説明

陽イオン交換置換クロマトグラフィー方法および陽イオン交換置換クロマトグラフィー方法における置換剤化合物として用いられる陽イオン有機化合物

置換クロマトグラフィー方法および当該方法に用いられ、一般式(I)を有する置換剤化合物:式中、R、R、R、R’、R’およびR’基は各々独立して、アルキル、アリールおよびアラルキルから選択され得、そしてRおよびR、RおよびR’、RおよびR、RおよびR’、またはRおよびRのいずれか1以上によって、四級窒素を1以上含む環が形成され得;R、R’、R、およびR’は各々独立して、アルキル、アリール、アラルキルおよび−(CH−(CHY)−(CH−NAnから選択され得、R、R、およびRは上記定義の通りであり;各Yは独立して、−H、−OH、−OR、ハロ、アルキル、アリールおよびアラルキルから選択され得、−Rはアルキルまたは−(CH−(CHOH)−(CH−NAnであり得、R、R、およびRは上記定義の通りであり;qおよびzは、q+zが約6以下になるという条件で、各々独立して0から約6の任意の整数であり得;a、bおよびcはどのフラグメントにおいてもa+b+cの合計が少なくとも1になるという条件で、各々独立して0から2の任意の整数であり得;そして、Anは、中性化合物を得るために必要に応じて各々独立して1以上の有機または無機の一価または多価の陰イオンであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重四級アンモニウム塩(多重四級体(multiple quats))を含む組成物、および、クロマトグラフィー精製における置換剤として当該組成物を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーの置換モードは、Tswettによって1906年に最初に見出され、彼は、オーバーロードした溶出クロマトグラフィーの条件下で試料の置換が生じたことに着目した。1943年には、Tiseliusが、クロマトグラフィーの幅広いサブジェクトが、3つの異なった「モード」−前端モード、溶出モード、および置換モード−に基づいて構成され得ることを提唱した。それ以来、溶出クロマトグラフィーの分野のほとんどの発展および応用(特に分析クロマトグラフィーにおける)が起こった。実に、現在では、特に限定がなければ「クロマトグラフィー」との用語は、一般に、溶出モードのクロマトグラフィーをいう。
【0003】
溶出モードおよび置換モードは、理論上および実践上の両方において容易に識別される。溶出クロマトグラフィーでは、精製される試料の溶液が、一般的にはカラム内で固定相にアプライされる。移動相は、試料が不可逆的に吸着されたり全く吸着されずにいたりするのではなく、むしろ可逆的に結合するように、選択される。移動相が固定相上を流されると、移動相と固定相との間に平衡が生じ、それによって、固定相に対する親和性に依存して、試料は、元の試料内に存在し得る他の成分との相対的な親和性を反映した速さで、カラム内を通過する。標準的な溶出クロマトグラフィーについて特に注目に値するのは、溶出溶媒最前部(あるいは定組成溶出におけるゼロカラム容量)が常に、カラム外で試料に先行することである。
【0004】
定組成溶出クロマトグラフィーの変更および拡張が、段階勾配クロマトグラフィーで見られ、段階勾配クロマトグラフィーでは、様々な組成の一連の溶離剤が固定相を通過する。例えば、イオン交換クロマトグラフィーにおいて、移動相の塩濃度および/またはpHの段階的な変更が、分離を経た分析物の溶出または脱着に用いられる。
【0005】
置換クロマトグラフィーは、カラムから混合物の成分を除去するために置換剤化合物を用いる。置換剤化合物は、通常、固定相に対して、分離される混合物内のどの成分よりも、ずっと高い親和性を有する。これは溶出クロマトグラフィーとは対極にあり、溶出クロマトグラフィーでは、溶離剤が、固定相に対して、分離される成分よりも低い親和性を有する。置換クロマトグラフィーと溶出クロマトグラフィーまたは脱着クロマトグラフィーとを識別する鍵となる操作上の特徴は、置換剤化合物の使用である。置換クロマトグラフィーでは、まずカラムが、分離される成分の全てが固定相に対して比較的高い親和性を有する条件下で、キャリア溶媒によって平衡化される。ある量の供給混合物(大量かつ非常に希薄であり得る)がこのカラムにロードされて、供給混合物内の個々の成分が固定相に吸着する。すなわち、供給混合物の成分が固定相上に分配および吸着されて、その場にとどまる。これらの全ての成分が置換によって分離されるのであれば、キャリア溶媒は、カラムから試料を全く含まないで出てくる。供給混合物の成分はこの時固定相に存在し、カラム上の各成分の位置は、初期条件下の固定相に対するその相対的な親和性と相関している。原則として、何らかの成分の分子が、より低い親和性を有する何らかの異なる成分の分子と、固定相の所定の場所で置き換わる。結果として、最終的に、個々の成分が、親和性の最も高いものから最も低いものまで順番にカラム上に配置される。
【0006】
供給混合物の一部の成分(例えば固定相に対する著しい親和性を持っていない成分)がキャリア溶媒と共にカラムを通り抜けることを許容することは、時に好都合である;この場合、保持された供給成分のみが置換クロマトグラフィーによって分離される。
【0007】
試料がカラムにロードされたら、適切な溶媒中に置換剤化合物を含む溶液をカラム内に導入し、固定相を通過させる。置換剤化合物は、固定相に対して供給混合物のどの成分よりも高い親和性を有するように選択される。置換剤および移動相を適切に選択したとすれば、個々の成分は、吸着親和性が高くなる順に、高濃度の比較的純粋な物質の隣接ゾーンとしてカラムを出ていく。精製された個々の成分のゾーンに続いて、置換剤がカラムから出てくる。置換クロマトグラムは、置換剤化合物が試料に続くこと、そして供給物成分が、高濃度の比較的純粋な物質の隣接ゾーンとしてカラムから出てくることによって、溶出クロマトグラムと容易に区別される。
【0008】
置換クロマトグラフィーは、プロセススケールクロマトグラフィーのための特に有利な特徴をいくつか有する。第1に、置換クロマトグラフィーは、一段階で生成物の分離および濃縮を達成することができる。比較して、定組成溶出クロマトグラフィーは、分離の間に著しい生成物の希釈を生じる。第2に、置換方法は、平衡等温線の非線形区域で作用するため、高いカラムローディングが可能である。これは、溶出クロマトグラフィーよりもずっと良好なカラムの利用を可能にする。第3に、カラムの展開および成分分離に必要とされる溶媒は、比較する溶出方法よりも少ない。第4に、典型的な溶出クロマトグラフィーにおいて満足な分離を得るためには比較的多くの分離要素が求められるのに対し、置換クロマトグラフィーは、分離要素の少ない混合物からの成分濃縮および精製をすることができる。
【0009】
これらすべての利点によって、置換クロマトグラフィーは広く活用されると思われ得た。しかしながら、置換クロマトグラフィーには問題点が残っている。そのような問題点の1つは、使用後毎に固定相を廃棄するのは経済的でないため、カラムを再生させる必要があることである。もう1つの問題点は、比較的単純な化合物であって、合成が容易でおよび/または手頃な(経済的な)値段で市販可能な適切な置換剤化合物を得ることである。これらの2つの問題点は、溶出クロマトグラフィーに対する置換クロマトグラフィーの重大な欠点を示している。
【0010】
再生に関しては、置換方法は固定相に対して非常に高い親和性を有する置換剤化合物を用いるため、カラムの再生および再平衡化に要する時間が溶出クロマトグラフィーと比較して長くなり得る。その上、多くの場合、再生の間に比較的多量の溶媒が必要である。これらの問題点が事実上、置換クロマトグラフィーの利点を溶出クロマトグラフィーよりも減じている。
【0011】
2つ目の問題点である、比較的容易に合成することができ、および/または手頃な(経済的な)値段で市販可能な有用な置換剤化合物を得ることは、固定相に対して高い親和性も有するが、再生の間にカラムから比較的容易に除去もできる置換剤化合物が必要であることに起因する。先行技術によって提供されているそのような化合物は、これらの2つの重要な基準の一方または双方を満たしていない。様々な化合物が、低分子量の置換剤として提供されているが、これらは合成および精製が非常に難しく、そして手頃な値段では市販されていないか、または全く市販されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
置換クロマトグラフィーがクロマトグラフィー技術の主流となるために、効果的な置換剤の重大な満たされていない必要性がいまなお存在する。効果的な置換剤とは、その合成および精製が簡単で、大量生産しやすく、および/または市販可能であり、そして、固定相を置換クロマトグラフィー方法で引き続き再利用できるように、固定相の効率的な再生を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
今回、低分子量の正に荷電した化合物の一群が、置換クロマトグラフィー方法における置換剤化合物として非常に効率的に機能し得ることがわかった。したがって、本発明は、置換クロマトグラフィー方法と置換剤化合物群との双方に関する。本発明における置換剤化合物は、置換クロマトグラフィー方法において置換剤化合物として用いられた後に固定相から効率的に除去され得、引き続く置換クロマトグラフィー方法における固定相の再生および再利用を可能とする。さらに、これらの置換剤化合物は、比較的簡単で安価な合成方法によって、良い収率で、そして高い純度で、作製され得る。したがって、本発明は、先行技術の置換クロマトグラフィー方法における上記の問題点を扱う。
【0014】
本発明の実施態様における置換剤化合物は、有機四級アンモニウム塩(四級塩)として知られている化合物のクラスに属する。四級塩は正に荷電した窒素原子を含む組成物である。これらの組成物は脂肪族鎖を含むが、それにもかかわらず多くの場合水溶性であり得る。水に可溶であるとき、これらの化合物は、pHの変化によって影響を受けない正電荷を有するという有用な特性を示す。すなわち、窒素中心の電荷はアミンの単純なプロトン化の結果ではないので、これらの塩類の水溶液のpHは、窒素中心の正電荷の損失を生じることなく幅広く調整され得る。一般的なポリアミンおよびその関連化合物は、通常、陽イオン交換置換クロマトグラフィーの置換剤化合物として有用ではない。なぜなら、これらは置換クロマトグラフィー樹脂に適合可能なpHの範囲では完全にはプロトン化されない(そして、そのために十分な正電荷を呈示しない)からである。対照的に、本発明の置換剤化合物は、クロマトグラフィー樹脂が安定であるどの範囲のpHにおいても使用され得る。
【0015】
1つの実施態様において、本発明は、置換クロマトグラフィー方法に関し、この方法は、
少なくとも1の分離される成分を含む混合物を適切な固定相にロードする工程;
一般式(I):
【0016】
【化1】

