説明

除草方法と除草装置及び除草車

【課題】環境を汚染せずに、安全で効率の良い除草技術を提供する。
【解決手段】雑草10に液体窒素を噴霧して冷却することにより枯れさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草方法と除草装置及び除草車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空き地、野原、河川敷、休耕田畑、道路脇、線路脇など、日常的な植栽管理があまりなされていない土地に自生する雑草を、除去ないし殺減する方法としては、次の方法がある。
1. 草刈機により刈り取り除去する方法。
2. 除草剤の散布により枯れさせて除去する方法。
3. バーナーにより雑草を燃やして除去する方法。
4. 蒸気により雑草を蒸らして除去する方法(例えば特許文献1参照)。
があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−142648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の方法では、
1. 草刈機を用いた場合、草刈刃を取り付けた機械を携帯または運搬しながら移動しなければならないので、機械の重量や振動による作業者の体力的負担が大きく、刃物を使用するので危険性も伴い、また、線路脇の除草作業においては、支障物やケーブルを損傷する虞がある。
2. 除草剤を散布する方法では、除草剤が土壌を汚染したり、空気中に飛散することによる人体やペットなどの動物への化学的悪影響が大きいという問題がある。
3. バーナーによる除草方法では、化学的な環境汚染は少ないものの、火炎を放射するので、草刈機と同様に危険性がある。また、バーナーによる火炎が直接触れる範囲しか雑草を焼却できないので、除草効率はあまりよくない。
4. 蒸気による除草方法では、蒸気を作り出すボイラー設備が必要で、装置が大型化すると共に、ボイラー設備により約80℃の蒸気を雑草に噴霧する必要があることから、夏場においては、作業者の体力的負担が大きい。
等の問題点があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、環境を汚染せずに、安全で効率の良い除草技術を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成における除草方法は、雑草に液体窒素を噴霧して冷却することにより枯れさせるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、雑草に液体窒素を噴霧すると、その噴霧された液体窒素が雑草に降り注ぎ、液体が気化する時に奪う気化熱により、急激に極低温に冷却され、植物細胞が極低温に冷却されることによる死滅現象により、短時間で効率よく枯れ易くなる。
その上、噴霧された液体窒素は、気化して窒素ガスになり、大気に放散されるだけであるので、従来技術のように、人体や動物に害を与えることなく、CO2の発生もなく環境を汚染することがない。
従って、環境を汚染せずに、安全で効率の良い除草技術を提供することが可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記液体窒素を噴霧する前に、除草予定箇所を断熱性覆い部材で覆い、その断熱性覆い部材で覆われた空間内に前記液体窒素を噴霧するところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、除草予定箇所は、断熱性覆い部材で覆われた空間が外気から断熱された状態で形成されることになり、噴霧する液体窒素が、直ぐに気体にならずに雑草に液体のまま直接降り注ぎ易くなる。そのために、供給された液体窒素の雑草と接触する割合が増加し、雑草に接触した液体窒素が気化に伴い雑草を効率よく極低温に冷却し、効率よく枯れさせる。
従って、除草するのに使用する液体窒素の量が少なくて済み、経済的になる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、雑草に液体窒素を噴霧した後、前記雑草を上から押し潰すところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、液体窒素が噴霧された雑草は、瞬時に凍結し易くなり、その雑草を上から押し潰す事により、凍結した雑草はバラバラに破壊され、より一層枯れ易くなり、除草効率を上げられる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成における除草装置は、液体窒素を収容する断熱性圧力容器と、除草予定箇所を覆うことができる断熱性覆い部材と、前記断熱性覆い部材で覆われた空間内に液体窒素を噴霧可能なノズル装置とを設け、前記断熱性圧力容器から取り出す液体窒素を、開閉バルブを備えた可撓性流体供給管を介して前記ノズル装置に供給可能に連通してあるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、液体窒素を収容する断熱性圧力容器と、断熱性覆い部材と、ノズル装置と、開閉バルブを備えた可撓性流体供給管とを、設けるだけの簡単な装置で、雑草に液体窒素を噴霧して冷却することにより枯れさせ、効率よく除草することができる。
