陰極アーク製作構造物を備えるインプラント型医療デバイス
陰極アーク製作構造物を具備するインプラント型医療装置が提供されている。本発明の陰極アーク製作構造物は、インプラント型医療装置では以前は利用不可能であった構成を有する、厚みのある無応力金属構造物になるであろう。更に他の実施形態において、構造物は、鈍鋸歯状又は多孔性の層になるであろう。インプラント型医療装置を製作する方法、並びに、主題の方法を実施するためのシステムも提供されている。構造物には、電気的接続体、コーティング層、封止層等のような層及び3次元コンポーネントがあるが、こういった構造物の設計は、以前に可能であったものより複雑であろう。したがって、本発明は、以前は不可能であった医療装置コンポーネントの製作を可能にし、それによって、医療装置の能力を大幅に向上させるとともに、装置を全体的に小型化する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願への相互参照)
米国特許法第119(e)条にしたがって、本願は、2006年6月21日に出願された、「Implantable Medical Devices Comprising Cathodic Arc Produced Structure」という発明の名称の米国仮特許出願第60/805,464号;2006年6月22日に出願された、「Cathodic Arc Deposition Hermetically Sealed Implantable Structures」という発明の名称の米国仮特許出願第60/805,578号;2006年6月22日に出願された、「Implantable Medical Devices Comprising Cathodic Arc Produced Structures」という発明の名称の米国仮特許出願第60/805,576号;2006年6月22日に出願された、「Noble Metal Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」という発明の名称の米国仮特許出願第60/805,581号;2006年10月25日に出願された、「Medical Devices Comprising Cathodic Arc Produced Microstrip Antennas」という発明の名称の米国仮特許出願第60/862,928号;2007年2月8日に出願された、「Metal Binary And Ternary Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」という発明の名称の米国仮特許出願第60/888,908;2007年2月16日に出願された、「Metal Binary And Ternary Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」という発明の名称の米国仮特許出願第60/890,306号;2007年5月10日に出願された、「Metal Binary And Ternary Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」という発明の名称の米国仮特許出願第60/917,297号の出願日に対する優先権を主張する。これらの出願の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(導入)
種々の異なる種類のインプラント型医療装置(IMD:implantable medical devices)が、当該技術分野では公知である。これらの装置は、生理的パラメータのモニタリング、薬理的薬剤の供給、電気的刺激の供給、等を含むが、これらに限定されない1つ又は複数の異なる機能を有し得る。
【0003】
装置の能力を高めつつ小型の形状となるように、より小型の、さらに複合化したインプラント型医療装置を製作することが、この分野では絶えず望まれている。このために、インプラント型医療装置を作るのに、種々の異なる作製技術が用いられてきた。
【0004】
本発明の発明者の一部による米国特許出願公開第20060058588号、第20050160827号、第20050160826号、第20050160825号、第20050160824号、第20050160823号、第20040254483号、第20040220637号、第20040215049号、及び第20040193021号は、医療装置を製作するのに、微小電気機械システム(MEMS:Micro−Electro−Mechanical Systems)作製等のプレーナ処理技術を使用することを記述している。構造物を作製する一定の状況において使用し得る堆積技術には、電気めっき、プラズマスプレイ、スパッタリング、電子ビーム蒸着、物理気相成長、化学気相成長、プラズマ強化化学気相成長、等があるが、これらに限定されない。材料除去技術には、反応性イオンエッチング、異方性化学エッチング、等方性化学エッチング、例えば化学機械研磨による平坦化、レーザアブレーション、放電加工(EDM:electronic discharge machining)、等があるが、これらに限定されない。同じく注目すべきものとして、リソグラフィのプロトコルがある。
【0005】
陰極アーク堆積は、1つの公知の様式の材料堆積プロトコルである。イオンビーム堆積の一形式である陰極アークプラズマ堆積では、陰極と陽極との間で電気アークが発生し、この電気アークが陰極からのイオンを陰極から開放し、それによってイオンビームを発生させる。こうして発生したイオンビーム、即ち陰極材料イオンのプラズマは次いで、基板(即ち、構造物が製作されることになる材料)表面と接触し、陰極材料製の構造物が基板表面上に堆積する。いくつかの実施形態では、基板が存在する雰囲気から得られたエレメント(1つ又は複数)も基板表面上に堆積する。種々の陰極アーク堆積プロトコル及びシステムを記述した数多くの特許及び公開された出願が利用可能である。かかる刊行物には、米国特許第6,929,727号、第6,821,399号、第6,770,178号、第6,702,931号、第6,663,755号、第6,645,354号、第6,608,432号、第6,602,390号、第6,548,817号、第6,465,793号、第6,465,780号、第6,436,254号、第6,409,898号、第6,331,332号、第6,319,369号、第6,261,421号、第6,224,726号、第6,036,828号、第6,031,239号、第6,027,619号、第6,026,763号、第6,009,829号、第5,972,185号、第5,932,078号、第5,902,462号、第5,895,559号、第5,518,597号、第5,468,363号、第5,401,543号、第5,317,235号、第5,282,944号、第5,279,723号、第5,269,896号、第5,126,030号、第4,936,960号、並びに、米国特許出願公開第20050249983号、第20050189218号、第20050181238号、第20040168637号、第20040103845号、第20040055538号、第20040026242号、第20030209424号、第20020144893号、第20020140334号、及び第20020139662号がある。
【0006】
陰極アーク堆積プロトコルは公知であるが、本出願の発明者の知る限りでは、かかるプロトコルは今日まで、ロータブレード等の大型産業エレメント上のコーティングを製作するような医療装置以外の用途、並びに、宝石の製造にもっぱら用いられてきた。発明者が最大限知る限り、陰極アーク堆積は、医療装置及びそれのコンポーネントの製作には用いられていない。
【0007】
MEMSプロトコル等のプレーナ処理プロトコルを適用することによって医療装置の設計及び作製が大幅に進歩したにもかかわらず、さらに複合化しかつさらに小型化したインプラント型医療装置の製作に使用可能な新たな製作技術を開発することが依然として必要とされている。特に関心のある事柄は、例えば厚みのある無応力層、多孔層、及び鈍鋸歯(crenulations)を有する層といった所望の形式で堆積された材料の組成物を、複合3次元構造を含む種々の異なる構成で製作するのに使用可能なプロトコルを明確にすること(identification)であろう。本発明は上記及び他の必要事項を満足する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、基板上に、たとえ高アスペクト比を有する基板内の場所であっても、厚みのある無応力金属構造物を製作することが初めて可能になる。更に、本発明の代替実施形態は、その表面上に多孔性金属構造物及び鈍鋸歯状の金属層を製作することを可能にする。インプラント型医療装置用の種々の異なる構造物を製作するのに、主題発明を用いることができる。構造物には、電気的接続体、コーティング層、封止層等のような層及び3次元コンポーネントがあるが、こういった構造物の設計は、以前に可能であったものより複雑であろう。したがって、本発明は、以前は不可能であった医療装置コンポーネントの製作を可能にし、それによって、医療装置の能力を大幅に向上させるとともに、装置を全体的に小型化する。
【0009】
本発明の諸実施形態は、陰極アークで製作した1つ又は複数の構造物、即ち陰極アーク堆積プロセスを用いて製作した構造物を有するインプラント型医療装置を含む。構造物は、厚みのある無応力金属構造物、多孔層、及び鈍鋸歯状の層とすることができる。本発明の諸実施形態は、医療装置インプラント用構造物を陰極アーク堆積プロセスを用いて製作する方法、並びに、本発明の方法を実施するように構成された陰極アーク堆積システムを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る陰極アークプラズマ源の略図である。
【図2A】本発明の一実施形態に係る陰極アーク堆積によって堆積されたプラチナ層の写真である。
【図2B】本発明の一実施形態に係る陰極アーク堆積によって堆積されたプラチナ層の写真である。
【図2C】本発明の一実施形態に係る陰極アーク堆積によって堆積されたプラチナ層の写真である。
【図2D】本発明の一実施形態に係る陰極アーク堆積によって堆積されたプラチナ層の写真である。
【図3】本発明の一実施形態に係る陰極アーク堆積によって堆積されたプラチナ層であって、表面が鈍鋸歯状になっている層の写真である。
【図4A】本発明の一実施形態に係る密閉封止した集積回路の異なる3次元表示図である。
【図4B】本発明の一実施形態に係る密閉封止した集積回路の異なる3次元表示図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る多孔性陰極下部層を有する電池の一実施形態を示す図である。
【図6A】本発明の代替実施形態に係る多数の密閉封止した集積回路を有する集合体であって、陰極アークで製作した導電性フィードスルーが存在している集合体の異なる断面図である。
【図6B】本発明の代替実施形態に係る多数の密閉封止した集積回路を有する集合体であって、陰極アークで製作した導電性フィードスルーが存在している集合体の異なる断面図である。
【図7A】ICチップであって、陰極アークで製作した厚みのある金属構造物がチップの一側面に向かうアンテナを形成しているICチップの断面である。
【図7B】ICチップであって、厚みのある金属構造物がチップの一側面上にアンテナを形成しているICチップの断面である。
【図8A】接地平面層として機能するインプラント型医療装置の導電性筐体の外面上に形成されたRFパッチアンテナの第一の実施形態の上面略図である。
【図8B】接地平面層として機能するインプラント型医療装置の導電性筐体の外面上に形成されたRFパッチアンテナの第二の実施形態の上面略図である。
【図8C】図8A及び図8Bの線15−15に沿って取得されるRFテレメトリアンテナの側部断面の略図である。
【図8D】筐体内部に形成された接地面を有するインプラント型医療装置の誘電性筐体の外面上に形成されたRFテレメトリアンテナの第三の実施形態の上面略図である。
【図8E】図8Dの線17−17に沿って取得されるRFテレメトリアンテナの側部断面の略図である。
【図8F】インプラント型医療装置の絶縁性誘電性筐体の表面内に形成されたラジエータパッチ層を有するRFテレメトリアンテナの第四の実施形態の上面略図である。
【図8G】図8Fの線19−19に沿って取得されるRFテレメトリアンテナの側部断面の略図である。
【図9A】厚みのある金属構造物でチップに装着する多数の電極を形成したICチップの断面である。
【図9B】厚みのある金属構造物でチップに装着される多数の電極を形成したICチップであって、これら電極が一定の形状に形成されているICチップの断面である。
【図10】本発明の改良型RFテレメトリアンテナを用いたインプラント型医療装置及び外部プログラマの簡易模式図である。
【図11】図10の外部プログラマ及びインプラント型医療装置の主な機能的上下リンクテレメトリ伝送機能の簡易回路ブロック図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る医療診断及び/又は治療プラットフォームのブロック図である。
【図13】本発明の一実施形態に従って自分の体内の種々の場所に植込まれた多数の遠隔装置を有する患者を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、医療装置設計者及び製造者に、医療装置コンポーネントを製作するための重要な新しいツールを提供する。本発明のプロトコル及びシステムを用いれば、医療装置製造者は、以前は作ることができなかった厚みのある無応力金属構造物を製作することができる。更に、以前は製作することができなかった構成の金属無応力構造物が、今は可能になっている。製作可能な他の構造物には、多孔層及び表面が鈍鋸歯状になっている層がある。したがって、本発明は、医療装置設計者の医療装置コンポーネント設計能力を拡大し、かかる新しい設計物の製作を可能にする。
【0012】
本発明を更に詳細に説明する際に、まず陰極アーク製作構造物を具備する医療装置の諸実施形態を概説し、次に構造物を作製するための陰極アーク堆積方法及びその方法を実施するのに用い得るように構成されたシステムを概説する。
(陰極アーク製作構造物を具備するインプラント型医療装置)
前に要約したように、本発明は、陰極アーク製作構造物(1つ又は複数)を具備するインプラント型医療装置を提供する。インプラント型医療装置とは、生体上又は生体内に配設されるように構成された装置を意味し、いくつかの実施形態において、インプラント型医療装置は生体内に植込まれるように構成される。インプラント型装置の実施形態は、体内に見られるような高塩分、高湿環境を含む生理的環境内に2日以上、例えば約1週間以上、約4週間以上、約6ヶ月以上、約1年以上、例えば約5年以上といった期間存在するときに、機能を維持するように構成される。いくつかの実施形態において、インプラント型装置は、約1年〜約80年以上の期間、例えば約5年〜70年以上、更には約10年〜50年以上を含む期間、生理的部位に植込まれたときに、機能を維持するように構成される。本発明のインプラント型医療装置の寸法は、一様にはならないであろう。しかし、インプラント型医療装置はインプラント可能であるため、いくつかの実施形態の装置の寸法は、成人の中に配設できないほど大きいものではない。例えば、インプラント型医療装置は、おそらく人間の脈管構造内に収まる寸法になるであろう。
【0013】
本発明のインプラント型医療装置の機能は、心臓関連装置、薬物送達装置、検体検出装置、神経刺激装置、等を含むが、これらに限定されない非常に広い範囲で変わる可能性がある。したがって、インプラント型医療装置には、インプラント型心臓ペースメーカ、インプラント型除細動器、ペースメーカ除細動器、薬物送達ポンプ、心筋刺激装置、心臓及び他の生理学的モニタ、神経及び筋肉刺激装置、脳深部刺激装置、人工内耳、人工心臓、等があるが、これらに限定されない。本発明の各種様式のインプラント型医療装置の例示的実施形態を、以下で更に詳細に概観する。
【0014】
前に要約したように、本発明のインプラント型医療装置は、陰極アークプラズマ堆積プロセスによって製作された1つ又は複数の構造物を具備する。陰極アークプラズマ堆積システムの例を図1に示す。イオンビーム堆積の一形式である陰極アークプラズマ堆積では、陰極1と陽極3との間で電気アークが発生し、この電気アークが陰極からのイオンを陰極から放ち、それによってイオンビーム5を発生させる。こうして発生したイオンビーム、即ち陰極材料イオンのプラズマは次いで、基板6(即ち、構造物が製作されることになる材料)表面と接触し、陰極材料製の構造物4が基板表面上に堆積する。いくつかの実施形態では、基板が存在する雰囲気から得られたエレメント(1つ又は複数)も基板表面上に堆積する。例えば、図1を参照されたい。所望の場合、例えば生成構造物が陰極材料と、1つ又は複数の別のエレメント(炭素、窒素、等)との化合物である場合、対象とする1つ又は複数の別のエレメント用原料ガスを導入するためのガス注入口7が設けられていてもよい。更に図1には、中性マクロ粒子2が示されている。これらマクロ粒子は、所望に応じて、堆積前にプラズマから濾過してもよければ、しなくてもよい。
【0015】
本発明の陰極アーク製作構造物は、いくつかの実施形態において、厚みのある無応力金属構造物である。いくつかの実施形態において、構造物の厚みは、約0.1μm〜約150μmといった、約0.01μm〜約500μmの範囲にある。いくつかの実施形態において、構造物は、約25μm以上といった約1μm以上の厚みである。約50μm以上を含み、この場合、厚みは、約75μm、85μm、95μm又は100μmもの厚み、或いはそれ以上の厚みであってもよい。いくつかの実施形態において、構造物の厚みは、約10μm〜約100μmといった、約1〜約200の範囲にある。
【0016】
陰極アーク製作構造物は、いくつかの実施形態において、無応力である。「無応力」とは、構造物に、その構造物の機能を低下させるような欠陥がないことを意味する。したがって、「無応力」とは低レベルの応力であって、堆積している基板から構造物を剥離せしめるといった引き離す応力よりも低いレベルの応力を意味する。したがって、構造物には、亀裂、間隙、穴、又は他の欠陥がない。特に、構造物が装置の内部容積を封止する能力、導電性エレメントとして機能する能力、といった構造物の機能を低下させるような欠陥はない。図2A〜2Dは、本発明の一実施形態に従って製作されたプラチナの無応力層の写真を示す。
【0017】
更に他の実施形態において、構造物は表面が鈍鋸歯状の層である。表面鈍鋸歯物とは、ノッチ又は割れ目によって離間されている一連の突起物を意味する。特定の突起の頂部から測定した特定のノッチの深さは、いくつかの実施形態において、約1μm〜約10μmといった、約0.1μm〜約1000μmの範囲にある。図3は、本発明の一実施形態に従って製作された、表面が鈍鋸歯状の10μm厚プラチナ層の写真を示す。更に他の実施形態において、陰極アーク構造物は多孔性構造物である。
【0018】
前に示したように、いくつかの実施形態において、構造物は金属構造物である。いくつかの実施形態において、金属構造物は、生理的適合性金属を具備する構造物である。この場合、対象とする生理的適合性金属には金(au)、銀(ag)、ニッケル(ni)、オスミウム(os)、パラジウム(pd)、プラチナ(pt)、ロジウム(rh)、イリジウム(ir)、チタン(ti)、アルミニウム(al)、バナジウム(v)、ジルコニウム(zr)、モリブデン(mo)、イリジウム(ir)、タリウム(tl)、タンタル(ta)、等があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、金属構造物は単一金属の純金属構造物である。更に他の実施形態において、金属構造物は、1つの金属と、前に列記した金属又はクロム(cr)、タングステン(w)のような他の金属、等の金属を含む1つ又は複数の別のエレメントとの合金であってもよい。更に他の実施形態において、構造物は1つの金属と別のエレメントとの化合物であってもよい。この場合、対象とする化合物には炭化物、酸化物、窒化物等があるが、これらに限定されない。対象とする化合物例には、PtIr、PtTi、TiWのような二元化合物、並びに、炭窒化物等の三元化合物がある。
【0019】
いくつかの実施形態では、非金属構造物が要求される。例えば、いくつかの実施形態において、層は、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素である。これらの実施形態において、方法に用いられる陰極材料は、おそらくグラファイトであろう。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドライクカーボン層は、窒素、金、プラチナのような1つ又は複数の別のエレメントが添加されていてもよい。かかる構造物の用途は、医療インプラント等をコーティングするなど、様々である。
【0020】
いくつかの実施形態において、製作構造物は、第二のエレメントの量が第一の面から第二の面に向かうに従って増量する金属層のような、一方のエレメント及び他方のエレメントに対する勾配を含んでもよい。陰極アーク製作構造物を作ることができる他の材料は、「Metal Binary and Ternary Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」と題する、2007年6月21日に出願され、同時係属中のPCT出願第PCT/US2007/_号(代理人整理番号PRTS−048WO2)に記載されている。その開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0021】
金属構造物が陰極アークで堆積される基板は、種々の異なる材料で作ることができ、種々の異なる構成をとり得る。堆積が生じる基板表面は、平坦であってもよければ、平坦でなくてもよく、例えば種々の穴、トレンチ等を有していてもよい。基板は、シリコン(例えば、単結晶、多結晶、アモルファス、等)、二酸化シリコン(ガラス)、セラミックス、炭化シリコン、アルミナ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ボロン、酸化ベリリウム、等の、多数の異なる材料のうちの任意のもの、とりわけダイヤモンドライクカーボン、焼結材料、等でできていてもよい。基板は、導電性材料と半導電性材料(Ge等)との複合物であってもよく、後述する回路層のような高濃度に不純物を添加し及び/又は加熱した半導体シリコンを含む。この場合、1つ又は複数の導電性エレメントが半導電性支持体又は非導電性支持体上に存在する。
【0022】
主題のインプラント型医療装置の陰極アーク製作構造物は種々の異なる構成をとることができ、インプラント型医療装置に入って、種々の異なる機能を発揮することができる。例えば、いくつかの実施形態において、陰極アーク製作構造物は、インプラント型医療装置のコンポーネントの表面の少なくとも一部を覆う層である。これらの実施形態において、層は、その層の機能によっては表面のほんの一部しか覆わない場合もあれば、全表面を覆う場合もある。層は、多数の異なる目的を有していてもよい。他の実施形態において、陰極アーク製作構造物は、フィードスルー、識別体、アンテナのような非層状構造物である。これらの非層状構造物も、多数の異なる機能を有することができる。ここで、代表的な層状構造物及び非層状構造物について更に詳細に概説する。
層状の構成を有する構造物
直前に要約しているように、いくつかの実施形態において、陰極アーク製作構造物は層状構造物である。層状構造物とは、それらが層状構成を有し、それによって5倍以上、例えば50倍以上、さらには100倍以上などといった、それらの高さより明らかに長い長さ及び幅を有することを意味する。層状構造物の目的により、層は種々の異なる構成をとることができる。
(封止層)
いくつかの実施形態において、層は装置の内部容積をその装置の外部環境から密封するように機能する。この場合、かかる封止層は、装置の単一面上に存在してもよく、或いは、装置の複数の面上に存在してもよく、例えば、封止層は装置の各面上に存在してもよい。いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積構造物は、「Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する、WO2006/069323として公開されたPCT/US2005/046815、及び「Void−Free Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する、2007年4月12日に出願のPCT/US2007/09270に記載の封止層である。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。層は、「Void−Free Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する2007年4月12日に出願のPCT出願第PCT/US2007/09270号に記載されているように、例えば装置全体、即ち装置の全表面、を包囲するために装置全体を封入してもよければ、それのほんの一部を封入してもよい。この開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0023】
陰極アーク製作層を具備するインプラント型医療装置の例は、図4A及び図4Bに示されている。図4Aは、本発明に係る密閉封止構造物の3次元表示図を示す。図4Aにおいて、構造物200は、ホルダ210と、封止層220と、を具備する。この場合、封止層220は、陰極アーク堆積によって堆積されている。封止層220及びホルダ210は、ホルダ内の密閉封止される容積(図示せず)を規定するように構成されている。外部コネクタエレメント212、213、214、215、216、及び217も示されている。これらのエレメントは、ホルダ底面に存在する導電性フィードスルー(図示せず)に結合されている。
【0024】
図4Bは、本発明に係る密閉封止構造物の3次元切欠き図を示す。図4Bにおいて、ホルダ210及び封止層220は、(例えば集積回路を備えた)エフェクタ230を収容し、密閉封止される容積250を規定する。エフェクタ230は、はんだ合金(例えば、鉛錫合金、金錫合金、銀錫合金、又は他の適切な合金)240で、導電性(例えば、プラチナ)フィードスルー又はビア212に、電気的に結合される。
【0025】
いくつかの実施形態において、エフェクタと、ホルダ及び/又は封止層の壁との間の任意の空間は、絶縁材料で満たしてもよい。任意の都合のよい絶縁材料を用いることができる。この場合、代表的絶縁材料には、シリコンオイル、エラストマ、熱硬化性樹脂、熱硬化性プラスチック、エポキシ、シリコーン、液晶ポリマ、ポリアミド、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、セラミックペースト、等の液体があるが、液体に限定されない。
【0026】
本発明の実施形態に従って製作し得る封止層の別の例は、PCT出願公開第WO2006/069323号及び「Void−Free Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する、2007年4月12日に出願された係属中のPCT出願第PCT/US2007/09270号に記載されている。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。
(鈍鋸歯層)
前に要約したように、陰極アーク堆積構造物は、図3にあるように、表面が鈍鋸歯状になっている鈍鋸歯層であってもよい。かかる層は、種々の異なる用途で有用である。
【0027】
例えば、インプラント上に鈍鋸歯状表面を設けることは、骨結合が望まれる用途において有用である。鈍鋸歯層は、堆積金属(例えばPt)、金属化合物(例えばTiO2)のいずれの中にも製作し得る。鈍鋸歯層は、種々の骨インプラント装置上に堆積可能であり、この場合、インプラント装置は、金属インプラント又はPEEK及びPEKKのような重合体のインプラントとすることができる。注目すべき骨インプラント装置には、臀部用インプラント、骨用ねじ、歯用インプラント、プレート、サポートロッド等があるが、これらに限定されない。
【0028】
所望であれば、骨の成長を支援しかつ細菌増殖を抑制するために、鈍鋸歯を活性薬剤で満たしてもよい。対象とする活性薬剤には、有機ポリマ、例えば再吸収、脈管形成、細胞進入及び繁殖、無機化、骨形成、破骨細胞及び/又は破骨細胞の成長、等を促進するといった多数の性質を与える骨関連蛋白質などの蛋白質、この場合、対象とする特定の蛋白質として挙げられるのには、オステオネクチン、骨シアロ蛋白質(Bsp:bone sialoproteins)、α−2HS−糖蛋白質、骨Gla蛋白質(Bgp:bone Gla−protain)、マトリクスGla蛋白質、骨リン糖蛋白質、骨リン蛋白質、骨プロテオグリカン、プロトリピッド、骨形態形成蛋白質、軟骨誘発因子、血小板誘導成長因子、骨格成長因子;微粒子増量剤;NaCl、硫酸カルシウムのような無機水溶性塩;スクロース、フルクトース、及びグルコースのような糖;抗生物質(ゲンタマイシン等)のような薬学的に活性な薬剤、等があるが、これらに限定されない。
【0029】
