説明

隙間閉塞方法および隙間閉塞具

【課題】ロータディスクの締結部分における隙間を充填材で満たして閉塞すること。
【解決手段】隙間8の開口部8aにシート体91を被せると共にシート体91を開口部8aの周囲に密着させて開口部8aを密封する工程と、次に、シート体91に穿孔した注入口91aから隙間8内に充填材を注入しつつ、シート体91に穿孔した排気口91bから隙間8内の空気を吸引して排気する工程とを含む。このため、シート体91で密封された隙間8内に、充填材を真空引きして充填することで、隙間8内に充填材を満たすことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータディスクの締結部分における隙間を閉塞する隙間閉塞方法および隙間閉塞具に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンなどに適用される圧縮機は、複数の圧縮機静翼および複数の圧縮機動翼を有し、圧縮機静翼と圧縮機動翼とが圧縮機ロータの軸方向に交互に設けられている。圧縮機静翼は、圧縮機ケーシング側に固定されている。圧縮機動翼は、ロータディスクの外周に配列されている。ロータディスクは、複数に分割して構成され、接続ボルトにより締結されることで圧縮機ロータをなしている。
【0003】
かかるロータディスクの接続ボルトによる締結部分には、ボルト頭部やナットの座りを良好にするための座繰部が形成されている場合がある。このような場合、ボルト頭部やナットの周囲に、座繰部との間で隙間が生じる。そして、この隙間に雨水など腐食成分が侵入すると、圧縮機の稼働時の応力により、ディスクに応力腐食割れが生じるおそれがある。そこで、座繰部との間の隙間を閉塞して腐食成分の侵入を防ぐ処置を要する。
【0004】
隙間の閉塞には、耐腐食性の充填材を隙間に注入することが効果的である。そして、隙間の内部に充填材を注入する場合、充填材内に気泡が混入しないように、隙間内を減圧しつつ充填材を注入することが好ましい。このような方法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献1の方法は、エレクトロデポジション型表示パネルの製造方法に関し、セルの空間部に対して表示材料(充填材)を充填するため、空間部に通じる第一開口部と第二開口部とを設け、第一開口部から流動性を有する状態下の表示材料を注入しながら、第二開口部から真空ポンプで空間部内を減圧しつつ表示材料を排出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−271717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1の方法では、表示材料を充填することを想定された空間部がセルに内包されているため、空間部に通じる第一開口部と第二開口部とを設け、かつ空間部内を減圧することが容易である。しかし、座繰部との隙間のように、充填材を充填することを想定していない部分では、隙間内を密封して減圧することは難しく、隙間を充填材で満たすことは容易でない。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するものであり、ロータディスクの締結部分における隙間を充填材で満たして閉塞することのできる隙間閉塞方法および隙間閉塞具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明の隙間閉塞方法では、ロータディスクの締結部分に設けられた隙間に、充填材を充填する隙間閉塞方法において、前記隙間の開口部にシート体を被せると共に前記シート体を前記開口部の周囲に密着させて前記開口部を密封する工程と、次に、前記シート体に穿孔した注入口から前記隙間内に充填材を注入しつつ、前記シート体に穿孔した排気口から前記隙間内の空気を吸引して排気する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この隙間閉塞方法によれば、シート体で密封された隙間内に、充填材を真空引きして充填できるので、隙間内に充填材を満たせる。この結果、ロータディスクの締結部分における隙間を充填材で満たして閉塞できる。
【0011】
また、本発明の隙間閉塞方法では、前記隙間内に充填材を注入しつつ前記隙間内の空気を吸引して排気する工程では、下方から充填材を注入し、上方から空気を吸引することを特徴とする。
【0012】
この隙間閉塞方法によれば、隙間内に注入された充填材は、下方に溜まりつつ隙間に充填される。この結果、ロータディスクの締結部分における隙間を充填材で確実に満たせる。
【0013】
