説明

除電システム

【課題】除電器とロボットアームを組み合わせた大型ガラス基板の表面静電気を除去する除電システムを提供する。
【解決手段】除電システムは、ロボットアームと、ロボットアームの前端に設けられるフォークと、ロボットアームに設けられるリンクセットと、リンクセットに設けられ、リンクセットを介して固定範囲で往復移動して静電気を除去する除電器とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は除電システムに関し、特に除電器とロボットアームを組み合わせた大型ガラス基板の表面静電気を除去する除電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
軽量化、薄型化、高解像度、低輻射の要求に伴い、PDP(プラズマ表示パネル)、LCD(液晶ディスプレイ)、OLED(有機発光ダイオード)などのフラットパネル表示器はますます脚光を浴びてきた。良好な製作品質及び歩留まりを確保するため、製作工程の各プロセスはいずれも重要である。
【0003】
TFT−LCD(薄膜トランジスター液晶ディスプレイ)を例にすれば、各プロセス間の搬送過程では、接触または摩擦によりガラス基板に静電気が発生することが多い。微量の静電気でも電場周辺の微粒物質を吸い付き汚染を招くことがある。のみならず、静電気により電荷が累積し、一定量になると瞬時に放電してガラス基板上の半導体素子を破壊することもある。そのため、ガラス基板の製作過程では常に除電を行わなければならない。なお、ガラス基板はカセット内に収納されるものであるから、カセットを運搬する過程で静電気が発生する可能性もないわけではない。その後の工程において、カセットを製作装置のカセットステーションに置き(カセットステーションは2から4個のカセットポートに対応する)、更にロボットアームで基板を取り出す過程では、静電気が発生することが多い。そのため、従来の技術は、カセットポートの周辺にバータイプの除電器を設け、カセットポートにおけるカセットの有無に関わらず除電器を常時作動させる方法を採用する。
【0004】
図1は従来のバータイプ除電器を表す説明図である。図1によれば、バータイプ除電器2は交流高圧4を針状電極(放電針)6に印加し、放電針6と接地面間のコロナ放電を起こさせイオンを生じさせる。続いてバーの内部に圧縮ドライエアー(CDA)を通らせ、放電針6によるイオンをガラス基板8の表面に吹き飛ばし、ガラス基板8の表面を電気的に中和して静電気を除去する。
【0005】
従来の技術では、バータイプ除電器の設置はガラス基板の面積、除電器とガラス基板間の距離、及び除電器の角度によって決められる。したがって、ガラス基板の大型化に伴い、バータイプ除電器の数量を増加しなければならず、それに伴ってCDAの使用量もバーの内径に正比例して増えることとなる。しかし、バータイプ除電器の増加はコスト増につながるのみならず、カセットステーションの配置空間にも大きく影響する。そのほかにも、CDAの使用量の増加はエネルギー消費を増加させ、クリーンルームの温湿度制御に支障をきたす。したがって、フラットパネル表示器における除電の目標は有効性を向上させることにあるのみならず、コスト削減と省エネルギーも強く要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は前述の問題を解決するため、除電器とロボットアームを組み合わせた大型ガラス基板の表面静電気を除去する除電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は第一の除電システムを提供する。該除電システムは、ロボットアームと、ロボットアームの前端に設けられるフォークと、ロボットアームに設けられるリンクセットと、リンクセットに設けられ、リンクセットを介して固定範囲で往復移動して静電気を除去する除電器とを含む。
【0008】
この発明は第二の除電システムを提供する。該除電システムは、ロボットアームと、ロボットアームの前端に設けられるフォークと、フォークに設けられるリンクセットと、リンクセットに設けられ、リンクセットを介して固定範囲で往復移動して静電気を除去する除電器とを含む。
【0009】
この発明は第三の除電システムを提供する。該除電システムは、ロボットアームと、ロボットアームの前端に設けられるフォークと、ロボットアームに設けられるバータイプ除電器とを含む。
【0010】
この発明は第四の除電システムを提供する。該除電システムは、第一ロボットアームと、第一ロボットアームの前端に設けられるフォークと、第二ロボットアームと、第二ロボットアームに設けられる載置台と、載置台に設けられ、固定範囲で往復移動して静電気を除去する除電器とを含む。
【発明の効果】
【0011】
従来の技術と比べ、この発明は以下の特長を有する。
1.従来の除電設備及び技術を利用することで実現できる。例えば除電器とロボットアームを組み合わせるか、またはロボットアームに除電器を設置する。
2.最適時点に除電を実行できる。例えば製品の一部をはがすとき、または先頭の尖ったものが接近するときにだけ除電することができ、除電の有効性を確保する。