鈍鋸歯層は、骨インプラント装置以外の装置上の活性薬剤貯蔵部としても重要である。例えば、一定の医療用途において、活性薬剤塗布ステントは重要である。かかる装置は、層のノッチ又は割れ目が対象とする活性薬剤用の貯蔵部又は貯臓器の働きをする、本発明の鈍鋸歯層を具備する。この場合、例えば圧力を加えて溶液中の薬剤を表面に浸透させることによって、鈍鋸歯を満たすことができる。対象とする活性薬剤には次のものがあるが、これらに限定されない。(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、及びPPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン)等の抗血小板剤。(b)デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、及びメサラミン等の抗炎症剤。(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻止できるモノクローナル抗体、及びチミジンキナーゼ抑制剤、等の抗腫瘍/抗増殖/抗縮瞳剤。(d)リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、等の麻酔剤。(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン抑制剤、血小板抑制剤、及びマダニ抗凝固ペプチド、等の抗凝血剤。(f)成長因子、転写アクティベータ、及び翻訳促進剤、等の血管細胞成長促進剤。(g)成長因子抑制剤、成長因子受容体拮抗薬、転写リプレッサ、翻訳リプレッサ、複製抑制剤、阻害抗体、成長因子を抑制する抗体、成長因子及び細胞毒素から構成される二官能性分子、抗体及び細胞毒素から構成される二官能性分子、等の血管細胞成長抑制剤。(h)蛋白質キナーゼ抑制剤及びチロシンキナーゼ抑制剤(例えば、チルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)。(i)プロスタサイクリンアナログ。(j)コレステロール降下薬剤(k)アンジオポエチン。(l)トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、及びニトロフラントイン等の抗菌薬剤。(m)細胞毒性薬剤、細胞増殖抑制薬剤、及び細胞増殖アフェクタ。(n)血管拡張薬剤。(o)内因性血管作用機構と干渉する薬剤。(p)単クローン抗体等の白血球動員の抑制剤。(q)サイトカイン。(r)ホルモン。いくつかの実施形態において対象となるものは、デキサメタゾン等の糖質コルチコステロイドのような抗炎症薬剤である。
(多孔層)
多孔性陰極アーク堆積層も重要である。多孔性陰極アーク堆積層は、これらに限定するものではないが、電極、インプラントコーティング等の種々の異なる医療装置コンポーネントに有用である。陰極アーク製作多孔層が有用となる重要なコンポーネントの1つのタイプは、高表面積電極コンポーネントである。この場合、かかるコンポーネントは、例えばエフェクタ(センサ又は刺激装置等)、電源のコンポーネント等として、種々の異なるインプラント型装置に有用である。
【0030】
本発明の進歩的電池の実施形態は、高表面積陰極を有する構造物を具備する。高表面積陰極とは、電池内の陰極によって覆われている中実支持体(solid support)の表面積に対して、約2倍以上、例えば約10倍以上といった表面積を有する陰極を意味する。いくつかの実施形態において、電極の活性領域は、電極の基本的幾何学形状から生まれる該当の表面積に対し、10−3以上、例えば10−7以上、更には10−9以上といったの表面積を有する。いくつかの実施形態において、陰極の表面積は、約0.01mm2〜約100mm2、例えば約0.1mm2〜約50mm2、更には1mm2〜約10mm2といったの範囲にある。いくつかの実施形態において、高表面積陰極は、活性陰極材料製の陰極を多孔性下部層上に存在させることによって得られる。更に、電池は、中実支持体の表面上に存在する陽極を具備する。
【0031】
特定の実施形態によっては、陰極及び陽極は、同一の支持体上に存在する場合があり、或いは、異なる支持体上に存在する場合がある。例えば「フリップチップ」実施形態にあるように、2つ以上の異なる支持体が、電池構造物を製作するように互いに連結されているような場合である。同様に、特定の電池内の陰極及び陽極の個数は、実施形態によって大きく異なる場合がある。例えば、特定の実施形態が1つの陽極と1つの陰極とを有する単一電池、多数の陽極及び/又は陰極を有する単一電池、或いは、それぞれが1つ又は複数の陰極及び/又は陽極でできている2つ以上の個別電池を具備するような場合である。対象とする電池構成には、「Pharma Informatics System Power Source Having High Surface Area Cathodes」と題する、2007年2月14日に出願の特許出願第60/889,870号があれるが、これに限定されない。この開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0032】
図5は、本発明に係る電池の概略図を示す。図5に示される電池100は、上面140を有する中実支持体120を具備する。上面140上に陰極160及び陽極180が存在する。陰極160は、多孔性下部層150と、活性陰極材料170と、を具備する。ここで、以下にこれらエレメントのそれぞれを更に詳細に説明する。図示されている実施形態は、陰極が多孔性下部層を具備するものであるが、いくつかの実施形態では、陽極が多孔性下部層を具備しており、更に他の実施形態においては、陰極と陽極が共に多孔性下部層を具備する。
【0033】
多孔性下部層150は、活性陰極材料170を機械的に支持しかつ陰極材料と中実支持体120(更に詳細に後述する)上に存在する回路のようなエレメントとの間の電流経路を提供する層である。多孔性下部層は、銅、チタン、アルミニウム、グラファイトのような導電性材料等の種々の異なる材料から作製可能である。この場合、その材料は、純度の高い材料とすることができ、或いは、合金等で見られるように、2つ以上のエレメントでできた材料とすることができる。下部層の厚みは様々であろう。いくつかの実施形態において、厚みは、約0.01約μm〜約100μm、例えば約0.05約μm〜約50μm、更には約0.01約μm〜約10μmといったの範囲にある。中実支持体上における多孔性下部層の長さ及び幅の寸法は、所望に応じて、活性陰極材料の寸法と同一の広がりをもっていてもよく、そうでなくてもよい。
【0034】
前に要約したように、陰極下部層は粗状であっても多孔性であってもよい。下部層の多孔度又は粗度は、所望の表面積を陰極に提供している限り、一定でなくてもよい。いくつかの実施形態において、陰極下部層の多孔度又は粗度は、有効表面積が、多孔性下部層がない等価な陰極から得られる面積に対し、約2倍〜約100倍以上、例えば約2倍〜約10倍以上、更には約1.5倍以上〜約1000倍以上に拡大されるように選択される。表面積拡大度は、粗状電極又は多孔性電極の電気機械的容量又はサイクリックボルタモグラムを同一材料の平滑な電極のものと比較することにより求めることができる。粗度は、原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscopy)、電子顕微鏡、又はブルナウアー・エメット・テーラー(BET:Brunauer−Emmett−Teller)解析、等の他の技術によって求めることも可能である。
【0035】
本発明によれば、陰極アーク堆積プロトコルは、所望の多孔性陰極下部層を製作するのに用いられる。かかるプロトコルにおいて、例えば上述したように、多孔性陰極下部層の所望の構造を製作するのに十分な条件下で、陰極アーク生成金属イオンプラズマが120のような基板の表面と接触する。陰極アークが発生する金属イオンのイオンプラズマビームは、任意の都合のよいプロトコルを用いることによって発生させることができる。後で詳述するように、陰極アークプロトコルによってイオンビームを生成するのに、陰極材料イオンのイオンビームを発生させるのに十分な電力の電気アークを、陰極と1つ又は複数の陽極との間に発生させる。こうして発生したビームは、イオンが基板表面と接触し、基板表面上に陰極材料を具備する構造物を製作する態様で、基板の少なくとも1つの表面に誘導される。
【0036】
多孔性陰極(又は陽極)下部層の上面上に、活性陰極(又は陽極)材料が存在する。活性陰極材料は、種々の異なる材料を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、陰極材料には銅があるが、いくつかの実施形態では、陰極材料としてヨウ化第一銅(CuI)又は塩化第一銅が特に重要である。電池の電圧を高めるといった要望がある場合には、硫黄等の別のエレメントを活性材料に添加してもよい。活性陰極材料は、電気めっきのような電着又は化学気相成長のような蒸着、等の任意の都合のよいプロトコルを用いて、多孔性下部層上に設けることができる。陽極材料は、種々の異なる材料を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、陽極材料にはマグネシウム(Mg)金属又はマグネシウム合金がある。活性陽極材料は、電気めっきのような電着又は化学気相成長のような蒸着、等の任意の都合のよいプロトコルを用いて、多孔性下部層上に設けることができる。
【0037】
非層状の構成を有する構造物
いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積構造物は、医療装置の非層状3次元構成コンポーネントであり、かかるコンポーネントは、構成及び機能が大幅に変わる可能性がある。後で更に詳細に説明される主題の堆積プロトコルを用いて製作可能な対象の3次元コンポーネントには、インプラント型医療装置に見られるビア又は他の導電線のような導電性エレメント、アンテナのような通信エレメント、装置上の識別マーキングのような識別コンポーネント、撮像中の装置の方位を設定するのに用いられる表面エレメントのような方位制御コンポーネント、電極のような組織相互作用エレメント等のエフェクタ、等があるが、これらに限定されない。
【0038】
(ビア及び類似構造物)
いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積構造物は、装置の3次元導電性エレメントである。いくつかの実施形態において、導電性エレメントは、装置の2つの個別の構造物を導電状態で接続するように機能する。いくつかの実施形態において、導電性エレメントはビアである。この場合、ビアは、装置の高アスペクト比の経路内に存在することができる。高アスペクト比経路とは、高さの幅に対する比が、約1〜約50といった最大で約100又はそれ以上である経路を意味する。
【0039】
図6Aは、本発明に係る陰極アーク製作導電性フィードスルーを具備する密閉封止構造物の断面図を示す。この実施形態において、ホルダ300は、例えばアレイ状に、隣り合わせに配設された2つの個別のウェル311及び312を具備する。この場合、各ウェルは、2つの異なるエフェクタ313及び314(例えば、集積回路)を収容している。各ウェルは、側部315と、底部316と、を具備する。各ウェルの底部には、陰極アーク製作導電性フィードスルー317、318、319、及び320も示されている。集積回路313及び314のトレース331、332、333及び334を導電性フィードスルーに電気的に結合しているのは、はんだ接続部321、322、323、及び324である。異なるはんだ接続部を相互に分離しているのは、絶縁材料340である。図示していないが、エフェクタとホルダのウェルの側部/底部との間の空間内には、適切な絶縁材料も存在することができる。更に、図6Aには示されていないが、フィードスルーの対向面上には封止層が存在する。図6Aの図面は2つの異なる集積回路しか密閉封止されていない様子を示しているが、本発明の構造物はもっと多くの集積回路、例えば4個、5個、6個、又はそれ以上の回路を、任意の都合のよい配置で具備していてもよい。1つのパッケージに多数のチップを備える設計の一実施形態は、より高い電圧に耐えるように作製又はさもなければ設計されたチップを、組立体の1つのセクション内に有することである。一緒に搭載されるチップは、第一のチップよりも電圧耐性が低い。しかし、それには、心臓ペーシングからの高電圧又は組立体の別の部分からの他のコンポーネント要求に耐える能力は必要ないであろう。これらのチップは、例えば同一ウェル又は隣り合うウェルに入れられて、両方とも同一の密封パッケージに収納され、次に、はんだ付けプロセスが施され、次いで、絶縁材料で(即ち、ポッティングされて)所定位置に固着され、例えば後で概観するように平坦化又はラップバックが行われ、次いで、封止層で被覆される。
【0040】
上記の例は、2つのチップを、発明による単一の進歩的耐腐食性密封パッケージに相乗的に収める手引きを提供しているが、これらの組立体は、最大で4個、5個、6個、又はそれ以上の個数のチップを単一の組立体で扱うことができる。かかる大型組立体には、これら組立体を相互に上に積載して、密閉保護される医療装置コンポーネントにより多くの機能を加えることができるという利点もある。
【0041】
図6Bにおいて、構造物350は、ウェル366を画定する側部362及び底部364を有するホルダ360を具備する。ウェル366内には、相互に上に積載された2つの異なるエフェクタ371及び372がある。各ウェルの底部には、陰極アーク製作導電性フィードスルー381及び382も示されている。集積回路371のトレース373及び374を導電性フィードスルーに電気的に結合しているのは、はんだ接続部391及び392である。異なるはんだ部を相互に分離しているのは、絶縁材料370である。図示していないが、エフェクタとホルダのウェルの側部/底部との間の空間内には、適切な絶縁材料も存在することができる。更に、図6Bには示されていないが、フィードスルーの対向面上には封止層が存在する。
【0042】
通信エレメント
前に概観したように、対象とする陰極アーク製作構造物は、アンテナ構造物を具備する。陰極アーク堆積プロセスの性質のおかげで、以前は実現されなかったアンテナ構造物を、今は容易に製作することができる。アンテナ構造物は、直線的な場合もあれば、湾曲しているなど、非直線的な場合もあり、所望に応じて2次元構成の場合もあれば、3次元構成の場合もある。
【0043】
陰極アーク堆積プロトコルによって容易に製作される本発明の実施形態に係る非直線的アンテナの一実施形態が、図7A及び図7Bに示されている。図7Aは、ICチップの断面を示しており、この場合、陰極アーク堆積による厚みのある金属構造物が、チップの一側面に向かうアンテナを形成している。厚みのある金属は、支柱なしで立っている。厚みのある金属は、基板で支持することも可能である。図7Bは、ICチップの断面を示しており、この場合、厚みのある金属が、チップの1つ又は複数の側面上にアンテナを形成している。これらの図面に図示された厚みのある金属アンテナは、適切なマスクを用い、そのマスクを介して支持体上にアンテナ構造物を堆積させることによって、容易に製作される。
【0044】
更に他の実施形態において、本発明のインプラント型医療装置は、陰極アークプラズマ堆積プロセスによって製作される、1つ又は複数のマイクロストリップ型パッチアンテナを具備する。本発明のマイクロストリップ型パッチアンテナは、誘電体基板の表面上に存在する導電性ラジエータパッチ層を具備する。いくつかの実施形態において、導電性接地面層も、例えばラジエータ導電性層に対向する誘電体基板表面上に存在する。医療装置において、ラジエータパッチ層を、誘電体基板層及び接地面層を貫通して延在するフィードスルーによって、その医療装置の送受信回路に結合してもよい。本発明の特徴は、陰極アーク堆積プロセスを用いてラジエータパッチ層を作製することである。このプロセスでは、パッチ層は、陰極アークプラズマ堆積プロトコルを用いて誘電体基板表面上に堆積される。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明のマイクロストリップ型パッチアンテナの陰極アーク製作導電性ラジエータパッチ層は、例えば上記で説明したような厚みのある無応力の金属構造物である。パッチ層の物理的寸法は、特定の装置構成及びアンテナの使途によって異なる場合があり、いくつかの実施形態において、寸法は、アンテナが約300〜約600MHz、例えば約350〜約450MHz、更には約200〜約800MHzの動作周波数を有するように選択される。いくつかの実施形態において対象となるものは、例えば約400〜約410MHz、例えば約402〜約405MHz、更には約400〜約425MHzの範囲の動作周波数を有するアンテナである。いくつかの実施形態において、パッチ層の厚みは、約0.01μm〜約500μm、例えば約0.1μm〜約150μmの範囲にある。いくつかの実施形態において、構造物は、約1μm以上、例えば約25μm以上、更には約50μm以上といったの厚みである。この場合、厚みは、約75μm、85μm、95μm又は100μmもの厚み、或いはそれ以上の厚みであってもよい。いくつかの実施形態において、構造物の厚みは、約1〜約200、例えば約10μm〜約100μmの範囲にある。いくつかの実施形態において、パッチ層の表面積は、約1cm2〜約10cm2、例えば約1cm2〜約4cm2の範囲にある。いくつかの実施形態において、パッチ層の最長寸法(例えば直径)は、約1cm〜約10cm、例えば約1cm〜約6cmの範囲にある。
【0046】
前に示したように、マイクロストリップ型パッチアンテナ構造物は、ラジエータパッチ層を具備し、このパッチ層は、いくつかの実施形態において、金属層である。いくつかの実施形態において、金属構造物は、生理的適合性金属を具備する構造物である。この場合、対象とする生理的適合性金属には金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、イリジウム(Ir)、タリウム(Tl)、タンタル(Ta)、等があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、金属構造物は単一金属の純金属構造物である。更に他の実施形態において、金属構造物は、1つの金属と、前に列記した金属又はクロム(Cr)、タングステン(W)のような他の金属、等の金属を含む1つ又は複数の別のエレメントとの合金であってもよい。更に他の実施形態において、構造物は1つの金属と別のエレメントとの化合物であってもよい。この場合、対象とする化合物には炭化物、酸化物、窒化物等があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において特に重要なものは、プラチナを具備する層であり、かかる層は、純プラチナ又はプラチナと別のエレメントとの組合わせとすることができる。対象とする化合物例には、PtIr、PtTi、TiWのような二元化合物、並びに、炭窒化物等の三元化合物がある。
【0047】
金属構造物が陰極アークで堆積される基板は、種々の異なる材料でできていてもよく、種々の異なる構成になっていてもよい。堆積が起こる基板表面は、2次元的であってもよければ、非2次元的であってもよく、例えば種々の穴、トレンチ等を有していてもよい。例えば、基板内の穴は、上述しかつ2006年6月22日に出願した係属中の米国仮特許出願第60/805,576号で更に詳述しているように、パッチ層の堆積後にフィードスルーとして表面に現れてもよい。この開示は、参照により本明細書で援用されている。基板は、多くの異なる材料のうちの任意のもので作ることができる。この場合、これらに限定されないが、シリコン(例えば、単結晶、多結晶、アモルファス、等)、二酸化シリコン(ガラス)、セラミックス、テフロン(登録商標)等の誘電体材料は重要である。
【0048】
パッチ層及び基板の他に、主題のマイクロストリップアンテナも接地面層を具備することができる。接地面層は任意の適切な導電性材料で作製することができ、いくつかの実施形態において、例えばインプラント型医療装置の導電性筐体のような、アンテナが動作可能に結合される装置の一部とすることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、パッチ層を体液から保護するように機能する保護層、例えば適切な誘電体材料から作製された層、でパッチ層を覆うことも可能である。いくつかの実施形態において、この保護層を、米国特許第5,861,019号に記載されているようなレードーム構造物として構成してもよい。この開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0050】
図8A〜8CはRFテレメトリアンテナ28、28’の第一の実施形態及び第二の実施形態を図示している。アンテナはそれぞれ円形及び正方形(又は矩形)のRFパッチアンテナプレート、即ち層30及び30’、を用い、誘電体基板層36及び接地面層48を覆って形成されている。接地面層48は、インプラント型パルス発生器(IPG:inplantable pulse generator)装置12の導電性筐体13の一部である。フィードスルー50のフィードスルーピン52が、接地面層48に装着されたフェルール54を貫通しかつ誘電体基板層36内の心合した穴38及びラジエータパッチ層30、30’内の穴60を貫通して延在している。フィードスルーピン52の端部は、溶接等によって穴60に装着されている。心合した穴38及び60並びにフィードスルー50の実際の場所は、RFテレメトリアンテナ28、28’と、関連のIPG送受信器との間のインピーダンス整合が最適になるように設計時に選択することができる。
【0051】
ラジエータパッチ層30、30’及び平行の接地面層48の面積は、IPGRFテレメトリアンテナのRF周波数に影響する。いくつかの実施形態において、接地面層48領域は、ラジエータパッチ層30、30’領域を超える。IPG筐体13の主要な平坦外面の大部分を覆うようにラジエータパッチ層30、30’の寸法及び下にある誘電体層36の寸法を設定することが必要な場合に、IPGのRFマイクロストリップアンテナの特性は損なわれる。この場合、外部筐体13は、へこみの深さが誘電体基板層36の厚みに対応する深さで、へこみの直径又は長さと幅がラジエータパッチ層30、30’に対応する直径又は長さと幅である円形筐体凹部40の形態でへこんでいることが好ましい。マイクロストリップアンテナ接地面48の面積を効果的に増大させる接地面層48の筐体凹部40は、ラジエータパッチ層30、30’と略共面の、外方向に突出した接地面突出層48’’を提供する。
【0052】
体液内及び組織内におけるIPGRFテレメトリアンテナの特性を向上させるために、そうしなければ露出するラジエータパッチ層30、30’表面上に、レードームとして機能する誘電体レードーム層を用いることが望ましい。かかる例示的レードーム層56が図9に図示されている。このレードーム層は、前に列挙した誘電体材料で形成することができる。レードーム層56は、ラジエータパッチ層30、30’、誘電体層36、及び外方向に延在し、筐体凹部40を包囲している端部48’’の外面を超えて、インプラント型医療装置13の小さな湾曲端面の方に、適切な距離だけ延在している。
【0053】
第一の実施形態及び第二の実施形態において、導電性筐体13及び接地面層48は、例えばチタンのような、生体適合性金属で形成される。インプラント型医療装置がユニポーラのIPGであるときは、筐体13の露出する表面部は、他の電気信号感知機能及び刺激機能用の不関プレート電極として用いられる。露出した不関電極表面は、RFテレメトリアンテナ28が配置される側部に対向するIPG筐体13の比較的平坦な主要側面上にあってもよい。RFテレメトリアンテナ28を皮膚表面に面するように配置することは、テレメトリ効率にとって有利であり、不関電極表面を内向きに配置することは、電気信号を感知することと、電気的刺激効率の両方にとって有利である。当該技術分野では公知であるように、RF上下リンクテレメトリ伝送をインプラント型医療装置の動作と同期させて、装置動作が電気的刺激及び/又は感知を要する期間を回避することができる。但し、本発明を実施する上で、このことが必要ではない場合もある。
【0054】
図8D及び図8Eは、IPG12の誘電体セラミック筐体13’の外面上に形成されたラジエータパッチ層を備えかつIPG筐体13’の内面上に導電性層として形成された接地面層48’を有するRFテレメトリアンテナ28の第三の実施形態を図示している。したがって、この実施形態において、誘電体IPG筐体13’は、接地面層48’とラジエータパッチ層30、30’との間に配置された誘電体基板層36’を構成しかつ提供する。接地面層48’がIPG筐体内の内部回路コンポーネントから電気的に絶縁されていることは、理解されるであろう。この実施形態は、誘電体層穴38を充填しかつラジエータパッチ層30、30’内面と当接するフィードスルーピン52の別の形式も例示している。この場合、ラジエータパッチ層30、30’は、厚みのあるフィルム若しくは薄いフィルムの堆積又は金属層の接着によって、誘電体IPG筐体の外面を覆って最適に形成される。ラジエータパッチ層30、30’を穴38内に、それを充填するのに必要なだけ延在するようにかつフィードスルーピン52端部と電気的に緊結するように、形成してもよい。
【0055】
この実施形態において、もし接地面層48’がラジエータパッチ層35’に対して面積が十分大きくなければ、ラジエータパッチ層30、30’の周辺部周囲に延長しかつそこから離間して、リム、即ちリング状の導電性接地面延長層48’(破線で示す)、を形成することが必要であろう。接地面延長層48’’は、誘電体層36’を貫通する1つ又は複数のめっきスルーホールのような少なくとも1つの接続部で、接地面層48’に電気的に接続される。或いは、図8A〜8Cの実施形態の配置をまねて、医療装置非導電性筐体13’の主側面で作製される単一の皿状の層として接地面層48を設けることによって、この電気的接続を達成してもよい。
【0056】
いずれの変形例においても、レードーム層56を、ラジエータパッチ層30、30’、誘電体層36’、及びリング状接地面延長層48’’(もしあれば)の少なくとも一部を覆って、上述の材料の1つを用いて形成することも可能である。
【0057】
図8F及び図8Gは、絶縁性誘電体IPG筐体13’内の層として形成されたラジエータパッチ層30、30’を有するRFテレメトリアンテナ28の第四の実施形態を図示している。この実施形態において、非導電性筐体13の外面層は、レードーム層56’として機能する。接地面層48’は、IPG筐体13’内面上に又はその中に、上記の態様で導電性層として形成される。接地面延長層48’’(破線で示す)も、上述したように、絶縁性誘電体IPG筐体13’内のラジエータパッチ層30、30’と略共面である層として形成されかつ接地面層48と電気的に接続される。
【0058】
主題のアンテナが有用となるインプラント型パルス発生器は、様々な構成が可能である。しかし、かかる装置は、典型的には、電源エレメントと、電気的刺激制御エレメントと、を具備し、これらエレメントは、例えば筐体内収容物の密閉封止構造体を提供するような筐体内に存在する。例えばIS−1インターフェイスを介して装置に電気的に結合されるものとして、1つ又は複数の電極がそれらの長さ方向に沿って配設される1つ又は複数の心血管リード(即ち、長尺の構造物)が考えられるであろう。いくつかの実施形態において、リードは、4個以上、8個以上、12個以上、16個以上、20個以上、30個以上、50個以上といった2個以上の電極がそれの長さ方向に沿って配設された多重電極(即ち、多重化)リードである。リードは、遠位の電極をIPG内にある制御エレメントに電気的に結合するために、例えばワイヤのような1つ又は複数の導電性部材を具備してもよい。したがって、リードは1本ワイヤのリード又は2本ワイヤのリードであってもよく、3本以上のワイヤを具備してもよい。しかし、いくつかの実施形態において、例えばリードのような導電性エレメントの個数は、リード上の電極の個数より少ない。いくつかの実施形態において対象となるものは、リード上の各電極を個別にアドレスで呼び出せる多重電極リードである。かかるリードには、これらに限定するものではないが、PCT出願公開第WO2004/052182号及び米国特許出願第10/734,490号に記載のものがある。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。いくつかの実施形態において、例えば刺激対象の組織/器官内により良好に電流を分布させるために、リード上の電極はセグメント化されている。かかる実施形態において、セグメント化電極は、「Methods and Apparatus for Tissue Activation and Monitoring」と題する、2005年9月1日に出願のPCT出願第PCT/US2005/031559号に開示されているように、多重化回路等のリード内の集積回路(IC:integrated circuit)の使用とは無関係にペース及びセンスを行うことができる。この開示は、参照により本明細書で援用されている。ICにより各電極をアドレスで個別に呼び出せるようになるので、それぞれは個別に、或いは医療装置上の他の電極との組合せで、起動され得る。さらに、IC上の多重化回路の支援を受けて新規かつ新奇な組合せでペースを行うのに、それらを用いてもよい。4つのセグメント化された電極が群として(as a band)リードの周りに構成されているクワドラント電極構成を有するセグメント化電極は重要である。リードは、1個又は例えば2個以上、3個以上、4個以上、5個以上といった複数個のかかる群を具備してもよい。対象とするセグメント化電極構造物には、2005年12月22日に出願のPCT出願第PCT/US2005/046811号、並びに、2006年4月18日に出願され係属中の米国仮特許出願第60/793,295号及び2006年7月13日に出願の第60/807,289号に記載された構造物がある。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。いくつかの実施形態において、各セグメント化電極構造物に含まれるICは、例えば2005年12月22日に出願のPCT出願第PCT/US2005/046815号及び2006年4月12日に出願され係属中の米国仮特許出願第60/791,244号及び2006年6月22日に出願の第60/805578号に記載されているような密閉封止ICである。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0059】
