説明

除膜ポリウレタンフォーム及び流体フィルタ

【課題】難燃性が著しく改良された除膜ポリウレタンフォームと、このような除膜ポリウレタンフォームよりなる難燃性流体フィルタを提供する。
【解決手段】ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒及びその他の助剤を含む混合物を発泡させて得られるポリウレタンフォームを除膜処理してなる除膜ポリウレタンフォーム。該混合物がリン系難燃剤とメラミン含有ポリオールを含む。この除膜ポリウレタンフォームよりなる流体フィルタ。リン系難燃剤を用いることで、ある程度の難燃化が達成されるが、このリン系難燃剤と共にメラミン含有ポリオールを併用することにより、ポリウレタンフォームの骨格部分をより一層高度に難燃化することができ、粗大セルの除膜ポリウレタンフォームであっても良好な難燃性を示すようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除膜ポリウレタンフォームと、この除膜ポリウレタンフォームよりなる流体フィルタに係り、特に、軟質ポリウレタンフォームの除膜によって形成された三次元網状骨格構造による優れた通気性、濾過性等の特性を有し、かつ、難燃性も改良された除膜ポリウレタンフォームと、この除膜ポリウレタンフォームよりなる流体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体フィルタとして、三次元網状骨格構造体の内部連通空間を利用したものがあり、この三次元網状骨格構造体の構成材料として、軟質ポリウレタンフォームの除膜によって形成された三次元網状骨格構造により、優れた通気性と濾過性を兼備する除膜ポリウレタンフォームが広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
流体フィルタは、家電、自動車、鉄道等の分野において、除塵などの用途に用いられることから、濾過性や通気性のみならず、高い難燃性、特に高温環境下での使用における高い難燃性が要求されるが、ポリウレタンフォームを除膜処理して発泡部分のセル膜を取り除くと、通気性が高められる結果、難燃性が低下するという問題がある。即ち、除膜により、燃焼時の空気の流通性も高められ、酸素が供給され易くなることで、除膜ポリウレタンフォームは燃焼し易くなる。
【0004】
従来、通常のポリウレタンフォームにおいては、難燃性を高めるために、発泡原料に難燃剤を配合することが行われており、難燃剤として、環境を配慮したノンハロゲン系のリン酸エステル系難燃剤も用いられている(例えば、特許文献2)。
【0005】
しかし、ハロゲン系難燃剤に比べて、ハロゲンを含まないノンハロゲン系の難燃剤は配合による難燃性の向上効果が十分ではなく、一方で、セル膜のない除膜ポリウレタンフォーム、特に粗大セルの除膜ポリウレタンフォームにおいては、前述の如く、その通気性のために燃焼し易く、難燃剤のみの配合では、十分な難燃性を得ることができなかった。
【特許文献1】特開2004−322027号公報
【特許文献2】特開2005−029617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の問題点を解決し、難燃性が著しく改良された除膜ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、このような除膜ポリウレタンフォームよりなる難燃性流体フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、難燃剤としてリン系難燃剤を用いると共に、ポリオール成分の一部としてメラミン含有ポリオールを用いることにより、除膜処理されたポリウレタンフォームにおいて、高い難燃性を付与することができることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0009】
[1] ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒及びその他の助剤を含む混合物を発泡させて得られるポリウレタンフォームを除膜処理してなる除膜ポリウレタンフォームにおいて、該混合物がリン系難燃剤とメラミン含有ポリオールを含むことを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【0010】
[2] [1]において、前記メラミン含有ポリオールが、メラミン樹脂をポリオール中に均一に分散してなるものであることを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【0011】
[3] [1]又は[2]において、前記リン系難燃剤が、ハロゲンを含まないリン酸エステル系難燃剤であることを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【0012】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記触媒としてアミン触媒と有機金属触媒とを含むことを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【0013】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記混合物が、前記メラミン含有ポリオールを全ポリオール成分100重量部中に5〜50重量部含むことを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【0014】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記混合物が、前記リン系難燃剤を全ポリオール成分100重量部に対して5〜30重量部含むことを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【0015】
[7] [1]ないし[6]のいずれかに記載の除膜ポリウレタンフォームよりなることを特徴とする流体フィルタ。
【発明の効果】
【0016】
本発明の除膜ポリウレタンフォームは、リン系難燃剤とメラミン含有ポリオールとの併用により、著しく優れた難燃性を発揮する。即ち、リン系難燃剤を用いることで、ある程度の難燃化が達成されるが、このリン系難燃剤と共にメラミン含有ポリオールを併用することにより、ポリウレタンフォームの骨格部分をより一層高度に難燃化することができ、粗大セルの除膜ポリウレタンフォームであっても良好な難燃性を示すようになり、各種産業分野で要求される難燃性のレベルを十分に満たす難燃性除膜ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0017】