【0017】
を有する置換剤化合物を含む混合物を固定相にアプライすることによって、固定相から上記の少なくとも1の成分を置換する工程を含み、
式中、
、R、R、R’、R’およびR’基は各々独立して、アルキル、アリールおよびアラルキルから選択され得、そしてRおよびR、RおよびR’、RおよびR、RおよびR’、またはRおよびRのいずれか1以上によって、四級窒素を1以上含む環が形成され得;
、R’、R、およびR’は各々独立して、アルキル、アリール、アラルキルおよび−(CH−(CHY)−(CH−NAnから選択され得、R、R、およびRは上記定義の通りであり;
各Yは独立して、−H、−OH、−OR、ハロ、アルキル、アリールおよびアラルキルから選択され得、−Rはアルキルまたは−(CH−(CHOH)−(CH−NAnであり得、R、R、およびRは上記定義の通りであり、そして1以上のYが、1以上の電磁的方法によって検出可能な基であり得;
qおよびzは、q+zが約6以下になるという条件で、各々独立して0から約6までの任意の整数であり得;
a、bおよびcは、どのフラグメントにおいてもa+b+cの合計が少なくとも1になるという条件で、各々独立して0から2までの任意の整数であり得;そして
Anは、中性化合物を得るために必要に応じて、各々独立して1以上の有機または無機の一価または多価の陰イオンであり得る。
【0018】
1つの実施態様において、本発明は、上記一般式(I)で定義される組成物に関する。1つの実施態様において、本発明は、以下の構造を有しそしてTBTQ−Aと呼ばれる組成物に関する:
【0019】
【化2】

【0020】
1つの実施態様において、一般式(I)による組成物は、DBQ、DMTQ、DBTQ、BTA、およびDBD以外であり、それぞれ以下に定義される構造を有する。
【0021】
1つの実施態様において、本発明は、置換クロマトグラフィーに有用な置換剤組成物に関する。1つの実施態様において、置換剤組成物は、適切な水溶液中に、上記の一般式(I)の化合物を含む。1つの実施態様において、本発明は、上記の構造を有しそしてTBTQ−Aとして認められる、置換クロマトグラフィーにおいて有用な置換剤組成物に関する。1つの実施態様において、置換剤組成物は、DBQ、DMTQ、DBTQ、BTA、およびDBD以外である。
【0022】
1つの実施態様において、本発明は、置換クロマトグラフィーに供される試料内の微量成分の検出、収集、または定量の1以上のための方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
したがって、本発明は、置換クロマトグラフィーのための置換剤化合物、組成物および方法を提供する。これにより、その合成および精製が簡単で、そして大量生産しやすく、固定相を効率的に再利用できるように固定相の効率的な再生を可能にする、効果的な置換剤化合物の必要性が対処される。加えて、本発明は、試料または混合物の微量成分が検出、収集、および/または定量され得る方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本明細書において用いられる「ハロ」とは、ハロゲンを含む基を意味し、例えばクロロ、ブロモ、フルオロまたはヨードが挙げられる。
【0025】
本明細書において用いられる「アルキル」および「アルキレン」とは、適宜1または2の水素原子を除去することによってアルカン分子から得られた炭素および水素原子でなる基を意味する。「アルキル」および「アルキレン」は、直鎖、環状、または分岐の部分を有する、飽和した一価および二価の炭化水素基を含み得る。「アルキル」または「アルキレン」基は、アルキル基が少なくとも2つの炭素原子を含む場合、任意の炭素−炭素間の二重または三重結合を含み得る。当該アルキル基において、環状部分には少なくとも3つの炭素原子が必要とされることが理解される。本発明において、アルキルおよびアルキレン基は、任意の数の炭素原子を含み得る。本発明の1つの実施態様においては、約20以下の炭素原子が用いられ得る。例えば、1つの実施態様において、本発明では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素のアルキル基が用いられ得る。もちろん、本発明では、より長いまたは分岐したアルキル基が用いられ得る。アルキレン基は、例えば、そうでなければアルキル基である2つの基から環が形成される実施態様において、用いられ得る。
【0026】
本明細書において用いられる「アリール」とは、未置換のまたは置換した芳香族構造を意味し、例えば、フェニル、ナフチル、フルオレニル、フェナントリルなどが挙げられる。アリール基は、置換される場合、本明細書で定義されるハロ基、アルキル基、別のアリール基またはアラルキル基によって置換され得る。
【0027】
本明細書において用いられる「アラルキル」とは、アルキル基の水素原子がアリール基に置換された基を意味する。「アリール」は、上記定義の通りである。本発明において、アラルキル基は任意の数の炭素原子を含み得る。本発明の1つの実施態様においては、アラルキル基は、約20以下の炭素原子を含む。例えば、1つの実施態様において、本発明では、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素のアラルキル基が用いられ得る。もちろん、本発明では、さらに炭素原子の多いアラルキル基が用いられ得る。
【0028】
本明細書において用いられる「An」とは、本発明の置換剤化合物と会合する1以上の有機または無機の一価または多価の陰イオンを表す。本発明の四級アンモニウムイオンと会合する負に荷電した陰イオンの個数および総電荷は、混合物のpH、および中和に用いられる1以上の酸の陰イオンに依存して変化する。本発明の陰イオン(An)は、当業者に公知の任意の有機または無機の一価または多価の陰イオンであり得、スルホネート、トリフラート、トリフィルアミド(trifylamide)、カルボキシレート、F、Cl、Br、I、ClO、HSO、SO2−、PO3−、HPO2−、HPO、PO2−、HPO、BF、PFなどのような、一価、二価、および多価の陰イオンが挙げられる。一般に、Anの価数および個数は、中性化合物を得るために、必要に応じて適切に選択され得る。
【0029】
本明細書に示したいずれの数値も、どの低い方の数値とどの高い方の数値との間でも少なくとも2単位の間隔があれば、1単位の増分でその低い方の数値からその高い方の数値までの全ての数値を含む。一例として、成分の量、または、プロセス変数(例えば、温度、圧力、時間など)の数値が、例えば1から90まで、好ましくは20から80まで、さらに好ましくは30から70までであると述べられている場合、15から85、22から68、43から51、30から32などのような数値が、本明細書において明示的に列挙されていると意図される。1より小さい数値については、1単位は、適宜0.0001、0.001、0.01または0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図した単なる例にすぎず、列挙した最小値と最大値との間の数値の全ての可能な組み合わせが、同様に本出願において明示的に述べられていると見なされる。
【0030】
(陽イオン置換剤化合物)
本発明の陽イオン置換剤化合物は、式(I):
【0031】
【化3】