図8A〜8Gに図示されている実施形態はIPGであるが、主題のアンテナは、種々の異なる様式の医療装置のうちの任意のものに使用可能である。前に概観したように、かかる装置には心臓装置、薬物送達装置、検体検出装置、神経刺激装置等があるが、これらに限定されない。したがって、主題のアンテナを用いることができるインプラント型医療装置には、インプラント型心臓ペースメーカ、インプラント型心臓除細動器、ペースメーカ除細動器、例えばインプラント型薬物送達ポンプのような薬剤投与装置、心筋刺激装置、心臓及び他の生理学的モニタ、神経及び筋肉刺激装置、脳深部刺激装置、人工内耳、人工心臓、等があるが、これらに限定されない。
【0060】
「Medical Devices Comprising Cathordic Arc Produced Microstrip Antennas」と題する、2006年10月25日に出願の米国仮特許出願第60/862,928号を見れば、本発明のマイクロストリップアンテナに関する更なる説明が見つかるであろう。
【0061】
(エフェクタ)
いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積構造物は、インプラント型医療装置のエフェクタのコンポーネントである。「エフェクタ」という用語は、本明細書では全般的に、センサ、アクティベータ、センサ/アクティベータ、アクチュエータ(例えば電気機械的又は電気的なアクチュエータ)又は所望の機能を実行するのに用いられる任意の他の装置を指すのに用いられている。例えば、いくつかの実施形態では、エフェクタはトランスデューサ及び(例えば、集積回路(デジタル又はアナログの形態の)プロセッサを具備する。したがって、本発明の実施形態は、エフェクタが集積回路を備えている実施形態を含む。「集積回路」(IC)という用語は、本明細書では、電子コンポーネント及びそれらの接続部でできた非常に小型の複合体であって、材料の小片、即ちシリコンチップ等のチップ、の中又はその上に製作される複合体を指すのに用いられている。いくつかの実施形態において、ICは、「Methods and Apparatus For Tissue Activation And Monitoring」と題する、2005年9月1日に出願のPCT出願第PCT/US2005/031559号に記載されているようなICである。この開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0062】
エフェクタは、これらのデータに限定するものではないが、圧力データ、容積データ、寸法データ、温度データ、酸素又は二酸化炭素濃度データ、ヘマトクリットデータ、導電率データ、電位データ、pHデータ、化学データ、血流速度データ、熱伝導率データ、光学特性データ、断面積データ、粘度データ、放射データ、等のデータの収集を目的とする場合がある。したがって、エフェクタは、温度センサ、加速度計、超音波送信器又は受信器、電圧センサ、電位センサ、電流センサ、等のセンサであってもよい。或いは、エフェクタは、電流又は電圧を供給する、電位を設定する、物質又は領域を加熱する、圧力変動を誘導する、材料又は物質を開放又は捕獲する、発光する、音波又は超音波エネルギーを発する、輻射する、といったアクチュエーション又はインターベンションを目的としてもよい。
【0063】
対象とするエフェクタには、本出願の少なくとも一部の発明者によって以下の出願に記載されているエフェクタがあるが、これらに限定されない。「Method And System For Monitoring And Treating Hemodynamic Parameters」と題する、20040193021として公開された米国特許出願第10/734490号、「Method And Apparatus For Tissue Activation And Monitoring」と題する、20060058588として公開された米国特許出願第11/219,305号、「Implantable Addressable Segmented Electrodes」と題する国際出願第PCT/US2005/046815号、「Implantable Accelerometer−Based Cardiac Wall Position Detector」と題する米国特許出願第11/324,196号、「Method and Apparatus for Enhancing Cardiac Pacing」と題する米国特許出願第10/764,429号、「Methods and Systems for Measuring Cardiac Parameters」と題する米国特許出願第10/764,127号、「Method and System for Remote Hemodynamic Monitoring」と題する米国特許出願第10/764,125号、「Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する国際出願第PCT/US2005/046815号、「Fiberoptic Tissue Motion Sensor」と題する米国特許出願第11/368,259号、「Implantable Pressure Sensors」と題する国際出願第PCT/US2004/041430号、「Implantable Doppler Tomography System」と題し、米国仮特許出願第60/617,618に対して優先権を主張している米国特許出願第11/249,152号、「Cardiac Motion Characterization by Strain Gauge」と題する国際出願第PCT/USUS05/39535号。これらの出願は全体が、参照により本明細書で援用されている。
【0064】
本発明の実施形態に従って製作し得るエフェクタの例は、電極である。図9Aは、ICチップの表示図を示しており、この場合、厚みのある金属がチップに装着される多数の電極を形成している。電極は、支柱なしで立たせてもよく、基板で支持してもよい。電極は、電解質電極であることに加え、容量性であってもよい。図9Bは、これら電極が一定の形状に形成されているICチップの断面を示す。
【0065】
(識別体コンポーネント)
前に要約したように、対象とする陰極アーク構造物は、医療装置識別体及び/又は方位制御エレメントも具備する。例えば、放射線不透過材料から作製される単語、シンボル、バーコードのような陰極アーク製作識別体をインプラント型医療装置上に設けてもよい。装置のインプラント後、装置の識別情報は、装置を撮像し、識別体から識別情報を取得することにより、切開手術を行うことなしに容易に取得することができる。識別体は単語、シンボル、バーコード等の形態とすることができる。この場合、識別体は、装置の様式、装置の製造業者、装置を一意的に識別するための装置のシリアル番号等の種々の様式のインプラント情報を提供することができる。識別体が提供する情報をデータベースと相互参照することにより、装置のインプラント時期、装置のインプラント者、等の別の情報を、適切なデータベースから容易に取得することができる。この情報はすべて、切開手術を行って実際に直接的に装置にアクセスせずとも、適切な非侵襲式撮像プロトコルで装置を撮像することにより取得することができる。
【0066】
更に、対象とする陰極アークエレメントは、放射線不透過性バンドのような方位制御エレメントを具備する。この場合、かかるエレメントは、インプラント時に装置の適切な位置決めを援助することができる。例えば、非放射線不透過性(non‐radioopaque)ステントを、陰極アーク製作方位制御エレメントをその外面上に具備するように改造してもよい。この場合、かかるエレメントが、インプラント時のステントの位置決めを援助する。
【0067】
(方法)
陰極アーク製作構造物を具備するインプラント型医療装置を製造する方法についても説明する。この場合、方法は陰極アーク堆積プロトコルを用いた構造物の製作を含む。
【0068】
本発明の方法は、例えば上記で説明したように、陰極アークが発生する金属イオンプラズマを、インプラント型医療装置の所望の構造物を製作するのに十分な条件下で、基板表面と接触させることを含む。陰極アークが発生する金属イオンのイオンプラズマビームは、任意の都合のよいプロトコルを用いることによって発生させることができる。陰極アークプロトコルによってイオンビームを生成する際に、十分な電力の電気アークが、陰極と1つ又は複数の陽極との間に発生し、その結果、陰極材料イオンのイオンビームが発生する。こうして発生したビームは、イオンが基板表面と接触し、基板表面上に陰極材料を具備する構造物を製作する態様で、基板の少なくとも1つの表面に誘導される。例えば、図1を参照されたい。陰極アーク堆積による構造物を製作するためのプロトコルは、任意の都合のよいものを使用して構わない。この場合、本発明での使用に応用できる当該技術分野で公知のプロトコルは下記に記載のものがあるが、これらに限定されない。米国特許第6,929,727号、第6,821,399号、第6,770,178号、第6,702,931号、第6,663,755号、第6,645,354号、第6,608,432号、第6,602,390号、第6,548,817号、第6,465,793号、第6,465,780号、第6,436,254号、第6,409,898号、第6,331,332号、第6,319,369号、第6,261,421号、第6,224,726号、第6,036,828号、第6,031,239号、第6,027,619号、第6,026,763号、第6,009,829号、第5,972,185号、第5,932,078号、第5,902,462号、第5,895,559号、第5,518,597号、第5,468,363号、第5,401,543号、第5,317,235号、第5,282,944号、第5,279,723号、第5,269,896号、第5,126,030号、第4,936,960号、並びに、米国特許出願公開第20050249983号、第20050189218号、第20050181238号、第20040168637号、第20040103845号、第20040055538号、第20040026242号、第20030209424号、第20020144893号、第20020140334号、及び第20020139662号。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。いくつかの実施形態において、「Void−Free Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する、2007年4月12日に出願のPCT出願第PCT/2007/09270号に記載されているように、例えば陰極アーク堆積材料の層内に基板(医療装置)を封入するために、全基板表面をプラズマと接触させてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、用いられる陰極アーク堆積プロトコルは、上記で説明したような、基板表面上に厚みのある無応力金属構造物を製作するプロトコルである。したがって、この方法は、基板表面上に、約25μm以上といった約1μm以上の厚みを有する無欠陥金属層を製作する方法であり、約50μm以上の厚みを含む。この場合、その厚みは、約75μm、85μm、95μm又は100μmもの厚みであってもよく、それ以上であってもよい。
【0070】
基板表面への陰極アーク堆積によって基板表面上に材料層を堆積させるための改良された方法が、本発明に従って説明されている。いくつかの実施形態において、基板が変形又は力を受けて、かかる変形又は力を受けていない基板上への堆積によって製作された対応の層に比べ、特性が大幅に改良された層ができる。
【0071】
本発明に係る応力工学技術の方法は、シリコン基板上に成長応力が大きくかつ圧縮力のある陰極アーク金属フィルム又はスパッタ金属フィルムを形成するといった、広範な材料作製用途にも有効に用いられる。金属フィルムの熱膨張係数がSi基板材料のものより大きいため、室温におけるフィルム内の応力は、高温で堆積を行うことによって低減することが可能である。温度が堆積温度に上がっているときは、フィルムは依然として圧縮状態にあるが、基板上で冷えると、それは無応力状態に近づく。しかし、かかる高温のフィルム形成条件は、基板上に存在する集積回路(IC)装置の他の層に対して有害な場合がある。本発明によれば、スパッタ堆積時に、例えば適切な拘束(constraining)エレメントで基板を拘束し、次いで、堆積後にその拘束を解除し、したがって、スパッタされた金属層から釈放されるのに要する所定量の圧縮歪みが基板上面に与えられるようにすることによって、同一の略無応力状態を獲得することが可能となる。
【0072】
本発明のこの方法は、逆に成長応力が少ししかなく、しかし堆積プロセス又は他の高温プロセスの拘束があるために、高温で堆積されなければならない層の製作にも適用可能である。このような場合、基板を堆積温度に加熱することによって、本発明を実施する際に熱膨張不整合歪みを補償することができる。このようにすれば、堆積時の応力は、少ししかないか又は全くない。冷却時に応力が発生するが、その応力は次いで、ウェハの拘束を除去することによって緩和される。
【0073】
いくつかの実施形態では、主題の方法において、プラズマと基板表面との接触は、堆積金属構造物にかかる圧縮力及び張力が相互に実質的に相殺し合い、したがって堆積金属構造物が無応力になるような態様で起こる。これらの実施形態において、基板と陰極との間の距離、基板温度、及びプラズマを発生させるのに用いる電力、を含む種々の堆積プロセスパラメータは、製作する金属層が無応力となるように選択される。これらの実施形態において、基板と陰極との間の距離は、約1mm〜約0.5mの範囲とすることができる。プラズマを発生させるのに用いる電力は、約1W〜約1kW以上の範囲とすることができ、例えば5kW以上とすることができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、プラズマビームは、構造物が製作される基板表面の平面に略直交する方向で、基板表面と接触する。「略直交」とは、イオンビーム流が基板平面と接触するときの角度が直交方向の、±10°といった±15°であることを意味し、±5°を含む。直交を含むので、いくつかの実施形態において、イオンビーム流は、基板表面の平面に対し垂直である。
【0075】
したがって、方法の実施形態は、医療用インプラントで利用される無応力フィルム、即ち無応力層であって、層材料の性質が応力に依存している層を、層形成時に選択の基板に加熱又は冷却を施して(即ち、圧縮力を加えて)、製作層内に応力(例えば圧縮力又は張力)が残留することを阻止或いは助勢する力を加えた状態を基板を介して強制的に形成することによって堆積させる方法を含む。本発明の方法は、相互接続に用いられるプラチナ、インジウム、及びチタン等の比較的厚みのある(最大で100μm)生体適合性金属、酸化イリジウム電極及び窒化チタン電極、並びに、生物医学的封入に用いられる種々の誘電体フィルムにとって特に重要である。
【0076】
この方法は逆に、引張成長応力を有する層を製作するのにも適用可能である。このような場合、基板を堆積温度に加熱することによって、本発明を実施する際に熱膨張不整合歪みを補償することができる。このようにすれば、堆積時の応力は、少ししかないか又は全くない。冷却時に応力が発生するが、その応力は次いで、ウェハの拘束を除去することによって緩和される。
【0077】
いくつかの実施形態において、基板表面には、基板とは異なる熱膨張係数を有する材料でできた部材が固着されている。この場合、フィルム形成材料の製作フィルムを形成することは、基板及びそれに固着された部材を加熱及び/又は冷却することを含む。
【0078】
特定の実施形態によっては、基板表面は平滑であってもよければ、不規則的であってもよい。但し、基板表面が不規則的なときは、それは堆積材料で充填されることになる穴又はトレンチ又は類似の構造物を有するであろう。
【0079】
いくつかの実施形態において、多孔性コーティングを生み出す堆積条件(例えば、ガスの組成、電力)を選択してもよい。例えば、反応性ガスの圧力を、最終製作物に所望の多孔度を与えるように選択してもよい。例えば、N2が反応性ガスである場合に、0.01〜760torr、例えば0.1〜100torrの範囲の圧力を用いてプラチナ、金、ルテニウム、イリジウム、及びモリブデン等の多くの金属の多孔性構造物が製作される。C2H6が反応性ガスである場合に、0.01〜760torr、例えば0.1〜100torrの範囲の圧力を用いてプラチナ、金、ルテニウム、イリジウム、及びモリブデン等の多くの金属の多孔性構造物が製作される。対象とする堆積条件に関する更に詳細な説明は、「Metal Binary and Ternary Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」と題する、同日に出願され、同時係属中のPCT出願第PCT/US2007/_号に記載されている。その開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0080】
いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積プロトコルと一緒に、1つ又は複数のマスクを用いてもよい。かかるマスクは、堆積構造物の形状を任意の望ましい形状にすることができる。フォトリソグラフィの処理プロトコルで用いられる従来のマスク等の任意の都合のよいマスクを用いることができる。
【0081】
上述したように、主題の方法によって堆積された構造物は、堆積構造物の所要の機能によって、種々の異なる構成を有することができ、層、リードとすることができ、3次元構成を有することができる。
【0082】
堆積構造物の組成は、陰極材料及びプラズマ生成の雰囲気の選択に基づいて選ぶことができる。したがって、所望の組成の金属層を製作するのに、特定の陰極材料及びプラズマ生成の雰囲気が選択される。いくつかの実施形態において、陰極は1つの金属又は合金でできている。この場合、対象とする金属には金(au)、銀(ag)、ニッケル(ni)、オスミウム(os)、パラジウム(pd)、プラチナ(pt)、ロジウム(rh)、イリジウム(ir)、チタン(ti)、等があるが、これらに限定されない。
【0083】
堆積構造物が陰極と同一の組成を有することになっている実施形態では、イオンビームを真空中で発生させてもよい。堆積構造物を炭素、酸素、又は窒素等の別のエレメントと混合した合金にしようとする更に他の実施形態において、酸素含有雰囲気、窒素含有雰囲気、炭素含有雰囲気、のような他のエレメントの雰囲気中でプラズマを発生させてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、例えばプラズマの発生中に雰囲気に変更を加え、雰囲気中の第二のエレメントの量を、例えば増加させたり、或いは減少させたりするなど、堆積中に変化させることによって、陰極材料の第二のエレメントの勾配が堆積構造物内に生じる。
【0085】
いくつかの実施形態において、基板表面と接触するイオンビームは濾過されておらず、そのためイオンビームには陰極材料のマクロ粒子が含まれている。更に他の実施形態において、基板表面と接触するイオンビームを、完全ではなくとも実質的にマクロ粒子が無い状態になるように濾過してもよい。米国特許第6,663,755号、第6,031,239号、第6,027,619号、第5,902,462号、第5,317,235号、及び第5,279,723号、並びに、米国特許出願公開第20050249983号、第20050181238号、第20040168637号、第20040103845号、及び第20020007796号に記載されているような、任意の都合のよい濾過プロトコルを用いることができる。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0086】
前に概観したように、いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積構造物は、例えば図6A及び図6Bに示す導電性のフィードスルー又はビアのような、インプラント型医療装置の2つ以上の構造物を導電状態につなぐ導電性エレメントである。これら実施形態のうちのある実施形態では、人体へのインプラントとして使用することを意図した多層生体適合性構造物であって、マイクロプロセッサ又は他のコンポーネントが異なる層に構成され、構造物の各回路層を分離する絶縁層を貫通して上下方向に相互接続されている構造物が作製される。この場合、上下方向の相互接続は、本明細書で説明したような陰極アーク堆積によって製作される。各回路層は、個別のウェハ又は薄いフィルム材料内に作製し、次いで、層状構造物上に移して、後述するように相互接続するようにしてもよい。
【0087】
例えばPt、Ir、Ti、又はそれらの合金でできた生体適合性層金属導電体が、例えば外部(例えばシリコン)マスクを介して陰極アーク堆積技術によりパターン化されたシリコン基板に堆積され、3次元電気回路及びシリコン基板又はマイクロプロセッサ若しくは他のコンポーネントを収容するケース内に形成されたビアを介する電気的接続体を規定する。これらの方法は、第一の部分に、例えば上記で生成された実質的に完全にイオン化された金属イオンを当てることを含む。方法は、方向性の高いイオンビームを発生させるのに濾過式でない(unfiltered)陰極真空アーク(Cathodic Vacuum Arc)技術だけでなく濾過式の(filtered)陰極真空アーク技術も用いており、この方法は、アスペクト比が高いビア及びトレンチ内であっても、共形金属コーティングが形成されることを可能にする。この方法は、例えばプラチナの薄いフィルム及び厚いフィルム並びに相互接続を堆積させるような、導電性相互接続体を形成するために行うビア及びトレンチの内部充填を可能にする。
【0088】
いくつかの実施形態において、インプラント型装置で使用するために、構造物は上下方向に積載されて、データ処理、制御システム、及びプログラマブル計算用回路エレメントを相互接続する。いくつかの実施形態において、構造物は、同一の又は個別の半導体ウェハ内に作製され次いで積載された相互接続回路及びマイクロプロセッサを具備する。この回路は、シリコン又は他の適切な材料表面に沿って普通に配線された、多数の薄いフィルム状の金属ワイヤを具備していてもよい。本発明において、回路の機能ブロックは、バルクチップ上の回路の1つのセクションと、組込みマイクロプロセッサチップ及びコンポーネントを収容する空孔を有するSI系ウェハのような残りのブロックとが、本明細書に記載の陰極アーク堆積プロトコルで製作された中間ビアを介して電気的に接続されている状態で、上下方向に配列された2つ以上のセクションに分割されていてもよい。
【0089】
回路は、バルクシリコン、酸化シリコン、又はガリウム砒素等のIII−V族材料内に、或いは、バルクSi、SOI、及び/又は薄いフィルム状GaAsを含む複合構造物内に形成可能である。層を相互に接着する絶縁層及び導電性相互接続体又は絶縁層を貫通して延在する上下方向バスを用いて、装置の種々の層を積載することが可能である。この絶縁層は、接着剤等の重合材料を具備していてもよい。熱的劣化又はクロストークを低減、或いは阻止するために、隣接する回路層間に熱的シールド及び電気的シールドを用いてもよい。
【0090】
例えば、チップがリードレスチップキャリア内に配置されているような場合に、パッケージと通信を行うために、バルクチップ上又は構造物の薄いフィルム層上のワイヤボンドパッドが存在していてもよい。これらのパッドは、ワイヤをボンディングすることができる十分な大きさである必要がある。回路の異なる層を互いに接続するのに、相互接続パッドが用いられる。相互接続の方法が陰極アーク金属堆積を用いているので、これらのパッドは、従来のワイヤボンドパッドよりもかなり小さくできる。
【0091】
したがって、本発明の実施形態は、データプロセッサを含むインプラント型能動電子装置の作製方法を含む。この場合、方法は、Ptのような第一の金属系の電気回路を、バルク半導体ウェハ(Si、SiC、GaAs、InP等又は誘電体材料(例えば、TiO2、Al2O3、AlN、SiO2)のウェハのような半導体材料の第一の層上に形成することと、データプロセッサの第二の回路を半導体材料の第二の層内に形成することと、2つの回路間に延在する相互接続体で第一のプロセッサ回路を第二の組込みプロセッサ回路と接続する最大深さ100ミクロンのビアを、陰極アーク堆積で堆積させることによって、データプロセッサ信号が第一のデータプロセッサ回路と第二のデータプロセッサ回路との間で伝達され得るように、Ptのような陰極アーク堆積金属導電体で第二の層を第一の層に電気的に相互接続することと、を含む。所望に応じて、方法は、第一の回路層及び第二の回路層上に複数の追加的回路層を製作することを更に含んでもよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、データプロセッサを作製する方法は、インプラントの第一の回路を半導体材料又は誘電体材料の第一の層に形成することと、データプロセッサの第二の回路を半導体材料の第二の層に形成することと、ボンディング層で第二の層を第一の層にボンディングすることと、陰極アーク堆積でPt、Ti又は他の生体適合性金属化層を付けて第一の回路と第二の回路とを電気的に接続することと、を含む。この金属化層は、第二の層から穴を通過して第一の層に流動する。
【0093】
(陰極アーク堆積システム)
主題の方法を実施して陰極アーク製作構造物を含むインプラント型医療装置を作るのに用いることが可能な陰極アーク堆積システムについても説明する。主題のシステムの実施形態は、陰極アークプラズマ源及び基板マウントを具備する。陰極アークプラズマ源(即ち、プラズマ発生器)は、様々なものが考え得るが、いくつかの実施形態において、陰極アークプラズマ源は、陰極と、1つ又は複数の陽極と、プラズマ発生時に陰極からイオン化された陰極材料を発生させるのに十分な電気アークを発生させるための陰極と陽極(1つ又は複数)との間の電源と、を具備する。プラズマ発生器は、陰極ターゲットからの正に帯電したイオンを含むDC的又はパルス的なプラズマビームを発生することができる。
【0094】
基板マウントは、構造物が堆積される基板を保持するように構成されている。いくつかの実施形態において、基板マウントは、マウント上の基板の温度を上げ下げして所望の温度にするといった、マウント上に存在する基板の温度を制御する温度調節器を具備する基板マウントである。冷却エレメント、加熱エレメント等の任意の都合のよい温度調節器を、マウントに動作可能に接続してもよい。いくつかの実施形態において、マウント上に存在する基板の温度を求めるのに、温度センサがあってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、システムは、基板マウントと陰極との間の距離を調整し得るように構成されている。即ち、システムは、基板マウント及び陰極を相互に移動できるように構成されている。いくつかの実施形態において、システムは、陰極に対して基板マウントを移動でき、そのようにして、所望に応じてそれら2つの間の距離を増減できるように構成されている。いくつかの実施形態において、システムは、基板マウントに対して陰極を移動でき、そのようにして、所望に応じてそれら2つの間の距離を増減できるように構成されている。前に概観したように、所望に応じて、システムは、陰極材料、エネルギー、基板仕様、堆積雰囲気のような1つ又は複数の入力パラメータを考慮して基板マウントと陰極とを相互に位置決めし、例えば堆積材料内に存在するいかなる圧縮力も基板の張力で確実に相殺させることによって、厚みのある無応力製作層を製作するために、適切な距離を決定するエレメントを具備してもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、陰極アークプラズマ発生エレメント及び基板は、真空又は制御された雰囲気といった制御された環境を提供する封止チャンバ内に存在する。この場合、システムのこれら2つのコンポーネントは、同一チャンバ内に存在していてもよく、陰極から基板へのイオンの移動を可能にするイオン搬送構造によって相互に接続された異なるチャンバ内に存在していてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、システムは、発生したプラズマからマクロ粒子を濾過するように機能する濾過コンポーネントを更に具備するので、完全ではなくとも実質的にマクロ粒子が無いイオンビームが基板に接触する。任意の都合のよい濾過コンポーネントが存在し得る。この場合、対象とする濾過コンポーネントには、米国特許第6,663,755号、第6,031,239号、第6,027,619号、第5,902,462号、第5,317,235号、及び第5,279,723号、並びに、米国特許出願公開第20050249983号、第20050181238号、第20040168637号、第20040103845号、及び第20020007796号に記載のものがあるが、これらに限定されない。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。いくつかの実施形態において、濾過エレメントは2つの湾曲部を有するので、プラズマ源(source)と基板との間に見通し線はなく、フィルタを通過する1回弾み経路もない。いくつかの実施形態において、システムは、プラズマビームを案内してフィルタを通過させ基板に向かわせるビームステアリング配置を更に具備する。
