために、デシカント除湿装置においても使用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−4255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この除湿材を含む除湿体は、例えば、パルプ繊維やガラス繊維などからなるシート状母材の表面に除湿材を塗布担持させて調製される。ところが、母材に除湿材を塗布担持させたものにおいては、水分の吸湿、放湿に寄与する部分は、主として被乾燥空気に接する塗布層(除湿材を含む層)の表面部であり、被乾燥空気に直接接しない部分、即ち母材の表面付近の部分(換言すると、塗布層の下部)に存在する除湿材は、吸湿、放湿にほとんど寄与しないという問題がある。
【0008】
このようなことから、除湿性能を向上させようと母材への除湿材の塗布担持量を増やした除湿体を調製することも考えられるが、このように調製したものにおいても、水分の吸湿、放湿に寄与する部分は、主として被乾燥空気に直接接している部分であり、それ故に、除湿材の塗布量を増やしても除湿性能の向上効果はほとんど見込めなかった。
【0009】
本発明の目的は、除湿材の再生を高め、その結果として除湿性能を向上させることができる除湿体を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、空気中の水分を充分に除湿することができるデシカント除湿装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載の除湿体は、水分を吸湿するための除湿材と、熱伝導率が大きい微粒子と、前記除湿体及び前記微粒子を保持するためのバインダとが混合されてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の除湿体では、前記微粒子が金属、金属酸化物又は金属硫化物から形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の除湿体では、前記微粒子の粒子径が1〜500μmであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の除湿体では、前記微粒子の混合比率が10〜40重量%であることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の請求項5に記載のデシカント除湿装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の除湿体を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の除湿体によれば、除湿体に熱伝導率の大きい微粒子が含まれているので、高温の空気にさらされて吸着している水分を放出して再生される際に、高温空気の熱が効率良く除湿体全体に伝わり、除湿材の再生が効率良く実施され、その結果、除湿体の吸湿/放湿性能を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の請求項2に記載の除湿体によれば、熱伝導率の大きい微粒子が金属、金属酸化物又は金属硫化物から形成されているので、除湿体に容易に混入することができるとともに、再生の際に高温空気の熱を効率良く除湿体全体に伝えることができ、除湿材の再生を効率良く実施することができる。
【0018】
また、本発明の請求項3に記載の除湿体によれば、熱伝導率の大きい微粒子(例えば、金属又は金属酸化物)の粒子径が1〜500μmであるので、母材に除湿材を塗布担持させる際に、除湿材の塗布担持状態が三次元的状態となって表面積を大きくすることができる。それ故に、乾燥すべきガス(例えば、空気)が塗布担持され除湿材により接し易くなり、その結果、除湿体全体の単位体積当たりの除湿能力が向上し、被乾燥ガスに含まれた水分をより効果的に除湿することができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載の除湿体によれば、微粒子の混合比率が10〜40重量%であるので、微粒子を三次元的に分散させて除湿材を三次元的に塗布担持させることができ、これによって、除湿体全体の単位体積当たりの除湿能力をより一層向上させることができる。
【0020】
更に、本発明の請求項5に記載のデシカント除湿装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の除湿体を備えているので、除湿装置の除湿能力を高めて空気中の水分をより多く除湿することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の従うデシカント除湿装置の一実施形態を示す簡略図。
【図2】図1のデシカント除湿装置の除湿ロータを示す斜視図。
