説明

除菌部材およびそれを用いた洗浄用具

【課題】耐水性の基材を備えた水周りの用具のうち、洗浄・清掃等の機能を果たすための除菌部材であって、前記除菌部材に除菌性を与える材料が樹脂に埋没せず、部材が均一に除菌性能を有し、材料が強固に固定化され、かつ洗浄効果の高い除菌部材を提供すること。
【解決手段】耐水性を有する基材11を備えた除菌部材であり、前記基材11を膨潤可能な溶剤とバインダー12と研磨剤13と酸化還元電位の異なる2種類以上の金属としての銅14および亜鉛15を含む除菌液を、前記基材11に塗布して製造した除菌部材とすることにより、水中の微生物を取り除くことができ、基材上で微生物が繁殖しにくい除菌部材を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性の基材を備え、洗浄、清掃等の機能を果たすための除菌部材であって、台所や浴室の清掃用スポンジ、ブラシ、雑巾、マット、シート、窓や車や家屋や建材のガラス汚れ剥離用ワイパー、あるいは洗車用具などの洗浄用具などに用いられる除菌部材、除菌材、およびその除菌部材、除菌材を備え、用いた洗浄用具等に関する。
【背景技術】
【0002】
菌やカビなどの微生物は、シンクや排水溝のキャップや清掃用のスポンジなどの水周り製品に付着して繁殖すると、においやぬめりの原因となる。微生物の増殖を抑えたいときには、殺菌効果のある洗剤や抗菌剤などの薬剤を用いた化学的除去方法か、スポンジ・ブラシなどを用いて洗浄する物理的除去方法あるいはそれらを併用する方法が用いられている。
【0003】
たとえば特許文献1記載の従来の高分子発泡体は、殺菌作用を有する金属を保持したゼオライトを含有してなる抗菌ならびに防カビ機能を有する高分子発泡体である。抗菌性ゼオライトと発泡用素材と高分子体とを混合して発泡させることによって、抗菌ならびに防カビ機能を有する高分子発泡体が得られることが示されている。
【0004】
また、特許文献2には、抗菌成分を溶出させる化学的な薬剤の抗菌性能で微生物の増殖を抑制するのではなく、安全性と同時に持続性のある微生物の増殖を防止する手段、特に除菌手段を提供する方法が示されている。これは、酸化還元電位の異なる2種の金属粉末を樹脂中に導電性を有するように分散配合・混練した成形体を、除菌しようとする電解質溶液と接するよう配置した構成の電解質溶液の除菌方法である。前記電解質中の微生物は、表面電荷を持っているために、電気的な作用によって前記金属粉末の近傍に誘引され除菌されるものである。
【特許文献1】特開昭62−241932号公報
【特許文献2】特開2005−118726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の高分子発泡体は、殺菌作用を有する金属を保持したゼオライトの作用によって、高分子発泡体の表面に付着した微生物の増殖を抑制するものである。しかしながら、抗菌性ゼオライトと発泡用素材と高分子体とを混合して発泡させた高分子発泡体では、抗菌性ゼオライトが樹脂中に埋没して殺菌作用を十分に発揮されず、また発泡の過程でゼオライトの分散状態に偏りが生じやすく、高分子発泡体全体に抗菌性をもたせることが難しいという課題があった。また、強固に付着した油脂汚れなどを洗浄する効果は必ずしも十分ではなかった。
【0006】
また、特許文献2に記載の方法では、電気的な作用で微生物を除菌できるため、スポンジなどの基材に前記特許文献2に記載の方法を施すことによって、除菌性を有する基材を供えた除菌部材を得ることができた。しかし、前記スポンジの除菌効果を持続させるためには、金属粉末の剥離を防ぐ必要があり、スポンジ表面に強固に金属粉末を固定化できる除菌部材、除菌材が求められていた。
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、除菌性を有する材料が樹脂に埋没せず全体が均一に除菌性能を有し、材料が強固に固定化され、かつ洗浄効果の高い除菌部材、除菌材、およびその除菌部材、除菌材を用い、備え、汚れを落として除菌する洗浄用具等の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の除菌部材は上記目的を達成するために、請求項1に記載の通り、耐水性を有する基材を備え、前記基材に除菌液を塗布して製造し、前記除菌液は、前記基材を膨潤可能な溶剤と、汚れを落とす研磨剤と酸化還元電位の異なる2種類以上の金属と、前記基材と前記研磨剤と前記金属を接着するバインダーとを含むことを特徴とする。
【0009】
また、除菌液を塗布した後に、乾燥処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、除菌液を塗布した後に、熱処理を行うことを特徴とする。
【0011】
また、除菌液を塗布した後に、常温で通風処理を行い、さらに熱処理を行うことを特徴とする。
【0012】
また、溶剤が、200℃以下の温度で揮発性を有することを特徴とする。
【0013】
また、除菌液を塗布した基材が、膨潤した後、収縮することを特徴とする。
【0014】
また、金属が金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、真鍮またはこれらの合金から選ばれるいずれか一つ以上を含むことを特徴とする。
【0015】
また、金属が抗菌性を有することを特徴とする。
【0016】
また、導電性付与剤を添加したことを特徴とする。
【0017】