【0098】
いくつかの実施形態において、システムは、ビーム偏向(biasing)配置のような、パルス式振幅変調電気バイアスを濾過後のプラズマビームに印加するイオンビーム変調器を具備する。これらの実施形態において、偏向配置は、処理装置と、パルス発生器モジュールと、を備えている。パルス発生器モジュールは、処理装置の制御下でパルス式振幅変調電気バイアスを発生する。この場合、パルス発生器モジュールは、プログラマブル・ロジック・デバイスと、電源供給と、スイッチング回路と、を具備する。このスイッチング回路は、プログラマブル・ロジック・デバイスによって制御され、電源供給の出力は、スイッチング回路を介して基板に結合される。但し、プログラマブル・ロジック・デバイスは、電源供給とスイッチング回路の両方の動作を制御する。
【0099】
いくつかの実施形態において、システムは、基板にバイアスをかけるためのエレメントを更に具備する。これら実施形態のうちのある実施形態では、バイアスをかけることは、正イオンの堆積に起因して基板上に自然発生する静電荷を逃がすことと、入射イオンのエネルギーが確実に所定のエネルギー範囲内に入るようにすることの、両方の働きをする。
【0100】
陰極アーク堆積システムは、「Implantable Medical Device Comprising Cathordic Arc Produced Microstrip Structures」と題する、2006年6月22日に出願の米国仮特許出願第60/805,576号に更なる記載がある。この開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0101】
(システム)
本発明に係る陰極アーク製作コンポーネントを具備するインプラント型医療装置をもう1つ具備するシステムについても説明する。
【0102】
例えば、上記で説明したようなパッチアンテナ等の陰極アーク製作アンテナを有するインプラント型装置を具備するシステムが説明されている。本発明のかかるシステムを、人間のような被検体内で情報を通信するためのシステムと見なすこともできる。この場合、システムは、信号を送信及び/又は受信するように構成された送受信器を備えた第一のインプラント型医療装置と、信号を送信及び/又は受信するように構成された送受信器を備えた第二の装置の両方を具備する。但し、第一の装置と第二の装置の少なくとも一方は、例えば上記で説明したような、本発明に係るマイクロストリップアンテナを具備する。
【0103】
本発明のシステムの一実施形態を図10に示す。この場合、システムは、IPGのようなインプラント型医療装置と、外部プログラマブルユニットと、を具備する。図10は、本発明に係る、外部プログラマ26と心臓ペースメーカIPG12のようなインプラント済み医療装置との間の双方向テレメトリ通信の簡易模式図である。IPG12は、患者10に植込まれて患者の皮膚又は筋肉の下にあり、典型的には皮膚表面の方に方向決めされている。IPG12はペース/センス電極及び少なくとも1つの心臓ペーシングリード14のリード導体(1つ又は複数)を介して患者10と電気的に結合される。IPG12はオペレーティングシステムを備えている。このオペレーティングシステムは、プログラムされた動作モード及び電源に応じてセンシング機能及びペーシング機能の時間調節を行うマイクロコンピュータ又はデジタル式のステートマシーンを用いても構わない。IPG12は更に、心臓信号を検出するセンスアンプと、患者用アクティビティセンサ又は心臓出力要求を感知する他の生理学的センサと、オペレーティングシステムの制御下で、従来技術で公知の態様で心臓18の少なくとも1つの心室にペーシングパルスを与えるパルス発生出力回路と、を備えている。オペレーティングシステムは、オペレーティングシステムが使用する種々のプログラム組込み動作モード及びパラメーラ値を格納するメモリレジスタ又はRAMを具備する。メモリレジスタ又はRAMは、取出し命令又は問合せ命令を受信したときのテレメトリ送出に備えて、感知された心臓アクティビティから収集されたデータ及び/又は装置動作履歴データ、或いは感知された生理的パラメータを格納するためにも用いることができる。これらの機能及び動作はすべて当該技術分野で公知であり、多くは他のプログラム可能インプラント型医療装置で、装置動作を制御するためにかつ後で取り出して装置機能又は患者状態を診断するために、動作コマンド及びデータを格納するのに用いられている。
【0104】
プログラミングコマンド又はデータは、IPG12表面内又はその上のIPGRFテレメトリアンテナ28と、外部プログラマ26に連結されている外部RFテレメトリアンテナ24との間で伝送される。外部RFテレメトリアンテナ24は、患者10からある距離だけ離して、外部プログラマのケース上に配置してもよい。例えば、外部プログラマ26及び外部RFテレメトリアンテナ24は、患者10から数m程度だけ離れたスタンド上にあってもよい。更に、リアルタイムECG又は生理的パラメータの上りリンク問合せ時に、患者は活動状態であってもよく、ランニングマシーン(treadmill)等で運動中であっても構わない。プログラマ26は更に、従来技術の古典的なフェライトコア、ワイヤコイル、RFテレメトリアンテナを用いた既存のIPGを汎用的にプログラムするように設計されていてもよく、したがって、かかるIPGで選択的に使用できるように、古典的なプログラマRFヘッド及び関連のソフトウェアを有している。
【0105】
上りリンクテレメトリ伝送20において、外部RFテレメトリアンテナ24は、テレメトリ受信器アンテナとして動作し、IPGRFテレメトリアンテナ28は、テレメトリ送信器アンテナとして動作する。逆に、下りリンクテレメトリ伝送30において、外部RFテレメトリアンテナ24は、テレメトリ送信器アンテナとして動作し、IPGRFテレメトリアンテナ28は、テレメトリ受信器アンテナとして動作する。
【0106】
次に図11について説明すると、これは、図10の外部プログラマ26及びIPG12の主な機能的テレメトリ伝送ブロックの簡易回路ブロック図である。プログラマ26内の外部RFテレメトリアンテナ24は、テレメトリ送信器32とテレメトリ受信器34とを備えたテレメトリ送受信器に結合される。テレメトリ送信器32及びテレメトリ受信器34は、上記した援用に用いられている、本発明の譲受人に譲渡された特許及び係属中の出願に記載されているように、制御回路と、マイクロコンピュータ及びソフトウェアの制御下で動作するレジスタと、に結合される。同様に、IPG12内では、IPGRFテレメトリアンテナ28は、テレメトリ送信器42とテレメトリ受信器44とを備えたテレメトリ送受信器に結合される。テレメトリ送信器42及びテレメトリ受信器44は、上記した援用に用いられている、本発明の譲受人に譲渡された特許及び係属中の出願に記載されているように、制御回路と、マイクロコンピュータ及びソフトウェアの制御下で動作するレジスタと、に結合される。
【0107】
上りリンクテレメトリ伝送20において、テレメータで伝送されたデータを任意の都合のよいテレメトリフォーマットに符号化してもよい。例えば、データ符号化又は変調は、例えば搬送周波数の、周波数シフトキー(FSK:frequency shift key)又は差動位相シフトキー(DPSK:differencial phase shift key)の形態であってもよい。上りリンクテレメトリ伝送20を開始するには、使用者が起動したINTERROGATEコマンドに応答して外部プログラマ26のテレメトリ送信器32を有効状態にして、下りリンクテレメトリ伝送22にINTERROGATEコマンドを発生させる。INTERROGATEコマンドは受信器44で受信され、復調された後、マイクロコンピュータ(図示せず)のようなインプラント型医療装置中央処理装置(CPU:central processing unit)の入力に印加される。インプラント型医療装置マイクロコンピュータは、適切な上りリンクデータ信号を発生することによって応答する。この信号は、送信器42に入力されて、符号化した上りリンクテレメトリ信号20を発生する。上記のデータ符号化及び伝送フォーマットは、どれを用いてもよい。
【0108】
上記の図10及び図11のシステムは、主題のアンテナを使用し得るシステムの例示的なものに過ぎず、単なる1つの様式である。システムは、多くの異なるコンポーネント又はエレメントを有する場合がある。この場合、かかるエレメントは、センサ、エフェクタ、例えば心臓刺激のタイミングを例えば1つ又は複数のセンサからの信号に応答して制御するための処理エレメント、例えばインプラント型医療装置と体外の場所との間でテレメトリ式に情報交換を行うためのテレメトリ用送信器、薬物送達エレメント、等を具備することができるが、これらに限定されない。
【0109】
いくつかの実施形態において、インプラント型医療システムは、ペーシングの用途、心臓再同期治療の用途、等の心血管での用途に用いられるシステムである。
【0110】
システムの使途に、装置で取得したデータを視覚化することを含んでも構わない。本発明の発明者の一部は、種々の表示器及び本発明のシステムを用いて収集されるセンサ情報の多数の情報源を連係して機能させるソフトウェアツールを開発している。これらの例は、国際PCT出願第PCT/US2006/012246号に見ることができる。この出願並びにそれの優先権主張出願の開示は全体が、参照により本明細書で援用されている。
【0111】
本発明に係るインプラント型実施形態を用いて取得したデータは、所望に応じて、インプラント型コンピュータによって記録することができる。かかるデータは、自動又は手動の解析に備えて、周期的にコンピュータシステム及びインターネットを含むコンピュータネットワークにアップロードすることができる。
【0112】
上りリンク及び下りリンクテレメトリ機能を特定のインプラント型システムに設けて、遠隔的に配置された外部医療装置、又は患者の体上のより近接した医療装置、又は患者の体内の別の多重チャンバモニタ/治療提供(multi−chamber monitor/therapy delivery)システムとの通信を可能にすることができる。上記の様式の格納された生理的データ、並びに、リアルタイムに発生する生理的データ及び非生理的データは、下りリンクテレメトリが送出する問合せコマンドに応答して、上りリンクRFテレメトリによって、システムから外部プログラマ又は他の遠隔医療装置に伝送することができる。リアルタイムの生理的データには、典型的には、心臓内心電図振幅値のようなリアルタイム標本化信号レベル、及び本発明に従って発現する寸法信号を含むセンサ出力信号がある。非生理的患者データには、現在プログラムされている装置動作モード及びパラメータ値、電池状態、装置ID、患者ID、インプラント日、装置プログラミング履歴、リアルタイムのイベントマーカ、等がある。インプラント型ペースメーカ及びICDとの関連において、かかる患者データには、センスアンプ設定感度、ペーシング又は電気的除細動パルスの振幅、エネルギー、及びパルス幅、ペーシング又は電気的除細動のリードインピーダンス、並びに、検出された不整脈症状及び加えられた治療法のような装置性能に関連する統計の蓄積、がある。したがって、多重チャンバモニタ/治療提供システムは、種々のかかるリアルタイムの又は格納された生理的又は非生理的データを創出する。かかる創出されたデータを、本明細書では、集合的に「患者データ」と呼ぶ。
【0113】
図12は、本発明の別の実施形態に係る医療診断及び/又は治療システム100のブロック図である。プラットフォーム100は、電源102と、遠隔装置104と、データ収集器106と、外部記録装置108と、を具備する。動作時は、遠隔装置104は患者の体内に配置され(例えば、摂取され又は植込まれ)、電源102からの電力を入力する。この電源は、患者の体内に設置されていてもよければ、外部に設置されていてもよい。
【0114】
遠隔装置104は、センサユニット、エフェクタユニット、及び/又は送信器ユニットの任意の組合わせを具備し得る、電子的、機械的、又は電子機械的装置である。センサユニットは、遠隔装置104が植込まれた患者の生理的状態に関連する種々のパラメータを検出し測定する。エフェクタユニットは、遠隔装置又は外部コントローラ内のセンサユニットの制御下で、患者の体又は生理的過程の一部の局面に影響を与える行為を行う。送信器ユニットは、センサユニットからの測定データ又はエフェクタアクティビティ若しくは単なる遠隔装置の存在を示す他の信号を含む信号を、データ収集器106に送信する。いくつかの実施形態において、送信は無線で行われる。
【0115】
電源102は、遠隔装置104に出力できる電力の任意の発生源を具備することができる。いくつかの実施形態において、電源102は、遠隔装置104に組み込まれた電池又は同様の自己完結型の電源とすることができる。他の実施形態において、電源102は患者の体外にあって、無線で電力を伝送する。
【0116】
データ収集器106は、患者内に植込まれていてもよければ、外部にあって、患者の皮膚に接続されていてもよい。データ収集器106は、遠隔装置104内の送信器ユニットからの信号を検出する受信アンテナと、受信情報を格納し、処理し、及び/又は再送信するように構成された制御ロジックと、を具備する。遠隔装置104が送信器を具備しない実施形態においては、データ収集器106を省略してもよい。
【0117】
外部記録装置108は、収集データ及び関連情報(例えば、データ収集器106内の処理活動の結果)に担当者がアクセスできるようにする任意の装置を用いて実現することができる。いくつかの実施形態において、データ収集器106は、患者又は健康管理担当者が直接読み取れる外部コンポーネント、或いは格納データを読み取るコンピュータに通信可能に接続された外部コンポーネントを具備する。その外部コンポーネントは、外部記録装置108として機能する。他の実施形態において、外部記録装置108は、例えば405MHz帯でのRF結合を用いて、内部ペースメーカ又は他のデータ収集器と通信を行う従来のペースメーカワンド等の装置であってもよい。
【0118】
プラットフォーム100は、任意の個数の電源102と、遠隔装置104と、を具備することができる。この遠隔装置は、インプラント型医療装置とみなすことができる。いくつかの実施形態において、センサ/エフェクタネットーク(システム)を患者の体内に製作して、患者のために種々の診断及び/又は治療活動を行うことができる。例えば、図13は、多数の遠隔装置204、205、206が自分の体の種々の場所に植込まれた患者200を示している。遠隔装置204、205、206は、同一装置の多数のインスタンスであってもよく、そうすれば、パラメータが場所によって異なる様子を測定し、及び/又は種々の行為を局所的に行うことができる。或いは、遠隔装置204、205、206は、センサ、エフェクタ、及び送信器の任意の組合わせを含む異なる装置であってもよい。いくつかの実施形態において、各装置は下記のうちの少なくとも1つであるように構成される。(i)患者の体との擬似静電結合を介して信号を送信する。(ii)患者の体との擬似静電結合を介して送信された信号を受信する。特定のシステムにおける遠隔装置の個数は変わる場合があり、2個以上、3個以上、5個以上、約10個以上、約25個以上、約50個以上、等になる場合がある。データ収集器208にはアンテナ210が装備されており、遠隔装置204、205、206によって送信された信号を検出する。都合のよいことに遠隔装置が無線で信号を送信するため、プラットフォームの用途は、患者の体を貫通してワイヤを走らせるという難点によって制限されない。むしろ、患者の体内の遠隔装置の個数及び位置は、所望の場所に植込み得る大きさで装置を製作する能力によってのみ制限されることが分かるであろう。
【0119】
本明細書では、患者に関連させて、一定の事例について本発明を説明している。本明細書で用いられているように、「患者」という用語は、動物等の生命体を指す。いくつかの実施形態において、動物は「哺乳動物」又は「哺乳類」である。この場合、これらの用語は、肉食動物(例えば、犬及び猫)、齧歯目(例えば、マウス、モルモット、及びラット)、ウサギ目(例えばウサギ)、及び霊長類(例えば、人間、チンパンジー、及び猿)を含む哺乳綱に含まれる生物体を広く表すのに用いられる。いくつかの実施形態において、患者のような対象物は人間である。
【0120】
本発明のシステムの使用方法についても説明する。本発明の方法は一般的に、一方をインプラント型とすることができる第一の医療装置と第二の医療装置とを具備する上記で説明したような本発明のシステムを提供することと、システムの第一の装置と第二の装置との間で、少なくとも一方の装置上に存在するマイクロストリップアンテナを介して信号を送信することと、を含む。提供することは、用いられる特定のシステムによっては、少なくとも第一の医療装置を対象物に植込むことを含んでもよい。いくつかの実施形態において、送信ステップは、第一の装置から前記第二の装置へ信号を送出することを含む。いくつかの実施形態において、送信ステップは、第二の装置から前記第一の装置へ信号を送出することを含む。信号は、任意の都合のよい周波数で送信することができ、ある実施形態では、周波数は約400〜約405MHzの範囲にある。信号の種類は非常に様々なものが考え得るのであり、患者から取得された1つ又は複数のデータ、インプラント装置から取得された装置機能データ、インプラント装置、電力、等の制御情報が含まれ得る。
【0121】
(キット)
前に概観したようなインプラント型パルス発生器等のインプラント型医療装置を具備するキットについても説明する。例えば、キットは、上記で説明したような本発明のパッチアンテナを具備する、インプラント型装置又は摂取型装置のいずれかのような装置を具備してもよい。いくつかの実施形態において、キットは2つ以上のかかる装置を具備してもよい。いくつかの実施形態において、キットは更に、インプラント装置(ツール、ガイドワイヤ等)、受信器、といった少なくとも1つの追加的コンポーネントを具備する。
【0122】
主題のキットのいくつかの実施形態において、キットは、主題の装置を用いるための命令又はそれを取得するためのエレメント(例えば、命令を提供するウェブページに使用者を誘導するウェブサイトのURL)を更に具備するであろう。この場合、これらの命令は、典型的には基板上に印刷されている。この基板は、パッケージインサート、パッケージング、試薬容器、等のうちの1つ又は2つ以上であってもよい。主題のキットにおいて、1つ又は複数のコンポーネントは、都合又は所望に応じて、同一の容器又は異なる容器内に存在する。
【0123】
本発明が説明した特定の実施形態に限定されないことは、理解されるべきである。かかる実施形態は変わるおそれがあるからである。本明細書で用いられる用語は特定の実施形態を説明することだけを目的とし、限定することは意図されていないことも、理解されるべきである。本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定されるからである。
【0124】
一定範囲の値が与えられている場合、その範囲の上下限間の各介在値は、文脈が明確に否定しない限り、下限の10分の1までが本発明の範囲内に含まれかつその記載の範囲の任意の他の記載値又は介在値が本発明の範囲内に含まれる。これらのより狭い範囲の上下限は、それら狭い範囲に独立的に含まれ、同じく本発明範囲内に含まれる場合があるが、記載の範囲に具体的に除外される限界がある場合はそれに従う。記載の範囲が一方又は両方の限界を含む場合、これら包含される限度の一方又は両方を除外した範囲も本発明の範囲に含まれる。
【0125】
本明細書では、一定の範囲が、「約」という用語が前に付いた数値と一緒に提示されている。「約」という用語は、後に来る厳密な数、並びに、後に来る数に近い又は近似の数を文字通りに支持するために、本明細書では用いられている。ある数が具体的に引用された数に近い又は近似的であるかどうかを判定する場合、引用されていない近い数又は近似の数は、それが提示されている文脈において、その具体的に引用された数と実質的に均等な数を提供する数とすることができる。
【0126】
別の規定がなされていない限り、本明細書で使用されている技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって普通に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載のものと類似の又は均等な方法及び材料も、本発明の実施又はテストに使用可能であるが、代表的な方法及び材料を今回は記載している。
【0127】
なお、本明細書及び添付の請求項で用いられているように、単数形式表現である「1つの」、「この」、及び「前記」は、文脈が明確に否定しない限り、複数の指示物を含む。任意選択エレメントを除外するように請求項が構成されている場合があることにも、注意を要する。したがって、このように明言することで、これを、請求項の要件の列挙の際に「もっぱら(solely)」、「のみ(only)」等の除外機能用語を使用すること、又は「否定的」限定を使用することの根拠とする。
【0128】
本明細書に記載され例示された個々の実施形態のそれぞれが、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちの任意の実施形態の特徴から容易に分離又はそれらと組み合わされ得る個別のコンポーネント及び特徴を有していることは、当業者には明らかであろう。引用されたいずれの方法も、引用された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実施可能である。
【0129】
上記の発明は、理解し易くする目的で、図及び例によってある程度詳細に説明したが、本発明の教示に照らして考えてみれば、添付の請求項の精神又は範囲から逸脱することなしにそれに一定の改変及び変更を行い得ることは、当業者であれば容易に分かる。
【0130】
したがって、上記は、本発明の原理を示しているに過ぎない。本発明の原理を具現化しかつその精神及び範囲に含まれる構成物は、本明細書では明示的に記載もしていなければ示しもしていないが、当業者であれば種々の構成物を案出できることは理解されるであろう。更に、本明細書に引用されている例及び条件表現はすべて、技術を進展させるために、主として、本発明の原理及び本発明者がもたらした概念を読者が理解することを支援するように意図されており、かかる具体的に引用された例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。更に、本明細書で本発明の原理、特徴、及び実施形態、並びにその特定の例を引用する記述はすべて、その構造的均等物、機能的均等物のいずれをも含むように意図されている。更に、かかる均等物が現在公知の均等物、将来に開発される均等物、即ち、構造にかかわらず同一の機能を発揮する新開発エレメント、のいずれをも含むことが意図されている。したがって、本発明の範囲を、本明細書に示され、記載された例示的実施形態に限定することは意図されていない。むしろ、本発明の範囲と精神は、添付の請求項によって具現化される。
【背景技術】
【0001】
(関連出願への相互参照)
米国特許法第119(e)条にしたがって、本願は、2006年6月21日に出願された、「Implantable Medical Devices Comprising Cathodic Arc Produced Structure」という発明の名称の米国仮特許出願第60/805,464号;2006年6月22日に出願された、「Cathodic Arc Deposition Hermetically Sealed Implantable Structures」という発明の名称の米国仮特許出願第60/805,578号;2006年6月22日に出願された、「Implantable Medical Devices Comprising Cathodic Arc Produced Structures」という発明の名称の米国仮特許出願第60/805,576号;2006年6月22日に出願された、「Noble Metal Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」という発明の名称の米国仮特許出願第60/805,581号;2006年10月25日に出願された、「Medical Devices Comprising Cathodic Arc Produced Microstrip Antennas」という発明の名称の米国仮特許出願第60/862,928号;2007年2月8日に出願された、「Metal Binary And Ternary Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」という発明の名称の米国仮特許出願第60/888,908;2007年2月16日に出願された、「Metal Binary And Ternary Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」という発明の名称の米国仮特許出願第60/890,306号;2007年5月10日に出願された、「Metal Binary And Ternary Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」という発明の名称の米国仮特許出願第60/917,297号の出願日に対する優先権を主張する。これらの出願の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(導入)
種々の異なる種類のインプラント型医療装置(IMD:implantable medical devices)が、当該技術分野では公知である。これらの装置は、生理的パラメータのモニタリング、薬理的薬剤の供給、電気的刺激の供給、等を含むが、これらに限定されない1つ又は複数の異なる機能を有し得る。
【0003】
装置の能力を高めつつ小型の形状となるように、より小型の、さらに複合化したインプラント型医療装置を製作することが、この分野では絶えず望まれている。このために、インプラント型医療装置を作るのに、種々の異なる作製技術が用いられてきた。
【0004】
本発明の発明者の一部による米国特許出願公開第20060058588号、第20050160827号、第20050160826号、第20050160825号、第20050160824号、第20050160823号、第20040254483号、第20040220637号、第20040215049号、及び第20040193021号は、医療装置を製作するのに、微小電気機械システム(MEMS:Micro−Electro−Mechanical Systems)作製等のプレーナ処理技術を使用することを記述している。構造物を作製する一定の状況において使用し得る堆積技術には、電気めっき、プラズマスプレイ、スパッタリング、電子ビーム蒸着、物理気相成長、化学気相成長、プラズマ強化化学気相成長、等があるが、これらに限定されない。材料除去技術には、反応性イオンエッチング、異方性化学エッチング、等方性化学エッチング、例えば化学機械研磨による平坦化、レーザアブレーション、放電加工(EDM:electronic discharge machining)、等があるが、これらに限定されない。同じく注目すべきものとして、リソグラフィのプロトコルがある。
【0005】
陰極アーク堆積は、1つの公知の様式の材料堆積プロトコルである。イオンビーム堆積の一形式である陰極アークプラズマ堆積では、陰極と陽極との間で電気アークが発生し、この電気アークが陰極からのイオンを陰極から開放し、それによってイオンビームを発生させる。こうして発生したイオンビーム、即ち陰極材料イオンのプラズマは次いで、基板(即ち、構造物が製作されることになる材料)表面と接触し、陰極材料製の構造物が基板表面上に堆積する。いくつかの実施形態では、基板が存在する雰囲気から得られたエレメント(1つ又は複数)も基板表面上に堆積する。種々の陰極アーク堆積プロトコル及びシステムを記述した数多くの特許及び公開された出願が利用可能である。かかる刊行物には、米国特許第6,929,727号、第6,821,399号、第6,770,178号、第6,702,931号、第6,663,755号、第6,645,354号、第6,608,432号、第6,602,390号、第6,548,817号、第6,465,793号、第6,465,780号、第6,436,254号、第6,409,898号、第6,331,332号、第6,319,369号、第6,261,421号、第6,224,726号、第6,036,828号、第6,031,239号、第6,027,619号、第6,026,763号、第6,009,829号、第5,972,185号、第5,932,078号、第5,902,462号、第5,895,559号、第5,518,597号、第5,468,363号、第5,401,543号、第5,317,235号、第5,282,944号、第5,279,723号、第5,269,896号、第5,126,030号、第4,936,960号、並びに、米国特許出願公開第20050249983号、第20050189218号、第20050181238号、第20040168637号、第20040103845号、第20040055538号、第20040026242号、第20030209424号、第20020144893号、第20020140334号、及び第20020139662号がある。
