説明

集光レンズおよび多分割レンズ

【課題】外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能な集光レンズおよび多分割レンズを提供する。
【解決手段】集光レンズ1は、第一面10とは反対側の第二面20からなるレンズ面21を有するものであり、レンズ面21が、複数のレンズ機能面23からなる。集光レンズ1は、各レンズ機能面23それぞれが、楕円錐30の側面の一部からなり、第一面10上の各点の法線のうち楕円錐30の側面の一部からなるレンズ機能面23に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ機能面23に対応する楕円錐30の中心軸とが、非平行であり、且つ、互いの中心軸が非平行である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光レンズおよび多分割レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図15に示すように、第一面が平面110、第二面が双曲面120であり、双曲面120の回転軸Cを、平面110の法線Hと角度θをなすように傾けた集光レンズ101が知られている(特許文献1)。図15に示した構成の集光レンズ101においては、回転軸Cに対してある角度δで入射して集光レンズ101内で双曲面120の回転軸Cと平行となる光線が、焦点Fに無収差で集光される。なお、角度δは、集光レンズ101の屈折率をnとすれば、スネルの法則、すなわち、sin(θ+δ)=nsinθを満足する角度である。したがって、図15の集光レンズ101では、軸外収差の発生を抑制することができ、平面110の法線Hに斜交する方向からの光線を効率よく集光することが可能となる。
【0003】
なお、特許文献1に開示された集光レンズ101は、対象とする光線が赤外線であり、特許文献1には、レンズ材料として、ポリエチレンを用いることが開示されている。
【0004】
また、特許文献1には、複数の集光レンズが並べられ各集光レンズの焦点が同一位置である多分割レンズが記載されている。
【0005】
また、特許文献1には、図16(a),(b)に示すように、集光レンズ101をフレネルレンズとし、軸外収差の発生を抑制するために、第二面の各双曲面121,122,123が共有する回転軸Cを、第一面である平面110に対して斜交させたものが提案されている。ここにおいて、各双曲面121,122,123それぞれがレンズ面を構成している。
【0006】
特許文献1には、図16(a),(b)の集光レンズ101では、各双曲面121,122,123が共有する回転軸Cと平面110とのなす角度に応じて、焦点に無収差で集光する平行光線と平面110の法線Hとの間に角度を持たせることができることが記載されている。したがって、図16(a),(b)の集光レンズ101では、軸外収差の発生を抑制することができ、平面110の法線Hに斜交する方向からの光線を効率よく集光することが可能となる。
【0007】
また、従来から、単一の円錐面を有するアキシコンレンズに比べて焦点深度を深くすることが可能なアキシコンレンズが提案されている(特許文献2)。
【0008】
特許文献2には、図17(a),(b),(c)に示すように円錐面からなるレンズ面と光軸OXとのなす角度が異なる3つのレンズ部材221a,221b,221cを用意し、3つのレンズ部材221a,221b,221cを図17(d)に示すように光軸方向に配置させることにより、単一の円錐面を有するアキシコンレンズに比べて、焦点深度を深くできる旨が記載されている。また、特許文献2には、上述の3つのレンズ部材221a,221b,221cを組み合わせると、3つの円錐面を有するアキシコンレンズが得られるが、図17(e)に示すように、スプライン曲線(自由曲線)でレンズ面213を構成したアキシコンレンズが提案されている。この図17(e)に示した構成のアキシコンレンズにおいても、単一の円錐面を有するアキシコンレンズに比べて、焦点深度を深くすることができる。
【0009】
また、従来から、焦点位置を略同じとする複数枚のレンズが一平面上で組み合わされた多分割レンズと、上記焦点位置に配置された受光素子である赤外線検知素子とを備えた光学式検知装置が提案されている(例えば、特許文献3,4)。
【0010】
特許文献3,4に開示された多分割レンズの各レンズは、第一面が平面、第二面が第一面の法線に対して斜交する主軸をもつ双曲面である。また、特許文献3,4に開示された多分割レンズは、対象とする光線が赤外線であり、レンズ材料として、ポリエチレンを用いることが開示されている。また、特許文献3,4には、多分割レンズを射出成形によって製作することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平7−36041号公報
【特許文献2】特開2009−82958号公報
【特許文献3】日本国特許第3090336号公報
【特許文献4】日本国特許第3090337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示された図15の集光レンズ101では、双曲面120の回転軸Cが平面110の法線Hに対して斜交しており、双曲面120が、平面110の法線Hに対して回転対称ではない。このため、集光レンズ101や当該集光レンズ101用の金型は、旋盤などによる回転加工で製作することが困難である。
【0013】
また、図16(a),(b)の集光レンズ101では、出射面を構成する各双曲面121,122,123の回転軸Cが入射面である平面110の法線Hに対して斜交しており、各双曲面121,122,123が、平面110の法線Hに対して回転対称ではない。このため、集光レンズ101や集光レンズ101用の金型を旋盤などによる回転加工で製作することが困難である。
【0014】
そこで、上述の図15、図16(a),(b)の集光レンズ101や集光レンズ101用の金型の製作時には、多軸制御の加工機を用い、図18に示すようにノーズ半径(コーナ半径ともいう)が数μmの鋭利なバイト(工具)130の刃先のみを工作物140に点接触させて微小ピッチで切削加工を行うことで双曲面120、121,122,123あるいは当該双曲面120、121,122,123に応じた曲面を形成する必要がある。工作物140は、集光レンズ101を直接形成するための基材や、金型を形成するための基材である。このため、上述の集光レンズ101や集光レンズ101用の金型の製作における加工時間が長くなり、集光レンズ101のコストアップの要因となってしまう。
【0015】
また、上述の多分割レンズは、各レンズの第二面が第一面の法線に対して斜交した双曲面であり、第一面の法線に対して回転対称ではないため、当該多分割レンズ用の金型を旋盤などによる回転加工で製作することが困難である。
【0016】
また、特許文献2に開示されたアキシコンレンズは、レンズ厚さ方向に対して傾いた方向から入射する光線を焦点に集光させることができない。要するに、特許文献2に開示されたアキシコンレンズは、特許文献1に開示された集光レンズ101のように第一面(平面110)に対して斜め方向から入射する光線を焦点Fに集光させるもの、言い換えれば、レンズ厚さ方向に対して光軸が斜交(傾斜)した集光レンズ101、とは用途が異なる。
【0017】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能な集光レンズおよび多分割レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の集光レンズは、第一面とは反対側の第二面が少なくとも1つのレンズ面を有する集光レンズであって、前記レンズ面は、複数のレンズ機能面からなり、前記各レンズ機能面が、楕円錐の側面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記楕円錐の側面の一部からなる前記レンズ機能面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する前記レンズ機能面に対応する前記楕円錐の中心軸とが、非平行であり、且つ、互いの前記中心軸が非平行であることを特徴とする。
