説明

陰極電着コーティング組成物

水のほかに、(i)少なくとも1つのフィルム形成用自己または外部架橋CEDバインダーおよび任意の成分:架橋剤、ペースト樹脂、非イオン性樹脂からなる樹脂固形分と、(ii)場合により、顔料、充填剤、コーティング添加剤および有機溶剤からなる群から選択された少なくとも1つの成分とを含み、ヒドロキシル基、遊離イソシアネート基およびブロックトイソシアネート基からなる群から選択された官能基を有する少なくとも1つの樹脂Aを、樹脂固形分に対して1〜20重量%で含有し、少なくとも1つの樹脂Aが40〜200℃の融解温度を有する粒子として存在する、CEDコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極電着コーティング組成物(CEDコーティング組成物、CEDコーティング剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
CEDコーティング組成物は特に、金属基材上に腐蝕防止プライマー層を製造するために用いられる。また、それらは、単一−層トップコート、クリアコートとしてまたは多層コーティング中に配置されるコーティング層として例えば、いずれかの電気導電性基材上に陰極堆積および焼成されてもよい。多層コーティング中に配置されたCEDコーティング層は、例えば、トップコートとして作用する装飾効果を有するかまたはクリアコート層がさらに適用されてもよいコーティング層であってもよい。
【0003】
CEDコーティング組成物でコートするときに生じる問題は、電気導電性基材上に予め付着されたCEDコーティング層が焼成されるときのエッジの移動である。CEDコーティングフィルムがエッジから引き離れ、エッジのすぐ近くおよび/またはその付近のフィルム厚さを低減する。極端な環境においてエッジは焼成後にコートされない。装飾CEDコーティングの場合、これは、基材がエッジの領域において見えてくるので色の差として知覚されるが、腐蝕防止CEDプライマーの場合、防蝕はエッジでおよび/またはエッジの領域において損なわれるかまたは失われる。したがって、CEDコーティング組成物は、エッジ有効範囲またはエッジ防蝕を増強する添加剤を含有することが多い。
【0004】
他方、良好なエッジ有効範囲ひいては良好なエッジ防蝕を有するCEDコーティング組成物は概して、それから製造されたコーティング層の光学表面品質が改良を必要としている、すなわち、CEDのコートされた表面が比較的粗いという点において区別される。例えば、このようなCEDのコートされた表面は、1つ以上のコーティング層の引き続いて適用されたコーティングの外観に関してある程度好ましくないベースを提供する。逆に、良好な光学表面品質を有するコーティングを製造することができるCEDコーティング組成物は、改良を必要としているエッジ有効範囲を示すことが多い。換言すれば、エッジ有効範囲および光学表面品質の性質は、それらの品質に関して逆に作用し、すなわち、それらは、CEDコーティング組成物の組成を選択するときに妥協を必要とする性質である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、それから陰極堆積されたコーティング層を焼成したときにわずかなエッジの移動挙動を示すかまたは全く示さないCEDコーティング組成物を提供することである。CEDコーティング組成物から適用されたCEDコーティングは同時に、良好な光学表面品質を示すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水のほかに、(i)少なくとも1つのフィルム形成用自己または外部架橋CEDバインダーおよび任意の成分:架橋剤(cross−linkers)(架橋剤(cross−linking agents))、ペースト樹脂(粉砕樹脂)、非イオン性樹脂からなる樹脂固形分と、(ii)場合により、顔料、充填剤(エキステンダー)、コーティング添加剤および有機溶剤からなる群から選択された少なくとも1つの成分とを含むCEDコーティング組成物に関するものであり、ヒドロキシル基、遊離イソシアネート基およびブロックトイソシアネート基からなる群から選択された官能基を有する少なくとも1つの樹脂Aを、樹脂固形分に対して1〜20、好ましくは5〜15重量%で含有し、ここで少なくとも1つの樹脂Aが40〜200℃、特に60〜180℃の融解温度を有する粒子として存在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明によるCEDコーティング組成物は、例えば、10〜30重量%の固形分を有する水性コーティング組成物である。固形分は、樹脂固形分、本発明に必須である少なくとも1つの樹脂Aの含有量、および以下の任意の成分:充填剤、顔料および/または他の不揮発性コーティング添加剤からなる。少なくとも1つの樹脂Aは樹脂固形分の構成成分としてみなさない。樹脂固形分自体は、CEDバインダー、場合により存在するペースト樹脂、場合により存在する架橋剤および場合により存在する非イオン性樹脂からなる。樹脂固形分に属する全ての構成成分は、液体であるか、および/または有機溶剤に可溶性である。ペースト樹脂はCEDバインダーの1つに分類される。CEDバインダーは、カチオン性置換基および/またはカチオン性基に変換されうる置換基を有する。CEDバインダーは自己架橋性または好ましくは、外部架橋性であってもよく、外部架橋性の場合それらは化学架橋可能な基を有し、そのときCEDコーティング組成物は架橋剤を含有する。また、架橋剤カチオン性基を有してもよい。
【0008】
例えば、CEDコーティング組成物の樹脂固形分の組成は、
CEDバインダー50重量%〜100重量%、
架橋剤0重量%〜40重量%、
非イオン性樹脂0重量%〜10重量%である。
【0009】
CEDコーティング剤の樹脂固形分の組成は好ましくは、
外部架橋性CEDバインダー50重量%〜90重量%、
架橋剤10重量%〜40重量%、
非イオン性樹脂0重量%〜10重量%である。
【0010】
CEDバインダーのカチオン性基またはカチオン性基に変換されうる基は、例えば、塩基性基、好ましくは窒素含有塩基性基であってもよく、これらの基は四級化された形で存在してもよく、またはそれらは、例えば、乳酸、ギ酸、酢酸、メタンスルホン酸などのCEDコーティング組成物のために通例の中和剤でカチオン性基に変換される。例はアミノ、アンモニウム、例えば、第四アンモニウム、ホスホニウムおよび/またはスルホニウム基である。存在しているアミノ基は第一、第二および/または第三アミノ基であってもよい。カチオン性基に変換されうる基は、部分的にまたは完全に中和された形で存在してもよい。
【0011】
CEDバインダーは好ましくは、例えば、20〜250mg KOH/gのアミン価を有する、第一、第二および/または第三アミノ基含有樹脂である。CEDバインダーの重量平均モル質量は好ましくは300〜10,000である。自己架橋性または好ましくは外部架橋性バインダーとして、CEDバインダーは化学架橋可能な官能基、特にヒドロキシル基を有し、例えば、30〜300、好ましくは50〜250mg KOH/gヒドロキシル価を有する。CEDバインダーは、塩基性基の少なくとも一部の四級化または中和後に水性相に変換されてもよい。CEDバインダーの例には、アミノ(メタ)アクリル樹脂、アミノポリウレタン樹脂、アミノ基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ樹脂−二酸化炭素−アミン反応生成物および、特に、アミノエポキシ樹脂、例えば、末端二重結合を有するアミノエポキシ樹脂、第一OH基を有するアミノエポキシ樹脂などのバインダーがある。
【0012】
本願の明細書および特許請求の範囲において用いられた用語「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0013】
架橋剤の例には、アミノプラスチック樹脂(アミン/ホルムアルデヒド樹脂)、末端二重結合を有する架橋剤、環状カーボネート基を有する架橋剤、ポリエポキシ化合物、エステル交換および/またはアミド交換反応(transamidisation)可能な基を含有する架橋剤の他、特に、例えば、モノアルコール、グリコールエーテル、ケトキシム、ラクタム、マロン酸エステル、アセト酢酸エステルなどの従来のブロッキング剤でブロックされるポリイソシアネートなどがある。
【0014】
本願の明細書において記載された全ての数平均または重量平均モル質量データは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、不動相としてジビニルベンゼン架橋ポリスチレン、液体相としてテトラヒドロフラン、標準ポリスチレン)によって定量されるかまたは定量されなければならない。
【0015】
CEDコーティング組成物を製造するためにカチオン性バインダーは、場合により非イオン性バインダーおよび/または架橋剤および/または、以下に説明されるように、少なくとも1つの樹脂Aを含有してもよいCEDバインダー分散体として用いられてもよい。CEDバインダー分散体は、有機溶剤の存在下または非存在下でCEDバインダーを合成する工程と、中和されたCEDバインダーを水で希釈することによって水性分散体に変換する工程とによって製造されてもよい。CEDバインダーは、1つ以上の非イオン性樹脂および/または1つ以上の適した架橋剤および/または少なくとも1つの樹脂Aを有する混合物中に存在してもよく、それらと一緒に水性分散体に変換されてもよい。存在する場合、有機溶剤は、水性分散体に変換する前または後に、例えば、真空中で蒸留することによって所望の含有量まで除去されてもよい。例えば、CEDバインダーが低溶剤または無溶剤状態において、例えば、無溶剤溶融体として、例えば、140℃までの温度において中和され、次いで水でCEDバインダー分散体に変換される場合、溶剤の後続の除去を避けることができる。
【0016】
上に記載されたように、CEDコーティング組成物は非イオン性樹脂を含有してもよい。非イオン性樹脂の例は、(メタ)アクリルコポリマー樹脂、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂である。非イオン性樹脂は好ましくは、官能基、特に架橋可能な官能基を有する。CEDコーティング組成物のCEDバインダーが同様に含有するので、特に好ましくはそれらは同じ架橋可能な官能基である。このような官能基の好ましい例はヒドロキシル基である。したがって非イオン性樹脂は好ましくはポリマーポリオールである。
【0017】
本発明によるCEDコーティング組成物は、ヒドロキシル基、遊離イソシアネート基およびブロックトイソシアネート基からなる群から選択された官能基を有する少なくとも1つの樹脂Aを、樹脂固形分に対して1〜20、好ましくは5〜15重量%で含有し、少なくとも1つの樹脂Aが40〜200℃、特に60〜180℃の融解温度を有する粒子として存在する。
【0018】
樹脂Aは、CEDバインダーまたは可能性がある非イオン性樹脂のどちらとも混同されるべきではなく、CEDコーティング組成物中に粒子として存在している樹脂を含み、40〜200℃、特に60〜180℃の融解温度を示す。融解温度は概してはっきりした融点ではなく、代わりに、例えば、30〜150℃の幅の融点範囲の上端である。融点範囲ひいては融解温度は、10K/分の加熱速度において例えばDSC(示差走査熱量測定)によって定量されてもよい。樹脂樹脂Aの粒子は、CEDコーティング組成物中に、特に、概して水によって分散されたCEDバインダー相またはCEDバインダー含有相中にそれぞれ、存在している。
【0019】
樹脂Aは、コーティングに通例である有機溶剤中におよび/または水中に、仮にあったとしても、ごくわずかだけ可溶性であり、溶解度は、例えば、20℃において酢酸ブチルまたは水1リットル当たり合計10g未満、特に5g未満となる。
【0020】
ヒドロキシル基またはブロックトイソシアネート基を有する樹脂Aが好ましい。CEDコーティング組成物から陰極堆積されたコーティング層の熱硬化の間に樹脂Aをそれらのヒドロキシルまたは遊離イソシアネートまたはブロックトイソシアネート基との化学架橋プロセスに関与させることができる場合、有利である。換言すれば、前記関与を可能にするCEDバインダー/架橋剤系を有するそれらのCEDコーティング組成物が好ましく、特にウレタンおよび/または尿素結合の形成下でヒドロキシルおよび/または第二アミノおよび/または第一アミノ基とブロックトイソシアネート基との反応によって架橋するCEDコーティング組成物が好ましい。
