説明

陰イオン交換材料を使用した核酸の単離および分析のための組成物、方法およびキット

本開示は、少なくとも一つの陰イオン性化合物の存在下で単離、増幅および/または分析の工程を実施することによる、陰イオン交換材料の存在下で核酸を単離、増幅および/または分析するための方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許仮出願第61/231,371号(2009年9月24日出願)、米国特許仮出願第61/295,269号(2010年1月15日出願)、および欧州特許出願番号EP 10 006 062(2010年6月11日出願)に基づく優先権を主張する。それらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。2010年8月5日に本願と同時に出願された「陰イオン交換材料を使用した核酸の単離および分析のための組成物、方法、およびキット(Compositions,Methods,and Kits for Isolating and Analyzing Nucleic Acids Using an Anion Exchange Material)」という名称の米国本出願も、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、陰イオン交換材料を使用した核酸の単離、溶出、および分析のための方法、組成物、およびキットに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
イオン交換とは、分子の電荷特性に基づき、イオンおよび極性分子の分離を可能にする過程である。原理的に、イオン交換は、可逆的なイオン性相互作用に基づき、固定相に標的アナライト分子を保持することにより機能する。典型的には、イオン交換組成物は、捕獲分子を保持している固定相を含む。適切な緩衝条件およびイオン条件の下で、捕獲分子は正味の電荷を保持しており、標的分子は反対の正味の電荷を保持するが、夾雑物は正味の中性の電荷または捕獲分子と類似の正味の電荷を保持している。その結果として、標的分子はイオン交換組成物により保持されるが、夾雑物は除去される。次いで、(例えば、pHの改変により)捕獲分子もしくは標的分子の電荷を中和するか、または(例えば、高塩溶液による処理により)標的分子を置換する別の分子により組成物を処理することにより、標的分子を溶出させることができる。そのような過程は、単離される分子の正味の電荷に依って、陽イオン交換または陰イオン交換のいずれかとして大別される。複雑な生物学的溶液から核酸を精製するためには、陰イオン交換が一般的に使用される。核酸は、負の電荷のため、陰イオン交換樹脂に選択的に吸着され、次いで、溶出され得る。低分子量核酸のための溶出緩衝液は、典型的には、高濃度の塩を含む。単純な有機および無機の陰イオンは、核酸より低い選択係数を有するが、高濃度では、樹脂から核酸を置換することができる。高分子量核酸は、樹脂に対する非常に高い選択性のために、塩によって溶出し得ない。この場合には、樹脂の弱い陰イオン交換基が、高いpHでは電荷を失うため、溶出は、最もしばしば、pHを高めることにより実施される。
【0004】
従って、イオン交換樹脂からの核酸の溶出は、通常、pHと塩濃度との相互関係に基づく。しかしながら、これらの手法は、標的核酸の下流の加工および分析にとってのいくつかの問題を提示する。RNAはアルカリ性溶液中で分解されるため、RNA単離のためにアルカリ緩衝液を使用することができない。DNAも、ある程度、アルカリ感受性であり、最も顕著には、特に加熱された場合に、シトシンの脱アミノ(デオキシシトシンのデオキシウラシルへの変換)が起こる。アルカリ緩衝液の保管にも問題があり、そのような溶液は、しばしば、空気からのCO2の吸収のため、腐食性であり、毒性であり、不十分な貯蔵安定性を有する。溶出のために利用されることが多い高い塩濃度は、しばしば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ライゲーション反応、制限分析、cDNA生成、または等温増幅のような下流の酵素反応に干渉する。従って、得られた核酸溶出液は脱塩される必要があり、そのことにより、核酸単離手法の取扱い工程が増え、取扱い工程の数の増加または可能性のある夾雑のため、核酸の損失がもたらされる可能性がある。大部分の酵素がアルカリ性条件下では完全に変性するため、DNAを直接酵素的に加工することはできない。従って、高pH溶出も、溶出液の中和を必要とするため、付加的な取扱い工程を必要とし、そのことにより、溶出液がさらに希釈され、作業工程が増加し、全ての酵素的な下流のアッセイ法にとって適切ではない場合がある。
【0005】
さらに、一般的に使用されている陰イオン交換材料の存在は、核酸の下流の分析を阻害することがある。従って、現在のプロトコルは、精製された核酸を分析する前に、核酸を陰イオン交換材料から分離することを必要とする。残念ながら、しばしば、溶出液と陰イオン交換材料との完全な分離は達成され得ず、従って、その後の分析および増幅の効率および精度の両方が低下する。さらに、溶出、および陰イオン交換材料からの溶出液の分離という付加的な工程は、完全に自動された核酸の精製および分析の手法における陰イオン交換の利用可能性を妨げる。
【0006】
従って、単離された核酸のさらなる使用の前に、付加的な取扱い工程を必要としない、核酸を単離するための材料および方法が、開示される。特に、単離された核酸は、任意の増幅または分析の手法に直接適しているはずである。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、陰イオン性化合物と共に陰イオン交換クロマトグラフィを使用することを含む、核酸の単離および分析のための材料および方法に関する。陰イオン性化合物、特に、少なくとも2個の陰イオン性基を有する、陰イオン性化合物を使用すれば、不利に高いpH値を使用することなく、かつ/または高い塩濃度を使用することなく、陰イオン交換材料から核酸を溶出させることが可能である。さらに、少なくとも2個の陰イオン性基を有する、陰イオン性化合物の存在は、陰イオン交換材料の存在下での核酸の増幅を可能にすることが見出された。
【0008】
一つの局面において、陰イオン交換材料と複合体化した核酸を供給する工程、および、少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの陰イオン性化合物を含む溶液を添加することにより、結合した核酸を溶出させる工程を含む、核酸を単離する方法が開示される。一つの態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物は、多価陰イオン性化合物、好ましくは、多価陰イオン性有機化合物である。別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、非ポリマー性化合物、好ましくは、非ポリマー性有機化合物である。さらに別の態様において、溶出工程は、高塩条件またはpHの重度の変化なしに実施される。別の態様において、核酸に可逆的に結合することができる陰イオン交換組成物を、核酸を含む試料と接触させる工程;および任意で、未結合の試料構成要素を除去するために陰イオン交換組成物を洗浄する工程を含む方法により、陰イオン交換材料と複合体化した核酸を供給する。本発明の方法において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、陰イオン交換材料から核酸を置換する。結合した核酸の溶出のための、少なくとも2個の陰イオン性基を含む陰イオン性化合物の使用は、増幅工程を含む、その後の分析工程を実行するために、これらの化合物を除去する必要がないという利点を提供する。それは、それらが、そのような工程に全くまたは極わずかしか干渉しないためである。さらに、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、低い濃度しか、核酸を効果的に溶出させるために必要とされない。
【0009】
別の局面において、核酸-陰イオン交換複合体を形成させるため、陰イオン交換材料と複合体化した核酸を供給する工程、および少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの陰イオン性化合物の存在下で、核酸を分析する工程を含む、該陰イオン交換材料の存在下で該核酸を分析する方法が提供される。一つの態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物は、多価陰イオン性化合物である。別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物は、非ポリマー性化合物である。別の態様において、核酸に可逆的に結合することができる陰イオン交換組成物を、核酸を含む試料と接触させる工程;任意で、未結合の試料構成要素を除去するために陰イオン交換組成物を洗浄する工程;および任意で、核酸-陰イオン交換複合体を他の材料から分離する工程を含む方法により、陰イオン交換材料と複合体化した核酸を供給する。
【0010】
さらに別の局面は、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物を含み、かつ少なくとも一つの緩衝液をさらに含む、溶出組成物である。提供された方法および組成物の一つの利点は、使用される溶出条件および溶出緩衝液に関してそれらが柔軟性を提供し、さらに、溶出をより効率的にし得るという点である。従って、本発明の溶出組成物は、溶出のために一般的に使用される任意の緩衝液または組成物を含み得る。例えば、非限定的に、溶出緩衝液は、陰イオン性化合物を、水、低塩緩衝液、またはCHAPS、MES、HEPES、MOPS、TRIS、TRICINE、およびPIPESのような生物学的緩衝液と組み合わせることにより形成され得る。一つの態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、多価陰イオン性化合物である。別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、非ポリマー性化合物である。
【0011】
さらに別の局面は、本明細書に開示された溶出法により入手された溶出液に関する。
【0012】
さらに別の局面は、ポリメラーゼと、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物とを含む、増幅組成物である。別の態様において、増幅組成物は、逆転写酵素活性を有する酵素;およびヘリカーゼ活性を有する酵素;ニック誘導剤;Mg2+もしくはMgCl2のようなその供給源;リボヌクレオチド三リン酸(NTP);デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP);K+もしくはKClのようなその供給源;NH4+もしくは(NH4)2SO4のようなその供給源;トリスのような緩衝液;および/または2-メルカプトエタノールもしくはジチオスレイトール(DTT)のような還元剤を任意で含む。一つの態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、多価陰イオン性化合物である。別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、非ポリマー性化合物である。
【0013】
さらに別の局面は、陰イオン交換材料と、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物とを含む、試料から核酸を単離するためのキットである。
【0014】
別の局面において、ポリメラーゼと、陰イオン交換材料と、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物とを含む、核酸を増幅するためのキットが提供される。別の態様において、増幅組成物は、Mg2+もしくはMgCl2のようなその供給源;リボヌクレオチド三リン酸(NTP);デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP);K+もしくはKClのようなその供給源;NH4+もしくは(NH4)2SO4のようなその供給源;トリスのような緩衝液;および/または2-メルカプトエタノールもしくはジチオスレイトール(DTT)のような還元剤を任意で含む。一つの態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、多価陰イオン性化合物である。別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、非ポリマー性化合物である。
【0015】
さらなる局面において、陰イオン交換材料に可逆的に結合した核酸を、該陰イオン交換材料から置換するための、少なくとも2個の陰イオン性基を含む陰イオン性化合物の使用が提供される。一つの態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、多価陰イオン性化合物である。別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、化合物は、非ポリマー性化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
(図1)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。300bp DNA断片をジエチルアミノプロピル磁性ビーズに結合させ、500bp DNA断片を使用して溶出させた。ゲルは以下の通りに負荷された。

(図2)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。プラスミドDNAを、ポリエチレンイミン磁性ビーズに結合させ、デキストラン硫酸、ポリアクリル酸、シュウ酸、メリト酸、またはゲノムDNAを使用して溶出させた。A:pH8.0での結合および溶出。B:pH8.5での結合および溶出。ゲルは以下の通りに負荷された。

(図3)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。プラスミドDNAを、スペルミン磁性ビーズに結合させ、カルボキシメチルデキストラン、デキストラン硫酸、ポリアクリル酸、ポリ(4-スチレンスルホン酸マレイン酸)、酢酸、シュウ酸、クエン酸、ピロメリト酸、またはメリト酸を使用して溶出させた。ゲルは以下の通りに負荷された。



(図4)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。プラスミドDNAを、スペルミン磁性ビーズまたはポリエチレンイミン磁性ビーズに結合させ、「無塩基」DNAを使用して溶出させた。ゲルは以下の通りに負荷された。

(図5)PCR阻害アッセイ法を示す。βアクチンPCRのct値に対する異なるカルボン酸の影響を試験した。
(図6)PCR阻害アッセイ法を示す。βアクチンPCRのct値に対する異なるクエン酸濃度の影響を試験した。
(図7)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。100bp DNA断片を、スペルミン磁性ビーズに結合させ、500bpまたは1000bp DNA断片を使用して溶出させた。ゲルは以下の通りに負荷された。

(図8)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。500bpまたは1000bp DNA断片を、スペルミン磁性ビーズに結合させ、200bp DNA断片を使用して溶出させた。ゲルは以下の通りに負荷された。

(図9)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。500bp DNA断片を、スペルミン磁性ビーズに結合させ、RNAを使用して溶出させた。ゲルは以下の通りに負荷された。

(図10)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。RNAを、スペルミン磁性ビーズに結合させ、500bp DNA断片を使用して溶出させた。ゲルは以下の通りに負荷された。

(図11)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。ゲノムDNAを、スペルミン磁性ビーズに結合させ、プラスミドDNAを使用して溶出させた。ゲルは以下の通りに負荷された。

(図12)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。プラスミドDNAを、スペルミン磁性ビーズに結合させ、ゲノムDNAを使用して溶出させた。ゲルは以下の通りに負荷された。

(図13)結合し溶出した核酸のゲル電気泳動分析を示す。siRNAを、ポリエチレンイミン磁性ビーズに結合させ、300bp DNA断片を使用して溶出させた。ゲルは以下の通りに負荷された。