【図3】図2の除湿ロータの一部を拡大して示す部分拡大断面図。
【図4】除湿性能実験に用いた風洞装置を簡略的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う除湿体及びこれを備えたデシカント除湿装置の一実施形態について説明する。
【0023】
図1において、図示のデシカント除湿装置は、装置ハウジング2を備え、この装置ハウジング2内が仕切り部材3により仕切られ、この仕切り部材3の片側(図1において下側)に吸入流路4が規定され、その他側(図1において上側)に排出流路6が規定されている。吸入流路4の導入側には第1導入ダクト8が配設され、その導出側には第1導出ダクト10が配設されている。また、排出流路6の導入側には第2導入側ダクト12が配設され、その導出側には第2導出ダクト14が配設されている。このようなデシカント除湿装置は建造物などに設置され、図1において左側が建造物の屋外16となり、図1において右側が建造物の内側(例えば、屋内空間18)となる。
【0024】
この装置ハウジング2内には、吸入流路4及び排出流路6にまたがって除湿ロータ20が配設され、除湿ロータ20は、水分を除湿するための除湿体を構成する。除湿ロータ20は円板状であり、その片側部が吸入流路4側に位置し、その他側部が排出流路6に位置する。吸入流路4には吸着域Kが設けられ、排出流路6には再生域Sが設けられ、除湿ロータ20は吸着域K及び再生域Sを通して回動される。この除湿ロータ20には、所定方向に回動するためのモータ(図示せず)が駆動連結され、このモータによって所定方向に回動される。
【0025】
図2を参照して、除湿ロータ20は、後に詳細に説明するが、ハニカム状構造の通風構造に構成され、多数の通風孔22が厚さ方向(即ち、図1において左右方向、図2において左下から右上の方向)に平行に延びており、多数の通風孔22を通して空気(即ち、被乾燥ガス)が流れる。この除湿ロータ20のハニカム状構造の表面、即ち多数の通風孔22を規定する表面には、後述するようにして除湿材24(図3参照)が担持されている。尚、除湿ロータ20の通風構造は、コルゲート状構造などの他の通風構造でもよい。
【0026】
再び図1に戻って、このデシカント除湿装置では、吸入流路4には吸入ファン26が設けられ、この吸入ファン26は、除湿ロータ20の下流側(換言すると、吸着域Kの下流側)に配設されている。また排出流路6には加熱手段28及び排気ファン30が設けられ、加熱手段28は、除湿ロータ20の上流側(換言すると、再生域Sの上流側)に配設され、排気ファン30は除湿ロータ20の下流側(換言すると、再生域Sの下流側)に配設されている。尚、加熱手段28は、例えば、温水との間で熱交換を行う熱交換器、電気で加熱する加熱ヒータなどから構成される。
【0027】
このデシカント除湿装置の動作を概説すると、次の通りである。除湿動作中は、モータ(図示せず)が作動して除湿ロータ20が所定方向に回動される。また、吸入ファン26が作動して外気の吸入が行われるとともに、排気ファン30が作動して室内の空気の排気が行われる。
【0028】
外部(建造物の屋外)からの空気(被乾燥ガス)は、矢印32で示すように、第1導入ダクト8を通じて吸入流路4に吸入され、かく吸入された空気は吸着域Kを通して流れる。吸着域Kにおいては、この空気は、除湿ロータ20の多数の通風孔22を通して流れ、これら通風孔22を通してながれる間に、空気に含まれた水分が除湿ロータ20に担持された除湿材24に吸着され、除湿された空気が、矢印34で示すように、第1導出ダクト10から除湿すべき空間(建造物の屋内空間18)に送給され、この除湿空気によって空間が湿度調整される。
【0029】
一方、屋内空間からの空気は、矢印36で示すように、第2導入ダクト12を通して排出流路6に吸入され、かく吸入された空気は、加熱手段28により加熱された後に再生域Sを通して流れる。再生域Sにおいては、この空気は、除湿ロータ20の多数の通風孔22を通して流れ、これら通風孔22を通してながれる間に、除湿ロータ20の除湿材24に吸着された水分を奪い取り、奪い取った水分を含む空気が、矢印38で示すように、第2導出ダクト14から外部(建造物の屋外)に排出され、このように水分を取ることによって除湿材24が再生される。
【0030】
除湿ロータ20は、吸湿域K及び再生域Sを通して回動され、吸湿域Kにおいて除湿材24による空気中の水分の吸着が行われ、再生域Sにおいて吸着した水分の除湿材24からの離脱が行われ、除湿材24の吸着、再生が繰り返し行われる。
【0031】
次に、図3を参照して、除湿ロータ20の具体的構成について説明する。除湿体として機能する除湿ロータ20は、除湿材24を担持するための母材40を備え、この母材40によりハニカム状構造が形成され、ハニカム状構造の母材40の表面に除湿材24を含む混合体42が塗布されている。この実施例では、混合体42は、除湿材24と、除湿材24を三次元的に担持させるための微粒子44と、これらを保持するためのバインダ46とを含んでいる。