【0021】
特に、樹脂Aは、ヒドロキシル基、遊離イソシアネート基およびブロックトイソシアネート基からなる群から選択された官能基を有するポリウレタン樹脂である。
【0022】
ポリウレタン樹脂Aの製造は当業者に公知である。特に、それらは、ポリオールをポリイソシアネートと反応させる工程と、イソシアネートの過剰の場合、過剰な遊離イソシアネート基をブロッキング剤と反応させる工程とによって製造されてもよい。実験式および構造式によって定義された低モル質量化合物の形のポリオールだけでなく、例えば、ヒドロキシル官能性ポリエーテル、ポリエステルまたはポリカーボネートに相当する、例えば、800までの数平均モル質量を有するオリゴマーまたはポリマーポリオールもポリウレタン樹脂Aの製造のために適したポリオールであるが、実験式および構造式によって定義された低モル質量ポリオールが好ましい。当業者は、上に記載された融解温度および上に記載された溶解度挙動を有するポリウレタン樹脂Aが得られるようにポリウレタン樹脂Aの製造のためにポリイソシアネート、ポリオールおよび可能性があるブロッキング剤の性質および比率を選択する。
【0023】
ポリウレタン樹脂Aは適した有機溶剤(混合物)の存在下で製造されてもよいが、それは、このようにして得られたポリウレタン樹脂Aを単離するかまたは溶剤をそれから除去することを必要にする。しかしながら、ポリウレタン樹脂Aの製造は、溶剤なしにおよび後続の精製作業なしに実施されることが好ましい。
【0024】
第1の実施態様において、ポリウレタン樹脂Aはヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aである。それらは、例えば、ポリイソシアネートをポリオールと過剰量において反応させることによって製造されてもよい。ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aは、例えば、50〜300mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0025】
第1の実施態様の第1の好ましい変形例において、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aは、1,6−ヘキサンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをジオール成分とモル比x:(x+1)(xは2〜6、好ましくは、2〜4の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるポリウレタンジオールであり、ジオール成分は単一ジオール、特に、62〜600の範囲のモル質量を有する単一ジオール、またはジオールの組合せ、好ましくは2〜4、特に2または3つのジオールの組合せであり、ジオールの組合せの場合ジオールの各々が好ましくは、ジオール成分のジオールの少なくとも10モル%を構成する。
【0026】
ジイソシアネートおよびジオール成分がモル比xモルのジイソシアネート:(x+1)モルのジオール化合物(xは2〜6、好ましくは2〜4の任意の所望の値を意味する)において互いに化学量論的に反応させられる。
【0027】
単一ジオール、特に、62〜600の範囲のモル質量を有する単一ジオールがジオール成分として用いられる。また、ジオールの組合せ、好ましくは2〜4、特に2または3つのジオールを用いることが可能であり、ここでジオールの各々が好ましくは、ジオール成分のジオールの少なくとも10モル%を構成する。
【0028】
ジオールの組合せの場合、ジオール成分はその構成成分ジオールの混合物として導入されてもよく、またはジオール成分を構成するジオールを別々に導入して合成を行なってもよい。また、ジオールの或る比率を混合物として導入すること、および残りの比率を高純度ジオールの形で導入することが可能である。ジオールの各々が好ましくは、ジオール成分のジオールの少なくとも10モル%を構成する。
【0029】
ジオール成分の単一ジオールとして可能であるジオールの例は、ビスフェノールAおよび(シクロ)脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、異性プロパン−およびブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAおよびダイマー脂肪アルコールである。
【0030】
明細書および特許請求の範囲において用いられた用語「(シクロ)脂肪族」は、脂環式、直鎖状脂肪族、分岐状脂肪族および脂肪族残基を有する脂環式を包含する。(シクロ)脂肪族ジオールとは異なるジオール、すなわち、非(シクロ)脂肪族ジオールは、したがって、芳香族におよび/または脂肪族に結合したヒドロキシル基を有する芳香族または芳香族脂肪族ジオールを含む。
【0031】
ジオール成分の構成成分として可能性があるジオールの例は、オリゴマーまたはポリマージオール、例えば、各々が例えば800までの数平均モル質量を有する、テレケリック(メタ)アクリルポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、実験式および構造式によって定義された低モル質量非(シクロ)脂肪族ジオール、例えばビスフェノールA、62〜600の範囲の低モル質量を有する実験式および構造式によって定義された(シクロ)脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、異性プロパン−およびブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、異性シクロヘキサンジオール、異性シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール、およびダイマー脂肪アルコールである。
【0032】
ジイソシアネートおよびジオール成分が好ましくは、溶剤なしに一緒に反応させられる。反応体はここで全て一緒に同時に反応させられるかまたは2つ以上の合成段階において反応させられる。合成が多段階において行なわれるとき、反応体は、非常に様々な順で、例えば、連続的にまたは交互に、添加されてもよい。ジオール成分を例えば2つ以上の部分に分けるかまたは例えば個々のジオールに分け、その結果、ジイソシアネートを最初にジオール成分の一部と反応させてから、ジオール成分の残りの比率とさらに反応させる。個々の反応体はそれぞれそれらの全部でまたは2つ以上の部分に分けて添加されてもよい。反応は発熱性であり、反応混合物の融解温度を超える温度において進む。反応温度は例えば60〜200℃である。添加速度または添加された反応体の量はそれ相応に発熱度に基づいて定量され、液体(溶融)反応混合物は加熱または冷却によって所望の温度範囲内に維持されてもよい。
【0033】
溶剤なしに行なわれた反応が終了して反応混合物が冷却されると、固体ポリウレタンジオールが得られる。実験式および構造式によって定義された低モル質量ジオールがポリウレタンジオールの合成のために用いられるとき、それらの計算されたモル質量は522以上、例えば、2200までの範囲である。
【0034】
ポリウレタンジオールは、モル質量分布を示す混合物の形をとる。しかしながら、ポリウレタンジオールは検査を必要とせず、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aとして直接に使用されてもよい。
【0035】
第1の実施態様の第2の好ましい変形例において、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aは、ジイソシアネート成分とビスフェノールAまたはジオール成分とをモル比x:(x+1)(xは2〜6、好ましくは2〜4の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるポリウレタンジオールであり、ジイソシアネート成分の50〜80モル%が1,6−ヘキサンジイソシアネートによって形成され、20〜50モル%が1つまたは2つのジイソシアネートによって形成され、各々が、ジイソシアネート成分の少なくとも10モル%を形成し、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネートおよびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートからなる群から選択され、各ジイソシアネートのモル%が合計100モル%になり、ジオール成分の20〜100モル%が、少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールによって形成され、0〜80モル%が、直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールと異なっている少なくとも1つのジオールによって形成され、ここでジオール成分の各ジオールが好ましくは、ジオール成分中に少なくとも10モル%を形成し、各ジオールのモル%が合計100モル%になる。
【0036】
ジイソシアネート成分およびビスフェノールAまたはジオール成分がモル比xモルのジイソシアネート:(x+1)モルのジオール化合物において互いに化学量論的に反応させられ、xは2〜6、好ましくは2〜4のいずれかの値を表す。
【0037】
ジイソシアネート成分の50〜80モル%が1,6−ヘキサンジイソシアネートによって形成され、20〜50モル%が、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネートおよびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートからなる群から選択された1つまたは2つのジイソシアネートによって形成され、2つのジイソシアネートが選択される場合、各ジイソシアネートが、ジイソシアネート成分のジイソシアネートの少なくとも10モル%を形成する。好ましくは、ジイソシアネートまたは2つのジイソシアネートは、ジイソシアネート成分の合計20〜50モル%を形成し、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネートおよびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートから選択される。
【0038】
ジオール成分は、少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオール20〜100モル%の範囲および直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールと異なる少なくとも1つのジオール0〜80モル%の範囲からなる。ジオール成分は好ましくは、4以下の異なったジオール、特に1〜3のジオールのみからなる。1つのみのジオールの場合、したがってそれは、直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールを含む。2,3または4つのジオールの組合せの場合、ジオール成分は、少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオール20〜100モル%、好ましくは80〜100モル%の範囲および直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールと異なり、および好ましくは、12個より多い炭素原子を有するα,ω−ジオールとも異なる、少なくとも1つのジオール0〜80モル%、好ましくは0〜20モル%の範囲からなる。直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールと異なり、および好ましくは、12個より多い炭素原子を有するα,ω−ジオールとも異なる少なくとも1つのジオールは、76〜600の範囲の低モル質量を有する、実験式および構造式によって定義されたジオールを特に含む。ジオールの組合せの場合、各ジオールは好ましくは、ジオール成分の少なくとも10モル%を構成する。
【0039】