(図14)PCRの増幅曲線が正常であり、PAAがPCRにおけるアーティファクト形成を促進しないことを示す。図14A〜14Bは、TaqMan(登録商標)-MGBプローブを使用して閾値サイクル(Ct)を検出した実験の結果を示す。図14Cは、PCRにおける産物同一性を確認するため融解曲線を記録した実験の結果を提供する。実施例15を参照のこと。
(図15)異なる溶出:AXpH(商標)ビーズ、アルカリ、またはPAAを比較している、様々な濃度の淋菌(Neisseria Gonorrhoeae)(NG) DNAのリアルタイムPCRの結果を提供する。
(図16)PCRに対する陰イオン交換材料の阻害効果を証明する。ビーズの非存在下(図16A)、または1:10(図16A)、1:100(図16B)、および1:1000(図16B)希釈のAXpH(商標)ビーズの存在下で、リアルタイムPCR増幅を3通り実施した。Brandis,Dye structure affects Taq DNA polymerase terminator selectivity,Nucl.Acids Res.1999 27(8):1912-1918に記載されたようなカルボキシフルオレセインの異性体である6-FAM(商標)(「FAM」)色素により標識されたレポータープローブを使用して、蛍光シグナルを生成した。阻害は、増幅曲線の直線相の右方シフトにより示される。
(図17)ウシ血清アルブミンが陰イオン交換材料の存在下でPCRを救済しないことを証明する。1:50希釈のAXpH(商標)ビーズ、ならびに0、1:1、および1:10希釈の1mg/mlストックウシ血清アルブミン(最終濃度0.1mg/mlおよび0.01mg/mlのBSA)の存在下で、リアルタイムPCR増幅を3通り実施した。FAM(上の曲線)または5'-テトラクロロ-フルオレセイン(「TET」)色素(下の曲線)のいずれかにより標識されたレポータープローブを使用して、蛍光シグナルを生成した。
(図18)担体DNAの添加が陰イオン交換ビーズキャリーオーバーによるPCR反応の阻害を逆転させることを証明する。1:50希釈のAXpH(商標)ビーズ、および0または100ng/mlの担体DNAの存在下で、リアルタイムPCR増幅を3通り実施した。FAM(上の曲線)またはTET(下の曲線)のいずれかにより標識されたレポータープローブを使用して、蛍光シグナルを生成した。見られるように、担体DNAは、FAMにより生成されるシグナルを消光させるようであった。しかしながら、TET色素の使用は、担体DNAがAXpH(商標)ビーズの存在の阻害効果を逆転させることを示した。
(図19)ポリアクリル酸(「PAA」)も陰イオン交換材料の存在下でPCRを救済することを証明する。25ng/ml PAAの存在下(「PAA+」)または非存在下(「PAA-」)で、1:200(図19A)、1:250(図19A)、1:400(図19B)、および1:500(図19B)希釈のAXpH(商標)ビーズの存在下で、リアルタイムPCR増幅を3通り実施した。FAM(上の曲線)またはTET(下の曲線)のいずれかにより標識されたレポータープローブを使用して、蛍光シグナルを生成した。
(図20)PAAの救済効果が、高い陰イオン交換濃度の存在下で、低い標的濃度についても維持されることを証明する。1:25希釈のAXpH(商標)ビーズ、および0または25ng/mL PAAの存在下で、10、103、および105コピーの標的核酸に対して、リアルタイムPCR増幅を3通り実施した。FAMまたは5'-テトラクロロ-フルオレセイン色素(「TET」)のいずれかにより標識されたレポータープローブを使用して、蛍光シグナルを生成した。見られるように、対照においては三つの区別される曲線が存在するが(図20A、上の曲線)、それらは、最高濃度の標的核酸を除き、AXpH(商標)ビーズの添加により消失した(図20A、下の曲線)。PAAの添加はこの効果を逆転させた(図20B)。
(図21)tHDAに対する陰イオン交換材料の阻害効果を証明し、増幅がPAAにより救済され得ることを示す。1:25希釈のAXpH(商標)ビーズ、および0または25ng/mL PAAの存在下で、10、103、および105コピーの標的核酸に対して、NG DNAのリアルタイム増幅を3通り実施した。標識されたレポータープローブを使用して、蛍光シグナルを生成した。図21Aは対照tHDA活性(PAAもビーズもなし)を証明し、図21Bはビーズの存在下でのtHDA活性を証明し、図21CはビーズおよびPAAの存在下でのtHDA活性を証明する。
(図22)高分子量PAA(PAA-H)、低分子量PAA(PAA-L)、またはポリメタクリル酸(「+PMA」)の存在が、AXpH(商標)ビーズの存在下での標的NG DNAの増幅を可能にすることを証明する。TET(上の曲線)またはFAM(下の曲線)のいずれかにより標識されたTaqMan(登録商標)プローブを使用して、全ての例について、標準的な3工程リアルタイムPCR反応を3通り実施した。全ての増幅を2.5mM MgCl2の存在下で実施した。図22A:1は、洗浄緩衝液(10mMトリス(pH8);0.1%NP-40 alternative)において標的核酸を利用した陽性増幅対照であり;2は、AXpH(商標)ビーズの存在下で洗浄緩衝液において標的核酸を利用したビーズ対照である。図22B:3は、洗浄緩衝液+PAA-H(0.25%)およびAXpH(商標)ビーズにおいて増幅された標的であり;4は、洗浄緩衝液+PAA-L(0.25%)およびAXpH(商標)ビーズにおいて増幅された標的である。図22C:5は、洗浄緩衝液+PMA(0.25%)およびAXpH(商標)ビーズにおいて増幅された標的である。
(図23)ポリグルタミン酸(「PGA」)の存在が、陰イオン交換材料の存在下でのPCR増幅を可能にすることを証明する。TaqMan(登録商標)プローブを使用して、全ての例について、NG DNAに対して、標準的な3工程リアルタイムPCR反応を3通り実施した。B7-9は、標的核酸およびAXpH(商標)ビーズの両方の非存在下で洗浄緩衝液(10mMトリス(pH8);0.1%NP-40 alternative)を使用した絶対陰性対照である。Aの曲線は、単独の洗浄緩衝液または洗浄緩衝液+1.25%PGA、1.25%ポリアデニル酸(「ポリA」)、または1.25%カルボキシメチルデキストラン(「CMD」)のいずれかに溶解させた標的核酸を使用した陽性増幅対照である。見られるように、多価陰イオン性化合物は、いずれも、標的の増幅に有意に影響を与えなかった。B4-6は、標的の増幅に対する陰イオン交換材料の効果を証明するためのビーズ対照である。E4-6は、1.25%CMDおよびAXpH(商標)ビーズの存在下での標的の増幅を示す。D4-6は、1.25%PGAおよびAXpH(商標)ビーズの存在下での標的の増幅を示す。左のプロットは微分曲線として表されたデータを示す。右のプロットは生データを示す。
(図24)PAAがPCRを阻害し、それが、Mg2+の濃度の増加により補正され得ることを証明する。標的NG DNAを、二つの型の陰イオン交換材料(それぞれBCDおよびEFG)、ならびに3、7、または11mM Mg2+の存在下で、0.05または0.1%いずれかのPAAの存在下で増幅した。図に見られるように、Mg2+の濃度の増加は、PAAの阻害効果を逆転させた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
核酸が、核酸骨格の負にイオン化されたホスフェートのため、ある種の正にイオン化された材料へ放出可能に吸着され得ることは、古くから公知である。この特性は、陰イオン交換と名付けられた手法を通して複雑な生物学的材料から核酸を精製するために頻繁に操作される。典型的なシナリオにおいては、固相を、「捕獲成分」によりコーティングして、陰イオン交換材料を形成させる。適切なイオン条件およびpH条件の下で、核酸のリン酸骨格は正味の負の電荷を保持し、捕獲成分は正味の正の電荷を保持する。従って、核酸は捕獲成分に結合するが、タンパク質のような中性または正の電荷を有する分子は結合しない。次いで、遠心分離または磁場の適用のような様々な手段により、核酸が結合している固相を残りから分離することができる。次いで、陰イオン交換材料を洗浄し、典型的なスキームにおいては、塩条件および/またはpH条件を改変することにより、核酸を溶液中に溶出させ、溶出液を形成させる。次いで、溶出液を陰イオン交換材料から分離し、その後の分析において使用することができる。多数のそのような方法が以前に記載されている。これらの方法は、清潔であり、実行が容易であり、比較的高い核酸収量をもたらし、かつ伝統的な化学的抽出精製法では必要とされる危険で高価な化学物質を必要としない。しかしながら、それらはいくつかの問題を提示する。
【0018】
例えば、陰イオン交換材料からの核酸の溶出は、典型的には、結合した核酸を陰イオン交換材料から溶出させるため、pHおよび/またはイオン強度の操作の何らかの組み合わせを必要とする。得られる溶出液は最適でないpHおよび/または上昇したイオン強度を有するため、このようにして溶出させられた核酸は、一般に、PCRのような分析手法において直接使用され得ない。従って、分析的に適切なpHおよびイオン濃度での、陰イオン交換材料からの核酸の溶出を可能にする材料および方法を開発することが望ましいであろう。
【0019】
従って、本開示は、陰イオン性基を少なくとも2個含む陰イオン性化合物が、溶出工程中に添加される、陰イオン交換材料を用いて核酸を単離するための材料、方法、およびキットに関する。
【0020】
一つの局面において、(a)核酸-陰イオン交換複合体を供給する工程;および(b)陰イオン性基を少なくとも2個含む陰イオン性化合物を含む溶液を、該核酸-陰イオン交換複合体に添加する工程であって、該陰イオン性化合物が、陰イオン交換材料から核酸を置換する工程を含む、該陰イオン交換材料から該核酸を溶出させる方法が開示される。
【0021】
本明細書において使用される場合、「複合体化する」という動詞は、陰イオン交換材料の正にイオン化された捕獲成分が、標的核酸のリン酸骨格または陰イオン性化合物のいずれかの負にイオン化された成分と直接会合する過程をさすものとする。「複合体」という名詞は、そのような会合により形成された化学構造をさすものとする。「核酸-陰イオン交換複合体」という用語は、核酸が、陰イオン交換材料の正にイオン化可能な捕獲成分と複合体化する時に形成される化学構造をさすものとする。
【0022】
一つの態様において、核酸-陰イオン交換材料は、(1)陰イオン交換材料と核酸との間で複合体が形成される条件の下で、陰イオン交換材料を、核酸を含む試料と接触させる工程、および(2)試料から複合体を単離する工程を含む方法により供給される。さらなる態様において、陰イオン交換材料と核酸との間の複合体を形成させる工程は、関心対象の核酸が陰イオン交換材料と複合体化し、タンパク質、内毒素、およびリポソームのような夾雑物は複合体化しないようなpH、イオン強度、および/または界面活性剤の条件の下で実施される。条件は、特定の核酸のみが陰イオン交換材料と複合体を形成するよう、さらに改良されてもよい。
【0023】
別の態様において、核酸-陰イオン交換材料は、(1)核酸を含む試料を陰イオン交換材料と接触させる工程、(2)陰イオン交換材料と核酸との間の複合体を形成させる工程、(3)試料から複合体を単離する工程、および(4)不純物を除去するため複合体を洗浄する工程を含む方法により供給される。洗浄条件は、実質的に全ての非核酸材料が除去されるよう選択され得る。適した洗浄緩衝液は、当技術分野において公知であり、水を含む溶液、アルコール、特に、エタノールまたはイソプロパノールのような1〜5個の炭素原子を有する分岐型または非分岐型のアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アセトン、炭水化物、塩を含む水性溶液、および上記のものの混合物を含むが、これらに限定されない。例えば、非限定的に、洗浄緩衝液には、0.1mMトリス(pH8.0)中の0.1%NP-40が含まれ得る。洗浄条件は、特定の核酸が、不純物として同様に除去されるよう、さらに改良されてもよい。
【0024】
陰イオン交換材料を使用した核酸の単離に関する別の問題は、溶出液が、しばしば、陰イオン交換材料から完全には分離されず、一般的に「ビーズキャリーオーバー」と呼ばれる、陰イオン交換材料が混入した分析試料をもたらすという点である。陰イオン交換材料の存在は、しばしば、核酸のその後の分析に干渉するため、これは問題である。さらに、分子生物学的分析は、自動化されることが増えている。理想的には、可能な限り少数の工程および試薬を含む単一の自動化された過程へと、単離法および分析法の両方を組み合わせることが望まれる。陰イオン交換材料が核酸の分析に干渉する可能性のため、そのような過程の予測可能かつ信頼性のある自動化は困難である。従って、陰イオン交換材料の存在下での核酸の分析を可能にする材料および方法を開発することが、望ましいであろう。
【0025】
従って、本開示は、陰イオン交換材料、および少なくとも2個の陰イオン性基を含む陰イオン性化合物の存在下で、核酸を分析するための材料、方法、およびキットに関し、該陰イオン性化合物が、該陰イオン交換材料により引き起こされる分析過程の阻害を逆転させる。
【0026】
本明細書に開示された方法の分析工程は、陰イオン交換材料の存在下で実施するためのものであることが理解されるべきである。陰イオン交換材料の存在は、核酸精製におけるキャリーオーバーの場合のように、故意ではないものであっても、または単離された核酸-陰イオン交換複合体から直接核酸が分析される場合のように、故意であってもよい。
【0027】
核酸
本開示に係る核酸は、限定されず、任意の核酸を含む。例えば、非限定的に、核酸は、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、細菌DNA、ウイルスDNA、プラスミド、コスミド、直鎖状のオリゴデオキシヌクレオチドおよびポリデオキシヌクレオチド、cDNA、PCR断片、PCRアンプリコン、tHDAアンプリコン、LCRアンプリコン、ロングレンジ(long range)PCRアンプリコン、オリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ、人工または合成のDNAを含むが、これらに限定されないDNA;mRNA、tRNA、rRNA、ウイルスRNA、siRNA、miRNA、RNAi、直鎖状オリゴヌクレオチド、直鎖状ポリヌクレオチド、プローブ、人工または合成のRNAを含むが、これらに限定されないRNA;PNAおよびLNAのような人工核酸、ならびにDNAおよびRNAの両方を含む核酸などのそれらの組み合わせ、ならびにRNA:DNAハイブリッドなどのそれらのハイブリッド;核酸と他の生物学的構成要素との複合体であり得る。核酸は、一本鎖であってもまたは二本鎖であってもよい。それは、天然修飾および人工修飾のような修飾を含有していてもよく、例えば、人工塩基、人工糖成分、および/または人工的なヌクレオチド間結合を含む、人工的なヌクレオチドを含有していてもよい。
【0028】
核酸には、非限定的に、生物学的試料および環境的試料を含む、標本または培養物(例えば、細胞培養物、微生物学的培養物、およびウイルス培養物)に見出される核酸が含まれ得る。リボ核酸は、細胞培養物、細菌、ウイルス、ヒトを含む動物、液体、固体(例えば、大便)、または組織試料に由来する任意の生物学的試料に見出され得る。標的核酸は、さらに、頚部試料(例えば、頚部拭き取り検体から入手された試料)、アデノイド細胞、肛門上皮細胞、血液、血清、血漿、またはバフィーコートのような血液製剤、唾液、脳脊髄液、胸水、乳、リンパ液、痰、尿、および精液を含むが、これらに限定されない、生物学的試料に見出され得る。
【0029】
他の態様において、核酸は、他のウイルス、細菌、マイコバクテリア、またはマラリア原虫、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペス、HIV、クラミジア、淋病、黄色ブドウ球菌、ツベルコリス(tubercolis)、Sarsコロナウイルス、および/またはインフルエンザに由来する。
【0030】
一つの態様において、核酸は、ヒトパピローマウイルス(HPV)であり、HPVの遺伝学的異型を含む。異型には、多形、変異体、誘導体、修飾型核酸、改変型核酸、またはその他の型の核酸が含まれる。一つの態様において、核酸はHPV核酸である。別の態様において、HPV核酸は、ハイリスクHPV型のHPV DNAおよび/またはRNAである。別の態様において、核酸は、16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、26、66、および/または82のようなハイリスクHPV型である。
【0031】
核酸を含む試料
核酸を含有している試料には、生物学的試料および環境的試料を含む、標本または培養物(例えば、細胞培養物、微生物学的培養物、およびウイルス培養物)が含まれるが、これらに限定されない。生物学的試料は、細胞培養物、細菌、ウイルス、ヒトを含む動物、液体、固体(例えば、大便)、または組織試料、ならびに液体または固体の食品および飼料、ならびに乳製品、野菜、肉および肉副産物、ならびに廃棄物などの要素などの任意の供給源に由来し得る。環境的試料には、例えば、表面材料、土壌、水、および工業的試料のような環境的材料が含まれ、食品および乳製品の加工用の機器、装置、設備、用具、使い捨ておよび非使い捨ての用品から入手された試料も含まれる。例示的な生物学的試料は、頚部上皮細胞(例えば、頚部拭き取り検体から入手された試料)、アデノイド細胞、肛門上皮細胞のような細胞試料、血液、血清、血漿、またはバフィーコートのような血液製剤、唾液、脳脊髄液、胸水、乳、リンパ液、痰、および精液を含むが、これらに限定されず、例えば、Preservcyt、Surepath、および/またはDigene Collection Medium(「DCM」)に収集され得る。試料は、デオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)を含み得る。
【0032】
何らかの理由のために望まれる場合には、試料を、陰イオン交換材料と接触させる前に加工することができる。例えば、核酸が放出されるよう、細胞を溶解するため、核酸を含む細胞を含む生物学的試料を処理することができる。次いで、核酸を含む溶解物を、陰イオン交換材料に添加することができる。当業者は、溶液を陰イオン交換材料と接触させる前に、核酸を含有している試料を処理するための望ましい方法を認識するであろう。例えば、100mMトリスHCl(pH7.0)中の2%トライトンX-100、0.2M EDTA、40mMクエン酸ナトリウム、40mMホウ酸を含む適した溶解緩衝液により、例えば、細胞を溶解することができる。試料を調製するためにアルカリ溶解緩衝液が使用される場合には、試料を陰イオン交換材料と接触させる前に、試料のpHを、核酸が陰イオン交換材料に結合可能なpHへと中和する必要があり得る。
【0033】
他の態様において、試料は、他のウイルス、細菌、マイコバクテリア、またはマラリア原虫、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペス、HIV、クラミジア、淋病、黄色ブドウ球菌、ツベルコリス、Sarsコロナウイルス、またはインフルエンザに由来する核酸を含み得る。
【0034】
さらなる態様において、試料は、核酸が「遊離型」になるよう処理される。本明細書において使用される場合、「遊離型核酸」という語句は、核酸が、小胞、リポソーム、ミセル、リボソーム、核、ミトコンドリア、ウイルスのカプシドおよび/もしくはエンベロープ、エンドソーム、またはエキソソームのような大型の高分子構造と会合していないことを示すものとする。
【0035】
陰イオン交換材料
本開示は、陰イオン交換材料を有利に利用する。「陰イオン交換材料」、「陰イオン交換材料」、「陰イオン交換マトリックス」、および「陰イオン交換樹脂」という用語は、本明細書において同義に使用され、特に、化学的な意味で樹脂である材料に制限されない。本明細書において使用される場合、「陰イオン交換材料」という用語は、核酸のリン酸骨格と材料の正にイオン化可能な捕獲成分との間の複合体の形成を介して、溶液から核酸を選択的に除去するために使用され得る任意の材料をさすものとする。例えば、米国特許第6,914,137号、米国特許第5,990,301号、US20100009351A1、およびEP 0 268 946 B1(これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる)に記載されたものを含む、多数の陰イオン交換材料が以前に記載されており、当業者により直ちに認識されるであろう。核酸の精製に適している任意の陰イオン交換材料が使用され得る。
【0036】
一つの局面において、陰イオン交換材料は、固相と、正にイオン化可能な捕獲成分とを含む。
【0037】
シリカ、ホウケイ酸、ケイ酸、非有機ガラス、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリウレタン、ポリスチレン、アガロースのような有機ポリマー、セルロースのような多糖、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、および酸化ジルコニウムのような金属酸化物、金または白金のような金属、アガロース、セファデックス、セファロース、ポリアクリルアミド、ジビニルベンゼンポリマー、スチレンジビニルベンゼンポリマー、デキストラン、およびそれらの誘導体、ならびに/またはシリカゲル、ビーズ、膜、および樹脂;ビーズ、プレート、およびキャピラリーチューブのようなガラスまたはシリカの表面;磁性材料が組み込まれているかまたは磁性材料と会合しているポリスチレン、アガロース、ポリアクリルアミド、デキストラン、および/またはシリカ材料を含むが、これらに限定されない、磁化可能なまたは磁性の(例えば、常磁性、超常磁性、強磁性、またはフェリ磁性の)粒子を含むが、これらに限定されない、陰イオン交換クロマトグラフィに適している任意の固相が使用され得る。いくつかの態様において、捕獲成分は、マイクロチューブ、マイクロプレートのウェル、またはキャピラリーのような加工容器の表面に連結されてもよく、これらの表面を使用して、マイクロスケールで核酸を単離することができる。一つの態様において、固相は、関心対象の核酸が精製工程において固相に直接結合しないよう、処理されるか、製造されるか、または他の様式で加工されるであろう。
【0038】
陰イオン交換材料には、正にイオン化可能な捕獲成分により修飾された材料が含まれるが、これに限定されない。そのようなイオン化可能な基の例は、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、および窒素を含有している芳香族または脂肪族の複素環式基である。一つの態様において、正にイオン化可能な捕獲成分は、少なくとも1個の一級アミノ基、二級アミノ基、または三級アミノ基を含む。別の態様において、正にイオン化可能な捕獲成分は、式R3Nの一級アミン、式R2NHの二級アミン、および三級アミンX-(CH2)n-Yからなる群より選択され、
式中、
Xは、R2N、RNH、またはNH2であり、
Yは、R2N、RNH、またはNH2であり、
Rは互いに独立して、好ましくはO、N、S、およびPより選択される1個または複数個のヘテロ原子を含んでもよい、直鎖型、分岐型または環式のアルキル置換基、アルケニル置換基、アルキニル置換基またはアリール置換基であり、かつ
nは、0〜20、好ましくは、0〜18の範囲の整数である。
【0039】
例示的な捕獲成分には、アミノメチル(AM)、アミノエチル(AE)、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジエチルアミノエチル(DEAE)のようなジアルキルアミノアルキル、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、トリメチルアミノ(TMA)、トリエチルアミノエチル(TEAE)、直鎖型または分岐型のポリエチレンイミン(PEI)、カルボキシル化またはヒドロキシアルキル化されたポリエチレンイミン、ジェファミン(jeffamine)、スペルミン、スペルミジン、3-(プロピルアミノ)プロピルアミン、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、N-モルホリノエチル、ポリリジン、およびテトラアザシクロアルカンが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
特許または出願、米国特許第6,914,137号およびEP 1 473 299に記載されたもののような生物学的緩衝化合物も、陰イオン交換材料の官能基として使用され得る。正にイオン化可能な基のさらなる例は、ポリヒドロキシル化アミン、界面活性剤、界面活性物質、複素環、色素、金属イオンまたは金属酸化物と組み合わせられた負の電荷を有する基、ヒスチジン、およびポリヒスチジンである。そのような基は、例えば、特許出願WO 2003/101494および特許出願EP 09 007 338.8にも記載されている。アミノ酸またはベタインなどの両性イオン基が使用されてもよい。一つの態様において、陰イオン交換材料は、スペルミンで修飾された磁性シリカビーズを含む。
【0041】
固相は、例えば、Si-O-Si、Si-OH、アルコール、ジオールもしくはポリオール、カルボン酸、アミン、ホスフェート、またはホスホネートのような官能性を有する捕獲成分の付着のために官能化され得る。正にイオン化可能な捕獲成分は、例えば、エポキシド、(活性化された)カルボン酸、酸無水物、酸塩化物、ホルミル基、トレシル基、またはペンタフルオロフェニル基を使用することにより、固相に付着させられ得る。官能基は、固相に直接付着させられても、または(直鎖型または分岐型の)スペーサー基、例えば、-(CH2)n-基、炭水化物、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなどの炭化水素を介して付着させられてもよい。あるいは、アミノ官能基などの捕獲成分を含むモノマーから構成されたポリマーが、陰イオン交換材料として使用され得る。
【0042】
いくつかの態様において、イオン化可能な基は、マイクロチューブ、マイクロプレート、またはキャピラリーのような加工容器の表面に連結されてもよく、これらの表面を使用して、マイクロスケールで核酸を単離することができる。
【0043】
さらなる態様において、固相は、関心対象の核酸が精製工程において固相に直接結合しないよう、処理されるか、製造されるか、または他の様式で加工される。
【0044】
一つの態様において、PEIで修飾された常磁性シリカビーズが、陰イオン交換材料として使用される。例示的なPEIで修飾された磁性シリカビーズには、(Qiagen GmbH、Hilden Germany)より市販されている)AXpH(商標)ビーズが含まれる。AXpH(商標)ビーズは、洗浄緩衝液および溶出液から磁気的に分離され得、それは、セルロースおよびその他の非磁性樹脂を用いて作業する時に必要とされる濾過より容易である。
【0045】
核酸結合
当技術分野において公知のイオン交換過程は、通常、二つの主要な工程:(1)材料に正の電荷を与えるpHで、核酸を陰イオン交換材料に結合させる工程;および(2)塩濃度を増加させ、かつ/または捕獲成分のpKaより上にpHを増加させることにより(「pHシフト法」)、該材料から核酸を溶出させ、かつ/または置換する工程を含む。本開示において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの化合物を含む溶液が、核酸を溶出させるため、陰イオン交換材料に適用される。
【0046】
複合体の形成および溶出を引き起こすのに必要な正確なイオン条件およびpH条件は、必然的に、捕獲成分および関心対象の核酸の両方の同一性および濃度の両方に依ることは当業者によって理解されるであろう。核酸を負荷する準備のため、陰イオン交換材料に電荷を与える方法は、当業者に公知である。
【0047】
一つの局面において、正にイオン化可能な捕獲成分は、第一のpHおよびイオン強度では、第一の正味の正の電荷を保持し、第二のpHおよびイオン強度では、中性の電荷または第一の正味の正の電荷より低い第二の正味の正の電荷のいずれかを保持し、従って、関心対象の核酸は、第一のpHおよびイオン強度では、正にイオン化可能な捕獲成分に結合し、第二のpHおよびイオン強度では、放出される。
【0048】
さらなる局面において、正にイオン化可能な捕獲成分は、第一のpHおよびイオン強度では、第一の正味の正の電荷を保持し、第二のpHおよびイオン強度では、第二の正味の正の電荷を保持し、第一のpHおよびイオン強度では、第一の核酸および第二の核酸が正にイオン化可能な捕獲成分に結合し、第二のpHおよびイオン強度では、第一の核酸は正にイオン化可能な捕獲成分から放出されるが、第二の核酸は放出されない。
【0049】
核酸の陰イオン交換材料への結合は、通常、水性溶液、好ましくは、緩衝物質を含む水性溶液において行われる。適した生物学的緩衝液は、CHAPS、MES、HEPES、MOPS、TRIS、TRICINE、およびPIPESである。さらに、溶液は、例えば、米国特許第5,234,809号に記載されたような、過塩素酸ナトリウム、塩酸グアニジウム、およびチオ硫酸グアニジウムのようなカオトロピック塩、ならびに/または、例えば、WO 2004/055207に記載されたような、硫酸アンモニウム、硫酸亜鉛、硫酸カリウム、および硫酸コバルトのようなコスモトロピック(cosmotropic)塩を含有していてもよい。結合緩衝液は、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、クエン酸塩、アジド、および硝酸塩のようなさらなる塩を含有していてもよく、アルコール、ジオール、トリオール、ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アセトン、アセトニトリル、尿素、グアニジン、炭水化物、および界面活性剤または界面活性物質のような表面活性物質、例えば、トゥイーン、トライトン、ブリジ、ノニデット、またはプルロニックのようなさらなる有機化合物を含有していてもよい。塩は、好ましくは、約1Mまたはそれ未満、好ましくは、0,5Mまたはそれ未満、より好ましくは、250mMまたはそれ未満、最も好ましくは、100mMまたはそれ未満の濃度で存在する。核酸の結合は、好ましくは、pH 約3〜約10、好ましくは、pH 約5〜約9の範囲のpHで行われる。
【0050】
さらに、核酸の陰イオン交換材料への結合は、試料中の細胞または組織の溶解、または試料中のタンパク質、DNA、および/またはRNAのような特定の化合物の消化のような、試料の処理と組み合わせられてもよい。この目的のため、結合緩衝液は、酵素、界面活性物質、カオトロピック塩、もしくはキレート化剤(例えば、EDTAもしくはNTA)のような溶解剤、ならびに/またはプロテアーゼ、DNase、およびRNaseのような消化剤をさらに含んでいてもよい。しかしながら、これらの試料処理は、核酸の陰イオン交換材料への結合前の先の工程において行われてもよい(上記も参照のこと)。
【0051】
結合、ならびに溶解および/または酵素前処理過程のような前処理工程は、それぞれの過程を加速するため、上昇した温度で実施され得る。
【0052】
試料を陰イオン交換材料に添加した後、タンパク質、多糖等のような試料中の未結合の材料を除去するため、陰イオン交換材料を洗浄することが可能であり得る。非標的材料を除去するために使用され得る適した洗浄緩衝液は、先行技術において公知であり、水を含む溶液、アルコール、特に、エタノールまたはイソプロパノールのような1〜5個の炭素原子を有する分岐型または非分岐型のアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アセトン、炭水化物、塩を含む水性溶液、および上記のものの混合物を含むが、これらに限定されない。例示的な洗浄緩衝液には、例えば、0.1mMトリス(pH8.0)中の0.1%NP-40が含まれる。
【0053】
溶出
核酸を陰イオン交換材料に結合させた後、陰イオン性基を少なくとも2個含む陰イオン性化合物またはそのような陰イオン性化合物の混合物を含む溶液を添加することにより、結合した核酸を溶出させることができる。
【0054】
1.陰イオン性化合物
陰イオン性化合物は、陰イオン交換材料から核酸を置換する。本発明の方法は、溶出を引き起こすためのpHの変化、特に、捕獲成分のpKaより上へのpHの変化を含む必要がなく、核酸が結合している陰イオン交換材料から核酸を溶出させるため、陰イオン性化合物に頼る。陰イオン性化合物は、それ自体の材料に対する高い選択性のため、比較的低い濃度で、陰イオン交換材料から核酸を置換することができる。
【0055】
溶出において使用される陰イオン性化合物の最適濃度は、特定の適用のために決定されるべきであり;この濃度は、核酸の高い回収を提供するよう十分に高いが、その後の操作および過程を損なう程には高過ぎないべきである。陰イオン性化合物は、核酸を溶出させるために必要な変動する濃度で使用され得る。例えば、濃度は、0.1%〜約2.0%であり得、ある種の態様において、濃度は、約0.5%〜約1.0%である。本明細書に記述された数値は、(より低い値およびより高い値を含む)より低い値からより高い値までの全ての値を含むことが理解される。例えば、列挙された最低値と最高値との間の数値の可能性のある全ての組み合わせが、本願において明示されていると見なされるべきである。例えば、0.025%〜約2.5%と記された濃度範囲については、0.05、0.2、0.3、0.4、1.8、1.9等のような値、または0.3〜1.0もしくは0.4〜2.4等のようなこの範囲内の任意の範囲が、本明細書に明示されているものとする。これらの低い濃度は、増幅または酵素反応のようなその後の検出/分析工程に対する効果をほとんどまたは全く有しない。従って、溶出液は、pHに基づく溶出を使用した場合に典型的に必要とされる中和工程、または塩緩衝に基づく溶出を使用した場合の脱塩工程なしに、直接、使用され得る。
【0056】
本明細書において使用される場合、「陰イオン性化合物」とは、核酸を溶出させるため、または分析するために使用されるpH条件および塩条件で、正味の負の電荷を有する任意の化合物をさすものとする。
【0057】
本明細書において使用される場合、「陰イオン性基」という語句は、核酸を溶出させるため、または分析するために使用されるpH条件および塩条件で、正味の負の電荷を保持する、陰イオン性化合物に共有結合で結合した任意の官能基をさすものとする。全ての場合に、各陰イオン性化合物の各陰イオン性基は、同一であってもまたは異なっていてもよい。
【0058】
適した陰イオン性化合物には、多価陰イオン性化合物、および非ポリマー性陰イオン性化合物が含まれる。好ましくは、陰イオン性化合物は有機である。
【0059】
本明細書に開示された方法および組成物において有用な適した非ポリマー性陰イオン性化合物には、例えば、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、任意の非ポリマー性有機化合物が含まれる。例えば、非限定的に、非ポリマー性陰イオン性化合物は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、または少なくとも6個の陰イオン性基を含み得る。別の態様において、非ポリマー性陰イオン性化合物は、2〜6個または3〜6個の陰イオン性基を含む。別の態様において、非ポリマー性陰イオン性化合物は、15個を超えない陰イオン性基、10個を超えない陰イオン性基、8個を超えない陰イオン性基、または6個を超えない陰イオン性基を含み得る。非ポリマー性有機陰イオン性化合物は、好ましくは、2〜40個の炭素原子、より好ましくは、2〜20個の炭素原子、さらに好ましくは、2〜12個の炭素原子を有する。それは、直鎖型、分岐型、または環式であり得、(飽和もしくは不飽和の)脂肪族または(1個もしくは複数個の共役環もしくは縮合環を有する)芳香族であり得る。
【0060】
一つの態様において、少なくとも2個の陰イオン性基は、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、炭酸基、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0061】
本明細書において使用される場合、「酸性基」という用語は、参照された酸、あるいはその共役塩基の両方を包含するものとする。
【0062】
一つの態様において、少なくとも2個の陰イオン性基は、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、およびイオン化されたリン酸基からなる群より選択される。別の態様において、陰イオン性基は、カルボン酸/カルボキシレート基である。別の態様において、非ポリマー性陰イオン性化合物は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸、ヘキサカルボン酸、ヘプタカルボン酸、オクタカルボン酸、ノナカルボン酸、およびデカカルボン酸からなる群より選択される。
【0063】
別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、非ポリマー性化合物は、シュウ酸、フマル酸、グルタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、タルトロン酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、アコニット酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、アコニット酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、トリエチル-1,1,2-エタントリカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロブタントリカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレニト酸、ピロメリト酸、ベンゼンペンタカルボン酸、およびメリト酸、ジエリスリトールのヘキサカルボン酸、トリエリスリトールの八酢酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、αケトグルタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、ジカルボキシマロン酸、(18-クラウン-6)-2,3,11,12-テトラカルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸、またはビニル酢酸のような重合可能または縮合可能な酸性モノマー2〜10個、好ましくは、2〜6個のオリゴマーのようなカルボン酸である。
【0064】
別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、非ポリマー性化合物は、メチルジスルホン酸、エチルジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、フェノールジスルホン酸、またはナフタレンジスルホン酸のような有機スルホン酸である。
【0065】
別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、非ポリマー性化合物は、ヒドロキシエタンジホスホン酸のような有機ホスホン酸である。
【0066】
別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、非ポリマー性化合物は、オルガノホスフェートである。
【0067】
別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、非ポリマー性化合物は、カーボネートである。
【0068】
別の態様において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、非ポリマー性化合物は、ジアセチルアセトンである。
【0069】
別の態様において、非ポリマー性陰イオン性化合物は、シュウ酸、メリト酸、ピロメリト酸、およびクエン酸からなる群より選択される。
【0070】
置換基が、陰イオン交換材料から核酸を置換する化合物の能力に干渉せず阻害しない限り、非ポリマー性陰イオン性化合物は置換されていてもよい。例示的な置換基には、例えば、フッ素、クロリド、ブロミド、またはヨウ素のようなハロゲン原子、およびヒドロキシル基、オキシ基、アルデヒド基、ケト基、アルコキシ基、エーテル基、エステル基、アミノ基、チオール基、チオエーテル基、チオエステル基、直鎖型または分岐型のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、飽和または不飽和のシクロアルキル基、ならびにアリール基が含まれる。一つの態様において、陰イオン性化合物は、1〜6個の置換基または1〜3個の置換基を含む。別の態様において、これらの置換基は、存在する場合、20個、10個、8個、6個、4個または2個を超えない炭素原子を含む。
【0071】
一つの態様において、非ポリマー性陰イオン性化合物は、低分子量化合物である。別の態様において、非ポリマー性陰イオン性化合物は、5,000Daまたはそれ未満の分子量を有する。別の態様において、非ポリマー性陰イオン性化合物は、3,000Daまたはそれ未満の分子量を有する。別の態様において、非ポリマー性陰イオン性化合物は、2,000Daまたはそれ未満の分子量を有する。
【0072】
少なくとも2個の陰イオン性基を有する、非ポリマー性陰イオン性化合物は、比較的低い濃度の陰イオン性化合物のみが、結合した核酸を効果的に溶出させるのに必要であるという利点を有する。さらに、非ポリマー性陰イオン性化合物の存在は、相当高い濃度ですら、その後の増幅反応に干渉せず阻害しない。
【0073】
別の局面において、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物は、多価陰イオン性化合物である。本明細書において使用される場合、「多価陰イオン性化合物」という語句は、ポリマー性陰イオン性化合物をさすものとする。
【0074】
一つの態様において、多価陰イオン性化合物は、重合した不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等)、またはこれらの酸とアクリルアミドもしくはアクリロニトリルのような他のモノマーとのコポリマー;ポリグルタミン酸もしくはポリアスパラギン酸のような酸性ポリペプチド、または酸性ポリペプチドと他のアミノ酸とのコポリマー;修飾されたデキストランおよびその他の修飾された多価陰イオン性ポリカーボハイドレートまたは共有結合したイオン化された基を保持する多価陰イオン性ポリカーボハイドレート、例えば、カルボキシメチルデキストラン、デキストラン硫酸、およびデキストランリン酸、またはそれらの混合物;ポリスチレンスルホン酸のような陰イオン性基を有するポリスチレン;ならびに二本鎖もしくは一本鎖のDNAもしくはRNAのような他の核酸、または「無塩基」核酸(骨格構造のみを含み、糖成分に結合した塩基を含まない核酸)のようなそれらの類似体からなる群より選択される。別の態様において、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリグルタミン酸(PGA)、および/またはデキストラン硫酸(DS)が選択される。別の態様において、「低分子量」ポリアクリル酸(重量平均Fw約5,100;およそ70残基)が選択される。別の態様において、「高分子量」ポリアクリル酸(重量平均Fw>200,000;即ち、2,800残基より長い)が選択される。
【0075】
一つの態様において、多価陰イオン性化合物は第二の核酸である。結合した第一の核酸の溶出のために第二の核酸を使用する場合、第二の核酸は、その後の過程に干渉するべきでない(例えば、次の工程がPCR分析である場合、RNAがDNAを溶出させるために使用され得る)。第二の核酸は、好ましくは、少なくとも100塩基対(bp)、より好ましくは、少なくとも200bp、少なくとも500bp、または少なくとも1000bpを含む。それは、例えば、プラスミドDNAまたはゲノムDNA、またはポリデオキシアデノシン(「ポリdA」)、ポリデオキシチミジン(「ポリdT」)、もしくはポリデオキシアデノシンとポリデオキシチミジンとのコポリマー(「ポリdA:dT」)のような担体核酸であり得る。
【0076】
陰イオン性化合物は、遊離の酸または塩のいずれかとして、本明細書に開示された方法において添加され得る。そのような塩において使用するのに適した陽イオンは、例えば、ナトリウムおよびリチウムのような任意のアルカリ性陽イオンである。
【0077】
2.溶出
結合した核酸の陰イオン交換材料からの溶出は、本明細書において定義されるような少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物を使用して、達成される。好ましくは、溶出は、陰イオン性化合物を含有している溶出緩衝液を使用して実施される。溶出緩衝液は、好ましくは、水性溶液であり、その水性溶液は、例えば、緩衝剤、例えば、結合溶液に関して上に記載されたような緩衝剤、有機構成要素、および/または塩をさらに含有していてもよい。一つの態様において、溶出のために使用されるpHは、好ましくは、約5〜約13、約5〜約9.5、または約5〜約8.5の範囲内にある。別の態様において、溶出液が、PCR、RT-PCR、または等温増幅反応のような増幅反応において直接使用されることが想定される場合には特に、pHは、約8.2〜約9.0の範囲内にある。
【0078】
陰イオン交換材料からの核酸の溶出は、pHの重度の変化の必要性なしに実施され得る。一つの態様において、溶出工程におけるpHは、陰イオン交換材料に中性または負の電荷を与えない。別の態様において、溶出におけるpHは、陰イオン交換材料の正の電荷を有意に低下させない。さらに別の態様において、溶出工程におけるpHは、陰イオン交換材料および/またはその捕獲成分のpKaより上ではない。
【0079】
別の態様において、陰イオン交換材料から核酸を溶出させるために使用される溶液は、高い塩濃度を含まない。別の態様において、溶出溶液中の全塩濃度は、1Mを超えず、0.5Mまたはそれ未満、300mMまたはそれ未満、200mMまたはそれ未満、150mMまたはそれ未満、100mMまたはそれ未満、50mMまたはそれ未満、または30mMまたはそれ未満である。別の態様において、溶出溶液は、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物を除き、いずれの塩も含有しない。
【0080】
好ましくは、まず、生物学的試料中の核酸を、陰イオン交換材料、例えば、陰イオン交換磁性ビーズに結合させる。次いで、タンパク質およびその他の望ましくない不純物を取り除くため、材料を洗浄する。次いで、本明細書中に定義されるような少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの陰イオン性化合物を含む溶液により、核酸を溶出させる。この手法は、溶出工程のためにpHの変化を必要としないか、または少なくとも重度の変化を必要としない。実際、洗浄緩衝液および溶出緩衝液のpHは同一であり得る。
【0081】
溶出中、陰イオン性化合物は、結合した核酸の少なくとも一部の溶出をもたらすために十分高い濃度で存在する。一つの態様において、陰イオン性化合物は、結合した核酸の過半数の溶出をもたらすために十分高い濃度で存在する。一つの態様において、陰イオン性化合物は、結合した核酸の実質的に全ての溶出をもたらすために十分高い濃度で存在する。一例に過ぎないが、溶出中の非ポリマー性陰イオン性化合物の濃度は、約1mg/l〜約1g/l、より好ましくは、約10mg/l〜約500mg/l、さらに好ましくは、約20mg/l〜約100mg/lの範囲内で選択される。別の例として、多価陰イオン性化合物の量は、約0.01%〜約5%、より好ましくは、約0.025%〜約2.5%、さらに好ましくは、約0.1%〜約2.0%または約0.5%〜約1.0%の範囲内にある。
【0082】
溶出において使用される陰イオン性化合物の最適濃度は、任意の特定の適用のために決定されるべきである。即ち、その濃度は、好ましくは、核酸の高い回収を提供するために十分高いが、その後の操作および過程を損なう程には高過ぎないべきである。他方、核酸単離工程において使用される陰イオン性化合物が、増幅のようなその後の手法の効率を減少させる場合、そのような負の効果は、条件の特定の調整により克服され得る。
【0083】
例えば、QIAGEN、Germanyより入手可能なポリエチレンイミン基を保持している特定の磁性シリカビーズであるAXpHビーズからのDNA溶出を、多価陰イオン性化合物の一例として1%ポリアクリル酸を用いて実施した場合、溶出液がPCR容量の10分の1を構成した時に、それは完全にPCRを阻害した。しかしながら、MgCl2濃度を5mMから11mMに増加させると、PCR効率は完全に回復した。従って、ある種の態様において、単離の後、単離された核酸は、約10〜約40mMの濃度のMg2+の存在下で増幅され得る。多価陰イオン性化合物は、核酸を溶出させるために必要な変動する濃度で使用され得る。例えば、その濃度は、有利には、0.1%〜約2.0%であり得、ある種の態様において、濃度は約0.5%〜約1.0%である。本明細書に記述された任意の数値は、(より低い値およびより高い値を含む)より低い値からより高い値までの全ての値を含むことが理解される。例えば、列挙された最低値と最高値との間の数値の可能性のある全ての組み合わせが、本願において明示されていると見なされるべきである。例えば、0.025%〜約2.5%と記された濃度範囲については、0.05、0.2、0.3、0.4、1.8、1.9等のような値、または0.3〜1.0もしくは0.4〜2.4等のようなこの範囲内の任意の範囲が、本明細書に明示されているものとする。これらの低い濃度は、増幅または酵素反応のようなその後の検出/分析工程に対する効果をほとんどまたは全く有しない。従って、溶出液は、(pHに基づく溶出を使用した場合に典型的に必要とされる)中和、および/または(塩緩衝に基づく溶出を使用した場合の)脱塩工程なしに、直接、使用され得る。
