説明

除湿機

【課題】真空成形または圧空成形により薄肉に形成した熱交換器を積層した状態で、安定した取付状態を得る。
【解決手段】除湿機本体10と、加熱ヒータ53と、真空成形や圧空成形により形成した薄肉な樹脂製の熱交換器67A,67Bと、再生空気循環ファン94と、室内空気循環ファン96とを備えた除湿機において、熱交換器67A,67Bを、除湿ロータ55と逆向きに2以上積層配置するとともに、除湿ロータ55と熱交換器67A,67Bとの間において、加熱ヒータ53と対応する位置にロータカバー59を配設し、ロータカバー59に、除湿ロータ55から最も離れた外側熱交換器67Bを除く中側熱交換器67Bに挿通して位置決め保持する第1保持部61と、外側熱交換器67Bの一面を貫通し他面に当接して位置決め保持する第2保持部62とを備え、これらに各熱交換器67A,67Bの流路への排気口64を形成した接続部60を設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除湿機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の除湿機は、除湿機本体内が除湿通路と再生通路とに区画され、これら通路に跨って円板状の除湿ロータが回転可能に配設されている。前記除湿通路には、室内の空気を吸込口から吸引し、吹出口から室内に循環供給するための室内空気循環ファンが配設されている。前記再生通路には、該再生通路内の再生空気を循環させる再生空気循環ファンと、前記再生空気および除湿ロータを加熱する加熱ヒータとが配設されている。また、除湿機本体内には、前記再生通路の一部を構成する熱交換器が配設されている。
【0003】
そして、前記除湿通路では、吸引した室内の空気(外気)が前記除湿ロータを通過することにより、空気に含まれた水分を吸着して除湿し、乾燥した空気として吹出口から室内に循環供給する構成としている。また、再生通路では、内部の再生空気が前記加熱ヒータで加熱され、この状態で前記除湿ロータを通過することにより、該除湿ロータが吸着した水分を放出する。そして、その再生空気が、熱交換器を通過する際に熱交換によって冷却されると、含有した水分が結露する。これにより、再生空気に含まれた水分が取り除かれ、結露した水がタンクに回収される。
【0004】
本発明の除湿機に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−333239号公報
【特許文献2】特開2004−271031号公報
【0006】
この特許文献1には、ブロー成形により一体成形した樹脂製の熱交換器を搭載した除湿機が記載されている。前記熱交換器は、略楕円形状をなす複数の流路が並設され、また、隣接する流路の間は開口した通孔をなすように構成されている。また、熱交換器には、流路の一端に流入口が形成されるとともに、他端に流出口が形成されている。さらに、熱交換器の下部には、ドレン部が形成されている。
【0007】
しかし、この特許文献1の熱交換器は、ブロー成形により製造しているため、その肉厚が厚く、熱交換率が悪いという問題がある。また、複雑な形状で形成することが困難であり、製造する製品の安定性(歩留まり)が悪いという問題がある。
【0008】
そこで、本出願人は、特許文献2で、熱交換率および製造に係る歩留まりを向上させることができる熱交換器を提供している。この特許文献2の熱交換器は、真空成形または圧空成形により、仕切用凹条を備えた対称な一対のパネルを形成し、これらパネルを溶着することにより、前記仕切用凹条を除く部分により再生通路を構成する流路を形成する。そして、溶着された仕切用凹条には除湿通路を流動する空気を通過させるための通孔を形成した構成としている。
【0009】
しかしながら、この特許文献2の熱交換器は、薄肉であるため熱交換率は向上できるが、複数個積層させた状態で取り付ける場合には、少しの押圧で変形し、安定した取付状態を得ることができない。