また、研磨剤が石英、カルサイト、珪砂、天然ケイ酸系鉱物、ケイ酸アルミニウム系鉱物、シリカゲル、珪華微粉末、シラス、白土、炭化ケイ素、アルミナ、ゼオライト、ガラスビーズ、アパタイト、セピオライトから選ばれるいずれか一つ以上を含むことを特徴とする。
【0018】
また、研磨剤がイオン交換能を有することを特徴とする。
【0019】
また、金属および研磨剤の粒子径が250μm以下であることを特徴とする。
【0020】
また、基材が網構造または3次元立体構造であることを特徴とする。
【0021】
また、除菌液を基材の外表面のみに塗布したことを特徴とする。
【0022】
また、除菌液を塗布して製造した基材の表面が導電性を有することを特徴とする。
【0023】
また、請求項1乃至15のいずれかに記載の除菌部材を備えた洗浄用具としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、除菌性を有する材料が樹脂に埋没せず全体が均一に除菌性能を有し、材料が強固に固定化され、洗浄効果と除菌効果の高い除菌部材、除菌材、およびその除菌部材、除菌材を備え、用い、汚れを落として除菌する洗浄効果と除菌効果の高い洗浄用具等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の請求項1記載の発明は、前記基材に除菌液を塗布して製造し、前記除菌液は、前記基材を膨潤可能な溶剤と、汚れを落とす研磨剤と酸化還元電位の異なる2種類以上の金属と、前記基材と前記研磨剤と前記金属を接着するバインダーとを含むことを特徴としたものである。除菌液に含まれる酸化還元電位の異なる金属は、基材に塗布された後、基材の表面で金属同士が接触して導通することによって電池構造が形成される。電池構造の金属間には電位差が生じているので、水中で帯電している微生物を電気的な力で引き寄せて除去することができる。
【0026】
また、溶剤で基材を膨潤させることによって基材の凹凸や空隙にバインダーと研磨剤と金属が侵入し、バインダーと基材と研磨剤と金属とが強固に接着される。その結果、フィルタからの研磨剤および金属の剥離が生じにくくなるという作用を有する。
【0027】
また、研磨剤および金属粉は、バインダーに比べてサイズが大きく基材への浸透力が低いために、研磨剤および金属粉は基材の内部よりも表面に多く存在することになる。研磨剤がバインダーに埋没せずに基材の表面部に露出しているので落とそうとする汚れに直接接触しやすく、研磨効果を発揮できるという作用を有する。また、金属粉がバインダーに埋没せずに基材の表面部に露出し、除菌効果を発揮できるという作用を有する。
【0028】
除菌部材、除菌材は、耐水性の基材を備えた水周りの用具のうち、洗浄や清掃等の機能を果たすための部材、材料を示し、台所や浴室の清掃用スポンジ、ブラシ、マット、シート、収納容器、窓や車や家屋や建材のガラス汚れ剥離用ワイパー、あるいは洗車用具などに使用される部材、材料などがある。
【0029】
また、その除菌部材、除菌材を備えた水回り機器としては、台所や浴室の清掃用スポンジ、ブラシ、雑巾、マット、シート、収納容器、窓や車や家屋や建材のガラス汚れ剥離用ワイパー、あるいは洗車用具などの洗浄用具などに用いられる部材、材料、およびその除菌部材、除菌材を用いた洗浄用具等がある。上記洗浄用具等の一部、あるいは全部を除菌部材、除菌材で構成することは差し支えない。
【0030】
また、基材に、除菌液を塗布した後に、乾燥処理を行うことを特徴としたものであり、乾燥処理によって溶剤を揮発させることができるという作用を有する。
【0031】
また、基材に、除菌液を塗布した後に、熱処理を行うことを特徴としたものであり、熱処理によって溶剤を素早く揮発させるとともに、バインダー樹脂の重合・熱硬化を行うことができるという作用を有する。
【0032】
また、基材に、除菌液を塗布した後に、常温で通風処理を行い、さらに熱処理を行うことを特徴としたものであり、通風処理によって基材の形を保ちながらゆっくりと乾燥させた後、残留するバインダー成分を熱処理によって硬化させることができるため、除菌部材が変形しにくいという作用を有する。
【0033】
また、溶剤が、200℃以下の温度で揮発性を有することを特徴としたものであり、200℃以下の温度で溶剤を気化させることにより、基材の変質や変形を防止することができるという作用を有する。
【0034】
また、除菌液を塗布した基材が、膨潤した後、収縮することを特徴としたものである。溶剤で基材を膨潤させることによって基材の凹凸や空隙にバインダーと研磨剤と金属を侵入させ、その後に収縮硬化させることによって、バインダーと基材と研磨剤と金属との接着力が向上するという作用を有する。その結果、除菌液を塗布した基材からの金属や研磨剤の剥離が生じにくくなるという作用を有する。
【0035】
また、金属が金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、真鍮またはこれらの合金から選ばれるいずれか一つ以上を含むことを特徴としたものであり、前記金属を利用することによって電池構造を形成し、帯電している微生物を電気的な力で引き寄せて除去することができる。なお、微生物に限らず、帯電している物質は電気的な力で引き寄せて除去することができる。
【0036】
また、金属が抗菌性を有することを特徴としたものであり、捕集した微生物を金属の抗菌作用で死滅させることができるという作用を有する。
【0037】