【0084】
例えば、PAAは、PCRまたはtHDA(好熱性ヘリカーゼ依存性増幅)のような等温増幅に有意に影響を与えない濃度で、陰イオン交換磁性ビーズからDNAを溶出させる。PAAの濃度は、典型的には、0.025〜2.5%であるが、これに限定されない。一つの態様において、PAAは、0.1%〜2.0%、別の態様において、より好ましくは、0.5〜1.0%の濃度で存在し、正確な濃度は、PCRに含められる試料の容量にも依る。例えば、より高いPAA濃度は、AXpHビーズからのより良好な核酸回収を提供するが、多少、増幅を遅くする傾向がある。従って、より高いPAA濃度を溶出のために使用する場合には、下流反応において試料を希釈するか、または下流反応においてより大きな全体容量で試料を使用することが好ましいかもしれない。一例として、1%PAAによりDNAを溶出させた場合、PCR反応25μL当たり8μLのそのような溶出液を負荷すると、これは不十分な結果をもたらし得る。しかしながら、溶出液の容量がより小さいか(例えば、PCR25μL当たり2μLのそのような溶出液)、または全PCR容量がより高ければ(例えば、PCR反応100μLに8μLの溶出液が負荷される)、同溶出液は期待される結果を与えるであろう。従って、溶出緩衝液中のPAA濃度、PCR1回当たりの試料容量、および個々のPCRの容量は、要求されるアッセイ感度とPCR容量の限界との間の合理的な折衷として実験的に見出されるべきである。あるいは、溶出液が、増幅を必要としない適用;例えば、核酸ハイブリダイゼーション技術において使用される場合には、PCRまたはその他の核酸増幅技術にとって阻害性であり得る多価陰イオン性化合物の濃度が、容認され得る。従って、溶出液は、核酸検出のために直接使用され得る。
【0085】
一つの態様によると、溶出は、例えば、≧50℃、≧60℃、またはさらには≧70℃の温度などの上昇した温度で実施される。
【0086】
本開示は、DNAおよびRNAの温和な単離に適している陰イオン交換材料を利用した、自動化を可能にする核酸の単離、分析、特に増幅のための方法も提供する。さらに、溶出したDNAまたはRNAは、一般に、下流反応と完全に適合性であるために、中和工程または脱塩工程のような付加的な取扱い工程を必要としない。
【0087】
溶出液、分析、および増幅組成物
本明細書に開示された単離および溶出の方法の一つの利点は、pHスイッチ法または高塩法に訴えることなく、関心対象の核酸を含む溶出液が生成され得るという点である。従って、本明細書に記載された方法に従って生成された溶出液は、例えば、PCR、RT-PCR、ヘリカーゼ依存性増幅のような増幅法、ハイブリッド捕獲アッセイ法、配列決定、またはトランスフェクションを含む様々な分析法において直接使用され得る。溶出した核酸を増幅法において使用する場合、本明細書中で定義される、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、任意の陰イオン性化合物が、使用され得る。しかしながら、その後の増幅反応、特に、PCRを含むある種の態様において、陰イオン性化合物はデキストラン硫酸ではない。
【0088】
従って、一つの局面において、上記方法のいずれかに従って入手された溶出液が、提供される。一つの態様において、溶出液は、その後の酵素反応と直接適合性である。「直接適合性」とは、得られた溶出液が、酵素反応混合物に含められる前に、(脱塩、中和等のような)さらなる加工工程を必要としないことを意味する。別の態様において、溶出液は、(a)核酸-陰イオン交換複合体を供給する工程;および(b)陰イオン性基を少なくとも2個含む陰イオン性化合物を含む組成物を、該核酸-陰イオン交換複合体に添加する工程であって、該陰イオン性化合物が、陰イオン交換材料から核酸を置換し、かつさらに該陰イオン性化合物を含む該組成物が増幅構成要素をさらに含む工程を含む方法により、入手される。例えば、非限定的に、増幅構成要素は、ポリメラーゼ活性を有する酵素;逆転写活性を有する酵素;ヘリカーゼ活性を有する酵素;ヌクレオチド;プライマー核酸;増幅緩衝液;ニック誘導剤;Mg2+および/もしくはMn2+の供給源、例えば、MgCl2および/もしくはMnCl2;リボヌクレオチド三リン酸(NTP);デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP);K+の供給源、例えば、KCl;NH4+の供給源、例えば、(NH4)2SO4;または還元剤、例えば、2-メルカプトエタノールおよび/もしくはジチオスレイトール(DTT)であり得る。
【0089】
別の局面において、(a)核酸-陰イオン交換複合体を供給する工程;(b)陰イオン性基を少なくとも2個含む陰イオン性化合物を含む組成物を、該核酸-陰イオン交換複合体に添加する工程;および(c)該陰イオン性化合物の存在下で核酸を分析する工程を含むか、(a);(b);および(c)から本質的になるか、または(a);(b);および(c)からなる、該核酸を分析する方法が提供される。
【0090】
一つの態様において、分析法は核酸増幅を含む。核酸増幅は、温度サイクル増幅および等温増幅という二つのカテゴリーに広く分けられ得る。いずれのクラスの増幅も使用され得る。開示された方法における増幅は、温度サイクル増幅または等温増幅のいずれかであり得る。例示的な増幅法には、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、逆転写酵素(「RT」)反応、好熱性ヘリカーゼ依存性増幅(「tHDA」)、全ゲノム増幅、およびリガーゼ連鎖反応(「LCR」)が含まれるが、これらに限定されない。増幅工程を含む例示的な分析法には、PCR、RT-PCR、リアルタイムPCR、リアルタイムRT-PCR、定量的リアルタイムPCR、定量的リアルタイムRT-PCR、多重分析、融解曲線分析、高分解能融解曲線分析、tHDA、RT-tHDA、リアルタイムtHDA、定量的リアルタイムtHDA、定量的リアルタイムRT-tHDA、NIA、RT-NIA、リアルタイムNIA、定量的リアルタイムNIA、および定量的リアルタイムRT-NIAが含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
PCRなどの温度サイクル増幅においては、典型的には、任意の二本鎖部分を「融解する」ため、標的核酸の融点より上に温度を高め、次いで、オリゴヌクレオチドプライマーが標的核酸の一本鎖部分にアニールする点にまで低下させ、次いで、プライマーがアニールし続け、かつポリメラーゼが活性である温度にまで再び高める。
【0092】
tHDAおよび全ゲノム増幅のような等温増幅においては、温度サイクルなしに増幅を可能にするための薬剤が、反応混合物に添加される。例えば、tHDAにおいては、ヘリカーゼ活性を有する酵素が増幅混合物に添加される。本明細書において使用される場合、「ヘリカーゼ」または「ヘリカーゼ活性を含むかまたは有する酵素」とは、二本鎖核酸を巻き戻すことができる任意の酵素をさす。ヘリカーゼは、二本鎖核酸を巻き戻すよう機能し、従って、融解サイクルを繰り返す必要を回避する。例示的なヘリカーゼには、大腸菌ヘリカーゼI、II、IIIおよびIV、Rep、DnaB、PriA、PcrA、T4 Gp41ヘリカーゼ、T4 Ddaヘリカーゼ、T7 Gp4ヘリカーゼ、SV40ラージT抗原、酵母RADが含まれる。有用であり得る付加的なヘリカーゼには、RecQヘリカーゼ、T.テングコンゲンシス(tengcongensis)およびT.サーモフィルス(thermophilus)に由来する熱安定性UvrDヘリカーゼ、T.アクアティクス(aquaticus)に由来する熱安定性DnaBヘリカーゼ、ならびに古細菌および真核生物に由来するMCMヘリカーゼが含まれる。別の例として、ニック開始増幅(nick-initiated amplification)(「NIA」)においては、核酸骨格のホスホジエステル結合の破断を誘導するため、ニック誘導剤が使用される。次いで、鎖置換活性を有するポリメラーゼが、核酸の一方の鎖をプライマーとして、他方の鎖を鋳型として使用して、ニックの部位において増幅を開始させることができる。本明細書において使用される場合、「ニック誘導剤」とは、二本鎖核酸の一方の鎖において2個の隣接ヌクレオチドの間のホスホジエステル結合に破断を導入する、任意の酵素的もしくは化学的な試薬または物理的処理をさす。ニック誘導酵素の例には、Bpu10 I、BstNB I、Alw I、BbvC I、BbvC I、Bsm I、BsrD、および大腸菌エンドヌクレアーゼIが含まれる。
【0093】
陰イオン交換材料の存在下での分析
陰イオン交換材料は、核酸の分析に干渉することが公知である。溶出剤としての利用可能性とは別に、本明細書全体に記載されるような陰イオン性化合物は、陰イオン交換材料の存在下での核酸の分析を可能にするという予想外の特性も有する。従って、本開示は、陰イオン性化合物が分析工程中に添加される、陰イオン交換材料の存在下で核酸を分析するための材料および方法に関する。
【0094】
一つの態様において、(a)陰イオン交換材料を使用して、試料から関心対象の核酸を精製する工程;および(b)少なくとも一つの陰イオン性化合物を含む第一の溶液において該核酸を分析する工程であって、該陰イオン性化合物が、少なくとも2個の陰イオン性基を含む工程を含む、該陰イオン交換材料の存在下で関心対象の該核酸を分析する方法が、開示される。一つの態様において、陰イオン性化合物は非ポリマー性である。別の態様において、陰イオン性化合物は多価陰イオン性化合物である。
【0095】
別の態様において、精製工程は、(1)核酸を含む試料を陰イオン交換材料と接触させる工程、(2)陰イオン交換材料と核酸との間で核酸-陰イオン交換複合体を形成させる工程、および(3)試料から核酸-陰イオン交換複合体を単離する工程を含む。
【0096】
さらなる局面において、精製工程は、(1)核酸を含む試料を陰イオン交換材料と接触させる工程、(2)陰イオン交換材料と核酸との間で複合体を形成させる工程、(3)試料から複合体を単離する工程、および(4)不純物を除去するため複合体を洗浄する工程を含む。洗浄条件は、実質的に全ての非核酸材料が除去されるよう選択され得る。洗浄条件は、特定の核酸が不純物として同様に除去されるよう、さらに改良されてもよい。
【0097】
別の態様において、核酸は、陰イオン性化合物が添加される前に、核酸-陰イオン交換複合体から溶出させられる。例えば、核酸はpHスイッチまたは高塩溶液を使用して溶出させられ得る。そのような場合、得られた溶出液は、分析過程において使用される前に、さらに加工される必要がある可能性が高い。別の例として、核酸は、上記のように、陰イオン性化合物を含む溶液を使用して溶出させられ得る。次いで、溶出液は、(ビーズキャリーオーバーの場合のように)分析前に陰イオン交換材料の実質的な部分から分離されても、または溶出液は、完全な部分の存在下で分析されてもよい。
【0098】
別の態様において、陰イオン性化合物を含む分析溶液は、直接、核酸-陰イオン交換複合体に添加される。例えば、非限定的に、分析法が増幅である場合、陰イオン性基を少なくとも2個含む陰イオン性化合物を含む、核酸増幅組成物が、直接、核酸-陰イオン交換複合体に添加され得る。
【0099】
本明細書において使用される場合、「核酸増幅組成物」という用語は、上記のような陰イオン性化合物を含み、かつ、核酸増幅が実行され得るよう、適切な構成要素および物理的特性をさらに有する任意の組成物をさすものとする。そのような構成要素には、適切な状況において、緩衝液;塩溶液;プライマー;ヌクレオチド三リン酸;RNase、RNase阻害剤、補酵素、および/または触媒のような高分子;ポリエチレングリコール;ソルビトール;ならびにDMSOが含まれるが、これらに限定されない。物理的特性には、pH、イオン強度、およびMg2+濃度が含まれるが、これらに限定されない。付加的な構成要素および物理的特性の正確な同一性は、使用されている特定の増幅法;増幅されている核酸の同一性;所望のアンプリコンの長さおよびG/C含量;ならびに使用されている特定のポリメラーゼおよび/またはヘリカーゼを含むが、これらに限定されない、多数の因子に依るであろう。これらの付加的な構成要素および物理的特性は、当業者には直ちに明白であろう。例えば、非限定的に、増幅構成要素は、ポリメラーゼ活性を有する酵素;逆転写酵素活性を有する酵素;ヘリカーゼ活性を有する酵素;ヌクレオチド;プライマー核酸;増幅緩衝液;ニック誘導剤;Mg2+および/もしくはMn2+の供給源、例えば、MgCl2および/もしくはMnCl2;リボヌクレオチド三リン酸(NTP);デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP);K+の供給源、例えば、KCl;NH4+の供給源、例えば、(NH4)2SO4;または還元剤、例えば、2-メルカプトエタノールおよび/もしくはジチオスレイトール(DTT)の任意の組み合わせであり得る。
【0100】
核酸増幅組成物は、ワーキング(1倍)濃度で提供されても、または濃縮フォーマットで提供されてもよい。例えば、非限定的に、濃縮フォーマットは、5倍、10倍、20倍、もしくは50倍の濃度の水性溶液として、または凍結乾燥濃縮物として提供され得る。
【0101】
一つの態様において、核酸増幅組成物は、(a)少なくとも一つの標的核酸;(b)陰イオン交換材料;(c)少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの陰イオン性化合物;および(d)ポリメラーゼ活性を有する少なくとも一つのタンパク質を含む。
【0102】
別の態様は、(a)少なくとも一つの標的核酸;(b)陰イオン交換材料;(c)少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの陰イオン性化合物;(d)ポリメラーゼ活性を有する少なくとも一つのタンパク質;および(e)ヘリカーゼ活性を有する少なくとも一つのタンパク質を含む、核酸増幅組成物に関する。
【0103】
そのような材料および方法は、自動化された方法における使用に特に適している。
【0104】
キット
本開示は、陰イオン交換材料、好ましくは、上記のような陰イオン交換材料と;上記のような、少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの陰イオン性化合物を含む、溶出緩衝液とを含む、生物学的試料のような試料から核酸を単離するためのキットも提供する。キットは、洗浄緩衝液、負荷緩衝液、平衡化緩衝液、溶解緩衝液(例えば、細胞または組織試料などの試料の溶解用)、RNaseおよび/またはDNaseのようなヌクレアーゼ、RNaseまたはDNaseの阻害剤、ならびに使用説明書からなる群より選択される構成要素を一つまたは複数さらに含み得る。核酸を単離するためのキットは、単離された核酸を分析し、かつ/または増幅するのに適しているさらなる構成要素も含み得る。
【0105】
さらに、本開示は、ポリメラーゼ活性を有する酵素と、少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの陰イオン性化合物、好ましくは、上記のような非ポリマー性陰イオン性化合物とを含む、核酸を増幅するためのキットも提供する。キットは、逆転写酵素活性を有する酵素;ヘリカーゼ活性を有する酵素;ヌクレオチド;プライマー核酸;増幅緩衝液;ニック誘導剤;Mg2+および/またはMn2+の供給源、例えば、MgCl2および/またはMnCl2;リボヌクレオチド三リン酸(NTP);デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP);K+の供給源、例えば、KCl;NH4+の供給源、例えば、(NH4)2SO4;還元剤、例えば、2-メルカプトエタノールおよび/またはジチオスレイトール(DTT)、ならびに使用説明書のような付加的な構成要素を一つまたは複数さらに含み得る。核酸を増幅するためのキットは、核酸を単離するためのキットの構成要素のいずれかをさらに含有していてもよい。
【0106】
本明細書に開示されたキットの様々な構成要素は、ワーキング(1倍)濃度で提供されても、または濃縮フォーマットで提供されてもよい。例えば、非限定的に、濃縮フォーマットは、5倍、10倍、20倍、もしくは50倍の濃度の水性溶液として、または凍結乾燥濃縮物として提供され得る。
【0107】
使用
本開示は、陰イオン交換材料に可逆的に結合した核酸を陰イオン交換材料から置換するための、少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物、好ましくは、少なくとも2個の陰イオン性基を含む非ポリマー性化合物の使用も提供する。陰イオン性化合物、非ポリマー性化合物、核酸、および/または陰イオン交換材料は、好ましくは、上記の通りである。
【0108】
本開示は、核酸を含有している試料から核酸を単離する方法も提供する。方法は、(a)核酸の結合を可能にするため、核酸を含む試料を陰イオン交換材料と接触させる工程を含む。陰イオン交換材料は、核酸に可逆的に結合することができる。方法は、(b)任意で、未結合の試料構成要素を除去するために陰イオン交換材料を洗浄する工程;および(c)少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの化合物を添加することにより、結合した核酸を溶出させる工程であって、陰イオン性化合物が、該陰イオン交換材料から該核酸を置換することができる工程をさらに含む。
【0109】
陰イオン性基を少なくとも2個含む化合物、および陰イオン交換材料、および方法に関する詳細は、上に詳述されている。上記の開示を参照のこと。
【0110】
上述の通り、本開示は、核酸-陰イオン交換複合体を形成させるため、核酸を陰イオン交換材料と複合体化する工程;任意で、他の材料から該核酸-陰イオン交換複合体を分離する工程;および少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの化合物を含む、溶液において、該核酸を分析する、好ましくは該核酸を増幅する工程を含む、該陰イオン交換材料の存在下で、該核酸を分析する、好ましくは該核酸を増幅する方法も提供する。陰イオン性化合物は、好ましくは、それぞれの分析工程において増幅反応を阻害せず干渉しない。さらに、陰イオン性化合物は、好ましくは、陰イオン交換材料が増幅反応または分析工程に対して及ぼすいずれの阻害効果も低下させるかまたは除去する。即ち、陰イオン交換材料は、存在する場合、分析、特に、増幅工程の有効性を低下させ得る。有効性のこの低下は、本発明に従って使用される陰イオン性化合物の存在により、少なくとも部分的に中和される。
【0111】
上述の通り、
(a)核酸に可逆的に結合する陰イオン交換材料と、試料を接触させる工程;
(b)任意で、未結合の試料構成要素を除去するために該陰イオン交換材料を洗浄する工程;および
(c)少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの非ポリマー性化合物を添加することにより、結合した核酸を溶出させる工程であって、該化合物が、単離された核酸を入手するために、該結合した核酸を該陰イオン交換材料から置換する工程
を含む、核酸を含む該試料から核酸を単離する方法も提供される。
【0112】
一つの態様によると、陰イオン交換材料は、正にイオン化可能な捕獲成分により修飾された固相を含む。正にイオン化可能な捕獲成分は、以下の特徴のうちの一つまたは複数を有し得る。
(a)式R3N、R2NH、RNH2、および/またはX-(CH2)n-Yを有する一級アミン、二級アミン、または三級アミンからなる群より選択され、
式中、
Xは、R2N、RNH、またはNH2であり、
Yは、R2N、RNH、またはNH2であり、
Rは互いに独立して、好ましくはO、N、S、およびPより選択される1個または複数個のヘテロ原子を含んでもよい、直鎖型、分岐型または環式のアルキル置換基、アルケニル置換基、アルキニル置換基、またはアリール置換基であり、かつ
nは、0〜20、好ましくは、0〜18の範囲の整数であり、
(b)アミノメチル、アミノエチル、ジエチルアミノエチル、トリメチルアミノ、トリエチルアミノエチル、スペルミン、スペルミジン、3-(プロピルアミノ)プロピルアミン、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリエチレンイミン、N-モルホリノエチル、およびポリリジンからなる群より選択され、かつ/または
(c)スペルミン、スペルミジン、およびポリエチレンイミンからなる群より選択される。
【0113】
非ポリマー性化合物は、以下の特徴のうちの一つまたは複数を有し得る。
(a)少なくとも2個の陰イオン性基、好ましくは、3〜6個の陰イオン性基を含み;
(b)有機化合物、好ましくは、2〜20個の炭素原子、より好ましくは、2〜12個の炭素原子を有する有機化合物であり;
(c)1個または複数個の置換基により置換されていてもよい、シュウ酸、フマル酸、グルタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、タルトロン酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、アコニット酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、アコニット酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、トリエチル-1,1,2-エタントリカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロブタントリカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレニト酸、ピロメリト酸、ベンゼンペンタカルボン酸、およびメリト酸、ジエリスリトールのヘキサカルボン酸、トリエリスリトールの八酢酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、αケトグルタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、ジカルボキシマロン酸、(18-クラウン-6)-2,3,11,12-テトラカルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸、またはビニル酢酸のような重合可能または縮合可能な酸性モノマー2〜10個、好ましくは、2〜6個のオリゴマーのようなカルボン酸であり;
(d)1個または複数個の置換基により置換されていてもよい、メチルジスルホン酸、エチルジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、フェノールジスルホン酸、およびナフタレンジスルホン酸のような有機スルホン酸であり;
(e)ヒドロキシエタンジホスホン酸などの有機ホスホン酸であり;
(f)オルガノホスフェートであり;かつ/または
(g)カーボネートまたはジアセチルアセトンである。
【0114】
上記の通り、正にイオン化可能な捕獲成分により官能化された、陰イオン交換材料磁性ビーズ、好ましくは、磁性シリカビーズまたは磁性ポリマービーズが使用され得、非ポリマー性化合物としては、シュウ酸、メリト酸、ピロメリト酸、およびクエン酸より選択されるカルボン酸が使用され得る。
【0115】
該方法の溶出工程は、以下の特徴のうちの一つまたは複数を有し得る。
(a)溶出中のpHは、捕獲成分の正にイオン化可能な基のpKaより上ではなく;
(b)溶出中のpHは、5〜13、好ましくは、5〜8.5の範囲内にあり;
(c)溶液中の全塩濃度は、1M、好ましくは、0,5Mを超えない。
方法は、単離された核酸を増幅する工程、好ましくは、中間の精製工程、緩衝工程、または脱塩工程を実施することなく、増幅する工程をさらに含み得る。
【0116】
上述の通り、
(a)核酸-陰イオン交換複合体を形成させるために、核酸を陰イオン交換材料と複合体化する工程;
(b)該核酸-陰イオン交換複合体を他の材料から分離する工程;および
(c)少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの非ポリマー性化合物を含む、溶液において、該核酸を分析する、好ましくは該核酸を増幅する工程
を含む、該陰イオン交換材料の存在下で、該核酸を分析する、好ましくは、該核酸を増幅する方法も提供される。
【0117】
分析工程には、PCR、RT-PCR、定量的リアルタイムPCR、定量的リアルタイムRT-PCR、多重分析、融解曲線分析、高分解能融解曲線分析、tHDA、RT-tHDA、定量的リアルタイムtHDA、もしくは定量的リアルタイムRT-tHDA、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0118】
該方法の一つの態様によると、核酸は、分析工程前に、陰イオン交換材料から溶出させられない。
【0119】
一つの態様によると、前記定義のような陰イオン交換材料および/または前記定義のような非ポリマー性化合物が使用される。
【0120】
以下のものを含む、試料から核酸を単離するためのキットも提供される。
(a)陰イオン交換材料;および
(b)少なくとも2個の陰イオン性基を含む少なくとも一つの非ポリマー性化合物を含む、溶出緩衝液。
【0121】
一つの態様によると、前記定義のような陰イオン交換材料および/または前記定義のような非ポリマー性化合物が使用される。
【実施例】
【0122】
I.材料
1.磁性シリカゲルの陰イオン交換修飾
2口キャップ付きの100ml 1口フラスコに、脱イオン化水23ml、250mM NaPO4(pH6.0)3ml、3-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン100μl、およびジエチルアミノプロピル-トリエトキシシラン91.7μlを供給する。溶液を、2M NaOHによりpH5.50に調整する。添加前に、MagAttractビーズ「G」2gを、脱イオン水15mlを含むナルゲンフラスコに入れ、レベル5でシェーカー上で5分間振とうし、磁気的に分離し(3分)、上清水を排出する。懸濁物を全部で7gにまで補充し、反応フラスコに添加する。ナルゲンフラスコを、脱イオン水1mlにより1回洗浄する。次いで、フラスコを、KPGスターラーおよび還流冷却器に添加する。撹拌速度は500/分である。懸濁物の温度を、油浴(磁石なしのヒーター)を使用して、90℃にまで高める。90℃を4時間維持する。その後、油浴を除去し、懸濁物を冷却するため1時間撹拌する。フラスコ容量を60mlナルゲンフラスコに変換し、スターラーを少量の脱イオン水により洗浄する。ビーズの残りを変換するため、ナルゲンフラスコ内の懸濁物を、3分間磁気的に分離し、フラスコを液体により1回洗浄する。ビーズをボトルの口部の磁石により分離し、液体を排出する。洗浄のため、以下の量の液体をビーズに添加し;懸濁物をレベル5でシェーカーで5分間振とうし、次いで、ビーズをボトル口部の磁石により分離し、液体を排出する。洗浄は、トリス/NaCl緩衝液25mlにより2回、脱イオン水25mlにより1回、エタノール25により3回、行われた。その後、水へと変換するため、脱イオン水25mlによる3回の洗浄を実施した。
【0123】
2.「無塩基」核酸の合成
カバーガス下で、2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイト530mg(2.2mmol)を、ジクロロメタン15mlに溶解させ、平行して、100ml 3口フラスコにおいて、1,3-プロパンジオール146μl(154mg、2mmol)を無水ジクロロメタンに溶解させる。それらの溶液を3口フラスコで合わせ、3時間反応させる。次いで、「活性化溶液」(CH3CN中の0.25M 4,5-ジシアノイミダゾール)16mlを添加し、室温で1時間振とうし、次いで、「酸化溶液」(H2O/ピリジン/THF(2:21:77v/v/v)中の1Mヨウ素)4mlを添加し、一夜反応させる。退色後、黄色染料がもはや消失しなくなるまで、いくつかのヨウ素ボールを添加する。その後、フラスコを冷却装置に入れる。沈降物が示されない場合は、沈降物が現れていないため、ヘキサン50mlを再度添加し、次いで、凝縮する。次いで、残さを、ヘキサン40mlにより2回洗浄し、デカントし、RNase不含水50mlに再懸濁させる。透析チューブ(MWCO 5,000)を用いて、50mM NaH2PO4(pH7.0)5lに対して透析し、VE水5lに対して2回透析する。その後、溶媒を凍結乾燥により除去する。この実験の収量は40mgであった。
【0124】
3.アミノ官能性磁性カルボン酸ビーズの合成
磁性粒子(Carboxyl-Adembeads、Ademtech、注文番号02111)500mgを50mM MES緩衝液(pH6.1)10mlに再懸濁させ、50mg/ml N-ヒドロキシスルホスクシンイミド溶液11.5mlを添加する。ミニシェーカーにより混合する。52μmol/l 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド溶液10mlを添加し、再び混合する。その後、回転式シェーカー上で30分間反応させる。次いで、上清を除去する。50mM MES緩衝液(pH6.1)50mlに再懸濁させ、その10mlアリコートを作成する。磁気分離の後、上清を除去する。次いで、50mM MES緩衝液(pH6.1)1mlに再懸濁させ、50mM MES中500mg/mlの濃度で8.5のpHでアミン2mlを添加し、よく混合する。10分間の超音波処理の後、回転式シェーカー上で1時間反応させる。その後、50mM MES緩衝液(pH6.1)10mlにより2回洗浄し、磁気的に分離し、上清を廃棄する。4.5〜7.0のpHを有するMES緩衝液2mlに粒子を再懸濁させる。
【0125】
4.ポリエチレンイミンにより修飾された磁性カルボン酸ビーズの合成
50mM MES緩衝液(pH6.1)10mlに磁性粒子(Estapor)500mgを再懸濁させ、50mg/ml 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド溶液11.5mlを添加し、再び混合する。その後、回転式シェーカー上で30分間反応させる。次いで、上清を除去する。50mM MES緩衝液(pH6.1)50mlに再懸濁させ、その10mlアリコートを作成する。磁気分離の後、上清を除去する。次いで、50mM MES緩衝液(pH6.1)1mlに再懸濁させ、50mM MES中500mg/mlの濃度および8.5のpHでポリエチレンイミン2mlを添加し、よく混合する。10分間の超音波処理の後、回転式シェーカー上で1時間反応させる。その後、200mM NaCl、50mM MES緩衝液(pH7.0)10mlにより2回洗浄し、50mM MES緩衝液(pH6.1)10mlにより4回洗浄する。磁気分離の後、上清を除去する。粒子を4.5〜7.0のpHを有するMES緩衝液2mlに再懸濁させる。
【0126】
II.実施例
実施例1:第二の核酸および磁性陰イオン交換シリカ粒子を使用した核酸溶出
300bpのDNA断片1μgを、緩衝液(25mM MES(pH7.0))100μlに溶解させる。次いで、実施例I.1に従って調製された磁性シリカゲル1mgを添加し、RTおよび1,000rpmでインキュベートする。磁気分離の後、上清を廃棄する。次いで、サーマルシェーカー上での1,000rpmでの脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の廃棄により、ビーズを2回洗浄する。500bp DNA断片1〜3μgを含有している溶出緩衝液50μlをビーズに添加し、サーマルシェーカー上での5分間のインキュベーションおよび磁気分離の後、上清を入手する。次いで、50mMトリス、50mM NaCl(pH8.5)を含有している溶出緩衝液50μlを使用して、溶出を繰り返す。
【0127】
図1は、残存試料中にDNAが存在せず、全DNAに磁性粒子が結合したことを示している。第二のDNA 1、2、または3μgおよびpH7による溶出液には、300bpおよび500bpのDNA断片が可視であり、このことは、第二のDNA(500bp)が、結合した第一のDNA(300bp)の少なくとも一部を置換したことを示している。pH8.5での第二の溶出液には、残存DNA断片が溶出した。
【0128】
実施例2:異なる陰イオン性化合物およびわずかにアルカリ性の緩衝液による核酸溶出
プラスミドDNA(pUC21)2μgを、25mM MES(pH8.0または8.5)に溶解させ、ポリエチレンイミンによりコーティングされた磁性粒子0.25mg(脱イオン水中50mg/ml)を添加する。分散物をRTおよび1,000rpmで5分間混合する。磁気分離の後、上清を除去する。次いで、サーマルシェーカー上でのRTおよび1,000rpmでの脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の廃棄により、ビーズを2回洗浄する。デキストラン硫酸(Mw9,000〜25,000)、ポリアクリル酸、シュウ酸、またはメリト酸2,000ngを付加的に含有している溶出緩衝液(25mM MES(pH8.0または8.5))100μlを使用して、溶出を実施する。次いで、50mM MES、50mM NaCl(pH8.5)50μlを使用して、第二の溶出を実施する。
【0129】
図2は、デキストラン硫酸、ポリアクリル酸、シュウ酸、またはメリト酸2,000ngを使用して、pDNAの大部分が磁性粒子から溶出させられることを示している。pH8.5での第二の溶出は、プラスミドの残りのみを溶出させる。
【0130】
実施例3:カルボン酸を使用した溶出
プラスミドDNA(pUC21)2μgを25mM MES(pH7.0)に溶解させ、スペルミンによりコーティングされた磁性粒子(脱イオン水中50mg/ml)0.125mgを添加する。次いで、分散物をRTおよび1,000rpmで5分間インキュベートする。磁気分離の後、上清を除去する。次いで、サーマルシェーカー上でのRTおよび1,000rpmでの脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の廃棄により、ビーズを2回洗浄する。カルボキシメチルデキストラン、デキストラン硫酸(Mw6,500〜10,000)、デキストラン硫酸(Mw9,000〜25,000)、ポリアクリル酸、ポリ(4-スチレンスルホン酸マレイン酸)、酢酸、シュウ酸、クエン酸、ピロメリト酸、またはメリト酸2,000、5,000、または10,000ngを付加的に含有している溶出緩衝液(25mM MES(pH7.0))100μlを使用して、溶出を実施する。次いで、50mM MES、50mM NaCL(pH8.5)50μlを使用して、第二の溶出を実施する。
【0131】
図3は、デキストラン硫酸、ポリアクリル酸、ポリ(4-スチレンスルホン酸マレイン酸)、シュウ酸、クエン酸、ピロメリト酸、またはメリト酸2,000〜10,000ngを使用して、結合した核酸の溶出が達成されることを示している。酢酸は、少量のプラスミドしか溶出させなかった。その場合、プラスミドの大半が第二の溶出工程において溶出する。しかしながら、その他の化合物は、結合した核酸を溶出させることができる。
【0132】
実施例4:「無塩基」核酸を使用した溶出
プラスミドDNA(pUC21)2μgを25mM MES(pH7.0)に溶解させ、スペルミン(pH7.0、7.5)またはポリエチレンイミン(pH8.0、8.5)によりそれぞれコーティングされた磁性粒子0.25mg(各々、脱イオン水中50mg/ml)を添加する。次いで、分散物をRTおよび1,000rpmで5分間混合する。磁気分離の後、上清を除去する。次いで、サーマルシェーカー上でのRTおよび1,000rpmでの脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の除去により、ビーズを2回洗浄する。「無塩基」DNA 2,000、5,000、または10,000ngを付加的に含む溶出緩衝液(25mM MES(pH7.0、7.5、8.0、または8.5))100μlを用いて、溶出を実施する。次いで、50mM MES、50mM NaCl(pH8.5)50μlを使用して、第二の溶出を実施する。
【0133】
図4は、残存試料中にDNAが検出され得ないため、プラスミドDNAが固相に結合したことを示している。pH7.0および7.5で、スペルミンビーズからDNAを除去することは不可能である。しかしながら、pH8.0および8.5で、プラスミドはポリエチレンイミンビーズから溶出する。
【0134】
実施例5:種々の陰イオンによるPCR阻害
βアクチンPCR反応混合物に、ゲノムDNA 5、10、または20ng、および酢酸、シュウ酸、クエン酸、ポリアクリル酸、またはメリト酸、各々20ngを添加する。平行して、対照としてのカルボン酸の添加なしのPCR結果およびブランク値を決定する。
【0135】
阻害試験の結果(図5)は、試験されたカルボン酸のいずれの存在下でも、PCRが良好に機能することを示している。特に、酢酸、シュウ酸、またはクエン酸の添加は、PCRに全く影響しない。ct値の軽度の増加が検出可能であるものの、ポリアクリル酸およびメリト酸の添加も、これらの実施例においてPCRを阻害しない。しかしながら、後の実施例において示されるように、ポリアクリル酸は何らかの条件の下でPCRを阻害し得る。例えば、ポリアクリル酸の阻害効果は、図24に証明されるように、Mg2+濃度を増加させることにより逆転/救済され得る。
【0136】
実施例6:クエン酸を使用したPCR阻害アッセイ法
βアクチンPCR反応混合物に、ゲノムDNA 5または10ng、およびクエン酸30、60、120、または240ngを添加する。平行して、対照としてのカルボン酸の添加なしのPCR結果およびブランク値を決定する。次いで、βアクチンPCRを実施し、Ct値を決定する。Ct値とは、作製された核酸の量が、(核酸産物のシグナルとバックグラウンドシグナルとを区別するために使用される)ある閾レベルを超えるまでのPCRの反応サイクルの数を表す。
【0137】
図6に示される通り、Ct値は、クエン酸量が増加するにつれ、むしろ減少する。これについての可能性のある一つの説明は、クエン酸がPCR緩衝液の陽イオン性構成要素と複合体化し、それにより、PCR反応の特異性を増加させるというものである。gDNA 5ngに360ngまで添加しても、クエン酸の阻害的な影響は検出され得ない。
【0138】
実施例7:第二のDNAを使用したDNAの結合および放出
DNA断片(100bp)1μgを、25mM MES緩衝液(pH7.0)100μlに溶解させ、スペルミンで修飾された磁性粒子の懸濁物(26.4mg/ml)15μlを添加し、懸濁物をRTおよび1,000rpmで5分間混合する。磁気分離の後、上清を除去する。次いで、RTおよび1,000rpmでの脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の除去により、粒子を2回洗浄する。次いで、500bpまたは1000bpのDNA 1、2、または3μgを含有している溶出緩衝液(25mM MES(pH7.0))50μlを使用して、第一のDNAを溶出させる。溶出は、RTおよび1,000rpmでの溶出緩衝液中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の入手により実施される。次いで、結合、洗浄、および溶出の後の上清の試料を、アガロースゲル電気泳動により分離する。
【0139】
図7は、より短い第一のDNAが、磁性粒子に結合し、より長い第二のDNAにより効果的に溶出させられることを示す。
【0140】
実施例8:より短い長さを有する第二のDNAを使用したDNAの結合および放出
500bpまたは1000bpのDNA断片1μgを、25mM MES緩衝液(pH7.0)100μlに溶解させる。スペルミンで修飾された磁性粒子の懸濁物(17mg/ml)15μlを添加し、懸濁物を、RTおよび1,000rpmで5分間混合し、スペルミンで修飾された磁性粒子に結合させる。磁気分離の後、上清を除去する。次いで、RTおよび1,000rpmでの脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の除去により、粒子を2回洗浄する。次いで、200bpのDNA 1、2、または3μgを含有している溶出緩衝液(25mM MES(pH7.0))50μlを使用して、溶出を実施する。溶出は、RTおよび1,000rpmでの溶出緩衝液中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の入手により実施される。対照のため、50mMトリス、50mM NaCl(pH8.5)50μlを使用して、第二の溶出を実施する。次いで、結合、洗浄、第一の溶出、および第二の溶出の後の上清の試料を、アガロースゲル電気泳動により分離する。
【0141】
図8は、より短い第二のDNAを使用して、より長い第一のDNAを効果的に溶出させることも可能であることを示す。その後の対照溶出は、少量の残余の第一のDNAしか示さなかった。
【0142】
実施例9:溶出のためにRNAを使用したDNAの結合および放出
スペルミンで修飾されたビーズ0.125mgを、25mM MES緩衝液(pH7.0)100μlに懸濁させ、500bpのDNA断片1μgを添加する。懸濁物を、RTおよび1,000rpmで5分間インキュベートし、磁気的に分離し、上清を除去する。次いで、脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の除去により、ビーズを2回洗浄する。次いで、RNA 1、2、または3μgを含有している溶出緩衝液(25mM MES(pH7.0))50μlを使用して、溶出を実施する。溶出は、溶出緩衝液中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の入手により実施される。対照のため、50mMトリス、50mM NaCl(pH8.5)50μlを使用した第二の溶出を実施する。次いで、結合、洗浄、第一の溶出、および第二の溶出の後の上清の試料を、アガロースゲル電気泳動により分離する。
【0143】
図9は、RNA 3μgを使用して、結合したDNAが、有意な量、溶出させられることを示す。
【0144】
実施例10:溶出のためにDNAを使用したRNAの結合および放出
スペルミンで修飾されたビーズ0.125mgを、25mM MES緩衝液(pH7.0)100μlに懸濁させ、RNA 2μgを添加する。懸濁物を、RTおよび1,000rpmで5分間インキュベートし、磁気的に分離し、上清を除去する。次いで、脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の除去により、ビーズを2回洗浄する。次いで、500bpのDNA 1、2、または3μgを含有している溶出緩衝液(25mM MES(pH7.0))50μlを使用して、溶出を実施する。溶出は、溶出緩衝液中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の入手により実施される。対照のため、50mMトリス、50mM NaCl(pH8.5)50μlを使用した第二の溶出を実施する。次いで、結合、洗浄、第一の溶出、および第二の溶出の後の上清の試料を、アガロースゲル電気泳動により分離する。
【0145】
図10は、結合したRNAが、DNAを使用してビーズから溶出させられることを示す。DNA 3μgを使用して、結合したRNAが、ほぼ完全に溶出させられる。
【0146】
実施例11:溶出のためにプラスミドDNAを使用したゲノムDNAの結合および放出
スペルミンで修飾されたビーズ0.125mgまたは0.25mgを、25mM MES緩衝液(pH7.0)100μlに懸濁させ、ゲノムDNA 1μgを添加する。懸濁物を、RTおよび1,000rpmで5分間インキュベートし、磁気的に分離し、上清を除去する。次いで、脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の除去により、ビーズを2回洗浄する。次いで、プラスミドDNA 1、2、または3μgを含有している溶出緩衝液(12.5mM MES(pH7.0))50μlを使用して、溶出を実施する。溶出は、溶出緩衝液中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の入手により実施される。対照のため、50mMトリス、50mM NaCl(pH8.5)50μlを使用した第二の溶出を実施する。次いで、結合、洗浄、第一の溶出、および第二の溶出の後の上清の試料を、アガロースゲル電気泳動により分離する。
【0147】
図11は、プラスミドDNA 3μgを使用した時のゲノムDNAの溶出を示す。
【0148】
実施例12:溶出のためにゲノムDNAを使用したプラスミドDNAの結合および放出
スペルミンで修飾されたビーズ0.25mgを、25mM MES緩衝液(pH7.0)100μlに懸濁させ、プラスミドDNA(pUC21)1μgを添加する。懸濁物を、RTおよび1,000rpmで5分間インキュベートし、磁気的に分離し、上清を除去する。次いで、脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の除去により、ビーズを2回洗浄する。次いで、ゲノムDNA 1、2、または3μgを含有している溶出緩衝液(12.5mM MES(pH7.0))50μlを使用して、溶出を実施する。溶出は、溶出緩衝液中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の入手により実施される。対照のため、50mMトリス、50mM NaCl(pH8.5)50μlを使用した第二の溶出を実施する。次いで、結合、洗浄、第一の溶出、および第二の溶出の後の上清の試料を、アガロースゲル電気泳動により分離する。
【0149】
図12は、プラスミドDNAが、ゲノムDNAを使用して、効果的に溶出させられ得ることを示す。その後の対照溶出は、少量の残余のプラスミドDNAしか示さなかった。
【0150】
実施例13:溶出のために短いDNA断片を使用したsiRNAの結合および放出
実施例I.4に従い調製されたポリエチレンイミンで修飾されたビーズ0.125mgを、25mM MES緩衝液(pH8.0)100μlに懸濁させ、siRNA(Qiagen、注文番号SI00300650)1μgを添加する。懸濁物を、RTおよび1,000rpmで5分間インキュベートし、磁気的に分離し、上清を除去する。次いで、脱イオン水100μl中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の除去により、ビーズを2回洗浄する。次いで、300bpのDNA 2または3μgを含有している溶出緩衝液(25mM MES(pH8.0))50μlを使用して、溶出を実施する。溶出は、溶出緩衝液中での5分間のインキュベーション、磁気分離、および上清の入手により実施される。対照のため、50mMトリス、50mM NaCl(pH8.5)50μlを使用した第二の溶出を実施する。次いで、結合、洗浄、第一の溶出、および第二の溶出の後の上清の試料を、アガロースゲル電気泳動により分離する。
【0151】
図13は、結合したsiRNAが、短いDNA断片を使用して、効果的に溶出させられることを示す。その後の対照溶出は、少量の残余のRNAしか示さなかった。
【0152】
実施例14:ゲノムDNAを使用したPCRに対するプラスミドDNAの阻害効果の分析
第一のDNAを使用したPCRに対する、溶出のために使用されるプラスミドDNAの影響を分析するため、異なる量のゲノムDNAおよび添加されたプラスミドDNAによるβアクチンPCRの連続アッセイ法を実施する。PCRのため、Applied Biosystems 7500 Real-Time PCRシステム(Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)、TaqMan β-Actin Control Reagents(PE Applied Biosystems、注文番号401846)、QuantiTect Probe PCRMastermix(ヌクレオチド、ポリメラーゼ、および塩;Qiagen、注文番号127 137 815)、ならびに蛍光色素FAM(β-Actin Control Reagentsから)を使用する。ゲノムDNAは、キットQIAamp Blood(Qiagen、注文番号51106)を使用して、ヒト血液由来の核酸調製物から入手され、プラスミドDNA(pUC21)は、Qiagen Plasmid Mega Kit(Qiagen、注文番号12183)を使用して、大腸菌からのプラスミド単離により調製される。使用されたゲノムDNAおよびプラスミドDNAの量、ならびに記録されたCt値を表1に示す。
【0153】
【表1】