【0019】
この集光レンズにおいて、外側に位置する前記レンズ機能面に対応する前記楕円錐ほど、前記中心軸と前記法線とのなす角度が大きいことが好ましい。
【0020】
この集光レンズにおいて、複数の前記レンズ面を有するフレネルレンズであることが好ましい。
【0021】
この集光レンズにおいて、複数の前記レンズ面と当該複数の前記レンズ面よりも内側にある中央レンズ面とを有し、前記中央レンズ面は、曲率が連続的に変化する非球面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記非球面の一部からなる前記中央レンズ面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する前記中央レンズ面に対応する前記非球面の対称軸とが、非平行であることが好ましい。
【0022】
この集光レンズにおいて、前記非球面は、双曲面であることが好ましい。
【0023】
この集光レンズにおいて、レンズ材料がポリエチレンであり、前記第一面が前記第二面側とは反対側に凸となる曲面であることが好ましい。
【0024】
本発明の多分割レンズは、複数個のレンズが一面上で組み合わされた多分割レンズであって、前記各レンズが、前記集光レンズからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の集光レンズにおいては、外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。
【0026】
本発明の多分割レンズにおいては、外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1の集光レンズの幾何学的な形状の説明図である。
【図2】実施形態1の集光レンズの断面図である。
【図3】実施形態1の集光レンズに入射する光線の進行経路の説明図である。
【図4】(a)は実施形態2の多分割レンズの応用例を示す概略断面図である。(b)は実施形態2の多分割レンズの応用例における要部概略下面図である。
【図5】実施形態3の集光レンズの幾何学的な形状の説明図である。
【図6】実施形態4の集光レンズの幾何学的な形状の説明図である。
【図7】実施形態4の集光レンズの断面図である。
【図8】実施形態4の集光レンズに入射する光線の進行経路の説明図である。
【図9】実施形態4の集光レンズの製作方法の説明図である。
【図10】(a)は実施形態5の多分割レンズの応用例を示す概略断面図である。(b)は実施形態5の多分割レンズの応用例における要部概略下面図である。
【図11】実施形態6の集光レンズの幾何学的な形状の説明図である。
【図12】実施形態6の集光レンズの製造方法の説明図である。
【図13】従来の収差のないレンズの原理説明図である。
【図14】実施形態7の集光レンズの幾何学的な形状の説明図である。
【図15】従来例の集光レンズの断面図である。
【図16】(a)は従来例のフレネルレンズの平面図である。(b)は従来例のフレネルレンズの断面図である。
【図17】図17(a)〜(e)はアキシコンレンズを説明するための概略図である。
【図18】従来例のフレネルレンズの製作方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態1)
以下では、本実施形態の集光レンズ1について図1〜図3を参照しながら説明する。
【0029】
本実施形態の集光レンズ1は、第一面10とは反対側の第二面20からなるレンズ面21を有する。集光レンズ1は、光軸(図示せず)がレンズ厚さ方向(図1の上下方向)に対して斜交する(傾斜する)ものである。
【0030】
レンズ面21は、複数のレンズ機能面(傾斜面)23からなる。このレンズ面21は、レンズ厚さ方向に交差する仮想面VPを境界として当該仮想面VPとのなす角度の異なるレンズ機能面23に分けられている。見方を変えれば、集光レンズ1の第二面20側は、図2に示すように、レンズ厚さ方向において1つの仮想面VPの両側に存在する層251,252を積層し、層251,252間の境界をなくし、他の1つの仮想面VPの両側に存在する層252,253を積層し、層252,253間の境界をなくしたのと同様の構造となっている。ここにおいて、各仮想面VPは、レンズ厚さ方向に交差するように規定している。
【0031】
集光レンズ1は、各レンズ機能面23が、それぞれ、楕円錐30の側面の一部からなり、第一面10上の各点の法線のうち楕円錐30の側面の一部からなるレンズ機能面23に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ機能面23に対応する楕円錐30の中心軸とが、非平行であり(つまり、傾いている)、且つ、互いの中心軸が非平行である(つまり、傾いている)。ここにおいて、各楕円錐30は、第二面20側に頂点が位置するとともに第一面10側に底面(図示せず)が位置している。また、各楕円錐30の中心軸(図示せず)は、第一面10の各点の各々における法線に対して斜交する。また、集光レンズ1は、第一面10上の点と、その点における法線がレンズ機能面23に交差する点とを結ぶ方向をレンズ厚さ方向と規定した場合、第一面10が平面であれば、第一面10上の各点における法線に沿った方向がレンズ厚さ方向となる。本実施形態の集光レンズ1は、第一面10が平面なので、各楕円錐30それぞれの中心軸は、レンズ厚さ方向に対して斜交する。よって、集光レンズ1は、各レンズ機能面23それぞれが、第二面20側に頂点が位置するとともに第一面10側に底面(図示せず)が位置し且つ中心軸がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30の側面の一部により構成されている。なお、上述の仮想面VPは、その仮想面VPの両側にある2つのレンズ機能面23それぞれに対応する2つの楕円錐30どうしの交線を含む面である。
【0032】
また、集光レンズ1は、外側に位置するレンズ機能面23に対応する楕円錐30ほど、中心軸と法線とのなす角度が大きい。
【0033】
図3には、第一面10を入射面、第二面20を出射面とした場合について、光線の進行経路を細い実線で示して矢印を付してある。本実施形態の集光レンズ1では、図3に示したように、集光レンズ1の第一面10の法線に斜交する方向(集光レンズ1のレンズ厚さ方向に斜交する方向)から第一面10に入射した光線が、集光レンズ1の第二面20側の1つの焦点F(F0)付近に集光されていることが分かる。第一面10に入射角α1で入射する光線は、第一面10で屈折するが、その屈折角をα2とすれば、α2はスネルの法則により求めることができる。ここでは、第一面10が接している媒質の屈折率をn1、レンズ材料の屈折率をn2とすれば、スネルの法則により、
【0034】
【数1】

【0035】
となる。したがって、本実施形態の集光レンズ1では、一例として、媒質が空気でn1=1、レンズ材料がポリエチレンでn2=1.53とし、α1=45°とすると、α2=27.5°となる。本実施形態の集光レンズ1では、各レンズ機能面23を上述の楕円錐30の側面の一部により構成することにより、屈折角α2で屈折した平行光を焦点F付近に集光させることが可能となる。この点については、光線追跡法によるシミュレーションによって確認している。
【0036】
本実施形態の集光レンズ1では、第一面10が平面なので、各仮想面VPは第一面に平行な平面であり、また、楕円錐30の中心軸は、第一面10上の各点の各々における法線に対して斜交する。なお、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状(ここでは、第一面10の法線Hを含む断面形状)において、第一面10に平行な面とレンズ機能面23とのなす角度は鈍角である。
【0037】