【0032】
を有するものを含み、
式中、
、R、R、R’、R’およびR’の基は各々独立して、アルキル、アリールおよびアラルキルから選択され得、そしてRおよびR、RおよびR’、RおよびR、RおよびR’、またはRおよびRのいずれか1以上によって、四級窒素含有環が形成され得;
およびRは各々独立して、アルキル、アリール、アラルキルおよび−(CH−(CHY)−(CH−NAnから選択され、R、R、およびRは上記定義の通りであり;
各Yは独立して、−H、−OH、−OR、ハロ、アルキル、アリールおよびアラルキルから選択され得、−Rはアルキルまたは−(CH−(CHOH)−(CH−NAnであり得、R、R、およびRは上記定義の通りであり、そして1以上のYが、1以上の電磁的方法によって検出可能な基であり得;
qおよびzは、q+zが約6以下になるという条件で、各々0から約6までの任意の整数であり得;
a、bおよびcは、どのフラグメントにおいてもa+b+cの合計が少なくとも1になるという条件で、各々0から2までの任意の整数であり得;そして
Anは、中性化合物を得るために必要に応じて、1以上の有機または無機の一価または多価の陰イオンであり得る。
【0033】
式(I)の置換剤化合物は、紫外/可視分光測定、蛍光発光、または当業者に公知の任意の他の方法による検出を容易にする付加置換基を含み得る。そのような置換基はまた、陽イオン交換クロマトグラフィーに対する化合物の親和性に影響を与え得、その結合の強さをより小さくするか、またはより大きくする。場合によっては、置換クロマトグラフィーによって精製される化合物を検出する標準手段を妨げる置換基を持たないことが、有利となる。この後者の場合の一例は、式(I)の置換剤化合物が、280nm(特定の生体高分子(タンパク質、オリゴペプチド、抗体など)が特徴的に吸収する波長)の紫外光を吸収しないことである。検出能を高めるための適切な誘導体化剤は当業者に公知であり、当業者によって適切に選択され得る。
【0034】
1つの実施態様において、本発明における置換剤化合物内の1以上のYは、1以上の電磁的方法によって検出可能な基であり得る。そのような電磁的方法には、例えば、紫外/可視分光光度測定法、蛍光分光光度測定法、および放射性検出方法が含まれる。適切なY基およびそのようなY基を検出するための適切な方法は、そのような方法での使用のために、当業者に公知である。
【0035】
適切な例示となる陽イオン置換剤化合物には、例えば、以下の具体例が含まれる。各々の場合で、Anは、1以上の有機または無機の一価または多価の陰イオンであり得、各々のAnの個数および価数は、中性化合物(すなわち、各々の分子の実効電荷は、それぞれのイオンの正および負の電荷の平衡が保たれており、ゼロである)を提供するように適切に選択される。以下の具体的な化合物は、上に説明した一般式(I)によって定義され、その中に定義される置換基を含む置換剤化合物の例として提供される。以下の例は限定を目的とするものではなく、むしろ発明の様々な実施態様における置換剤化合物を明らかにする具体例を提供することを目的とする。
【0036】
DBQ(以下の構造式を有する):
【0037】
【化4】

【0038】
DMTQ(以下の構造式を有する):
【0039】
【化5】

【0040】
DBTQ(以下の構造式を有する):
【0041】
【化6】

【0042】
TBTQ−A(以下の構造式を有する):
【0043】
【化7】

【0044】
BTA(以下の構造式を有する):
【0045】
【化8】

【0046】
DBD(以下の構造式を有する):
【0047】
【化9】

【0048】
式中、このような各々の構造(すなわち、DBQ、DMTQ、DBTQ、TBTQ−A、BTAおよびDBD)において、Anは1以上の有機または無機の1価の陰イオンであり得るか、またはAnは多価の陰イオンであり得、どちらの場合も、中性分子を得るために適した数のそのような部分が存在する。このAnの定義および使用は、この明細書全体に適用される。
【0049】
ある例示となる置換剤化合物は、四級窒素含有環を含み、Rがエチレン基を介してR’に結合され、R、R、R、R’、R’、R’、RおよびR’の全てがメチルであり、Anは上記定義の通りであり、そしてY=−OHであり、以下の構造式を有する:
【0050】
【化10】