【0006】
陰極アーク堆積プロトコルは公知であるが、本出願の発明者の知る限りでは、かかるプロトコルは今日まで、ロータブレード等の大型産業エレメント上のコーティングを製作するような医療装置以外の用途、並びに、宝石の製造にもっぱら用いられてきた。発明者が最大限知る限り、陰極アーク堆積は、医療装置及びそれのコンポーネントの製作には用いられていない。
【0007】
MEMSプロトコル等のプレーナ処理プロトコルを適用することによって医療装置の設計及び作製が大幅に進歩したにもかかわらず、さらに複合化しかつさらに小型化したインプラント型医療装置の製作に使用可能な新たな製作技術を開発することが依然として必要とされている。特に関心のある事柄は、例えば厚みのある無応力層、多孔層、及び鈍鋸歯(crenulations)を有する層といった所望の形式で堆積された材料の組成物を、複合3次元構造を含む種々の異なる構成で製作するのに使用可能なプロトコルを明確にすること(identification)であろう。本発明は上記及び他の必要事項を満足する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、基板上に、たとえ高アスペクト比を有する基板内の場所であっても、厚みのある無応力金属構造物を製作することが初めて可能になる。更に、本発明の代替実施形態は、その表面上に多孔性金属構造物及び鈍鋸歯状の金属層を製作することを可能にする。インプラント型医療装置用の種々の異なる構造物を製作するのに、主題発明を用いることができる。構造物には、電気的接続体、コーティング層、封止層等のような層及び3次元コンポーネントがあるが、こういった構造物の設計は、以前に可能であったものより複雑であろう。したがって、本発明は、以前は不可能であった医療装置コンポーネントの製作を可能にし、それによって、医療装置の能力を大幅に向上させるとともに、装置を全体的に小型化する。
【0009】
本発明の諸実施形態は、陰極アークで製作した1つ又は複数の構造物、即ち陰極アーク堆積プロセスを用いて製作した構造物を有するインプラント型医療装置を含む。構造物は、厚みのある無応力金属構造物、多孔層、及び鈍鋸歯状の層とすることができる。本発明の諸実施形態は、医療装置インプラント用構造物を陰極アーク堆積プロセスを用いて製作する方法、並びに、本発明の方法を実施するように構成された陰極アーク堆積システムを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る陰極アークプラズマ源の略図である。
【図2A】本発明の一実施形態に係る陰極アーク堆積によって堆積されたプラチナ層の写真である。
【図2B】本発明の一実施形態に係る陰極アーク堆積によって堆積されたプラチナ層の写真である。
【図2C】本発明の一実施形態に係る陰極アーク堆積によって堆積されたプラチナ層の写真である。
【図2D】本発明の一実施形態に係る陰極アーク堆積によって堆積されたプラチナ層の写真である。
【図3】本発明の一実施形態に係る陰極アーク堆積によって堆積されたプラチナ層であって、表面が鈍鋸歯状になっている層の写真である。
【図4A】本発明の一実施形態に係る密閉封止した集積回路の異なる3次元表示図である。
【図4B】本発明の一実施形態に係る密閉封止した集積回路の異なる3次元表示図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る多孔性陰極下部層を有する電池の一実施形態を示す図である。
【図6A】本発明の代替実施形態に係る多数の密閉封止した集積回路を有する集合体であって、陰極アークで製作した導電性フィードスルーが存在している集合体の異なる断面図である。
【図6B】本発明の代替実施形態に係る多数の密閉封止した集積回路を有する集合体であって、陰極アークで製作した導電性フィードスルーが存在している集合体の異なる断面図である。
【図7A】ICチップであって、陰極アークで製作した厚みのある金属構造物がチップの一側面に向かうアンテナを形成しているICチップの断面である。
【図7B】ICチップであって、厚みのある金属構造物がチップの一側面上にアンテナを形成しているICチップの断面である。
【図8A】接地平面層として機能するインプラント型医療装置の導電性筐体の外面上に形成されたRFパッチアンテナの第一の実施形態の上面略図である。
【図8B】接地平面層として機能するインプラント型医療装置の導電性筐体の外面上に形成されたRFパッチアンテナの第二の実施形態の上面略図である。
【図8C】図8A及び図8Bの線15−15に沿って取得されるRFテレメトリアンテナの側部断面の略図である。
【図8D】筐体内部に形成された接地面を有するインプラント型医療装置の誘電性筐体の外面上に形成されたRFテレメトリアンテナの第三の実施形態の上面略図である。
【図8E】図8Dの線17−17に沿って取得されるRFテレメトリアンテナの側部断面の略図である。
【図8F】インプラント型医療装置の絶縁性誘電性筐体の表面内に形成されたラジエータパッチ層を有するRFテレメトリアンテナの第四の実施形態の上面略図である。
【図8G】図8Fの線19−19に沿って取得されるRFテレメトリアンテナの側部断面の略図である。
【図9A】厚みのある金属構造物でチップに装着する多数の電極を形成したICチップの断面である。
【図9B】厚みのある金属構造物でチップに装着される多数の電極を形成したICチップであって、これら電極が一定の形状に形成されているICチップの断面である。
【図10】本発明の改良型RFテレメトリアンテナを用いたインプラント型医療装置及び外部プログラマの簡易模式図である。
【図11】図10の外部プログラマ及びインプラント型医療装置の主な機能的上下リンクテレメトリ伝送機能の簡易回路ブロック図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る医療診断及び/又は治療プラットフォームのブロック図である。
【図13】本発明の一実施形態に従って自分の体内の種々の場所に植込まれた多数の遠隔装置を有する患者を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、医療装置設計者及び製造者に、医療装置コンポーネントを製作するための重要な新しいツールを提供する。本発明のプロトコル及びシステムを用いれば、医療装置製造者は、以前は作ることができなかった厚みのある無応力金属構造物を製作することができる。更に、以前は製作することができなかった構成の金属無応力構造物が、今は可能になっている。製作可能な他の構造物には、多孔層及び表面が鈍鋸歯状になっている層がある。したがって、本発明は、医療装置設計者の医療装置コンポーネント設計能力を拡大し、かかる新しい設計物の製作を可能にする。
【0012】
本発明を更に詳細に説明する際に、まず陰極アーク製作構造物を具備する医療装置の諸実施形態を概説し、次に構造物を作製するための陰極アーク堆積方法及びその方法を実施するのに用い得るように構成されたシステムを概説する。
(陰極アーク製作構造物を具備するインプラント型医療装置)
前に要約したように、本発明は、陰極アーク製作構造物(1つ又は複数)を具備するインプラント型医療装置を提供する。インプラント型医療装置とは、生体上又は生体内に配設されるように構成された装置を意味し、いくつかの実施形態において、インプラント型医療装置は生体内に植込まれるように構成される。インプラント型装置の実施形態は、体内に見られるような高塩分、高湿環境を含む生理的環境内に2日以上、例えば約1週間以上、約4週間以上、約6ヶ月以上、約1年以上、例えば約5年以上といった期間存在するときに、機能を維持するように構成される。いくつかの実施形態において、インプラント型装置は、約1年〜約80年以上の期間、例えば約5年〜70年以上、更には約10年〜50年以上を含む期間、生理的部位に植込まれたときに、機能を維持するように構成される。本発明のインプラント型医療装置の寸法は、一様にはならないであろう。しかし、インプラント型医療装置はインプラント可能であるため、いくつかの実施形態の装置の寸法は、成人の中に配設できないほど大きいものではない。例えば、インプラント型医療装置は、おそらく人間の脈管構造内に収まる寸法になるであろう。
【0013】
本発明のインプラント型医療装置の機能は、心臓関連装置、薬物送達装置、検体検出装置、神経刺激装置、等を含むが、これらに限定されない非常に広い範囲で変わる可能性がある。したがって、インプラント型医療装置には、インプラント型心臓ペースメーカ、インプラント型除細動器、ペースメーカ除細動器、薬物送達ポンプ、心筋刺激装置、心臓及び他の生理学的モニタ、神経及び筋肉刺激装置、脳深部刺激装置、人工内耳、人工心臓、等があるが、これらに限定されない。本発明の各種様式のインプラント型医療装置の例示的実施形態を、以下で更に詳細に概観する。
【0014】
前に要約したように、本発明のインプラント型医療装置は、陰極アークプラズマ堆積プロセスによって製作された1つ又は複数の構造物を具備する。陰極アークプラズマ堆積システムの例を図1に示す。イオンビーム堆積の一形式である陰極アークプラズマ堆積では、陰極1と陽極3との間で電気アークが発生し、この電気アークが陰極からのイオンを陰極から放ち、それによってイオンビーム5を発生させる。こうして発生したイオンビーム、即ち陰極材料イオンのプラズマは次いで、基板6(即ち、構造物が製作されることになる材料)表面と接触し、陰極材料製の構造物4が基板表面上に堆積する。いくつかの実施形態では、基板が存在する雰囲気から得られたエレメント(1つ又は複数)も基板表面上に堆積する。例えば、図1を参照されたい。所望の場合、例えば生成構造物が陰極材料と、1つ又は複数の別のエレメント(炭素、窒素、等)との化合物である場合、対象とする1つ又は複数の別のエレメント用原料ガスを導入するためのガス注入口7が設けられていてもよい。更に図1には、中性マクロ粒子2が示されている。これらマクロ粒子は、所望に応じて、堆積前にプラズマから濾過してもよければ、しなくてもよい。
【0015】
本発明の陰極アーク製作構造物は、いくつかの実施形態において、厚みのある無応力金属構造物である。いくつかの実施形態において、構造物の厚みは、約0.1μm〜約150μmといった、約0.01μm〜約500μmの範囲にある。いくつかの実施形態において、構造物は、約25μm以上といった約1μm以上の厚みである。約50μm以上を含み、この場合、厚みは、約75μm、85μm、95μm又は100μmもの厚み、或いはそれ以上の厚みであってもよい。いくつかの実施形態において、構造物の厚みは、約10μm〜約100μmといった、約1〜約200の範囲にある。
【0016】
陰極アーク製作構造物は、いくつかの実施形態において、無応力である。「無応力」とは、構造物に、その構造物の機能を低下させるような欠陥がないことを意味する。したがって、「無応力」とは低レベルの応力であって、堆積している基板から構造物を剥離せしめるといった引き離す応力よりも低いレベルの応力を意味する。したがって、構造物には、亀裂、間隙、穴、又は他の欠陥がない。特に、構造物が装置の内部容積を封止する能力、導電性エレメントとして機能する能力、といった構造物の機能を低下させるような欠陥はない。図2A〜2Dは、本発明の一実施形態に従って製作されたプラチナの無応力層の写真を示す。
【0017】
更に他の実施形態において、構造物は表面が鈍鋸歯状の層である。表面鈍鋸歯物とは、ノッチ又は割れ目によって離間されている一連の突起物を意味する。特定の突起の頂部から測定した特定のノッチの深さは、いくつかの実施形態において、約1μm〜約10μmといった、約0.1μm〜約1000μmの範囲にある。図3は、本発明の一実施形態に従って製作された、表面が鈍鋸歯状の10μm厚プラチナ層の写真を示す。更に他の実施形態において、陰極アーク構造物は多孔性構造物である。
【0018】
前に示したように、いくつかの実施形態において、構造物は金属構造物である。いくつかの実施形態において、金属構造物は、生理的適合性金属を具備する構造物である。この場合、対象とする生理的適合性金属には金(au)、銀(ag)、ニッケル(ni)、オスミウム(os)、パラジウム(pd)、プラチナ(pt)、ロジウム(rh)、イリジウム(ir)、チタン(ti)、アルミニウム(al)、バナジウム(v)、ジルコニウム(zr)、モリブデン(mo)、イリジウム(ir)、タリウム(tl)、タンタル(ta)、等があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、金属構造物は単一金属の純金属構造物である。更に他の実施形態において、金属構造物は、1つの金属と、前に列記した金属又はクロム(cr)、タングステン(w)のような他の金属、等の金属を含む1つ又は複数の別のエレメントとの合金であってもよい。更に他の実施形態において、構造物は1つの金属と別のエレメントとの化合物であってもよい。この場合、対象とする化合物には炭化物、酸化物、窒化物等があるが、これらに限定されない。対象とする化合物例には、PtIr、PtTi、TiWのような二元化合物、並びに、炭窒化物等の三元化合物がある。
【0019】
いくつかの実施形態では、非金属構造物が要求される。例えば、いくつかの実施形態において、層は、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素である。これらの実施形態において、方法に用いられる陰極材料は、おそらくグラファイトであろう。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドライクカーボン層は、窒素、金、プラチナのような1つ又は複数の別のエレメントが添加されていてもよい。かかる構造物の用途は、医療インプラント等をコーティングするなど、様々である。
【0020】
いくつかの実施形態において、製作構造物は、第二のエレメントの量が第一の面から第二の面に向かうに従って増量する金属層のような、一方のエレメント及び他方のエレメントに対する勾配を含んでもよい。陰極アーク製作構造物を作ることができる他の材料は、「Metal Binary and Ternary Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」と題する、2007年6月21日に出願され、同時係属中のPCT出願第PCT/US2007/_号(代理人整理番号PRTS−048WO2)に記載されている。その開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0021】
金属構造物が陰極アークで堆積される基板は、種々の異なる材料で作ることができ、種々の異なる構成をとり得る。堆積が生じる基板表面は、平坦であってもよければ、平坦でなくてもよく、例えば種々の穴、トレンチ等を有していてもよい。基板は、シリコン(例えば、単結晶、多結晶、アモルファス、等)、二酸化シリコン(ガラス)、セラミックス、炭化シリコン、アルミナ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ボロン、酸化ベリリウム、等の、多数の異なる材料のうちの任意のもの、とりわけダイヤモンドライクカーボン、焼結材料、等でできていてもよい。基板は、導電性材料と半導電性材料(Ge等)との複合物であってもよく、後述する回路層のような高濃度に不純物を添加し及び/又は加熱した半導体シリコンを含む。この場合、1つ又は複数の導電性エレメントが半導電性支持体又は非導電性支持体上に存在する。
【0022】
主題のインプラント型医療装置の陰極アーク製作構造物は種々の異なる構成をとることができ、インプラント型医療装置に入って、種々の異なる機能を発揮することができる。例えば、いくつかの実施形態において、陰極アーク製作構造物は、インプラント型医療装置のコンポーネントの表面の少なくとも一部を覆う層である。これらの実施形態において、層は、その層の機能によっては表面のほんの一部しか覆わない場合もあれば、全表面を覆う場合もある。層は、多数の異なる目的を有していてもよい。他の実施形態において、陰極アーク製作構造物は、フィードスルー、識別体、アンテナのような非層状構造物である。これらの非層状構造物も、多数の異なる機能を有することができる。ここで、代表的な層状構造物及び非層状構造物について更に詳細に概説する。
層状の構成を有する構造物
直前に要約しているように、いくつかの実施形態において、陰極アーク製作構造物は層状構造物である。層状構造物とは、それらが層状構成を有し、それによって5倍以上、例えば50倍以上、さらには100倍以上などといった、それらの高さより明らかに長い長さ及び幅を有することを意味する。層状構造物の目的により、層は種々の異なる構成をとることができる。
(封止層)
いくつかの実施形態において、層は装置の内部容積をその装置の外部環境から密封するように機能する。この場合、かかる封止層は、装置の単一面上に存在してもよく、或いは、装置の複数の面上に存在してもよく、例えば、封止層は装置の各面上に存在してもよい。いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積構造物は、「Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する、WO2006/069323として公開されたPCT/US2005/046815、及び「Void−Free Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する、2007年4月12日に出願のPCT/US2007/09270に記載の封止層である。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。層は、「Void−Free Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する2007年4月12日に出願のPCT出願第PCT/US2007/09270号に記載されているように、例えば装置全体、即ち装置の全表面、を包囲するために装置全体を封入してもよければ、それのほんの一部を封入してもよい。この開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0023】
陰極アーク製作層を具備するインプラント型医療装置の例は、図4A及び図4Bに示されている。図4Aは、本発明に係る密閉封止構造物の3次元表示図を示す。図4Aにおいて、構造物200は、ホルダ210と、封止層220と、を具備する。この場合、封止層220は、陰極アーク堆積によって堆積されている。封止層220及びホルダ210は、ホルダ内の密閉封止される容積(図示せず)を規定するように構成されている。外部コネクタエレメント212、213、214、215、216、及び217も示されている。これらのエレメントは、ホルダ底面に存在する導電性フィードスルー(図示せず)に結合されている。
【0024】
図4Bは、本発明に係る密閉封止構造物の3次元切欠き図を示す。図4Bにおいて、ホルダ210及び封止層220は、(例えば集積回路を備えた)エフェクタ230を収容し、密閉封止される容積250を規定する。エフェクタ230は、はんだ合金(例えば、鉛錫合金、金錫合金、銀錫合金、又は他の適切な合金)240で、導電性(例えば、プラチナ)フィードスルー又はビア212に、電気的に結合される。
【0025】
いくつかの実施形態において、エフェクタと、ホルダ及び/又は封止層の壁との間の任意の空間は、絶縁材料で満たしてもよい。任意の都合のよい絶縁材料を用いることができる。この場合、代表的絶縁材料には、シリコンオイル、エラストマ、熱硬化性樹脂、熱硬化性プラスチック、エポキシ、シリコーン、液晶ポリマ、ポリアミド、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、セラミックペースト、等の液体があるが、液体に限定されない。
【0026】
本発明の実施形態に従って製作し得る封止層の別の例は、PCT出願公開第WO2006/069323号及び「Void−Free Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する、2007年4月12日に出願された係属中のPCT出願第PCT/US2007/09270号に記載されている。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。
(鈍鋸歯層)
前に要約したように、陰極アーク堆積構造物は、図3にあるように、表面が鈍鋸歯状になっている鈍鋸歯層であってもよい。かかる層は、種々の異なる用途で有用である。
【0027】
例えば、インプラント上に鈍鋸歯状表面を設けることは、骨結合が望まれる用途において有用である。鈍鋸歯層は、堆積金属(例えばPt)、金属化合物(例えばTiO2)のいずれの中にも製作し得る。鈍鋸歯層は、種々の骨インプラント装置上に堆積可能であり、この場合、インプラント装置は、金属インプラント又はPEEK及びPEKKのような重合体のインプラントとすることができる。注目すべき骨インプラント装置には、臀部用インプラント、骨用ねじ、歯用インプラント、プレート、サポートロッド等があるが、これらに限定されない。
【0028】
所望であれば、骨の成長を支援しかつ細菌増殖を抑制するために、鈍鋸歯を活性薬剤で満たしてもよい。対象とする活性薬剤には、有機ポリマ、例えば再吸収、脈管形成、細胞進入及び繁殖、無機化、骨形成、破骨細胞及び/又は破骨細胞の成長、等を促進するといった多数の性質を与える骨関連蛋白質などの蛋白質、この場合、対象とする特定の蛋白質として挙げられるのには、オステオネクチン、骨シアロ蛋白質(Bsp:bone sialoproteins)、α−2HS−糖蛋白質、骨Gla蛋白質(Bgp:bone Gla−protain)、マトリクスGla蛋白質、骨リン糖蛋白質、骨リン蛋白質、骨プロテオグリカン、プロトリピッド、骨形態形成蛋白質、軟骨誘発因子、血小板誘導成長因子、骨格成長因子;微粒子増量剤;NaCl、硫酸カルシウムのような無機水溶性塩;スクロース、フルクトース、及びグルコースのような糖;抗生物質(ゲンタマイシン等)のような薬学的に活性な薬剤、等があるが、これらに限定されない。
【0029】
鈍鋸歯層は、骨インプラント装置以外の装置上の活性薬剤貯蔵部としても重要である。例えば、一定の医療用途において、活性薬剤塗布ステントは重要である。かかる装置は、層のノッチ又は割れ目が対象とする活性薬剤用の貯蔵部又は貯臓器の働きをする、本発明の鈍鋸歯層を具備する。この場合、例えば圧力を加えて溶液中の薬剤を表面に浸透させることによって、鈍鋸歯を満たすことができる。対象とする活性薬剤には次のものがあるが、これらに限定されない。(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、及びPPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン)等の抗血小板剤。(b)デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、及びメサラミン等の抗炎症剤。(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻止できるモノクローナル抗体、及びチミジンキナーゼ抑制剤、等の抗腫瘍/抗増殖/抗縮瞳剤。(d)リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、等の麻酔剤。(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン抑制剤、血小板抑制剤、及びマダニ抗凝固ペプチド、等の抗凝血剤。(f)成長因子、転写アクティベータ、及び翻訳促進剤、等の血管細胞成長促進剤。(g)成長因子抑制剤、成長因子受容体拮抗薬、転写リプレッサ、翻訳リプレッサ、複製抑制剤、阻害抗体、成長因子を抑制する抗体、成長因子及び細胞毒素から構成される二官能性分子、抗体及び細胞毒素から構成される二官能性分子、等の血管細胞成長抑制剤。(h)蛋白質キナーゼ抑制剤及びチロシンキナーゼ抑制剤(例えば、チルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)。(i)プロスタサイクリンアナログ。(j)コレステロール降下薬剤(k)アンジオポエチン。(l)トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、及びニトロフラントイン等の抗菌薬剤。(m)細胞毒性薬剤、細胞増殖抑制薬剤、及び細胞増殖アフェクタ。(n)血管拡張薬剤。(o)内因性血管作用機構と干渉する薬剤。(p)単クローン抗体等の白血球動員の抑制剤。(q)サイトカイン。(r)ホルモン。いくつかの実施形態において対象となるものは、デキサメタゾン等の糖質コルチコステロイドのような抗炎症薬剤である。
(多孔層)
多孔性陰極アーク堆積層も重要である。多孔性陰極アーク堆積層は、これらに限定するものではないが、電極、インプラントコーティング等の種々の異なる医療装置コンポーネントに有用である。陰極アーク製作多孔層が有用となる重要なコンポーネントの1つのタイプは、高表面積電極コンポーネントである。この場合、かかるコンポーネントは、例えばエフェクタ(センサ又は刺激装置等)、電源のコンポーネント等として、種々の異なるインプラント型装置に有用である。
【0030】
本発明の進歩的電池の実施形態は、高表面積陰極を有する構造物を具備する。高表面積陰極とは、電池内の陰極によって覆われている中実支持体(solid support)の表面積に対して、約2倍以上、例えば約10倍以上といった表面積を有する陰極を意味する。いくつかの実施形態において、電極の活性領域は、電極の基本的幾何学形状から生まれる該当の表面積に対し、10−3以上、例えば10−7以上、更には10−9以上といったの表面積を有する。いくつかの実施形態において、陰極の表面積は、約0.01mm2〜約100mm2、例えば約0.1mm2〜約50mm2、更には1mm2〜約10mm2といったの範囲にある。いくつかの実施形態において、高表面積陰極は、活性陰極材料製の陰極を多孔性下部層上に存在させることによって得られる。更に、電池は、中実支持体の表面上に存在する陽極を具備する。
【0031】
特定の実施形態によっては、陰極及び陽極は、同一の支持体上に存在する場合があり、或いは、異なる支持体上に存在する場合がある。例えば「フリップチップ」実施形態にあるように、2つ以上の異なる支持体が、電池構造物を製作するように互いに連結されているような場合である。同様に、特定の電池内の陰極及び陽極の個数は、実施形態によって大きく異なる場合がある。例えば、特定の実施形態が1つの陽極と1つの陰極とを有する単一電池、多数の陽極及び/又は陰極を有する単一電池、或いは、それぞれが1つ又は複数の陰極及び/又は陽極でできている2つ以上の個別電池を具備するような場合である。対象とする電池構成には、「Pharma Informatics System Power Source Having High Surface Area Cathodes」と題する、2007年2月14日に出願の特許出願第60/889,870号があれるが、これに限定されない。この開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0032】
図5は、本発明に係る電池の概略図を示す。図5に示される電池100は、上面140を有する中実支持体120を具備する。上面140上に陰極160及び陽極180が存在する。陰極160は、多孔性下部層150と、活性陰極材料170と、を具備する。ここで、以下にこれらエレメントのそれぞれを更に詳細に説明する。図示されている実施形態は、陰極が多孔性下部層を具備するものであるが、いくつかの実施形態では、陽極が多孔性下部層を具備しており、更に他の実施形態においては、陰極と陽極が共に多孔性下部層を具備する。
【0033】
多孔性下部層150は、活性陰極材料170を機械的に支持しかつ陰極材料と中実支持体120(更に詳細に後述する)上に存在する回路のようなエレメントとの間の電流経路を提供する層である。多孔性下部層は、銅、チタン、アルミニウム、グラファイトのような導電性材料等の種々の異なる材料から作製可能である。この場合、その材料は、純度の高い材料とすることができ、或いは、合金等で見られるように、2つ以上のエレメントでできた材料とすることができる。下部層の厚みは様々であろう。いくつかの実施形態において、厚みは、約0.01約μm〜約100μm、例えば約0.05約μm〜約50μm、更には約0.01約μm〜約10μmといったの範囲にある。中実支持体上における多孔性下部層の長さ及び幅の寸法は、所望に応じて、活性陰極材料の寸法と同一の広がりをもっていてもよく、そうでなくてもよい。
【0034】
前に要約したように、陰極下部層は粗状であっても多孔性であってもよい。下部層の多孔度又は粗度は、所望の表面積を陰極に提供している限り、一定でなくてもよい。いくつかの実施形態において、陰極下部層の多孔度又は粗度は、有効表面積が、多孔性下部層がない等価な陰極から得られる面積に対し、約2倍〜約100倍以上、例えば約2倍〜約10倍以上、更には約1.5倍以上〜約1000倍以上に拡大されるように選択される。表面積拡大度は、粗状電極又は多孔性電極の電気機械的容量又はサイクリックボルタモグラムを同一材料の平滑な電極のものと比較することにより求めることができる。粗度は、原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscopy)、電子顕微鏡、又はブルナウアー・エメット・テーラー(BET:Brunauer−Emmett−Teller)解析、等の他の技術によって求めることも可能である。