本願発明者らは、軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能であるという課題を解決するために、まず、第二面20を、主軸が第一面10の法線に対して斜交する複数の双曲面(二葉双曲面の一方の双曲面)それぞれの一部により構成した基本構造に関して、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状において、複数の双曲面それぞれの上記一部を直線で近似することを考えた。
【0038】
ここで、双曲面は、当該双曲面の回転軸に直交する断面上の各点における接線の集合が円錐となる。したがって、出射面における各レンズ機能面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となる集光レンズにおいては、各レンズ機能面を円錐の側面の一部により近似することができる。
【0039】
ところで、任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系においては、円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、b,cを係数として、円錐の方程式は下記の標準形で表される。
【0040】
【数2】

【0041】
この標準形で表される円錐では、xy平面に平行な面との交線が円となる。
【0042】
したがって、この円錐をxy平面に平行な2つの面で切り取った円錐台では、上述の基準構造における双曲面の上記一部を近似することはできない。
【0043】
本願発明者らは、上述の基準構造における双曲面の主軸に斜交する平面と双曲面との交線が楕円となる点に着目し、レンズ面21における複数のレンズ機能面23それぞれを、第二面20側に頂点Pが位置するとともに第一面10側に底面(図示せず)が位置し且つ中心軸(図示せず)がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30の側面の一部により構成することを考えた。
【0044】
各レンズ機能面23については、直線40(図1では破線で示してある)の集合(直線群)によって作られる連続面であり、直線群を構成する全ての直線40が交わる1点が上述の楕円錐30の頂点Pとなっている。したがって、上述の各層251,252,253の厚さが微小であれば、双曲面の一部を楕円錐30の側面の一部により近似でき、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状において、双曲面の上記一部を直線で近似することができる。なお、図1では、2個の仮想面VPのうち下の仮想面VPの下側にあるレンズ機能面23に対応する楕円錐30の頂点PをP1としてある。また、図1では、下の仮想面VPの上側にあるレンズ機能面23に対応する楕円錐30の頂点PをP2としてある。また、図1では、上の仮想面VPの上側にあるレンズ機能面23に対応する楕円錐30の頂点PをP3としてある。
【0045】
任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系においては、楕円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、a,b,cを係数として、楕円錐の方程式は下記の標準形で表される。
【0046】
【数3】

【0047】
この標準形で表される楕円錐では、xy平面に平行な面との交線が楕円となる。ここで、図1〜図3の左下に図示した直交座標系のように、レンズ厚さ方向に直交する面内(ここでは、第一面10に平行な面内)でx軸とy軸とを規定しレンズ厚さ方向に沿ったz軸を規定した直交座標系に対して、適宜の座標変換を行い新しい直交座標系を規定することにより、レンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30を上述の標準形で表すことができる。
【0048】
以下では、説明の便宜上、図1の集光レンズ1において、3つの楕円錐30にそれぞれ異なる符合を付して説明する。ここでは、中央のレンズ機能面23に対応するものを楕円錐30、中央のレンズ機能面23に最も近いレンズ機能面23に対応するものを楕円錐30、中央のレンズ機能面23に2番目に近いレンズ機能面23に対応するものを楕円錐30とする。要するに、中央のレンズ機能面23に対応する楕円錐30を除いた楕円錐30のうち、中央のレンズ機能面23に近い側から順に数えてn(n≧1)番目のレンズ機能面23に対応するものを楕円錐30とする。また、ここでは、各楕円錐30,30,30それぞれの頂点P,P,Pを頂点P,P,Pとし、各楕円錐30,30,30それぞれの中心軸をCA,CA,CAとする。要するに、ここでは、中央のレンズ機能面23に近い側から順に数えてn(n≧1)番目のレンズ機能面23に対応する楕円錐30の頂点をPとし、その楕円錐30の中心軸をCAとする。そして、各楕円錐30,30,30それぞれについて、頂点P,P,Pを原点として、中心軸CA,CA,CAをz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義する。すると、各楕円錐30,30,30の式は、各直交座標系において、上述の楕円錐の方程式(標準形)で表すことができる。
【0049】
一実施例の集光レンズ1として、それぞれ楕円錐30の側面の一部からなる3つのレンズ機能面23を備えたものを例示する。この一実施例の集光レンズ1において、3つの楕円錐30のうち中央のレンズ機能面23に対応するものを楕円錐30、その外側のレンズ機能面23に対応するものを楕円錐30、さらに外側のレンズ機能面23に対応するものを楕円錐30とする。この一実施例の集光レンズ1では、第二面20の高低差t(図1参照)を3mm、レンズ材料を屈折率が1.53のポリエチレンとした場合、上述の楕円錐の方程式(標準形)における係数a,b,cが表1に示す値となる。ただし、表1に示した係数a,b,cは、集光レンズ1の第一面10に平行な像面Iから第一面10に平行な基準面(ここでは、頂点Pの位置からレンズ厚さ方向において第一面10側に上述の高低差tだけ離れた点を含み且つ第一面10に平行な面)までの距離d(図1参照)を10mmとし、入射角が45°で入射する光線を焦点Fに集光させることを前提条件として求めた値である。なお、各頂点P,P,Pの相対的な位置関係については、例えば、集光レンズ1の焦点Fを原点とし、焦点Fを含む像面I上に互いに直交するX軸、Y軸を規定し、像面Iに直交する方向にZ軸を規定した直交座標系を定義した場合、頂点P,P,Pの座標(X,Y,Z)により表すことができる。この一実施例では、P=(-6.78, 0, 7.00)、P=(-5.63, 0,6.40)、P=(-4.97, 0, 6.05)となる。
【0050】
【表1】

【0051】
また、この一実施例の集光レンズ1は、楕円錐30について、頂点Pを原点として、中心軸CAが第一面10に交差する点に立てた法線Hと中心軸CAとのなす角度をθ、楕円錐30について、頂点Pを原点として、中心軸CAが第一面10に交差する点に立てた法線Hと中心軸CAとのなす角度をθ、楕円錐30について、頂点Pを原点として、中心軸CAが第一面10に交差する点に立てた法線Hと中心軸CAとのなす角度をθとすれば、θ〜θは、下記の表2に示す値となる。
【0052】
【表2】

【0053】
表2から、集光レンズ1は、レンズ機能面23に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ機能面23に対応する楕円錐30の中心軸とが、非平行であり、且つ、楕円錐30,30,30の互いの中心軸が非平行であることが分かる。
【0054】
また、表2から、集光レンズ1は、外側に位置するレンズ機能面23に対応する楕円錐30ほど、中心軸と法線とのなす角度が大きいことが分かる。
【0055】