その結果、再生通路を構成する内部の流路への接続部分の密閉性を確保できないという不都合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、真空成形または圧空成形により薄肉に形成した熱交換器を積層した状態で、安定した取付状態を得ることができる除湿機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、内部を除湿通路と再生通路とに区画した除湿機本体と、前記両通路に跨って回転可能に配設した除湿ロータと、前記再生通路内に配設し、前記再生空気および除湿ロータの一部を加熱する加熱ヒータと、前記除湿通路内に配設され、該除湿通路を流通する空気を通過させる通孔を備えるとともに、前記再生通路の一部を構成する流路を備え、該流路内を流動する再生空気が含有した水分を熱交換によって取り除く、真空成形や圧空成形により形成した薄肉な樹脂製の熱交換器と、前記再生通路内に配設し、前記加熱ヒータ、除湿ロータおよび熱交換器の積層順番で再生空気を循環させる再生空気循環ファンと、前記除湿通路内に配設し、室内の空気を吸引して前記除湿ロータによって除湿した空気を室内に循環供給する室内空気循環ファンとを備えた除湿機において、前記熱交換器を、前記除湿ロータと逆向きに2以上積層配置するとともに、前記除湿ロータと熱交換器との間において、前記加熱ヒータと対応する位置にロータカバーを配設し、前記ロータカバーに、前記除湿ロータから最も離れた外側熱交換器を除く中側熱交換器に挿通して位置決め保持する第1保持部と、前記外側熱交換器の一面を貫通し他面に当接して位置決め保持する第2保持部とを備え、これらに各熱交換器の流路への排気口を形成した接続部を設けた構成としている。
【0012】
具体的には、この除湿機では、前記第1保持部と第2保持部との境界部分に段部を設け、該段部を前記中側熱交換器の一面に当接させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の除湿機では、除湿ロータと熱交換器との間にロータカバーを配設し、このロータカバーに、中側熱交換器に挿通して位置決め保持する第1保持部と、外側熱交換器内に挿入して位置決め保持する第2保持部とを備えた接続部を設けているため、薄肉な熱交換器を積層した状態で、安定して取り付けることができ、その接続部分の密閉性を確保できる。また、接続部には、第1保持部と第2保持部との境界部分に段部を設けているため、各熱交換器を個別に位置決めし、確実に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る除湿機を示す。この除湿機は、大略、矩形状をなす除湿機本体10の内部を除湿通路11と再生通路12とに区画し、その内部に、除湿手段を構成する加熱ヒータ53、除湿ロータ55、熱交換器67A,67Bおよび再生空気循環ファン94と、送風手段を構成する室内空気循環ファン96とを水平方向に配設するとともに、下部にタンク98を配設したものである。
【0016】
具体的には、前記除湿機本体10は、図2、図3および図4に示すように、基体13の表面に、前カバー34、左カバー35、右カバー37および上面カバー44を配設するとともに、下部に下カバー50および底部材51を配設したものである。
【0017】
前記基体13は、後述する加熱ヒータ53、除湿ロータ55、熱交換器67A,67B、再生空気循環ファン94および室内空気循環ファン96を固定するものである。図4に示すように、前記基体13の中央には、上向きに膨出するとともに前後方向に延びるタンクハンドル挿通部14が設けられている。
【0018】
また、図4および図5に示すように、基体13の左側には、インボリュート通路を構成する壁15を備え、該壁15の内部に通気孔16を形成した室内空気循環ファン配設部17が設けられている。この室内空気循環ファン配設部17の開口部分は、後述する左カバー35の装着により閉塞される。また、この室内空気循環ファン配設部17において、図5中右側に位置する基体13の前側上部には再生空気循環ファン配設部18が設けられている。この再生空気循環ファン配設部18の開口部分は、図示しないカバーにより閉塞される。
【0019】
さらに、図6および図7に示すように、前記基体13の右側部分には、左側より加熱ヒータ配設部19と、除湿ロータ配設部20とが設けられている。加熱ヒータ配設部19は、除湿ロータ配設部20内において、扇形状に窪んだ凹部からなる。除湿ロータ配設部20は、後述する除湿ロータ55の保持部材57の下端縁より肉厚の周壁21の上面に、ガイド用の凹溝22を設けたものである。また、この基体13において、図6中左側に位置する前側には、下部から上部にかけて垂直に延びる断面凹字形状の溝からなり、前記再生空気循環ファン配設部18に連通するダクト部23が設けられている。このダクト部23と前記再生空気循環ファン94とは連通孔24により連通されている。