上述の目的を達成するために、本発明の隙間閉塞具では、ロータディスクの締結部分に設けられた隙間に、充填材を充填する隙間閉塞具において、前記隙間の開口部を覆うと共に前記開口部の周囲に密着されて前記開口部を密封するシート体と、前記シート体に穿孔した注入口から前記隙間内に充填材を注入する注入手段と、前記シート体に穿孔した排気口から前記隙間内の空気を吸引して排気する吸引手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
この隙間閉塞具によれば、シート体と、注入手段と、吸引手段とを備えることで、シート体で密封された隙間内に充填材を満たすことができる。この結果、ロータディスクの締結部分における隙間を充填材で満たして閉塞できる。
【0015】
また、本発明の隙間閉塞具では、前記注入口を下方に設けると共に前記排気口を上方に設けたことを特徴とする。
【0016】
この隙間閉塞具によれば、下方から充填材を注入し、上方から空気を吸引することができる。よって、隙間内に注入された充填材は、下方に溜まりつつ隙間に充填される。この結果、ロータディスクの締結部分における隙間を充填材で確実に満たせる。
【0017】
また、本発明の隙間閉塞具では、前記シート体を透明材または透光性材で構成したことを特徴とする。
【0018】
この隙間閉塞具によれば、シート体を透して隙間内に充填材が充填されている様子が見える。この結果、ロータディスクの締結部分における隙間を充填材で確実に満たせる。
【0019】
また、本発明の隙間閉塞具では、前記シート体を前記開口部の周囲に押し付けて前記シート体を密着させる押圧手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0020】
この隙間閉塞具によれば、押圧手段を備えたことにより、隙間の周囲の一部にシート体を貼り付けることができない形態であっても、シート体を隙間の開口部の周囲に密着できる。
【0021】
また、本発明の隙間閉塞具では、前記押圧手段は、前記開口部の周りを囲み、かつ前記シート体を密着すべき面に沿って前記シート体に当接する押当部材と、前記シート体を密着すべき前記面に向けて前記押当部材を押圧する押圧部材とを備えており、前記押当部材を、前記シート体と共に透明材または透光性材で構成したことを特徴とする。
【0022】
この隙間閉塞具によれば、押当部材およびシート体を透して隙間内に充填材が充填されている様子が見える。この結果、ロータディスクの締結部分における隙間を充填材で確実に満たせる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ロータディスクの締結部分における隙間を充填材で満たして閉塞できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る隙間閉塞方法が適用されるガスタービンの概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る隙間閉塞方法が適用される圧縮機の概略構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1に係る隙間閉塞方法を示す工程図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1に係る隙間閉塞方法を示す工程図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1に係る隙間閉塞方法を示す工程図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2に係る隙間閉塞方法を示す工程図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2に係る隙間閉塞方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0026】
本実施の形態の隙間閉塞方法および隙間閉塞具が適用される圧縮機1について説明する。圧縮機1は、例えば、ガスタービン、蒸気タービン、ジェットエンジンなどに用いられる。本実施の形態では、圧縮機1がガスタービンに用いられた形態を示す。
【0027】
ガスタービンは、図1に示すように、圧縮機1と燃焼器2とタービン3とにより構成されている。また、圧縮機1、燃焼器2およびタービン3の中心部には、ロータ4が貫通して配置されている。圧縮機1、燃焼器2およびタービン3は、ロータ4の軸心Rに沿い、空気の流れの前側から後側に向かって順に並設されている。なお、以下の説明において、軸方向とは軸心Rに平行な方向をいい、周方向とは軸心Rを中心とした周り方向をいう。
【0028】
圧縮機1は、空気を圧縮して圧縮空気を生成するものである。圧縮機1は、空気を取り込む空気取入口11を有した圧縮機ケーシング12内に圧縮機静翼13および圧縮機動翼14が設けられている。圧縮機静翼13は、圧縮機ケーシング12側に取り付けられて周方向に複数並設されている。また、圧縮機動翼14は、ロータ4側に取り付けられて周方向に複数並設されている。これら圧縮機静翼13と圧縮機動翼14とは、軸方向に沿って交互に設けられている。
