説明

除電方法ならびに電気光学装置用基板および電気光学装置の検査方法および製造方法

【課題】例えば各種物品や液晶装置等の電気光学装置における基板上の構成部材などが静
電気等によって帯電した場合に、放射線等の特段のエネルギー源を用いることなく除電す
ることのできる除電方法および該除電方法を適用した電気光学装置用基板および電気光学
装置の検査方法および製造方法を提供する。
【解決手段】正または負に帯電した被除電物の表面または周囲の雰囲気中に管体を介して
気体を導入することによって前記被除電物の帯電電荷を除去する除電方法であって、前記
管体を介して前記気体を導入する際の前記管体と前記気体との摩擦によって前記気体を、
前記被除電物と逆極性に帯電させた状態で前記被除電物の表面または周囲の雰囲気中に導
入して前記被除電物の帯電電荷を除去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種物品や液晶装置等の電気光学装置における基板上の構成部材など
が静電気等によって帯電した場合に、それを除電する除電方法ならびに該除電方法を適用
した電気光学装置用基板および電気光学装置の検査方法および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶装置等の電気光学装置においては、基板上の画像表示領域に、データ
線や走査線などの各種配線や、画素電極などの各種電極、およびTFT(薄膜トランジス
タ)などのスイッチング素子を始めとする各種の素子等を設け、その周辺領域にデータ線
駆動回路や走査線駆動回路などの配線や素子等を設けている。それらの各種配線や電極ま
たは素子等の構成部材は、最近ますます微細化および集積化する傾向にあるため、上記基
板や電気光学装置の製造中または製造後に、上記構成部材の表面が静電気等によって帯電
すると、絶縁破壊や製造不良によって製品の歩留まりが低下したり、性能劣化や誤動作の
原因となる等の問題がある。
【0003】
一方、上記基板上に形成された各種配線や電極または素子等の構成部材の電気的な特性
等を間接的に検査するために、それらの構成部材の模擬的なテストパターンとして、いわ
ゆるテストエレメントグループ(以下、TEGとも称する)を上記周辺領域のあいたスペ
ース等に設けている。例えば、上記基板上にTFTを形成する際には、これと同一工程で
同一構造のTEGを上記周辺領域のあいたスペース等に形成している。そして、上記基板
の製造中や製造後に、検査用プローブ等を用いて上記TEGの電気的特性等を測定するこ
とによって、上記TFTの電気的特性等を間接的もしくは模擬的に検査するものである。
【0004】
ところが、上記のようなTEGの電気的特性等を測定する場合にも、TEGが静電気等
によって正または負に帯電していると、電気的特性等の測定に誤差が生じて精度のよい測
定が困難となったり、それによって適正な電気的特性を有する構成部材や基板もしくは電
気光学装置の製造が困難になる等の問題があった。
【0005】
上記のような帯電による不具合を解消する方法として、従来から種々の対策が提案され
ており、例えば下記特許文献1には、放射性同位体からなる放射線源及び被除電物を気体
を介して配置し、前記放射線源により気体をイオン化して正負のイオンを発生させ、被除
電物表面の電荷を逆極性のイオンにより中和することが提案されている。また上記以外に
も上記特許文献1の[従来の技術]の欄に記載のように、コロナ放電を利用した方法や紫
外線を用いる方法、さらに軟X線を用いた方法がある。
【0006】
【特許文献1】特開平7−45397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記いずれの方法も放射線源やコロナ放電または紫外線もしくは軟X線を発生
させるためのエネルギー源が必要で、そのための設備や維持管理等のメンテナンスにも多
大な労力と時間を要し、ランニングコストが掛かる等の問題がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、上記のような放射線やコロナ放電等
の特段のエネルギー源を用いることなく容易・迅速に且つ簡単・確実に除電することので
きる除電方法ならびに該除電方法を用いた電気光学装置用基板および電気光学装置の検査
方法および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明による除電方法は、以下の構成としたものである。
即ち、正または負に帯電した被除電物の表面または周囲の雰囲気中に管体を介して気体を
導入することによって上記被除電物の帯電電荷を除去する除電方法であって、前記管体を
介して前記気体を導入する際の前記管体と前記気体との摩擦によって前記気体を、前記被
除電物と逆極性に帯電させた状態で前記被除電物の表面または周囲の雰囲気中に導入して
前記被除電物の帯電電荷を除去することを特徴とする。
【0010】
上記のように本発明による除電方法は、気体が管体を通過する際の摩擦によって該気体
