説明

陽イオン性界面活性剤およびW/O型乳化物

【課題】 有機溶媒に対する溶解性が高い陽イオン性界面活性剤を提供する。
【解決手段】 1つの炭素に、単結合または炭素原子数が1ないし5のアルキレン基、炭素原子数が6ないし20のアリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR−およびこれらの組合せからなる群より選ばれる二価の連結基の、三つの側鎖を有し、側鎖のうちの一つが末端に第四級アンモニウム基を有する化合物を陽イオン界面活性剤として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽イオン性界面活性剤に関する。さらに本発明は、陽イオン性界面活性剤を含むW/O型乳化物にも関する。
【背景技術】
【0002】
微細構造を有するシリカ材料は、従来から広く、界面活性剤の分子集合構造を鋳型としたゾル−ゲル法により製造されている。陽イオン性界面活性剤を用いると、界面活性剤の正電荷とシリカの負電荷の静電相互作用により、分子集合体表面で効率よくシリカが成長する。そのため、鋳型である陽イオン性界面活性剤の分子集合体の構造を反映したシリカ材料を製造することができる。産業上有用な応用例は、水溶液中の棒状ミセルを鋳型とした多孔質シリカ材料の製造である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
粒径が数ナノから数十ナノメートルのシリカ微粒子は、研磨剤、充填剤として汎用性の高い材料である。近年、数ナノから数百ナノメートルの大きさの分子集合体を鋳型としたシリカ微粒子の製造法が検討されている。陽イオン性界面活性剤を利用したシリカ微粒子の製造法として、水溶液中のベシクルもしくはミセルを鋳型としたテトラアルコキシシランの加水分解・縮合による製造法が知られている。使用する界面活性剤は、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド(例えば、非特許文献1、2参照)、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロマイド(例えば、非特許文献2参照)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
水溶液中で微粒子を製造する方法では、粒径数百ナノメートルのシリカ粒子が得られる。ただし、分子集合体の外側表面でシリカの成長が進行するため、必然的に粒子の外側表面が親水的なシラノールで覆われることになる。そのため、高濃度での製造条件では粒子間の凝集が起こりやすく、工業的な製造法として応用することが難しい。
【0004】
表面のシラノール間の凝集を抑制してゾル−ゲル法によりシリカ微粒子を製造する方法として、有機溶媒中の陽イオン性界面活性剤の逆ミセル(油中水滴)を鋳型とする製造法が考えられる。逆ミセルを鋳型とする方法では、テトラアルコキシシランの加水分解・縮合は、逆ミセルの内側で進行する。そのため、微粒子表面はシラノールではなく界面活性剤で覆われることになり、粒子の凝集が抑制されることが期待される。
【0005】
しかし、前述のジアルキルジメチルアンモニウム塩(例、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド)やアルキルトリメチルアンモニウム塩(例、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド)に代表される汎用陽イオン性界面活性剤は、比較的水溶性であるが、低極性の有機溶媒(例、ヘキサン、トルエン)には難溶である。そのため、前述したミセル(水中油滴)の形成には有効であっても、逆ミセル(油中水滴)を形成させ、それを微粒子製造の鋳型とする製造法には不適である。
ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイドと水と低極性有機溶媒(例、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン)からなる乳濁液中におけるテトラアルコキシシランの加水分解・縮合による無機酸化物の製造例はあるが、得られる無機酸化物は主にマイクロメートルサイズ以上の多孔質シリカである(例えば、非特許文献3参照)。セチルトリメチルアンモニウムブロマイドと水と1−ヘキサノール(高極性の有機溶媒)の混合溶液中におけるテトラアルコキシシランの加水分解・縮合による無機酸化物を製造例もあるが、得られる無機酸化物は主に、約1マイクロメートルの大きさのシリカライトの結晶を含む無定形シリカである(例えば、非特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】米国特許5366945号公報
【特許文献2】特開2001−115144号公報
【非特許文献1】Langmuir, 9, (1993), 673-680
【非特許文献2】Adv. Mater., 12, (2000), 1286-1290
【非特許文献3】Adv. Mater., 10, (1998), 151-154
【非特許文献4】Chem. Lett., 33, (2004), 1040-1041
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
数ナノから数十ナノメートルの粒径のシリカ微粒子を製造するためには、それと同程度の大きさの粒径を有する逆ミセル(油中水滴)を調製する必要がある。しかし、従来の汎用の陽イオン性界面活性剤(ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩)は、低極性有機溶媒に対する溶解性が不充分であり、充分に小さな粒径を有する油中水滴型の乳化分散物を提供することはできない。従って、汎用の陽イオン性界面活性剤から調製された乳化分散物中の分子集合体を鋳型とするのでは、無機酸化物源の加水分解・縮合によるマイクロメートルサイズ以下の無機酸化物微粒子の製造は困難である。
【0008】
本発明の目的は、有機溶媒に対する溶解性が高い陽イオン性界面活性剤を提供することである。
また、本発明の目的は、均一かつ透明なW/O(油中水滴)型の乳化物を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、以下の手段によって達成された。
(1)下記式(I)で表される陽イオン性界面活性剤:
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至20のアルキル基であり;RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基または炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基であり;R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基または炭素原子数が1乃至20の置換アルキル基であり;L、LおよびLは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子数が1乃至5のアルキレン基、炭素原子数が6乃至20のアリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であって、Rは水素原子または炭素原子数が1乃至5のアルキル基であり;Xは陰イオンである]。
【0012】
(2)RおよびRが、水素原子である(1)に記載の陽イオン性界面活性剤。
(3)RおよびRが、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基である(1)に記載の陽イオン性界面活性剤。
(4)RおよびRが、それぞれ独立に、炭素原子数が3乃至10のアルキル基または炭素原子数が3乃至10の置換アルキル基である(1)に記載の陽イオン性界面活性剤。
【0013】
(5)R、RおよびRが、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至3のアルキル基または炭素原子数が1乃至3の置換アルキル基である(1)に記載の陽イオン性界面活性剤。
(6)L、LおよびLが、それぞれ独立に、単結合または炭素原子数が1乃至5のアルキレン基、−O−、−CO−、−NR−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であって、Rは水素原子または炭素原子数が1乃至5のアルキル基である(1)に記載の陽イオン性界面活性剤。
(7)油相中に水相が乳化しているW/O型乳化物であって、油相中に前記式(I)で表される陽イオン性界面活性剤が溶解していることを特徴とするW/O型乳化物。
【発明の効果】
【0014】
式(I)で表される陽イオン性界面活性剤は、有機溶媒に対する溶解性が高いとの特徴がある。従って、式(I)で表される陽イオン性界面活性剤を、W/O(油中水滴)型乳化物の調製に用いると、均一かつ透明な乳化物を得ることができる。均一かつ透明な乳化物中の分子集合体は、直径数ナノから数十ナノメートルの逆ミセルである。そのような微少な逆ミセルは、正電荷で覆われた直径数ナノから数十ナノメートルの水滴という特異な反応場を提供する。そのような反応場は、負電荷を有するシリケートを中間体とするシリカ微粒子の製造に有利に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の陽イオン性界面活性剤は、下記式(I)で表される。
【0016】
【化2】