【0154】
より高いCt値により示される阻害効果は、極めて過剰のプラスミドDNAを使用した時にのみ見られる。他の実施例において示されたように、5倍過剰までの第二の核酸のみが、結合した核酸の効率的な溶出のために必要であり、第二の核酸の阻害効果は、25倍過剰またはそれ以上でのみ検出され得る。従って、本明細書において使用された条件の下で、陰イオン交換材料から第一の核酸を溶出させるための、第二の核酸の使用は、その後のPCR反応に干渉しない。
【0155】
実施例15:ポリアクリル酸(PAA)を使用した溶出
淋菌(NG)DNA 5×105コピーを含有しているDNA試料を、PreserCyt(登録商標)培地1mLに添加した。次いで、溶解緩衝液(100mMトリスHCl(pH7.0)中の2%トライトンX-100、0.2M EDTA、40mMクエン酸ナトリウム、40mMホウ酸)0.5mLを添加して、試料のpHを約7.8にした。次いで、試料をAXpH(商標)ビーズ懸濁物30μLと混合し、60℃で10分間インキュベートした。AXpH(商標)ビーズを磁気的に分離し、洗浄緩衝液(0.1mMトリス(pH8.0)中0.1%NP-40)500μlにより1回洗浄した。次いで、(a)洗浄緩衝液25μL、または(b)洗浄緩衝液中のPAA,Na塩(Fw>200,000;トリス塩基によりpH8.0に調整)の溶液のいずれかを添加することにより、溶出を実施した。次いで、各溶出液について3通りの25μL反応で実施されたリアルタイムPCRにおいて、溶出液(試料2.5μL)を、上記の手法に従って加工されていない同一溶出緩衝液中の等量の対照DNAと比較した。従って、対照のDNA希釈物は、ビーズからのDNAの100%の回収を模倣し、PAAがPCRに対して負の効果を有するか否かも明らかにするであろう。TaqMan-MGBプローブを使用して、閾値サイクル(Ct)を検出した(TETチャンネル、図14A〜14Cを参照のこと)。産物同一性を確認するため、PCR後融解曲線を記録するため、EvaGreen蛍光色素もPCRに添加した(図14C)。
【0156】
結果は表2に要約される。「溶出液」カラムは、AXpH(商標)ビーズから核酸を溶出させるために示された緩衝液を使用した結果を示す。「対照」カラムは、示された緩衝組成物に核酸を直接希釈した結果を示す。「ΔCt rec.」は、各緩衝組成物についての「溶出液」カラム反復実験の平均値から「対照」カラム反復実験の平均値を差し引くことにより計算される。「ΔCt eff.」は、洗浄緩衝液についての「対照」カラム反復実験の平均値から各緩衝液についての「対照」カラム反復実験の平均値を差し引くことにより計算される。従って、「ΔCt rec.」とは、AXpH(商標)ビーズからのDNA溶出の効率を反映し、「ΔCt eff.」は、増幅反応物中のPAAの存在により引き起こされたPCR効率の可能性のある損失を示す。理想的には、両パラメーターがゼロに近いべきであり、それは、回収が高効率であり、かつPCR反応の阻害がないことを反映する。
【0157】
表2のデータは、PAA溶出液中のAXpH(商標)ビーズからのDNAの回収が100%に近いことを示す。洗浄緩衝液およびPAAを含む溶出緩衝液のpHは、いずれもpH8.0で同一であり、従って、DNA溶出におけるいずれのpHの効果も除外される。図14A〜14Cは、PCRにおける増幅曲線が正常であり、PAAがPCRにおけるアーティファクト形成を促進しないことを示す。
【0158】
【表2】