を、被除電物表面の電荷と逆極性に帯電させ、それによって被除電物を除電するようにし
たから、前記従来例のように放射線源やコロナ放電または紫外線もしくは軟X線等の特段
のエネルギー源を用いることなく各種物品を容易・迅速に且つ簡単・確実に除電すること
ができるものである。
【0011】
なお、上記の気体は、上記管体を介して被除電物の表面に直接吹き付けるか、或いは被
除電物をチャンバ内に収容し、該チャンバ内に上記の気体を前記管体を介して導入するよ
うにしてもよい。上記いずれの場合にも被除電物を良好に除電することができる。
【0012】
また上記被除電物と管体とは互いに相対的に移動可能に構成してもよく、また上記被除
電物と管体およびチャンバとは相対的に移動可能に構成してもよい。そのように構成する
と、被除電物に気体を万遍なく吹き付けたり、あるいは長尺の被除電物や複数個の被除電
物を連続的に効率よく除電することが可能となる。
【0013】
さらに本発明による電気光学装置用基板の検査方法は、基板上に形成した配線、電極ま
たは素子に対応して該基板の縁部に形成したテストエレメントグループに、検査用プロー
ブを接触させて電気的特性を測定することによって、前記配線、電極または素子の状態を
間接的に検査する電気光学装置用基板の検査方法であって、前記電気的特性を測定する前
に、帯電した前記テストエレメントグループまたは基板を前記被除電物として前記の除電
方法により除電処理を行うことを特徴とする。このような除電処理を行った後に測定作業
を行うことで、上記テストエレメントグループが帯電した場合にも容易・迅速に且つ簡単
・確実に除電して精度よく測定することが可能となる。
【0014】
また本発明による電気光学装置の検査方法は、基板上に形成した配線、電極または素子
に対応して該基板の縁部に形成したテストエレメントグループに、検査用プローブを接触
させて電気的特性を測定することによって、前記配線、電極または素子の状態を間接的に
検査する電気光学装置の検査方法であって、前記電気的特性を測定する前に、帯電した前
記テストエレメントグループまたは前記基板を前記被除電物として前記の除電方法により
除電処理を行うことを特徴とする。このような除電処理を行った後に測定作業を行うこと
で、上記テストエレメントグループが帯電した場合にも容易・迅速に且つ簡単・確実に除
電して精度よく測定することが可能となる。
【0015】
さらに本発明による電気光学装置用基板の製造方法は、基板上に配線、電極または素子
の構成部材を形成する工程を有する電気光学装置用基板の製造方法であって、前記構成部
材を形成又は処理した後に、帯電した前記構成部材または前記基板を前記被除電物として
前記の除電方法により除電する工程を有することを特徴とする。このような工程を設ける
ことによって、上記構成部材が帯電した場合にも容易・迅速に且つ簡単・確実に除電して
良好な電気光学装置用基板を製造することが可能となる。
【0016】
さらに本発明による電気光学装置の製造方法は、基板上に配線、電極または素子の構成
部材を形成する工程を有する電気光学装置の製造方法であって、前記構成部材を形成又は
処理した後に、帯電した前記構成部材または前記基板を前記被除電物として前記の除電方
法により除電する工程を有することを特徴とする。このような工程を設けることによって
、上記構成部材が帯電した場合にも容易・迅速に且つ簡単・確実に除電して良好な電気光
学装置用基板を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明による除電方法および該除電方法を適用した電気光学装置用基板の製造方
法ならびに電気光学装置の製造方法を図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0018】
〔除電方法〕
図1は本発明による除電方法の一実施形態を示す説明図である。図において、1は正ま
たは負に帯電した被除電物で、本実施形態においては固定の台座2上に載置されている。
その被除電物1の斜め上方には、該被除電物1に向かって気体を導くための管体3が設け
られ、その管体3の上記被除電物1側の端部3aと反対側の端部に連通させて設けた気体
供給源(不図示)から供給される気体を、上記管体3を介して上記被除電物1の表面また
は被除電物1の周囲の雰囲気中に導く構成である。
【0019】
そして、上記管体3を介して気体を導く際の該管体3と気体との摩擦により該気体を、
上記被除電物1の帯電極性と逆極性に帯電させた状態で、上記被除電物1の表面または被
除電物1の周囲の雰囲気中に導入することによって、上記被除電物1の帯電電荷を中和し
て除電する。すなわち、上記被除電物1が正に帯電しているときは、上記管体3を介して
気体を負に帯電させ、被除電物1が負に帯電しているときは、上記管体3を介して気体を
正に帯電させて、上記被除電物1の電荷を中和するものである。
【0020】
上記気体の種類と管体3の材質は、帯電させる極性に応じて適宜選択して使用すればよ