【0017】
式(I)において、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)または炭素原子数が1乃至20のアルキル基である。
アルキル基は、環状構造よりも鎖状構造を有していることが好ましい。鎖状アルキル基は分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至3(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル)であることが最も好ましい。
およびRは、水素原子であることが特に好ましい。
【0018】
式(I)において、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基または炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基である。RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基であることが好ましい。
アルキル基は、環状構造よりも鎖状構造を有していることが好ましい。鎖状アルキル基は分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至3(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル)であることが最も好ましい。
アルコキシ基は、環状構造よりも鎖状構造を有していることが好ましい。鎖状アルコキシ基は分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至3(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ)であることが最も好ましい。
【0019】
式(I)において、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基または炭素原子数が1乃至20の置換アルキル基である。RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が3乃至10のアルキル基または炭素原子数が3乃至10の置換アルキル基であることが好ましい。R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至3のアルキル基または炭素原子数が1乃至3の置換アルキル基であることが好ましい。
アルキル基は、環状構造よりも鎖状構造を有していることが好ましい。鎖状アルキル基は分岐を有していてもよい。RおよびRで表されるアルキル基の炭素原子数は、1乃至15であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましく、3乃至10であることが最も好ましい。R、RおよびRで表されるアルキル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至3(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル)であることが最も好ましい。
【0020】
置換アルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。置換アルキル基の置換基の例は、ハロゲン原子、アリール基、アシル基、カルボキシル、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル、置換カルバモイル基、シアノ、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシル、アシルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アミノ、置換アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、ウレイド、置換ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル、置換スルファモイル基、スルホおよび複素環基を含む。
【0021】
置換カルバモイル基、置換アミノ基、置換ウレイド基および置換スルファモイル基の置換部分は、1乃至18のアルキル基または炭素原子数が6乃至18のアリール基である。
置換アルキル基の置換基は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アリール基、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ基およびアシルオキシ基(例、メタクリロイルオキシ、アクリロイルオキシ)が好ましく、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ基、メタクリロイルオキシおよびアクリロイルオキシがさらに好ましい。
【0022】
式(I)において、L、LおよびLは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子数が1乃至5のアルキレン基、炭素原子数が6乃至20のアリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。L、LおよびLは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子数が1乃至5のアルキレン基、−O−、−CO−、−NR−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。Rは、水素原子または炭素原子数が1乃至5のアルキル基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有していることが好ましい。鎖状アルキレン基は直鎖状アルキレン基であることが好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至4であることが好ましく、1乃至3であることがさらに好ましい。炭素原子数が1乃至3の直鎖状アルキレン基(メチレン、ジメチレン、トリメチレン)であることが特に好ましい。
アリーレン基は、フェニレンまたはナフチレンであることが好ましく、フェニレンであることがさらに好ましい。
アルキル基は、環状構造よりも鎖状構造を有していることが好ましい。鎖状アルキル基は分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至4であることが好ましく、1乃至3(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル)であることが最も好ましい。
【0023】
以下に、組み合わせからなる二価の連結基の例を示す。以下の例は、左右を反転させてもよい。ALは、アルキレン基である。
【0024】
L11:−CO−O−
L12:−CO−O−AL−
L13:−AL−CO−O−
L14:−AL−CO−O−AL−
L15:−CO−NR−
L16:−CO−NR−AL−
L17:−AL−CO−NR−
L18:−AL−CO−NR−AL−
L19:−NR−CO−NR−
【0025】
L20:−NR−CO−NR−AL−
L21:−AL−NR−CO−NR−AL−
L22:−O−CO−NR−
L23:−O−CO−NR−AL−
L24:−AL−O−CO−NR−
L25:−AL−O−CO−NR−AL−
L26:−CO−O−CO−
L27:−CO−O−CO−AL−
L28:−AL−CO−O−CO−AL−
【0026】
式(I)において、Xは陰イオンである。陰イオンの例は、ハライドイオン(F、Cl、Br、I)、脂肪族スルホン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン、モノアルキル硫酸イオン、カルボン酸イオン、PF、BF、ClOを含む。陰イオンは、Br、I、p−トルエンスルホン酸イオン、CHCOO、PF、BFまたはClOであることが好ましく、Br、Iまたはp−トルエンスルホン酸イオンであることがさらに好ましい。
【0027】
以下に、式(I)で表される陽イオン性界面活性剤の例を示す。
【0028】
【化3】

【0029】
表A(その1)
────────────────────────────────────────
化合物 n p q r s R R=R R=R R=R
────────────────────────────────────────
A−1 0 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
A−2 0 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル I
A−3 0 0 1 2 2 *1 H メチル *2 Br
A−4 0 0 2 1 1 メチル H エチル ブチル Br
A−5 0 0 2 2 2 メチル H メチル イソヘキシル Br
A−6 0 0 2 2 2 エチル H メチル *3 Cl
A−7 0 0 3 1 1 メチル H エチル ブチル Br
A−8 0 0 3 1 1 メチル H メチル *3 Br
A−9 0 0 3 2 2 *4 H エトキシ プロピル PF
A−10 0 1 2 1 1 メチル H エチル ブチル Br
A−11 0 1 2 0 0 メチル H メチル *5 Br
A−12 0 1 2 1 1 プロピル H プロピル プロピル *6
A−13 0 1 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
A−14 0 1 1 2 2 メチル H メチル イソヘキシル Br
A−15 0 1 1 2 2 エチル H メチル *3 ClO
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*2: 4−エトキシ−4−メチルペンチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*4: 2−アクリロイルオキシエチル
*5: 4−アクリロイルオキシブチル
*6: 2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸
【0030】
表A(その2)
────────────────────────────────────────
化合物 n p q r s R R=R R=R R=R
────────────────────────────────────────
A−16 1 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
A−17 1 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル I
A−18 1 0 1 1 1 *1 H メチル *3 I
A−19 2 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
A−20 2 0 1 0 0 メチル H エチル ペンチル 酢酸
A−21 2 0 1 0 0 *7 H プロピル ヘキシル BF
A−22 3 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
A−23 3 0 1 1 1 メチル H プロピル プロピル Br
A−24 3 0 1 2 2 *4 H メチル イソヘキシル *8
A−25 4 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
A−26 4 0 1 3 3 メチル Br メチル メチル Br
A−27 4 0 1 1 1 エチル H メチル *3 *9
A−28 5 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
A−29 5 0 1 0 0 *1 H エチル ペンチル F
A−30 5 0 1 0 0 *4 H プロピル ヘキシル ClO
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*4: 2−アクリロイルオキシエチル
*7: 2−メタクリロイルオキシエチル
*8: p−トルエンスルホン酸
*9: モノメチル硫酸
*10:トリフルオロメタンスルホン酸
【0031】
【化4】

【0032】
表B(その1)
────────────────────────────────────────
化合物 m n p q r s R R=R R=R R=R
────────────────────────────────────────
B−1 1 0 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
B−2 2 0 0 1 2 2 メチル H メチル イソヘキシル Br
B−3 3 0 0 1 2 2 *1 H メチル *3 Br
B−4 4 0 0 1 1 1 エチル H メチル *3 I
B−5 5 0 0 1 0 0 プロピル H エチル ペンチル *8
B−6 1 0 0 2 1 1 メチル H エチル ブチル Br
B−7 2 0 0 2 1 1 メチル H プロピル プロピル Br
B−8 3 0 0 2 2 2 エチル H メチル イソヘキシル 酢酸
B−9 4 0 0 2 2 2 *1 H メチル *3 Cl
B−10 5 0 0 2 2 2 *4 H メチル *2 *6
B−11 1 0 0 3 1 1 メチル H エチル ブチル Br
B−12 2 0 0 3 1 1 メチル H プロピル プロピル Br
B−13 3 0 0 3 2 2 エチル H メチル イソヘキシル *10
B−14 1 0 1 2 1 1 メチル H エチル ブチル Br
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*2: 4−エトキシ−4−メチルペンチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*4: 2−アクリロイルオキシエチル
*6: 2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸
*8: p−トルエンスルホン酸
*10:トリフルオロメタンスルホン酸
【0033】
表B(その2)
────────────────────────────────────────
化合物 m n p q r s R R=R R=R R=R
────────────────────────────────────────
B−15 2 0 1 2 2 2 *1 H メチル *3 Br
B−16 3 0 1 2 1 1 エチル H メチル *3 BF
B−17 1 0 1 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
B−18 2 0 1 1 0 0 *1 H エチル ペンチル Br
B−19 3 0 1 1 0 0 エチル H プロピル ヘキシル *9
B−20 1 1 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
B−21 2 1 0 1 0 0 メチル H メチル *5 Br
B−22 3 1 0 1 2 2 *1 H メチル *3 Br
B−23 4 1 0 1 1 1 エチル H メチル *3 F
B−24 5 1 0 1 2 2 プロピル H エトキシ プロピル ClO
B−25 1 2 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
B−26 2 2 0 1 3 3 メチル Br メチル メチル Br
B−27 3 2 0 1 2 2 *7 H メチル イソヘキシル PF
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*5: 4−アクリロイルオキシブチル
*7: 2−メタクリロイルオキシエチル
*9: モノメチル硫酸
【0034】
【化5】

【0035】
表C(その1)
────────────────────────────────────────
化合物 m n p q r s R R=R R=R R=R
────────────────────────────────────────
C−1 1 0 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
C−2 2 0 0 1 2 2 メチル H メチル イソヘキシル Br
C−3 3 0 0 1 2 2 *1 H メチル *3 F
C−4 4 0 0 1 1 1 エチル H メチル *3 ClO
C−5 5 0 0 1 0 0 *4 H エチル ペンチル I
C−6 1 0 0 2 1 1 メチル H エチル ブチル Br
C−7 2 0 0 2 1 1 メチル H プロピル プロピル Cl
C−8 3 0 0 2 2 2 エチル H メチル *2 Br
C−9 4 0 0 2 2 2 *1 H メチル *3 Cl
C−10 5 0 0 2 1 1 プロピル H メチル *3 PF
C−11 1 0 0 3 1 1 メチル H エチル ブチル Br
C−12 2 0 0 3 1 1 メチル H プロピル プロピル Br
C−13 3 0 0 3 2 2 エチル H メチル イソヘキシル 酢酸
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*2: 4−エトキシ−4−メチルペンチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*4: 2−アクリロイルオキシエチル
【0036】
表C(その2)
────────────────────────────────────────
化合物 m n p q r s R R=R R=R R=R
────────────────────────────────────────
C−14 1 0 1 2 1 1 メチル H エチル ブチル Br
C−15 2 0 1 2 2 2 エチル H メチル *3 Br
C−16 3 0 1 2 1 1 プロピル H メチル *3 *9
C−17 1 0 1 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
C−18 2 0 1 1 3 3 メチル Br メチル メチル Br
C−19 3 0 1 1 0 0 *1 H プロピル ヘキシル BF
C−20 1 1 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
C−21 2 1 0 1 2 2 エチル H メチル イソヘキシル Br
C−22 3 1 0 1 2 2 プロピル H エトキシ プロピル *6
C−23 1 2 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
C−24 2 2 0 1 1 1 *7 H プロピル プロピル *10
C−25 3 2 0 1 0 0 エチル H メチル *5 *8
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*5: 4−アクリロイルオキシブチル
*6: 2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸
*7: 2−メタクリロイルオキシエチル
*8: p−トルエンスルホン酸
*9: モノメチル硫酸
*10:トリフルオロメタンスルホン酸
【0037】
【化6】