好ましくは、ジオール成分は、直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールと異なっているいずれのジオールも含まず、むしろ1〜4、好ましくは、1〜3、特に1つだけの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールからなる。
【0040】
ジオールの組合せの場合、ジオール成分はその構成成分ジオールの混合物として導入されてもよく、またはジオール成分を構成するジオールを別々に導入して合成を行なってもよい。また、ジオールの或る比率を混合物として導入すること、および残りの比率を高純度ジオールの形で導入することが可能である。ジオールの各々が好ましくは、ジオール成分のジオールの少なくとも10モル%を構成する。
【0041】
ジオール成分の単一ジオールとしてまたはジオール成分の構成成分として用いられてもよい直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールの例は、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールおよび1,12−ドデカンジオールである。
【0042】
直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールとは異なっていてジオール成分において用いられてもよいジオールの例は、オリゴマーまたはポリマージオール、例えば、各々が例えば800までの数平均モル質量を有する、テレケリック(メタ)アクリルポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、実験式および構造式によって定義された低モル質量非(シクロ)脂肪族ジオール、例えば、ビスフェノールA、76〜600の範囲の低モル質量を有する実験式および構造式によって定義された(シクロ)脂肪族ジオール、例えば、前段落に明記されたプロパンジオールおよびブタンジオールの異性体とは異なっているプロパンジオールおよびブタンジオールのそれらの異性体、ならびに、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、異性シクロヘキサンジオール、異性シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール、およびダイマー脂肪アルコールである。
【0043】
ジイソシアネート成分およびビスフェノールAまたはジオール成分が好ましくは、溶剤なしに一緒に反応させられる。反応体はここで全て一緒に同時に反応させられるかまたは2つ以上の合成段階において反応させられる。合成が多段階において行なわれるとき、反応体は、非常に様々な順で、例えば、連続的にまたは交互に、添加されてもよい。ビスフェノールAまたはジオール成分を例えば2つ以上の部分に分けるかまたは例えば個々のジオールに分け、その結果、ジイソシアネートを最初にビスフェノールAの一部またはジオール成分の一部と反応させてから、ビスフェノールAまたはジオール成分の残りの比率とさらに反応させる。しかしながら、同様に、ジイソシアネート成分を同じく2つ以上の部分に分けるかまたは個々のジイソシアネートに分け、例えば、その結果、ヒドロキシル成分を最初にジイソシアネート成分の一部と反応させ、最後にジイソシアネート成分の残りの比率と反応させる。個々の反応体はそれぞれそれらの全部でまたは2つ以上の部分に分けて添加されてもよい。反応は発熱性であり、反応混合物の融解温度を超える温度において進む。反応温度は例えば60〜200℃である。添加速度または添加された反応体の量はそれ相応に発熱度に基づいて定量され、液体(溶融)反応混合物は加熱または冷却によって所望の温度範囲内に維持されてもよい。
【0044】
溶剤なしに行なわれた反応が終了して反応混合物が冷却されると、固体ポリウレタンジオールが得られる。実験式および構造式によって定義された低モル質量ジオールがポリウレタンジオールの合成のために用いられるとき、それらの計算されたモル質量は520以上、例えば、2200までの範囲である。
【0045】
ポリウレタンジオールは、モル質量分布を示す混合物の形をとる。しかしながら、ポリウレタンジオールは検査を必要とせず、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aとして直接に使用されてもよい。
【0046】
個々の場合において、上に記載された第1の実施態様の第1または第2の好ましい変形例によるそれらのポリウレタンジオールの合成のために用いられたジヒドロキシ化合物の或る比率が、少なくとも1つのトリオールを含むトリオール成分で置き換えられる場合、分岐状および/またはそれぞれのポリウレタンジオールと比べてより高いヒドロキシル官能性であるポリウレタン樹脂Aが得られる。このようなポリウレタン樹脂Aを有する変形例はそれ自体、第1の実施態様のさらなる好ましい変形例である。例えば、モル換算でジヒドロキシ化合物70%までがトリオール成分のトリオールで置き換えられてもよい。相当するトリオール成分の構成成分として有用なトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよび/またはグリセロールである。グリセロールは好ましくはトリオール成分として単独で用いられてもよい。
【0047】
第2の実施態様において、ポリウレタン樹脂Aはイソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aである。それらはポリオールをポリイソシアネートと過剰量において反応させることによって製造されてもよい。ポリウレタン樹脂Aは、例えば、(NCO、モル質量42として計算された)2〜13.4重量%のイソシアネート含有量を有する。
【0048】
第2の実施態様の第1の好ましい変形例において、イソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aは、1,6−ヘキサンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをジオール成分とモル比(x+1):x(xは2〜6、好ましくは2〜4の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるポリウレタンジイソシアネートであり、ジオール成分は単一ジオール、特に、62〜600の範囲のモル質量を有する単一ジオールであるか、またはジオールの組合せ、好ましくは2〜4、特に、2または3つのジオールの組合せであり、ジオールの組合せの場合ジオールの各々が好ましくは、ジオール成分のジオールの少なくとも10モル%を構成する。
【0049】
ジイソシアネートおよびジオール成分がモル比(x+1)モルのジイソシアネート:xモルのジオール化合物(xは2〜6、好ましくは2〜4の任意の所望の値を意味する)において互いに化学量論的に反応させられる。
【0050】
ジオール成分の性質および使用および構成成分として可能なジオールに関して、繰り返しを避けるために、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aの第1の好ましい変形例に関連してなされた記載が参照される。
【0051】
ジイソシアネートおよびジオール成分が好ましくは、溶剤なしに一緒に反応させられる。反応体の添加の順序および反応条件に関して、繰り返しを避けるために、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aの第1の好ましい変形例に関連してなされた記載が参照される。
【0052】
溶剤なしに行なわれた反応が終了して反応混合物が冷却されると、固体ポリウレタンジイソシアネートが得られる。実験式および構造式によって定義された低モル質量ジオールがポリウレタンジイソシアネートの合成のために用いられるとき、それらの計算されたモル質量は628以上、例えば、2300までの範囲である。
【0053】
ポリウレタンジイソシアネートは、モル質量分布を示す混合物の形をとる。しかしながら、ポリウレタンジイソシアネートは、検査を必要とせず、イソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aとして直接に用いられてもよい。
【0054】
第2の実施態様の第2の好ましい変形例において、イソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aは、ジイソシアネート成分とビスフェノールAまたはジオール成分とをモル比(x+1):x(xは2〜6、好ましくは2〜4の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるポリウレタンジイソシアネートであり、ジイソシアネート成分の50〜80モル%が1,6−ヘキサンジイソシアネートによって形成され、20〜50モル%が1つまたは2つのジイソシアネートによって形成され、各々が、ジイソシアネート成分の少なくとも10モル%を形成し、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネートおよびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートからなる群から選択され、各ジイソシアネートのモル%が合計100モル%になり、ジオール成分の20〜100モル%が、少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールによって形成され、0〜80モル%が、直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールと異なっている少なくとも1つのジオールによって形成され、ジオール成分の各ジオールが好ましくはジオール成分中に少なくとも10モル%を形成し、各ジオールのモル%が合計100モル%になる。
【0055】
ジイソシアネート成分およびビスフェノールAまたはジオール成分がモル比(x+1)モルのジイソシアネート:xモルのジオール化合物(xは2〜6、好ましくは2〜4のいずれかの値を表す)において互いに化学量論的に反応させられる。
【0056】
ジイソシアネート成分の性質、ジオール成分の性質および使用および構成成分として可能なジオールに関して、繰り返しを避けるために、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aの第2の好ましい変形例に関連してなされた記載が参照される。
【0057】
ジイソシアネート成分のジイソシアネートおよびビスフェノールAまたはジオール成分のジオールが好ましくは、溶剤なしに一緒に反応させられる。反応体の添加の順序および反応条件に関して、繰り返しを避けるために、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aの第2の好ましい変形例に関連してなされた記載が参照される。
【0058】
溶剤なしに行なわれた反応が終了して反応混合物が冷却されると、固体ポリウレタンジイソシアネートが得られる。実験式および構造式によって定義された低モル質量ジオールがポリウレタンジイソシアネートの合成のために用いられるとき、それらの計算されたモル質量は625以上、例えば、2300までの範囲である。
【0059】
ポリウレタンジイソシアネートは、モル質量分布を示す混合物の形をとる。しかしながら、ポリウレタンジイソシアネートは、検査を必要とせず、イソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aとして直接に用いられてもよい。
【0060】
第2の実施態様の第3の好ましい変形例において、イソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aは、(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー、1,6−ヘキサンジイソシアネートおよびビスフェノールAまたはジオール成分をモル比1:x:x(xは1〜6、好ましくは、1〜3の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるポリウレタンポリイソシアネートであり、ジオール成分が単一直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールであるかまたは2〜4、好ましくは、2または3つのジオールの組合せであり、ジオールの組合せの場合、ジオールの各々がジオールの組合せのジオールの少なくとも10モル%を構成し、ジオールの組合せが、ビスフェノールAまたは少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオール少なくとも80モル%からなる。