【0029】
燃焼器2は、圧縮機1で圧縮された圧縮空気に対して燃料を供給することで、高温・高圧の燃焼ガスを生成するものである。燃焼器2は、圧縮空気と燃料を混合して燃焼させ、タービン3に導く燃焼筒21を有している。燃焼筒21は、燃焼器ケーシング22に対し、周方向に複数並設されている。
【0030】
タービン3は、燃焼器2で燃焼された燃焼ガスにより回転動力を生じるものである。タービン3は、タービンケーシング31内にタービン静翼32およびタービン動翼33が設けられている。タービン静翼32は、タービンケーシング31側に取り付けられて周方向に複数並設されている。また、タービン動翼33は、ロータ4側に取り付けられて周方向に複数並設されている。これらタービン静翼32とタービン動翼33とは、軸方向に沿って交互に設けられている。また、タービンケーシング31の後側には、タービン3に連続する排気ディフューザ34aを有した排気室34が設けられている。
【0031】
ロータ4は、圧縮機1側の端部が軸受部51により支持され、排気室34側の端部が軸受部52により支持されて、軸心Rを中心として回転自在に設けられている。そして、ロータ4の排気室34側の端部には、発電機(図示せず)の駆動軸が連結されている。このロータ4は、タービンロータ41と、圧縮機ロータ42と、中間軸43とで構成されている。タービンロータ41は、タービン3において回転駆動されるものである。圧縮機ロータ42は、圧縮機1において回転駆動されるものである。中間軸43は、タービンロータ41と圧縮機ロータ42とを結合するものである。
【0032】
このようなガスタービンは、圧縮機1の空気取入口11から取り込まれた空気が、複数の圧縮機静翼13と圧縮機動翼14とを通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。この圧縮空気に対し、燃焼器2により燃料が供給されることで高温・高圧の燃焼ガスが生成される。そして、燃焼ガスがタービン3のタービン静翼32とタービン動翼33とを通過することでロータ4が回転駆動される。タービン3が回転駆動された機械的動力のうち一部は、ロータ4を介して圧縮機1の回転駆動に用いられ、残りは、発電機に伝達される。そして、ロータ4を回転駆動した後の排気ガスは、排気室34の排気ディフューザ34aで静圧に変換されてから大気に放出される。
【0033】
図2に示すように、ガスタービンの圧縮機1においては、上述したように圧縮機静翼13と圧縮機動翼14とが、軸方向に沿って交互に配列されている。圧縮機静翼13は、圧縮機ケーシング12側に結合されており、圧縮機動翼14は、圧縮機ロータ42の外周に結合されている。隣り合う圧縮機静翼13と圧縮機動翼14とは、一対となって一つの段を構成しており、多数の段が設けられている。各段において、圧縮機動翼14は、圧縮機ロータ42の外周に複数配列されており、圧縮機静翼13は、圧縮機ケーシング12側の内周に複数配列されている。
【0034】
圧縮機ロータ42は、円板状部材である複数のロータディスク421,422,423,424,425に分割された構造とされている。各ロータディスク421,422,423,424,425は、鋳造や鍛造などにより構成され、その外周に圧縮機動翼14が配列されて結合される。ロータディスク421,422,423,424,425は、それぞれ複数段の圧縮機動翼14を接合する態様で一塊のディスクをなしている。そして、圧縮機1の後側のロータディスク422,423,424,425は、軽量化を図るため、隣接する同士が互いに溶接により結合され一体に構成されている。また、一体に構成されたロータディスク422,423,424,425のうちの前側のロータディスク422と、圧縮機1の前側のロータディスク421とは、翼幅の大きい圧縮機動翼14を支持するように高剛性化を図るため、接続ボルト6により結合されている。この接続ボルト6は、ロータ4の軸心Rの周方向に複数配列されている。
【0035】
ところで、図3に示すように、ロータディスク421とロータディスク422との接続ボルト6による締結部分(図3では、ロータディスク421側の締結部分を示す)には、ナット6aやボルト頭部(図示せず)の座りを良好にするための座繰部7が形成されている。このような場合、ナット6aやボルト頭部の周囲に、座繰部7との隙間8が生じる。そして、この隙間8に雨水など腐食成分が侵入すると、圧縮機1の稼働時の応力により、ロータディスク421,422に応力腐食割れが生じるおそれがある。そこで、本実施の形態では、座繰部7との間の隙間8を閉塞して腐食成分の侵入を防ぐ処置を施す。
【0036】
[実施の形態1]