【0038】
表D(その1)
────────────────────────────────────────
化合物 m n p q r s R R=R R=R R=R
────────────────────────────────────────
D−1 1 0 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
D−2 1 0 0 1 1 1 メチル H プロピル プロピル Br
D−3 2 0 0 1 2 2 *1 H メチル イソヘキシル *8
D−4 3 0 0 1 2 2 プロピル H メチル *3 Br
D−5 4 0 0 1 1 1 エチル H メチル *3 ClO
D−6 5 0 0 1 0 0 *4 H エチル ペンチル *9
D−7 1 0 0 2 1 1 メチル H エチル ブチル Br
D−8 2 0 0 2 1 1 *1 H プロピル プロピル Cl
D−9 3 0 0 2 2 2 エチル H メチル イソヘキシル Br
D−10 1 0 0 3 1 1 メチル H エチル ブチル Br
D−11 2 0 0 3 1 1 *4 H プロピル プロピル Br
D−12 3 0 0 3 2 2 エチル H エトキシ プロピル 酢酸
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*4: 2−アクリロイルオキシエチル
*8: p−トルエンスルホン酸
*9: モノメチル硫酸
【0039】
表D(その2)
────────────────────────────────────────
化合物 m n p q r s R R=R R=R R=R
────────────────────────────────────────
D−13 1 0 1 2 1 1 メチル H エチル ブチル Br
D−14 2 0 1 2 2 2 エチル H メチル *3 Br
D−15 3 0 1 2 2 2 プロピル H メチル *5 I
D−16 1 0 1 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
D−17 2 0 1 1 0 0 メチル H エチル ペンチル Br
D−18 3 0 1 1 0 0 *1 H プロピル ヘキシル F
D−19 1 1 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
D−20 2 1 0 1 2 2 エチル H メチル イソヘキシル *10
D−21 3 1 0 1 3 3 *1 Br メチル メチル PF
D−22 1 2 0 1 1 1 メチル H エチル ブチル Br
D−23 2 2 0 1 2 2 メチル H メチル *2 *6
D−24 3 2 0 1 2 2 エチル H メチル イソヘキシル BF
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*2: 4−エトキシ−4−メチルペンチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*5: 4−アクリロイルオキシブチル
*6: 2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸
*10:トリフルオロメタンスルホン酸
【0040】
【化7】

【0041】
表E
────────────────────────────────────────
化合物 n p r s R R=R R=R
────────────────────────────────────────
E−1 0 1 0 0 メチル エチル ブチル Br
E−2 0 1 0 0 エチル エチル ブチル *8
E−3 0 1 0 0 メチル プロピル プロピル F
E−4 0 1 1 1 *1 メチル イソヘキシル モノメチル硫酸
E−5 0 1 1 1 エチル メチル *3 ClO
E−6 0 1 0 0 プロピル メチル *3 Cl
E−7 1 0 0 0 メチル エチル ブチル Br
E−8 1 0 0 0 エチル エチル ブチル 酢酸
E−9 1 0 0 0 *7 プロピル プロピル PF
E−10 1 0 1 1 *4 メチル イソヘキシル I
E−11 1 0 1 1 プロピル メチル *3 BF
E−12 1 0 0 0 エチル メチル *3 *6
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*4: 2−アクリロイルオキシエチル
*6: 2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸
*7: 2−メタクリロイルオキシエチル
*8: p−トルエンスルホン酸
【0042】
【化8】

【0043】
表F
────────────────────────────────────────
化合物 m n p r s R R=R R=R
────────────────────────────────────────
F−1 1 0 1 0 0 メチル エチル ブチル Br
F−2 1 0 1 0 0 *4 プロピル プロピル *8
F−3 2 0 1 1 1 *1 メチル イソヘキシル BF
F−4 3 1 0 0 0 メチル エチル ブチル Br
F−5 4 1 0 1 1 エチル メチル *3 ClO
F−6 5 1 0 0 0 プロピル メチル *3 BF
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*4: 2−アクリロイルオキシエチル
*8: p−トルエンスルホン酸
【0044】
【化9】

【0045】
表G
────────────────────────────────────────
化合物 m n p r s R R=R R=R
────────────────────────────────────────
G−1 1 0 1 0 0 メチル エチル ブチル Br
G−2 1 0 1 0 0 *7 プロピル プロピル モノメチル硫酸
G−3 2 0 1 1 1 プロピル メチル イソヘキシル I
G−4 3 1 0 0 0 メチル エチル ブチル Br
G−5 4 1 0 1 1 エチル メチル *3 Cl
G−6 5 1 0 0 0 *1 メチル *3 *8
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*7: 2−メタクリロイルオキシエチル
*8: p−トルエンスルホン酸
【0046】
【化10】