【0051】
1つの実施態様において、本発明の置換剤化合物は分子内にエーテル基を含まない。1つの実施態様において、本発明の置換剤化合物は、隣接した四級窒素原子を連結するエーテル基を含まない。1つの実施態様において、本発明の置換剤化合物は、ポリ四級基を含むが、隣接したポリ四級基はエーテル含有部分によって連結されていない。1つの実施態様において、本発明の置換剤化合物は、樹木状ポリエーテルを含まない。1つの実施態様において、本発明の置換剤化合物は、四級窒素原子を含むが、これらは、エーテルまたはポリエーテルから得られる基によって相互に連結されていない。
【0052】
本発明の1つの実施態様によれば、適切な固定相は陽イオン交換樹脂である。適切な陽イオン交換樹脂は当該分野で公知であり、そして一般に、陽イオンが引き付けられる陰イオン部分(例えば、カルボキシメチル、スルホプロピル、スルホン酸、炭酸など)で誘導体化された、メタクリル酸、シリカ、ポリスチレン、またはポリスチレン−ジビニルベンゼンのような樹脂を含む。適切な陽イオン交換材料は、分離される材料のタイプに基づいて当業者によって選択され得る。1つの実施態様において、本発明での使用に適した陽イオン交換樹脂としては、例えば、Tosoh SP−5PW、Tosoh CM−650、SP−650、およびSP−550、TOYOPEARL(登録商標) Super−Q 650S、TOYOPEARL(登録商標) CM 650S、およびTSK Gel SP−5PWの陽イオン交換樹脂(東ソー株式会社(東京、日本およびMontgomeryville、ペンシルバニア)から入手可能)が挙げられる。加えて、適切な陽イオン交換樹脂としては、例えば、UnoSphere SおよびMacroPrep S/MacroPrep High−S(Bio-Rad Laboratories(Hercules、カリフォルニア)から入手可能);CHIROBIOTIC(登録商標)(Advanced Separation Technology(Whippany、ニュージャージー)から入手可能);SP−8HRおよびSP−15HR(Waters CORPORATION(Miliford、マサチューセッツ)から入手可能);Mini S、Sourse 15S、Mono S、SP SEPHAROSE(登録商標) HP、およびSP SEPHAROSE(登録商標) FF(GE-Amersham Biosciences(Piscataway、ニュージャージー)から入手可能);SHOWDEX(登録商標) IEC SP−825およびSHOWDEX(登録商標) IEC SP−2025(昭和電工(New York、ニューヨーク)から入手可能);PL−SCX(Polymer Laboratories(Amherst、マサチューセッツ)から入手可能);Macrosphere300(Alltech Laboratories(Deerfield、イリノイ)から入手可能);PolySulfoEthylA(PolyLC,Inc.(Columbia、メリーランド)から入手可能);ならびにFRACTOGEL(登録商標) EMD SE HicapおよびFRACTOGEL(登録商標) EMD SO3(EMD Chemicals Inc.(Gibbstown、ニュージャージー)から入手可能)が挙げられる。他の適切な陽イオン交換樹脂も同様に用いられ得る。
【0053】
本発明の1つの実施態様によれば、置換クロマトグラフィー方法は、タンパク質およびポリペプチドの分離および精製に用いられ得る。本明細書で用いられるように、タンパク質は概して、約5kDa(キロダルトン)よりも大きな分子量を有するポリアミノ酸であると定義され、そしてポリペプチドは、約5kDaよりも小さな分子量を有するポリアミノ酸である。当業者に理解されるように、タンパク質とポリペプチドとの間の相違点は、より多くの次数にもある。一般に、タンパク質は三次構造を示すのに対し、ポリペプチドは一般には示さない。
【0054】
1つの実施態様において、本発明は、タンパク質およびポリペプチドのような成分をそのような成分を含む混合物から分離するために特に適用可能である。1つの実施態様において、混合物内の1以上の成分は、1以上のポリペプチド、1以上のタンパク質、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む。すなわち、本発明の方法は、タンパク質の混合物、ポリペプチドの混合物、およびタンパク質とポリペプチドとの両方の混合物の分離に適用可能である。1つの実施態様において、1以上のタンパク質は、約5kD以上の分子量を含む。1つの実施態様において、混合物は、2以上のタンパク質、2以上のポリペプチド、またはそれらの混合物を含む。
【0055】
1つの実施態様において、混合物からのタンパク質および/またはポリペプチドが、当該タンパク質および/またはポリペプチドが実質的に濃縮されている画分、および/または当該タンパク質および/またはポリペプチドが他のタンパク質および/またはポリペプチド成分から実質的に分離されている画分において、固定相から置換される。すなわち、1つの実施態様において、目的とするタンパク質またはポリペプチドを含む混合物が固定相にアプライされ、当該タンパク質またはポリペプチドが固定相から置換されて1以上の画分中に収集されると、当該タンパク質および/またはポリペプチドは、当該画分中にいずれかまたは両方が濃縮された(すなわちより高濃度な)形態で得られるか、または元の混合物中の他の異なるタンパク質および/またはポリペプチド成分から実質的に分離されて得られる。したがって、明らかに、混合物は、分離される2以上の成分を含み得る。後に述べるように、いくつかの実施態様において、本発明の置換クロマトグラフィーに供される混合物は、様々な異なる供与源からの多くの異なる物質の組み合わせを含み得、そして本発明の方法は、それらの様々な成分を分離するためにそのような複雑な混合物に有用に適用され得る。
【0056】
別の実施態様において、本発明は、少なくとも1の成分(例えば、タンパク質、ポリペプチドまたはその他、以下詳述)および少なくとも1の不純物を含む混合物に適用可能である。本実施態様において、本発明の方法は、成分を不純物から精製するために用いられ得る。このような不純物の除去は、(1)目的のまたは所望の成分が置換された後の固定相上への固定化または保持による(例えば、固定相がフィルターの働きをする場合)、または(2)固定相から洗い出すまたは固定相から溶出させることによる(不純物が「伝統的な」溶出クロマトグラフィーに対してより類似した方法で除去される場合)かのいずれかであり得る。本実施態様においては、不純物がカラム上に固定化されたかまたはカラムから除去されたら、本明細書に記載される置換クロマトグラフィーによって、所望の成分がカラムから取り出され得る。
【0057】
本発明は、広範囲にわたる様々な成分(上述のタンパク質、ポリペプチド、および不純物ばかりでなく、他の多くの成分を含む)に適用可能である。1つの実施態様において、混合物は、1以上の天然または組換えの抗体、またはそのような抗体のいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、混合物は、1以上の天然または組換えの酵素、またはそのような酵素のいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、混合物は、診断使用のための1以上の天然または組換えのタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、混合物は、ヒトまたは獣医学用の治療的使用のための1以上の天然または組換えのタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、混合物は、1以上の天然または組換えの動物またはヒトの血漿に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、混合物は、1以上の天然または組換えの植物性材料に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、混合物は、動物またはヒトの乳または組換え動物から得られた乳の1以上に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、混合物は、1以上の天然または組換えの鳥卵に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、混合物は、1以上の天然または組換えの細菌、酵母、真菌、ウイルスまたは昆虫に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、混合物は、1以上の天然または組換えの哺乳類の細胞培養物または動物組織に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、混合物は、1以上の有機化合物、医薬品または医薬品中間体、またはそれらのいずれか2以上の混合物を含み得る。