本発明に係る実施の形態1の隙間閉塞方法および隙間閉塞具について説明する。実施の形態1の隙間閉塞方法は、図4および図5に示すように、隙間8の開口部8aにシート体91を被せると共に、シート体91を開口部8aの周囲に密着させて開口部8aを密封する工程と、次に、シート体91に穿孔した注入口91aから隙間8内に充填材を注入しつつ、シート体91に穿孔した排気口91bから隙間8内の空気を吸引して排気する工程とを含む。
【0037】
そして、実施の形態1の隙間閉塞具は、隙間8の開口部8aを覆うと共に開口部8aの周囲に密着されて開口部8aを密封するシート体91と、シート体91に穿孔した注入口91aから隙間8内に充填材を注入する注入手段92と、シート体91に穿孔した排気口91bから隙間8内の空気を吸引して排気する吸引手段93とを備えている。
【0038】
シート体91は、シリコンゴムなどからなる可撓性を有するシートであり、座繰部7の開口面積よりも大きい面積を有すると共に、ナット6aの外径よりも小さく形成された通穴91cが形成されている。すなわち、通穴91cにナット6aを通すことにより、通穴91cの縁がナット6aの周囲に密着することになる。そして、このシート体91を隙間8の開口部8aの周囲に密着させるには、気密性を有した接着体94が用いられる。接着体94としては、例えば、気密性を有するシート状の基材の両面に気密性を有する接着剤が塗布された両面接着体がある。そして、両面接着体の一方の面を隙間8の周りに沿う形状でシート体91に貼り付けておき、シート体91をナット6aの周囲に密着させつつ、両面接着体の他方の面をロータディスク421側の隙間8の周りに貼り付ける。これにより、シート体91で、隙間8の開口部8aが密封される。
【0039】
注入手段92および吸引手段93には、シリンジが用いられる。また、充填材としては、耐熱性(例えば、150[℃]以上)を有するシリコン樹脂が用いられる。
【0040】
そして、注入手段92としてのシリンジにシリコン樹脂を装填し、このシリンジをシート体91に穿孔した注入口91aに差し込んで隙間8内にシリコン樹脂を注入する。一方、吸引手段93としてのシリンジをシート体91に穿孔した排気口91bに差し込み、注入手段92によるシリコン樹脂の注入と共に、隙間8内の空気を吸引して排気する。そして、吸引手段93としてのシリンジにシリコン樹脂が吸引されるまで、注入手段92によりシリコン樹脂を注入する。これにより、シート体91で開口部8aが密封された隙間8内にシリコン樹脂が充填される。そして、シリコン樹脂が硬化した後、シート体91を取り外して作業を終了する。
【0041】
このように、実施の形態1の隙間閉塞方法によれば、隙間8の開口部8aをシート体91で密封しておき、シート体91の外側から隙間8内に充填材を注入しつつ、シート体91の外側に隙間8内の空気を排気する。すなわち、シート体91で密封された隙間8内に、充填材を真空引きして充填できるので、隙間8内に充填材を満たすことが可能になる。この結果、ロータディスク421,422の締結部分における隙間8を充填材で満たして閉塞することが可能である。
【0042】
また、実施の形態1の隙間閉塞方法では、隙間8内に充填材を注入しつつ隙間8内の空気を吸引して排気する工程において、下方から充填材を注入し、上方から空気を吸引することが好ましい。
【0043】
この隙間充填方法によれば、隙間8内に注入された充填材は、下方に溜まりつつ隙間8に充填される。この結果、ロータディスク421,422の締結部分における隙間8を充填材で確実に満たすことが可能である。
【0044】
一方、実施の形態1の隙間閉塞具では、シート体91と、注入手段92と、吸引手段93とを備えることで、隙間8内に充填材を満たすことができる。この結果、ロータディスク421,422の締結部分における隙間8を充填材で満たして閉塞することが可能である。
【0045】
また、実施の形態1の隙間閉塞具では、注入口91aを下方に設けると共に排気口91bを上方に設けたことにより、下方から充填材を注入し、上方から空気を吸引することができる。よって、隙間8内に注入された充填材は、下方に溜まりつつ隙間8に充填される。この結果、ロータディスク421,422の締結部分における隙間8を充填材で確実に満たすことが可能である。
【0046】
また、実施の形態1の隙間閉塞具では、シート体91を透明材または透光性材(光を透すことができる透き通ったもの)で構成することが好ましい。
【0047】
この隙間閉塞具によれば、シート体91を透して隙間8内に充填材が充填されている様子が見える。この結果、ロータディスク421,422の締結部分における隙間8を充填材で確実に満たすことが可能である。
【0048】
[実施の形態2]
上述した実施の形態1では、接着体94によりシート体91を隙間8の開口部8aの周囲に密着させている。しかし、例えば、図6に示すように、ロータディスク421,422の形状によって隙間8の周囲の一部に凹凸が存在し、接着体94を貼り付ける領域(糊しろ)が確保できない場合がある。そこで、本実施の形態2では、このような事態であっても、シート体91を隙間8の開口部8aの周囲に密着できるようにしている。