【0047】
表H
────────────────────────────────────────
化合物 m n p r s R R=R R=R
────────────────────────────────────────
H−1 1 0 1 0 0 メチル エチル ブチル Br
H−2 1 0 1 0 0 エチル プロピル プロピル *8
H−3 2 0 1 1 1 プロピル メチル イソヘキシル I
H−4 3 1 0 0 0 メチル エチル ブチル Br
H−5 4 1 0 1 1 *4 メチル *3 Cl
H−6 5 1 0 0 0 *1 メチル *3 酢酸
────────────────────────────────────────
(註)
*1: 2−ヒドロキシエチル
*3: 2,2−ジメチルプロピル
*4: 2−アクリロイルオキシエチル
*8: p−トルエンスルホン酸
【0048】
[W/O型乳化物]
W/O型乳化物は、式(I)で表される陽イオン性界面活性剤、油相および水相からなる。油相中に水相が乳化している。そして、油相中に(I)で表される陽イオン性界面活性剤が溶解している。
【0049】
油相は、極性が低い有機溶媒からなることが好ましい。低極性有機溶媒は、界面活性剤が存在しない場合、水とは混合せず二相分離する有機溶媒であることが好ましい。
有機溶媒の例は、飽和炭化水素(例、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソオクタン、シクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素)、エーテル(例、ジエチルエーテル)、エステル(例、酢酸エチル)を含む。有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンが好ましく、ヘキサン、オクタン、デカン、イソオクタン、トルエンがさらに好ましい。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0050】
水相は、ほぼ純粋な水(例えば、脱イオン水)であってもよい。
水相は、無機塩を含むことができる。無機塩の添加により、乳化状態を調節することができる。乳化状態を調節することにより、懸濁状態の乳化物を均一透明な乳化物にすることもできる。無機塩の例は、ハロゲン化アルカリ金属塩(例、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム)、ハロゲン化アルカリ土類金属塩(例、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム)、ハロゲン化アンモニウム塩(例、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム)、硫酸アルカリ金属塩(例、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム)、硫酸アルカリ土類金属塩(例、硫酸マグネシウム)、硫酸アンモニウムを含む。
無機塩は、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムが好ましく、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムがさらに好ましく、硫酸リチウム、硫酸マグネシウムが最も好ましい。二種類以上の無機塩を併用してもよい。
無機塩の添加量は、水100質量部に対して、0.1乃至20質量部が好ましく、1乃至10質量部がさらに好ましく、1乃至5質量部が最も好ましい。
【0051】
W/O型乳化物において、式(I)で表される陽イオン性界面活性剤を二種類以上用いてもよい。式(I)で表される陽イオン性界面活性剤と他の界面活性剤とを併用してもよい。
【0052】
式(I)で表される陽イオン性界面活性剤−有機溶媒(例、イソオクタン)−水の3成分組成において、陽イオン性界面活性剤に対する水のモル比が大きすぎると、油相に分散している水滴が大きくなり均一透明な分散液を与えない。陽イオン性界面活性剤に対する水のモル比は、30以下であることが好ましく、20以下がさらに好ましく、10以下が最も好ましい。陽イオン性界面活性剤に対する有機溶媒のモル比は、大きいほど安定な均一透明な分散液を与える。陽イオン性界面活性剤に対する有機溶媒のモル比は、80以上が好ましく、100以上がさらに好ましく、120以上が最も好ましい。
【0053】
式(I)で表される陽イオン性界面活性剤、有機溶媒および水から、均一透明な乳化物を調製するために、先に界面活性剤と有機溶媒とを混合してから、次に水を加える手順が好ましい。乳化を促進するため、超音波を照射してもよいし、また、有機溶媒の沸点以下の温度で加温してもよい。
【0054】
乳化物に調製において、微量の添加剤を用いてもよい。添加剤の例は、アルコール(例、エタノール)、カルボン酸(例、酢酸)、無機酸(例、ボロン酸、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸)、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を含む。添加剤は、エタノール、酢酸、ボロン酸が好ましい。好ましい添加量は、水100質量部に対して、0.1乃至10質量部が好ましく、0.1乃至5質量部がさらに好ましく、0.1乃至1質量部が最も好ましい。
【0055】
乳化物が均一透明であるかどうかは、乳化物中のコロイド粒子の大きさで評価できる。 乳化物中のコロイド粒子の大きさは、光散乱法で測定できる。また、数ナノメートルから数十ナノメートルの粒径の分散物では可視光の波長よりも粒径が充分に小さいため、濁度が低いことを利用して粒径を評価することもできる。本発明に従うW/O型乳化物では、500〜700nmにおける吸光度を測定することにより、濁度を評価できる。光路長1cmセル内の乳化分散物の吸光度が0.002以下になることをもって、目的とする十分小さい粒径の逆ミセルが生成したと判断できる。
【0056】
[無機酸化物微粒子の調製]
本発明に従うW/O型乳化物は、無機酸化物微粒子の調製に用いることができる。複合無機酸化物を調製することもできる。無機酸化物は、ケイ素(シリカ)、チタン(チタニア)、ジルコニウム(ジルコニア)、アルミニウム(アルミナ)の酸化物またはそれらの複合物が好ましく、シリカ、チタニア、ジルコニア、またはそれらの複合物がさらに好ましく、シリカ、ジルコニア、またはそれらの複合物が最も好ましい。
本発明に従うW/O型乳化物を使用すると、球状、もしくは、球状に近い微粒子が製造できる。球状に近い微粒子とは、具体的には長軸と短軸の比が2以下の形状である。W/O型乳化物を用いる製造法では、中空粒子と非中空粒子のいずれも製造できる。
反射防止膜の低屈折率層に使用する粒子は、中空粒子が好ましい。W/O型乳化物を用いる製造法では、粒径が5nm〜1μmの無機酸化物微粒子を製造することができる。反射防止膜フイルムの低屈折率層に使用する粒子は、平均粒径が低屈折率層の膜厚の30%〜150%が好ましく、35%〜80%がさらに好ましく、40%〜60%が最も好ましい。例えば、低屈折率層の厚みが100nmであれば、無機酸化物微粒子の粒径は30〜150nmが好ましく、35〜80nmがさらに好ましく、40〜60nmが最も好ましい。
【0057】
(無機酸化物前駆体)
無機酸化物微粒子の調製には、酸化物前駆体を用いる。無機酸化物前駆体は、アルコキシシラン、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドチタニウムカルボキシラート(例、チタンテトラアセチルアセトナート)、ジルコニウムカルボキシラート(ジルコニウムテトラアセチルアセトナート)が好ましい。
アルコキシシランの例は、テトラアルコキシシラン(例、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン)、アルキルトリアルコキシシラン(例、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン)を含む。チタンアルコキシドの例は、チタンテトラアルコキシド(例、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラtert−ブトキシド)、チタンジアルコキシド(例、チタニウムビス(エチル・アセトアセテート)ジイソプロポキシド)を含む。ジルコニウムアルコキシドの例は、ジルコニウムテトラアルコキシド(例、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラtert−ブトキシド)を含む。アルミニウムアルコキシドの例は、アルミニウムテトラアルコキシド(例、アルミニウムテトライソプロポキシド)を含む。
【0058】
無機酸化物前駆体の部分縮合物を用いてよい。
二種類以上の無機酸化物前駆体を併用してもよい。無機酸化物前駆体は、テトラエトキシシラン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナートが好ましく、テトラエトキシシラン、チタンテトラアセチルアセトナートがさらに好ましい。
二種類以上の無機酸化物前駆体を併用する場合、すべての無機酸化物前駆体を同時に添加することができる。また、一部の無機酸化物前駆体を添加して反応を進行させた後に、残りの無機酸化物前駆体を添加してもすることもできる。
【0059】
反応系への無機酸化物前駆体の添加量により、無機酸化物微粒子の形態を中空構造にするか非中空構造を制御することができる。
中空構造の球状無機酸化物を製造するときの、無機酸化物前駆体の量は、反応系中の水に対して、モル比で0.01〜1が好ましく、0.01〜0.5がさらに好ましく、0.01〜0.25が最も好ましい。また、非中空構造の球状無機酸化物を製造するときの無機酸化物前駆体の量は、無機酸化物前駆体の量は、反応系中の水に対して、モル比で0.1〜2が好ましく、0.25〜2がさらに好ましく、0.5〜2が最も好ましい。
【0060】
(触媒)
無機酸化物前駆体の加水分解と縮合を促進する目的で、触媒を加えることができる。触媒の例は、有機酸(例、酢酸)、無機酸(例、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸)、アルカリ金属の水酸化物(例、水酸化ナトリウム)、アンモニア、アミンを含む。触媒は、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニアが好ましく、塩酸、アンモニアがさらに好ましい。
酸を触媒として用いる場合、水相のpHは0〜5が好ましく、1〜4がさらに好ましく、2〜3が最も好ましい。塩基を触媒として用いる場合、水相のpHは9〜14が好ましく、10〜13がさらに好ましく、11〜12が最も好ましい。
【0061】
(加水分解・縮合工程)
無機酸化物微粒子の製造法の工程は、室温での無機酸化物微粒子の加水分解・縮合工程と加熱下での焼成工程からなる。
加水分解・縮合工程では、陽イオン性界面活性剤、水、有機溶媒、触媒、無機酸化物前駆体を混合する。必要に応じて、無機塩や添加剤も混合できる。混合操作の手順は、無機酸化物が触媒と接触する混合操作が最後であることが好ましい。無機酸化物が水および触媒と接触する混合操作が最後であることがさらに好ましい。具体的な混合の操作手順は、次の(I)および(II)が好ましい。
(I):無機塩と触媒と添加剤の水溶液と、陽イオン界面活性剤の有機溶媒分散液をそれぞれ調製しておき、両者を混合しW/O型乳化物を調製後、無機酸化物前駆体を添加する。
(II):無機塩と触媒と添加剤の水溶液と、陽イオン界面活性剤と無機酸化物前駆体の有機溶媒分散液をそれぞれ調製しておき、両者を混合し、W/O型乳化物を調製する。
混合は、常に撹拌下で行うことが好ましい。乳化分散を促進するため、超音波を照射してもよい。また、無機酸化物前駆体が水もしくは触媒と混合していない限り、有機溶媒の沸点以下の温度で加熱してもよい。混合操作の際は、無機酸化物前駆体が、水もしくは触媒と接触する混合操作をした後は、組成物の温度を15〜25℃の範囲内のある温度で一定に保つ。加水分解・縮合工程において、陽イオン性界面活性剤、水、有機溶媒、触媒、無機酸化物前駆体、および、必要に応じて、無機塩、添加剤を混合した後は、反応組成物の温度を15〜25℃の範囲内のある温度で一定に保ち、1日から7日間撹拌する。
【0062】
(焼成工程)
焼成工程では、加水分解・縮合工程で生成した無機酸化物のゾルまたはゲルを、最高800℃で加熱処理する。好ましい工程は、次の(i)〜(viii)である。
(i):加水分解・縮合工程で得られた組成物を、開放系で、60〜100℃で1〜24時間加熱する。溶媒を留去し、残渣を乾燥する。
(ii):加水分解・縮合工程で得られた組成物を、オートクレーブ内で、60〜150℃で1〜24時間加熱する。溶媒を留去し、残渣を乾燥する。
(iii):工程(i)で得られた無機酸化物を、不活性ガス気流下もしくは真空下で、電気炉内で200℃〜800℃で1〜24時間加熱する。
(iv):工程(ii)で得られた無機酸化物を、不活性ガス気流下もしくは真空下で、電気炉内で200℃〜800℃で1〜24時間加熱する。
(v):工程(i)で得られた無機酸化物を、イソオクタンなどの炭化水素に溶解し、オートクレーブ内で、200℃〜800℃で1〜24時間加熱する。溶媒を留去し、残渣を乾燥する。
(vi):工程(ii)で得られた無機酸化物を、イソオクタンなどの炭化水素に溶解し、オートクレーブ内で、200℃〜800℃で1〜24時間加熱する。溶媒を留去し、残渣を乾燥する。
(vii):工程(v)で得られた無機酸化物を、不活性ガス気流下もしくは真空下で、電気炉内で200℃〜800℃で1〜24時間加熱する。
(viii):工程(vi)で得られた無機酸化物を、オートクレーブ内で、200℃〜800℃で1〜24時間加熱する。溶媒を留去し、残渣を乾燥する。
【0063】
[低屈折率層]
(低屈折率バインダー)
無機酸化物の中空微粒子は、反射防止膜の低屈折率層に用いることができる。
反射防止膜の低屈折率層は、中空微粒子に加えて、低屈折率バインダーとして含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。フッ素ポリマーは、動摩擦係数が0.03〜0.15であり、水に対する接触角が90〜120°であることが好ましい。含フッ素ポリマーは、架橋構造を有することができる。架橋構造は、熱または電離放射線により含フッ素ポリマーに導入できる。
【0064】
含フッ素ポリマーとしては、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解・脱水縮合物を用いることができる。また、含フッ素モノマーと架橋反応性付与のためのモノマーとの含フッ素架橋共重合体を用いてもよい。
【0065】
含フッ素モノマーの例は、フルオロオレフィン(例、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化製)、M−2020(ダイキン製))、完全または部分フッ素化ビニルエーテルを含む。パーフルオロオレフィンが好ましい。屈折率、溶解性、透明性および入手の容易さを考慮すると、ヘキサフルオロプロピレンが特に好ましい。
架橋反応性付与のためのモノマーは、分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマー(例、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル)と、非架橋性官能基(例、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、スルホ)を有するモノマー(例、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸)を含む。非架橋性官能基を有するモノマーから合成される繰り返し単位の非架橋性官能基に対して、高分子反応(例えば、繰り返し単位のヒドロキシに対してアクリル酸クロリドを作用させる反応)によって架橋反応性基(例、(メタ)アクリルロイル)を導入することができる。
【0066】
含フッ素モノマーと架橋反応性付与のためのモノマーに加えて、溶剤への溶解性、皮膜の透明性の観点からフッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマーの例は、オレフィン(例、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル(例、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル(例、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート)、スチレン、スチレン誘導体(例、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル(例、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル)、ビニルエステル(例、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル)、アクリルアミド(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド、アクリロニトリルおよびその誘導体を含む。
【0067】
含フッ素ポリマーに対して、硬化剤(特開平10−25388号、同10−147739号の各公報に記載)を用いて架橋構造を導入してもよい。
【0068】
含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテルまたはビニルエステルのランダム共重合体が好ましい。含フッ素ポリマーは、単独で架橋反応可能な基を有していることが好ましい。単独で架橋反応可能な基は、ラジカル反応性基(例、アクリロイル、メタクリロイル)および開環重合性基(例、エポキシ基、オキセタニル基)が好ましい。架橋反応可能な基を有する繰り返し単位は、ポリマーの5〜70mol%が好ましく、30〜60mol%がさらに好ましい。
【0069】
(皮膜形成バインダー)
低屈折率層は、皮膜形成バインダーを有することが好ましい。皮膜形成バインダーは、皮膜強度、塗布液の安定性および塗膜の生産性を高める機能がある。皮膜形成バインダーは、無機粒子を除く皮膜形成成分のうち10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以上95質量%以下であることが最も好ましい。
皮膜形成バインダー飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーは、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
【0070】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーは、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸2−アクリロイルエチル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが好ましい。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0071】
(重合開始剤)
エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
【0072】
光ラジカル重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類および芳香族スルホニウム類が好ましい。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。光ラジカル重合開始剤は、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも記載がある。市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤(例えば、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア651、184、907)を用いてもよい。
光重合開始剤の使用量は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部が好ましく、1〜10質量部がさらに好ましい。
【0073】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の例は、ブチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを含む。
【0074】
熱ラジカル開始剤は、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物が好ましい。
有機過酸化物の例は、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドを含む。無機過酸化物の例は、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムを含む。アゾ化合物の例は、2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリルを含む。ジアゾ化合物の例は、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウムを含む。
【0075】
[反射防止フイルム]
低屈折率層を有する反射防止フイルムは、ヘイズ値が3〜70%であることが好ましく、4〜60%であることがさらに好ましい。反射防止フイルムは450nmから650nmの平均反射率が3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがさらに好ましい。反射防止フイルムが上記範囲のヘイズ値及び平均反射率であると、透過画像の劣化を伴なわずに良好な防眩性および反射防止性が得られる。
【0076】
(支持体)
反射防止フイルムの透明支持体は、ポリマーフイルムが好ましい。ポリマーフイルムを構成するポリマーの例は、セルロースアシレート(例、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロールアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィンを含む。市販のポリマーフイルム(例えば、セルロースアセテートフイルムについては富士写真フイルム(株)製のTAC−TD80U、TD80UF、ノルボルネン系樹脂フイルムについては、JSR社製のアートン、非晶質ポリオレフィンフイルムについては日本ゼオン社製のゼオネックス)を用いてもよい。セルローストリアセテートフイルム、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルムが好ましく、セルローストリアセテートフイルムが好ましい。ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン)を実質的に含まないセルロースアシレートフイルムが特に好ましい。ハロゲン化炭化水素を含まないセルロースアシレートフイルムおよびその製造法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行)に記載がある。
【0077】
(低屈折率層の形成)
低屈折率層は、無機酸化物微粒子、低屈折率バインダー、被膜形成バインダー、および、重合開始剤を含む塗布液を、ハードコート膜上に塗布することにより形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒は、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例は、アミド(例、DMF)、スルホキシド(例、DMSO)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)を含む。二種類以上の有機溶媒を併用しても良い。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、ワイヤーバーコート法)により実施できる。
【実施例】
【0078】
[実施例1]
(化合物(A−1)の合成)
化合物(A−1)を、スキーム1に従って合成した。
【0079】
【化11】