本実施形態の集光レンズ1では、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状において、レンズ面21における複数のレンズ機能面23それぞれの形状が直線となる。これにより、本実施形態の集光レンズ1では、バイトを工作物(集光レンズ1を直接形成するための基材や、金型を形成するための基材)に対して傾けて刃の側面を線接触させて切削加工を行うことで、レンズ面21あるいはレンズ面21に応じた曲面の形成が可能となる。したがって、本実施形態の集光レンズ1では、集光レンズ1や集光レンズ1用の金型の製作時においてバイトによる工作物の加工時間を短縮することが可能となる。集光レンズ1の材料であるレンズ材料については、光線の波長などに応じて適宜選択すればよく、例えば、プラスチック(ポリエチレン、アクリル樹脂など)、ガラス、シリコン、ゲルマニウムなどから、適宜選択すればよい。例えば、光線の波長が赤外線の波長域にある場合には、ポリエチレン、シリコン、ゲルマニウムなどを選択すればよく、光線の波長が可視光の波長域に有る場合には、アクリル樹脂、ガラスなどを選択すればよい。また、金型の材料は特に限定するものではないが、例えば、リン青銅などを採用することができる。なお、金型を用いて集光レンズ1を成形する場合には、例えば、射出成形法や圧縮成形法などにより成形すればよい。
【0056】
以上説明した本実施形態の集光レンズ1は、第一面10とは反対側の第二面20が1つのレンズ面21を有するものであり、レンズ面21が、複数のレンズ機能面23からなり、各レンズ機能面23が、楕円錐30の側面の一部により構成されている。ここで、本実施形態の集光レンズ1は、第一面10上の各点の法線のうち楕円錐30の側面の一部からなるレンズ機能面23に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ機能面23に対応する楕円錐30の中心軸とが、非平行である。また、複数のレンズ機能面23は、互いの中心軸が非平行である。しかして、本実施形態の集光レンズ1では、外界から第一面10へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。この集光レンズ1においては、外側に位置するレンズ機能面23に対応する楕円錐30ほど、中心軸と法線とのなす角度が大きいことが好ましい。これにより、集光レンズ1は、軸外収差の発生をより抑制することが可能となり、且つ、低コスト化が可能となる。
【0057】
さらに説明すれば、本実施形態の集光レンズ1では、レンズ面21が、レンズ厚さ方向に交差する仮想面VPを境界として当該仮想面VPとのなす角度の異なるレンズ機能面23に分けられている。そして、本実施形態の集光レンズ1では、各レンズ機能面23が、第二面20側に頂点Pが位置するとともに第一面10側に底面が位置し且つ中心軸がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30の側面の一部により構成されている。しかして、本実施形態の集光レンズ1では、レンズ厚さ方向に対して光軸が斜交する。また、本実施形態の集光レンズ1では、軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。特に、本実施形態の集光レンズ1では、集光レンズ1の大口径化を図る場合に、工作物(集光レンズ1を直接形成するための基材や、金型を形成するための基材)に対する加工時間の大幅な短縮を図ることが可能となり、低コスト化を図れる。
【0058】
また、本実施形態の集光レンズ1では、各仮想面VPを、レンズ厚さ方向に交差するように規定するようにしているので、各レンズ機能面23の設計が容易になるとともに、上述の切削加工を行う場合にバイトの高さ調整が容易になる。また、本実施形態の集光レンズ1では、レンズ形状の精度を検査する際に、各レンズ機能面23の傾きを計測することによって、容易に検査することが可能となり、製造コストの低コスト化を図れる。なお、仮想面VPの数は、2個に限らず、1個でもよいし、3個以上でもよい。要するに、仮想面VPの数は、単数でも複数でもよい。
【0059】
(実施形態2)
本実施形態では、多分割レンズの応用例として、図4(a),(b)に示す構成のセンサ装置を例示する。
【0060】
このセンサ装置では、プリント配線板からなる回路基板8に、パッケージ4が実装されている。このパッケージ4は、円盤状のステム5と、このステム5に接合される有底円筒状のキャップ6と、このキャップ6の底部に形成された開口部6aを閉塞するように配置され所望の光線を透過する機能を有する光線透過部材7とで構成されている。また、パッケージ4内には、光電変換素子2を保持した素子保持部材(例えば、MID基板など)3が収納されている。そして、センサ装置は、多分割レンズ100を有するカバー部材9が、パッケージ4を覆うように回路基板8の一表面側に配置されている。ここにおいて、光電変換素子2としては、例えば、焦電素子などの赤外線センサ素子や、フォトダイオードなどの受光素子などを用いることができる。なお、光電変換素子2として赤外線センサ素子を用いる場合には、光線透過部材7として、シリコン基板やゲルマニウム基板などを用いることが好ましい。また、この場合、パッケージ4は、ステム5とキャップ6との両方とも金属材料により形成し、光線透過部材7とキャップ6とを導電性材料により接合することが好ましい。また、この場合、センサ装置は、カバー部材9とパッケージ4との間の空間の空気層が、断熱層として機能する。
【0061】
多分割レンズ100は、複数個のレンズ100aが一面(図示例では、一平面)上で組み合わされたものであり、各レンズ100aそれぞれが、実施形態1で説明した集光レンズ1により構成されている。ただし、各集光レンズ1は、それぞれの光軸(図示せず)が光電変換素子2の所定の受光面を通るように設計されている。
【0062】
しかして、本実施形態における多分割レンズ100では、外界から各集光レンズ1の第一面10へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。
【0063】
要するに、本実施形態における多分割レンズ100では、レンズ厚さ方向に対して光軸が斜交し、且つ、軸外収差の発生を抑制することが可能であるとともに、低コスト化が可能となる。また、センサ装置では、光電変換素子2として例えば赤外線センサ素子を用いた場合に、センサ装置として、検知エリアの広い赤外線センサを実現することが可能となる。
【0064】
上述の赤外線センサ素子を構成する焦電型赤外線検知素子としては、例えば、1枚の焦電体基板に4個の素子エレメント(受光部)が形成されたクワッドタイプの焦電素子を用いることができる。センサ装置の検知エリアは、赤外線センサ素子と多分割レンズ100とで決まる。したがって、センサ装置の検知エリアには、各集光レンズ1ごとに、素子エレメントの数の検知ビームが設定される。検知ビームは、赤外線センサ素子への赤外線の入射量がピーク付近になる小範囲であって、検知対象の物体からの赤外線を検出する有効領域であり、検出ゾーンとも呼ばれる。図4(a),(b)に示したセンサ装置では、多分割レンズ100が8枚の集光レンズ1により構成されているので、検知エリア内に8×4個の検知ビームが設定される。なお、多分割レンズ100における集光レンズ1の数は特に限定するものではない。また、焦電型赤外線検知素子としては、クワッドタイプの焦電素子に限らず、例えば、1枚の焦電体基板に2個の素子エレメント(受光部)が形成されたデュアルタイプの焦電素子などを用いることもできる。
【0065】
(実施形態3)
以下では、本実施形態の集光レンズ1について図5を参照しながら説明する。
【0066】
本実施形態の集光レンズ1の基本構成は実施形態1と略同じである。本実施形態の集光レンズ1は、第一面10の形状が実施形態1と相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
