説明

除雪機

【課題】本発明は、除雪機において、内部に雪が詰まることによって機体に過大な負担がかかることを回避する技術を提供することを課題とする。
【解決手段】歩行型除雪機10は、エンジン54の動力をブロア61およびオーガ13へ伝達する駆動系に動力を断接するオーガクラッチ42およびこの断接状態を検出するクラッチスイッチ43を備え、シュータ15に雪が通過していることを検出する雪検出スイッチ76を備え、オーガクラッチ42が接続されているとのクラッチスイッチ43の情報を受け且つシュータ15に雪が通過していないとの雪検出スイッチ76の情報を受けたときにエンジン54の回転速度を低速になるように制御する制御部66を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪を集めるオーガを備えている除雪機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
雪を集めるオーガと、このオーガで集めた雪に力を付与するブロアと、このブロアを通過した雪を投雪方向にガイドするシュータと、を備えている除雪機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−336236公報(図1)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図7は従来の技術の基本構成を説明する図であり、除雪機100は、機体101に駆動源としてのエンジン102およびクローラを含む走行体103を設け、このエンジン102の出力軸102aにクラッチを含む動力伝達機構104を介してオーガ軸105を連結し、このオーガ軸105にブロア107およびオーガ106を取り付け、オーガ106およびブロア107を収容するハウジング108を設け、このハウジング108の上部に雪を投雪方向にガイドするシュータ109を設けてなる。
オーガ106で集めた雪は、ブロア107を通過しシュータ109によって、設定した方向に投雪される。
【0004】
ところで、特許文献1の技術では、除雪作業を行うときに、湿雪や氷状の雪など雪の状態によっては、ハウジング108やシュータ109内に雪が詰まることが考えられる。この場合、ブロア107、オーガ106に与える抵抗が増し、動力伝達機構104に過大な負担がかかる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、除雪機において、内部に雪が詰まることによって機体に過大な負担がかかることを回避する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、所定の低速とこの低速より回転速度の高い高速に回転速度を設定することができるエンジンで、機体の前部に設けたブロアおよびオーガを駆動することにより、オーガで集めた雪をブロアで加速し、シュータを介して投雪する除雪機において、この除雪機は、エンジンの動力をブロアおよびオーガへ伝達する駆動系に動力を断接するオーガクラッチを備え、このオーガクラッチにオーガクラッチの断接状態を検出するクラッチスイッチを備え、シュータに雪が通過していることを検出する雪検出スイッチを備え、
オーガクラッチが接続されているとのクラッチスイッチの情報を受け且つシュータに雪が通過しているとの雪検出スイッチの情報を受けたときにエンジンの回転速度を高速になるように制御し、オーガクラッチが接続されているとのクラッチスイッチの情報を受け且つシュータに雪が通過していないとの雪検出スイッチの情報を受けたときにエンジンの回転速度を低速になるように制御し、オーガクラッチが切断されているとのクラッチスイッチの情報を受けときにエンジンの回転速度を低速になるように制御する制御部を備え、ていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、シュータに、雪検出スイッチを設け、オーガクラッチが接続されたことを検出するクラッチスイッチを設け、オーガクラッチが接続されていても、雪検出スイッチが、雪詰まりを検出したときに、スロットル弁を閉じるようにする制御部を設ける。
【0008】
エンジンの出力軸にオーガクラッチが接続され、オーガが回転している除雪時において、シュータに雪が詰まったときに、シュータに雪が通過していることを検出する雪検出スイッチが雪の通過を検出しなくなる。オーガクラッチが接続されているとのクラッチスイッチの情報を受け且つシュータに雪が通過していないとの雪検出スイッチの情報を受けたときにエンジンの回転速度を低速になるように制御するので、エンジンの回転速度が低速になれば、オーガの回転速度は、低速になるため、動力伝達機構などに過大な負担がかかることを回避することができる。
【0009】
仮に、シュータに雪検出スイッチを設けていないときに、シュータ内に雪詰まりが発生した場合には、動力伝達機構、シュータおよびオーガなどに過大な負担がかかる虞がある。