本発明において、メラミン含有ポリオールとしては、メラミン樹脂が均一分散したメラミン含有ポリオールを用いることが好ましく(請求項2)、また、リン系難燃剤としては、ハロゲンを含まないリン酸エステル系難燃剤を用いることが好ましい(請求項3)。
【0018】
また、触媒としては、アミン触媒と有機金属触媒とを併用することが好ましい(請求項4)。
【0019】
また、メラミン含有ポリオールの使用量は、全ポリオール成分100重量部中に5〜50重量部とすることが好ましく(請求項5)、リン系難燃剤は、全ポリオール成分100重量部に対して5〜30重量部とすることが好ましい(請求項6)。
【0020】
本発明の流体フィルタは、通気性、濾過性に優れた除膜ポリウレタンフォームによりなり、しかも難燃性に優れるため、家電、自動車、鉄道等の各種分野における流体フィルタとして工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の除膜ポリウレタンフォーム及び流体フィルタの実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
[除膜ポリウレタンフォーム]
本発明の除膜ポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート、メラミン含有ポリオールを含むポリオール成分、発泡剤、難燃剤としてのリン系難燃剤、触媒及びその他の助剤を混合し、発泡させて得られるポリウレタンフォームを除膜処理してなるものである。
【0023】
{ポリウレタンフォーム原料}
<ポリオール>
本発明において、ポリウレタンフォーム原料のポリオール成分として、メラミン含有ポリオールを用いる。
【0024】
メラミン含有ポリオールは、メラミン樹脂をポリオール中に混合して均一に分散させてなるものである。メラミン含有ポリオールに特に制限はないが、NMP M−950(旭硝子(株)製)等の市販品を好適に用いることができる。
【0025】
メラミン含有ポリオールに用いるメラミン樹脂とポリオールの割合としては、ポリオールに対するメラミン樹脂粉末の混合割合が少な過ぎると得られるポリウレタンフォームの難燃性が十分でなく、多過ぎると安定したフォームが得られなくなることから、ポリオール100重量部に対してメラミン樹脂を10〜50重量部とすることが好ましい。
【0026】
ポリオールにメラミン樹脂を添加する方法に何ら制限はなく、所定量を予めポリオール成分中に添加混合してプレミックスとして使用してもよく、フォーム製造時に単体で、あるいは他成分と共に添加し、均一に分散させてもよい。メラミン樹脂はポリオール成分の合成原料として配合されてもよい。
【0027】
ポリオール成分としては、メラミン含有ポリオールの他、通常のポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオールを併用することが好ましい。本発明においては、メラミン含有ポリオール以外のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等のポリオールを用いることができ、これらのポリオールは分子量が1000〜6000で、水酸基価が20〜250mg−KOH/g程度のものが好ましい。
【0028】
全ポリオール成分中のメラミン含有ポリオールの含有量は、少な過ぎると、メラミン含有ポリオールを用いることによる難燃性の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎると安定にフォーム化することが困難であることから、全ポリオール成分100重量部中に5〜100重量部、特に5〜50重量部とすることが好ましい。
【0029】
<ポリイソシアネート>
本発明において、ポリウレタンフォーム原料のポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、トルエンジイソシアネート(TDI)又はピュア、クルードタイプを問わずジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)或いは変性MDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、これらのイソシアネート類のプレポリマータイプ、カルボジイミド変性タイプ等を用いることができる。更に、クルードMDIとTDIとの混合物等を使用することもできる。
【0030】
ポリイソシアネートは、ポリウレタンフォーム原料のイソシアネートインデックスが80〜120程度となるように用いることが好ましい。
【0031】
<触媒>
触媒としては、ポリウレタンフォーム用の公知のものが使用される。例えば、モノエタノールアミン、ジメチルエチルエタノールアミン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、2−エチルヘキシル酸第一錫、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の錫触媒や、ナフテン酸ニッケルあるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)が挙げられる。
【0032】
これらの触媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0033】
特に、有機金属触媒を全ポリオール成分100重量部に対して0.1〜1.0重量部、アミン触媒を全ポリオール成分100重量部に対して0.1〜6.0重量部、これらの合計で全ポリオール成分100重量部に対して0.2〜7.0重量部用いることが好ましい。
【0034】
<難燃剤>
本発明においては、難燃剤としてはリン系難燃剤を用いる。リン系難燃剤としては、環境面からハロゲンを含まないものが好ましく、特に、ハロゲンを含まないリン酸エステル系難燃剤が好ましい。具体的には、縮合リン酸エステル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル等の1種又は2種以上が用いられるが、好ましくは縮合リン酸エステルである。
【0035】
このようなリン系難燃剤は、全ポリオール成分100重量部に対して3〜40重量部用いることが好ましく、特に5〜30重量部用いることが好ましい。リン系難燃剤の使用量がこの範囲よりも少ないと十分な難燃性を得ることができず、多いと安定したフォーム化が困難であり、また得られるフォームの物性が不安定となる。
【0036】
<整泡剤>
整泡剤としては、公知のポリウレタンフォーム用のシリコーン系整泡剤を1種単独で、或いは2種以上を併用して用いることができる。
整泡剤は、全ポリオール成分100重量部に対して0.3〜3.0重量部用いることが好ましい。