【0049】
実施の形態2の隙間閉塞方法は、図6および図7に示すように、隙間8の開口部8aにシート体91を被せると共に、シート体91を開口部8aの周囲に密着させて開口部8aを密封する工程と、次に、シート体91に穿孔した注入口91aから隙間8内に充填材を注入しつつ、シート体91に穿孔した排気口91bから隙間8内の空気を吸引して排気する工程とを含む。さらに、実施の形態2の隙間閉塞方法は、シート体91を開口部8aの周囲に密着させる工程では、押圧手段95によりシート体91を開口部8aの周囲に押し付ける工程を含む。
【0050】
そして、実施の形態2の隙間閉塞具は、隙間8の開口部8aを覆うと共に開口部8aの周囲に密着されて開口部8aを密封するシート体91と、シート体91に穿孔した注入口91aから隙間8内に充填材を注入する注入手段92と、シート体91に穿孔した排気口91bから隙間8内の空気を吸引して排気する吸引手段93とを備えている。さらに、実施の形態2の隙間閉塞具は、シート体91を開口部8aの周囲に押し付けてシート体91を密着させる押圧手段95を備えている。
【0051】
シート体91、注入手段92および吸引手段93は、上述した実施の形態1と同様のものであるため、同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
押圧手段95は、図6および図7に示すように、押当部材951と、押圧部材952とで構成されている。押当部材951は、隙間8の開口部8aの周りを囲み、かつシート体91を密着すべきロータディスク421の面に沿う形状の先端部951aを有して筒状に形成されている。また、押当部材951は、ナット6aの周囲に密着したシート体91に、先端部951aを押し当てた状態で、シート体91の厚み分を含む筒状の長さL1が、ロータディスク421からの接続ボルト6の突出高さL2よりも長く、筒状内に接続ボルト6の突出部分を包むように形成されている。すなわち、押当部材951は、筒状の後端部951bが接続ボルト6よりも突出する。また、押当部材951の先端部951aには、シート体91に穿孔した注入口91aを臨むように切り欠かれた注入口切欠951c、およびシート体91に穿孔した排気口91bを臨むように切り欠かれた排出口切欠951dが形成されている。
【0053】
押圧部材952は、押当部材951の後端部951bに当接する当板952aと、ロータディスク421において座繰部7が形成された面と対向する面に当接する952bと、各当板952a,952bとの間に配置されて各当板952a,952bの間隔を拡縮させる突張部952cとで構成されている。突張部952cは、各当板952a,952bの間隔を拡げたり縮めたりできるように作用すればよく、例えば、ネジ棒の両端のナットを各当板952a,952bに押し当てる構成がある。
【0054】
このような押圧手段95は、シート体91の通穴91cの縁をナット6aの周囲に密着させた後、押当部材951の先端部をシート体91に当て、押圧部材952により押当部材951をシート体91(シート体91を密着すべきロータディスク421の面)に向けて押圧する。これにより、シート体91が開口部8aの周囲に押し付けられ、このシート体91で隙間8の開口部8aが密封される。
【0055】
その後、注入手段92としてのシリンジにシリコン樹脂を装填し、このシリンジを押当部材951の注入口切欠951cを介してシート体91の注入口91aに差し込んで隙間8内にシリコン樹脂を注入する。一方、吸引手段93としてのシリンジを、押当部材951の排出口切欠951dを介してシート体91の排気口91bに差し込み、注入手段92によるシリコン樹脂の注入と共に、隙間8内の空気を吸引して排気する。そして、吸引手段93としてのシリンジにシリコン樹脂が吸引されるまで、注入手段92によりシリコン樹脂を注入する。これにより、シート体91で開口部8aが密封された隙間8内にシリコン樹脂が充填される。そして、シリコン樹脂が硬化した後、押圧手段95およびシート体91を取り外して作業を終了する。
【0056】
このように、実施の形態2の隙間閉塞方法によれば、上述した実施の形態1と同様に、ロータディスク421,422の締結部分における隙間8を充填材で満たして閉塞することが可能である。特に、実施の形態2の隙間閉塞方法では、押圧手段95によりシート体91を開口部8aの周囲に押し付けることから、隙間8の周囲の一部にシート体91を貼り付けることができない形態において、シート体91を隙間8の開口部8aの周囲に密着させることが可能である。
【0057】
また、実施の形態2の隙間閉塞方法においても、上述した実施の形態1と同様に、隙間8内に充填材を注入しつつ隙間8内の空気を吸引して排気する工程において、下方から充填材を注入し、上方から空気を吸引することが、ロータディスク421,422の締結部分における隙間8を充填材で確実に満たすうえで好ましい。