また、導電性付与剤を添加したことを特徴としたものであり、カーボンなどの導電性付与剤によって酸化還元電位の異なる金属の電気的な接合状態が向上するという作用を有する。電池構造の金属間には電位差が生じるので、帯電している微生物を電気的な力で引き寄せて除去することができる。また、基材の表面で金属が直接接触していなくても、導電性付与剤を通じて導通させることにより電池構造を形成することができるので、金属の使用量を減らすことができるという作用を有する。金属を減らすことによって、経済性に優れ、軽量な除菌部材を製造することができる。また、導電性付与剤によって表面電気抵抗が減るので、除菌部材の帯電防止効果を得ることができる。
【0038】
また、研磨剤が石英、カルサイト、珪砂、天然ケイ酸系鉱物、ケイ酸アルミニウム系鉱物、シリカゲル、珪華微粉末、シラス、白土、炭化ケイ素、アルミナ、ゼオライト、ガラスビーズ、アパタイト、セピオライトから選ばれるいずれか一つ以上を含むことを特徴とする。前記の研磨剤によって、こびりついた汚れを洗浄中の摩擦によって剥離し、洗浄力を高めることができるという作用を有する。なお、金属を研磨剤として利用してもよい。
【0039】
また、研磨剤がイオン交換能を有することを特徴としたものであり、イオン交換能によって、抗菌性の金属から溶出した銀や亜鉛などの抗菌性のイオンを研磨剤の中に保持することができ、研磨剤に抗菌作用を与えることができる。このため、初期状態で研磨剤に抗菌性がない場合でも、取り込んだ抗菌性のイオンの働きによって抗菌性を有する研磨剤を得ることができる。研磨剤は、汚れを落とす際に摩擦によって基材から脱落することがあるが、脱落した後の研磨剤および研磨剤が付着した汚れ成分に抗菌作用を与えることができるという作用を有する。
【0040】
また、金属および研磨剤の粒子径が250μm以下であることを特徴としたものである。金属および研磨剤を250μm以下にすることにより、金属および研磨剤が沈降して濃度差が発生することがない除菌液を作成することができ、前記除菌液を用いて金属および研磨剤が均一に分散した除菌部材を作ることができる。
【0041】
また、基材が網構造または3次元立体構造であることを特徴としたものであり、基材の表面積を増加させて除菌効果を高めることができるという作用を有する。また、表面積が大きいので研磨剤が有効に働き、洗浄力を高めることができるという作用を有する。
【0042】
また、除菌液を基材の外表面のみに塗布したことを特徴としたものであり、洗浄しようとする物質と接しやすい基材の外表面に除菌効果を与えることができる。基材の内表面には除菌液を塗布しないので、除菌液の使用量を減らすことができ、経済性に優れ、軽量な除菌部材を得ることができる。
【0043】
また、除菌液を塗布して製造した基材の表面が導電性を有することを特徴としたものであり、表面電気抵抗が減るので、除菌部材の帯電防止効果を得ることができる。
【0044】
また、請求項1乃至15のいずれかに記載の除菌部材を備えた洗浄用具としたことを特徴としたものであり、洗浄用具等の一部、あるいは全部を除菌部材、除菌材で構成することで、汚れを落として除菌する洗浄効果と除菌効果の高い洗浄用具等を提供することができることとなる。
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
(実施の形態1)
図1に本発明の実施の形態1の除菌部材の断面図の一例を示す。耐水性を有する基材11には除菌液が塗布され、前記除菌液に含まれる基材11を膨潤可能な溶剤によって、基材11の表面および内部にバインダー12が浸透している。バインダー12は基材11と研磨剤13と酸化還元電位の異なる2種類以上の金属とを固定化する役割を果たしており、ここでは前記金属は銅14と亜鉛15である。また、除菌液には導電性付与剤としてのカーボン16が配合されており、銅14と亜鉛15を導通させている。除菌液に含まれる酸化還元電位の異なる金属としての銅14と亜鉛15は、基材11に塗布された後、基材11の表面で金属同士が接触して導通することによって電池構造が形成される。電池構造の金属間には電位差が生じているので、帯電している微生物を電気的な力で引き寄せて除去することができる。
【0047】
また、溶剤で基材を膨潤させることによって基材の凹凸や空隙にバインダーと研磨剤と金属が侵入し、バインダーと基材と研磨剤と金属とが強固に接着される。その結果、フィルタからの研磨剤および金属の剥離が生じにくくなるという作用を有する。また、研磨剤および金属粉は、バインダーに比べてサイズが大きく基材への浸透力が低いために、研磨剤および金属粉は基材の内部よりも表面に多く存在することになる。研磨剤がバインダーに埋没せずに基材の表面部に露出しているので落とそうとする汚れに直接接触しやすく、研磨効果を発揮できるという作用を有する。また、金属粉がバインダーに埋没せずに基材の表面部に露出し、除菌効果を発揮できるという作用を有する。溶剤による基材の膨潤の程度は、基材の凹凸や空隙にバインダーと研磨剤と金属が侵入できる程度であれば良い。
【0048】
一方、抗菌性ゼオライトと発泡用素材と高分子体とを混合して発泡させる従来の方法では、材料が適当に分散されるため、有効成分である抗菌性ゼオライトが樹脂に埋没する割合が高く、殺菌作用を十分発揮させることは困難である。また、発泡の過程でゼオライトの分散状態に偏りが生じやすく、高分子発泡体全体に抗菌性をもたせることは困難である。
【0049】