また、このダクト部23の下端面には、後述するタンク98の略中央上部に位置する排水孔25が設けられ、このダクト部23内で結露した水をタンク98へ排水できるように構成している。このダクト部23の開口部分は、別体からなるダクトカバー26により閉塞される。このダクトカバー26には、前記除湿ロータ配設部20の周壁21および凹溝22の一部を構成する周壁部27と凹溝部28とが設けられている。また、後述する熱交換器67Aの流出口76に接続する接続パイプ部29が突設されている。さらに、この基体13の右側には、前記ダクト部23の後側上部に位置するように、前記再生空気循環ファン配設部18に連通したパイプ接続部30が設けられている。このパイプ接続部30には、後述する加熱ヒータ53を収容するヒータケース54と接続するための接続パイプ31が配設される。この接続パイプ31には、ダクトカバー26と同様に、除湿ロータ配設部20の周壁21および凹溝22の一部を構成する周壁部32と凹溝部33とが設けられている。
【0020】
図2および図3に示すように、前記前カバー34は、基体13の前部において、タンク98の上方を閉塞するものである。前記左カバー35は、前記基体13の左側部から後側部の中央にかけて略L字形状に覆うことにより、前記室内空気循環ファン配設部17の壁15の先端を閉塞するもので、その上部には複数の吹出口36が設けられている。前記右カバー37は、前記基体13の右側部から後側部の中央にかけて略L字形状に覆うもので、縦方向に延びる複数のスリットからなる吸込口38が設けられている。この右カバー37には、その後側に垂直方向に延びるフィルタ装着孔39が設けられている。このフィルタ装着孔39から右カバー37の内側に着脱可能に装着されるフィルタ部材40は、連続した一枚の樹脂網からなるメッシュフィルタ41をインサート成形したフィルタ本体42と、該フィルタ本体42の一端に取り付けられ外装体の表面に露出される把持部材43とからなる。
【0021】
前記上面カバー44は、基体13の上面を覆うもので、その前部には複数の入力手段であるスイッチおよび表示手段であるLEDを配設した操作パネル45が配設されている。この上面カバー44には、前記室内空気循環ファン配設部17の上部に位置するように、回動可能な吹出口であるルーバー46が配設されている。また、この上面カバー44には、中央から右側部分にかけて平面視略凹字形状をなし、内向きに窪んだハンドル収容部47が設けられている。このハンドル収容部47に配設されるハンドル48は、貫通孔を通して基体13に形成された軸受部49に回転可能に軸着される。
【0022】
前記下カバー50は、前記基体13の下部において両側部および後側部を覆う平面視略U字形状のものである。また、前記底部材51は、前記下カバー50の下側を覆う略長楕円形状のものである。そして、本実施形態では、前記基体13の底と、これら下カバー50および底部材51により、タンク98を収容するタンク収容室52を形成している。
【0023】
前記加熱ヒータ53は、図7に示すように、図示しない電源回路からの供給電力により発熱し、再生空気および除湿ロータ55を加熱するもので、連続した1巻きのコイルからなり、ヒータケース54を介して前記加熱ヒータ配設部19に配設される。このヒータケース54は、前記再生空気循環ファン配設部18に連通したパイプ接続部30と前記接続パイプ31によって接続されている。
【0024】
前記除湿ロータ55は、その約3/4が除湿通路11内に位置し、約1/4が再生通路12内に位置するように、前記両通路11,12に跨って図示しない駆動モータにより回転可能に配設した円板状のものである。具体的には、この除湿ロータ55は、図8に示すように、ゼオライトまたはシリカゲルを結合させたメッシュ状のセラミックハニカムからなるロータ本体56を、樹脂製の保持部材57によって保持させたものである。この保持部材57の外壁部には、駆動モータの出力軸に配設した歯車に噛み合う複数の凸状歯58が設けられている。
【0025】
図3、図4および図8に示すように、前記除湿ロータ55において、加熱ヒータ53と対応する位置には、ロータカバー59が配設されている。言い換えれば、前記除湿ロータ55と後述する熱交換器67Aとの間において、加熱ヒータ53と横方向に対応する位置にロータカバー59が配設されている。このロータカバー59には、一対の熱交換器67A,67Bを積層状態で取り付けるための接続部60が設けられている。
【0026】