【0159】
実施例16:PAAによるDNAの溶出と「pHシフト」溶出との比較
以下の違いを除き、実施例15と本質的に同様に、実験を実施した。(a)3試料の各セットは、NG DNA 105、103、および10コピーを含有していたこと;(b)一つの試料セットは、0.5% PAA 25μLにより溶出させられたこと;(c)一つの試料セットはアルカリ性溶液(0.1M NaOH 15μLにより溶出させられた(その後、170mMトリスHCl(pH8.0)10μLにより中和)こと;および(d)NG DNAの対照セットは、洗浄緩衝液で適切な量のNG DNAを希釈することにより、AXpH(商標)ビーズからの試料の100%の回収をシミュレートするために調製されたこと。図15に示されるように、アルカリおよびPAAによる溶出についての結果は比較可能である。
【0160】
実施例17:異なるPAAサイズ画分、ポリメタクリル酸、およびポリグルタミン酸による溶出
この実験は、二つの異なるポリアクリル酸の試料(重PAA「PAAH」および軽PAA「PAAL」)ならびにポリメタクリル酸(PMA)により、DNAがAXpH(商標)ビーズから溶出するが、洗浄緩衝液によっては溶出しないことを証明した。各DNA試料は、PreserCyt(登録商標)培地1mL中に淋菌(NG)DNA 5×105コピーを含有していた。溶解緩衝液(100mMトリスHCl(pH7.0)中の2%トライトンX-100、0.2M EDTA、40mMクエン酸ナトリウム、40mMホウ酸)0.5mLを添加した後(試料の最終pHは約7.8であった)、試料をAXpH(商標)ビーズ懸濁物30μLと混合し、60℃で10分間インキュベートした。AXpH(商標)ビーズを、磁気的に分離し、洗浄緩衝液(0.1mMトリス(pH8.0)中0.1%NP-40)500μlにより1回洗浄した。次いで、(a)洗浄緩衝液25μL;(b)洗浄緩衝液中0.25%PAAH(ポリアクリル酸,Na塩、Fw>200,000);(c)洗浄緩衝液中0.1%PAAL(ポリアクリル酸,Na塩、Fw約5,100);(d)洗浄緩衝液中0.1%PMA(ポリメタクリル酸,Na塩、Fwおよそ483,000)のいずれかを添加することにより、溶出を実施した。次いで、各溶出液について3通りの25μL反応で実施されたリアルタイムPCRにおいて、溶出液(試料2μL)を、上記の手法に従って加工されていない等量の対照DNAと比較した。EvaGreen蛍光色素を使用して、閾値サイクル(Ct)を検出した。平均Ctは、それぞれ、27.2(PAAH)、24.4(PAAL)、26.1(PMA)、および23.5(対照DNA)であった。洗浄緩衝液による溶出液は増幅産物を与えなかった。これらの結果は、淋菌(NG)DNAの溶出が、「pHシフト」ではなく、PAAおよびPMAの存在により引き起こされたことを示す。
【0161】
さらに、この実験は、より低い式量のPAA、PMA、およびポリグルタミン酸(「PGA」)も、AXpH(商標)ビーズからDNAを溶出させることを証明した。各DNA試料は、PreserCyt(登録商標)培地中のNG DNA 105コピー 5μlを含有していた。(実施例15に記載されたような)溶解緩衝液を添加し、試料をボルテックス処理し、60℃で10分間インキュベートした。各試料を、5分後に1回振とうした。AXpH(商標)ビーズを磁気的に分離し、上清を吸引し、(実施例15に記載されたような)洗浄緩衝液500μlにより洗浄した後、ビーズを分離し、洗浄緩衝液を吸引した。次いで、(a)洗浄緩衝液;(b)アルカリ性溶液;(c)PAAHを含有している洗浄緩衝液;(d)PAALを含有している洗浄緩衝液;(e)PMAを含有している洗浄緩衝液;または(f)PGAを含有している洗浄緩衝液のいずれかを添加することにより、溶出を実施した。表3に見られるように、洗浄緩衝液対照は、単一の工程においてDNAの良好な洗浄除去を証明した。アルカリ洗浄緩衝液は無効であった。PAAHは極めて良好な回収を与えた。PAALは、PAAHよりさらに良好に作用した。PMAはPAALと同等の良好な回収結果を提供したが、効率は多少低かった。
【0162】
【表3】