図1の基材表面を拡大した概略断面図を図2に示す。酸化還元電位の異なる2種類以上の金属としての銅14と亜鉛15は、導電性付与剤としてのカーボン16およびバインダー12としてのポリエステルとともに、基材11表面に皮膜を形成している。水に含まれる微生物17はその表面電荷として一定の電荷を有しているため、水中に電場を与えるとその電場の向きに応じて移動する作用が生まれる。銅14と亜鉛15は直接あるいは導電性付与剤としてのカーボン16を介して電気的に接合されているためプラスとマイナスの電荷を帯びており、両者の間には電場が発生している。微生物17は電荷を有しているため、電場の作用によって金属の方向に誘引され凝集する。また、基材11の表面には研磨剤13が接着されているので、また、強固に付着した油脂汚れやその中に混在する微生物などを摩擦力によって取り除き、除菌することができる。
【0050】
スポンジ、ブラシなどを用いる従来の物理的な除去方法では、物理的に接触しないとよごれや微生物を除去することはできず、洗浄力は十分とはいえない。また、取り除いた微生物がスポンジ、ブラシ自体で繁殖してよごれやにおいの発生源となる可能性があり、その対策が求められていた。また、スポンジ、ブラシなどに抗菌剤を練りこんだ素材あるいは抗菌剤入りの発泡体では、全体に均一に抗菌作用を持たせることが難しかった。また、殺菌効果のある洗剤や抗菌剤などの薬剤を用いた従来の化学的除去方法では、また、強固に付着した油脂汚れなどを取り除く効果は必ずしも十分ではなく、汚れ中に混在する微生物には殺菌効果が働きにくいという課題があった。本発明の除菌部材では、研磨剤を有しているため、強固に付着した油脂汚れなどに混在する微生物を取り除くことができ、さらに微生物を電気的に誘引する除菌効果を有するため、電場が働く範囲まで除菌効果を発揮させることができるという効果を得ることができる。また、取り除いた微生物が除菌部材自体で繁殖することがなく、清潔な状態に保つことができるという作用を有する。
【0051】
除菌液は、基材を膨潤可能な溶剤とバインダーと研磨剤と酸化還元電位の異なる2種類以上の金属とを混合することによって得ることができる。このとき、除菌液には界面活性剤や導電性付与剤などを配合してもよい。作成した除菌液を基材に塗布すると、溶剤およびバインダーが基材へ浸透し、または基材の表面を溶解して凹凸を形成する。浸透した溶剤とバインダーによって基材は膨潤してサイズが大きくなるが、通風排気および/または加熱を行うことによって溶剤が揮発した後は、サイズが小さくなる。ここで、200℃以下の温度で揮発性を有する溶剤を選択することにより、樹脂や繊維の熱劣化を抑えることができる。通風排気のみでは乾燥に時間がかかり、加熱のみでは急激な基材サイズの変化によって不均一に収縮して変形しやすいため、通風乾燥して基材をゆっくり乾燥させた後に加熱する方法が好ましい。
【0052】
除菌液は基材全体に塗布しても良いし、基材の外表面のみに塗布してもよい。図3に外表面のみに除菌液を塗布した除菌部材の一例を示す。除菌スポンジ21は、直方体形状の基材の外表面22に除菌液を塗布したものである。このとき、除菌効果を発揮するのは除菌液を塗布して皮膜が形成された部分だけである。洗浄しようとする物質と接しやすい基材の外表面22に除菌効果を与えることができ、基材の内表面23には除菌液を塗布しないので、除菌液の使用量を減らすことができ、経済性に優れ、軽量な除菌部材としてのスポンジを得ることができる。また、除菌液を有色にすることにより、効果の発揮される部分を容易に視認することができる。視認が容易なため、塗布むらによる加工不良や傷等の発生を簡単に確認することができる。除菌液を有色にするためには、たとえばカーボンブラックやグラファイトなどの黒色成分やマンガン、酸化鉄、酸化銅あるいはその合金などの有色金属を任意の割合で添加すればよい。除菌液の塗布方法としては、ディッピング、スプレー噴霧、はけ塗りなど一般的な方法を用いればよい。
【0053】
除菌液の塗布部分の表面電気抵抗は、107Ω/□以下であることが望ましい。表面電気抵抗が高すぎると絶縁皮膜となって、電場の強さが低下するため、除菌作用が低下するため好ましくない。固形物成分の配合量と、皮膜の膜厚を調整することによって、用途に合わせて調整すればよい。
【0054】
基材の材質としては、綿、レーヨン、ナイロン、木材、パルプなどの天然繊維や、樹脂含浸紙、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリオレフィン、エポキシ、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレン、キュプラ、アクリル、ポリアミド、ポリイミド、およびこれらの変性樹脂などの合成繊維が利用できる。金属やセラミックを含んでいてもよい。
【0055】
溶剤としては、アルコール類・直鎖の炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族類など種々の溶媒が利用できる。具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレンスチレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、イソホロン、ヘキサン、ヘプタンなどが挙げられ、単独あるいは混合して用いることができる。分散性を高めるために界面活性剤を添加してもよい。これらの溶剤を、基材の材質に合わせて選択することにより、溶剤が基材へ浸透し、または基材の表面を溶解して凹凸を形成する。浸透した溶剤によって基材は膨潤してサイズが大きくなるが、通風排気および/または加熱を行うことによって溶剤が揮発した後は、サイズが小さくなる。ここで、200℃以下の温度で揮発性を有する溶剤を選択することにより、低温で溶剤を除去することが可能となり、樹脂や繊維の熱劣化を抑えることができる。