1つの実施態様において、上記1以上の有機化合物、医薬品または医薬品中間体の1以上が、キラル体である。1つの実施態様において、混合物は、上記のいずれの混合物または組み合わせ、例えば、抗体および酵素の混合物、または植物性材料および鳥卵から得られたタンパク質および/またはポリペプチドの混合物、または本発明の方法が適用可能であり得る上記の例示となる成分のいずれかのいかなる混合物をも、含み得る。
【0058】
1つの実施態様において、本発明の方法は、固定相から出てくる置換剤化合物を検出する工程をさらに含み、この検出する工程は、紫外/可視吸収分光法、蛍光発光分光法、質量分析法、pH、電気伝導度、および1以上の電気化学的方法の1以上による。上記の方法は、置換剤化合物の検出のために最も一般的に適用可能な方法であるが、当該分野で公知の他の適切な方法を用いてもよい。そのような検出は、上に述べたような、1以上の「Y」置換基の検出であってもよい。
【0059】
1つの実施態様において、成分が固定相から置換されるのを検出するのに用いられる方法は、目的の具体的な成分に基づいて適切に決定され得る。したがって、例えば、タンパク質およびポリペプチドは、それらの可視/紫外吸収スペクトルまたは特定吸収波長に基づいて、または可視化剤でそれらを誘導体化することによって決定され得る。同様に、医薬品および医薬品中間体は、それらの可視/紫外吸収スペクトルまたは特定吸収波長に基づいて決定され得る。
【0060】
1つの実施態様において、本発明の方法は、固定相を再生する1以上の工程をさらに含む。1つの実施態様において、再生する工程は、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類塩、有機酸、アルキルスルホン酸、四級アンモニウム水酸化物、四級アンモニウム塩、アルキルアミンの1以上の溶液での固定相の処理を含み得、溶液は適切なpH緩衝液をさらに含み得る。他の適切な再生工程が、必要に応じて適宜追加され得、この工程は、精製水による単なる洗浄を含む。1つの実施態様において、再生は、水との有機共存溶媒の使用を含む。
【0061】
1つの実施態様において、本発明は、置換クロマトグラフィーに供される試料内の微量成分の検出、収集または定量の1以上のための方法を提供する。本発明の方法は、一般的には、先の実施態様に記載したように、予備精製の方法として用いられ得るが、置換クロマトグラフィーは、試料内の微量成分の容易な検出、収集および定量を可能にする効果的な試料調製技術でもある。どの位置においてもクロマトグラフィー樹脂の容量を飽和するのに十分でない濃度の試料成分は、置換の列に加わらないかもしれないが、その代わり、試料内の主要成分の間、および最後の主要成分と置換剤との間の狭い移行ゾーンに保持され得る。これは、移行ゾーンをA、BおよびCと標示した図2において明瞭に示される。理論に束縛されないが、これらの微量成分は置換クロマトグラフィー方法に完全には加わっていないかのように見える。いずれにせよ、微量成分はカラムから外れ、そして検出され、収集され、および/または定量され得る。
【0062】
これらの移行ゾーンに対応する画分の単離は、微量成分が著しく濃縮(10〜400倍)され、主要成分が著しく減少した試料を提供する。この組み合わせのため、非主要成分および不純物の同定および定量が、元の試料と比較してよりずっと容易になる。これらの濃縮された試料の分析は、あらゆる適切な方法によってなされ得、このような方法には、置換クロマトグラフィーに用いられるものと同じ樹脂での溶出クロマトグラフィーが含まれる。あるいは、十分な量の微量成分が収集された場合には、これらの成分は置換クロマトグラフィーに供され得る。この実施態様は、最終製品分析、バイオマーカーの発見、方法管理および方法最適化に有用である。本明細書において用いられる用語「微量成分」とは、置換クロマトグラフィーに供される混合物内に存在する相対的に主要でない成分を意味し、そして各々のそのような微量成分は、本発明の置換クロマトグラフィー方法に最初に供される混合物の約0.01質量%から約10質量%までを構成し得る。
【0063】
以下の実施例に、例示となる合成手順を提供し、それによって、これらの例示となる陽イオン置換剤化合物が合成され得る。本発明の範囲内の他の適切な陽イオン置換剤化合物は、当業者に公知の方法および/または当業者に理解されるように上記から応用した方法で合成され得る。
【0064】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を示すために含まれる。以下の実施例で開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが発明者によって見出された技術の代表であり、したがって、その実施のために好ましい態様を構成すると考えられることが、当業者に理解される。しかしながら、本明細書の開示を考慮すれば、当業者には、開示されている具体的な実施態様内で多くの変更が可能であり、そして、添付の請求の範囲によってのみ限定される発明の趣旨および範囲から外れることなく、同じか類似した結果がなお得られることが理解される。
【実施例】
【0065】
実施例1−テトラ四級(Tetraquat)、DBQの合成:
1,3−ジクロロ−2−プロパノール(DCP)を、本質的にはPerrine(J.Organic Chemistry、18巻、1137頁〜1141頁(1953年))によって記載されたように、2当量のジメチルアミンとの反応によって、1,3−ビス(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロパノール(「BDAP」)に転換する。次いで、新たに蒸留したBDAP(146g、1モル)およびおよそ170mLの水を、還流冷却器を取り付けた丸底フラスコに投入する。N−(2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル)−N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(905g(固形分59.8%にて)=541g=2モル)の水溶液を3時間にわたって滴下しながら添加する。得られた溶液を、室温で11時間攪拌する。次いで、この溶液を50℃に加熱し、連続的に攪拌しながら1時間この温度で保持し、その後、室温まで冷却させる。得られたDBQ水溶液は、陽イオン交換媒体のような固定相での置換剤化合物としての使用に適している。固体のDBQ(これもまた置換剤化合物としての使用に適している)は、ロータリーエバポレーションによって水を除去し、その後2−プロパノールからの析出を繰り返し、そして最終的に高真空下で溶媒を除去することで回収し得る。
【0066】
実施例2−トリ四級(Triquat)、DMTQの合成:
滴定分析法(ヨウ化テトラブチルアンモニウム/過塩素酸法)によって72.9質量%の活性エポキシ種を含むことが見出されたグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)(Aldrich、CAS#3033−77−0)水溶液を用いる。約400mL水中の塩酸ジメチルアミン(408g、5モル、Aldrich)の溶液を、還流冷却器に取り付けられた丸底フラスコ内で激しく攪拌する。これに、1040gのGMAC溶液(=758g活性=5モル)を、外部から加熱も冷却もせずに約1時間にわたって滴下させながら添加する。この添加では、通常目立った発熱を生じない。得られた溶液を、添加が完了してから1時間、室温で攪拌する。この時点で、別の等量のGMAC溶液(5モル)の滴下による添加を開始する。この添加により強い発熱が生じ、GMAC溶液の添加を続けると最終的には溶液の還流が生じる。この第2のGMAC投入の添加速度は、発熱を管理しておけるように調整する。添加が完了すると、溶液を放冷しながら攪拌する。温度が約70℃に達したら(約3時間後)、電子コントローラ(J−Kem Electronics)で設定値70℃に制御された加熱マントルを用いて、外部加熱をあてがう。この溶液を、約24時間、70℃で保持する。室温に冷却されると、DMTQ溶液は、陽イオン交換媒体のような適切な固定相での置換剤化合物としての使用に適している。
【0067】
実施例3−トリ四級(Triquat)、TBTQ−Aの合成:
トリアミンN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N,N’,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン(POLYCAT(登録商標)77としても知られる)の原液を、2−プロパノール中で調製し、ドライ窒素下で数日間、CaHと共に攪拌することによって乾燥させる。テフロン(登録商標)でコートされたサーモカップルおよびゴムのセプタムが取り付けられた250mLの3首丸底フラスコに、このろ液107mL(12.5gのPOLYCAT(登録商標)77(0.06モル)を含む)と、磁気攪拌子とを投入する。フラスコに窒素をフラッシュし、窒素の陽圧下で密封する。臭化ベンジル(35g、0.2モル、Aldrich)を、約3時間にわたって、シリンジポンプによって一定の速さで、テフロン(登録商標)のニードルを通して攪拌されたフラスコに添加する。緩やかな発熱がみられ、内部温度は約30℃まで上昇する。臭化ベンジルの添加が完了すると、この溶液を、40〜45℃で14時間加熱し、室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターで粘性油まで脱水し、メタノール中に集めて60mLのシクロヘキサンで3回抽出し、炭素で脱色し、ろ過し、そして乾燥するまで脱水して、オフホワイトの固体であるTBTQ−Aを得る。この物質は、陽イオン交換媒体のような適切な固定相での置換剤化合物としての使用に適している。
【0068】
実施例4−ジ四級(Diquat)、BTAの合成:
DCP(80g、0.6モル)および40%の水性トリメチルアミン(188g(40質量%にて)=75g=1.27モル)を、還流冷却器を取り付けた500mLの丸底フラスコに投入する。この混合物を75℃に加熱し、激しく磁気攪拌しながら48時間この温度で保持する。この終了時の透明な無色の溶液を、室温まで冷却させる。BTAの収率は>98%である。室温に冷却されると、BTA溶液は、陽イオン交換媒体のような適切な固定相での置換剤化合物としての使用に適している。
【0069】
実施例5−ジ四級(Diquat)、DBDの合成:
臭化ベンジル(87g、0.5モル、Aldrich)、100mLのアセトニトリル(HPLCグレード、Fisher)、および磁気攪拌子を、サーモカップルを取り付けた500mLの3首丸底フラスコに投入し、次いで窒素下で密封する。蒸留して得たBDAP(35g、0.24モル)を、メスシリンダーに入れて計量し、次いで60mLの添加漏斗に投入して、20mLの無水アセトニトリルと共に濯ぎ入れる。得られたBDAP溶液の滴下による添加を、80分にわたって実施する。すぐに強い発熱がみられ;添加を続けると溶液の温度はゆっくりと約45℃まで上昇する。添加は、約45℃の温度を維持するために終点付近で加速し得る。BDAP溶液の添加が完了すると、加熱マントルを配置し、溶液を55℃で3時間、次いで70℃で15時間、加熱する。この溶液を室温に冷却し、回収フラスコに移し、ロータリーエバポレーターで脱水して粘性液とする。この液体をアセトン/水中に集め、そしてロータリーエバポレーターで再度揮発し、黄褐色の固体であるDBD122.7g(収率100%)を得、これは、分析HPLCによって本質的に100%の純度である。この物質は、陽イオン交換媒体のような適切な固定相での置換剤化合物としての使用に適している。
【0070】
実施例6−タンパク質混合物の置換クロマトグラフィー
(材料および装置)
ウシのシトクロムC(Sigma #C3131、分子量12,327)およびウマのシトクロムC(Sigma #C7752、分子量12,384)を、受けとったままの状態で用いる。HPLC分析によれば、それらは、それぞれ約87%の純度、および約86%の純度であり、残りは280nmおよび430nmに吸収を持つ、損傷を受けたシトクロム分子またはアイソフォームである。他の全ての化学薬品は、特に明記しない限りACS試薬グレードかそれ以上であり、受けとったままの状態で用いる。緩衝溶媒はHPLCグレードの蒸留水である。ローディング/平衡化緩衝液は、25mMのMOPSO(2−ヒドロキシ−3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)を含む(NaOHでpH=7.0に調整)。置換剤溶液は、濃原液をローディング緩衝液で所望の濃度に希釈することによって調製する。全ての緩衝溶液は、ヘリウムパージし、そして0.2μmのフィルターを通してろ過してから使用する。置換実験はKnauer HPLCシステム(K−1001型ポンプ、K−2600型UV検出器、4チャンネルのデガッサー、および溶媒オーガナイザー)を用いて実施する。画分分析は、Waters HPLCシステム(600型ポンプおよび制御装置、996型検出器(PAD)、および冷蔵試料トレイを備えた717plus型オートサンプラー)を用いて実施する。
【0071】
(カラム調製)
固定相(陽イオン交換樹脂(Tosoh SP−5PW)、6.0×150mmカラムにロードした)を、メソッドC(下記)を用いて洗浄および再生し、次いで、ローディング/平衡化緩衝液内でナトリウム型として保存する。カラムのアウトプットは、264nmでモニターされた紫外/可視フロー検出器、電気伝導度フローセルおよびpHフローセルを通過させる。カラムを流速0.17mL/分のローディング緩衝液で平衡化する。3つ全ての信号(UV吸収、電気伝導度、pH)が安定した平坦なベースラインを形成すると(約25分、1CV)、置換実験をすぐに開始する。カラムの先端部をナトリウム型から水素型に変換することがないように、平衡化時間が過度になることを避ける。
【0072】
(破過実験)
ローディング緩衝液内のウシのシトクロムCの4mMの溶液、およびローディング緩衝液内のウマのシトクロムCの4mMの溶液を用いて、0.1〜0.5mL/分の間の様々な流速で破過(breakthrough)実験を行う。これらの実験から、満足のいくそして再現可能なデータが、0.17mL/分で得られ得ることが見出される。カラム飽和容量は、ウシのシトクロムCで148mg(34.7mg/mL マトリックス)、ウマのシトクロムCで150mg(35.2mg/mL マトリックス)であることが見出される。
【0073】
(置換実験)
ウシのシトクロムC(4.12mg/mL、Sigma #C3131、分子量=12,327)およびウマのシトクロムC(4.10mg/mL、Sigma #C7752、分子量12,384)の各溶液を、ローディング緩衝液中で調製する。タンパク質の濃度は、BCA−CopperおよびBradford分析を用いて決定する。これらの2つのシトクロム溶液を等容量で混合し、20.0μLの試料ループにロードし、次いで洗浄され適切に平衡化された陽イオン交換カラムに、0.17mL/分の定流速で120分間、送り込む。ループをインプットフロー路外に切り換え、ローディング緩衝液を0.17mL/分で25分間カラムの間中に送り込む。最後に、ローディング緩衝液中の4.0mMのDBQ置換剤溶液を0.17mL/分でカラムに送り込み、カラムのアウトプットを紫外/可視フロー検出器(10μLフローセル、264、280、430nmでモニター)を経由してフラクションコレクターへと通過させる。時間を関数とした紫外/可視検出器の出力を、図1に再現する。