【0061】
(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー、1,6−ヘキサンジイソシアネートおよびビスフェノールAまたはジオール成分がモル比1モル(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー:xモルの1,6−ヘキサンジイソシアネート:xモルのジオール化合物(xは1〜6、好ましくは1〜3のいずれかの値を表す)において互いに化学量論的に反応させられる。
【0062】
(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマーは、(シクロ)脂肪族ジイソシアネートの三量体化によって調製されたイソシアヌレートタイプのポリイソシアネートである。例えば、1,4−シクロヘキサンジメチレンジイソシアネートから、特に、イソホロンジイソシアネートからおよびより詳しくは、1,6−ヘキサンジイソシアネートから誘導された適切な三量体化生成物が適している。工業的に得られるイソシアヌレートポリイソシアネートは概して、高純度トライマー、すなわち、3つのジイソシアネート分子で構成され3つのNCO官能基を含むイソシアヌレートに加えて、比較的高いモル質量を有するイソシアネート官能性二次生成物を含有する。可能な限り高い純度の生成物が好ましくは用いられる。いずれの場合も、工業品質で得られる(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマーは、1モルの、(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー:xモルの1,6−ヘキサンジイソシアネート:xモルのジオール化合物のモル比に対して前記イソシアネート官能性二次生成物のそれらの含有量に関係なく高純度トライマーとみなされる。
【0063】
単一直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールまたは2〜4、好ましくは2または3つのジオールの組合せが、ジオール成分として用いられる。
【0064】
単一直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールまたはジオールの組合せの中で使用可能な直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールの例は、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールである。
【0065】
ジオールの組合せの少なくとも80モル%を構成するビスフェノールAまたはジオールの組合せの少なくとも80モル%を構成する少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールのほかにジオールの組合せの中で使用されうる(シクロ)脂肪族ジオールの例は、前の段落に記載されたプロパンおよびブタンジオールの異性体とは異なった、プロパンおよびブタンジオールのさらなる異性体であり、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、異性シクロヘキサンジオール、異性シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAおよびトリシクロデカンジメタノールである。
【0066】
ジオールの組合せの場合、組合せを構成するジヒドロキシ化合物の混合物が合成方法において使用可能であり、またはジオールの組合せを構成するジヒドロキシ化合物が各々、合成において別々に使用される。また、ジオールの一部分を混合物として、および残りの部分を高純度ジオールの形で使用することが可能である。
【0067】
ジオールの組合せの場合、それぞれ合計100モル%になる好ましいジオールの組合せは、10〜90モル%の1,3−プロパンジオールと90〜10モル%の1,5−ペンタンジオール、10〜90モル%の1,3−プロパンジオールと90〜10モル%の1,6−ヘキサンジオールおよび10〜90モル%の1,5−ペンタンジオールと90〜10モル%の1,6−ヘキサンジオールの組合せである。
【0068】
(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー、1,6−ヘキサン−ジイソシアネートおよびビスフェノールAまたはジオール成分が好ましくは溶剤なしに一緒に反応させられる。反応体はここで全て一緒に同時に反応させられるかまたは2つ以上の合成段階において反応させられる。ビスフェノールAまたはジオール成分および(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマーだけが互いに反応させられる合成手順は避けられるのが好ましい。
【0069】
合成が多段階において行なわれるとき、反応体は、非常に様々な順で、例えば、連続的にまたは交互に、添加されてもよい。例えば、1,6−ヘキサンジイソシアネートを最初にビスフェノールAまたはジオール成分と反応させ、次いで(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマーと反応させるか、またはイソシアネート官能性成分の混合物をビスフェノールAまたはジオール成分と反応させてもよい。ジオールの組合せの場合、ジオール成分を例えば、同じく2つ以上の部分に分け、例えば、同じく個々のジヒドロキシ化合物に分けてもよい。個々の反応体はそれぞれそれらの全部でまたは2つ以上の部分に分けて添加されてもよい。反応は発熱性であり、反応混合物の融解温度を超える温度において進む。反応温度は例えば60〜200℃である。添加速度または添加された反応体の量はそれ相応に発熱度に基づいて定量され、液体(溶融)反応混合物は加熱または冷却によって所望の温度範囲内に維持されてもよい。
【0070】
溶剤なしに行なわれた反応が終了して反応混合物が冷却されると、1,500〜4,000の範囲の数平均モル質量を有する固体ポリウレタンポリイソシアネートが得られる。ポリウレタンポリイソシアネートは検査を必要とせず、イソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aとして直接に用いられてもよい。
【0071】
第3の実施態様においてポリウレタン樹脂Aは、ブロックトイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂Aである。それらは、ポリオールをポリイソシアネートと過剰量において反応させる工程と、過剰な遊離イソシアネート基を1つ以上の一官能性ブロッキング剤と反応させる工程とによって製造されてもよい。ブロックトイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂Aの潜イソシアネート含有量は例えば、相当する下にあるポリウレタン樹脂(すなわち、ブロッキング剤を含有しない)に対して、NCOとして計算されとき2〜21.2重量%の範囲である。
【0072】
第3の実施態様の第1の好ましい変形例において、ポリウレタン樹脂Aは、1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有し、1,6−ヘキサンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤とモル比x:(x−1):2(xは2〜6、好ましくは2〜4の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるが、ジオール成分は単一ジオール、特に、62〜600の範囲のモル質量を有する単一ジオール、またはジオールの組合せ、好ましくは2〜4、特に、2または3つのジオールの組合せであり、ジオールの組合せの場合ジオールの各々が好ましくは、ジオール成分のジオールの少なくとも10モル%を構成する。
【0073】
ジイソシアネート、ジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤が、モル比xモルのジイソシアネート:(x−1)モルのジオール化合物:2モルのブロッキング剤(xは2〜6、好ましくは2〜4の任意の所望の値を意味する)において互いに化学量論的に反応させられる。
【0074】
ジオール成分の性質および使用および構成成分として可能なジオールに関して、繰り返しを避けるために、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aの第1の好ましい変形例に関連してなされた記載が参照される。
【0075】
好ましくは、1つだけの一官能性ブロッキング剤が用いられる。少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤の例は、イソシアネート基をブロックするための公知の一官能性化合物、例えば、この目的のために公知のCH−酸性、NH−、SH−またはOH−官能性化合物である。例は、CH−酸性化合物、例えば、アセチルアセトンまたはCH−酸性エステル、例えば、アセト酢酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、脂肪族または脂環式アルコール、例えば、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、グリコールエーテル、例えば、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、フェノール、オキシム、例えば、メチルエチルケトキシム、アセトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ラクタム、例えば、カプロラクタム、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾールまたはテトラゾールタイプのアゾールブロッキング剤である。
【0076】
ジイソシアネート、ジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤が好ましくは、溶剤なしに一緒に反応させられる。反応体はここで全て一緒に同時に反応させられるかまたは2つ以上の合成段階において反応させられる。合成が多段階において行なわれるとき、反応体は、非常に様々な順で、例えば、連続的にまたは交互に、添加されてもよい。例えば、ジイソシアネートを最初にブロッキング剤と反応させ、次いでジオール成分のジオールと反応させるか、または最初にジオール成分のジオールと反応させ、次いでブロッキング剤と反応させる。しかしながら、ジオール成分を、例えば、同様に2つ以上の部分に、例えば、同様に個々のジオールに分けてもよく、その結果、ジイソシアネートを最初にジオール成分の一部と反応させてから、ブロッキング剤とさらに反応させ、最後にジオール成分の残りの比率と反応させる。個々の反応体はそれぞれそれらの全部でまたは2つ以上の部分に分けて添加されてもよい。反応は発熱性であり、反応混合物の融解温度を超える温度において進む。反応温度は例えば60〜200℃である。添加速度または添加された反応体の量はそれ相応に発熱度に基づいて定量され、液体(溶融)反応混合物は加熱または冷却によって所望の温度範囲内に維持されてもよい。
【0077】
溶剤なしに行なわれた反応が終了して反応混合物が冷却されると、1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有する固体ポリウレタンが得られる。実験式および構造式によって定義された低モル質量ジオールが、1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンの合成のために用いられるとき、用いられた唯一のブロッキング剤としてブタノンオキシムの例で計算されたそれらのモル質量は572以上、例えば、2000までの範囲である。
【0078】