3.CDAなしか、または少量のCDAのみで除電できる。この発明による除電器は静電気発生領域(例えばガラス基板の表面と底面)に対し近距離で除電を行うため、CDAを使わなくとも周辺気流のみで除電を行うことができる。それによりクリーンルームの温湿度制御上の困難さ及びエネルギー消費はいずれも軽減される。もっとも、除電の速度を速めるためには、少量のCDAを使うことも可能である。
4.除電器をロボットアームに設けることは設置空間を有効に節約できる。そうすれば従来の技術のようなカセットステーションの空間配置問題を解決するとともに、除電器の数量を減らすことによってコストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
かかる装置の特徴を詳述するために、具体的な実施例を挙げ、図示を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
図2を参照する。図2はこの発明の実施例1による除電システムを表す説明図である。図2によれば、除電システム10はロボットアーム12を有し、ロボットアーム12の前端にはガラス基板13を載せるフォーク14が設けられる。除電器16はリンクセット18を介してロボットアーム12に設けられる。この実施例における除電器はバータイプ、ファン型、高周波型、光照射型などのものであり、フォーク14はガラス基板13を載せる複数のアーム15を含む。除電器16に連接するリンクセット18は2個のヒンジ20を有する。ヒンジ20上の第一サーボモーター22と第二サーボモーター24を制御することにより、除電器16を直線に沿って往復移動させ、ガラス基板13全体を走査させる。この実施例によれば、ロボットアーム12が基板を載置すると除電器16が起動され、それと同時にリンクセット18は除電器16を動かしガラス基板13を走査し、ガラス基板13表面の静電気を除去する。
【実施例2】
【0014】
図3を参照する。図3はこの発明の実施例2による除電システムを表す説明図である。図3によれば、除電システム30はロボットアーム32を有し、ロボットアーム32の前端にはガラス基板33を載せる複数のアーム35を含んだフォーク34が設けられる。除電器36はリンクセット38を介してロボットアーム32に設けられる。この実施例における除電器はバータイプ、ファン型、高周波型、光照射型などのものである。実施例1とは異なり、実施例2では、リンクセット38はフォーク34の両側のアーム35に設けられるグルーブ40と、両端がグルーブ40と除電器36とそれぞれ連接する固定リンク42と、固定リンク42のうち一つに設けられるサーボモーター39とを含む。この実施例では、ロボットアーム32が基板を載置すると除電器36が起動され、それと同時にリンクセット38は除電器36をグルーブ40に沿って動かし、ガラス基板33を往復走査し、ガラス基板33の表面の静電気を除去する。注意すべきは、図には3本のアームが示されているが、この発明はそれに限らず、アームの本数いかんに拘わらずすべてこの発明の範囲に属する。
【実施例3】
【0015】
図4から図6を参照する。図4から図6はこの発明の実施例3による除電システムを表す説明図である。図4によれば、除電システム50はロボットアーム52を有し、ロボットアーム52の前端にはガラス基板53を載せる複数のアームを含んだフォーク54が設けられる。除電器56は固定台58を介してロボットアーム52に設けられる。この実施例における除電器はバータイプ、ファン型、高周波型、光照射型などのものである。バータイプ除電器を例にすれば、ロボットアーム52が基板を移動すると除電器56が起動される。それと同時に、CDAを除電器56のバーの内部に通し、交流電圧を印加することにより、除電器56のバー内部の放電針(図1に示されるようなもの)でコロナ放電を起こさせ、正負のイオンを帯びた気体を吹き付けてガラス基板53の表面の静電気を中和する。図5によれば、除電器56の有効角度を制御するため、固定台58に一定角度を持たせることが可能である。そうすると気体を吹き付ける角度を交叉させ、正負のイオンをガラス基板53の表面全体に吹きかけ、ガラス基板53表面の静電気を除去することが可能となる。なお、この実施例による除電器56の数量及び設置位置は吹き付け角度及びガラスの面積に応じて決められる。図6によれば、除電器66をロボットアーム62の下方にある固定台68に設けることも可能である。そうすると除電器66はガラス基板63の下方から底面の静電気を除去することができる。さらに、除電器66をロボットアーム62の上方及び下方に同時に設け、ガラス基板63の表面と底面の静電気を除去することも可能である。
【実施例4】
【0016】
図7を参照する。図7はこの発明の実施例4による除電システムを表す説明図である。図7によれば、除電システム70は第一ロボットアーム72と、第二ロボットアーム76と、第二ロボットアーム76の前端に設けられる載置台78と、載置台に設けられる少なくとも一つの除電器80を含む。第一ロボットアーム72の前端にはガラス基板73を載せる複数のアーム75を含んだフォーク74が設けられる。除電器80はバータイプ、ファン型、高周波型、光照射型など周知のものであり、特定の除電器に限らない。この実施例では、第一ロボットアーム72が基板を載置する前に第二ロボットアーム76がガラス基板73の下縁または上縁の方向に動いて除電を行うか、または第一ロボットアーム72が基板を載置するときに第一ロボットアーム72と第二ロボットアーム76が同時に下縁または上縁の方向に動いて除電を行うことが可能である。