ところで、実施形態1,2の集光レンズ1では、レンズ材料としてポリエチレンを採用した場合、レンズ厚さ(肉厚)が1mmでも、第一面10に垂直入射する波長10μm付近の赤外線の透過率が40%であり、レンズ厚さが厚くなるほど透過率が低下する。そして、集光レンズ1のレンズ厚さ方向に対して傾斜した方向から入射する入射光は、集光レンズ1の最大レンズ厚さ(最大肉厚)よりも光路長が長くなって透過率が低くなりすぎる懸念がある。また、ポリエチレンにより形成された集光レンズ1では、肉厚の変化が大きい場合、射出成形の冷却、固化過程で生じる収縮むらなどにより、ひけ(sink mark)が発生し、外観が損なわれてしまう懸念がある。
【0068】
そこで、レンズ材料としてポリエチレンを採用し射出成形により製作する場合、集光レンズ1は、例えば、図5に示すように、第一面10を、第二面20側とは反対側に凸となる曲面とすることが好ましい。この場合、レンズ厚さ方向は、第一面10上の各点の各々における法線方向である。本実施形態の集光レンズ1は、第一面10を、第二面20側とは反対側に凸となる曲面とすることにより、うねりの方向を一方向に抑制することが可能となり、外観が損なわれるのを防止することが可能となる。
【0069】
図5に示した例では、第一面10が曲率半径の大きな球面(曲率の小さな曲面)の一部からなるが、球面の一部に限定するものではない。ここで、曲率半径が大きいとは、第一面10を平面とみなすことができる程度の曲率半径を意味しているが、第一面10の曲率半径については、集光レンズ1のレンズ径などに基づいて適宜設計すればよい。
【0070】
つまり、集光レンズ1は、軸外収差が許容値を超えない範囲(例えば、上述の光電変換素子2の大きさ以下)で、第一面10の曲率を設計すれば、レンズ材料としてポリエチレンを採用して且つレンズ厚さの薄肉化を図りながらも、軸外収差の発生を抑制しつつ、ひけやうねりの発生を抑制することが可能となる。本明細書では、このような曲率を有する第一面10と、平面からなる第一面10とを包含する形態を、平面状の第一面10と称することとする。図4(a),(b)を参照しながら説明した集光レンズ1における第一面10についても、第二面20側とは反対側に凸となる曲面とすることが好ましい。
【0071】
(実施形態4)
以下では、本実施形態の集光レンズ1について図6〜図8を参照しながら説明する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0072】
本実施形態の集光レンズ1は、第一面10とは反対側の第二面20が複数(図示例では、3つ)のレンズ面21を有している点などが実施形態1と相違する。この集光レンズ1は、実施形態1と同様、光軸(図示せず)がレンズ厚さ方向(図6の上下方向)に対して斜交する(傾斜する)。このフレネルレンズ1は、中心レンズ部1aと、中心レンズ部1aを取り囲む複数(図示例では、2つ)の輪帯状レンズ部1bとを有している。なお、輪帯状レンズ部1bの数は特に限定するものではなく、3つ以上でもよい。
【0073】
各輪帯状レンズ部1bは、第二面20側に山部11bを有している(図7参照)。山部11bは、中心レンズ部1a側の側面からなる立ち上がり面(非レンズ面)22と、中心レンズ部1a側とは反対側の側面からなるレンズ面21とを有している。したがって、フレネルレンズ1の第二面20は、各輪帯状レンズ部1bそれぞれにおけるレンズ面21を有している。また、フレネルレンズ1の第二面20は、中心レンズ部1aにおけるレンズ面21も有している。
【0074】
要するに、本実施形態の集光レンズ1は、複数のレンズ面21を有し、各レンズ面21のうちの中央のレンズ面21を有する中心レンズ部1aと、中心レンズ部1aを取り囲む複数の輪帯状レンズ部1bとを有していればよい。集光レンズ1は、凸レンズに比べて厚みを薄くすることが可能なフレネルレンズであり、中心レンズ部1aのレンズ面21が凸面となっている。
【0075】
各レンズ面21は、複数のレンズ機能面23からなる。各レンズ面21は、レンズ厚さ方向に交差する仮想面VPを境界として仮想面VPとのなす角度の異なるレンズ機能面23に分けられている。見方を変えれば、集光レンズ1の第二面20側は、図7に示すように、レンズ厚さ方向において仮想面VPの両側に存在する層251,252を積層し、層251,252間の境界をなくしたのと同様の構造となっている。
【0076】
集光レンズ1は、各レンズ機能面23が、それぞれ、楕円錐30(図6参照)の側面の一部からなり、第一面10上の各点の法線のうち楕円錐30の側面の一部からなるレンズ機能面23に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ機能面23に対応する楕円錐30の中心軸とが、非平行であり(つまり、傾いている)、且つ、互いの中心軸が非平行である(つまり、傾いている)。ここにおいて、各楕円錐30は、第二面20側に頂点が位置するとともに第一面10側に底面(図示せず)が位置している。また、各楕円錐30の中心軸(図示せず)は、第一面10の各点の各々における法線に対して斜交する。また、集光レンズ1は、第一面10上の点と、その点における法線がレンズ機能面23に交差する点とを結ぶ方向をレンズ厚さ方向と規定した場合、第一面10が平面であれば、第一面10上の各点における法線に沿った方向がレンズ厚さ方向となる。本実施形態の集光レンズ1は、第一面10が平面なので、各楕円錐30それぞれの中心軸は、レンズ厚さ方向に対して斜交する。よって、集光レンズ1は、各レンズ機能面23それぞれが、第二面20側に頂点が位置するとともに第一面10側に底面(図示せず)が位置し且つ中心軸がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30の側面の一部により構成されている。
【0077】
また、集光レンズ1は、外側に位置するレンズ機能面23に対応する楕円錐30ほど、中心軸と法線とのなす角度が大きい。仮想面VPは、レンズ厚さ方向に交差するように規定している。なお、上述の仮想面VPは、その仮想面VPの両側にある2つのレンズ機能面23それぞれに対応する2つの楕円錐30どうしの交線を含む面である。
【0078】
図8には、第一面10を入射面、第二面20を出射面とした場合について、光線の進行経路を細い実線で示して矢印を付してある。本実施形態の集光レンズ1では、図8に示したように、集光レンズ1の第一面10の法線に斜交する方向(集光レンズ1のレンズ厚さ方向に斜交する方向)から第一面10に入射した光線が、集光レンズ1の第二面20側の1つの焦点F(F0)付近に集光されていることが分かる。第一面10に入射角α1で入射する光線は、第一面10で屈折するが、その屈折角をα2とすれば、α2はスネルの法則により求めることができる。ここでは、第一面10が接している媒質の屈折率をn1、レンズ材料の屈折率をn2とすれば、スネルの法則により、
【0079】
【数4】

【0080】
となる。したがって、本実施形態の集光レンズ1では、一例として、媒質が空気でn1=1、レンズ材料がポリエチレンでn2=1.53とし、α1=45°とすると、α2=27.5°となる。本実施形態の集光レンズ1では、各レンズ機能面23を上述の楕円錐30の側面の一部により構成することにより、屈折角α2で屈折した平行光を焦点F付近に集光させることが可能となる。この点については、光線追跡法によるシミュレーションによって確認している。
【0081】
本実施形態の集光レンズ1では、第一面10が平面であり、また、楕円錐30の中心軸は、第一面10上の各点の各々における法線に対して斜交する(図8中には1つの法線のみ一点鎖線で示してある)。なお、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状(ここでは、第一面10の法線を含む断面形状)において、第一面10に平行な面と各レンズ面21とのなす角度は鈍角であり、第一面10に平行な面と各立ち上がり面22とのなす角度は略直角である。
【0082】