1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンは、モル質量分布を示す混合物の形をとる。1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンは、しかしながら、検査を必要とせず、ブロックトイソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aとして直接に用いられてもよい。
【0079】
第3の実施態様の第2の好ましい変形例において、ポリウレタン樹脂Aは、1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有し、ジイソシアネート成分、ビスフェノールAまたはジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤をモル比x:(x−1):2(xは2〜6、好ましくは2〜4の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製することができ、ジイソシアネート成分の50〜80モル%が1,6−ヘキサンジイソシアネートによって形成され、20〜50モル%が1つまたは2つのジイソシアネートによって形成され、各々が、ジイソシアネート成分の少なくとも10モル%を形成し、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネートおよびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートからなる群から選択され、各ジイソシアネートのモル%が合計100モル%になり、ジオール成分の20〜100モル%が、少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールによって形成され、0〜80モル%が、直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールと異なっている少なくとも1つのジオールによって形成され、ここでジオール成分の各ジオールが好ましくはジオール成分中に少なくとも10モル%を形成し、各ジオールのモル%が合計100モル%になる。
【0080】
ジイソシアネート成分、ビスフェノールAまたはジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤がモル比xモルのジイソシアネート:(x−1)モルのジオール化合物:2モルのブロッキング剤(xは2〜6、好ましくは2〜4のいずれかの値を表す)において互いに化学量論的に反応させられる。
【0081】
ジイソシアネート成分の性質、ジオール成分の性質および使用および構成成分として可能なジオールに関して、繰り返しを避けるために、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Aの第2の好ましい変形例に関連してなされた記載が参照される。
【0082】
好ましくは、1つだけの一官能性ブロッキング剤が用いられる。少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤の例は、ブロックトイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂Aの第1の好ましい変形例に関連して例として上に記載されたものと同じである。
【0083】
ジイソシアネート成分、ビスフェノールAまたはジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤が好ましくは、溶剤なしに一緒に反応させられる。反応体はここで全て一緒に同時に反応させられるかまたは2つ以上の合成段階において反応させられる。合成が多段階において行なわれるとき、反応体は、非常に様々な順で、例えば、連続的にまたは交互に、添加されてもよい。例えば、ジイソシアネート成分のジイソシアネートを最初にブロッキング剤と反応させ、次いでビスフェノールAまたはジオール成分のジオールと反応させるか、または最初にビスフェノールAまたはジオール成分と反応させ、次いでブロッキング剤と反応させてもよい。しかしながら、ビスフェノールAまたはジオール成分を、例えば、同様に2つ以上の部分に、例えば、同様に個々のジオールに分けてもよく、例えば、その結果、ジイソシアネートを成分を最初にビスフェノールAの一部またはジオール成分の一部と反応させてから、ブロッキング剤とさらに反応させ、最後にビスフェノールAの残りの比率またはジオール成分の残りの比率と反応させる。しかしながら、非常に似た方法でジイソシアネート成分を例えば同じく2つ以上の部分に分け、例えば、同じく個々のジイソシアネートに分け、例えば、その結果、ビスフェノールAまたはジオール成分およびブロッキング剤を最初にジイソシアネート成分の一部と反応させ、最後にジイソシアネート成分の残りの比率と反応させる。個々の反応体はそれぞれそれらの全部でまたは2つ以上の部分に分けて添加されてもよい。反応は発熱性であり、反応混合物の融解温度を超える温度において進む。反応温度は例えば60〜200℃である。添加速度または添加された反応体の量はそれ相応に発熱度に基づいて定量され、液体(溶融)反応混合物は加熱または冷却によって所望の温度範囲内に維持されてもよい。
【0084】
溶剤なしに行なわれた反応が終了して反応混合物が冷却されると、1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有する固体ポリウレタンが得られる。実験式および構造式によって定義された低モル質量ジオールが、1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンの合成のために用いられるとき、用いられた唯一のブロッキング剤としてブタノンオキシムの例で計算されたそれらのモル質量は、570以上、例えば、2000までの範囲である。
【0085】
1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンは、モル質量分布を示す混合物の形をとる。しかしながら、1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンは、検査を必要とせず、ブロックトイソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aとして直接に用いられてもよい。
【0086】
第3の実施態様の第3の好ましい変形例において、ポリウレタン樹脂Aは、ブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンであり、(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー、1,6−ヘキサンジイソシアネート、ビスフェノールAまたはジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤をモル比1:x:x:3(xは1〜6、好ましくは、1〜3の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製することができ、ジオール成分が単一直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールであるかまたは2〜4、好ましくは、2または3つのジオールの組合せであり、ジオールの組合せの場合、ジオールの各々がジオールの組合せのジオールの少なくとも10モル%を構成し、ジオールの組合せが、ビスフェノールAまたは少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオール少なくとも80モル%からなる。
【0087】
(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー、1,6−ヘキサンジイソシアネート、ビスフェノールAまたはジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤が、モル比1モルの(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー:xモルの1,6−ヘキサンジイソシアネート:xモルのジオール化合物:3モルのブロッキング剤(xが1〜6、好ましくは1〜3のいずれかの値を表す)において互いに化学量論的に反応させられる。
【0088】
(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマーの性質、ジオール成分の性質および使用および構成成分として可能なジオールに関して、繰り返しを避けるために、イソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aの第3の好ましい変形例に関連してなされた記載が参照される。
【0089】
好ましくは、1つだけの一官能性ブロッキング剤が用いられる。少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤の例は、ブロックトイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂Aの第1の好ましい変形例に関連して例として上に記載されたものと同じである。
【0090】
(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー、1,6−ヘキサンジイソシアネート、ビスフェノールAまたはジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤が好ましくは、溶剤なしに一緒に反応させられる。反応体はここで全て一緒に同時に反応させられるかまたは2つ以上の合成段階において反応させられる。ブロッキング剤またはビスフェノールAまたはジオール成分および(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマーだけが互いに反応させられる合成手順は避けられるのが好ましい。
【0091】
合成が多段階において行なわれるとき、反応体は、非常に様々な順で、例えば、連続的にまたは交互に、添加されてもよい。例えば、1,6−ヘキサンジイソシアネートを最初にビスフェノールAまたはジオール成分とブロッキング剤との混合物と反応させ、次いで(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマーと反応させるか、またはイソシアネート官能性成分の混合物をビスフェノールAまたはジオール成分およびブロッキング剤と反応させるか、またはイソシアネート官能性成分の混合物を最初にブロッキング剤と反応させ、次いでビスフェノールAまたはジオール成分と反応させる。ジオールの組合せの場合、ジオール成分を例えば、同じく2つ以上の部分に分け、例えば、同じく個々のジヒドロキシ化合物に分けてもよい。個々の反応体はそれぞれそれらの全部でまたは2つ以上の部分に分けて添加されてもよい。反応は発熱性であり、反応混合物の融解温度を超える温度において進む。反応温度は例えば60〜200℃である。添加速度または添加された反応体の量はそれ相応に発熱度に基づいて定量され、液体(溶融)反応混合物は加熱または冷却によって所望の温度範囲内に維持されてもよい。
【0092】
溶剤なしに行なわれた反応が終了して反応混合物が冷却されると、1,500〜4,000の範囲の数平均モル質量を有する、ブロックトイソシアネート基を有する固体ポリウレタンが得られる。ブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンは、検査を必要とせず、ブロックトイソシアネート官能性ポリウレタン樹脂Aとして直接に用いられてもよい。
【0093】
第3の実施態様によってポリウレタン樹脂Aを調製する間、1つ以上の、特に1つの第三アミノ基を有するモノアルコール、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミンまたはN,N−ジメチル−2−(2アミノエトキシ)エタノールが一官能性ブロッキング剤の代わりに用いられる場合、CEDコーティング組成物中の樹脂Aとして有用な第三アミノ基を有するポリウレタン樹脂が得られる。
【0094】