【0058】
一方、実施の形態2の隙間閉塞具では、上述した実施の形態1と同様に、シート体91と、注入手段92と、吸引手段93とを備えることで、ロータディスク421,422の締結部分における隙間8を充填材で満たして閉塞することが可能である。特に、実施の形態2では、シート体91を開口部8aの周囲に押し付ける押圧手段95を備えたことにより、隙間8の周囲の一部にシート体91を貼り付けることができない形態であっても、シート体91を隙間8の開口部8aの周囲に密着させることが可能である。
【0059】
また、実施の形態2の隙間閉塞具では、上述した実施の形態1と同様に、注入口91aを下方に設けると共に排気口91bを上方に設けたことにより、ロータディスク421,422の締結部分における隙間8を充填材で確実に満たすことが可能である。
【0060】
また、実施の形態2の隙間閉塞具では、押圧手段95の押当部材951、およびシート体91を透明材または透光性材で構成することが好ましい。
【0061】
この隙間閉塞具によれば、押当部材951およびシート体91を透して隙間8内に充填材が充填されている様子が見える。この結果、ロータディスク421,422の締結部分における隙間8を充填材で確実に満たすことが可能である。
【0062】
なお、シート体91を透明材または透光性材で構成し、シート体91を透して隙間8内に充填材が充填されている様子が見えるように押当部材951に観察窓(観察穴)を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明に係る隙間閉塞方法および隙間閉塞具は、ロータディスクの締結部分における隙間を充填材で満たして閉塞することに適している。
【符号の説明】
【0064】
421,422,423,424,425 ロータディスク
6 接続ボルト
6a ナット
7 座繰部
8 隙間
8a 開口部
91 シート体
91a 注入口
91b 排気口
91c 通穴
92 注入手段
93 吸引手段
94 接着体
95 押圧手段
951 押当部材
951a 先端部
951b 後端部
951c 注入口切欠
951d 排出口切欠
952 押圧部材
952a,952b 当板
952c 突張部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータディスクの締結部分に設けられた隙間に、充填材を充填する隙間閉塞方法において、
前記隙間の開口部にシート体を被せると共に前記シート体を前記開口部の周囲に密着させて前記開口部を密封する工程と、
次に、前記シート体に穿孔した注入口から前記隙間内に充填材を注入しつつ、前記シート体に穿孔した排気口から前記隙間内の空気を吸引して排気する工程と、
を含むことを特徴とする隙間閉塞方法。
【請求項2】
前記隙間内に充填材を注入しつつ前記隙間内の空気を吸引して排気する工程では、下方から充填材を注入し、上方から空気を吸引することを特徴とする請求項1に記載の隙間閉塞方法。
【請求項3】
ロータディスクの締結部分に設けられた隙間に、充填材を充填する隙間閉塞具において、
前記隙間の開口部を覆うと共に前記開口部の周囲に密着されて前記開口部を密封するシート体と、
前記シート体に穿孔した注入口から前記隙間内に充填材を注入する注入手段と、
前記シート体に穿孔した排気口から前記隙間内の空気を吸引して排気する吸引手段と、
を備えたことを特徴とする隙間閉塞具。
【請求項4】
前記注入口を下方に設けると共に前記排気口を上方に設けたことを特徴とする請求項3に記載の隙間閉塞具。
【請求項5】
前記シート体を透明材または透光性材で構成したことを特徴とする請求項3または4に記載の隙間閉塞具。
【請求項6】
前記シート体を前記開口部の周囲に押し付けて前記シート体を密着させる押圧手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の隙間閉塞具。
【請求項7】
前記押圧手段は、前記開口部の周りを囲み、かつ前記シート体を密着すべき面に沿って前記シート体に当接する押当部材と、前記シート体を密着すべき前記面に向けて前記押当部材を押圧する押圧部材とを備えており、前記押当部材を、前記シート体と共に透明材または透光性材で構成したことを特徴とする請求項6に記載の隙間閉塞具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−255466(P2010−255466A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104293(P2009−104293)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】