ところで、フレネルレンズの入射面である平面の法線を含む断面形状において各レンズ面の断面形状が直線であれば、図9に示すようにバイト130を工作物140に対して傾けて刃の側面を線接触させて切削加工を行うことにより、レンズ面あるいはレンズ面に応じた曲面の形成が可能であるため、加工時間を大幅に短縮することが可能となる。ここで、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいては、各レンズ面を円錐台の側面により近似することで、各レンズ面の断面形状を直線とできることが知られている(米国特許第4787722号明細書)。
【0083】
なお、米国特許第4787722号明細書に開示されたフレネルレンズは、対象とする光線が赤外線であり、米国特許第4787722号明細書には、レンズ材料として、ポリエチレンを用いることが開示されている。
【0084】
また、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいて、各レンズ面を円錐台の側面により近似したものでは、軸外収差が発生してしまう。
【0085】
本願発明者らは、軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能であるという課題を解決するために、まず、第二面20を、主軸が第一面10の法線に対して斜交する複数の双曲面(二葉双曲面の一方の双曲面)それぞれの一部により構成した基本構造に関して、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状において、複数の双曲面それぞれの上記一部を直線で近似することを考えた。
【0086】
ところで、任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系においては、円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、b,cを係数として、円錐の方程式は下記の標準形で表される。
【0087】
【数5】

【0088】
この標準形で表される円錐では、xy平面に平行な面との交線が円となる。
【0089】
したがって、この円錐をxy平面に平行な2つの面で切り取った円錐台では、上述の基準構造における各双曲面それぞれの上記一部を近似することはできない。
【0090】
本願発明者らは、上述の基準構造における各双曲面の主軸に斜交する平面と各双曲面との交線が楕円となる点に着目し、各レンズ面21における複数のレンズ機能面23それぞれを、第二面20側に頂点Pが位置するとともに第一面10側に底面(図示せず)が位置し且つ中心軸(図示せず)がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30の側面の一部により構成することを考えた。
【0091】
各レンズ機能面23については、直線40(図6では破線で示してある)の集合(直線群)によって作られる連続面であり、直線群を構成する全ての直線40が交わる1点が上述の楕円錐30の頂点Pとなっている。したがって、各層251,252(図7参照)の厚さが微小であれば、双曲面の一部を楕円錐30の側面の一部により近似でき、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状において、双曲面の上記一部を直線で近似することができる。なお、図6では、中心レンズ部1aにおいて仮想面VPの下側にあるレンズ機能面23に対応する楕円錐30の頂点PをP01、仮想面VPの上側にあるレンズ機能面23に対応する楕円錐30の頂点PをP02としてある。同様に、中心レンズ部1aに近い側の輪帯状レンズ部1bにおいて仮想面VPの下側にあるレンズ機能面23に対応する楕円錐30の頂点PをP11、仮想面VPの上側にあるレンズ機能面23に対応する楕円錐30の頂点PをP12としてある。また、中心レンズ部1aから遠い側の輪帯状レンズ部1bにおいて仮想面VPの下側にあるレンズ機能面23に対応する楕円錐30の頂点PをP21、仮想面VPの上側にあるレンズ機能面23に対応する楕円錐30の頂点PをP22としてある。
【0092】
任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系においては、楕円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、a,b,cを係数として、楕円錐の方程式は下記の標準形で表される。
【0093】
【数6】

【0094】
この標準形で表される楕円錐では、xy平面に平行な面との交線が楕円となる。ここで、図6〜図8の左下に図示した直交座標系のように、レンズ厚さ方向に直交する面内(ここでは、第一面10に平行な面内)でx軸とy軸とを規定しレンズ厚さ方向に沿ったz軸を規定した直交座標系に対して、適宜の座標変換を行い新しい直交座標系を規定することにより、レンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30を上述の標準形で表すことができる。
【0095】
以下では、説明の便宜上、図6の集光レンズ1において、6つの楕円錐30にそれぞれ異なる符合を付して説明する。ここでは、中心レンズ部1aのレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30をそれぞれ楕円錐3001,3002とする。また、中央のレンズ面21に最も近い第1輪帯となるレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30をそれぞれ楕円錐3011,3012、とし、中央のレンズ面21に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30をそれぞれ楕円錐3021,3022とする。要するに、中央のレンズ面21に対応する楕円錐30を除いた楕円錐30のうち、中央のレンズ面21に近い側から順に数えてn(n≧1)番目の第n輪帯となるレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30のうち中心レンズ部1aに近い楕円錐30を楕円錐30n1とし、中心レンズ部1aから遠い楕円錐30を楕円錐30n2とする。また、ここでは、各楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022それぞれの頂点P,P,P,P,P,Pを頂点P01,P02,P11,P12,P21,P22とし、各楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022それぞれの中心軸をCA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22とする。要するに、ここでは、第n輪帯となるレンズ面21に対応する楕円錐30n1,30n2の頂点をPn1,Pn2とし、その楕円錐30n1,30n2の中心軸をCAn1,CAn2とする。そして、各楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022それぞれについて、頂点P01,P02,P11,P12,P21,P22を原点として、中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義する。すると、各楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022の式は、各直交座標系において、上述の楕円錐の方程式(標準形)で表すことができる。
【0096】