少なくとも1つの樹脂Aは、粒状物質の形、特に、球形でない形状を有する粒子の形でCEDコーティング組成物中に、特に、概して水によって分散されたCEDバインダー相またはCEDバインダー含有相中にそれぞれ、存在する。レーザー回折によって定量された樹脂Aの粒子の平均粒度(平均粒子直径)は、例えば、1〜100μmである。樹脂Aの粒子は、固体樹脂Aの粉砕(ミル粉砕)によって形成されてもよく、例えば、従来の粉末コート製造技術がその目的のために用いられてもよい。樹脂Aの粒子は、水性相にまだ変換されていないCEDバインダーにまたは非水性ペースト樹脂に微粉砕粉末として攪拌されるかまたは混合されるかどちらであってもよく、引き続いて、例えばビードミルによって、得られた懸濁液中で樹脂Aの粒子の付加的な湿式粉砕または分散を行なうことが可能である。
【0095】
樹脂Aの粒子を形成するさらなる方法は、溶解媒体(dissolution medium)中の少なくとも1つの樹脂Aの高温溶解(hot dissolution)および冷却の間および/または後の後続の樹脂Aの粒子の形成を必要とする。少なくとも1つの樹脂Aの溶解は、例えば、融解温度以上に、例えば、40〜200℃より高い温度に加熱しながら、特に、CEDバインダーの或る比率または全部で行なわれてもよく、その結果、樹脂Aの粒子は、後続の冷却の間および/または後に形成することができる。少なくとも1つの樹脂Aのための溶解媒体として用いられたCEDバインダーはここで、そのままでまたは有機溶剤中の溶液(混合物)として存在する液体であってもよい。完全な混合または攪拌は好ましくは、冷却の間に行なわれる。また、少なくとも1つの樹脂Aの溶解は、有機溶剤(混合物)中で加熱しながら行なわれてもよく、ここで樹脂Aの粒子の形成は、後続の冷却の間および/または後に進み、溶剤自体の中で進むことができる。またここで、得られたまだ冷却されていない溶液をCEDバインダーと混合した後に樹脂Aの粒子を形成させることが可能である。高温溶解および冷却の間および/または後の後続の樹脂Aの粒子の形成の方法を用いることによって、例えば、1〜50μm、特に1〜30μmの範囲の平均粒度の下端の平均粒度を有する樹脂Aの粒子を製造することが特に可能である。
【0096】
樹脂固形分、水および本発明に必須である少なくとも1つの樹脂Aの含有量のほかに、CEDコーティング組成物は、顔料、充填剤、溶剤および/またはコーティング添加剤を含有してもよい。
【0097】
顔料の例は、従来の無機および/または有機有色顔料および/または特殊効果顔料、例えば、二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、金属顔料、例えば、チタン、アルミニウムまたは銅顔料、干渉顔料、例えば、二酸化チタンコーテッドアルミニウム、コーテッドマイカ、プレートリット状酸化鉄、プレートリット状銅フタロシアニン顔料である。充填剤の例は、カオリン、タルカムまたは二酸化ケイ素である。また、CEDコーティング剤は、腐蝕防止顔料、例えば、リン酸亜鉛または有機腐蝕抑制剤を含有してもよい。顔料のタイプおよび量は、CEDコーティング剤の提案された適用に依存する。クリアコーティングが得られる場合、顔料を用いないかまたは透明な顔料だけ、例えば、超微粉砕二酸化チタンまたは二酸化ケイ素が用いられる。不透明なコーティングが得られる場合、CEDコーティング組成物は好ましくは、着色顔料を含有する。
【0098】
顔料および/または充填剤は、非水性CEDバインダーの部分に分散され、次いで適した装置、例えば、パールミル内で微粉砕されてもよく、その後、CEDバインダーの残りの比率と混合することによって終結する。中和剤を添加した後、(これがまだ行なわれていない場合)次に、CEDコーティング組成物または浴は、水で希釈することによってこの材料から製造されてもよい(一成分方法)。
【0099】
また、着色CEDコーティング組成物または浴は、CEDバインダー分散体と、別に調製された顔料ペーストとを混合することによって調製されてもよい(二成分方法)。最後に、例えば、CEDバインダー分散体を水でさらに希釈し、次に水性顔料ペーストを添加する。水性顔料ペーストは、当業者に公知の方法によって、好ましくは、これらの目的のために通例使用される当業者に公知のペースト樹脂中に顔料および/または充填剤を分散させることによって調製される。CEDコーティング組成物中で使用することができるペースト樹脂の例は、例えば、EP−A−0 183 025号明細書およびEP A−0 469 497号明細書に記載されている。
【0100】
CEDコーティング組成物の顔料および充填剤/樹脂固形分重量比は、例えば、0:1〜0.8:1であり、着色CEDコーティング組成物についてはそれは好ましくは0.05:1〜0.4:1である。
【0101】
CEDコーティング組成物は、樹脂固形分を基準にして例えば0.1重量%〜5重量%の量の比率において、コーティングにおいて通例の添加剤を含有してもよい。これらは、特に、CEDコーティング組成物のために公知の種類の添加剤、例えば、湿潤剤、中和剤、均染剤、触媒、腐蝕抑制剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤および耐クレータリング添加剤である。添加剤は、いずれかの方法で、例えば、バインダーの合成の間、CEDバインダー分散体の調製の間に顔料ペーストを介して、または別々にCEDコーティング組成物に導入されてもよい。
【0102】
CEDコーティング組成物は、コーティングのために準備ができているCEDコーティング浴を基準にして、例えば0〜5重量%の従来の比率において従来の溶剤を含有してもよい。このような溶剤の例には、グリコールエーテル、例えば、ブチルグリコールおよびエトキシプロパノール、およびアルコール、例えば、ブタノールなどがある。溶剤は、いずれかの方法で、例えば、CEDバインダーまたは架橋剤溶液の構成成分として、CEDバインダー分散体を介して、顔料ペーストの構成成分としてまたは別に行なわれる添加によってCEDコーティング組成物に導入されてもよい。
【0103】
上に記載されたように、CEDコーティング組成物は、CEDコーティング浴の調製のための公知の方法によって、すなわち、基本的には一成分によっておよび上に記載された二成分方法によっての両方で調製されてもよい。
【0104】
一成分方法によってCEDコーティング組成物を調製する間、例えば、少なくとも1つの樹脂AがCEDコーティング組成物の非水性成分の存在下で、特に非水性CEDバインダーの存在下で存在して、水による希釈によってこれらと共に水性相に変換されるように作業することが可能である。着色CEDコーティング組成物の場合、一成分方法に関連して上に記載された工程段階が行なわれてもよく、すなわち、顔料および/または充填剤は、少なくとも1つの樹脂Aと場合により架橋剤と場合により非イオン性樹脂とを含有する非水性CEDバインダーの部分に分散され、次に微粉砕されてもよく、その後にCEDバインダーの残りの比率と混合することによって完結する。少なくとも1つの樹脂Aは、分散のためにおよび/または完結のために用いられたCEDバインダー中に含有されてもよい。その後、CEDコーティング組成物または浴は、すでにこれが行なわれていなければ中和剤の添加後に、水による希釈によって調製されてもよい。高温溶解の上記の方法が樹脂Aの粒子の形成のために用いられる場合、樹脂Aの粒子の形成は、水による希釈の前および/または後に起こることがある。しかしながら、いずれの場合においても、樹脂Aの粒子の形成は、CEDバインダー相またはCEDバインダー含有相中でそれぞれ起こる。
【0105】
二成分方法によってCEDコーティング組成物を調製する間、少なくとも1つの樹脂Aが非水性CEDバインダーの存在下で存在して、すでにこれが行なわれていなければ中和剤の添加後に、水による希釈によってこれらと共に水性相に変換されるように作業することも可能である。少なくとも1つの樹脂Aを含有するCEDバインダー分散体はこのように得られる。次に、着色CEDコーティング組成物または浴は、別個の顔料ペーストと混合することによってこのように得られたCEDバインダー分散体から調製されてもよい。あるいは、二成分方法が用いられる場合、少なくとも1つの樹脂Aを含有する水性顔料ペーストをCEDバインダー分散体に添加するように作業することも可能である。このペーストは、例えば、少なくとも1つの樹脂Aを含有する非水性ペースト樹脂を調製する工程と、水性ペースト樹脂に変換する工程と、その存在する場合には顔料および/または充填剤を分散させる工程とによって調製されてもよい。
【0106】
また、少なくとも1つの樹脂AをCEDコーティング組成物に、例えば、修正添加剤(corrective additive)として別々に添加してもよい。例えば、コーティングのために準備ができているCEDコーティング浴に後で別に添加することも可能である。少なくとも1つの樹脂Aは有機または水性調剤として用いられてもよい。少なくとも1つの樹脂Aは、例えば、非水性の、すでに中和されたペースト樹脂の構成成分であってもよく、このようにCEDコーティング浴に添加されてもよい。しかしながら、少なくとも1つの樹脂Aはまた、最初に、水で薄めることが可能な形に変換されてもよい。例えば、別に行なわれる、特に後続の添加は、水性顔料ペーストの構成成分として実施されてもよく、または少なくとも1つの樹脂AはCEDバインダー分散体の構成成分としてまたは水性ペースト樹脂において添加されてもよい。
【0107】
CEDコーティング層は、CEDコーティング組成物から通常の方法で、例えば10〜30μmの乾燥層厚さにおいて、陰極として接続された電気導電性の例えば金属基材上に堆積され、例えば、100〜220℃、好ましくは、100〜190℃において、相当するCEDコーティング組成物に含有された樹脂Aの融解温度を超える対象温度において焼成されてもよい。融解温度と実際の焼付け硬化温度との間の差が十分に大きい場合、硬化温度まで温度のさらなる増加の間および/または後に実際の架橋が引き続いて進む前に、樹脂Aの粒子の融解だけまたは実質的にそれだけを起こすことが最初に可能である。樹脂Aの粒子を融解する間および/または後に樹脂Aが樹脂母材に混入されてもよい。CEDコーティング層は、例えば、単一層コーティングとしてまたは多層コーティング中のコーティング層として適用および焼成されてもよい。本発明によるCEDコーティング組成物は、特に、自動車の部品、自動車の車体または自動車の車体部品の腐蝕防止下塗りのために、自動車産業部門において特に適している。CEDプライマー層は場合により、さらなるコーティング層を提供されてもよい。しかしながら、本発明によるCEDコーティング組成物はまた、例えば、トップコート、クリアコートとしてまたは多層コーティング中に配置され、装飾機能を有してもよいコーティング層として陰極堆積および焼成されてもよい。
【0108】
特に、プライマーとして適用されたCEDコーティング層は、焼成前または後に1つ以上のさらなるコーティング層、例えば、トップコート層、もしくはプライマーサーフェーサーまたはプライマーサーフェーサー代用層、ベースコート層およびクリアコート層からなる多層コーティングを提供されてもよい。
【0109】
本発明によるCEDコーティング組成物は、それらから堆積されたCEDコーティングフィルムが焼成されるときに明らかに低減されたエッジの移動挙動またはさらにエッジの移動がないことによって区別される。焼成されたCEDコーティングフィルムの光学表面品質は良好であり、すなわち、CEDコーティングフィルム表面は、低い粗さを示す。概して、CEDコーティング組成物は、少なくとも1つの樹脂Aを含有しない相当するCEDコーティング組成物に比べてそれらから陰極堆積されたCEDコーティングフィルム中のクレーターの形成に対して、より耐性がある。
【実施例】
【0110】
実施例1a〜1d(2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンの調製)
以下の一般的合成方法によって1,6−ヘキサンジイソシアネートをジオールおよびブタノンオキシムと反応させることによって、2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンを製造した。
【0111】