【0080】
アスパラギン酸(A−1a)26.6 g、2−エチル−1−ヘキサノール(A−1b)65.1g、および、p−トルエンスルホン酸一水和物44.0gの混合物を、トルエン500mL中で2時間還流した。脱水縮合により生成した水は共沸により反応系中から随時取り除いた。反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(A−1c)65.2gを得た(第1段階)。
化合物(A−1c)26.7g、ヨードメタン(A−1d)9.3mLおよび60%水素化ナトリウム6.0gの混合物をジメチルホルムアミド100mL中、室温で、12時間攪拌した。ヘキサンを反応混合物に加えた後、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(A−1e)11.8gを得た(第2段階)。
化合物(A−1e)2.0gとブロモメタン(A−1f)5.3gの混合物をジメチルホルムアミド250mL中、室温で、2日間攪拌した。溶媒および残存しているブロモメタン(A−1f)を留去し、4化合物(A−1)2.5gを定量的に得た(第3段階)。
【0081】
H NMR(400MHz、CDCl
0.86−0.94(m,12H)、1.20−1.40(m,16H)、1.54−1.70(m,2H)、3.19(dd,J=8.4,17.6Hz,1H)、3.62(dd,J=3.2,17.6Hz,1H)、3.68(s,9H)、3.97−4.27(m,4H)、4.80(m,1H)
【0082】
[実施例2]
(化合物(A−16)の合成)
化合物(A−16)を、スキーム2に従って合成した。
【0083】
【化12】

【0084】
イタコン酸(A−16a)26.0g、2−エチル−1−ヘキサノール(A−1b)65.1gおよびp−トルエンスルホン酸一水和物38.0gの混合物を、トルエン中で2時間還流した。脱水縮合により生成した水は共沸により反応系中から随時取り除いた。反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(A−16b)59.3gを得た(第1段階)。
化合物(A−16b)7.53mLとジメチルアミン(A−16c)の2.0Mテトラヒドロフラン溶液50mLの混合物を、−5℃で、4時間攪拌した。テトラヒドロフランおよび残存しているジメチルアミン(A−16c)を留去し、残渣をシリカクロマトグラフィーにより精製し、化合物(A−16d)7.7gを得た(第2段階)。
化合物(A−16d)1gとブロモメタン(A−1f)2.6gの混合物をジメチルホルムアミド150mL中、室温で、3日間攪拌した。溶媒および残存しているブロモメタン(A−1f)を留去し化合物(A−16)1.2gを定量的に得た(第3段階)。
【0085】
H NMR(400MHz、CDCl
0.85−0.93(m,12H)、1.22−1.41(m,16H)、1.53−1.65(m,2H)、2.90(dd,J = 5.6,17.6Hz,1H)、3.01(dd,J=6.2,17.6Hz,1H)、3.50(s,9H)、3.94−4.17(m,6H)。
【0086】
[実施例3]
(化合物(A−19)の合成)
化合物(A−19)を、スキーム3に従って合成した。
【0087】
【化13】