い。例えば上記気体の種類としては、帯電させる極性に応じて異なる種類のものを用いて
もよいが、通常は帯電させる極性の如何に拘わらず乾燥した空気や窒素を用いるのが、使
い勝手やコスト等の面からも好ましい。一方、管体3の材質は、気体として空気や窒素を
用いる場合であって、それらの気体を負に帯電させる場合には、例えばナイロン製の管体
3を用いればよく、また上記の気体を正に帯電させる場合には、例えばポリエチレンやポ
リプロピレンもしくはポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂よりなる管体3を用い
ることができる。
【0021】
上記のようにして被除電物1と逆極性に帯電させた気体は、上記図1のように管体3を
介して被除電物1に直接吹き付けるか、或いは図2のように被除電物1をチャンバ4内に
収容し、該チャンバ4内に、上記と同様に構成した管体3から上記被除電物1と逆極性に
帯電させた気体を導入するようにしてもよい。上記いずれの場合にも被除電物1を良好に
除電することができる。
【0022】
また上記図1において被除電物1と管体3とは互いに相対的に移動可能に構成してもよ
く、また上記図2において被除電物1と管体3およびチャンバ4とは相対的に移動可能に
構成してもよい。そのように構成すると、被除電物1に気体を万遍なく吹き付けたり、あ
るいは長尺の被除電物や複数個の被除電物を連続的に効率よく除電することができる。
【0023】
具体的には、例えば上記図1において、被除電物1を不図示のベルトコンベア等で管体
3の下方位置に順に供給搬送して除電する。或いは多数並べて配置した被除電物1の上方
位置に順に管体3を移動して除電するようにしてもよい。また図2においても被除電物1
を不図示のベルトコンベア等でチャンバ4内に順に供給搬送して、該チャンバ4に設けた
管体3からチャンバ4内に帯電した気体を導入して除電する。或いは多数並べて配置した
被除電物1を順に移動するチャンバ4で覆って、該チャンバ4に設けた管体3からチャン
バ4内に帯電した気体を導入して除電してもよい。
【0024】
以上のように本発明による除電方法は、気体が管体を通過する際の摩擦によって該気体
を、被除電物表面の電荷と逆極性に帯電させ、それによって被除電物を除電するようにし
たから、前記従来例のように放射線源やコロナ放電または紫外線もしくは軟X線等の特段
のエネルギー源を用いることなく被除電物を容易・安価に除電することができる。また被
除電物としては、静電気等によって正または負に帯電したものであれば、各種物品の除電
に適用することができる。さらに本発明は各種物品に限らず、例えば液晶装置等の電気光
学装置における素子基板や対向基板等の電気光学装置用基板の検査工程や製造工程および
電気光学装置の検査工程や製造工程にも適用可能である。
【0025】
〔電気光学装置用基板や電気光学装置への適用例〕
以下、電気光学装置として液晶装置に適用した場合を例にして電気光学装置用基板およ
び電気光学装置の前記TEGによる検査工程や製造工程等において上記基板上に形成され
るTEGおよび各種の配線や電極または素子等の構成部材が帯電したときの検査方法や製
造方法として適用した場合の実施形態について説明する。
【0026】
図3は電気光学装置としての液晶装置を対向基板側から見た平面図、図4は上記液晶装
置の図3におけるH−H’断面図である。上記の液晶装置は、図3および図4に示すよう
に素子基板(TFTアレイ基板)10と対向基板20とが対向して配置されている。その
素子基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に設けられたシール材52
により相互に接着固定されており、そのシール材52の内側の上記素子基板10と対向基
板20との間に液晶層50が封入されている。
【0027】
上記シール材52の外側の領域、すなわち上記画像表示領域10aの外側の周辺領域に
は、不図示のデータ線に画像信号を所定のタイミングで供給することにより該データ線を
駆動するデータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が素子基板10の一辺に沿
って設けられている。また不図示の走査線に走査信号を所定のタイミングで供給すること
により該走査線を駆動する走査線駆動回路104が上記の一辺に隣接する二辺に沿って設
けられている。さらに素子基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けら
れた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、
対向基板20のコーナ部の少なくとも一箇所においては、素子基板10と対向基板20と
の間で電気的に導通をとるための導通材106が設けられている。
【0028】
図4において、素子基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線
等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜16が形成されている。なお、画素