【0056】
バインダーとしては、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテル、アクリル、エポキシ、エポキシエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、メラミン、ビニル、塩化ゴム、シリコーン、フッ素などの樹脂、もしくはこれらの変性樹脂が挙げられる。樹脂は溶剤に可溶であることが望ましい。また、無機系のバインダーを利用してもよく、コロイダルシリカ、オルガノシリカ樹脂、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、エチルシリケート、リチウムシリケート、カリウムシリケートなどの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0057】
除菌液の総固形分に対する配合比率が7wt%以上になるように樹脂を配合すれば、基材とバインダー、およびバインダーと金属と研磨剤との十分な密着性が得られる。ただし、35wt%を超えると、密着性や強度は良好であるものの、金属同士および導電付与剤との導通が阻害されるために、除菌性能が低下してくる。除菌液の総固形分に対する樹脂量としては、配合比率7wt%以上の範囲で、除菌性能と密着性、強度のバランスによって任意に選択すればよい。また、樹脂が溶剤に溶解もしくは分散可能であれば、除菌材料の粘度を調整することが容易であり、扱いやすくなる。
【0058】
金属としては、Au、Pt、Ag、Cu、Pb、Ni、Sb、Co、W、Fe、Sn、Cr、Zn、V、Al、Ti、Zr、Mg、Kまたはこれらの合金などが挙げられる。特にAg、Cu、Znは金属自体の抗菌性が強いため好ましい。また、Fe、Zn、Alは比較的安価で安全なものとして利用しやすい。2種類以上の金属の選択としては用途と寿命と経済性を考慮すれば特に制限されるものではないが、水の電気分解開始電圧である1.2V付近では金属から水素の発生が生じ、腐食が進みやすいため好ましくない。表1に金属の種類と標準水素電極を基準とした電極電位を示す。例えば金属材料がFeであった場合には、Feよりイオン化傾向の高い金属としてZnを選択することができ、そのときの電位差は0.32Vとなる。表1に示す金属以外でも電位差が発生すれば特に問題はなく、これらの合金でもよい。Znは比較的イオン化傾向が高く、かつ金属自体の抗菌性が強いため好ましい。
【0059】
【表1】

【0060】
また、酸化還元電位の異なる2種類以上の金属が電位差を生じた状態で水と接触すると、酸化還元電位の低いほうの金属が水に溶出する。ここで酸化還元電位の高いほうの金属は溶出しにくいため、長期間使用するためには溶出量の多い酸化還元電位の低いほうの金属の配合比率を多くしたほうがよい。
【0061】
金属の粒子径は除去しようとする微生物の大きさよりも大きいことが望ましい。電位差によって微生物を集めるためには、少なくとも電位がかかっている部分の間隔が微生物の大きさよりも大きい必要がある。粒子径が小さい場合でも複数の粒子が連なって間隔をあけた状態で電位が発生することが考えられるが、確率的には高くないと予想される。十分な距離を確保するためには、平均的な微生物の大きさである1μmより大きいことが好ましい。形状が繊維状である場合には太さではなく長さ方向について前記の条件であればよい。
【0062】
具体的には、金属の粒子径が0.3μm〜250μmであることが望ましい。250μm以上では除菌液の中で金属が沈降し、濃度差が発生しやすくなるという加工性の低下をまねき、また、皮膜を形成後に導電性付与剤や他金属粒子との接触面積が小さくなり、除菌効率が低下するため好ましくない。一方、0.3μm以下では、除菌液を作成する際に粉塵となって飛散しやすく、混合時には混合容器の微細な凹凸にまで入り込みやすいため、加工性が低下する。また、バインダーの固形分中に金属が取り込まれやすくなり、除菌効果が発現しにくいため好ましくない。また、研磨剤も250μm以上では除菌液の中で沈降し、濃度差が発生しやすくなるので、250μm以下であることが望ましい。
【0063】
酸化還元電位の異なる2種類以上の金属の粒子径比が1〜8であれば、導電性付与剤や他金属粒子との接触効率が良いために、高い除菌性能を得ることができる。ここで金属の粒子径比は、大きな粒子/小さな粒子の長さ比率である。
【0064】
導電性付与剤としては、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンマイクロコイル、カーボンナノコイル、不飽和結合をもつ導電性ポリマーなどの炭素材料が挙げられる。黒鉛とカーボンブラックはもっとも一般的に用いられる導電性の炭素材料であり、経済性が高い。また、導電性塗料として樹脂エマルジョンとカーボンを混合したものが市販されており、容易に入手可能である。炭素繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンマイクロコイル、カーボンナノコイルなどは樹脂の強度向上や軽量化や電磁波対策などの目的で樹脂に添加されることが多いが、その導電性を利用して本発明の除菌効果を得ることができる。また、電極として開発が進められている導電性ポリマーも、同様に除菌効果を得ることができる。