【0163】
実施例17:PAAによるRNAの溶出
本実施例は、RNAもポリアクリル酸によりAXpH(商標)ビーズから溶出させられ得ることを証明する。本実施例において使用されたRNAは、クローニングされたHPV16配列の7,983nt転写物であった。PresevCyt培地1mL中のRNA溶液(7.5×104コピー/μL)25μLを、(実施例15に記載された通り)溶解緩衝液1mL中のQiagen AXpH(商標)ビーズの懸濁物60μLに添加し、60℃でインキュベートし、実施例15に記載されたように洗浄した。洗浄工程の後、ビーズを、洗浄緩衝液500μLに再懸濁させ、250μlに二等分した。ビーズの磁気分離の後、一方の部分を、60Cで10分間、0.1%NP-40を含有している0.5%PAA(>200,000)25μLにより溶出させ;ビーズの他方の部分を、同一条件下で0.1%NP-40を含有している2.5%PAAにより溶出させた。ビーズを分離した後、第一の部分からの溶出液を逆転写/PCRへ直接負荷し、第二の部分からの溶出液を水により5倍希釈した。いずれの場合にも、2.5μLの溶出液容量を、HPV16 6467-6590領域のためのプライマーおよびTaqMan(登録商標)プローブを含有している、Qiagen 1-Step QuantiTech Virus Kitを使用した一工程逆転写PCR反応25μLに添加した。RNA対照は、AXpH(商標)ビーズからのRNAの100%の溶出を模倣するため、適切に、対応する溶出緩衝液によりRNA溶液を希釈することにより調製された(即ち、0.5%および2.5%PAA溶出液について、それぞれ、7.5×104コピー/μL RNAストック溶液の10倍および50倍の希釈)。一工程RT/PCRを、製造業者のプロトコルに従って、各溶出液/対照について3通り実施した。結果は表4に示される。対照希釈物と溶出液との間のCtの得られた差は、実験誤差の範囲内であり、従って、RNA溶出が100%に近かったことが示唆される。
【0164】
【表4】