前記接続部60は凸状をなす円柱形状にもので、直径が大きい第1保持部61と、該第1保持部61より直径が小さい第2保持部62とを備え、これらの境界部分に段部63を形成したものである。前記第1保持部61は、除湿ロータ55の側である中側の熱交換器67Aに挿通することにより、手前の面(パネル68A)を貫通し、離れた面(パネル68B)に段部63を当接させて位置決めして保持するもので、その基部には階段状に膨出する膨出部61aが設けられている。前記第2保持部62は、除湿ロータ55から離れた外側の熱交換器67Bにおいて、手前の面(パネル82A)を貫通し、離れた面(パネル82B)に当接させることにより、該熱交換器67Bを位置決めして保持するもので、その基部には第1保持部61と同様に階段状に膨出する膨出部62aが設けられている。これら第1保持部61および第2保持部62には、熱交換器67A,67Bの流路71,84に連通する排気口64が設けられている。また、このロータカバー59において、前記接続部60の近傍には、熱交換器67A,67Bを更に位置決めするために2種の位置決め凸部65A,65Bが設けられている。一方の位置決め凸部65Aは、中側の熱交換器67Aを貫通するとともに外側の熱交換器67Bに嵌合して位置決めするものである。他方の位置決め凸部65Bは、中側の熱交換器67Aに嵌合して位置決めするものである。これら位置決め凸部65A,65Bの先端には、それぞれネジ止め用のネジ孔66が設けられている。
【0027】
前記熱交換器67A,67Bは、図3および図4に示すように、前記除湿ロータ55の外側である右側に積層状態で配設されるものである。具体的には、これら熱交換器67A,67Bは、図9および図10に示すように、真空成形または圧空成形により形成した一対のパネル68A,68B,82A,82Bを溶着した樹脂製のものである。
【0028】
具体的には、図9(A),(B),(C)に示すように、除湿ロータ55の側に配設される中側の熱交換器67Aのパネル68A,68Bには、互いに対称に位置する複数の仕切用凹条69A,69Bが形成され、これら仕切用凹条69A,69Bを除く部位により再生空気を通過させる複数の流路70が形成されている。この流路70は、その下部の1点が最下端に位置するように傾斜され、その最下端位置にドレン部71が設けられている。また、貼り合わされた仕切用凹条69A,69Bの部位には、吸引した空気を流通させるための通孔72が設けられている。
【0029】
前記パネル68A,68Bのうち、除湿ロータ55の側に位置される左側のパネル68Aには、図9(A),(C)に示すように、前記ロータカバー59の第1保持部61を貫通するとともに膨出部61aを嵌合する外向きに突出した円環状の凸条からなる装着部73が設けられている。この装着部73の内径は、前記ロータカバー59の第1保持部61の膨出部61aを除く部分の外径と略同一に形成されている。この装着部73の周囲には、前記位置決め凸部65Aを貫通させる位置決め用貫通孔74が設けられるとともに、位置決め凸部65Bが嵌合される位置決め凹部75が設けられている。また、前記装着部73との対角位置には、略台形状をなし、前記ダクトカバー26の接続パイプ部29に接続される流出口76が設けられている。
【0030】
外側の熱交換器67Bの側に位置される右側のパネル68Bには、図9(B),(C)に示すように、前記装着部73に対応する貫通孔77が設けられている。この貫通孔77の内径は、前記ロータカバー59において第1保持部61より直径が小さい第2保持部62の膨出部61aの外径と略同一に形成され、該貫通孔77の周縁内面に段部63が当接して位置決めされるように構成している。また、パネル68Bには、前記位置決め用貫通孔74と対応する位置決め用貫通孔78が設けられるとともに、位置決め凹部75と対応するネジ貫通孔79が設けられている。さらに、前記流出口76と対応する位置には、貼着状態で左右に一致する同一形状の接続口80が設けられている。さらにまた、このパネル68Bの上下には、外側の熱交換器67Bを位置決めするための位置決め部81が設けられている。この位置決め部81は、円形または長楕円形状に突出する凸部に、一回り小さい形状の凹部を設けたものである。
【0031】