一実施例の集光レンズ1として、それぞれ楕円錐30の側面の一部からなる6つのレンズ機能面23を備えたものを例示する。この一実施例の集光レンズ1において、6つの楕円錐30のうち中央のレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30を楕円錐3001,3002とし、第1輪帯となるレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30を楕円錐3011,3012とし、第2輪帯となるレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30を楕円錐3021,3022とする。この一実施例の集光レンズ1では、第二面20の高低差t(ここでは、輪帯状レンズ部1bにおいて焦点Fに最も近い点での山部11bの高さ)を1mm、レンズ材料を屈折率が1.53のポリエチレンとした場合、上述の楕円錐の方程式(標準形)における係数a,b,cが表3に示す値となる。ただし、表3に示した係数a,b,cは、集光レンズ1の第一面10に平行な像面Iから第一面10に平行な基準面(山部11bの谷を含む平面)までの距離dを10mmとし、入射角が45°で入射する光線を焦点Fに集光させることを前提条件として求めた値である。なお、各頂点P01,P02,P11,P12,P21,P22の相対的な位置関係については、例えば、集光レンズ1の焦点Fを原点とし、焦点Fを含む像面I上に互いに直交するX軸、Y軸を規定し、像面Iに直交する方向にZ軸を規定した直交座標系を定義した場合、頂点P01,P02,P11,P12,P21,P22の座標(X,Y,Z)により表すことができる。この一実施例では、P01=(-8.89, 0, 9.00)、P02=(-8.12, 0,8.60)、P11=(-7.08, 0, 7.70)、P12=(-6.59, 0, 7.44)、P21=(-5.86, 0,6.75)、P22=(-5.52, 0, 6.57)となる。
【0097】
【表3】

【0098】
また、この一実施例の集光レンズ1は、角度θ01,θ02,θ11,θ12,θ21,θ22が、表4に示す値となる。ここで、角度θ01は、楕円錐3001について、頂点P01を原点として、中心軸CA01が第一面10に交差する点に立てた法線H01と中心軸CA01とのなす角度である。また、角度θ02は、楕円錐3002について、頂点P02を原点として、中心軸CA02が第一面10に交差する点に立てた法線H02と中心軸CA02とのなす角度である。また、角度θ11は、楕円錐3011について、頂点P11を原点として、中心軸CA11が第一面10に交差する点に立てた法線H11と中心軸CA11とのなす角度である。また、θ12は、楕円錐3012について、頂点P12を原点として、中心軸CA12が第一面10に交差する点に立てた法線H12と中心軸CA12とのなす角度である。また、θ21は、楕円錐3021について、頂点P21を原点として、中心軸CA21が第一面10に交差する点に立てた法線H21と中心軸CA21とのなす角度である。また、θ22は、楕円錐3022について、頂点P22を原点として、中心軸CA22が第一面10に交差する点に立てた法線H22と中心軸CA22とのなす角度である。
【0099】
【表4】

【0100】
表4から、集光レンズ1は、レンズ機能面23に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ機能面23に対応する楕円錐30の中心軸とが、非平行であり、且つ、楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022の互いの中心軸が非平行であることが分かる。
【0101】
また、表4から、集光レンズ1は、第一面10上の各点における法線と、その法線が交わる第二面20の各レンズ機能面23の中心軸とがなす角度が、外側の輪帯状レンズ部1bほど大きいことが分かる。要するに、集光レンズ1は、外側に位置するレンズ機能面23に対応する楕円錐30ほど、中心軸と法線とのなす角度が大きい。ただし、ここにおいて、外側に位置するとは、第一面10から略同じ高さ位置にあるレンズ機能面23での相対的な位置関係を意味している。
【0102】
本実施形態の集光レンズ1では、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状において、各レンズ面21における複数のレンズ機能面23それぞれの形状が直線となる。これにより、本実施形態の集光レンズ1では、図9に示すようにバイト130を工作物(フレネルレンズ1を直接形成するための基材や、金型を形成するための基材)140に対して傾けて刃の側面を線接触させて切削加工を行うことで、レンズ面21あるいはレンズ面21に応じた曲面の形成が可能となる。したがって、集光レンズ1では、集光レンズ1や集光レンズ1用の金型の製作時においてバイトによる工作物の加工時間を短縮することが可能となる。集光レンズ1の材料であるレンズ材料については、光線の波長などに応じて適宜選択すればよく、例えば、プラスチック(ポリエチレン、アクリル樹脂など)、ガラス、シリコン、ゲルマニウムなどから、適宜選択すればよい。例えば、光線の波長が赤外線の波長域にある場合には、ポリエチレン、シリコン、ゲルマニウムなどを選択すればよく、光線の波長が可視光の波長域に有る場合には、アクリル樹脂、ガラスなどを選択すればよい。また、金型の材料は特に限定するものではないが、例えば、リン青銅などを採用することができる。なお、金型を用いて集光レンズ1を成形する場合には、例えば、射出成形法や圧縮成形法などにより成形すればよい。
【0103】
以上説明した本実施形態の集光レンズ1は、第一面10とは反対側の第二面20が複数(図6の例では、3つ)のレンズ面21を有するものであり、各レンズ面21それぞれが、複数のレンズ機能面23(図6の例では、2つ)からなり、各レンズ機能面23が、楕円錐30の側面の一部により構成されている。ここで、本実施形態の集光レンズ1は、第一面10上の各点の法線のうち楕円錐30の側面の一部からなるレンズ機能面23に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ機能面23に対応する楕円錐30の中心軸とが、非平行である。また、複数のレンズ機能面23は、互いの中心軸が非平行である。しかして、本実施形態の集光レンズ1では、外界から第一面10へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。この集光レンズ1においては、外側に位置するレンズ機能面23に対応する楕円錐30ほど、中心軸と法線とのなす角度が大きいことが好ましい。これにより、集光レンズ1は、軸外収差の発生をより抑制することが可能となり、且つ、低コスト化が可能となる。
【0104】
さらに説明すれば、本実施形態の集光レンズ1では、各レンズ面21が、レンズ厚さ方向に交差する仮想面VPを境界として仮想面VPとのなす角度の異なるレンズ機能面23に分けられている。そして、本実施形態の集光レンズ1では、各レンズ機能面23が、第二面20側に頂点Pが位置するとともに第一面10側に底面が位置し且つ中心軸がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30の側面の一部により構成されている。しかして、本実施形態の集光レンズ1では、レンズ厚さ方向に対して光軸が斜交する。また、本実施形態の集光レンズ1では、軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。
【0105】
また、本実施形態の集光レンズ1では、仮想面VPを、レンズ厚さ方向に交差するように規定するようにしているので、各レンズ機能面23の設計が容易になるとともに、上述の切削加工を行う場合にバイト130の高さ調整が容易になる。また、本実施形態の集光レンズ1では、レンズ形状の精度を検査する際に、各レンズ機能面23の傾きを計測することによって、容易に検査することが可能となり、製造コストの低コスト化を図れる。
【0106】
(実施形態5)
本実施形態では、多分割レンズの応用例として、図10(a),(b)に示す構成のセンサ装置を例示する。
【0107】