【0032】
母材40には、例えば、パルプ繊維、ガラス繊維などから形成されたシート状部材が用いられ、このシート状部材の両面に混合体42が塗布されて塗布層48が設けられる。
【0033】
混合体42に含まれる除湿材24は、粒子径が0.1〜20μm程度であり、この除湿材としては、ゼオライト、シリカゲル、ポリアクリル系ポリマーなどが用いられる。ゼオライトとしては、A型、Y型、X型などの合成ゼオライト、又はモルデナイト、シャバサイト、ホウフッ石、エリオナイト、フェリエライトなどの天然ゼオライトから任意に選択することができる。また、ゼオライト中の陽イオンをマグネシウム、鉄、銅などのアルカリ土類や遷移金属、若しくはランタン、セリウム、プラセオジウムなどの希土類元素に置換したものなども有効である。シリカゲルとしては、A、B型などから任意に選択することができる。また、ポリアクリル系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウムなどから任意に選択することができる。
【0034】
また、熱伝導率の大きい微粒子としては、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、金、銀などの金属又はこれらの混合物を用いることができ、このような金属の他に、これら金属の酸化物又は硫化物なども用いることができる。この微粒子の形状は、球状、針状、繊維状などの適宜の形状のものを用いることができる。
【0035】
除湿材24に混入される微粒子44は、粒子径が1〜500μmと除湿材24よりも大きいものを用いることが望ましく、粒子径が100〜500μmのものを用いるのがより好ましい。微粒子44の粒子径が小さくなると、母材40に塗布した塗布層48が平面的となり、その粒子径が1μmより小さくなると微粒子44を混入した効果(塗布層48を三次元的にして表面積を増やす効果)がほとんど得られなくなり、またその粒子径が大きくなると、バインダ46による結合が弱くなり、その粒子径が500μmを超えると、微粒子44が母材40の表面から脱落、剥がれ易くなる。
【0036】
この微粒子44の混合比率は、混合体42全体を100重量%としたときに10〜40重量%とするのが好ましく、10重量%より少ないと、微粒子44の混入量が少なくなって塗布層48を三次元的状態にして表面積を大きく増やすことが難しく、また40重量%を超えると、除湿材24の混合比率が相対的に少なくなり、塗布層48の除湿能力(即ち、水分吸着能力)が低下する。
【0037】
更に、バインダとしては、コロイダルシリカ、水ガラス、コロイダルアルミナ、エポキシ系ポリマー、エーテル系ポリマー、ウレタン系ポリマーなどを任意に選んで用いることができる。
【0038】
このバインダ46の混合比率は、混合体42全体を100重量%としたときに5〜20重量%とするのが好ましく、5重量%より少ないと、バインダ46の混入量が少なくなって結合力が弱くなり、母材40に塗布した塗布層48から除湿材24及び/又は微粒子44が脱落、剥がれ易くなり、また20重量%を超えると、バインダ46の混入量が多くなって塗布した状態にてバインダ46が除湿材24を覆うようになり、塗布層48の除湿能力が低下する。
【0039】
このような除湿ロータ20を用いた場合、母材40の表面に塗布された塗布層48に熱伝導率の大きい微粒子(例えば、金属、金属酸化物、金属硫化物)が含まれているので、除湿材24の再生の際に高温空気の熱が効率良く除湿体全体に伝わり、これによって、除湿材の再生を効率良く行うことができ、その結果、除湿体の吸湿/放湿性能を向上させることができる。また、この微粒子44の粒子径が1〜500μmであるので、表面が三次元的状態となってその表面積を増大させることができ、これによって、除湿ロータ20の通風孔22を流れる空気と塗布層48中の除湿材24との接触が多くなり、その結果、除湿ロータ20の除湿性能をより向上させることができる。
【0040】
以上、本発明に従う除湿体及びこれを備えたデシカント除湿装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0041】
例えば、上述した実施形態では、除湿体としての除湿ロータ20に適用して説明したが、このようなものに限定されず、母材40自体を省略し、混合体42から除湿体を構成するようにしてもよく、このような場合、除湿体自体を、例えば直径が数mm程度である粒子状に形成するようにしてもよく、或いはハニカム状成形体、繊維状成形体などに形成するようにしてもよい。
【実施例】
【0042】