【0074】
置換剤溶液がカラム内へと流れ始めてからおよそ70分間、カラム流出物内でいかなるタンパク質物質も検出されないため、この間は画分を収集しない。画分1を、置換剤のフローを開始してから約70分後に収集し、その後の画分を1分毎に収集する。電気伝導度フローセルおよびpHフローセル(上記参照)は、置換実験の経過をモニターするために、通常は紫外/可視検出器の後ろのアウトプット路にある;しかしながら、画分を収集するときは、これらの2つのセルを、置換ピーク間の移行の幅を広げないようにフロー路外に切り換える。合計108の画分を収集する。収集されると、画分は、後のHPLC分析のために、密封し、冷蔵する。置換実験は室温(22℃)で実施する。
【0075】
(置換実験画分のHPLC分析)
置換実験で収集された108全ての画分を、それぞれの内容物を決定するためにHPLC分析に供する。
この分析の条件は:
カラム:
ステンレス鋼、4.6(内径)×200mm、PolySULFOETHYL A、強陽イオン交換シリカベースマトリックス、粒子径5μm、細孔径300オングストローム、PolyLC(Columbia、メリーランド)社製
緩衝溶媒:
HPLCグレード蒸留水
溶出緩衝液:
A−25mM NaHPO (NaOHでpH=6.8に調整)
B−500mM NaCl+25mM NaHPO(NaOHでpH=6.8に調整)
溶出緩衝液は0.2μmフィルターを通してろ過し、粒状物を除去した。
流速:
1.0mL/分で一定。
勾配方法:
0〜2分 100%A、定組成
2〜62分 100%Aから100%B、線形
62〜72分 100%B、定組成
UV検出器:
264nm−DBQ+全タンパク質
280nm−全タンパク質
430nm−シトクロムタンパク質のみ
試料調製:
画分試料30μLおよび用時調製した10mMの1,4−ジチオトレイトール(DTT)30μLを混合する。この混合物50μLをカラムに注入する。
【0076】
各々の画分における成分濃度は、分析HPLCピークの積分によって決定する。その結果は、図2にグラフ表示したヒストグラムにまとめられる。純画分をプールし、表1にまとめたデータを得る。カラムからの全タンパク質の収率は98%である。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例7−タンパク質混合物の置換クロマトグラフィー
(材料および装置)
ウシのシトクロムC(Sigma #C3131、概算分析(approx. assay)=89%)およびウシのα−キモトリプシノゲンA(Sigma #C4879、概算分析=65%)を、受け取ったままの状態で用いる。他の全ての化学薬品は、特に明記しない限りACS試薬グレードかそれ以上であり、受け取ったままの状態で用いる。緩衝溶媒はHPLCグレードの蒸留水である。ローディング/平衡化緩衝液は、25mMのMOPSO(2−ヒドロキシ−3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)を含む(NaOHでpH=7.0に調整)。置換剤溶液は、濃原液をローディング緩衝液で所望の濃度に希釈することによって調製する。全ての緩衝溶液は、ヘリウムパージし、そして0.2μmのフィルターを通してろ過してから使用する。置換実験はKnauer HPLCシステム(K−1001型ポンプ、K−2600型UV検出器、4チャンネルのデガッサー、および溶媒オーガナイザー)を用いて実施する。画分分析は、Waters HPLCシステム(600型ポンプおよび制御装置、996型検出器(PAD)、および冷蔵試料トレイを備えた717plus型オートサンプラー)を用いて実施する。
【0079】
(カラム調製)
カラム(Amersham Mono S、5.0×200mm)を、メソッドC(下記)を用いて洗浄および再生し、次いで、塩化ナトリウム緩衝液(2.0M NaCl+25mM MOPSO、NaOHでpH=7.0に調整)内でナトリウム型として保存する。カラムのアウトプットは、264nmでモニターされた紫外/可視フロー検出器、電気伝導度フローセルおよびpHフローセルを通過させる。カラムを流速0.20mL/分のローディング緩衝液(上記参照)によって平衡化する。3つ全ての信号(UV吸収、電気伝導度、pH)が安定した平坦なベースラインを形成すると(約20分、1CV)、置換実験をすぐに開始する。カラムの先端部をナトリウム型から水素型に変換することがないように、平衡化時間が過度になることを避ける。
【0080】
(破過実験)
ローディング緩衝液内のウシのシトクロムCの4.0mg/mLの溶液およびローディング緩衝液内のウシのα−キモトリプシノゲンAの4.0mg/mLの溶液を用いて、0.1〜0.5mL/分の間の様々な流速で破過実験を行う。ローディング緩衝液は、25mMのMOPSO(2−ヒドロキシ−3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)から調製し、NaOHでpH=7.0に調整する。0.20mL/分で良好で再現可能なデータが得られる。カラム飽和容量は、シトクロムCで約198mg(50.4mg/mL マトリックス)、キモトリプシノゲンで約376mg(95.7mg/mL マトリックス)である。これらの実験において、ボトルから直接の未精製のタンパク質を用いる。
【0081】
(置換実験)
ウシのシトクロムC(5.04mg/mL、Sigma #C3131)およびウシのα−キモトリプシノゲンA(9.96mg/mL、Sigma #C4879)の各溶液を、ローディング緩衝液(上記参照)中で調製する。タンパク質の濃度は、BCA−CopperおよびBradford分析を用いて決定する。これらの2つのシトクロム溶液を等容量で混合し、20.0mLの試料ループにロードし、次いで洗浄され適切に平衡化された陽イオン交換カラム(上記参照)に0.40mL/分の定流速で60分間、送り込む。このループをインプットフロー路外に切り換え、ローディング緩衝液を0.20mL/分で20分間カラムの間中に送り込む。最後に、ローディング緩衝液内の4.0mMのDBQ置換剤溶液を0.20mL/分でカラムに送り込み、カラムのアウトプットを紫外/可視フロー検出器(10μLフローセル、264、280nmでモニター)を経由してフラクションコレクターへと通過させる。画分を1.00分毎に収集する。電気伝導度フローセルおよびpHフローセル(上記参照)は、置換実験の経過をモニターするために、通常は紫外/可視検出器の後ろのアウトプット路にある;しかしながら、画分を収集するときは、これらの2つのセルを、置換ピーク間の移行の幅を広げないようにフロー路外に切り換える。収集されると、画分は、後のHPLC分析のために、密封し、冷蔵する。置換実験は室温(22℃)で実施する。この置換トレースを、図3に示す。
【0082】
(タンパク質のHPLC分析)
HPLC画分分析の詳細を以下に示す。
カラム:
内寸4.6×200mmのステンレス鋼カラム
PolyLC(Columbia、メリーランド)社製
PolySULFOETHYL A、強陽イオン交換シリカベースマトリックス
粒子径5μm、細孔径300オングストローム
緩衝溶媒:
HPLCグレード蒸留水
溶出緩衝液:
A−25mM NaHPO (NaOHでpH=6.8に調整)
B−0.50M NaCl+25mM NaHPO(NaOHでpH=6.8に調整)
溶出緩衝液は0.2μmフィルターを通してろ過し、粒状物を除去した。
流速:
1.0mL/分で一定。
勾配方法:
0〜2分 100%A、定組成
2〜62分 100%Aから100%B、線形勾配
62〜72分 100%B、定組成
UV検出器の波長:
264nm−DBQ+タンパク質
280nm−タンパク質
430nm−シトクロム
試料調製:
50μLの試料混合物をカラムに注入する。
【0083】
125の収集した試料は全て上述の方法によって分析し、264nm、280nmおよび430nmからの組み合わせたデータを、図4および下記の表に示す。カラムからのタンパク質の収率は近似量(>97%)である。
【0084】
【表2】