図10(A),(B),(C)に示すように、右カバー37の側に配設される外側の熱交換器67Bのパネル82A,82Bには、前記と同様に、互いに対称に位置する複数の仕切用凹条83A,83Bが形成され、これら仕切用凹条69A,69Bを除く部位により再生空気を通過させる複数の流路84が形成されている。この流路84は、熱交換器67Aの流路70と左右に対応する位置が最下端に位置するように傾斜され、その最下端位置にドレン部85が設けられている。また、貼り合わされた仕切用凹条69A,69Bの部位には、吸引した空気を流通させるための通孔86が設けられている。なお、この外側の熱交換器67Bの流路84および通孔86は、中側の熱交換器67Aの流路70および通孔72に対して前後に位相され、右カバー37から流入された空気は、通孔86および通孔72の順番で千鳥足状に流れるように構成されている。
【0032】
前記パネル82A,82Bのうち、中側の熱交換器67Aの側に位置される左側のパネル82Aには、図10(A),(C)に示すように、前記熱交換器67Aの貫通孔77の周囲に圧接されるとともに、前記ロータカバー59の第2保持部62を貫通するとともに膨出部62aを嵌合する外向きに突出した円環状の凸条からなる装着部87が設けられている。この装着部87の内径は、前記ロータカバー59の第2保持部62の膨出部62aを除く部分の外径と略同一に形成されている。また、装着部87の周囲には、前記位置決め凸部65Aが嵌合される位置決め凹部88が設けられている。さらに、前記装着部87との対角位置である熱交換器67Aの接続口80との対応位置には、同一形状をなすように突出する流出口89が設けられている。さらにまた、このパネル82Aには、前記位置決め部81に対応する位置決め凸部90が設けられている。
【0033】
外側の右カバー37の側に位置される右側のパネル82Bには、図10(B),(C)に示すように、前記装着部87および流出口89との対応位置を閉塞したものである。また、このパネル82Bには、前記位置決め凹部88に対応するネジ貫通孔91が設けられている。これにより、このパネル82Bの内面に、第2保持部62の閉塞された端面が当接して位置決めされるように構成している。
【0034】
前記構成の熱交換器67A,67Bは、パネル68A,68B,82A,82Bの溶着により、その外周部に二層構造をなす弾性変形可能な薄肉状の溶着縁92A,92Bが形成される。そして、本実施形態では、図3および図11に示すように、中側に配設される熱交換器67Aは、その溶着縁92Aが除湿通路11の壁である右カバー37の内面、および、基体13の前側に位置する区画壁13aの内面に当接する寸法および形状とされ、シール部の役割をなすように構成している。また、この熱交換器67Aにおいて、後述する室内空気循環ファン96による外気の流動方向上流側に位置する熱交換器67Bは、その溶着縁92Bが除湿通路11の壁となる右カバー37および基体13の壁13aに当接しない寸法および形状とされている。また、本実施形態では、第1保持部61の基部および第2保持部62の基部に、円環状をなすスポンジからなるパッキン93A,93Bが配設され、このパッキン93A,93Bを介して熱交換器67A,67Bが圧接(シール)されるように構成している。
【0035】
前記再生空気循環ファン94は、前記再生空気循環ファン配設部18に配設されるシロッコファンからなり、モータ95の駆動により回転されると、再生通路12内の再生空気を循環させるものである。具体的には、再生空気は、再生通路12を構成する再生空気循環ファン配設部18、接続パイプ31、加熱ヒータ53のヒータケース54、除湿ロータ55の一部、ロータカバー59、熱交換器67A,67B、ダクトカバー26の接続パイプ部29、ダクト部23の順番で循環させる。
【0036】
前記室内空気循環ファン96は、前記再生通路12を除く外装体の内部全体からなる除湿通路11内において、室内空気循環ファン配設部17に配設されるシロッコファンからなり、モータ97の駆動により回転されると、室内の空気を吸引して再び室内に排出(供給)するものである。具体的には、室内の空気は、右カバー37の吸込口38からフィルタ部材40を通過して除湿機本体10内に吸引され、外側の熱交換器67Bの通孔86および外周部、内側の熱交換器67Aの通孔72、除湿ロータ55、室内空気循環ファン配設部17を通って吹出口36およびルーバー46から室内に循環供給される。なお、室内空気循環ファン96のモータ97は、通電量を変更することによって強風運転、中風運転および弱風運転の三段階の風量で動作可能なものが使用される。
【0037】