1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)を最初に、撹拌機、温度計およびカラムを備えた2リットルの4首フラスコに導入し、最初に導入された量のHDIに対して、0.01重量%のジブチル錫ジラウレートを添加した。反応混合物を60℃に加熱した。次に、温度が80℃を超えないようにブタノンオキシムを配分した。理論NCO含有量が達せられるまで反応混合物を80℃において攪拌した。理論NCO含有量が達せられると、それぞれ140℃の温度を超えないように、ジオールA、B、Cを次々と添加した。いずれの場合も、理論NCO含有量が達せられるまで後続のジオールを添加しなかった。遊離イソシアネートが検出できなくなるまで反応混合物を最高140℃において攪拌した。次に、ホットメルトを放出し、冷却および固まらせた。
【0112】
2つのブロックトイソシアネートを有する得られた固体ポリウレタンをそれぞれ細かく砕き、粉末コーティングの製造に通例の粉砕および篩分け方法によって粉砕および篩分けし、このようにして、(レーザー回折によって定量された)20μmの平均粒度を有するバインダー粉末に変換した。
【0113】
2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンの溶融挙動をDSC(示差走査熱量測定、加熱速度10K/分)によって調査した。
【0114】
実施例1a〜1dを表1に示す。表は、どの反応体が何モル比で一緒に反応させられるかを記載し、DSCによって測定された溶融プロセスの最終温度が℃単位で記載される。
【0115】
表1

FT: 溶融プロセスの最終温度
HEX: 1,6-ヘキサンジオール
PENT: 1,5-ペンタンジオール
PROP: 1,3-プロパンジオール
【0116】
実施例2a〜2d(ブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンの調製)
以下の一般的合成方法によってt−HDI(トリマーヘキサンジイソシアネート、Bayer製のDesmodur(登録商標)N3600)、HDI、ジオール成分およびブタノンオキシムを反応させることによって、ブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンを製造した。
【0117】
t−HDIとHDIとの混合物を最初に、撹拌機、温度計およびカラムを備えた2リットルの4首フラスコに導入し、導入されたイソシアネートの量を基準にして0.01重量%のジブチル錫ジラウレートを添加した。反応混合物を60℃に加熱した。次に、140℃を超えないようにブタノンオキシムとジオールとの混合物)を添加した。温度を注意深く最高140℃まで上昇させ、さらに遊離イソシアネートが検出されなくなるまで混合物を攪拌した。次に、ホットメルトを放出し、冷却および固まらせた。
【0118】
ブロックトイソシアネート基を有する得られた固体ポリウレタンをそれぞれ細かく砕き、粉末コーティングの製造に通例の粉砕および篩分け方法によって粉砕および篩分けし、このようにして、(レーザー回折によって定量された)20μmの平均粒度を有するバインダー粉末に変換した。
【0119】
ブロックトイソシアネート基を有するポリウレタンの溶融挙動をDSCによって調査した(加熱速度10K/分)。
【0120】
実施例2a〜2dを表2に示す。表は、どの反応体がどのモル比で一緒に反応させられるのかを記載し、DSCを用いて測定された溶融プロセスの最終温度は℃の単位で示される。
【0121】
表2

略語については表1を参照
【0122】
実施例3a〜3f(ポリウレタンジオールの調製)
以下の一般的合成方法によってHDI(1,6−ヘキサンジイソシアネート)、またはHDIとDCMDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)との混合物を1つ以上のジオールと反応させることによって、ポリウレタンジオールを製造した。
【0123】
1つのジオールまたはジオールの混合物を最初に、撹拌機、温度計およびカラムを備えた2リットルの4首フラスコに導入し、最初に導入された量のジオールに対して0.01重量%のジブチル錫ジラウレートを添加した。混合物を80℃に加熱した。次に、HDIまたはHDI/DCMDI混合物を配分し、高温反応混合物が固まらないように温度を維持した。遊離イソシアネートが検出できなくなるまで(NCO含有量<0.1%)、反応混合物を攪拌した。次に、ホットメルトを放出し、冷却および固まらせた。
【0124】
得られた固体ポリウレタンジオールをそれぞれ細かく砕き、粉末コーティングの製造に通例の粉砕および篩分け方法によって粉砕および篩分けし、このようにして、(レーザー回折によって定量された)50μmの平均粒度を有するバインダー粉末に変換した。
【0125】
ポリウレタンジオールの溶融挙動をDSC(示差走査熱量測定、加熱速度10K/分)によって調査した。
【0126】
実施例3a〜3fを表3に示す。表は、どの反応体が何モル比で一緒に反応させられるかを記載し、DSCによって測定された溶融プロセスの最終温度が℃単位で記載される。
【0127】
表3

略語については表1を参照
【0128】
実施例4a〜4b(ポリウレタンポリオールの調製)
以下の一般的合成方法によってHDI、またはHDIとDCMDIとの混合物をGLY(グリセロール)とジオールとの混合物と反応させることによって、ポリウレタンポリオールを製造した。
【0129】
ポリオールを最初に、撹拌機、温度計およびカラムを備えた2リットルの4首フラスコに導入し、最初に導入された量のポリオールに対して、0.01重量%のジブチル錫ジラウレートを添加した。混合物を80℃に加熱した。次に、HDIまたはHDI/DCMDI混合物を配分し、高温反応混合物が固まらないように温度を維持した。遊離イソシアネートが検出できなくなるまで(NCO含有量<0.1%)、反応混合物を攪拌した。次に、ホットメルトを放出し、冷却および固まらせた。
【0130】
得られた固体ポリウレタンポリオールをそれぞれ細かく砕き、粉末コーティングの製造に通例の粉砕および篩分け方法によって粉砕および篩分けし、このようにして、(レーザー回折によって定量された)50μmの平均粒度を有するバインダー粉末に変換した。
【0131】
ポリウレタンポリオールの溶融挙動をDSC(示差走査熱量測定、加熱速度10K/分)によって調査した。
【0132】
実施例4a〜4bを表4に示す。表は、どの反応体が何モル比で一緒に反応させられるかを記載し、DSCによって測定された溶融プロセスの最終温度が℃単位で記載される。
【0133】
表4

略語については表1を参照
【0134】
実施例5(ビスマスメタンスルホネートの製造)
296gの脱イオン水と576g(6モル)のメタンスルホン酸との混合物を最初に導入し、80℃に加熱した。混合物を攪拌する間に466g(1モル)の酸化ビスマス(Bi23)を部分に分けて添加した。3時間後に、濁った液体が得られ、それは、5400gの脱イオン水で希釈したとき、乳白色の溶液を生じる。溶液の蒸発時に残された残渣はビスマスメタンスルホネートである。
【0135】
実施例6(ブロックトポリイソシアネートの製造)
2.75モルのジフェニルメタンジイソシアネートおよび233gのメチルイソブチルケトンを反応容器に秤量し、室温において攪拌した。次いで2.75モルのジエチレングリコールモノブチルエーテルを、冷却しながら1時間で添加した。一定のNCO値が達せられると、炭酸プロピレンおよびジエタノールアミンから得られた1:1付加物1モルおよび4.1gのジブチル錫ジラウレート(触媒)を添加した。遊離イソシアネートをもはや検出できなくなるまで反応混合物を50℃に維持した。
【0136】
実施例7a)〜r)(CEDバインダーの製造)
a)666gのメトキシプロパノールと、319gのビスフェノールAと、2モルのエポキシ樹脂(ビスフェノールA/エピクロロヒドリンをベースとする。エポキシ当量190)および1モルのポリプロピレングリコール400の付加物591gと、886gのエポキシ樹脂(ビスフェノールA/エピクロロヒドリンをベースとする。エポキシ当量190)との混合物を45℃に加熱し、1時間攪拌した。次に、121gのジエタノールアミンおよび81.5gのジメチルアミノプロピルアミンを添加し、バッチを2時間125℃において攪拌した。次にメトキシプロパノールを真空下で蒸留し、バッチを240gのヘキシルグリコールで希釈してアミノエポキシ樹脂CEDバインダーの溶液を生じた。
b)〜i)実施例1a)〜d)および2a)〜d)において得られたポリウレタン粉末を、いずれの場合も、それぞれの粉末14.3部:CEDバインダー100部の固体重量比においてa)で得られた溶液に十分に混合した。
k)〜r)実施例3a)〜f)および4a)〜b)において得られたポリウレタン粉末を、いずれの場合も、それぞれの粉末14.3部:CEDバインダー100部の固体重量比においてa)で得られた溶液に十分に混合した。各混合物を高温溶液が得られるまで攪拌下でそれぞれのポリウレタン粉末の融点よりも加熱した。その後、高温溶液を攪拌下で80℃に冷却させた。室温までさらに冷却させた後、いずれの場合も、それぞれの微細に分散された固体ポリウレタンを含有するアミノエポキシ樹脂の溶液が得られた。
【0137】
実施例8a)〜r)(CEDクリアコートの製造)
アミノエポキシ樹脂溶液7a)〜r)の各々を、70:30の固体重量比において実施例6のブロックトポリイソシアネートの溶液と混合した。(実施例5の)ビスマスメタンスルホネートを、樹脂固形分に対して1.3重量%のビスマスの含有量に相当する触媒として添加し、ギ酸および脱イオン水で希釈して、100gの樹脂固形分当たり33ミリ当量の酸含有量を有する12重量%のCEDクリアコートを生じた。
【0138】
脱脂リン酸塩未処理鋼試験シート(Ra値=1.5μm)にCEDクリアコート浴8a〜8rから厚さ20μmのCEDコートを提供した(コーティング条件:260Vの堆積電圧において32℃で2分、焼成条件:20分、180℃の対象温度)。焼成されたCEDクリアコート層の粗さをRa値として測定した(DIN4777、T500 Lommel−Testerを使用、カットオフ2.5mm、15mmの測定パス)。
【0139】
また、穿孔された(貫通孔の直径10mm)脱脂リン酸塩未処理鋼試験シートを完全に同様な方法でコートし、次いで、144時間DIN 50 021−SSに対する塩吹付条件に暴露した。貫通孔のエッジをエッジ発錆について評価した(等級KW0〜5:KW0=エッジ上に錆がない、KW1=エッジ上に単離した錆の斑点、KW2=エッジの1/3未満に錆の斑点、KW3=エッジの1/3〜2/3が錆に覆われている、KW4=エッジの2/3超が錆に覆われている、KW5=エッジが完全に錆びている)。
【0140】
表5


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水のほかに、(i)少なくとも1つのフィルム形成用自己または外部架橋CEDバインダーおよび任意の成分:架橋剤、ペースト樹脂、非イオン性樹脂からなる樹脂固形分と、(ii)場合により、顔料、充填剤、コーティング添加剤および有機溶剤からなる群から選択された少なくとも1つの成分とを含み、ヒドロキシル基、遊離イソシアネート基およびブロックトイソシアネート基からなる群から選択された官能基を有する少なくとも1つの樹脂Aを、樹脂固形分に対して1〜20重量%で含有し、前記少なくとも1つの樹脂Aが40〜200℃の融解温度を有する粒子として存在する、CEDコーティング組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの樹脂Aの比率が前記樹脂固形分に対して5〜15重量%である、請求項1に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの樹脂Aの融解温度が、30〜150℃の広い融点範囲の上端である、請求項1または2に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの樹脂Aの溶解度が、20℃において酢酸ブチルまたは水1リットル当たり10g未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項5】
レーザー回折によって定量された樹脂Aの粒子の平均粒度が1〜100μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項6】