【0035】
本発明によれば、陰極アーク堆積プロトコルは、所望の多孔性陰極下部層を製作するのに用いられる。かかるプロトコルにおいて、例えば上述したように、多孔性陰極下部層の所望の構造を製作するのに十分な条件下で、陰極アーク生成金属イオンプラズマが120のような基板の表面と接触する。陰極アークが発生する金属イオンのイオンプラズマビームは、任意の都合のよいプロトコルを用いることによって発生させることができる。後で詳述するように、陰極アークプロトコルによってイオンビームを生成するのに、陰極材料イオンのイオンビームを発生させるのに十分な電力の電気アークを、陰極と1つ又は複数の陽極との間に発生させる。こうして発生したビームは、イオンが基板表面と接触し、基板表面上に陰極材料を具備する構造物を製作する態様で、基板の少なくとも1つの表面に誘導される。
【0036】
多孔性陰極(又は陽極)下部層の上面上に、活性陰極(又は陽極)材料が存在する。活性陰極材料は、種々の異なる材料を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、陰極材料には銅があるが、いくつかの実施形態では、陰極材料としてヨウ化第一銅(CuI)又は塩化第一銅が特に重要である。電池の電圧を高めるといった要望がある場合には、硫黄等の別のエレメントを活性材料に添加してもよい。活性陰極材料は、電気めっきのような電着又は化学気相成長のような蒸着、等の任意の都合のよいプロトコルを用いて、多孔性下部層上に設けることができる。陽極材料は、種々の異なる材料を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、陽極材料にはマグネシウム(Mg)金属又はマグネシウム合金がある。活性陽極材料は、電気めっきのような電着又は化学気相成長のような蒸着、等の任意の都合のよいプロトコルを用いて、多孔性下部層上に設けることができる。
【0037】
非層状の構成を有する構造物
いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積構造物は、医療装置の非層状3次元構成コンポーネントであり、かかるコンポーネントは、構成及び機能が大幅に変わる可能性がある。後で更に詳細に説明される主題の堆積プロトコルを用いて製作可能な対象の3次元コンポーネントには、インプラント型医療装置に見られるビア又は他の導電線のような導電性エレメント、アンテナのような通信エレメント、装置上の識別マーキングのような識別コンポーネント、撮像中の装置の方位を設定するのに用いられる表面エレメントのような方位制御コンポーネント、電極のような組織相互作用エレメント等のエフェクタ、等があるが、これらに限定されない。
【0038】
(ビア及び類似構造物)
いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積構造物は、装置の3次元導電性エレメントである。いくつかの実施形態において、導電性エレメントは、装置の2つの個別の構造物を導電状態で接続するように機能する。いくつかの実施形態において、導電性エレメントはビアである。この場合、ビアは、装置の高アスペクト比の経路内に存在することができる。高アスペクト比経路とは、高さの幅に対する比が、約1〜約50といった最大で約100又はそれ以上である経路を意味する。
【0039】
図6Aは、本発明に係る陰極アーク製作導電性フィードスルーを具備する密閉封止構造物の断面図を示す。この実施形態において、ホルダ300は、例えばアレイ状に、隣り合わせに配設された2つの個別のウェル311及び312を具備する。この場合、各ウェルは、2つの異なるエフェクタ313及び314(例えば、集積回路)を収容している。各ウェルは、側部315と、底部316と、を具備する。各ウェルの底部には、陰極アーク製作導電性フィードスルー317、318、319、及び320も示されている。集積回路313及び314のトレース331、332、333及び334を導電性フィードスルーに電気的に結合しているのは、はんだ接続部321、322、323、及び324である。異なるはんだ接続部を相互に分離しているのは、絶縁材料340である。図示していないが、エフェクタとホルダのウェルの側部/底部との間の空間内には、適切な絶縁材料も存在することができる。更に、図6Aには示されていないが、フィードスルーの対向面上には封止層が存在する。図6Aの図面は2つの異なる集積回路しか密閉封止されていない様子を示しているが、本発明の構造物はもっと多くの集積回路、例えば4個、5個、6個、又はそれ以上の回路を、任意の都合のよい配置で具備していてもよい。1つのパッケージに多数のチップを備える設計の一実施形態は、より高い電圧に耐えるように作製又はさもなければ設計されたチップを、組立体の1つのセクション内に有することである。一緒に搭載されるチップは、第一のチップよりも電圧耐性が低い。しかし、それには、心臓ペーシングからの高電圧又は組立体の別の部分からの他のコンポーネント要求に耐える能力は必要ないであろう。これらのチップは、例えば同一ウェル又は隣り合うウェルに入れられて、両方とも同一の密封パッケージに収納され、次に、はんだ付けプロセスが施され、次いで、絶縁材料で(即ち、ポッティングされて)所定位置に固着され、例えば後で概観するように平坦化又はラップバックが行われ、次いで、封止層で被覆される。
【0040】
上記の例は、2つのチップを、発明による単一の進歩的耐腐食性密封パッケージに相乗的に収める手引きを提供しているが、これらの組立体は、最大で4個、5個、6個、又はそれ以上の個数のチップを単一の組立体で扱うことができる。かかる大型組立体には、これら組立体を相互に上に積載して、密閉保護される医療装置コンポーネントにより多くの機能を加えることができるという利点もある。
【0041】
図6Bにおいて、構造物350は、ウェル366を画定する側部362及び底部364を有するホルダ360を具備する。ウェル366内には、相互に上に積載された2つの異なるエフェクタ371及び372がある。各ウェルの底部には、陰極アーク製作導電性フィードスルー381及び382も示されている。集積回路371のトレース373及び374を導電性フィードスルーに電気的に結合しているのは、はんだ接続部391及び392である。異なるはんだ部を相互に分離しているのは、絶縁材料370である。図示していないが、エフェクタとホルダのウェルの側部/底部との間の空間内には、適切な絶縁材料も存在することができる。更に、図6Bには示されていないが、フィードスルーの対向面上には封止層が存在する。
【0042】
通信エレメント
前に概観したように、対象とする陰極アーク製作構造物は、アンテナ構造物を具備する。陰極アーク堆積プロセスの性質のおかげで、以前は実現されなかったアンテナ構造物を、今は容易に製作することができる。アンテナ構造物は、直線的な場合もあれば、湾曲しているなど、非直線的な場合もあり、所望に応じて2次元構成の場合もあれば、3次元構成の場合もある。
【0043】
陰極アーク堆積プロトコルによって容易に製作される本発明の実施形態に係る非直線的アンテナの一実施形態が、図7A及び図7Bに示されている。図7Aは、ICチップの断面を示しており、この場合、陰極アーク堆積による厚みのある金属構造物が、チップの一側面に向かうアンテナを形成している。厚みのある金属は、支柱なしで立っている。厚みのある金属は、基板で支持することも可能である。図7Bは、ICチップの断面を示しており、この場合、厚みのある金属が、チップの1つ又は複数の側面上にアンテナを形成している。これらの図面に図示された厚みのある金属アンテナは、適切なマスクを用い、そのマスクを介して支持体上にアンテナ構造物を堆積させることによって、容易に製作される。
【0044】
更に他の実施形態において、本発明のインプラント型医療装置は、陰極アークプラズマ堆積プロセスによって製作される、1つ又は複数のマイクロストリップ型パッチアンテナを具備する。本発明のマイクロストリップ型パッチアンテナは、誘電体基板の表面上に存在する導電性ラジエータパッチ層を具備する。いくつかの実施形態において、導電性接地面層も、例えばラジエータ導電性層に対向する誘電体基板表面上に存在する。医療装置において、ラジエータパッチ層を、誘電体基板層及び接地面層を貫通して延在するフィードスルーによって、その医療装置の送受信回路に結合してもよい。本発明の特徴は、陰極アーク堆積プロセスを用いてラジエータパッチ層を作製することである。このプロセスでは、パッチ層は、陰極アークプラズマ堆積プロトコルを用いて誘電体基板表面上に堆積される。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明のマイクロストリップ型パッチアンテナの陰極アーク製作導電性ラジエータパッチ層は、例えば上記で説明したような厚みのある無応力の金属構造物である。パッチ層の物理的寸法は、特定の装置構成及びアンテナの使途によって異なる場合があり、いくつかの実施形態において、寸法は、アンテナが約300〜約600MHz、例えば約350〜約450MHz、更には約200〜約800MHzの動作周波数を有するように選択される。いくつかの実施形態において対象となるものは、例えば約400〜約410MHz、例えば約402〜約405MHz、更には約400〜約425MHzの範囲の動作周波数を有するアンテナである。いくつかの実施形態において、パッチ層の厚みは、約0.01μm〜約500μm、例えば約0.1μm〜約150μmの範囲にある。いくつかの実施形態において、構造物は、約1μm以上、例えば約25μm以上、更には約50μm以上といったの厚みである。この場合、厚みは、約75μm、85μm、95μm又は100μmもの厚み、或いはそれ以上の厚みであってもよい。いくつかの実施形態において、構造物の厚みは、約1〜約200、例えば約10μm〜約100μmの範囲にある。いくつかの実施形態において、パッチ層の表面積は、約1cm2〜約10cm2、例えば約1cm2〜約4cm2の範囲にある。いくつかの実施形態において、パッチ層の最長寸法(例えば直径)は、約1cm〜約10cm、例えば約1cm〜約6cmの範囲にある。
【0046】
前に示したように、マイクロストリップ型パッチアンテナ構造物は、ラジエータパッチ層を具備し、このパッチ層は、いくつかの実施形態において、金属層である。いくつかの実施形態において、金属構造物は、生理的適合性金属を具備する構造物である。この場合、対象とする生理的適合性金属には金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、イリジウム(Ir)、タリウム(Tl)、タンタル(Ta)、等があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、金属構造物は単一金属の純金属構造物である。更に他の実施形態において、金属構造物は、1つの金属と、前に列記した金属又はクロム(Cr)、タングステン(W)のような他の金属、等の金属を含む1つ又は複数の別のエレメントとの合金であってもよい。更に他の実施形態において、構造物は1つの金属と別のエレメントとの化合物であってもよい。この場合、対象とする化合物には炭化物、酸化物、窒化物等があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において特に重要なものは、プラチナを具備する層であり、かかる層は、純プラチナ又はプラチナと別のエレメントとの組合わせとすることができる。対象とする化合物例には、PtIr、PtTi、TiWのような二元化合物、並びに、炭窒化物等の三元化合物がある。
【0047】
金属構造物が陰極アークで堆積される基板は、種々の異なる材料でできていてもよく、種々の異なる構成になっていてもよい。堆積が起こる基板表面は、2次元的であってもよければ、非2次元的であってもよく、例えば種々の穴、トレンチ等を有していてもよい。例えば、基板内の穴は、上述しかつ2006年6月22日に出願した係属中の米国仮特許出願第60/805,576号で更に詳述しているように、パッチ層の堆積後にフィードスルーとして表面に現れてもよい。この開示は、参照により本明細書で援用されている。基板は、多くの異なる材料のうちの任意のもので作ることができる。この場合、これらに限定されないが、シリコン(例えば、単結晶、多結晶、アモルファス、等)、二酸化シリコン(ガラス)、セラミックス、テフロン(登録商標)等の誘電体材料は重要である。
【0048】
パッチ層及び基板の他に、主題のマイクロストリップアンテナも接地面層を具備することができる。接地面層は任意の適切な導電性材料で作製することができ、いくつかの実施形態において、例えばインプラント型医療装置の導電性筐体のような、アンテナが動作可能に結合される装置の一部とすることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、パッチ層を体液から保護するように機能する保護層、例えば適切な誘電体材料から作製された層、でパッチ層を覆うことも可能である。いくつかの実施形態において、この保護層を、米国特許第5,861,019号に記載されているようなレードーム構造物として構成してもよい。この開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0050】
図8A〜8CはRFテレメトリアンテナ28、28’の第一の実施形態及び第二の実施形態を図示している。アンテナはそれぞれ円形及び正方形(又は矩形)のRFパッチアンテナプレート、即ち層30及び30’、を用い、誘電体基板層36及び接地面層48を覆って形成されている。接地面層48は、インプラント型パルス発生器(IPG:inplantable pulse generator)装置12の導電性筐体13の一部である。フィードスルー50のフィードスルーピン52が、接地面層48に装着されたフェルール54を貫通しかつ誘電体基板層36内の心合した穴38及びラジエータパッチ層30、30’内の穴60を貫通して延在している。フィードスルーピン52の端部は、溶接等によって穴60に装着されている。心合した穴38及び60並びにフィードスルー50の実際の場所は、RFテレメトリアンテナ28、28’と、関連のIPG送受信器との間のインピーダンス整合が最適になるように設計時に選択することができる。
【0051】
ラジエータパッチ層30、30’及び平行の接地面層48の面積は、IPGRFテレメトリアンテナのRF周波数に影響する。いくつかの実施形態において、接地面層48領域は、ラジエータパッチ層30、30’領域を超える。IPG筐体13の主要な平坦外面の大部分を覆うようにラジエータパッチ層30、30’の寸法及び下にある誘電体層36の寸法を設定することが必要な場合に、IPGのRFマイクロストリップアンテナの特性は損なわれる。この場合、外部筐体13は、へこみの深さが誘電体基板層36の厚みに対応する深さで、へこみの直径又は長さと幅がラジエータパッチ層30、30’に対応する直径又は長さと幅である円形筐体凹部40の形態でへこんでいることが好ましい。マイクロストリップアンテナ接地面48の面積を効果的に増大させる接地面層48の筐体凹部40は、ラジエータパッチ層30、30’と略共面の、外方向に突出した接地面突出層48’’を提供する。
【0052】
体液内及び組織内におけるIPGRFテレメトリアンテナの特性を向上させるために、そうしなければ露出するラジエータパッチ層30、30’表面上に、レードームとして機能する誘電体レードーム層を用いることが望ましい。かかる例示的レードーム層56が図9に図示されている。このレードーム層は、前に列挙した誘電体材料で形成することができる。レードーム層56は、ラジエータパッチ層30、30’、誘電体層36、及び外方向に延在し、筐体凹部40を包囲している端部48’’の外面を超えて、インプラント型医療装置13の小さな湾曲端面の方に、適切な距離だけ延在している。
【0053】
第一の実施形態及び第二の実施形態において、導電性筐体13及び接地面層48は、例えばチタンのような、生体適合性金属で形成される。インプラント型医療装置がユニポーラのIPGであるときは、筐体13の露出する表面部は、他の電気信号感知機能及び刺激機能用の不関プレート電極として用いられる。露出した不関電極表面は、RFテレメトリアンテナ28が配置される側部に対向するIPG筐体13の比較的平坦な主要側面上にあってもよい。RFテレメトリアンテナ28を皮膚表面に面するように配置することは、テレメトリ効率にとって有利であり、不関電極表面を内向きに配置することは、電気信号を感知することと、電気的刺激効率の両方にとって有利である。当該技術分野では公知であるように、RF上下リンクテレメトリ伝送をインプラント型医療装置の動作と同期させて、装置動作が電気的刺激及び/又は感知を要する期間を回避することができる。但し、本発明を実施する上で、このことが必要ではない場合もある。
【0054】
図8D及び図8Eは、IPG12の誘電体セラミック筐体13’の外面上に形成されたラジエータパッチ層を備えかつIPG筐体13’の内面上に導電性層として形成された接地面層48’を有するRFテレメトリアンテナ28の第三の実施形態を図示している。したがって、この実施形態において、誘電体IPG筐体13’は、接地面層48’とラジエータパッチ層30、30’との間に配置された誘電体基板層36’を構成しかつ提供する。接地面層48’がIPG筐体内の内部回路コンポーネントから電気的に絶縁されていることは、理解されるであろう。この実施形態は、誘電体層穴38を充填しかつラジエータパッチ層30、30’内面と当接するフィードスルーピン52の別の形式も例示している。この場合、ラジエータパッチ層30、30’は、厚みのあるフィルム若しくは薄いフィルムの堆積又は金属層の接着によって、誘電体IPG筐体の外面を覆って最適に形成される。ラジエータパッチ層30、30’を穴38内に、それを充填するのに必要なだけ延在するようにかつフィードスルーピン52端部と電気的に緊結するように、形成してもよい。
【0055】
この実施形態において、もし接地面層48’がラジエータパッチ層35’に対して面積が十分大きくなければ、ラジエータパッチ層30、30’の周辺部周囲に延長しかつそこから離間して、リム、即ちリング状の導電性接地面延長層48’(破線で示す)、を形成することが必要であろう。接地面延長層48’’は、誘電体層36’を貫通する1つ又は複数のめっきスルーホールのような少なくとも1つの接続部で、接地面層48’に電気的に接続される。或いは、図8A〜8Cの実施形態の配置をまねて、医療装置非導電性筐体13’の主側面で作製される単一の皿状の層として接地面層48を設けることによって、この電気的接続を達成してもよい。
【0056】
いずれの変形例においても、レードーム層56を、ラジエータパッチ層30、30’、誘電体層36’、及びリング状接地面延長層48’’(もしあれば)の少なくとも一部を覆って、上述の材料の1つを用いて形成することも可能である。
【0057】
図8F及び図8Gは、絶縁性誘電体IPG筐体13’内の層として形成されたラジエータパッチ層30、30’を有するRFテレメトリアンテナ28の第四の実施形態を図示している。この実施形態において、非導電性筐体13の外面層は、レードーム層56’として機能する。接地面層48’は、IPG筐体13’内面上に又はその中に、上記の態様で導電性層として形成される。接地面延長層48’’(破線で示す)も、上述したように、絶縁性誘電体IPG筐体13’内のラジエータパッチ層30、30’と略共面である層として形成されかつ接地面層48と電気的に接続される。
【0058】
主題のアンテナが有用となるインプラント型パルス発生器は、様々な構成が可能である。しかし、かかる装置は、典型的には、電源エレメントと、電気的刺激制御エレメントと、を具備し、これらエレメントは、例えば筐体内収容物の密閉封止構造体を提供するような筐体内に存在する。例えばIS−1インターフェイスを介して装置に電気的に結合されるものとして、1つ又は複数の電極がそれらの長さ方向に沿って配設される1つ又は複数の心血管リード(即ち、長尺の構造物)が考えられるであろう。いくつかの実施形態において、リードは、4個以上、8個以上、12個以上、16個以上、20個以上、30個以上、50個以上といった2個以上の電極がそれの長さ方向に沿って配設された多重電極(即ち、多重化)リードである。リードは、遠位の電極をIPG内にある制御エレメントに電気的に結合するために、例えばワイヤのような1つ又は複数の導電性部材を具備してもよい。したがって、リードは1本ワイヤのリード又は2本ワイヤのリードであってもよく、3本以上のワイヤを具備してもよい。しかし、いくつかの実施形態において、例えばリードのような導電性エレメントの個数は、リード上の電極の個数より少ない。いくつかの実施形態において対象となるものは、リード上の各電極を個別にアドレスで呼び出せる多重電極リードである。かかるリードには、これらに限定するものではないが、PCT出願公開第WO2004/052182号及び米国特許出願第10/734,490号に記載のものがある。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。いくつかの実施形態において、例えば刺激対象の組織/器官内により良好に電流を分布させるために、リード上の電極はセグメント化されている。かかる実施形態において、セグメント化電極は、「Methods and Apparatus for Tissue Activation and Monitoring」と題する、2005年9月1日に出願のPCT出願第PCT/US2005/031559号に開示されているように、多重化回路等のリード内の集積回路(IC:integrated circuit)の使用とは無関係にペース及びセンスを行うことができる。この開示は、参照により本明細書で援用されている。ICにより各電極をアドレスで個別に呼び出せるようになるので、それぞれは個別に、或いは医療装置上の他の電極との組合せで、起動され得る。さらに、IC上の多重化回路の支援を受けて新規かつ新奇な組合せでペースを行うのに、それらを用いてもよい。4つのセグメント化された電極が群として(as a band)リードの周りに構成されているクワドラント電極構成を有するセグメント化電極は重要である。リードは、1個又は例えば2個以上、3個以上、4個以上、5個以上といった複数個のかかる群を具備してもよい。対象とするセグメント化電極構造物には、2005年12月22日に出願のPCT出願第PCT/US2005/046811号、並びに、2006年4月18日に出願され係属中の米国仮特許出願第60/793,295号及び2006年7月13日に出願の第60/807,289号に記載された構造物がある。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。いくつかの実施形態において、各セグメント化電極構造物に含まれるICは、例えば2005年12月22日に出願のPCT出願第PCT/US2005/046815号及び2006年4月12日に出願され係属中の米国仮特許出願第60/791,244号及び2006年6月22日に出願の第60/805578号に記載されているような密閉封止ICである。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0059】
図8A〜8Gに図示されている実施形態はIPGであるが、主題のアンテナは、種々の異なる様式の医療装置のうちの任意のものに使用可能である。前に概観したように、かかる装置には心臓装置、薬物送達装置、検体検出装置、神経刺激装置等があるが、これらに限定されない。したがって、主題のアンテナを用いることができるインプラント型医療装置には、インプラント型心臓ペースメーカ、インプラント型心臓除細動器、ペースメーカ除細動器、例えばインプラント型薬物送達ポンプのような薬剤投与装置、心筋刺激装置、心臓及び他の生理学的モニタ、神経及び筋肉刺激装置、脳深部刺激装置、人工内耳、人工心臓、等があるが、これらに限定されない。
【0060】
「Medical Devices Comprising Cathordic Arc Produced Microstrip Antennas」と題する、2006年10月25日に出願の米国仮特許出願第60/862,928号を見れば、本発明のマイクロストリップアンテナに関する更なる説明が見つかるであろう。
【0061】
(エフェクタ)
いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積構造物は、インプラント型医療装置のエフェクタのコンポーネントである。「エフェクタ」という用語は、本明細書では全般的に、センサ、アクティベータ、センサ/アクティベータ、アクチュエータ(例えば電気機械的又は電気的なアクチュエータ)又は所望の機能を実行するのに用いられる任意の他の装置を指すのに用いられている。例えば、いくつかの実施形態では、エフェクタはトランスデューサ及び(例えば、集積回路(デジタル又はアナログの形態の)プロセッサを具備する。したがって、本発明の実施形態は、エフェクタが集積回路を備えている実施形態を含む。「集積回路」(IC)という用語は、本明細書では、電子コンポーネント及びそれらの接続部でできた非常に小型の複合体であって、材料の小片、即ちシリコンチップ等のチップ、の中又はその上に製作される複合体を指すのに用いられている。いくつかの実施形態において、ICは、「Methods and Apparatus For Tissue Activation And Monitoring」と題する、2005年9月1日に出願のPCT出願第PCT/US2005/031559号に記載されているようなICである。この開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0062】
エフェクタは、これらのデータに限定するものではないが、圧力データ、容積データ、寸法データ、温度データ、酸素又は二酸化炭素濃度データ、ヘマトクリットデータ、導電率データ、電位データ、pHデータ、化学データ、血流速度データ、熱伝導率データ、光学特性データ、断面積データ、粘度データ、放射データ、等のデータの収集を目的とする場合がある。したがって、エフェクタは、温度センサ、加速度計、超音波送信器又は受信器、電圧センサ、電位センサ、電流センサ、等のセンサであってもよい。或いは、エフェクタは、電流又は電圧を供給する、電位を設定する、物質又は領域を加熱する、圧力変動を誘導する、材料又は物質を開放又は捕獲する、発光する、音波又は超音波エネルギーを発する、輻射する、といったアクチュエーション又はインターベンションを目的としてもよい。
【0063】
対象とするエフェクタには、本出願の少なくとも一部の発明者によって以下の出願に記載されているエフェクタがあるが、これらに限定されない。「Method And System For Monitoring And Treating Hemodynamic Parameters」と題する、20040193021として公開された米国特許出願第10/734490号、「Method And Apparatus For Tissue Activation And Monitoring」と題する、20060058588として公開された米国特許出願第11/219,305号、「Implantable Addressable Segmented Electrodes」と題する国際出願第PCT/US2005/046815号、「Implantable Accelerometer−Based Cardiac Wall Position Detector」と題する米国特許出願第11/324,196号、「Method and Apparatus for Enhancing Cardiac Pacing」と題する米国特許出願第10/764,429号、「Methods and Systems for Measuring Cardiac Parameters」と題する米国特許出願第10/764,127号、「Method and System for Remote Hemodynamic Monitoring」と題する米国特許出願第10/764,125号、「Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する国際出願第PCT/US2005/046815号、「Fiberoptic Tissue Motion Sensor」と題する米国特許出願第11/368,259号、「Implantable Pressure Sensors」と題する国際出願第PCT/US2004/041430号、「Implantable Doppler Tomography System」と題し、米国仮特許出願第60/617,618に対して優先権を主張している米国特許出願第11/249,152号、「Cardiac Motion Characterization by Strain Gauge」と題する国際出願第PCT/USUS05/39535号。これらの出願は全体が、参照により本明細書で援用されている。
【0064】
本発明の実施形態に従って製作し得るエフェクタの例は、電極である。図9Aは、ICチップの表示図を示しており、この場合、厚みのある金属がチップに装着される多数の電極を形成している。電極は、支柱なしで立たせてもよく、基板で支持してもよい。電極は、電解質電極であることに加え、容量性であってもよい。図9Bは、これら電極が一定の形状に形成されているICチップの断面を示す。
【0065】
(識別体コンポーネント)