その上、除草予定箇所には、断熱性覆い部材を被せ、ノズル装置に接続した開閉バルブを開閉操作するだけの作業で、短時間に雑草を枯れさせることができるために、従来技術よりも、作業者の体力的負担が少なく、安全な作業ができる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、断熱性圧力容器内の液体窒素の残量を計測する計量装置を設けてあるところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、雑草に噴霧する液体窒素の供給量を、計量装置により管理し易く、効率の良い除草を経済的に行える。
【0016】
本発明の第6の特徴構成は、前記断熱性圧力容器の液体取り出し口には、気液分離容器を接続し、その気液分離容器内の液体貯留部に、前記可撓性流体供給管を連通接続してあるところにある。
【0017】
本発明の第6の特徴構成によれば、気液分離容器により、断熱性圧力容器から取り出した液体窒素は、気体と液体とに分離され、その分離された液体を、液体貯留部から可撓性流体供給管を介してノズル装置に供給することができるために、より低圧で大量の液体を雑草に噴霧できる。
従って、短時間で必要な量の液体窒素を、雑草に噴霧でき、効率よく雑草を極低温に冷却して除草効率を上げ易くなる。
【0018】
本発明の第7の特徴構成は、前記断熱性覆い部材は、除草予定箇所を上方から覆う断熱シートと、その断熱シートを支持して地面との間に液体窒素の噴霧空間を形成する支持フレームとから構成してあるところにある。
【0019】
本発明の第7の特徴構成によれば、除草予定箇所に支持フレームにより支持される断熱シートが、地面との間に液体窒素噴霧空間を、安定して形成するために、液体窒素噴霧空間内の雑草を、全体に亘って冷却しやすくなる。
【0020】
本発明の第8の特徴構成は、前記断熱性覆い部材は、折り畳み自在に形成してあるところにある。
【0021】
本発明の第8の特徴構成によれば、断熱性覆い部材により覆う面積を増やして、より大面積の除草予定箇所に対応させても、断熱性覆い部材を折り畳みできるために、コンパクトになり持ち運び易く、しかも、保管し易い。
【0022】
本発明の第9の特徴構成における除草車は、前記除草装置を積載する荷台部を設けると共に、前記除草予定箇所に移動するための自走装置を設け、前記断熱性覆い部材を積み下ろし可能に収容してあるところにある。
【0023】
本発明の第9の特徴構成によれば、自走装置を設けた除草車は、広範囲に前述の効率よい安全な除草作業ができるばかりか、断熱性覆い部材の積み下ろしだけで、大きな労力を要せずに除草作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】除草装置全体の一部切欠き斜視図である。
【図2】別実施形態の除草装置の一部縦断正面図である。
【図3】別実施形態の断熱性覆い部材の縦断面図である。
【図4】別実施形態の断熱性覆い部材の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、雑草10に液体窒素を噴霧して冷却することにより枯れさせる除草方法を行うために、エンジンとそのエンジンにより駆動回転する車輪とから成る自走装置1を備えたトラック2で、液体窒素を収容する断熱性圧力容器3と、荷台部20から積み降ろしして除草予定箇所を覆うことができる断熱性覆い部材21と、前記断熱性覆い部材21で覆われた空間内に液体窒素を噴霧可能なノズル装置8とを設け、前記断熱性圧力容器3から取り出す液体窒素を、開閉バルブ6を備えた可撓性流体供給管5を介して前記ノズル装置8に供給可能に連通させた除草装置を、荷台部20に載せて除草車を構成してある。
【0026】
荷台部20に載せる断熱性圧力容器3としての複数本の液体窒素ボンベの内、一本の液体窒素ボンベを、トラック2に備え付けのクレーン式吊り下げ昇降装置22により、ボンベ内の液体窒素の残量を計測するための計量装置4としての重量計を介して吊り下げながら、液体窒素を供給できるようにしてある。
【0027】
前記断熱性覆い部材21は、雑草10の生えている除草予定箇所を上方から覆う断熱シート7と、その断熱シート7を支持して地面との間に液体窒素の噴霧空間を形成する支持フレーム23とから構成して、テント状に形成してある。
前記支持フレーム23は、両端に接地脚部24を形成した門型の骨枠23Aを、複数本並設して、それらの複数本の骨枠23Aを並設方向に連結する連結枠部23Bを設けて、方形の枠組構造を構成してある。
そして、発泡ゴムシートや断熱材層を設けた布状シートやその他断熱性のある可撓シートからなる断熱シート7で、前記支持フレーム23を覆うことで、テント形状の前記断熱性覆い部材21を構成してある。
【0028】
断熱シート7で覆われる空間内で、前記支持フレーム23には、前記ノズル装置8を一定間隔置きに複数個取付け、ステンレス製のフレキシブルチューブ9で複数個のノズル装置8を接続してある。
フレキシブルチューブ9の一端部には、プラグ26を取り付けて液体流路を閉じ、他端部にはカプラー27を取り付けて、フレキシブルチューブ9から可撓性流体供給管5を介して液体窒素ボンベに接続してある。
尚、可撓性流体供給管5には、開閉バルブ6を取り付けてあり、その開閉バルブ6の開閉操作で液体窒素をノズル装置8から噴霧できるように構成してある。
【0029】
テント状の断熱性覆い部材21における断熱シート7の接地周縁部28には、地面と密接させて、液体窒素噴霧空間の冷気が外部に漏れにくいように押えるために、錘として鋼管29を帯状の綿ファスナー30を介して取り付ける接地押圧部31を形成してある。
【0030】