この点、本発明では、雪検出スイッチが、雪の通過を検出しないときに、エンジンの回転速度を低速になるように制御するので、動力伝達機構、シュータおよびオーガなどに過大な負担がかかる虞はない。動力伝達機構などに過大な負担がかかり難くなれば、除雪機の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る歩行型除雪機の左側面図であり、除雪機の一形態である歩行型除雪機10は、機体11と、この機体11の後部下方に取り付けられている左右の車輪11L、11R(手前側の符号11Lのみ示す。以下同じ。)と、これらの車輪11L、11Rの前方に配置され後述する駆動源としてのエンジンに駆動され雪を集めるオーガ13と、このオーガ13および機体11の周囲を覆うケース体14と、このケース体14の上面14tに配置されオーガ13で集めた雪を投雪方向にガイドするシュータ15と、機体11の下部から斜後上方に延びており作業者が操作するハンドル部16と、このハンドル部16に設けられ後述するオーガクラッチを断接するオーガクラッチレバー17と、を備えている。図中、24は燃料タンクの給油キャップである。
【0011】
シュータ15は、機体11の上面に回動可能に取り付けられている本体部21と、この本体部21の上部に横向きまたは上向きに揺動可能に取り付けられ投雪方向を変化させるフラップ22と、このフラップ22に取り付けられシュータ15の向きを操作可能にする操作バー23とからなる。シュータ15は回動可能であるので、除雪機の周囲全方向にわたり投雪可能であり、フラップ22は揺動可能であるので、投雪に係る傾きを変化させることができる。
【0012】
なお、この歩行型除雪機10には、車輪11L、11Rを駆動する機構は含まれていない。歩行型除雪機10を移動させるときは、作業者が直接ハンドル部16を押し引きまたは旋回操作をする。
なお、本実施例において歩行型であるが、車輪に駆動機構を設け自走形とすることは差し支えない。
【0013】
図2は本発明に係る歩行型除雪機に備えられているシュータの側面図(一部断面図)である。シュータ15の上部には、ヒンジ部51を介してフラップ22が設けられている。 図中、52はフラップ22に形成された長穴状のガイド溝であり、ヒンジ部51を軸に、フラップ22は、ガイド溝52に沿って本体部21に水平に立設したガイドピン53にガイドされ上向きまたは横向きに揺動可能に設けられている。フラップ22の向きは上向きである。
【0014】
ここで、フラップ22の向きが上向きとは、シュータ15の軸に沿ってフラップ22が延びている状態であり、フラップ22の向きが横向きとは、シュータ15に対しフラップ22が略直角に曲げられている状態をいう。
【0015】
以下、シュータ15に設け雪が通過しているか否かを検出する雪検出スイッチ76について説明すると、シュータ15の構成要素としての本体部21の側壁に、開口74を設け、この開口74の端部に、ヒンジ75を介して検出片77を揺動可能に設け、ヒンジ75に、検出片77をシュータ15の内壁に対して略直角に向くように付勢するばね部材78を設け、シュータ15の外方に、検出片77の他端77bに当接可能に雪検出スイッチ76としてのリミットスイッチ79を設ける。
【0016】
検出片77の一端77aは、シュータ15の内側に延びており、検出片77の他端77bは、シュータ15の外側に延びている。
リミットスイッチ79は、シュータ15の外壁15uに立設したステー81に取り付けられている。
【0017】
図3は本発明に係る雪検出スイッチの作用説明図である。
(a)において、除雪機10は停止中であって、除雪機10のオーガ(図1の符号13)が止まっており、シュータ15内に雪がない状態を示す。このとき、検出片77は、ばね部材(図2の符号78)によって矢印a方向に付勢され内壁15iに対して略直角に位置する。そして、検出片77の他端77bは、リミットスイッチ79の検出部79aに当接し、この検出部79aを押し込んでいる。
【0018】
(b)において、除雪機10は運転中であって、除雪機10のオーガが高速で回転し、後述するブロアにより雪がシュータ15の内側を通過する状態を示す。このとき、検出片77は、通過する雪Sによって押され、傾けられている。そして、検出片77の他端77bは、リミットスイッチ79の検出部79aに当接しているが、この検出部79aを押し込むまでには至らない。
【0019】
(c)において、除雪機10は運転中であって、シュータ15内に、雪Sが詰まった状態にあり、雪Sの通過がないため、検出片77は、ばね部材78により付勢され、シュータ15の側壁に略直角の位置に戻り検出片77の他端77bは、検出部79aに当接するとともにこの検出部79aを押し込んでいる。
【0020】
図4は本発明に係る歩行型除雪機に備えられているオーガクラッチレバーの側面図およびその作用説明図である。