【0088】
4−ブロモブタン酸(A−19a)25.4g、2−エチル−1−ヘキサノール(A−1b)25.0g、および、p−トルエンスルホン酸一水和物38.0gの混合物を、トルエン中で2時間還流した。脱水縮合により生成した水は共沸により反応系中から随時取り除いた。反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、溶媒を減圧留去し、残渣を減圧蒸留により精製し、化合物(A−19b)31.1gを得た(第1段階)。
化合物(A−19b)27.2gとジメチルアミン(A−16c)の2.0Mテトラヒドロフラン溶液230mLの混合物を、室温で、25時間攪拌した。テトラヒドロフランおよび残存しているジメチルアミン(A−16c)を留去し、残渣をシリカクロマトグラフィーにより精製し、化合物(A−19c)20.0gを得た(第2段階)。
ヨード酢酸(A−19d)24.6g、2−エチル−1−ヘキサノール(A−1b)22.0g、および、p−トルエンスルホン酸一水和物38.0gの混合物を、トルエン500mL中で2時間還流した。脱水縮合により生成した水は共沸により反応系中から随時取り除いた。反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、溶媒を減圧留去し、残渣を減圧蒸留により精製し、化合物(A−19e)31.7gを得た(第3段階)。
ブチルリチウムの1.58Mヘキサン溶液31.6mLを、0℃のジイソプロピルアミン7.8mLのテトラヒドロフラン溶液に添加し、0℃で15分間攪拌した。その後、−78℃に冷却し、化合物(A−19c)12.2gとヘキサメチルホスホルアミド9.6mLのテトラヒドロフラン溶液を添加し、−78℃で25分間攪拌した。反応溶液の温度を−78℃に保ったまま、化合物(A−19e)14.9gのテトラヒドロフラン溶液を添加し、−78℃で5時間攪拌した。その後24時間かけて徐々に0℃まで温度を上げた。ヘキサンを反応混合物に加えた後、希塩酸で洗浄し、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(A−19f)2.1gを得た(第4段階)。
化合物(A−19f)1.1gとブロモメタン(A−1f)2.6gの混合物をテトラヒドロフラン中、室温で、2日間攪拌した。溶媒および残存しているブロモメタン(A−1f)を留去し化合物(A−19)1.35gを定量的に得た(第5段階)。
【0089】
H NMR(400MHz、CDCl
0.85−0.94(m,12H)、1.22−1.41(m,16H)、1.53−1.65(m,2H)、1.95−2.12(m,1H)、2.19−2.39(m,1H)、2.67−2.92(m,3H)、3.45(s,9H)、3.62(dt,J= 4.5,12.0Hz,1H)、3.92−4.10(m,5H)
【0090】
[実施例4]
(化合物(B−1)の合成)
化合物(B−1)を、スキーム4に従って合成した。
【0091】
【化14】

【0092】
スキーム1第1段階で得た化合物(A−1c)23.6g、ブロモアセチルブロマイド(B−1a)12.7gおよびトリエチルアミン10.5gの混合物を、室温で18時間攪拌した。反応混合物を塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(B−1b)18.1gを得た(第1段階)。
化合物(B−1b)7.0gとトリメチルアミン(B−1c)4.0gの混合物を、テトラヒドロフラン中、室温で、2日間攪拌する。溶媒および残存しているトリメチルアミン(B−1c)を留去し化合物(B−1)7.9gを定量的に得た(第2段階)。
【0093】
H NMR(400MHz、CDCl
0.85−0.93(m,12H)、1.22−1.41(m,16H)、1.53−1.63(m,2H)、2.98(d,J=6.4Hz,2H)、3.51(s,9H)、3.97−4.10(m,4H)、4.62(d,J=13.6Hz,1H)、4.88(q,J=6.7Hz,1H)、4.90(d,J=14.0Hz,1H)、9.34 (d,J=7.6Hz,1H)。
【0094】
[実施例5]
スキーム4と同様に、化合物(B−6)を合成した。
【0095】
(界面活性剤の評価)
低極性有機溶媒溶媒への界面活性剤の溶解度は、20℃における界面活性剤のイソオクタン溶液の飽和濃度を指標とした。飽和濃度は、大きいほど好ましい。10−1mol/L以上を易溶、10−2〜10−1mol/Lを溶、10−2mol/Lを不溶と判断した。
【0096】
界面活性剤−イソオクタン−水の3成分組成物において、20℃で均一透明な分散状態を与える界面活性剤に対する水のモル比を含水率と定義し、含水率の取りうる範囲の広さを乳化能の指標とした。含水率の取りうる範囲は、広いほど好ましく、最小値は0、最大値は20以上であることが好ましい。
また、調製した均一透明な分散液の分散安定性を評価するため、調製した均一透明な分散液を20℃で30日間密閉して保持し、再度分散安定性を評価した。
【0097】
[実施例6]
(化合物(A−16)−イソオクタン−水からなる3成分組成物の調製)
化合物(A−16)に、化合物(A−16)に対してモル比で21〜420倍のイソオクタンを加えた。このとき、均一透明な分散液は得られず、半透明の分散液が得られた。
得られた化合物(A−16)とイソオクタンの2成分組成物に、化合物(A−16)に対してモル比で2〜29倍の水を加え、超音波を照射することによって、化合物(A−16)−イソオクタン−水からなる3成分組成物を得た。まず、この組成物を目視により透明か白濁しているかを判断した。透明であると判断した場合には、該組成物を、光路長1cmの石英セルにいれ、紫外可視分光光度計(分光光度計UV−2550、島津製作所製)により500−700nmの領域の吸光度を測定した。目視で透明と判断した組成物はいずれの組成比においても吸光度は0.002以下であった。このとき得られた結果を図1に示す。
図1において、黒丸は均一透明な分散状態を表し、×は1相もしくは2相の白濁分散状態を表す。また、モル比1:10:200の化合物(A−16)と水とイソオクタンから調製した均一透明な分散液は、20℃で30日間保持後も均一透明であった。
【0098】
【化15】

【0099】
[実施例7]
(化合物(A−19)−イソオクタン−水からなる3成分組成物の調製)
化合物(A−19)に、化合物(A−19)に対してモル比で11〜430倍のイソオクタンを加えた。このとき、化合物(A−19)は、モル比で18〜420倍のイソオクタンには容易に溶解し、均一透明溶液が得られた。
得られた化合物(A−19)とイソオクタンの2成分組成物に、化合物(A−19)に対してモル比で5〜56倍の水を加え、超音波を照射することによって、化合物(A−19)−イソオクタン−水からなる3成分組成物を得た。前述の方法により、透明な分散状態か白濁状態かを判断した。このとき得られた結果を図2に示す。
図2において、黒丸は均一透明な分散状態を表し、×は1相もしくは2相の白濁分散状態を表す。また、モル比1:45:200の化合物(A−19)と水とイソオクタンから調製した均一透明な分散液は、20℃で30日間保持後も均一透明であった。
【0100】
【化16】

【0101】
[実施例8]
(化合物(B−1)−イソオクタン−水からなる3成分組成物の調製)
化合物(B−1)に、化合物(B−1)に対してモル比で10〜412倍のイソオクタンを加えた。このとき、化合物(B−1)は、モル比で30〜412倍のイソオクタンには容易に溶解し、均一透明溶液が得られた。
得られた化合物(B−1)とイソオクタンの2成分組成物に、化合物(B−1)に対してモル比で3〜45倍の水を加え、超音波を照射することによって、化合物(B−1)−イソオクタン−水からなる3成分組成物を得た。前述の方法により、透明な分散状態か白濁状態かを判断した。このとき得られた結果を図3に示す。
図3において、黒丸は均一透明な分散状態を表し、×は1相もしくは2相の白濁分散状態を表す。また、モル比1:20:200の化合物(B−1)と水とイソオクタンから調製した均一透明な分散液は、20℃で30日間保持後も均一透明であった。
【0102】
【化17】

【0103】
[実施例9]
(化合物(B−6)−イソオクタン−水からなる3成分組成物の調製)
化合物(B−6)に、化合物(B−6)に対してモル比で5〜408倍のイソオクタンを加えた。このとき、化合物(B−6)は、モル比で13〜408倍のイソオクタンには容易に溶解し、均一な透明溶液が得られた。
得られた化合物(B−6)とイソオクタンの2成分組成物に、化合物(B−6)に対してモル比で3〜51倍の水を加え、超音波を照射することによって、化合物(B−6)−イソオクタン−水からなる3成分組成物を得た。前述の方法により、透明な分散状態か白濁状態かを判断した。このとき、得られた結果を図4に示す。
図4において、黒丸は均一透明な分散状態を表し、×は1相もしくは2相の白濁分散状態を表す。また、モル比1:20:200の化合物(B−6)と水とイソオクタンから調製した均一透明な分散液は、20℃で30日間保持後も均一透明であった。
【0104】
【化18】

【0105】
[比較例1]
(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド−イソオクタン−水からなる3成分組成物の調製)
代表的な汎用陽イオン性界面活性剤であるセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(以下、CTAB)に、モル比で5〜420倍のイソオクタンを加えた。このとき、CTABはイソオクタンにほとんど溶解せず、超音波照射後もCTABは白色沈殿物のままであった。得られたCTABとイソオクタンの2成分組成物に、CTABに対してモル比で2〜50倍の水を加え、超音波を照射した。いずれの組成比においても均一透明な分散液は得られず、1相もしくは2相の白濁した分散液が得られた。
【0106】
【化19】