電極9aは、マトリクス状に各画素に配置されており、配向膜16は複数の画素電極9a
の一面を覆うように形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21のほか、
最上層部分に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネ
マテッィク液晶を混合した液晶からなり、上記一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0029】
上記対向基板20には、各画素の開口領域を少なくとも部分的に規定するため若しくは
これに代えて又は加えて入射光による基板20の高温化を避けるための遮光膜23が、マ
トリクス状に配列された複数の画素電極9aの間隙に対応する格子状又はストライプ状に
形成されている。更に上記対向基板20には、画像表示領域10aを規定する遮光膜53
が形成されている。これらの遮光膜23,53は、同一又は相異なる金属、合金、樹脂等
の遮光材料を含んで形成される。
【0030】
一方、前記素子基板10上における下辺付近において、外部回路接続端子102の図中
左右両側にTEG300が設けられ、上記の外部回路接続端子102からの引き回し配線
108は上記TEG300の図中上側を迂回して走査線駆動回路104に至るように構成
されている。その走査線駆動回路104は、前記シール材52に囲まれた液晶層50が存
在する平面領域内に形成されている。またデータ線駆動回路101からの駆動信号に応じ
て画像信号をサンプリングするサンプリング回路301についても同じく、シール材52
に囲まれた液晶層50が存在する平面領域内に形成されている。これに対して、データ線
駆動回路101は、シール材52の外周側に位置する周辺領域に形成されている。
【0031】
上記TEG300は、走査線駆動回路104及びデータ線駆動回路101を構成する各
種TFT等の電子素子、電極、配線等や、走査線およびデータ線、さらに、画像表示領域
10a内に構築される画像表示用の各種電極や電子素子の少なくとも一部における電気的
状態を間接的もしくは模擬的に検査するためのテストパターンとして上記各種配線や電極
および素子等の模擬パターンを形成したものである。このようなTEG300は、好まし
くは素子10の製造中に、間接的に検査するための検査対象たる各種電子素子、電極、配
線等と同一工程により同時に形成される。これにより両者の同一性を高めることができ、
例えば画素のスイッチング用のTFTを間接的に検査するためのTEG部分であれば、係
るTFTと同様のトランジスタ特性をTEG部分で間接的に検査することができる。
【0032】
図5は上記のようなTEG300の具体的な構成の一例を示すもので、例えば図中のN
−7〜N−10はコンタクトホール抵抗を測るためのTEG、N−11〜N−16はTF
Tの特性を測るためのTEG、N−17〜N−18はシート抵抗を測るためのTEGであ
り、これらは前記図1における素子基板10の下辺に沿って配列させて設けられている。
また上記各TEGは、上記下辺に垂直な方向(図1および図5において上下方向)に所定
の幅Wをもって形成され、その幅方向両側に設けた端子部(図5中の矩形部分)に後述す
る一対の検査用プローブを接触させて電気的特性等を測定するものである。
【0033】
また上記のような液晶装置等の電気光学装置における素子基板10や対向基板20等の
電気光学装置用基板200は、一般に図6に示すように、いわゆるマザー基板500上に
複数個並べた状態で各種の配線や電極または素子等を形成した後、スクライブライン50
2に沿って切断することによって個々の電気光学装置用基板200に分離するもので、上
記図6は前記の素子基板10を形成するための電気光学装置用基板200のマザー基板5
00上での配置構成例を示すものである。
【0034】
なお、上記電気光学装置用基板200上のTEG300は、本例においてはマザー基板
500を個々の基板200に分断するためのスクライブライン502から外れた位置に設
けることによって、スクライブ工程で個々の電気光学装置用基板200に分断した後も各
基板200上にTEG300が残る構成とし、それによってマザー基板500の製造中や
製造後だけでなく、個々の電気光学装置用基板200に分断した後も、更には、その電気
光学装置用基板200を用いた前記の液晶装置等の電気光学装置の製造中(組み立て中)
や製造後も上記TEG300を利用した検査が実施できるようにしている。
【0035】
〔電気光学装置用基板や電気光学装置の検査方法〕
次に、上記のように構成された電気光学装置用基板、特に上記のマザー基板500の状
態での製造工程中もしくは製造後に、上記TEG300を用いて前記の各種配線や電極お
よび素子等の電気的特性等を検査する場合の検査方法の一例を図7に基づいて説明する。
【0036】
一般に、上記TEG300やマザー基板500が静電気等で正または負に帯電している