前記タンク98は、除湿した水を貯水するもので、図12に示すように、上面開口の箱体形状をなし、その上端開口をタンクカバー104により閉塞したものである。具体的には、このタンク98は、その前部98aが上向きに延びた形状をなし、除湿機本体10の前面の一部を構成する。このタンク98には、底の中央に逆U字形状をなし、前記タンクハンドル挿通部14内に挿通されるハンドル99が一体に設けられている。このハンドル99の上部は、タンク98の前部98aより低く、他のタンク98の上端縁より高く形成されている。このハンドル99には、後述するサブタンク108が位置する側に突起100が設けられている。
【0038】
また、前記タンク98の内部には、一対の満水検出手段を構成するフロート部材101A,101Bが配設されている。これらフロート部材101A,101Bは、タンク98の底において平面視で略対角に位置するようにそれぞれ設けた支持部102に対して回動可能に取り付けられている。また、各フロート部材101A,101Bには、フロート部101aが下向きに位置し、揺動していない状態での上部に磁石103A,103Bが配設されている。
【0039】
前記タンクカバー104は、前記タンク98の前部98aが形成された部分を除く上端開口縁に嵌合され、前部と対応する部分は嵌合することなく平面的に内接した状態で取り付けられる形状をなす。このタンクカバー104には、前記ハンドル99を挿通する挿通孔105が設けられている。また、後述するサブタンク108における除湿水の滴下位置と対応する部分には、一隅部を前記挿通孔105に位置させた第1滴下凹部106が設けられている。また、前記ダクト部23に形成した排水孔25の下部と対応する部分には、第1滴下凹部106と同様に、一隅部を前記挿通孔105に位置させた第2滴下凹部107が設けられている。即ち、前記ハンドル99を挿通させるための挿通孔105は、除湿水をタンク98内に浸水させる浸水口を構成する。
【0040】
図4に示すように、前記基体13において、タンク98を装着した状態で前記第1滴下凹部106の上方位置には、上端開口の箱体形状をなすサブタンク108が設けられている。このサブタンク108は、前記第1滴下凹部106上に位置する一端(左)側が最下端となり、他端(右)側に向けて上向きに傾斜する底面を備え、その他端側に前記熱交換器67A,67Bのドレン部71,85が配設される。また、前記一端の側壁には、内部に一時的に貯留した除湿水を排水するための滴下口109が設けられている。この滴下口109は、回動動作によって開閉可能とした弁体110によって常閉される。具体的には、この弁体110は、軸受部材111によって回動可能に配設されるとともに、非動作状態では図示しないスプリング(付勢手段)によって前記滴下口109を閉塞するように付勢されている。この弁体110には、前記タンクハンドル挿通部14内に突出し、前記ハンドル99の突起100が当接することにより、該弁体110を回動させて開弁するための干渉部112が設けられている。
【0041】
前記構成の除湿機には、前記タンク98内が満水であるか否、および、タンク98の装着状態および未装着状態を検出する手段として、一対の満水検出手段が搭載されている。これら満水検出手段は、前記タンク98内に配設したフロート部材101A,101B、各フロート部材101に配設した磁石103A,103B、および、前記基体13において前記磁石103A,103Bの上部に設けたリードスイッチ113A,113Bにより構成される。また、図13に示すように、前記ファン94,96の故障対策である安全機構として、除湿通路11内における除湿ロータ55の下流側で、前記ヒータケース54の手前の接続パイプ31の外周部(図7参照)にサーミスタなどの温度検出手段114が配設されている。さらに、前記除湿ロータ55の故障対策である安全機構として、前記除湿ロータ55の周囲(図8参照)にフォトインタラプタなどの光学式のセンサからなるロータロック検出手段115が配設されている。このロータロック検出手段115は、除湿ロータ55の凸状歯58を跨ぐように配設した凹字形状の筐体を備え、その一方に発光手段が配設されるとともに他方に受光手段が配設され、凸条歯の通過により所定時間毎に受光手段が光を受光することにより、除湿ロータ55が正常に回転しているか否かを検出できるように構成している。
【0042】