【0107】
[比較例2]
(ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド−イソオクタン−水からなる3成分組成物の調製)
代表的な汎用陽イオン性界面活性剤であるジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド(以下、DDOAB)に、モル比で5〜420倍のイソオクタンを加えた。このとき、DDOABはイソオクタンにほとんど溶解せず、超音波照射後もDDOABは白色沈殿物のままであった。得られたDDOABとイソオクタンの2成分組成物に、DDOABに対してモル比で2〜50倍の水を加え、超音波を照射した。いずれの組成比においても均一透明な分散液は得られず、1相もしくは2相の白濁した分散液が得られた。
【0108】
【化20】

【0109】
化合物(A−16)、(A−19)、(B−1)、(B−6)、CTAB、DDOABのイソオクタンへの溶解度、乳化能を下記第1表に示す。
【0110】
第1表
────────────────────────────────────────
陽イオン性 イソオクタンへの溶解性 乳化能(含
組成物 界面活性剤 (飽和濃度:mol/L) 水率の幅) 最大含水率
────────────────────────────────────────
比較例1 CTAB 不溶 D D
比較例2 DDOAB 不溶 D D
実施例6 A−16 不溶(半透明分散液) B(2〜17) B(17)
実施例7 A−19 易溶(3.4×10−1) C(44〜46) A(46)
実施例8 B−1 易溶(2.0×10−1) A(0〜25) B(25)
実施例9 B−6 易溶(4.6×10−1) A(0〜30) B(30)
────────────────────────────────────────
(註)
乳化能と最大含水率は、下記の4段階で評価した。
A:乳化能20以上 最大含水率40以上
B:乳化能10〜20 最大含水率10〜30
C:乳化能1〜10 最大含水率1〜10
D:乳化能1以下 最大含水率1以下
【0111】
第1表において、「含水率の幅」は、界面活性剤に対するイソオクタンのモル比が120〜400の領域において取りうる含水率の最小から最大までの値を意味する。
【0112】
第1表に示す結果から明らかなように、分岐構造のアルキル鎖を有する式(I)で表される陽イオン性界面活性剤は、汎用の直鎖型の陽イオン性界面活性剤(CTAB、DDOAB)と比較して、低極性有機溶媒に対する溶解度が大きく向上したばかりでなく、乳化能も大きく向上し、含水率が高く、均一透明で安定な油中水滴型の乳化分散液を与えた。
【0113】
[実施例10]
(pH2−MgSO水溶液の調製)
塩酸でpHを2に調製した水溶液100gに硫酸マグネシウム(以降、MgSO)5.00gを加えて、pH2−MgSO水溶液を調製した。
【0114】
(シリカ微粒子(A16−1)の製造)
化合物(A−16)2.00gをイソオクタン100mLに溶解した後、前述のpH2−MgSO水溶液を764mg加えた。50℃に加熱することにより均一透明な分散液を得た。シリカ微粒子(A16−1)の製造では、含水率(界面活性剤に対する水のモル比)が10になるように混合した。反応溶液の温度を20℃に下げ、反応溶液を撹拌しながらテトラアルコキシシラン(以降、TEOS)を4.51mL加え、20℃を保ったまま3日間撹拌した(水に対するTEOSのモル比は0.50)。反応溶液を65〜70℃で24時間加熱し、溶媒を留去後、残渣を真空乾燥した。残渣をイソオクタン100mLに溶解し、オートクレーブ内で、290℃で12時間加熱した。溶媒を留去し、残渣を乾燥した。
【0115】
[実施例11]
(pH3−MgSO水溶液の調製)
塩酸でpHを3に調製した水溶液100gに硫酸マグネシウム(以降、MgSO)5.00gを加えて、pH3−MgSO水溶液を調製した。
【0116】
(シリカ微粒子(A16−2)の製造)
pH2−MgSO水溶液の代わりに、pH3−MgSO水溶液を用いたこと以外は、 シリカ微粒子(A16−1)の製造法と同条件で製造した。
【0117】
[実施例12]
(シリカ微粒子(A19−1)の製造)
化合物(A−19)2.00gをイソオクタン97mLに溶解した後、前述のpH2−MgSO水溶液を3.34g加えた。50℃に加熱することにより均一透明な分散液を得た。シリカ微粒子(B1−1)の製造では、含水率が45になるように混合した。反応溶液の温度を20℃に下げ、反応溶液を撹拌しながらテトラアルコキシシラン(以降、TEOS)を3.95mL加え、20℃を保ったまま3日間撹拌した(水に対するTEOSのモル比は0.1)。反応溶液を65〜70℃で24時間加熱し、溶媒を留去後、残渣を真空乾燥した。
【0118】
[実施例13]
(シリカ微粒子(B1−1)の製造)
化合物(B−1)2.00gをイソオクタン100mLに溶解した後、前述のpH2−MgSO水溶液を703mg加えた。50℃に加熱することにより均一透明な分散液を得た。シリカ微粒子(B1−1)の製造では、含水率が10になるように混合した。反応溶液の温度を20℃に下げ、反応溶液を撹拌しながらテトラアルコキシシラン(以降、TEOS)を4.15mL加え、20℃を保ったまま3日間撹拌した(水に対するTEOSのモル比は0.5)。反応溶液を65〜70℃で24時間加熱し、溶媒を留去後、残渣を真空乾燥した。残渣をイソオクタン100mLに溶解し、オートクレーブ内で、290℃で12時間加熱した。溶媒を留去し、残渣を乾燥した。
【0119】
[実施例14]
(シリカ微粒子(B1−2)の製造)
pH2−MgSO水溶液の代わりに、pH3−MgSO水溶液を用いたこと以外は、 シリカ微粒子(B1−1)の製造法と同条件で製造した。
【0120】
[実施例15]
(pH12−LiSO水溶液の調製)
アンモニアでpHを12に調製した水溶液100gに硫酸リチウム(以降、LiSO)5.00gを加えて、pH12−LiSO水溶液を調製した。
【0121】
(シリカ微粒子(B1−3)の製造)
pH2−MgSO水溶液の代わりに、pH12−LiSO水溶液を用いたこと以外は、シリカ微粒子(B1−1)の製造法と同条件で製造した。
【0122】
[実施例16〜18]
(シリカ微粒子(B1−4)〜(B1−6)の製造)
TEOSの添加量を4.15mLから2.07mLに変更した以外は、シリカ微粒子(B1−1)〜(B1−3)の製造法と同条件で、それぞれ、シリカ微粒子(B1−4)〜(B1−6)を製造した(水に対するTEOSのモル比は0.25)。
【0123】
[実施例19]
(シリカ微粒子(B6−1)の製造)
化合物(B−6)2.00gをイソオクタン90mLに溶解した後、前述のpH2−MgSO水溶液を685mg加えた。50℃に加熱することにより均一透明な分散液を得た。シリカ微粒子(B1−6)の製造では、含水率が10になるように混合した。反応溶液の温度を20℃に下げ、反応溶液を撹拌しながらTEOSを4.04mL加え、20℃を保ったまま3日間撹拌した(水に対するTEOSのモル比は0.5)。反応溶液を65〜70℃で24時間加熱し、溶媒を留去後、残渣を真空乾燥した。残渣をイソオクタン100mLに溶解し、オートクレーブ内で、290℃で12時間加熱した。溶媒を留去し、残渣を乾燥した。
【0124】
[実施例20]
(シリカ微粒子(B6−2)の製造)
pH2−MgSO水溶液の代わりに、pH3−MgSO水溶液を用いたこと以外は、 シリカ微粒子(B6−1)の製造法と同条件で製造した。
【0125】
[実施例21]
(シリカ微粒子(B6−3)の製造)
pH2−MgSO水溶液の代わりに、pH12−LiSO水溶液を用いたこと以外は、シリカ微粒子(B6−1)の製造法と同条件で製造した。
【0126】
[実施例22〜24]
(シリカ微粒子(B6−4)〜(B6−6)の製造)
TEOSの添加量を4.04mLから2.02mLに変更した以外は、シリカ微粒子(B6−1)〜(B6−3)の製造法と同条件で、それぞれ、シリカ微粒子(B6−4)〜(B6−6))を製造した(水に対するTEOSのモル比は0.25)。
【0127】
[比較例3]
(シリカ微粒子(DODAB)の製造)
ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロマイド(以下、DODAB)2.00gをイソオクタン107mLに分散した後、前述のpH3−MgSO水溶液を817mg加えた。シリカ微粒子(DODAB)の製造では、含水率が10になるように混合した。反応溶液を撹拌しながらTEOSを4.82mL加え、20℃で3日間撹拌した(水に対するTEOSのモル比は0.5)。反応溶液を65〜70℃で24時間加熱し、溶媒を留去後、残渣を真空乾燥した。残渣をイソオクタン100mLに分散し、オートクレーブ内で、290℃で12時間加熱した。溶媒を留去し、残渣を乾燥した。
【0128】
【化21】