と、正確な測定が困難となる。例えば上記基板500に何らかの成膜工程等を経て洗浄し
たのち乾燥空気や窒素等の気体を吹き付けて乾燥させると、その気体と基板500や膜等
との摩擦によって、例えば図7(a)のように基板表面やTEG300等が正に帯電し、
その状態でTEG300に検査用プローブPを接触させて該TEG300の電気的特性等
を測定すると、上記の静電気によって測定結果に誤差が生じたり、適正な測定が困難にな
る等のおそれがある。
【0037】
そのような場合には、前記図1および図2の除電方法と同様の要領で、上記の帯電した
TEG300や基板500を除電すればよい。図7(b)はその一例を示すもので、例え
ば上記図7(a)のように基板500の表面やTEG300等が正に帯電した場合には、
前記と同様の要領で管体3を介して該管体3との摩擦で上記と逆極性の負に帯電した気体
を、また基板表面やTEG300等が負に帯電した場合には正に帯電した気体を、それぞ
れ上記基板表面やTEG300等に直接吹き付けるか、或いはそれらの周囲の雰囲気中に
導くことによって上記の帯電電荷を中和して除電すればよい。
【0038】
上記のようにして基板500の表面やTEG300に帯電した電荷を除去した状態で、
図7(c)のように検査用プローブPによるTEG300の電気的特性等を測定すると、
誤差なく精度よく測定することが可能となり、それによって上記TEG300に対応する
各種の配線や電極または素子等の電気的特性を間接的に精度よく測定できるものである。
なお、上記の気体の種類や管体の材質は、前記図1および図2の除電方法の場合と同様で
あり、また必要に応じて上記基板を前記のようなチャンバ4内に収容して除電するように
してもよい。さらに被除電物としてのTEG300や基板500と管体3およびチャンバ
4を設ける場合には該チャンバ4をも含めて前記図1および図2の除電方法と同様の要領
で互いに相対移動可能に構成してもよい。
【0039】
また上記TEG300を用いた電気的特性等の測定は、前述のようにマザー基板500
の製造中や製造後だけでなく、個々の電気光学装置用基板200に分断した後も、さらに
は、その電気光学装置用基板200を用いた前記液晶装置等の電気光学装置の製造中や製
造後にも実施可能である。従って、上記のようなマザー基板500の状態での電気光学装
置用基板の検査方法だけでなく、前記の個々の電気光学装置用基板200の状態での上記
TEG300を用いた検査方法、および上記TEG300を用いた電気光学装置の検査方
法にも上記と同様の要領で適用可能であり、上記と同様の作用効果が得られる。また上記
TEG300を用いた検査方向に限らず、他の各種の検査方法で電気光学装置用基板や電
気光学装置を検査する場合にも適用することができる。
【0040】
〔電気光学装置用基板や電気光学装置の製造方法〕
さらに、本発明による前記の除電方法は、上記のような検査方法に限らず、電気光学装
置用基板や電気光学装置の製造工程にも適用可能である。例えば、前記のような素子基板
10や対向基板20等の電気光学装置用の基板上に各種の配線や電極または素子等の構成
部材を形成もしくは処理する工程を有する電気光学装置用基板の製造方法にあっては、上
記のいずれかの構成部材を形成もしくは処理する前後に、帯電した前記構成部材または基
板を、前記図1および図2の除電方法における被除電物として前記と同様の要領で除電す
る工程を設ければよい。
【0041】
また前記のような素子基板10や対向基板20等の基板上に各種の配線や電極または素
子等の構成部材を形成もしくは処理する工程を有する電気光学装置の製造方法にあっては
、少なくとも前記いずれかの構成部材を形成もしくは処理する前後に、帯電した前記構成
部材または基板を、前記図1および図2の除電方法における被除電物として前記と同様の
要領で除電する工程を設ければよい。上記いずれの場合にも前記図1および図2の除電方
法における気体の種類や管体の材質および配置構成等の変更は前記の場合と同様であり、
同様の作用効果が得られる。
【0042】
具体的には、例えば前記図3および図4に示す電気光学装置としての液晶装置の製造工
程(組み立て工程)において、素子基板10と対向基板20との間に液晶層50を介在さ
せた状態に組み立る際に、基板の製造工程または電気光学装置の製造工程として上記両基
板10,20の対向面側に形成した配向膜16等をラビング処理する場合には、摩擦によ
って上記配向膜16等が正又また負に帯電するが、そのような場合にも上記の除電方法に
よる除電工程を設けることで、上記配向膜16等の帯電電荷を除去することができる。
【0043】
また上記以外にも例えば各種の導電膜や絶縁膜等の薄膜または層を形成する場合、もし
くはレジストを形成したり除去する場合、その他、上記の電気光学装置用基板や電気光学
装置を製造する際に、各種の膜や層の形成および除去その他各種の処理を施す際に帯電す
る場合などにも適用することができる。
【0044】
なお、上記実施形態は被除電物が帯電した後に除電するようにしたが、被除電物が帯電