【0065】
導電性付与剤は、粉を使用する際には、あらかじめ粉砕しておくと混合が容易になる。また、導電性付与剤を分散した液体を用いるとさらに混合が容易である。樹脂とカーボンがあらかじめ混合された市販の導電性塗料を用いても良い。導電性付与剤は、金属の総量に対して配合比率で0.02wt%以上であることが好ましい。これによって除菌フィルタの表面に電位差を生じ、より高い電気的誘引効果を得ることができるために、十分な除菌性能を得ることができる。除菌液を塗布した基材表面の表面電気抵抗は、107Ω/□以下であることが望ましい。表面電気抵抗が高すぎると絶縁皮膜となって、電場の強さが低下し、除菌作用が低下するため好ましくない。また、除菌部材の表面電気抵抗が減ることで、除菌部材の帯電防止効果を得ることができる。
【0066】
金属および導電性付与剤は微細な粉末および/または繊維状であることが好ましい。粉末の場合、バインダーに金属と導電性付与剤を分散させる際に、分散性がよく加工しやすいという効果を得ることができる。また、繊維状にくらべて均一な状態を得やすいため、基材表面の色むらや凹凸の抑制など外観上の利点がある。繊維状の場合は、分散した際に金属と導電性付与剤との繊維同士の接点が多くなり、硬化したバインダー樹脂表面に局所的な電位差が発生する場所を多くすることができる。
【0067】
研磨剤としては、石英、カルサイト、珪砂、天然ケイ酸系鉱物、ケイ酸アルミニウム系鉱物、シリカゲル、珪華微粉末、シラス、白土、炭化ケイ素、アルミナ、ゼオライト、ガラスビーズ、アパタイト、セピオライト、層状無機化合物などが挙げられる。前記の研磨剤によって、こびりついた汚れを洗浄中の摩擦によって剥離し、洗浄力を高めることができるという作用を有する。なお、金属を研磨剤として利用してもよい。
【0068】
また、研磨剤がイオン交換能を有することを特徴としたものであり、イオン交換能によって、抗菌性の金属から溶出した銀や亜鉛などの抗菌性のイオンを研磨剤の中に保持することができ、研磨剤に抗菌作用を与えることができる。このため、初期状態で研磨剤に抗菌性がない場合でも、取り込んだ抗菌性のイオンの働きによって抗菌性を有する研磨剤を得ることができる。研磨剤は、汚れを落とす際に摩擦によって基材から脱落することがあるが、脱落した後の研磨剤および研磨剤が付着した汚れ成分に抗菌作用を与えることができるという作用を有する。イオン交換能を有する研磨剤としては、ゼオライト、アパタイト、セピオライト、層状無機物質などが挙げられる。
【0069】
基材の形状としては、繊維状、網状、ビーズ状、スリット状、板状、ハニカム状、スポンジ状、発泡形状などあらゆる形状が利用できる。網状の場合は、網状の基材を重ねて縫合して袋を作り、袋の内部にスポンジを入れることによって弾力性のある除菌部材を得ることができる。
【0070】
除菌性能は単位体積あたりの表面積が大きい形状が好ましく、3次元立体構造がよい。3次元立体構造としては繊維を絡ませた形状や発泡形状があり、例えば繊維を絡ませた形状であれば、表面部、連結部、裏面部からなるダブルラッセル編みの三次元立体編物などが挙げられ、発泡形状であれば発泡ウレタン、発泡ポリエチレンなどが挙げられる。例えば発泡ウレタンは、耐水性能に優れている上、安価で柔軟性があり、洗浄時に適度な変形が可能であるため、除菌部材としては最適である。発泡体基材で構成される除菌部材の場合、発泡密度が33セル/25mm以下のものが適する。開口部が狭すぎると除菌液が基材内部に浸透しにくくなるので、開口部の開口径は1mm以上であることが望ましい。
【0071】
台所や浴室の清掃用スポンジ、ブラシ、雑巾、マット、シート、収納容器、窓や車や家屋や建材のガラス汚れ剥離用ワイパー、あるいは洗車用具などの洗浄用具などの一部、あるいは全部を上記本発明の実施の形態1、あるいは下記本発明の実施例1乃至3のいずれかの除菌部材、除菌材で構成すれば、すなわち、備えれば、用いれば、汚れを落として除菌する洗浄効果と除菌効果の高い洗浄用具が得られる。
【0072】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に何ら限定して解釈されるものではない。
【実施例1】
【0073】
(1)金属として平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤としてのシクロヘキサノンに分散させたもの)とを、亜鉛とカーボンの重量比が11:5になる割合でよく混練してペースト状にし、除菌液を作成した。作成した除菌液を直径85mm(約57cm2)の円形に成型した樹脂板に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板A作成した。
【0074】
(2)金属として75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤としてのシクロヘキサノンに分散させたもの)とを、銅:カーボンの重量比が11:5になる割合でよく混練してペースト状にし、除菌液を作成した。作成した除菌液を樹脂板に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板Bを作成した。