【0085】
(カラム洗浄および再生手順)
DBQのような置換剤化合物を用いた置換手順に用いる陽イオン交換カラムの洗浄および/または再生には、以下のメソッドの1以上が用いられ得る。「再生効率」は、その手順の完了後に回復される元のカラムの破過容量の割合として表す。各々のメソッドにおいて、工程は列挙された順序で行い、流速はおよそ0.64mL/分である。
【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
【表6】

【0090】
【表7】

【0091】
【表8】

【0092】
【表9】

【0093】
【表10】

【0094】
【表11】

【0095】
本明細書に記載されたおよび本願で請求された全ての組成物および方法は、本明細書の記載を考慮し、当業者の知識に基づいて、過度の実験を要することなく、当業者によって作製および実施され得る。本発明の組成物および方法は、特定の好ましい実施態様に関して記載されているが、発明の概念、趣旨、および範囲から外れることなく、本明細書に記載された組成物および/または方法および当該方法の工程もしくは工程の順序に変更が適用され得ることは、当業者に明らかである。より具体的には、本明細書に記載された薬剤の代わりに、化学的または生理学的に関連するある種の薬剤を用いて、同じかまたは類似の結果が得られるであろうことは明らかである。当業者に明らかなこのような類似の代用物および変更は全て、添付の請求の範囲に定義される、本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内にあると考えられる。さらに、本明細書に記載された具体的な実施態様のいずれかあるいは全ての可能な組み合わせは全て、本発明の範囲内にあると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、本発明の実施態様におけるウシのシトクロムCとウマのシトクロムCとの混合物の置換クロマトグラフィー期間にわたる、各種波長における紫外/可視HPLC検出器の出力を表したグラフである。
【図2】図2は、本発明の実施形態におけるウシのシトクロムCとウマのシトクロムCとの混合物の置換クロマトグラフィー期間にわたって収集された画分の濃度を表したグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施態様におけるウシのシトクロムCとウシのα−キモトリプシノゲンACとの混合物の置換クロマトグラフィー期間にわたる、各種波長における紫外/可視HPLC検出器の出力を表したグラフである。
【図4】図4は、本発明の実施態様におけるウシのシトクロムCとウシのα−キモトリプシノゲンACとの混合物の置換クロマトグラフィー期間にわたって収集された画分の濃度を表したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換クロマトグラフィー方法であって、
1以上の分離される成分を含む混合物を適切な固定相にロードする工程;
一般式(I):
【化1】

を有する置換剤化合物を含む混合物を該固定相にアプライすることによって、該固定相から該1以上の成分の少なくとも1つを置換する工程であって、
式中、
、R、R、R’、R’およびR’基は各々独立して、アルキル、アリールおよびアラルキルから選択され得、そしてRおよびR、RおよびR’、RおよびR、RおよびR’、またはRおよびRのいずれか1以上によって、四級窒素を1以上含む環が形成され得;
、R’、R、およびR’は各々独立して、アルキル、アリール、アラルキルおよび−(CH−(CHY)−(CH−NAnから選択され得、R、R、およびRは上記定義の通りであり;
各Yは独立して、−H、−OH、−OR、ハロ、アルキル、アリールおよびアラルキルから選択され得、−Rはアルキルまたは−(CH−(CHOH)−(CH−NAnであり得、R、R、およびRは上記定義の通りであり、そして1以上のYが、1以上の電磁的方法によって検出可能な基であり得;
qおよびzは、q+zが約6以下になるという条件で、各々独立して0から約6までの任意の整数であり得;
a、bおよびcは、どのフラグメントにおいてもa+b+cの合計が少なくとも1になるという条件で、各々独立して0から2までの任意の整数であり得;そして
Anは、中性化合物を得るために必要に応じて、各々独立して1以上の有機または無機の一価または多価の陰イオンであり得る、工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記固定相が、陽イオン交換材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1以上の成分が、1以上のポリペプチド、1以上のタンパク質またはそれらのいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記1以上のタンパク質が、約5kD以上の分子量を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物からのタンパク質および/またはポリペプチドが、該タンパク質および/またはポリペプチドが実質的に濃縮されている画分、および/または該タンパク質および/またはポリペプチドが、他のタンパク質および/またはポリペプチド成分から実質的に分離されている画分において、前記固定相から置換される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が、2以上のタンパク質、2以上のポリペプチド、またはそれらの混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記混合物からのタンパク質および/またはポリペプチドが、該タンパク質および/またはポリペプチドが実質的に濃縮されている画分、および/または該タンパク質および/またはポリペプチドが、他のタンパク質および/またはポリペプチド成分から実質的に分離されている画分において、前記固定相から置換される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物が、少なくとも2の分離される成分を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記混合物が、少なくとも1の前記成分および少なくとも1の不純物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記固定相から出てくる前記置換剤化合物を検出する工程をさらに含み、該検出する工程が、紫外/可視吸収分光法、蛍光発光分光法、質量分析法、pH、電気伝導度、および1以上の電気化学的方法の1以上による、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記固定相を再生する工程をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記再生する工程が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類塩、有機酸、アルキルスルホン酸、四級アンモニウム水酸化物、四級アンモニウム塩、アルキルアミンの1以上の溶液で前記固定相を処理することを含み、該溶液が適切なpH緩衝液をさらに含み得る、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記再生する工程が、水と有機共存溶媒とを含む溶液で前記固定相を処理することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記置換剤化合物が、DBQである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記置換剤化合物が、DMTQである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記置換剤化合物が、DBTQである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記置換剤化合物が、TBTQ−Aである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記置換剤化合物が、BTAである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記置換剤化合物が、DBDである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの抗体、またはそのような抗体のいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの酵素、またはそのような酵素のいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記混合物が、診断使用のための1以上の天然または組換えのタンパク質および/またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記混合物が、ヒトまたは獣医学用の治療的使用のための1以上の天然または組換えのタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの動物またはヒトの血漿に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの植物性材料に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記混合物が、動物またはヒトの乳または組換え動物から得られた乳の1以上に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの鳥卵に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの細菌、酵母、真菌、ウイルスまたは昆虫に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記混合物が、1以上の天然または組換えの哺乳類の細胞培養物または動物組織に由来する1以上のタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質および/またはポリペプチドのいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記混合物が、1以上の有機化合物、医薬品または医薬品中間体、またはそれらのいずれか2以上の混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記1以上の有機化合物、医薬品または医薬品用中間体の1以上が、キラル体である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記混合物が、1以上の微量成分を含み、そして前記方法が、該混合物内の該微量成分の検出、収集または定量の1以上をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
置換クロマトグラフィーで有用な置換剤組成物であって:
適切な水溶液中に、一般式(I):
【化2】

を有する置換剤化合物を含み、
式中、
、R、R、R’、R’およびR’基は各々独立して、アルキル、アリールおよびアラルキルから選択され得、そしてRおよびR、RおよびR’、RおよびR、RおよびR’、またはRおよびRのいずれか1以上によって、四級窒素を1以上含む環が形成され得;
、R’、R、およびR’は各々独立して、アルキル、アリール、アラルキルおよび−(CH−(CHY)−(CH−NAnから選択され得、R、R、およびRは上記定義の通りであり;
各Yは独立して、−H、−OH、−OR、ハロ、アルキル、アリールおよびアラルキルから選択され得、−Rはアルキルまたは−(CH−(CHOH)−(CH−NAnであり得、R、R、およびRは上記定義の通りであり、そして1以上のYが、1以上の電磁的方法によって検出可能な基であり得;
qおよびzは、q+zが約6以下になるという条件で、各々独立して0から約6までの任意の整数であり得;
a、bおよびcは、どのフラグメントにおいてもa+b+cの合計が少なくとも1になるという条件で、各々独立して0から2までの任意の整数であり得;そして
Anは、中性化合物を得るために必要に応じて、各々独立して1以上の有機または無機の一価または多価の陰イオンであり得る、
置換剤組成物。
【請求項34】
前記置換剤化合物が、DBQ、DMTQ、DBTQ、BTAおよびDBD以外である、請求項33に記載の置換剤組成物。
【請求項35】
前記置換剤化合物が、以下の構造を有する、請求項33に記載の置換剤組成物。
【化3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−515164(P2009−515164A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538916(P2008−538916)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/041328
【国際公開番号】WO2007/055896
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(507374789)サッチェム,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】