する前に所定の極性に帯電することが予め分かっている場合には、前記の除電方法によっ
て上記被除電物を予め上記と逆極性に帯電しておいてもよく、それによって上記被除電物
が上記の所定の極性に帯電したとき、予め逆極性に帯電しておいた電荷とが中和して前記
と同様に結果的に除電することができる。
【0045】
また上記実施形態は、電気光学装置として液晶装置を例にして説明したが、これに限ら
ず、例えばエレクトロルミネッセンス装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズ
マディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、フィールド・エミッション・ディスプ
レイ(電界放出表示装置)などの各種の電気光学装置やそれに用いる基板の検査方法や製
造方法にも適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による除電方法の一実施形態を示す説明図。
【図2】本発明による除電方法の他の実施形態を示す説明図。
【図3】電気光学装置としての液晶装置の対向基板側から見た平面図。
【図4】上記液晶装置の図3におけるH−H’断面図。
【図5】上記液晶装置に設けたTEGの一例を平面図。
【図6】マザー基板上に複数形成された電気光学装置用基板の配置構成を示す斜視図。
【図7】電気光学装置用基板の検査方法の一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0047】
1…被除電物、2…台座、3…管体、4…チャンバ、10…素子基板、20…対向基板
、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路、1
08…引き回し配線、200…電気光学装置用基板、300…TEG、500…マザー基
板、502…スクライブライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正または負に帯電した被除電物の表面または周囲の雰囲気中に管体を介して気体を導入
することによって前記被除電物の帯電電荷を除去する除電方法であって、
前記管体を介して前記気体を導入する際の前記管体と前記気体との摩擦によって前記気
体を、前記被除電物と逆極性に帯電させた状態で前記被除電物の表面または周囲の雰囲気
中に導入して前記被除電物の帯電電荷を除去することを特徴とする除電方法。
【請求項2】
前記気体を前記管体を介して前記被除電物の表面に直接吹き付けるようにした請求項1
に記載の除電方法。
【請求項3】
前記被除電物をチャンバ内に収容し、前記チャンバ内の前記被除電物の周囲の雰囲気中
に前記管体を介して前記気体を導入するようにした請求項1に記載の除電方法。
【請求項4】
基板上に形成した配線、電極または素子に対応して該基板の縁部に形成したテストエレ
メントグループに、検査用プローブを接触させて電気的特性を測定することによって、前
記配線、電極または素子の状態を間接的に検査する電気光学装置用基板の検査方法であっ
て、
前記電気的特性を測定する前に、帯電した前記テストエレメントグループまたは前記基
板を前記被除電物として請求項1〜3のいずれかに記載の除電方法により除電処理を行う
ことを特徴とする電気光学装置用基板の検査方法。
【請求項5】
基板上に形成した配線、電極または素子に対応して該基板の縁部に形成したテストエレ
メントグループに、検査用プローブを接触させて電気的特性を測定することによって、前
記配線、電極または素子の状態を間接的に検査する電気光学装置の検査方法であって、
前記電気的特性を測定する前に、帯電した前記テストエレメントグループまたは前記基
板を前記被除電物として請求項1〜3のいずれかに記載の除電方法により除電処理を行う
ことを特徴とする電気光学装置の検査方法。
【請求項6】
基板上に配線、電極または素子の構成部材を形成する工程を有する電気光学装置用基板
の製造方法であって、
前記構成部材を形成又は処理した後に、帯電した前記構成部材または前記基板を前記被
除電物として請求項1〜3のいずれかに記載の除電方法により除電する工程を設けたこと
を特徴とする電気光学装置用基板の製造方法。
【請求項7】
基板上に配線、電極または素子の構成部材を形成する工程を有する電気光学装置の製造
方法であって、
前記構成部材を形成又は処理した後に、帯電した前記構成部材または前記基板を前記被
除電物として請求項1〜3のいずれかに記載の除電方法により除電する工程を設けたこと
を特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−210764(P2009−210764A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52971(P2008−52971)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】