断熱性覆い部材21における可撓性流体供給管5の挿通部25は、断熱シート7の開口部に帯状の綿ファスナー32で絞って冷気が外部に逃げるのを防止できるように構成してある。
【実施例】
【0031】
(除草装置の準備)
トラック2の荷台部20には、液体窒素ボンベを複数本夫々119kg充填して搭載し、そのうちの1本を、重量計を介して吊り下げ昇降装置22に吊り持ちできるようにしておく。
(除草手順)
1. 雑草10の茂った除草予定箇所に、断熱性覆い部材21を雑草10が覆い隠されるように接地し、断熱シート7の接地周縁部28には、鋼管29を帯状の綿ファスナー30を介して取り付け、地面との間に隙間が生じないようにする。
2. 断熱材付きのステンレス製フレキシブルホース(可撓性流体供給管5)に接続した開閉バルブ6を開放して液体窒素を流し、複数のノズル装置8から液体窒素を噴霧する。
3. 断熱性覆い部材21で覆われた空間内に、液体窒素を約1分から2分間噴霧して−40℃以下になるようにする。尚、約1分で−40℃になる。
4. 断熱性覆い部材21を撤去して荷台部20に収容する。
【0032】
(結果)
液体窒素噴霧により、ほとんどの雑草10は、数日を経て枯死した。
【0033】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
1. 前記断熱性圧力容器3の液体取り出し口には、図2に示すように、気液分離容器33を接続し、その気液分離容器33内の液体貯留部に、可撓性流体供給管5を連通接続して低圧の液体窒素を、ノズル装置8に供給できるようにしてあっても良い。
2. 前記断熱性覆い部材21は、折り畳み自在に形成してあっても良い、つまり、図3に示すように、支持フレーム23に蛇腹状の折り畳み骨枠部34を設け、全体として長さが伸縮可能に形成し、その支持フレーム23に、断熱シート7を折り畳み骨枠部34の折り畳み操作に追従できるように取付ける。
3. 雑草10に液体窒素を噴霧した後、雑草10を上から押し潰して凍結した雑草10を粉砕するために、除草装置に、地面を転がして展圧するローラー装置などを備えておいても良い。
4. 前記接地押圧部31は、図4に示すように、断熱シート7の接地周縁部28に、周縁に沿って所定間隔に複数の鳩目部35を設け、その鳩目部35夫々に、杭36を通して地面に突き刺して固定できるようにしてあっても良い。
5. 前記断熱性覆い部材21は、冷気が逃げないように除草予定箇所を気密状態で覆うために、断熱シート7にアルミニウムラミネートシートなどの気密層を積層してあっても良い。
6. 除草車として、トラック2に取り付ける車輪は、道路を走行するタイヤ車輪の他、線路脇の除草のためには、レール用鉄車輪を取り付けるものであっても良い。
【0034】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 自走装置
3 断熱性圧力容器
4 計量装置
5 可撓性流体供給管
6 開閉バルブ
7 断熱シート
8 ノズル装置
20 荷台部
21 断熱性覆い部材
23 支持フレーム
33 気液分離容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雑草に液体窒素を噴霧して冷却することにより枯れさせる除草方法。
【請求項2】
前記液体窒素を噴霧する前に、除草予定箇所を断熱性覆い部材で覆い、その断熱性覆い部材で覆われた空間内に前記液体窒素を噴霧する請求項1に記載の除草方法。
【請求項3】
雑草に液体窒素を噴霧した後、前記雑草を上から押し潰す請求項1又は2の除草方法。
【請求項4】
液体窒素を収容する断熱性圧力容器と、除草予定箇所を覆うことができる断熱性覆い部材と、前記断熱性覆い部材で覆われた空間内に液体窒素を噴霧可能なノズル装置とを設け、前記断熱性圧力容器から取り出す液体窒素を、開閉バルブを備えた可撓性流体供給管を介して前記ノズル装置に供給可能に連通してある除草装置。
【請求項5】
断熱性圧力容器内の液体窒素の残量を計測する計量装置を設けてある請求項4に記載の除草装置。
【請求項6】
前記断熱性圧力容器の液体取り出し口には、気液分離容器を接続し、その気液分離容器内の液体貯留部に、前記可撓性流体供給管を連通接続してある請求項4又は5に記載の除草装置。
【請求項7】
前記断熱性覆い部材は、除草予定箇所を上方から覆う断熱シートと、その断熱シートを支持して地面との間に液体窒素の噴霧空間を形成する支持フレームとから構成してある請求項4〜6のいずれか1項に記載の除草装置。
【請求項8】
前記断熱性覆い部材は、折り畳み自在に形成してある請求項4〜7のいずれか1項に記載の除草装置。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか1項に記載の前記除草装置を積載する荷台部を設けると共に、前記除草予定箇所に移動するための自走装置を設け、前記断熱性覆い部材を積み下ろし可能に収容してある除草車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−206025(P2011−206025A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79640(P2010−79640)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(390007607)大鉄工業株式会社 (11)
【出願人】(000244084)明星工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】