図4(a)において、ハンドル部16の上端に、ハンドル部16の構成要素であって作業者が運転時に把持する横アーム41が水平に延びており、この横アーム41に離間してオーガクラッチ42の構成要素としてオーガクラッチ42を断接するオーガクラッチレバー17が設けられ、このオーガクラッチレバー17に近接してオーガクラッチ42が接続されたことを検出するオーガクラッチスイッチ43が設けられている。
【0021】
オーガクラッチスイッチ43は、ハンドル部16に立設したブラケット44に取り付けられている。オーガクラッチスイッチ43には、リミットスイッチ45が利用されている。
オーガクラッチレバー17は、軸部46と、この軸部46に揺動可能に取り付けクラッチの接断レバーとしてのレバー部47と、軸部46に設けレバー部47を横アーム41から離す方向に付勢するばね部48とからなる。
【0022】
図中、オーガクラッチ42が遮断されている状態(OFF)が示されており、オーガクラッチスイッチ43の検出部にオーガクラッチレバー17が接触している。
【0023】
図4(b)において、オーガクラッチ42が接続されている状態(ON)が示されている。作業者の操作によりオーガクラッチレバー17が引きつけられて横アーム41に近接されている。このとき、オーガクラッチスイッチ43の検出部からオーガクラッチレバー17は離間している。
【0024】
図5は本発明に係る歩行型除雪機の構成を説明するブロック図であり、図1を併せて参照し説明を行う。
歩行型除雪機10を構成する機体11に、エンジン54が設けられ、機体11の前端にエンジン54により駆動され雪を集めるオーガ13が設けられ、このオーガ13とエンジン54の間に動力を断接するオーガクラッチ42が設けられている。
【0025】
オーガクラッチ42は、クラッチ本体56と、このクラッチ本体56から延びているケーブルワイヤ57と、このケーブルワイヤ57に接続するオーガクラッチレバー17とを主要な構成要素とする。
【0026】
オーガ13とシュータ15の間には、オーガ13で集めた雪を吹き飛ばすブロア61が設けられ、このブロア61は、オーガ13を駆動するオーガ駆動軸62に接続されている。
【0027】
エンジン54には、その出力軸54Jの回転速度を検出するエンジン回転センサ63、供給する燃料の量を調整するスロットル弁64、およびこのスロットル弁64の開き量を調整するスロットル弁制御モータ65を備えている。
【0028】
また、シュータ15内に、雪検出スイッチを設け、オーガクラッチ42が接続され、且つ、雪検出スイッチ76が、雪詰まりを検出したときに、スロットル弁64を閉じるようにする制御部66を設ける。
【0029】
なお、制御部66をエンジン54に設けることは差し支えない。
図中、68は制御部66とスロットル弁制御モータ65の間に介在させたドライバ、69はスロットルの実際の開度を検出するスロットル開度センサである。
【0030】
以上に述べた除雪機の作用を次に述べる。
図6は本発明に係る歩行型除雪機の動作フロー図であり、図1〜図5に基づいて説明する。ST××はステップ番号を示す。
ST01でエンジン54を始動させ、機体11を除雪が必要な位置まで移動させ、オーガクラッチレバー17を引き、オーガクラッチ42をオン(ON)にする。このとき、オーガクラッチ42が接続されたことは、クラッチスイッチ43によって検出される。(ST02)。
ST02でオーガクラッチ42が接続されているとのクラッチスイッチ43の情報を受けないときは、エンジン54が低速(Ni)で回転し(ST03)、オーガクラッチ42が接続されているとのクラッチスイッチ43の情報を受けたときは、ST04に進む。
【0031】
ST04でシュータ15の雪検出スイッチ76が雪の通過を検出したか否かを検出する。雪検出スイッチ76としてのリミットスイッチ79の検出部79aにプレート状を呈する検出片77の他端77bが当接しているが、この検出部79aを押し込んでいない状態では、雪検出スイッチ76は、シュータ15内を雪が通過していることを検出する。雪検出スイッチ76が、雪は通過しているものと検出すれば、エンジン54は高速(Nh)で回転し(ST05)、雪検出スイッチ76が、雪は通過しているものと検出しなければ、エンジン54は低速(Ni)で回転する(ST03)。
すなわち、シュータ15内に、雪検出スイッチ76を設けた。そして、シュータ15内に雪が通過せず、雪が詰まっているときに、エンジン54の速度モードを低速に切り換えるようにした。
【0032】
上記説明に基づいて、本発明に係る歩行型除雪機の構成をまとめると次のようになる。