【0165】
実施例18:PCRに対する陰イオン交換材料の効果、および多価陰イオン性化合物による逆転
陰イオン交換材料が、精製された核酸の効果的な増幅に干渉する場合があることが、逸話的に観察されている。この効果を証明するため、AXpHビーズの非存在下で、または1:10,000、1:1,000、もしくは1:100希釈のAXpHビーズの存在下で、リアルタイムPCRを実施した。結果は図16に示される。阻害は、増幅曲線の直線相の右方シフトにより示される。
【0166】
この阻害効果を逆転させ得る否かを決定するため、担体DNAを試験した。ウシ血清アルブミン(「BSA」)を対照として試験した。1:50希釈のAXpH(商標)ビーズ、および1mg/ml BSA(0.1および0.01mg/ml BSAの最終濃度のため、1:1および1:10希釈)または100ng/ml担体DNAのいずれかの存在下で、リアルタイムPCR増幅を3通り実施した。FAM(上の曲線)または5'-テトラクロロ-フルオレセイン(「TET」)色素(下の曲線)のいずれかにより標識されたレポータープローブを使用して、蛍光シグナルを生成した。結果は、図17および図18に示される。
【0167】
次いで、この効果が核酸に特異的であったか、それとも他の多価陰イオン性化合物により複製され得るかを決定するため、ポリアクリル酸を試験した。25ng/ml PAAの存在下(「PAA+」)または非存在下(「PAA-」)で、1:200、1:250;1:400;および1:500希釈のAXpHビーズの存在下で、リアルタイムPCR増幅を3通り実施した。FAM(上の曲線)または5'-テトラクロロ-フルオレセイン色素(「TET」)(下の曲線)のいずれかにより標識されたレポータープローブを使用して、蛍光シグナルを生成した。図18に見られるように、ポリアクリル酸は、同様に、陰イオン交換材料によるPCR阻害を逆転させることができた。結果は図19に示される。
【0168】
さらに、この効果が高い陰イオン交換濃度の存在下で低い標的濃度についても維持されるか否かを決定するため、ある範囲の標的濃度において、PAAを試験した。1:25希釈のAXpHビーズおよび0または25ng/mL PAAの存在下で、標的核酸10、103、および105コピーに対して、リアルタイムPCR増幅を3通り実施した。FAM(上の曲線)または5'-テトラクロロ-フルオレセイン色素(「TET」)(下の曲線)のいずれかにより標識されたレポータープローブを使用して、蛍光シグナルを生成した。結果は図20に示される。
【0169】
実施例19:tHDAに対する陰イオン交換材料の効果、および多価陰イオン性化合物による逆転
PCRは、最も一般的に使用されている核酸増幅法であるが、その他の方法も公知である。効果がPCRに特異的であるか否かを決定するため、ポリアクリル酸を用いて、またはポリアクリル酸を用いずに、陰イオン交換材料の存在下で、tHDA増幅を実施した。
【0170】
図21に見られる通り、ポリアクリル酸の存在は、低い標的核酸濃度においても高い標的核酸濃度においても、tHDAを使用した増幅を救済する。従って、多価陰イオン性化合物は、PCRまたはtHDAのいずれかを使用した増幅を救済するために効果的である。
【0171】
実施例20:陰イオン交換材料の存在下での核酸の増幅
陰イオン交換材料の阻害効果のため、核酸は、一般的には、分析の前に、陰イオン交換材料から溶出させられ分離される。しかしながら、ビーズから分離する必要なく、核酸を分析し得ることは有利であろう。従って、本明細書に開示される陰イオン性化合物が、陰イオン交換材料の存在下での核酸のリアルタイムPCR増幅を可能にするか否かを決定するために試験した。
【0172】
一例において、三つの異なる多価陰イオン性化合物:ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびポリグルタミン酸を、リアルタイムPCRにおいて試験した。標的NG DNAをAXpHビーズに添加し、ボルテックス処理し、10分間インキュベートした。次いで、ビーズを上清から磁気的に分離し、ボルテックス処理により洗浄緩衝液(10mMトリス(pH8);0.1%NP-40 alternative)により洗浄した。ビーズを洗浄緩衝液から磁気的に分離し、洗浄緩衝液または洗浄緩衝液+0.25%のそれぞれの多価陰イオン性化合物のいずれかに、ビーズをボルテックス処理することにより再懸濁させた。次いで、これらの懸濁物の一部を、分析のためプレートウェルに添加した。結果は図22に示される。
【0173】
別の例として、ポリグルタミン酸(「PGA」)を、ポリアデニル酸(「ポリA」)およびカルボキシメチルデキストラン(「CMD」)と比較した。適宜、1.25%のPGA、ポリA、またはCMDを使用した以外は、上記と実質的に同様に、この分析を実施した。結果は図23に示される。
【0174】
実施例22:PCRに対する多価陰イオン性化合物の効果、およびMg2+による逆転
PAAはPCRを阻害するが、それは、Mg2+の濃度を増加させることにより補正され得る。標的NG DNAを、二つの型の陰イオン交換材料および3、7、または11mM Mg2+の存在下で、0.05または0.1%いずれかのPAAの存在下で増幅した。図に見られるように、Mg2+の濃度の増加は、PAAの阻害効果を逆転させた。結果は図24に示される。
【図1】