次に、本発明に従う除湿体の除湿効果を確認するために、次の通りの実験を行った。除湿体として、図2に示すようなハニカム状構造の除湿ロータ70を作成した。除湿ロータ70の直径は250mmで、その厚さは80mmであった。この除湿ロータ70を図4に示す風洞装置72にセットして除湿ロータ70の除湿能力を調べた。風洞装置72の風洞ハウジング74は矩形状であり、その内部に矩形状の空気流路76が規定され、この空気流路76内に除湿ロータ70をセットした。風洞ハウジング74の内側サイズ(換言すると、空気流路76の大きさ)は、縦サイズHが30cmで、横サイズWが30cmで、その長さLが200cmであった。この風洞ハウジング74内(即ち、空気流路76)には、温度、湿度及び流量が調節可能な空気発生機(図示せず)が接続され、温度、湿度及び流量が調整された空気が、矢印78で示すように、風洞ハウジング74の流入側から導入し、この空気流路76を通して流れてその流出側から矢印80で示すように導出させた。また、除湿ロータ70を通過する空気の通過前及び通過後の湿度及び温度を計測するために、除湿ロータ70の上流側に第1湿度温度計82(ヴァイサラ社製の湿度温度計、型番:HPM230)を設置し、また除湿ロータ70の下流側に第2湿度温度計84(第1湿度温度計82と同じもの)を設置した。
【0043】
実施例1及び2として、各原料(除湿材、微粒子及びバインダ)の混合比率が表1で示す通りの混合体を調製して母材に塗布して除湿ロータ70を製作し、各除湿ロータ70における混合体(換言すると、各実施例1及び2の除湿体)の除湿能力(即ち、除湿量)を計測した。実施例1及び2では、除湿材としてポリアクリル系ポリマーを使用し、熱伝導率の高い微粒子としてアルミニウムを用いた。この微粒子の平均粒径が200μmであった。また、バインダとしてはエポキシ系ポリマーを用いた。除湿ロータ70に塗布した除湿材と微粒子の合計重量は150gであった。
【0044】
【表1】

除湿能力の計測においては、風洞ハウジング74内に実施例1及び2の除湿ロータ70をセットし、計測の前段階として、70℃、5%RHの乾燥空気を風洞ハウジング74を通して15分間流して除湿ロータ70(即ち、それに塗布された除湿体)を乾燥させ、その後、除湿実験を行った。この除湿実験においては、30℃、70%RHの加湿空気を風洞ハウジング74を通して流し、除湿ロータ70を通過する前の空気の湿度を第1湿度温度計82でモニターするとともに、除湿ロータ70を通過した後の空気の湿度を第2湿度温度計84によりの湿度をモニターした。尚、風洞ハウジング74を通して送給した空気の流量は、150m/hであった。
【0045】
この除湿実験の結果は、表1に示す通りであった。この除湿実験では、風洞ハウジング74に送給する空気を乾燥空気から加湿空気に切り替えてから10秒経過後から60秒後経過するまでの50秒の間にわたって行い、除湿ロータ70を通過する前の湿度及び温度を第1湿度温度計82により1秒毎に計測し、また除湿ロータ70を通過した後の湿度及び温度を第2湿度温度計84により1秒毎に計測した。そして、第1及び第2湿度温度計82,84により計測した湿度及び温度を平均し、それぞれの平均湿度(絶対湿度)の差を除湿ロータ70が吸着した水分量(即ち、除湿量)とし、実施例1及び2の各々における除湿量を表1の右欄に示した。
【0046】
また、比較例1及び2として、各原料(除湿材及びバインダ)の混合比率が表1で示す通りの混合体を調製し、実施例1及び2と同様にして母材に塗布して除湿ロータ70を製作し、各除湿ロータ70における混合体の除湿能力(即ち、除湿量)を計測した。また、比較例3及び4として、実施例1及び2と同様の原料(除湿材及びバインダ)を用い、微粒子として平均粒径200μmのメラミン樹脂を用い、これらの混合比率が表1で示す通りの混合体を調製し、実施例1及び2と同様にして母材に塗布して除湿ロータ70を製作し、各除湿ロータ70における混合体の除湿能力(即ち、除湿量)を計測した。比較例1〜4においても、除湿ロータ70に塗布した除湿材と微粒子の合計重量を実施例1及び2と同様の150gとした。
【0047】
除湿能力の計測においては、実施例1及び2と同様にし、計測の前段階として、70℃、5%RHの乾燥空気を風洞ハウジング74を通して15分間流し、その後、30℃、70%RHの加湿空気を風洞ハウジング74を通して流し、除湿ロータ70を通過する前の空気の湿度を第1湿度温度計82でモニターするとともに、除湿ロータ70を通過した後の空気の湿度を第2湿度温度計84の温度及び湿度をモニターし、乾燥空気から加湿空気に切り替えてから10秒経過後から60秒後経過するまでの50秒の間にわたって1秒毎に計測した。そして、実施例1及び2と同様に、第1及び第2湿度温度計82,84により計測した湿度及び温度を平均し、それぞれの平均湿度(絶対湿度)の差を除湿ロータ70が吸着した水分量(即ち、除湿量)とし、比較例1〜4の各々における除湿量を表1の右欄に示した。