【0037】
<発泡剤>
発泡剤としては、水、メチレンクロライド等の従来公知の一般的な発泡剤を用いることができるが、好ましくは水が用いられる。
発泡剤の使用量は、通常全ポリオール成分100重量部に対して1.0〜5.0重量部程度である。
【0038】
<その他の添加剤>
本発明に係るポリウレタンフォーム原料は、上記ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、整泡剤、難燃剤、発泡剤以外に、通常、ポリウレタンフォームの製造に用いられる各種の添加剤を含んでいても良い。このような添加剤としては、顔料等の着色剤、炭酸カルシウム等の充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、カーボンブラック等の導電性物質、抗菌剤などが挙げられる。
【0039】
{製造方法}
本発明の除膜ポリウレタンフォームは、上述のようなポリウレタンフォーム原料を用いて、常法に従って製造することができる。
【0040】
ポリウレタンフォーム原料の混合方法は、通常行なわれているワンショット法、プレポリマー法等の方法を用いることができ、撹拌混合、発泡することでポリウレタンフォームを得ることができる。
【0041】
得られたポリウレタンフォームを除膜処理してセル膜(気泡膜)を除去する方法としても特に制限はなく、熱、オゾン、アルカリ等による後処理を挙げることができる。除膜処理によって、ポリウレタンフォームはセル膜のほとんどが除去され、25mm当たりに8〜60個のセルを有する三次元網状骨格構造となる。
【0042】
{物性}
本発明の除膜ポリウレタンフォームは、25mm当たりに8〜60個のセルを有する三次元網状骨格構造である。
また、本発明の除膜ポリウレタンフォームは、JIS K 6400により測定した通気性が150cc/cm/sec以上の高通気性を有する。
【0043】
本発明の除膜ポリウレタンフォームは、上記セルサイズの範囲において、通常UL94燃焼試験において、HBF以上の優れた難燃性を示す。
【実施例】
【0044】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0045】
なお、以下の実施例及び比較例で用いたポリウレタンフォーム原料は次の通りである。
【0046】
<メラミン含有ポリオール>
旭硝子(株)製「NMP M−950」
(水酸基価35.5mg−KOH/g)
【0047】
<ポリエーテルポリオール>
三井武田ケミカル(株)製「アクトコール3P−56D」
(分子量3000、水酸基価56mg−KOH/g)
【0048】
<ポリイソシアネート>
三井武田ケミカル(株)製「コスモネートT−65」
(2,4−TDI:2,6−TDI=65:35の混合物)
【0049】
<発泡剤>

<整泡剤>
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン(合)製「L−650」(シリコーン系整泡剤)
<難燃剤>
大八化学工業(株)製「SH−0880」
(ノンハロゲン難燃剤:脂肪酸縮合リン酸エステル)
【0050】
<触媒>
アミン触媒1:エアープロダクツジャパン(株)製「DOBCO CS−90」
(トリエチレンジアン及び第3級アミン類のジプロピレングリコール混合物)
アミン触媒2:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン(合)製「NIAX CATALYST A−133」
(ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルのジプロピレングリコール混合物(有効成分量23重量%)
有機金属触媒:日本化学産業(株)製「ニッカオクチックス錫」(2−エチルヘキシル酸第一錫(有効成分量28重量%))
【0051】
また、得られたポリウレタンフォームの評価方法は次の通りである。
<セル数>
ブロックの成長方向により水平裁断した試験片を実体顕微鏡により観察して25mmあたりのセルの個数を測定した。
<密度>
JIS K 6400に準拠して評価した。
<通気性>
JIS K 6400に準拠して評価した。
<難燃性>
UL94燃焼試験を行った。(試料厚み13.0mm)
【0052】
<実施例1〜3、比較例1,2>
表1に示すポリウレタンフォーム原料配合にて、ワンショット法により混合、発泡し、得られたポリウレタンフォームを、熱処理することにより除膜処理した。
得られた除膜ポリウレタンフォームについて評価を行い、結果を表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1より、本発明の除膜ポリウレタンフォームは難燃性に優れ、特に粗大セルの高通気性除膜ポリウレタンフォームであっても、優れた難燃性を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒及びその他の助剤を含む混合物を発泡させて得られるポリウレタンフォームを除膜処理してなる除膜ポリウレタンフォームにおいて、
該混合物がリン系難燃剤とメラミン含有ポリオールを含むことを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
請求項1において、前記メラミン含有ポリオールが、メラミン樹脂をポリオール中に均一に分散してなるものであることを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記リン系難燃剤が、ハロゲンを含まないリン酸エステル系難燃剤であることを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記触媒としてアミン触媒と有機金属触媒とを含むことを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記混合物が、前記メラミン含有ポリオールを全ポリオール成分100重量部中に5〜50重量部含むことを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記混合物が、前記リン系難燃剤を全ポリオール成分100重量部に対して5〜30重量部含むことを特徴とする除膜ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の除膜ポリウレタンフォームよりなることを特徴とする流体フィルタ。

【公開番号】特開2009−167248(P2009−167248A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4591(P2008−4591)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】