前記樹脂Aの粒子が球形でない形状を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項7】
前記樹脂Aの粒子が、少なくとも1つの固体樹脂Aを粉砕することによるかまたは溶解媒体中の前記少なくとも1つの樹脂Aの高温溶解および冷却の間および/または後の後続の樹脂Aの粒子の形成によって形成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項8】
CEDコーティング組成物から陰極堆積されたコーティング層の熱硬化の間に前記少なくとも1つの樹脂Aをヒドロキシル基、遊離イソシアネート基およびブロックトイソシアネート基からなる群から選択されたその官能基との化学架橋プロセスに関与させることができるCEDバインダー/架橋剤系を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項9】
前記CEDバインダー/架橋剤系が、ウレタンおよび/または尿素結合の形成下でヒドロキシルおよび/または第二アミノおよび/または第一アミノ基とブロックトイソシアネート基との反応によって架橋する、請求項8に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの樹脂Aが、ヒドロキシル基、遊離イソシアネート基およびブロックトイソシアネート基からなる群から選択された官能基を有するポリウレタン樹脂である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項11】
前記ポリウレタン樹脂が、1,6−ヘキサンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをジオール成分とモル比x:(x+1)(xは2〜6の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるポリウレタンジオールの形のヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂であり、前記ジオール成分が単一ジオールまたはジオールの組合せである、請求項10に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項12】
前記ポリウレタン樹脂が、ジイソシアネート成分とビスフェノールAまたはジオール成分とをモル比x:(x+1)(xは2〜6の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるポリウレタンジオールの形のヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂であり、前記ジイソシアネート成分の50〜80モル%が1,6−ヘキサンジイソシアネートによって形成され、20〜50モル%が1つまたは2つのジイソシアネートによって形成され、各々が、前記ジイソシアネート成分の少なくとも10モル%を形成し、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネートおよびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートからなる群から選択され、各ジイソシアネートのモル%が合計100モル%になり、前記ジオール成分の20〜100モル%が、少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールによって形成され、0〜80モル%が、直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールと異なっている少なくとも1つのジオールによって形成され、各ジオールのモル%が合計100モル%になる、請求項10に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項13】
前記ポリウレタンジオールの合成のために用いられたジヒドロキシ化合物の比率が、少なくとも1つのトリオールを含むトリオール成分で置き換えられる、請求項11または12に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項14】
前記ポリウレタン樹脂が、1,6−ヘキサンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをジオール成分とモル比(x+1):x(xは2〜6の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるポリウレタンジイソシアネートの形のイソシアネート官能性ポリウレタン樹脂であり、前記ジオール成分が単一ジオールまたはジオールの組合せである、請求項10に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項15】
前記ポリウレタン樹脂が、ジイソシアネート成分とビスフェノールAまたはジオール成分とをモル比(x+1):x(xは2〜6の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるポリウレタンジイソシアネートの形のイソシアネート官能性ポリウレタン樹脂であり、前記ジイソシアネート成分の50〜80モル%が1,6−ヘキサンジイソシアネートによって形成され、20〜50モル%が1つまたは2つのジイソシアネートによって形成され、各々が、前記ジイソシアネート成分の少なくとも10モル%を形成し、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネートおよびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートからなる群から選択され、各ジイソシアネートのモル%が合計100モル%になり、前記ジオール成分の20〜100モル%が、少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールによって形成され、0〜80モル%が、直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールと異なっている少なくとも1つのジオールによって形成され、各ジオールのモル%が合計100モルになる、請求項10に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項16】
前記ポリウレタン樹脂が、(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー、1,6−ヘキサンジイソシアネートおよびビスフェノールAまたはジオール成分をモル比1:x:x(xは1〜6の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるポリウレタンポリイソシアネートの形のイソシアネート官能性ポリウレタン樹脂であり、前記ジオール成分が単一直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールであるかまたは2〜4のジオールの組合せであり、ジオールの組合せの場合、ジオールの各々が前記ジオールの組合せのジオールの少なくとも10モル%を構成し、前記ジオールの組合せが、ビスフェノールAまたは少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオール少なくとも80モル%からなる、請求項10に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項17】
前記ポリウレタン樹脂が、1,6−ヘキサンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤とモル比x:(x−1):2(xは2〜6の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうる1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂であり、前記ジオール成分が単一ジオールまたはジオールの組合せである、請求項10に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項18】
前記ポリウレタン樹脂が、ジイソシアネート成分、ビスフェノールAまたはジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤をモル比x:(x−1):2(xは2〜6の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうる1分子当たり2つのブロックトイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂であり、前記ジイソシアネート成分の50〜80モル%が1,6−ヘキサンジイソシアネートによって形成され、20〜50モル%が1つまたは2つのジイソシアネートによって形成され、各々が、前記ジイソシアネート成分の少なくとも10モル%を形成し、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネートおよびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートからなる群から選択され、各ジイソシアネートのモル%が合計100モル%になり、前記ジオール成分の20〜100モル%が、少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールによって形成され、0〜80モル%が、直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールと異なっている少なくとも1つのジオールによって形成され、各ジオールのモル%が合計100モル%になる、請求項10に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項19】
前記ポリウレタン樹脂が、(シクロ)脂肪族ジイソシアネートのトライマー、1,6−ヘキサンジイソシアネート、ビスフェノールAまたはジオール成分および少なくとも1つの一官能性ブロッキング剤をモル比1:x:x:3(xは1〜6の任意の所望の値を意味する)において反応させることによって調製されうるブロックトイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂であり、前記ジオール成分が単一直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオールであるかまたは2〜4のジオールの組合せであり、ジオールの組合せの場合、ジオールの各々が前記ジオールの組合せのジオールの少なくとも10モル%を構成し、前記ジオールの組合せが、ビスフェノールAまたは少なくとも1つの直鎖状脂肪族α,ω−C2−C12−ジオール少なくとも80モル%からなる、請求項10に記載のCEDコーティング組成物。
【請求項20】
CEDコーティング層が、請求項1〜19のいずれか一項に記載のCEDコーティング組成物から陰極として接続された電気導電性基材上に陰極堆積され、CEDコーティング組成物中に含有された少なくとも1つの樹脂Aの融解温度を超える対象温度において焼成される、電気導電性基材上のCEDコーティング層の製造方法。
【請求項21】
前記CEDコーティング層が、単一層コーティングおよび多層コーティング中のコーティング層からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記電気導電性基材が、自動車の部品、自動車の車体および自動車の車体部品からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2009−529093(P2009−529093A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558389(P2008−558389)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/005895
【国際公開番号】WO2007/103477
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】