【0048】
除湿実験結果を示す表1から明らかなように、除湿材の混合比率が同じであっても熱伝導率の大きい微粒子(実施例1及び2では、アルミニウムの微粒子)が含まれている実施例1及び2の方が、微粒子を含まない比較例1及び2よりも除湿量が多く、また微粒子として有機物質(比較例3及び4では、メラミン樹脂)を含む比較例3及び4と比べても除湿量が多かった。このことは、熱伝導率の大きい微粒子を混合することで除湿能力が向上することが分かった。
【0049】
次いで、実施例3〜6として、実施例1及び2と同様の原料(除湿材、微粒子及びバインダ)を用い、これらの混合比率が表2で示す通りの混合体を調製し、実施例1及び2と同様にして母材に塗布して除湿ロータ70を製作した。
【0050】
【表2】

そして、実施例1〜6及び比較例1について、図4に示す風洞装置を用い、30℃、95%RHの空気を15分間流して除湿ロータ70を吸湿処理させた後に、70℃、5%RHの空気を1分間流して、除湿ロータ70の下流側面の温度を測定した。
【0051】
実施例1〜6及び比較例1における測定結果は、表2の右欄に示す通りであった。表2から明らかなように、熱伝導率の高い微粒子(実施例1〜6では、アルミニウム)を含む実施例1〜6における除湿ロータ70の温度は、この微粒子を含まない比較例1の温度よりも高く、また実施例1〜6の温度を見ると、この微粒子をより多く含むほど除湿ロータ70の温度が高くなっていることが分かった。このことは、熱伝導率の高い微粒子の混合比率が大きいほど乾燥空気の熱が効率良く除湿ロータ70全体に熱伝導されて温度上昇したと考えられ、これにより、熱伝導率の高い微粒子を混入することによって、除湿ロータ70の再生を効率的に行うことができることが確認できた。
【0052】
次に、除湿体に混合する微粒子の比率を検討するために、実施例3〜6についても、実施例1及び2と同様にして除湿能力の計測を行った。この除湿能力の計測においては、上述したように、計測の前段階として、70℃、5%RHの乾燥空気を風洞ハウジング74を通して15分間流し、その後、30℃、70%RHの加湿空気を風洞ハウジング74を通して流し、除湿ロータ70を通過する前の空気の湿度を第1湿度温度計82でモニターするとともに、除湿ロータ70を通過した後の空気の湿度を第2湿度温度計84の温度及び湿度をモニターし、第1及び第2湿度温度計82,84の計測湿度及び計測温度に基づいて除湿量を求めた。
【0053】
この除湿試験の結果は、表3に示す通りであった。尚、理解を容易にするために、実施例1及び2の実験結果を表3に転記して示している。この表3から明らかなように、微粒子の混合比率が10重量%より少ないと、微粒子を混入したことによる効果(吸湿性の向上効果)があまり得られず、また微粒子の混合比率が40%を超えると、除湿材の混合比率が相対的に少なくなって除湿性能が低下し、このことから、この微粒子の混合比率が10〜40重量%であるのが望ましいことが分かった。
【0054】
【表3】

【符号の説明】
【0055】
2 装置ハウジング
4 吸入流路
6 排出流路
20 除湿ロータ
24 除湿材
40 母材
42 混合体
44 微粒子
46 バインダ
48 塗布層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を吸湿するための除湿材と、熱伝導率が大きい微粒子と、前記除湿材及び前記微粒子を保持するためのバインダとが混合されてなることを特徴とする除湿体。
【請求項2】
前記微粒子が金属、金属酸化物又は金属硫化物から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の除湿体。
【請求項3】
前記微粒子の粒子径が1〜500μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の除湿体。
【請求項4】
前記微粒子の混合比率が10〜40重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の除湿体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の除湿体を備えたことを特徴とするデシカント除湿装置。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−183460(P2012−183460A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47051(P2011−47051)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】