【0017】
以上はこの発明に好ましい実施例であって、この発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、この発明の精神の下においてなされ、この発明に対して均等の効果を有するものは、いずれもこの発明の特許請求の範囲に属するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明は従来の除電設備及び技術を利用するだけで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のバータイプ除電器を表す説明図である。
【図2】この発明の実施例1による除電システムを表す説明図である。
【図3】この発明の実施例2による除電システムを表す説明図である。
【図4】この発明の実施例3による除電システムを表す第一説明図である。
【図5】この発明の実施例3による除電システムを表す第二説明図である。
【図6】この発明の実施例3による除電システムを表す第三説明図である。
【図7】この発明の実施例4による除電システムを表す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
2 バータイプ除電器
4 交流高圧
6 放電針
8 ガラス基板
10、30、50、70 除電システム
12、32、52、62 ロボットアーム
13、33、53、63、73 ガラス基板
14、34、54、74 フォーク
15、35、55、75 アーム
16、36、56、66、80 除電器
18、38 リンクセット
20 ヒンジ
22 第一サーボモーター
24 第二サーボモーター
39 サーボモーター
40 グルーブ
42 固定リンク
58、68 固定台
72 第一ロボットアーム
76 第二ロボットアーム
78 載置台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、
ロボットアームの前端に設けられるフォークと、
ロボットアームに設けられるリンクセットと、
リンクセットに設けられ、リンクセットを介して固定範囲で往復移動して静電気を除去する除電器とを含むことを特徴とする除電システム。
【請求項2】
前記フォークが複数のアームを含むことを特徴とする請求項1記載の除電システム。
【請求項3】
前記リンクセットは、
ロボットアームと連接する第一ヒンジと第二ヒンジとを有する第一リンクと、
両端が第二ヒンジと除電器とそれぞれ連接する第二リンクと、
第一ヒンジに設けられる第一サーボモーターとを含むことを特徴とする請求項1記載の除電システム。
【請求項4】
前記リンクセットは更に、第二ヒンジに設けられる第二サーボモーターを含むことを特徴とする請求項3記載の除電システム。
【請求項5】
前記除電器がバータイプ、ファン型、高周波型または光照射型除電器であることを特徴とする請求項1記載の除電システム。
【請求項6】
ロボットアームと、
ロボットアームの前端に設けられるフォークと、
フォークに設けられるリンクセットと、
リンクセットに設けられ、リンクセットを介して固定範囲で往復移動して静電気を除去する除電器とを含むことを特徴とする除電システム。
【請求項7】
前記フォークが複数のアームを含むことを特徴とする請求項6記載の除電システム。
【請求項8】
前記リンクセットは、
フォーク両側のアームに設けられる二つのグルーブと、
両端がグルーブと除電器とそれぞれ連接する2本の固定リンクと、
固定リンクのうち1本に設けられるサーボモーターとを含むことを特徴とする請求項7記載の除電システム。
【請求項9】
前記除電器がバータイプ、ファン型、高周波型または光照射型除電器であることを特徴とする請求項6記載の除電システム。
【請求項10】
ロボットアームと、
ロボットアームの前端に設けられるフォークと、
ロボットアームに設けられるバータイプ除電器とを含むことを特徴とする除電システム。
【請求項11】
前記フォークが複数のアームを含むことを特徴とする請求項10記載の除電システム。
【請求項12】
前記バータイプ除電器は、
高圧気体通路及び電源装置を内蔵したバーと、
バーに設けられ、電源装置と電気的に接続する複数の放電針と、
バーに設けられ、放電針とそれぞれ対応して高圧気体通路とつながっている複数のノズルとを含むことを特徴とする請求項10記載の除電システム。
【請求項13】
第一ロボットアームと、
第一ロボットアームの前端に設けられるフォークと、
第二ロボットアームと、
第二ロボットアームに設けられる載置台と、
載置台に設けられ、固定範囲で往復移動して静電気を除去する除電器とを含むことを特徴とする除電システム。
【請求項14】
前記フォークが複数のアームを含むことを特徴とする請求項13記載の除電システム。
【請求項15】
前記除電器がバータイプ、ファン型、高周波型または光照射型除電器であることを特徴とする請求項13記載の除電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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