【0075】
(3)金属として平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤としてのシクロヘキサノンに分散させたもの)とを、亜鉛:銅:カーボンの重量比が10:1:5になる割合でよく混練してペースト状にし、除菌液を作成した。作成した除菌液を樹脂板に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板Cを作成した。
【0076】
(4)亜鉛を96%、アクリル樹脂を4%含有する市販の塗料を樹脂板に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって比較板A作成した。
【0077】
(5)亜鉛を83%、アルミニウムを5%、アクリル樹脂を12%含有する市販の塗料を樹脂板に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって比較板Bを作成した。
【0078】
(6)何も処理せずに、比較板Cを作成した。
【0079】
前記(1)〜(6)の方法で作成した樹脂板を、除菌液の塗布面が上向きになるようにプラスチックシャーレ内に置いた。
【0080】
精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli,IFO3972)が約105(cfu/ml)になるように調製した菌液を作成した。菌液をそれぞれ20mlずつプラスチックシャーレに入れ、一定時間ごとに0.1mlの液を採取して培養することにより、菌数の変化を比較した。所定時間経過後の菌数を初期の菌数で割って規格化した値を菌の残存比として縦軸にとり、横軸に経過時間を表した結果を図4に示す。除菌板A、B、Cでは菌数が減少し、除菌されていることがわかった。除菌板AとBではZnを添加したAのほうが除菌速度が速かった。銅と亜鉛を添加した除菌板Cは特に1時間後の菌数減少が顕著であった。
【0081】
市販の塗料を塗布した比較板Aはわずかに菌数の減少が観察された。比較板B、Cでは菌数はほとんど変化せず、除菌効果が働いていないことがわかった。
【0082】
作成した除菌板および比較板の表面電気抵抗を測定した結果を表2に示す。市販の塗料である比較板A,Bでは表面抵抗が非常に高く、導電性を有していないことがわかる。一方、除菌板A、B、Cでは表面抵抗が低く導電性を有している。図4の結果と対比してみると、導電性を有している除菌板A、B、Cでは除菌性能があり、導電性を有していない比較板A、Bおよびなにも処理していない比較板Cでは除菌性能が低いことがわかった。
【0083】
【表2】

【実施例2】
【0084】
実施例1で作成した除菌板Cをスライドグラス上にのせ、顕微鏡の視野に入る位置に配置した。精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli,IFO3972)を添加し、約106cfu/ml程度の菌液を、除菌板Cに触れるようにスライドグラス上に0.2ml滴下した。ただちに顕微鏡で観察したところ、大腸菌は除菌板Cの特定の位置に偏在して移動し、凝集した。除菌板Cは亜鉛と銅と導電性カーボンが混在しており、どの位置に各材料が塗布されているか確認することはできなかった。大腸菌の大きさ(約2μm)に比べて、亜鉛と銅の大きさは十分に大きく(50〜150μm)、おそらく亜鉛が高濃度に存在する位置に菌が凝集しているものと思われた。
【実施例3】
【0085】
金属として平均粒子径5μmの亜鉛粉末と、5μmの銅粉末と、研磨剤としてのゼオライトと、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤としてのイソホロンに分散させたもの)を、亜鉛:銅:ゼオライト:カーボンの重量比が5:1:5:5になる割合でよく混練してペースト状にし、除菌液を作成した。基材として発泡密度が17セル/25mmの発泡ウレタンを、作成した除菌液に浸漬し、余剰液を排除した後、常温で30分通風排気し、100℃で2時間乾燥させて除菌スポンジAを作成した。このとき発泡ウレタンは、初期の長さを100%とすると、膨潤した状態で伸び率約130%となり、乾燥後の伸び率は115%であった。
【0086】
テトラエトキシシランにイソプロピルアルコールと1N塩酸を加えて加水分解を行い、バインダーを作成した。バインダー液に、研磨剤としてのゼオライトと、金属として平均粒子径5μmの亜鉛粉末と、金属として平均粒子径5μmの銅粉末とを加え、ボールミルにいれて攪拌・分散を5時間行い除菌液を作成した。作成した除菌液を塗装用のスプレーガンに入れ、基材として発泡密度が13セル/25mmの発泡ウレタンの表裏両面にスプレー噴霧した。その後、約100℃で約20分間乾燥させて除菌スポンジBを作成した。このとき発泡ウレタンは、初期の長さを100%とすると、膨潤した状態で伸び率約105%となり、乾燥後の伸び率は95%であった。
【0087】
何も処理しない発泡密度が17セル/25mmの発泡ウレタンを、無処理スポンジとした。
【0088】
また、除菌スポンジAを研磨して、発生した削りくずを試験容器に入れた。
【0089】
無処理スポンジ、除菌スポンジA、除菌スポンジBを3.1cm3の大きさに加工し、それぞれ50mlの容器に入れた。精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus,IFO12732)を添加し、約105cfu/ml程度の菌液を、各容器に40mlずつ入れた。除菌スポンジAの削りくずは、約0.1(g)を試験容器にいれ、菌液を1ml加えた。