前に要約したように、対象とする陰極アーク構造物は、医療装置識別体及び/又は方位制御エレメントも具備する。例えば、放射線不透過材料から作製される単語、シンボル、バーコードのような陰極アーク製作識別体をインプラント型医療装置上に設けてもよい。装置のインプラント後、装置の識別情報は、装置を撮像し、識別体から識別情報を取得することにより、切開手術を行うことなしに容易に取得することができる。識別体は単語、シンボル、バーコード等の形態とすることができる。この場合、識別体は、装置の様式、装置の製造業者、装置を一意的に識別するための装置のシリアル番号等の種々の様式のインプラント情報を提供することができる。識別体が提供する情報をデータベースと相互参照することにより、装置のインプラント時期、装置のインプラント者、等の別の情報を、適切なデータベースから容易に取得することができる。この情報はすべて、切開手術を行って実際に直接的に装置にアクセスせずとも、適切な非侵襲式撮像プロトコルで装置を撮像することにより取得することができる。
【0066】
更に、対象とする陰極アークエレメントは、放射線不透過性バンドのような方位制御エレメントを具備する。この場合、かかるエレメントは、インプラント時に装置の適切な位置決めを援助することができる。例えば、非放射線不透過性(non‐radioopaque)ステントを、陰極アーク製作方位制御エレメントをその外面上に具備するように改造してもよい。この場合、かかるエレメントが、インプラント時のステントの位置決めを援助する。
【0067】
(方法)
陰極アーク製作構造物を具備するインプラント型医療装置を製造する方法についても説明する。この場合、方法は陰極アーク堆積プロトコルを用いた構造物の製作を含む。
【0068】
本発明の方法は、例えば上記で説明したように、陰極アークが発生する金属イオンプラズマを、インプラント型医療装置の所望の構造物を製作するのに十分な条件下で、基板表面と接触させることを含む。陰極アークが発生する金属イオンのイオンプラズマビームは、任意の都合のよいプロトコルを用いることによって発生させることができる。陰極アークプロトコルによってイオンビームを生成する際に、十分な電力の電気アークが、陰極と1つ又は複数の陽極との間に発生し、その結果、陰極材料イオンのイオンビームが発生する。こうして発生したビームは、イオンが基板表面と接触し、基板表面上に陰極材料を具備する構造物を製作する態様で、基板の少なくとも1つの表面に誘導される。例えば、図1を参照されたい。陰極アーク堆積による構造物を製作するためのプロトコルは、任意の都合のよいものを使用して構わない。この場合、本発明での使用に応用できる当該技術分野で公知のプロトコルは下記に記載のものがあるが、これらに限定されない。米国特許第6,929,727号、第6,821,399号、第6,770,178号、第6,702,931号、第6,663,755号、第6,645,354号、第6,608,432号、第6,602,390号、第6,548,817号、第6,465,793号、第6,465,780号、第6,436,254号、第6,409,898号、第6,331,332号、第6,319,369号、第6,261,421号、第6,224,726号、第6,036,828号、第6,031,239号、第6,027,619号、第6,026,763号、第6,009,829号、第5,972,185号、第5,932,078号、第5,902,462号、第5,895,559号、第5,518,597号、第5,468,363号、第5,401,543号、第5,317,235号、第5,282,944号、第5,279,723号、第5,269,896号、第5,126,030号、第4,936,960号、並びに、米国特許出願公開第20050249983号、第20050189218号、第20050181238号、第20040168637号、第20040103845号、第20040055538号、第20040026242号、第20030209424号、第20020144893号、第20020140334号、及び第20020139662号。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。いくつかの実施形態において、「Void−Free Implantable Hermetically Sealed Structures」と題する、2007年4月12日に出願のPCT出願第PCT/2007/09270号に記載されているように、例えば陰極アーク堆積材料の層内に基板(医療装置)を封入するために、全基板表面をプラズマと接触させてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、用いられる陰極アーク堆積プロトコルは、上記で説明したような、基板表面上に厚みのある無応力金属構造物を製作するプロトコルである。したがって、この方法は、基板表面上に、約25μm以上といった約1μm以上の厚みを有する無欠陥金属層を製作する方法であり、約50μm以上の厚みを含む。この場合、その厚みは、約75μm、85μm、95μm又は100μmもの厚みであってもよく、それ以上であってもよい。
【0070】
基板表面への陰極アーク堆積によって基板表面上に材料層を堆積させるための改良された方法が、本発明に従って説明されている。いくつかの実施形態において、基板が変形又は力を受けて、かかる変形又は力を受けていない基板上への堆積によって製作された対応の層に比べ、特性が大幅に改良された層ができる。
【0071】
本発明に係る応力工学技術の方法は、シリコン基板上に成長応力が大きくかつ圧縮力のある陰極アーク金属フィルム又はスパッタ金属フィルムを形成するといった、広範な材料作製用途にも有効に用いられる。金属フィルムの熱膨張係数がSi基板材料のものより大きいため、室温におけるフィルム内の応力は、高温で堆積を行うことによって低減することが可能である。温度が堆積温度に上がっているときは、フィルムは依然として圧縮状態にあるが、基板上で冷えると、それは無応力状態に近づく。しかし、かかる高温のフィルム形成条件は、基板上に存在する集積回路(IC)装置の他の層に対して有害な場合がある。本発明によれば、スパッタ堆積時に、例えば適切な拘束(constraining)エレメントで基板を拘束し、次いで、堆積後にその拘束を解除し、したがって、スパッタされた金属層から釈放されるのに要する所定量の圧縮歪みが基板上面に与えられるようにすることによって、同一の略無応力状態を獲得することが可能となる。
【0072】
本発明のこの方法は、逆に成長応力が少ししかなく、しかし堆積プロセス又は他の高温プロセスの拘束があるために、高温で堆積されなければならない層の製作にも適用可能である。このような場合、基板を堆積温度に加熱することによって、本発明を実施する際に熱膨張不整合歪みを補償することができる。このようにすれば、堆積時の応力は、少ししかないか又は全くない。冷却時に応力が発生するが、その応力は次いで、ウェハの拘束を除去することによって緩和される。
【0073】
いくつかの実施形態では、主題の方法において、プラズマと基板表面との接触は、堆積金属構造物にかかる圧縮力及び張力が相互に実質的に相殺し合い、したがって堆積金属構造物が無応力になるような態様で起こる。これらの実施形態において、基板と陰極との間の距離、基板温度、及びプラズマを発生させるのに用いる電力、を含む種々の堆積プロセスパラメータは、製作する金属層が無応力となるように選択される。これらの実施形態において、基板と陰極との間の距離は、約1mm〜約0.5mの範囲とすることができる。プラズマを発生させるのに用いる電力は、約1W〜約1kW以上の範囲とすることができ、例えば5kW以上とすることができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、プラズマビームは、構造物が製作される基板表面の平面に略直交する方向で、基板表面と接触する。「略直交」とは、イオンビーム流が基板平面と接触するときの角度が直交方向の、±10°といった±15°であることを意味し、±5°を含む。直交を含むので、いくつかの実施形態において、イオンビーム流は、基板表面の平面に対し垂直である。
【0075】
したがって、方法の実施形態は、医療用インプラントで利用される無応力フィルム、即ち無応力層であって、層材料の性質が応力に依存している層を、層形成時に選択の基板に加熱又は冷却を施して(即ち、圧縮力を加えて)、製作層内に応力(例えば圧縮力又は張力)が残留することを阻止或いは助勢する力を加えた状態を基板を介して強制的に形成することによって堆積させる方法を含む。本発明の方法は、相互接続に用いられるプラチナ、インジウム、及びチタン等の比較的厚みのある(最大で100μm)生体適合性金属、酸化イリジウム電極及び窒化チタン電極、並びに、生物医学的封入に用いられる種々の誘電体フィルムにとって特に重要である。
【0076】
この方法は逆に、引張成長応力を有する層を製作するのにも適用可能である。このような場合、基板を堆積温度に加熱することによって、本発明を実施する際に熱膨張不整合歪みを補償することができる。このようにすれば、堆積時の応力は、少ししかないか又は全くない。冷却時に応力が発生するが、その応力は次いで、ウェハの拘束を除去することによって緩和される。
【0077】
いくつかの実施形態において、基板表面には、基板とは異なる熱膨張係数を有する材料でできた部材が固着されている。この場合、フィルム形成材料の製作フィルムを形成することは、基板及びそれに固着された部材を加熱及び/又は冷却することを含む。
【0078】
特定の実施形態によっては、基板表面は平滑であってもよければ、不規則的であってもよい。但し、基板表面が不規則的なときは、それは堆積材料で充填されることになる穴又はトレンチ又は類似の構造物を有するであろう。
【0079】
いくつかの実施形態において、多孔性コーティングを生み出す堆積条件(例えば、ガスの組成、電力)を選択してもよい。例えば、反応性ガスの圧力を、最終製作物に所望の多孔度を与えるように選択してもよい。例えば、N2が反応性ガスである場合に、0.01〜760torr、例えば0.1〜100torrの範囲の圧力を用いてプラチナ、金、ルテニウム、イリジウム、及びモリブデン等の多くの金属の多孔性構造物が製作される。C2H6が反応性ガスである場合に、0.01〜760torr、例えば0.1〜100torrの範囲の圧力を用いてプラチナ、金、ルテニウム、イリジウム、及びモリブデン等の多くの金属の多孔性構造物が製作される。対象とする堆積条件に関する更に詳細な説明は、「Metal Binary and Ternary Compounds Produced by Cathodic Arc Deposition」と題する、同日に出願され、同時係属中のPCT出願第PCT/US2007/_号に記載されている。その開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0080】
いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積プロトコルと一緒に、1つ又は複数のマスクを用いてもよい。かかるマスクは、堆積構造物の形状を任意の望ましい形状にすることができる。フォトリソグラフィの処理プロトコルで用いられる従来のマスク等の任意の都合のよいマスクを用いることができる。
【0081】
上述したように、主題の方法によって堆積された構造物は、堆積構造物の所要の機能によって、種々の異なる構成を有することができ、層、リードとすることができ、3次元構成を有することができる。
【0082】
堆積構造物の組成は、陰極材料及びプラズマ生成の雰囲気の選択に基づいて選ぶことができる。したがって、所望の組成の金属層を製作するのに、特定の陰極材料及びプラズマ生成の雰囲気が選択される。いくつかの実施形態において、陰極は1つの金属又は合金でできている。この場合、対象とする金属には金(au)、銀(ag)、ニッケル(ni)、オスミウム(os)、パラジウム(pd)、プラチナ(pt)、ロジウム(rh)、イリジウム(ir)、チタン(ti)、等があるが、これらに限定されない。
【0083】
堆積構造物が陰極と同一の組成を有することになっている実施形態では、イオンビームを真空中で発生させてもよい。堆積構造物を炭素、酸素、又は窒素等の別のエレメントと混合した合金にしようとする更に他の実施形態において、酸素含有雰囲気、窒素含有雰囲気、炭素含有雰囲気、のような他のエレメントの雰囲気中でプラズマを発生させてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、例えばプラズマの発生中に雰囲気に変更を加え、雰囲気中の第二のエレメントの量を、例えば増加させたり、或いは減少させたりするなど、堆積中に変化させることによって、陰極材料の第二のエレメントの勾配が堆積構造物内に生じる。
【0085】
いくつかの実施形態において、基板表面と接触するイオンビームは濾過されておらず、そのためイオンビームには陰極材料のマクロ粒子が含まれている。更に他の実施形態において、基板表面と接触するイオンビームを、完全ではなくとも実質的にマクロ粒子が無い状態になるように濾過してもよい。米国特許第6,663,755号、第6,031,239号、第6,027,619号、第5,902,462号、第5,317,235号、及び第5,279,723号、並びに、米国特許出願公開第20050249983号、第20050181238号、第20040168637号、第20040103845号、及び第20020007796号に記載されているような、任意の都合のよい濾過プロトコルを用いることができる。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0086】
前に概観したように、いくつかの実施形態において、陰極アーク堆積構造物は、例えば図6A及び図6Bに示す導電性のフィードスルー又はビアのような、インプラント型医療装置の2つ以上の構造物を導電状態につなぐ導電性エレメントである。これら実施形態のうちのある実施形態では、人体へのインプラントとして使用することを意図した多層生体適合性構造物であって、マイクロプロセッサ又は他のコンポーネントが異なる層に構成され、構造物の各回路層を分離する絶縁層を貫通して上下方向に相互接続されている構造物が作製される。この場合、上下方向の相互接続は、本明細書で説明したような陰極アーク堆積によって製作される。各回路層は、個別のウェハ又は薄いフィルム材料内に作製し、次いで、層状構造物上に移して、後述するように相互接続するようにしてもよい。
【0087】
例えばPt、Ir、Ti、又はそれらの合金でできた生体適合性層金属導電体が、例えば外部(例えばシリコン)マスクを介して陰極アーク堆積技術によりパターン化されたシリコン基板に堆積され、3次元電気回路及びシリコン基板又はマイクロプロセッサ若しくは他のコンポーネントを収容するケース内に形成されたビアを介する電気的接続体を規定する。これらの方法は、第一の部分に、例えば上記で生成された実質的に完全にイオン化された金属イオンを当てることを含む。方法は、方向性の高いイオンビームを発生させるのに濾過式でない(unfiltered)陰極真空アーク(Cathodic Vacuum Arc)技術だけでなく濾過式の(filtered)陰極真空アーク技術も用いており、この方法は、アスペクト比が高いビア及びトレンチ内であっても、共形金属コーティングが形成されることを可能にする。この方法は、例えばプラチナの薄いフィルム及び厚いフィルム並びに相互接続を堆積させるような、導電性相互接続体を形成するために行うビア及びトレンチの内部充填を可能にする。
【0088】
いくつかの実施形態において、インプラント型装置で使用するために、構造物は上下方向に積載されて、データ処理、制御システム、及びプログラマブル計算用回路エレメントを相互接続する。いくつかの実施形態において、構造物は、同一の又は個別の半導体ウェハ内に作製され次いで積載された相互接続回路及びマイクロプロセッサを具備する。この回路は、シリコン又は他の適切な材料表面に沿って普通に配線された、多数の薄いフィルム状の金属ワイヤを具備していてもよい。本発明において、回路の機能ブロックは、バルクチップ上の回路の1つのセクションと、組込みマイクロプロセッサチップ及びコンポーネントを収容する空孔を有するSI系ウェハのような残りのブロックとが、本明細書に記載の陰極アーク堆積プロトコルで製作された中間ビアを介して電気的に接続されている状態で、上下方向に配列された2つ以上のセクションに分割されていてもよい。
【0089】
回路は、バルクシリコン、酸化シリコン、又はガリウム砒素等のIII−V族材料内に、或いは、バルクSi、SOI、及び/又は薄いフィルム状GaAsを含む複合構造物内に形成可能である。層を相互に接着する絶縁層及び導電性相互接続体又は絶縁層を貫通して延在する上下方向バスを用いて、装置の種々の層を積載することが可能である。この絶縁層は、接着剤等の重合材料を具備していてもよい。熱的劣化又はクロストークを低減、或いは阻止するために、隣接する回路層間に熱的シールド及び電気的シールドを用いてもよい。
【0090】
例えば、チップがリードレスチップキャリア内に配置されているような場合に、パッケージと通信を行うために、バルクチップ上又は構造物の薄いフィルム層上のワイヤボンドパッドが存在していてもよい。これらのパッドは、ワイヤをボンディングすることができる十分な大きさである必要がある。回路の異なる層を互いに接続するのに、相互接続パッドが用いられる。相互接続の方法が陰極アーク金属堆積を用いているので、これらのパッドは、従来のワイヤボンドパッドよりもかなり小さくできる。
【0091】
したがって、本発明の実施形態は、データプロセッサを含むインプラント型能動電子装置の作製方法を含む。この場合、方法は、Ptのような第一の金属系の電気回路を、バルク半導体ウェハ(Si、SiC、GaAs、InP等又は誘電体材料(例えば、TiO2、Al2O3、AlN、SiO2)のウェハのような半導体材料の第一の層上に形成することと、データプロセッサの第二の回路を半導体材料の第二の層内に形成することと、2つの回路間に延在する相互接続体で第一のプロセッサ回路を第二の組込みプロセッサ回路と接続する最大深さ100ミクロンのビアを、陰極アーク堆積で堆積させることによって、データプロセッサ信号が第一のデータプロセッサ回路と第二のデータプロセッサ回路との間で伝達され得るように、Ptのような陰極アーク堆積金属導電体で第二の層を第一の層に電気的に相互接続することと、を含む。所望に応じて、方法は、第一の回路層及び第二の回路層上に複数の追加的回路層を製作することを更に含んでもよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、データプロセッサを作製する方法は、インプラントの第一の回路を半導体材料又は誘電体材料の第一の層に形成することと、データプロセッサの第二の回路を半導体材料の第二の層に形成することと、ボンディング層で第二の層を第一の層にボンディングすることと、陰極アーク堆積でPt、Ti又は他の生体適合性金属化層を付けて第一の回路と第二の回路とを電気的に接続することと、を含む。この金属化層は、第二の層から穴を通過して第一の層に流動する。
【0093】
(陰極アーク堆積システム)
主題の方法を実施して陰極アーク製作構造物を含むインプラント型医療装置を作るのに用いることが可能な陰極アーク堆積システムについても説明する。主題のシステムの実施形態は、陰極アークプラズマ源及び基板マウントを具備する。陰極アークプラズマ源(即ち、プラズマ発生器)は、様々なものが考え得るが、いくつかの実施形態において、陰極アークプラズマ源は、陰極と、1つ又は複数の陽極と、プラズマ発生時に陰極からイオン化された陰極材料を発生させるのに十分な電気アークを発生させるための陰極と陽極(1つ又は複数)との間の電源と、を具備する。プラズマ発生器は、陰極ターゲットからの正に帯電したイオンを含むDC的又はパルス的なプラズマビームを発生することができる。
【0094】
基板マウントは、構造物が堆積される基板を保持するように構成されている。いくつかの実施形態において、基板マウントは、マウント上の基板の温度を上げ下げして所望の温度にするといった、マウント上に存在する基板の温度を制御する温度調節器を具備する基板マウントである。冷却エレメント、加熱エレメント等の任意の都合のよい温度調節器を、マウントに動作可能に接続してもよい。いくつかの実施形態において、マウント上に存在する基板の温度を求めるのに、温度センサがあってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、システムは、基板マウントと陰極との間の距離を調整し得るように構成されている。即ち、システムは、基板マウント及び陰極を相互に移動できるように構成されている。いくつかの実施形態において、システムは、陰極に対して基板マウントを移動でき、そのようにして、所望に応じてそれら2つの間の距離を増減できるように構成されている。いくつかの実施形態において、システムは、基板マウントに対して陰極を移動でき、そのようにして、所望に応じてそれら2つの間の距離を増減できるように構成されている。前に概観したように、所望に応じて、システムは、陰極材料、エネルギー、基板仕様、堆積雰囲気のような1つ又は複数の入力パラメータを考慮して基板マウントと陰極とを相互に位置決めし、例えば堆積材料内に存在するいかなる圧縮力も基板の張力で確実に相殺させることによって、厚みのある無応力製作層を製作するために、適切な距離を決定するエレメントを具備してもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、陰極アークプラズマ発生エレメント及び基板は、真空又は制御された雰囲気といった制御された環境を提供する封止チャンバ内に存在する。この場合、システムのこれら2つのコンポーネントは、同一チャンバ内に存在していてもよく、陰極から基板へのイオンの移動を可能にするイオン搬送構造によって相互に接続された異なるチャンバ内に存在していてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、システムは、発生したプラズマからマクロ粒子を濾過するように機能する濾過コンポーネントを更に具備するので、完全ではなくとも実質的にマクロ粒子が無いイオンビームが基板に接触する。任意の都合のよい濾過コンポーネントが存在し得る。この場合、対象とする濾過コンポーネントには、米国特許第6,663,755号、第6,031,239号、第6,027,619号、第5,902,462号、第5,317,235号、及び第5,279,723号、並びに、米国特許出願公開第20050249983号、第20050181238号、第20040168637号、第20040103845号、及び第20020007796号に記載のものがあるが、これらに限定されない。これらの開示は、参照により本明細書で援用されている。いくつかの実施形態において、濾過エレメントは2つの湾曲部を有するので、プラズマ源(source)と基板との間に見通し線はなく、フィルタを通過する1回弾み経路もない。いくつかの実施形態において、システムは、プラズマビームを案内してフィルタを通過させ基板に向かわせるビームステアリング配置を更に具備する。
【0098】
いくつかの実施形態において、システムは、ビーム偏向(biasing)配置のような、パルス式振幅変調電気バイアスを濾過後のプラズマビームに印加するイオンビーム変調器を具備する。これらの実施形態において、偏向配置は、処理装置と、パルス発生器モジュールと、を備えている。パルス発生器モジュールは、処理装置の制御下でパルス式振幅変調電気バイアスを発生する。この場合、パルス発生器モジュールは、プログラマブル・ロジック・デバイスと、電源供給と、スイッチング回路と、を具備する。このスイッチング回路は、プログラマブル・ロジック・デバイスによって制御され、電源供給の出力は、スイッチング回路を介して基板に結合される。但し、プログラマブル・ロジック・デバイスは、電源供給とスイッチング回路の両方の動作を制御する。
【0099】
いくつかの実施形態において、システムは、基板にバイアスをかけるためのエレメントを更に具備する。これら実施形態のうちのある実施形態では、バイアスをかけることは、正イオンの堆積に起因して基板上に自然発生する静電荷を逃がすことと、入射イオンのエネルギーが確実に所定のエネルギー範囲内に入るようにすることの、両方の働きをする。
【0100】
陰極アーク堆積システムは、「Implantable Medical Device Comprising Cathordic Arc Produced Microstrip Structures」と題する、2006年6月22日に出願の米国仮特許出願第60/805,576号に更なる記載がある。この開示は、参照により本明細書で援用されている。
【0101】
(システム)
本発明に係る陰極アーク製作コンポーネントを具備するインプラント型医療装置をもう1つ具備するシステムについても説明する。
【0102】
例えば、上記で説明したようなパッチアンテナ等の陰極アーク製作アンテナを有するインプラント型装置を具備するシステムが説明されている。本発明のかかるシステムを、人間のような被検体内で情報を通信するためのシステムと見なすこともできる。この場合、システムは、信号を送信及び/又は受信するように構成された送受信器を備えた第一のインプラント型医療装置と、信号を送信及び/又は受信するように構成された送受信器を備えた第二の装置の両方を具備する。但し、第一の装置と第二の装置の少なくとも一方は、例えば上記で説明したような、本発明に係るマイクロストリップアンテナを具備する。
【0103】
本発明のシステムの一実施形態を図10に示す。この場合、システムは、IPGのようなインプラント型医療装置と、外部プログラマブルユニットと、を具備する。図10は、本発明に係る、外部プログラマ26と心臓ペースメーカIPG12のようなインプラント済み医療装置との間の双方向テレメトリ通信の簡易模式図である。IPG12は、患者10に植込まれて患者の皮膚又は筋肉の下にあり、典型的には皮膚表面の方に方向決めされている。IPG12はペース/センス電極及び少なくとも1つの心臓ペーシングリード14のリード導体(1つ又は複数)を介して患者10と電気的に結合される。IPG12はオペレーティングシステムを備えている。このオペレーティングシステムは、プログラムされた動作モード及び電源に応じてセンシング機能及びペーシング機能の時間調節を行うマイクロコンピュータ又はデジタル式のステートマシーンを用いても構わない。IPG12は更に、心臓信号を検出するセンスアンプと、患者用アクティビティセンサ又は心臓出力要求を感知する他の生理学的センサと、オペレーティングシステムの制御下で、従来技術で公知の態様で心臓18の少なくとも1つの心室にペーシングパルスを与えるパルス発生出力回路と、を備えている。オペレーティングシステムは、オペレーティングシステムが使用する種々のプログラム組込み動作モード及びパラメーラ値を格納するメモリレジスタ又はRAMを具備する。メモリレジスタ又はRAMは、取出し命令又は問合せ命令を受信したときのテレメトリ送出に備えて、感知された心臓アクティビティから収集されたデータ及び/又は装置動作履歴データ、或いは感知された生理的パラメータを格納するためにも用いることができる。これらの機能及び動作はすべて当該技術分野で公知であり、多くは他のプログラム可能インプラント型医療装置で、装置動作を制御するためにかつ後で取り出して装置機能又は患者状態を診断するために、動作コマンド及びデータを格納するのに用いられている。
【0104】
プログラミングコマンド又はデータは、IPG12表面内又はその上のIPGRFテレメトリアンテナ28と、外部プログラマ26に連結されている外部RFテレメトリアンテナ24との間で伝送される。外部RFテレメトリアンテナ24は、患者10からある距離だけ離して、外部プログラマのケース上に配置してもよい。例えば、外部プログラマ26及び外部RFテレメトリアンテナ24は、患者10から数m程度だけ離れたスタンド上にあってもよい。更に、リアルタイムECG又は生理的パラメータの上りリンク問合せ時に、患者は活動状態であってもよく、ランニングマシーン(treadmill)等で運動中であっても構わない。プログラマ26は更に、従来技術の古典的なフェライトコア、ワイヤコイル、RFテレメトリアンテナを用いた既存のIPGを汎用的にプログラムするように設計されていてもよく、したがって、かかるIPGで選択的に使用できるように、古典的なプログラマRFヘッド及び関連のソフトウェアを有している。
【0105】
上りリンクテレメトリ伝送20において、外部RFテレメトリアンテナ24は、テレメトリ受信器アンテナとして動作し、IPGRFテレメトリアンテナ28は、テレメトリ送信器アンテナとして動作する。逆に、下りリンクテレメトリ伝送30において、外部RFテレメトリアンテナ24は、テレメトリ送信器アンテナとして動作し、IPGRFテレメトリアンテナ28は、テレメトリ受信器アンテナとして動作する。
【0106】
次に図11について説明すると、これは、図10の外部プログラマ26及びIPG12の主な機能的テレメトリ伝送ブロックの簡易回路ブロック図である。プログラマ26内の外部RFテレメトリアンテナ24は、テレメトリ送信器32とテレメトリ受信器34とを備えたテレメトリ送受信器に結合される。テレメトリ送信器32及びテレメトリ受信器34は、上記した援用に用いられている、本発明の譲受人に譲渡された特許及び係属中の出願に記載されているように、制御回路と、マイクロコンピュータ及びソフトウェアの制御下で動作するレジスタと、に結合される。同様に、IPG12内では、IPGRFテレメトリアンテナ28は、テレメトリ送信器42とテレメトリ受信器44とを備えたテレメトリ送受信器に結合される。テレメトリ送信器42及びテレメトリ受信器44は、上記した援用に用いられている、本発明の譲受人に譲渡された特許及び係属中の出願に記載されているように、制御回路と、マイクロコンピュータ及びソフトウェアの制御下で動作するレジスタと、に結合される。