【0129】
[比較例4]
(シリカ微粒子(CTAB)の製造)
セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(以下、CTAB)2.00gをイソオクタン136mLに分散した後、前述のpH3−MgSO水溶液を1.04g加えた。シリカ微粒子(CTAB)の製造では、含水率が10になるように混合した。反応溶液を撹拌しながらTEOSを6.12mL加え、20℃で3日間撹拌した(水に対するTEOSのモル比は0.5)。反応溶液を65〜70℃で24時間加熱し、溶媒を留去後、残渣を真空乾燥した。残渣をイソオクタン100mLに分散し、オートクレーブ内で、290℃で12時間加熱した。溶媒を留去し、残渣を乾燥した。
【0130】
(水溶液中でのシリカ製造)
水溶液中で、陽イオン性界面活性剤を用いて無機酸化物微粒子を製造した。水溶液中での製造法は、公知文献の記載(Adv. Mater., 12, (2000), 1286-1290)を参考にした。
【0131】
[比較例5]
(水溶液中でのシリカ(W−1)の製造)
陽イオン性両親媒性分子であるジオクタデシルジメチルアンモニウムブロマイド(以下、DODAB)4.63gに800mLのイオン交換水を加えてDODABの水分散液を調製した後、アンモニア水とイオン交換水を加えて、DODAB濃度1.00×10−2mol/L、pH8の分散液1.00Lを調製した。攪拌下、テトラエトキシシラン13.4mLを加え、20℃で、7日間攪拌した。攪拌の途中、適宜pHを確認し、pHが下がっていれば小量のアンモニア水を加えて、pH8に調製した。攪拌後、減圧下で揮発分を留去した後、残渣を真空乾燥した。
【0132】
[比較例6]
(水溶液中でのシリカ(W−2)の製造)
シリカ(W−1)の製造において、7日間攪拌後、揮発分を留去するまえに、反応溶液を65〜70℃で24時間加熱した後、揮発分を留去し、残渣を真空乾燥した。
【0133】
[比較例7、8]
(水溶液中でのシリカ(W−3)、(W−4)の製造)
シリカ(W−1)、(W−2)の製造において、DODAB4.63gの代わりに化合物(B−6)5.52gを用いること以外は同条件で、シリカ(W−3)、(W−4)をそれぞれ製造した。
【0134】
上記に示した製造法により製造したシリカの形状、大きさの測定結果を第2表に示す。シリカの形状、大きさの観察は、日立製作所社製の走査型電子顕微鏡S−5200を用いて行った。
【0135】
第2表
────────────────────────────────────────
シリカ 製造条件 生成物 分散性評価
番号 pH 無機塩 含水率 TEOS/HO 形状 粒径(nm) H T M
────────────────────────────────────────
A16−1 2 MgSO 10 0.50 非中空 20〜60 A A B
A16−2 3 MgSO 10 0.50 非中空 20〜60 A A B
A19−1 2 MgSO 45 0.10 中空 200〜400 B B B
B1−1 2 MgSO 10 0.50 非中空 20〜60 A A A
B1−2 3 MgSO 10 0.50 非中空 20〜60 A A A
B1−3 12 LiSO 10 0.50 非中空 10〜80 A A A
B1−4 2 MgSO 10 0.25 中空 20〜60 A A A
B1−5 3 MgSO 10 0.25 中空 20〜60 A A A
B1−6 12 LiSO 10 0.25 中空 10〜80 A A A
B6−1 2 MgSO 10 0.50 非中空 20〜60 A A A
B6−2 3 MgSO 10 0.50 非中空 20〜60 A A A
B6−3 12 LiSO 10 0.50 非中空 10〜80 A A A
B6−4 2 MgSO 10 0.25 中空 20〜60 A A A
B6−5 3 MgSO 10 0.25 中空 20〜60 A A A
B6−6 12 LiSO 10 0.25 中空 10〜80 A A A
DODAB-1 3 MgSO 10 0.50 凝集物 − D D D
CTAB−1 3 MgSO 10 0.50 凝集物 − D D D
W−1 8 − − − 中空 200〜400 D D D
W−2 8 − − − 凝集物 − D D D
W−3 8 − − − 凝集物 − D D D
W−4 8 − − − 凝集物 − D D D
45nmSiO − − − − (非中空) (45) D D C
12nmSiO − − − − (非中空) (12) D D C
60nm中空SiO− − − − (中空) (60) D D C
────────────────────────────────────────
【0136】
(註)
分散性評価:下記の有機溶媒への分散安定性評価方法で、各種有機溶媒中の分散性を、A(良好)〜D(不良)の4段階で評価した。
H:ヘキサン
T:トルエン
M:メチルエチルケトン
【0137】
(有機溶媒への分散安定性評価)
各実施例で製造したシリカを10倍の質量のヘキサン、トルエンまたはメチルエチルケトンに分散し、固形分濃度が9.1%の分散液を調製した。また、市販の無機微粒子であるシリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、日産化学工業(株)製 IPA−ST−L、平均粒子径45nm、シリカ濃度30質量%)100質量部に230質量部のヘキサン、トルエン、または、メチルエチルケトンを加え、固形分濃度が9.1%の分散液(以下、45nmSiO分散液)をそれぞれ調製した。同様に、シリカ微粒子ゾル(メタノールシリカゾル(商品名)、平均粒子径12nm、シリカ濃度30%、日産化学工業(株)製)100質量部に230質量部のヘキサン、トルエン、または、メチルエチルケトンを加え、固形分濃度が9.1%の分散液(以下、12nmSiO分散液) をそれぞれ調製した。同様に中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコール中空シリカゾル、触媒化成工業(株)製 CS−60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ屈折率1.31)100質量部に120質量部のヘキサン、トルエン、または、メチルエチルケトンを加え、固形分濃度が9.1%の分散液(以下、60nm中空SiO分散液)を調製した。以上調製した分散液を直径10mmの試験管に10cc採取し、目視にて異物を観察した。目視でわかる異物の発生の程度を以下の4ランクにわけて評価した。
A:異物は認められない。
B:50μm程度の異物が僅かに認められる。
C:500μm以上の異物が明らかに認められる。
D:500μm以上の異物に加え明らかに凝集沈殿物が認められる。
【0138】
第2表に示す結果から明らかなように、有機溶媒中の逆ミセルを用いた製造法により、含水率が10以下のときは、粒径100nm以下のシリカ微粒子が製造でき、含水率が45以上では、粒径200nm以上のシリカ微粒子が製造できた。さらに、水に対するTEOSのモル比が、0.50以上では非中空構造の粒子が、0.25以下では中空構造の粒子が製造できた。逆ミセルを形成するためには、化合物(A−16)、(A−19)、(B−1)のように有機溶媒への分散性の高いものが好ましい。有機溶媒への分散性が低いDODABやCTABから製造したシリカ(DODAB−1)と(CTAB−1)は、白い凝集物であった。また、水溶液中での製造法においては、シリカ(W−1)は、粒径200−400nmの中空シリカ微粒子であったが、シリカ(W−2)〜(W−4)は、白い凝集物であった。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】化合物(A−16)−イソオクタン−水からなる3成分組成物の相図である。
【図2】化合物(A−19)−イソオクタン−水からなる3成分組成物の相図である。
【図3】化合物(B−1)−イソオクタン−水からなる3成分組成物の相図である。
【図4】化合物(B−6)−イソオクタン−水からなる3成分組成物の相図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される陽イオン性界面活性剤:
【化1】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至20のアルキル基であり;RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基または炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基であり;R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基または炭素原子数が1乃至20の置換アルキル基であり;L、LおよびLは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子数が1乃至5のアルキレン基、炭素原子数が6乃至20のアリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であって、Rは水素原子または炭素原子数が1乃至5のアルキル基であり;Xは陰イオンである]。
【請求項2】
およびRが、水素原子である請求項1に記載の陽イオン性界面活性剤。
【請求項3】
およびRが、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基である請求項1に記載の陽イオン性界面活性剤。
【請求項4】
およびRが、それぞれ独立に、炭素原子数が3乃至20のアルキル基または炭素原子数が3乃至20の置換アルキル基である請求項1に記載の陽イオン性界面活性剤。
【請求項5】
、RおよびRが、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至3のアルキル基または炭素原子数が1乃至3の置換アルキル基である請求項1に記載の陽イオン性界面活性剤。
【請求項6】
、LおよびLが、それぞれ独立に、単結合または炭素原子数が1乃至5のアルキレン基、−O−、−CO−、−NR−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であって、Rは水素原子または炭素原子数が1乃至5のアルキル基である請求項1に記載の陽イオン性界面活性剤。
【請求項7】
油相中に水相が乳化しているW/O型乳化物であって、油相中に下記式(I)で表される陽イオン性界面活性剤が溶解していることを特徴とするW/O型乳化物:
【化2】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至20のアルキル基であり;RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基または炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基であり;R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基または炭素原子数が1乃至20の置換アルキル基であり;L、LおよびLは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子数が1乃至5のアルキレン基、炭素原子数が6乃至20のアリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であって、Rは水素原子または炭素原子数が1乃至5のアルキル基であり;Xは陰イオンである]。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−281098(P2006−281098A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104857(P2005−104857)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】