【0090】
容器を密閉して約25℃の温度で振とうし、24時間後の菌数を比較した。結果を表3に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
無処理のスポンジでは、24時間後に菌が増殖した。一方、除菌液を塗布したスポンジA,Bでは、24時間後には菌数は検出限界以下であり、除菌液を塗布したスポンジには水中の菌の増加を抑制する効果があることがわかる。また、スポンジAを研磨した削りくずAにも水中の菌数の増加を抑制する効果があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の除菌部材では、除菌性を有する材料が樹脂に埋没せず全体が均一に除菌性能を有し、材料が強固に固定化され、かつ洗浄効果の高い除菌部材を提供することができ、台所や浴室の清掃用スポンジ、ブラシ、雑巾、マット、シート、窓や車や家屋や建材のガラス汚れ剥離用ワイパー、洗車用具などの洗浄用具、機器などへの展開用途が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態1に示す除菌液を塗布した除菌部材の概略断面図
【図2】同除菌液を塗布した除菌部材の概略断面図
【図3】同除菌スポンジの斜視図
【図4】本発明の実施例1に示す菌の残存比と経過時間の関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0095】
11 基材
12 バインダー
13 研磨剤
14 銅
15 亜鉛
16 カーボン
17 微生物
21 除菌スポンジ
22 基材の外表面
23 基材の内表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐水性を有する基材を備え、前記基材に除菌液を塗布して製造し、前記除菌液は、前記基材を膨潤可能な溶剤と、汚れを落とす研磨剤と酸化還元電位の異なる2種類以上の金属と、前記基材と前記研磨剤と前記金属を接着するバインダーとを含むことを特徴とする除菌部材。
【請求項2】
除菌液を塗布した後に、乾燥処理を行って製造したことを特徴とする請求項1記載の除菌部材。
【請求項3】
除菌液を塗布した後に、熱処理を行って製造したことを特徴とする請求項1記載の除菌部材。
【請求項4】
除菌液を塗布した後に、常温で通風処理を行い、さらに熱処理を行って製造したことを特徴とする請求項1記載の除菌部材。
【請求項5】
溶剤が、200℃以下の温度で揮発性を有することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の除菌部材。
【請求項6】
除菌液を塗布した基材が、膨潤した後、収縮することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の除菌部材。
【請求項7】
金属が金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、真鍮またはこれらの合金から選ばれるいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の除菌部材。
【請求項8】
金属が抗菌性を有することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の除菌部材。
【請求項9】
導電性付与剤を添加したことを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の除菌部材。
【請求項10】
研磨剤が石英、カルサイト、珪砂、天然ケイ酸系鉱物、ケイ酸アルミニウム系鉱物、シリカゲル、珪華微粉末、シラス、白土、炭化ケイ素、アルミナ、ゼオライト、ガラスビーズ、アパタイト、セピオライトから選ばれるいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の除菌部材。
【請求項11】
研磨剤がイオン交換能を有することを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の除菌部材。
【請求項12】
金属および研磨剤の粒子径が250μm以下であることを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載の除菌部材。
【請求項13】
基材が網構造または3次元立体構造であることを特徴とする請求項1乃至12いずれかに記載の除菌部材。
【請求項14】
除菌液を基材の外表面のみに塗布したことを特徴とする請求項1乃至13いずれかに記載の除菌部材。
【請求項15】
除菌液を塗布して製造した基材の表面が導電性を有することを特徴とする請求項15記載の除菌部材。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載の除菌部材を備えた洗浄用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−18075(P2009−18075A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183983(P2007−183983)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】