前記各構成部品は、回路基板に実装された制御手段であるマイコン116により、予め記憶されたプログラムに従って動作される。具体的には、マイコン116は、操作パネル45の電源スイッチがオン状態になり、除湿機本体10のタンク収容室52にタンク98がセットされ、かつ、満水状態でない場合に、前記除湿ロータ55の駆動モータ、再生空気循環ファン94のモータ95、加熱ヒータ53、および、室内空気循環ファン96のモータ97に対して電力を通電し、ユーザが選択したモードおよび風量で除湿動作を開始する。
【0043】
マイコン116により除湿動作が開始されると、室内空気循環ファン96により除湿機本体10内に吸引された空気は、除湿通路11に配設した熱交換器67A,67Bの通孔72,86を通過する際に、高温の再生空気と熱交換されることにより加熱された後、除湿ロータ55を通過する際に含有した水分が除去(吸着)される。その後、除湿された乾燥空気の状態で室内に循環供給される。
【0044】
また、再生空気循環ファン94により循環される再生通路12内の再生空気は、加熱ヒータ53で加熱され、除湿ロータ55を通過する際に該除湿ロータ55が吸着した水分を吸着する。ついで、熱交換器67A,67Bに分流され、通孔72,86を通過する室内空気と熱交換して冷却されることにより含有した水分を放出する。その後、ダクト部23内を通って上昇する際に、更に冷却効果が得られ、熱交換器67A,67Bでは放出されなかった水分を更に放出し、再び加熱ヒータ15へと供給される。
【0045】
さらに、前記熱交換器67A,67Bで放出された除湿水は、熱交換器67A,67B内の流路70,84を通ってドレン部71,85からサブタンク108に排出され、該サブタンク108の滴下口109からタンクカバー104の第1滴下凹部106内に滴下される。その後、傾斜した第1滴下凹部106の底を伝って浸水口であるハンドル99の挿通孔105からタンク98内に滴下される。さらにまた、ダクト部23内で放出された除湿水は、ダクト部23の底の排水孔25からタンクカバー104の第2滴下凹部107内に滴下される。その後、傾斜した第2滴下凹部107の底を伝って挿通孔105からタンク98内に滴下される。
【0046】
一方、メーカでの組立時またはメンテナンス時に前記熱交換器67A,67Bを装着する際には、図8に示す状態で、まず、中側の熱交換器67Aを装着する。具体的には、接続部60における第1保持部61の基部にパッキン93Aを配置した状態で、パネル68Aの装着部73を接続部60に位置させ、装着部73および貫通孔77に第2保持部62を貫通させて第1保持部61を装着し、位置決め用貫通孔74および位置決め用貫通孔78に位置決め凸部65Aを貫通させ、位置決め凹部75に位置決め凸部65Bを嵌合させ、流出口76にダクトカバー26の接続パイプ部29を嵌合(接続)させる。そして、ネジ貫通孔79にネジを貫通させて位置決め凸部65Bに締め付けることにより、中側の熱交換器67Aを固定する。
【0047】
ついで、第2保持部62の基部にパッキン93Bを配置した状態で、外側の熱交換器67Bを配置し、パネル82Aの装着部87に第2保持部62を貫通させて装着し、位置決め凹部88に位置決め凸部65Aを嵌合させ、位置決め凸部90に位置決め凹部88を嵌合させ、流出口89に接続口80を嵌合(接続)させる。そして、ネジ貫通孔91にネジを貫通させて位置決め凸部65Aに締め付けることにより、外側の熱交換器67Bを固定する。
【0048】
このように、本実施形態の除湿機では、熱交換器67A,67Bを真空成形または圧空成形により形成したパネル68A,68B、82A,82Bを溶着して製造しているため、薄肉で熱交換効率を向上できるとともに製造に係る歩留まりを向上できる。しかし、その反面、この熱交換器67A,67Bは柔軟で変形し易いという難点を有するものであるが、本実施形態では、変形させることなく簡単に取り付けることができる。
【0049】
具体的には、本実施形態の除湿機において、熱交換器67A,67Bを取り付けた状態では、熱交換器67Aにおける装着部73がパッキン93Aを介してロータカバー59に圧接されるとともに、パネル68Bの内面に第1保持部61の先端である段部63が当接した状態で、ネジ止めにより固定される。また、熱交換器67Bにおける装着部87をパッキン93、および、熱交換器67Aのパネル68Bを介してロータカバー59の段部63に圧接されるとともに、パネル82Bの内面に第2保持部62の先端が当接した状態でネジ止めにより固定される。そのため、薄肉な熱交換器67A,67Bは、ロータカバー59の接続部60により、簡単かつ確実に安定した状態で個別に固定することができ、十分な密閉性を確保できる。