除雪機の一形態である歩行型除雪機10には、所定の低速とこの低速より回転速度の高い高速に回転速度を設定することができるエンジン54で、機体11の前部に設けたブロア61およびオーガ13を駆動することにより、オーガ13で集めた雪をブロア61で加速し、シュータ15を介して投雪するものであって、エンジン54の動力をブロア61およびオーガ13へ伝達する駆動系に動力を断接するオーガクラッチ42を備え、このオーガクラッチ42にオーガクラッチ42の断接状態を検出するクラッチスイッチ43(オーガクラッチスイッチ43)を備え、シュータ15に雪が通過していることを検出する雪検出スイッチ76を備え、オーガクラッチ42が接続されているとのクラッチスイッチ43の情報を受け且つシュータ15に雪が通過しているとの雪検出スイッチ76の情報を受けたときにエンジン54の回転速度を高速になるように制御し、オーガクラッチ42が接続されているとのクラッチスイッチ43の情報を受け且つシュータ15に雪が通過していないとの雪検出スイッチ76の情報を受けたときにエンジン54の回転速度を低速になるように制御し、オーガクラッチ42が切断されているとのクラッチスイッチ43の情報を受けときにエンジン54の回転速度を低速になるように制御する制御部66を備えている。
【0033】
図3を併せて参照して、エンジン54の出力軸54Jにオーガクラッチ42が接続され、オーガ13が回転している除雪時において、シュータ15内に雪が詰まったときに、雪検出スイッチ76は、雪が通過していないことを検出する。そうすると、制御部66の指令によって、エンジン54のスロットル弁64が閉じられる。スロットル弁64が閉じられると、オーガ13の回転速度は、低速回転になるため、オーガクラッチ42、エンジン54、オーガ駆動軸62などの動力部・動力伝達機構やシュータ15およびオーガ13などに過大な負担がかかることを回避することができる。
【0034】
仮に、シュータ15内に雪検出スイッチ76を設けていないときに、シュータ15内に雪詰まりが発生した場合には、シュータ15やオーガ13などに過大な負担がかかる虞がある。
この点、本発明では、雪検出スイッチ76が、雪詰まりを検出したときに、スロットル弁64を閉じるようにしたので、シュータ15やオーガ13などに過大な負担がかかる虞はない。動力部・動力伝達機構やシュータ15やオーガ13などに過大な負担がかかり難くなれば、除雪機10の長寿命化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、エンジンでオーガを駆動する形式の歩行型除雪機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る歩行型除雪機の左側面図である。
【図2】本発明に係る歩行型除雪機に備えられているシュータの側面図(一部断面図)である。
【図3】本発明に係る雪検出スイッチの作用説明図である。
【図4】本発明に係る歩行型除雪機に備えられているオーガクラッチレバーの側面図およびその作用説明図である。
【図5】本発明に係る歩行型除雪機の構成を説明するブロック図である。
【図6】本発明に係る歩行型除雪機の動作フロー図である。
【図7】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
10…除雪機、11…機体、13…オーガ、15…シュータ、42…オーガクラッチ、54…エンジン、63…エンジン回転センサ、64…スロットル弁、65…スロットル弁制御モータ、66…制御部、76…雪検出スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の低速とこの低速より回転速度の高い高速に回転速度を設定することができるエンジンで、機体の前部に設けたブロア及びオーガを駆動することにより、オーガで集めた雪をブロアで加速し、シュータを介して投雪する除雪機において、
この除雪機は、前記エンジンの動力を前記ブロア及びオーガへ伝達する駆動系に前記動力を断接するオーガクラッチを備え、このオーガクラッチにオーガクラッチの断接状態を検出するクラッチスイッチを備え、前記シュータに雪が通過していることを検出する雪検出スイッチを備え、
前記オーガクラッチが接続されているとの前記クラッチスイッチの情報を受け且つ前記シュータに雪が通過しているとの前記雪検出スイッチの情報を受けたときに前記エンジンの回転速度を前記高速になるように制御し、
前記オーガクラッチが接続されているとの前記クラッチスイッチの情報を受け且つ前記シュータに雪が通過していないとの前記雪検出スイッチの情報を受けたときに前記エンジンの回転速度を前記低速になるように制御し、
前記オーガクラッチが切断されているとの前記クラッチスイッチの情報を受けときに前記エンジンの回転速度を前記低速になるように制御する制御部を備え、
ていることを特徴とする除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−281026(P2009−281026A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133339(P2008−133339)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】