【図2】

【図3−01】

【図3−02】

【図3−03】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14A】

【図14B】

【図14C】

【図15】

【図16A】

【図16B】

【図17】

【図18】

【図19A】

【図19B】

【図20A】

【図20B】

【図21A】

【図21B】

【図21C】

【図22A】

【図22B】

【図22C】

【図23】

【図24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)核酸-陰イオン交換複合体を供給する工程;および
(b)陰イオン性化合物を含む溶液を、該核酸-陰イオン交換複合体に添加する工程であって、該陰イオン性化合物が少なくとも2個の陰イオン性基を含む工程
を含む、陰イオン交換材料から核酸を溶出させる方法であって、
該陰イオン性化合物が該核酸-陰イオン交換複合体を崩壊させる、方法。
【請求項2】
(a)核酸を含む試料を供給する工程;ならびに
(b)陰イオン交換材料が該核酸と可逆的に複合体化するpH条件および塩条件の下で、該試料を該陰イオン交換材料に添加する工程
を含む方法により、前記核酸-陰イオン交換複合体を供給する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記陰イオン交換材料が、
(a)式R3Nのアミン;
(b)式R2NHのアミン;
(c)式RNH2のアミン;および
(d)式X-(CH2)n-Yのアミン
からなる群より選択される正にイオン化可能な捕獲成分を含み、
式中、
Xが、R2N、RNH、またはNH2であり、
Yが、R2N、RNH、またはNH2であり、
Rが互いに独立して、好ましくはO、N、S、およびPより選択される1個または複数個のヘテロ原子を含んでもよい、直鎖型、分岐型または環式のアルキル置換基、アルケニル置換基、アルキニル置換基またはアリール置換基であり、かつ
nが、0〜20の範囲の整数である、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記陰イオン交換材料が、ポリエチレンイミン(PEI)で修飾された磁性シリカビーズを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの前記陰イオン性化合物が、
(a)カルボン酸、重合可能または縮合可能な酸性モノマーのオリゴマー、有機スルホン酸、有機ホスホン酸、オルガノホスフェート、カーボネート、およびジアセチルアセトンからなる群より選択される、非ポリマー性化合物、ならびに
(b)重合した不飽和カルボン酸;不飽和カルボン酸と少なくとも一つの他のモノマーとのコポリマー;酸性アミノ酸のポリペプチド;酸性アミノ酸と少なくとも一つの他のアミノ酸とのコポリマー;カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ホスフェート、およびカーボネートからなる群より選択される、共有結合したイオン化可能な基を保持しているポリカーボハイドレート;カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ホスフェート、およびカーボネートからなる群より選択される、共有結合したイオン化可能な基を保持しているポリスチレン;第二の核酸;ならびに核酸類似体からなる群より選択される、多価陰イオン性化合物
からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記陰イオン性化合物が、少なくとも3個の陰イオン性基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記陰イオン性化合物が、2〜20個の炭素原子を含む非ポリマー性化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記陰イオン性化合物が、シュウ酸、メリト酸、ピロメリト酸、クエン酸、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリグルタミン酸(PGA)、およびデキストラン硫酸(DS)からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が、前記陰イオン性化合物の非存在下では前記核酸-陰イオン交換複合体を崩壊させないようなpHを有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記溶液が、前記捕獲成分の正にイオン化可能な基のpKaを超えないpHを有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記溶液がpH 5〜13の範囲のpHを有する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記溶液がpH 5〜8.5の範囲のpHを有する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記溶液がおよそ1Mまたはそれ未満の全塩濃度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記溶液がおよそ0.5Mまたはそれ未満の全塩濃度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記溶液がpHを有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記溶液が、ポリメラーゼ活性を有する酵素、および任意でMg2+の供給源をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記溶液が、前記核酸-陰イオン交換複合体が形成されるpH条件および塩条件を超えないpHおよび塩濃度を有する、請求項2記載の方法。
【請求項18】
(a)核酸-陰イオン交換複合体を供給する工程;
(b)陰イオン性化合物を含む溶液を、該核酸-陰イオン交換複合体に添加する工程であって、該陰イオン性化合物が少なくとも2個の陰イオン性基を含む工程;ならびに
(c)該陰イオン性化合物および陰イオン交換材料の存在下で核酸を分析する工程
を含む、該陰イオン交換材料の存在下で該核酸を分析する方法。
【請求項19】
前記核酸を分析する工程が該核酸を増幅することを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記核酸を増幅することが、PCR、逆転写酵素(「RT」)反応、RT-PCR、定量的リアルタイムPCR、定量的リアルタイムRT-PCR、多重分析、融解曲線分析、高分解能融解曲線分析、tHDA、RT-tHDA、定量的リアルタイムtHDA、および定量的リアルタイムRT-tHDAからなる群より選択される手法を含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
(a)少なくとも2個の陰イオン性基を含み;かつ
(b)核酸-陰イオン交換複合体を崩壊させるのに十分な濃度で存在する
陰イオン性化合物を含み、かつ
該陰イオン性化合物の非存在下では該核酸-陰イオン交換複合体を崩壊させないようなpHを有する、
溶出組成物。
【請求項22】
溶出緩衝液が、核酸増幅反応を実施するのに適しているpHおよび塩濃度を有する、請求項21記載の溶出組成物。
【請求項23】
ポリメラーゼ活性を有する酵素をさらに含み、かつ任意でMg2+またはその供給源を含む、請求項21記載の溶出組成物。
【請求項24】
(a)核酸;
(b)陰イオン交換材料;
(c)ポリメラーゼ活性を有する酵素;
(d)少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物
を含み、かつ
(e)任意でMg2+またはその供給源を含む、
増幅組成物。
【請求項25】
前記核酸のさらなる精製の必要なしに酵素反応において直接使用可能である、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法に従って生成された溶出液。
【請求項26】
前記酵素反応が、PCR、逆転写酵素(「RT」)反応、RT-PCR、定量的リアルタイムPCR、定量的リアルタイムRT-PCR、多重分析、融解曲線分析、高分解能融解曲線分析、好熱性ヘリカーゼ依存性増幅(「tHDA」)、RT-tHDA、定量的リアルタイムtHDA、および定量的リアルタイムRT-tHDAからなる群より選択される核酸増幅である、請求項25記載の溶出液。
【請求項27】
前記核酸がRNAである、請求項25記載の溶出液。
【請求項28】
(a)陰イオン交換材料;および
(b)少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物
を含む、生物学的試料から核酸を単離するためのキット。
【請求項29】
前記陰イオン性化合物が溶出組成物中に含まれる、請求項28記載のキット。
【請求項30】
(a)陰イオン交換材料;
(b)ポリメラーゼ活性を有する酵素;
(c)少なくとも2個の陰イオン性基を含む、陰イオン性化合物
を含み、かつ
(d)任意でMg2+またはその供給源をさらに含む、
核酸を分析するためのキット。
【請求項31】
陰イオン性基を少なくとも2個含む陰イオン性化合物により引き起こされるPCR阻害を逆転させるためのMg2+の使用。

【公表番号】特表2013−505719(P2013−505719A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530881(P2012−530881)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/044586
【国際公開番号】WO2011/037692
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(510069559)キアジェン ゲイサーズバーグ インコーポレイテッド (13)
【出願人】(512076003)キアジェン ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】