【0050】
なお、本発明の除湿機は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、前記実施形態では、加熱ヒータ53、除湿ロータ55および一対の熱交換器の順番で積層配置し、熱交換器67A,67Bは2個積層配置する構成としたが、その数は3個以上、除湿ロータ55と逆向きに積層配置してもよい。この場合、除湿ロータ55から最も離れた外側熱交換器は、前記実施形態の第2保持部62と同様に一方のパネルを貫通し他方のパネルに当接する構成とし、中側に配設する他の熱交換器は、前記実施形態の第1保持部61と同様に挿通して位置決め保持できる構成とする。そして、各保持部の境界部分には前記と同様の段部63を形成することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る除湿機を示す概略図である。
【図2】除湿機の斜視図である。
【図3】除湿機を所定位置で横向きに切断した断面図である。
【図4】除湿機を所定位置で縦向きに切断した断面図である。
【図5】除湿機の左側の構成を示す断面図である。
【図6】除湿機の右側の構成を示す断面図である。
【図7】除湿機の基体に所定の部品を装着した状態を示す断面図である。
【図8】図7に更に部品を装着した状態を示す断面図である。
【図9】は中側熱交換器を示し、(A)は左側面図、(B)は右側面図、(C)は要部断面図である。
【図10】は外側熱交換器を示し、(A)は左側面図、(B)は右側面図、(C)は要部断面図である。
【図11】一対の熱交換器の取付状態を示す要部拡大断面図である。
【図12】タンクとタンクカバーとを示す分解斜視図である。
【図13】除湿機の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
10…除湿機本体 11…除湿通路
12…再生通路 53…加熱ヒータ
55…除湿ロータ 59…ロータカバー
60…接続部 61…第1保持部
62…第2保持部 63…段部
64…排気口 67A,67B…熱交換器
70…流路 72…通孔
73…装着部 77…貫通孔
82A,82B…パネル 84…流路
86…通孔 87…装着部
93A,93B…パッキン 94…再生空気循環ファン
96…室内空気循環ファン 98…タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を除湿通路と再生通路とに区画した除湿機本体と、
前記両通路に跨って回転可能に配設した除湿ロータと、
前記再生通路内に配設し、前記再生空気および除湿ロータの一部を加熱する加熱ヒータと、
前記除湿通路内に配設され、該除湿通路を流通する空気を通過させる通孔を備えるとともに、前記再生通路の一部を構成する流路を備え、該流路内を流動する再生空気が含有した水分を熱交換によって取り除く、真空成形や圧空成形により形成した薄肉な樹脂製の熱交換器と、
前記再生通路内に配設し、前記加熱ヒータ、除湿ロータおよび熱交換器の積層順番で再生空気を循環させる再生空気循環ファンと、
前記除湿通路内に配設し、室内の空気を吸引して前記除湿ロータによって除湿した空気を室内に循環供給する室内空気循環ファンと
を備えた除湿機において、
前記熱交換器を、前記除湿ロータと逆向きに2以上積層配置するとともに、
前記除湿ロータと熱交換器との間において、前記加熱ヒータと対応する位置にロータカバーを配設し、
前記ロータカバーに、前記除湿ロータから最も離れた外側熱交換器を除く中側熱交換器に挿通して位置決め保持する第1保持部と、前記外側熱交換器の一面を貫通し他面に当接して位置決め保持する第2保持部とを備え、これらに各熱交換器の流路への排気口を形成した接続部を設けたことを特徴とする除湿機。
【請求項2】
前記第1保持部と第2保持部との境界部分に段部を設け、該段部を前記中側熱交換器の一面に当接させたことを特徴とする請求項1に記載の除湿機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−204971(P2006−204971A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16774(P2005−16774)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】