【0107】
上りリンクテレメトリ伝送20において、テレメータで伝送されたデータを任意の都合のよいテレメトリフォーマットに符号化してもよい。例えば、データ符号化又は変調は、例えば搬送周波数の、周波数シフトキー(FSK:frequency shift key)又は差動位相シフトキー(DPSK:differencial phase shift key)の形態であってもよい。上りリンクテレメトリ伝送20を開始するには、使用者が起動したINTERROGATEコマンドに応答して外部プログラマ26のテレメトリ送信器32を有効状態にして、下りリンクテレメトリ伝送22にINTERROGATEコマンドを発生させる。INTERROGATEコマンドは受信器44で受信され、復調された後、マイクロコンピュータ(図示せず)のようなインプラント型医療装置中央処理装置(CPU:central processing unit)の入力に印加される。インプラント型医療装置マイクロコンピュータは、適切な上りリンクデータ信号を発生することによって応答する。この信号は、送信器42に入力されて、符号化した上りリンクテレメトリ信号20を発生する。上記のデータ符号化及び伝送フォーマットは、どれを用いてもよい。
【0108】
上記の図10及び図11のシステムは、主題のアンテナを使用し得るシステムの例示的なものに過ぎず、単なる1つの様式である。システムは、多くの異なるコンポーネント又はエレメントを有する場合がある。この場合、かかるエレメントは、センサ、エフェクタ、例えば心臓刺激のタイミングを例えば1つ又は複数のセンサからの信号に応答して制御するための処理エレメント、例えばインプラント型医療装置と体外の場所との間でテレメトリ式に情報交換を行うためのテレメトリ用送信器、薬物送達エレメント、等を具備することができるが、これらに限定されない。
【0109】
いくつかの実施形態において、インプラント型医療システムは、ペーシングの用途、心臓再同期治療の用途、等の心血管での用途に用いられるシステムである。
【0110】
システムの使途に、装置で取得したデータを視覚化することを含んでも構わない。本発明の発明者の一部は、種々の表示器及び本発明のシステムを用いて収集されるセンサ情報の多数の情報源を連係して機能させるソフトウェアツールを開発している。これらの例は、国際PCT出願第PCT/US2006/012246号に見ることができる。この出願並びにそれの優先権主張出願の開示は全体が、参照により本明細書で援用されている。
【0111】
本発明に係るインプラント型実施形態を用いて取得したデータは、所望に応じて、インプラント型コンピュータによって記録することができる。かかるデータは、自動又は手動の解析に備えて、周期的にコンピュータシステム及びインターネットを含むコンピュータネットワークにアップロードすることができる。
【0112】
上りリンク及び下りリンクテレメトリ機能を特定のインプラント型システムに設けて、遠隔的に配置された外部医療装置、又は患者の体上のより近接した医療装置、又は患者の体内の別の多重チャンバモニタ/治療提供(multi−chamber monitor/therapy delivery)システムとの通信を可能にすることができる。上記の様式の格納された生理的データ、並びに、リアルタイムに発生する生理的データ及び非生理的データは、下りリンクテレメトリが送出する問合せコマンドに応答して、上りリンクRFテレメトリによって、システムから外部プログラマ又は他の遠隔医療装置に伝送することができる。リアルタイムの生理的データには、典型的には、心臓内心電図振幅値のようなリアルタイム標本化信号レベル、及び本発明に従って発現する寸法信号を含むセンサ出力信号がある。非生理的患者データには、現在プログラムされている装置動作モード及びパラメータ値、電池状態、装置ID、患者ID、インプラント日、装置プログラミング履歴、リアルタイムのイベントマーカ、等がある。インプラント型ペースメーカ及びICDとの関連において、かかる患者データには、センスアンプ設定感度、ペーシング又は電気的除細動パルスの振幅、エネルギー、及びパルス幅、ペーシング又は電気的除細動のリードインピーダンス、並びに、検出された不整脈症状及び加えられた治療法のような装置性能に関連する統計の蓄積、がある。したがって、多重チャンバモニタ/治療提供システムは、種々のかかるリアルタイムの又は格納された生理的又は非生理的データを創出する。かかる創出されたデータを、本明細書では、集合的に「患者データ」と呼ぶ。
【0113】
図12は、本発明の別の実施形態に係る医療診断及び/又は治療システム100のブロック図である。プラットフォーム100は、電源102と、遠隔装置104と、データ収集器106と、外部記録装置108と、を具備する。動作時は、遠隔装置104は患者の体内に配置され(例えば、摂取され又は植込まれ)、電源102からの電力を入力する。この電源は、患者の体内に設置されていてもよければ、外部に設置されていてもよい。
【0114】
遠隔装置104は、センサユニット、エフェクタユニット、及び/又は送信器ユニットの任意の組合わせを具備し得る、電子的、機械的、又は電子機械的装置である。センサユニットは、遠隔装置104が植込まれた患者の生理的状態に関連する種々のパラメータを検出し測定する。エフェクタユニットは、遠隔装置又は外部コントローラ内のセンサユニットの制御下で、患者の体又は生理的過程の一部の局面に影響を与える行為を行う。送信器ユニットは、センサユニットからの測定データ又はエフェクタアクティビティ若しくは単なる遠隔装置の存在を示す他の信号を含む信号を、データ収集器106に送信する。いくつかの実施形態において、送信は無線で行われる。
【0115】
電源102は、遠隔装置104に出力できる電力の任意の発生源を具備することができる。いくつかの実施形態において、電源102は、遠隔装置104に組み込まれた電池又は同様の自己完結型の電源とすることができる。他の実施形態において、電源102は患者の体外にあって、無線で電力を伝送する。
【0116】
データ収集器106は、患者内に植込まれていてもよければ、外部にあって、患者の皮膚に接続されていてもよい。データ収集器106は、遠隔装置104内の送信器ユニットからの信号を検出する受信アンテナと、受信情報を格納し、処理し、及び/又は再送信するように構成された制御ロジックと、を具備する。遠隔装置104が送信器を具備しない実施形態においては、データ収集器106を省略してもよい。
【0117】
外部記録装置108は、収集データ及び関連情報(例えば、データ収集器106内の処理活動の結果)に担当者がアクセスできるようにする任意の装置を用いて実現することができる。いくつかの実施形態において、データ収集器106は、患者又は健康管理担当者が直接読み取れる外部コンポーネント、或いは格納データを読み取るコンピュータに通信可能に接続された外部コンポーネントを具備する。その外部コンポーネントは、外部記録装置108として機能する。他の実施形態において、外部記録装置108は、例えば405MHz帯でのRF結合を用いて、内部ペースメーカ又は他のデータ収集器と通信を行う従来のペースメーカワンド等の装置であってもよい。
【0118】
プラットフォーム100は、任意の個数の電源102と、遠隔装置104と、を具備することができる。この遠隔装置は、インプラント型医療装置とみなすことができる。いくつかの実施形態において、センサ/エフェクタネットーク(システム)を患者の体内に製作して、患者のために種々の診断及び/又は治療活動を行うことができる。例えば、図13は、多数の遠隔装置204、205、206が自分の体の種々の場所に植込まれた患者200を示している。遠隔装置204、205、206は、同一装置の多数のインスタンスであってもよく、そうすれば、パラメータが場所によって異なる様子を測定し、及び/又は種々の行為を局所的に行うことができる。或いは、遠隔装置204、205、206は、センサ、エフェクタ、及び送信器の任意の組合わせを含む異なる装置であってもよい。いくつかの実施形態において、各装置は下記のうちの少なくとも1つであるように構成される。(i)患者の体との擬似静電結合を介して信号を送信する。(ii)患者の体との擬似静電結合を介して送信された信号を受信する。特定のシステムにおける遠隔装置の個数は変わる場合があり、2個以上、3個以上、5個以上、約10個以上、約25個以上、約50個以上、等になる場合がある。データ収集器208にはアンテナ210が装備されており、遠隔装置204、205、206によって送信された信号を検出する。都合のよいことに遠隔装置が無線で信号を送信するため、プラットフォームの用途は、患者の体を貫通してワイヤを走らせるという難点によって制限されない。むしろ、患者の体内の遠隔装置の個数及び位置は、所望の場所に植込み得る大きさで装置を製作する能力によってのみ制限されることが分かるであろう。
【0119】
本明細書では、患者に関連させて、一定の事例について本発明を説明している。本明細書で用いられているように、「患者」という用語は、動物等の生命体を指す。いくつかの実施形態において、動物は「哺乳動物」又は「哺乳類」である。この場合、これらの用語は、肉食動物(例えば、犬及び猫)、齧歯目(例えば、マウス、モルモット、及びラット)、ウサギ目(例えばウサギ)、及び霊長類(例えば、人間、チンパンジー、及び猿)を含む哺乳綱に含まれる生物体を広く表すのに用いられる。いくつかの実施形態において、患者のような対象物は人間である。
【0120】
本発明のシステムの使用方法についても説明する。本発明の方法は一般的に、一方をインプラント型とすることができる第一の医療装置と第二の医療装置とを具備する上記で説明したような本発明のシステムを提供することと、システムの第一の装置と第二の装置との間で、少なくとも一方の装置上に存在するマイクロストリップアンテナを介して信号を送信することと、を含む。提供することは、用いられる特定のシステムによっては、少なくとも第一の医療装置を対象物に植込むことを含んでもよい。いくつかの実施形態において、送信ステップは、第一の装置から前記第二の装置へ信号を送出することを含む。いくつかの実施形態において、送信ステップは、第二の装置から前記第一の装置へ信号を送出することを含む。信号は、任意の都合のよい周波数で送信することができ、ある実施形態では、周波数は約400〜約405MHzの範囲にある。信号の種類は非常に様々なものが考え得るのであり、患者から取得された1つ又は複数のデータ、インプラント装置から取得された装置機能データ、インプラント装置、電力、等の制御情報が含まれ得る。
【0121】
(キット)
前に概観したようなインプラント型パルス発生器等のインプラント型医療装置を具備するキットについても説明する。例えば、キットは、上記で説明したような本発明のパッチアンテナを具備する、インプラント型装置又は摂取型装置のいずれかのような装置を具備してもよい。いくつかの実施形態において、キットは2つ以上のかかる装置を具備してもよい。いくつかの実施形態において、キットは更に、インプラント装置(ツール、ガイドワイヤ等)、受信器、といった少なくとも1つの追加的コンポーネントを具備する。
【0122】
主題のキットのいくつかの実施形態において、キットは、主題の装置を用いるための命令又はそれを取得するためのエレメント(例えば、命令を提供するウェブページに使用者を誘導するウェブサイトのURL)を更に具備するであろう。この場合、これらの命令は、典型的には基板上に印刷されている。この基板は、パッケージインサート、パッケージング、試薬容器、等のうちの1つ又は2つ以上であってもよい。主題のキットにおいて、1つ又は複数のコンポーネントは、都合又は所望に応じて、同一の容器又は異なる容器内に存在する。
【0123】
本発明が説明した特定の実施形態に限定されないことは、理解されるべきである。かかる実施形態は変わるおそれがあるからである。本明細書で用いられる用語は特定の実施形態を説明することだけを目的とし、限定することは意図されていないことも、理解されるべきである。本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定されるからである。
【0124】
一定範囲の値が与えられている場合、その範囲の上下限間の各介在値は、文脈が明確に否定しない限り、下限の10分の1までが本発明の範囲内に含まれかつその記載の範囲の任意の他の記載値又は介在値が本発明の範囲内に含まれる。これらのより狭い範囲の上下限は、それら狭い範囲に独立的に含まれ、同じく本発明範囲内に含まれる場合があるが、記載の範囲に具体的に除外される限界がある場合はそれに従う。記載の範囲が一方又は両方の限界を含む場合、これら包含される限度の一方又は両方を除外した範囲も本発明の範囲に含まれる。
【0125】
本明細書では、一定の範囲が、「約」という用語が前に付いた数値と一緒に提示されている。「約」という用語は、後に来る厳密な数、並びに、後に来る数に近い又は近似の数を文字通りに支持するために、本明細書では用いられている。ある数が具体的に引用された数に近い又は近似的であるかどうかを判定する場合、引用されていない近い数又は近似の数は、それが提示されている文脈において、その具体的に引用された数と実質的に均等な数を提供する数とすることができる。
【0126】
別の規定がなされていない限り、本明細書で使用されている技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって普通に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載のものと類似の又は均等な方法及び材料も、本発明の実施又はテストに使用可能であるが、代表的な方法及び材料を今回は記載している。
【0127】
なお、本明細書及び添付の請求項で用いられているように、単数形式表現である「1つの」、「この」、及び「前記」は、文脈が明確に否定しない限り、複数の指示物を含む。任意選択エレメントを除外するように請求項が構成されている場合があることにも、注意を要する。したがって、このように明言することで、これを、請求項の要件の列挙の際に「もっぱら(solely)」、「のみ(only)」等の除外機能用語を使用すること、又は「否定的」限定を使用することの根拠とする。
【0128】
本明細書に記載され例示された個々の実施形態のそれぞれが、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちの任意の実施形態の特徴から容易に分離又はそれらと組み合わされ得る個別のコンポーネント及び特徴を有していることは、当業者には明らかであろう。引用されたいずれの方法も、引用された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実施可能である。
【0129】
上記の発明は、理解し易くする目的で、図及び例によってある程度詳細に説明したが、本発明の教示に照らして考えてみれば、添付の請求項の精神又は範囲から逸脱することなしにそれに一定の改変及び変更を行い得ることは、当業者であれば容易に分かる。
【0130】
したがって、上記は、本発明の原理を示しているに過ぎない。本発明の原理を具現化しかつその精神及び範囲に含まれる構成物は、本明細書では明示的に記載もしていなければ示しもしていないが、当業者であれば種々の構成物を案出できることは理解されるであろう。更に、本明細書に引用されている例及び条件表現はすべて、技術を進展させるために、主として、本発明の原理及び本発明者がもたらした概念を読者が理解することを支援するように意図されており、かかる具体的に引用された例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。更に、本明細書で本発明の原理、特徴、及び実施形態、並びにその特定の例を引用する記述はすべて、その構造的均等物、機能的均等物のいずれをも含むように意図されている。更に、かかる均等物が現在公知の均等物、将来に開発される均等物、即ち、構造にかかわらず同一の機能を発揮する新開発エレメント、のいずれをも含むことが意図されている。したがって、本発明の範囲を、本明細書に示され、記載された例示的実施形態に限定することは意図されていない。むしろ、本発明の範囲と精神は、添付の請求項によって具現化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極アーク製作構造物を備えている、インプラント型医療装置。
【請求項2】
前記陰極アーク製作構造物が、約1μm〜約100μmの範囲の厚みを有する無応力構造物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記構造物が、前記インプラントのコンポーネント表面の少なくとも一部を覆う層である、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記層が前記インプラントの内部容積を封止する、請求項3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記構造物が、前記インプラントのコンポーネントである、請求項2に記載のインプラント。
【請求項6】
前記コンポーネントが導電性エレメントである、請求項5に記載のインプラント。
【請求項7】
前記導電性エレメントが、前記インプラントの高アスペクト比経路内に存在する、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
前記構造物がエフェクタである、請求項5に記載のインプラント。
【請求項9】
前記エフェクタがアクチュエータである、請求項8に記載のインプラント。
【請求項10】
前記エフェクタがセンサである、請求項8に記載のインプラント。
【請求項11】
前記陰極アーク製作構造物がマイクロストリップアンテナである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
前記マイクロストリップアンテナが、基板層の表面上に陰極アーク製作ラジエータパッチ層を備えている、請求項11に記載の医療装置。
【請求項13】
前記陰極アーク製作構造物が鈍鋸歯層である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
前記鈍鋸歯層がインプラント上に存在している、請求項13に記載のインプラント。
【請求項15】
前記鈍鋸歯層が、薬学的に活性な薬剤を更に備えている、請求項14に記載のインプラント。
【請求項16】
前記陰極アーク製作構造物が多孔層である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
前記多孔層が高表面積電極の一部である、請求項16に記載のインプラント。
【請求項18】
基板上に金属構造物を製作する方法であって、
前記基板上に約1μm以上の厚みを有する堆積金属無応力構造物を製作するために、陰極アークが発生する金属イオンプラズマを前記基板の表面に接触させることを含む方法。
【請求項19】
前記接触は、前記堆積金属構造物にかかる圧縮力及び張力が相互に実質的に相殺し合い、したがって前記堆積金属構造物が無応力になるような態様で起こる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
プラズマが、前記表面の平面に略直交する方向で前記表面と接触する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、インプラント型医療装置の一部を製作する方法である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記一部が、前記インプラント型医療装置のコンポーネントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記コンポーネントが導電性エレメントである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記導電性エレメントが、前記インプラントの高アスペクト比経路内に存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記高アスペクト比構造物が、約1〜約50の範囲の高さ対幅比を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記一部が、前記表面の少なくとも一部を覆う金属層である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記金属層が前記基板の内部空間を封止する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記金属構造物が生理的適合性金属を備えている、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記金属が、プラチナ、イリジウム、及びチタンから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記プラズマは真空中で生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記プラズマは酸素の存在下で生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記プラズマは窒素の存在下で生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記プラズマは炭素の存在下で生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
陰極アークプラズマ堆積システムであって、
陰極アークプラズマ源と、
基板マウントと、
を備え、
前記基板マウントが、その上に装着された基板の温度を調節する温度調節器を具備している、陰極アークプラズマ堆積システム。
【請求項35】
前記基板マウントと前記陰極アークプラズマ源との間の距離が調節可能である、請求項34に記載の陰極アークプラズマ堆積システム。
【請求項36】
前記システムがプラズマフィルタを具備している、請求項35に記載の陰極アークプラズマ堆積システム。
【請求項37】
前記システムがプラズマビーム偏向エレメントを具備している、請求項35に記載の陰極アークプラズマ堆積システム。
【請求項1】
陰極アーク製作構造物を備えている、インプラント型医療装置。
【請求項2】
前記陰極アーク製作構造物が、約1μm〜約100μmの範囲の厚みを有する無応力構造物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記構造物が、前記インプラントのコンポーネント表面の少なくとも一部を覆う層である、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記層が前記インプラントの内部容積を封止する、請求項3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記構造物が、前記インプラントのコンポーネントである、請求項2に記載のインプラント。
【請求項6】
前記コンポーネントが導電性エレメントである、請求項5に記載のインプラント。
【請求項7】
前記導電性エレメントが、前記インプラントの高アスペクト比経路内に存在する、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
前記構造物がエフェクタである、請求項5に記載のインプラント。
【請求項9】
前記エフェクタがアクチュエータである、請求項8に記載のインプラント。
【請求項10】
前記エフェクタがセンサである、請求項8に記載のインプラント。
【請求項11】
前記陰極アーク製作構造物がマイクロストリップアンテナである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
前記マイクロストリップアンテナが、基板層の表面上に陰極アーク製作ラジエータパッチ層を備えている、請求項11に記載の医療装置。
【請求項13】
前記陰極アーク製作構造物が鈍鋸歯層である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
前記鈍鋸歯層がインプラント上に存在している、請求項13に記載のインプラント。
【請求項15】
前記鈍鋸歯層が、薬学的に活性な薬剤を更に備えている、請求項14に記載のインプラント。
【請求項16】
前記陰極アーク製作構造物が多孔層である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
前記多孔層が高表面積電極の一部である、請求項16に記載のインプラント。
【請求項18】
基板上に金属構造物を製作する方法であって、
前記基板上に約1μm以上の厚みを有する堆積金属無応力構造物を製作するために、陰極アークが発生する金属イオンプラズマを前記基板の表面に接触させることを含む方法。
【請求項19】
前記接触は、前記堆積金属構造物にかかる圧縮力及び張力が相互に実質的に相殺し合い、したがって前記堆積金属構造物が無応力になるような態様で起こる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
プラズマが、前記表面の平面に略直交する方向で前記表面と接触する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、インプラント型医療装置の一部を製作する方法である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記一部が、前記インプラント型医療装置のコンポーネントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記コンポーネントが導電性エレメントである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記導電性エレメントが、前記インプラントの高アスペクト比経路内に存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記高アスペクト比構造物が、約1〜約50の範囲の高さ対幅比を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記一部が、前記表面の少なくとも一部を覆う金属層である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記金属層が前記基板の内部空間を封止する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記金属構造物が生理的適合性金属を備えている、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記金属が、プラチナ、イリジウム、及びチタンから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記プラズマは真空中で生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記プラズマは酸素の存在下で生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記プラズマは窒素の存在下で生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記プラズマは炭素の存在下で生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
陰極アークプラズマ堆積システムであって、
陰極アークプラズマ源と、
基板マウントと、
を備え、
前記基板マウントが、その上に装着された基板の温度を調節する温度調節器を具備している、陰極アークプラズマ堆積システム。
【請求項35】
前記基板マウントと前記陰極アークプラズマ源との間の距離が調節可能である、請求項34に記載の陰極アークプラズマ堆積システム。
【請求項36】
前記システムがプラズマフィルタを具備している、請求項35に記載の陰極アークプラズマ堆積システム。
【請求項37】
前記システムがプラズマビーム偏向エレメントを具備している、請求項35に記載の陰極アークプラズマ堆積システム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−540932(P2009−540932A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516575(P2009−516575)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/014509
【国際公開番号】WO2007/149546
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(505222679)プロテウス バイオメディカル インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/014509
【国際公開番号】WO2007/149546
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(505222679)プロテウス バイオメディカル インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】
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