このセンサ装置では、プリント配線板からなる回路基板8に、パッケージ4が実装されている。このパッケージ4は、円盤状のステム5と、このステム5に接合される有底円筒状のキャップ6と、このキャップ6の底部に形成された開口部6aを閉塞するように配置され所望の光線を透過する機能を有する光線透過部材7とで構成されている。また、パッケージ4内には、光電変換素子2を保持した素子保持部材(例えば、MID基板など)3が収納されている。そして、センサ装置は、多分割レンズ100を有するカバー部材9が、パッケージ4を覆うように回路基板8の一表面側に配置されている。ここにおいて、光電変換素子2としては、例えば、焦電素子などの赤外線センサ素子や、フォトダイオードなどの受光素子などを用いることができる。なお、光電変換素子2として赤外線センサ素子を用いる場合には、光線透過部材7として、シリコン基板やゲルマニウム基板などを用いることが好ましい。また、この場合、パッケージ4は、ステム5とキャップ6との両方とも金属材料により形成し、光線透過部材7とキャップ6とを導電性材料により接合することが好ましい。なお、この場合、カバー部材9とパッケージ4との間の空間の空気層が、断熱層として機能する。
【0108】
多分割レンズ100は、複数枚のレンズ100aが一面(図示例では、一平面)上で組み合わされたものであり、各レンズ100aが、実施形態4で説明した集光レンズ1により構成されている。ただし、隣り合う集光レンズ1は、重なり合うように配置されており、輪帯状レンズ部1bの一部を切り欠いた形状となっている。また、各集光レンズ1は、光軸(図示せず)が光電変換素子2の所定の受光面を通るように設計されている。
【0109】
しかして、本実施形態における多分割レンズ100では、軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。また、本実施形態のセンサ装置では、光電変換素子2として例えば赤外線センサ素子を用いた場合に、センサ装置として、検知エリアの広い赤外線センサを実現することが可能となる。
【0110】
上述の赤外線センサ素子を構成する焦電型赤外線検知素子としては、例えば、1枚の焦電体基板に4個の素子エレメント(受光部)が形成されたクワッドタイプの焦電素子を用いることができる。センサ装置の検知エリアは、赤外線センサ素子と多分割レンズ100とで決まる。したがって、センサ装置の検知エリアには、各集光レンズ1ごとに、素子エレメントの数の検知ビームが設定される。検知ビームは、赤外線センサ素子への赤外線の入射量がピーク付近になる小範囲であって、検知対象の物体からの赤外線を検出する有効領域であり、検出ゾーンとも呼ばれる。図10(a),(b)に示したセンサ装置では、多分割レンズ1が8枚の集光レンズ1により構成されているので、検知エリア内に8×4個の検知ビームが設定される。なお、多分割レンズ100における集光レンズ1の数は特に限定するものではない。
【0111】
(実施形態6)
以下では、本実施形態の集光レンズ1について図11を参照しながら説明する。
【0112】
本実施形態の集光レンズ1の基本構成は実施形態4と略同じであり、複数のレンズ面21のうち中央のレンズ面21を、回転軸がレンズ厚さ方向に対して斜交し且つ曲率が連続的に変化する非球面である双曲面25の一部からなる中央レンズ面21aにより構成してある点が相違する。なお、実施形態4と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0113】
実施形態4の集光レンズ1のように、複数のレンズ面21の全てを楕円錐30の一部により構成することが可能である。しかしながら、複数のレンズ面21の全てを楕円錐30の一部により構成した場合には、中心レンズ部1aのレンズ面21が楕円錐30の頂点Pを含んでしまい、この頂点Pにおいて曲面が不連続となるため、頂点Pを通る光線が焦点Fに集光されいくい。
【0114】
これに対して、本実施形態の集光レンズ1では、複数のレンズ面21よりも内側にある中央レンズ面21a、言い換えれば、中心レンズ部1aのレンズ面である中央レンズ面21aを、上述の双曲面25の一部としてある。
【0115】
しかして、本実施形態の集光レンズ1は、実施形態4の集光レンズ1に比べて、収差を小さくすることが可能となり、集光性能を向上させることが可能となる。したがって、本実施形態の集光レンズ1を実施形態5で説明したセンサ装置に応用すれば、感度を向上させることが可能となる。
【0116】
本実施形態の集光レンズ1では、中心レンズ部1aの中央レンズ面21aを双曲面25の一部により構成することにより、双曲面25以外の非球面の一部により構成する場合に比べて、収差を小さくすることが可能になる。中心レンズ部1aの中央レンズ面21aが双曲面25の一部である場合、集光レンズ1用の金型の製作にあたっては、例えば、図12に示すように、バイト130のすくい面131をレンズ面21に応じた曲面に対して垂直となるように傾けながら動かすことにより加工できる。この場合は、バイト130のノーズ半径が、双曲面25の曲率半径よりも小さければ加工できるので、中央レンズ部1aの中央レンズ面21aが双曲面25の一部であっても加工時間を短縮することが可能となる。
【0117】
本実施形態の集光レンズ1では、中心レンズ部1aの中央レンズ面21aが、双曲面25に限らず、対称軸がレンズ厚さ方向に対して斜交し且つ曲率が連続的に変化する非球面であれば、実施形態4の集光レンズ1に比べて、集光性能を向上させることが可能となる。要するに、集光レンズ1は、複数のレンズ面21よりも内側にある中央レンズ面21aを、曲率が連続的に変化する非球面の一部とし、第一面10上の各点の法線のうち非球面の一部からなる中央レンズ面21aに交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する中央レンズ面21aに対応する非球面の対称軸(非球面が双曲面25の場合には双曲面25の回転軸OP1)とが、非平行である(つまり、傾いている)ことが好ましく、これにより、集光性能を向上させることが可能となる。ここにおいて、集光レンズ1は、この非球面にとっての対称軸と、中央のレンズ面21を第一面10の中心軸に平行な方向へ投影したときの第一面10での投影領域における各点の法線とが、非平行であればよい。
【0118】
ところで、従来から、収差のないレンズとして、無収差レンズが知られている(例えば、久保田宏著,「光学」,第12版,株式会社岩波書店,1986年4月9日,p.282−283を参照)。
【0119】
図13に示すようなレンズ面71を有するレンズにおいて、レンズの光軸Opaに平行な光線Lbを、光路長一定で焦点Fに集光するためには、RF=HFとなる必要がある。Rは、レンズ面71の屈折点、Hは、屈折点Rから光軸Opa上に垂線を下ろしたときの交点(屈折点Rから光軸Opaに下ろした垂線の足)であり、RFは、屈折点Rと焦点Fとの間の光路長、HFは、交点Hと焦点Fとの間の光路長である。RF=HFの条件を満たすためには、レンズ面71を双曲面または楕円面とする必要があることが知られている。ここで、レンズ面71が双曲面である場合には、レンズ材料の屈折率をn、レンズのバックフォーカスをfとすると、レンズ面71は、下記の(1)式で与えられる。
【0120】
【数7】

【0121】
ただし、この式は、レンズの焦点Fを原点とし、光軸Opa上にz軸を有し、光軸Opaに直交する面内で互いに直交するx軸およびy軸を有する直交座標を規定したときの、レンズ面71上の任意の点の座標を(x、y、z)とした場合に得られる式である。また、(1)式のa,b,cは、(2)式、(3)式、(4)式でそれぞれ与えられる。
【0122】
【数8】

【0123】
図11の集光レンズ1において、中心レンズ部1aの中央レンズ面21aとなる双曲面25は、焦点Fを原点、双曲面25の回転軸OP1をz軸とし、z軸にそれぞれ直交するx軸、y軸を有する直交座標系を定義すると、上述の(1)式で表される。
【0124】
第一面10に対して入射角が45°で入射する光線を焦点Fに集光させる場合、中心レンズ部1aの双曲面25の回転軸OP1と第一面10の法線とのなす角度は、スネルの法則により、27.5°とすればよい。すなわち、回転軸OP1は、第一面10の法線に対して27.5°だけ傾ければよい。
【0125】
(実施形態7)
以下では、本実施形態の集光レンズ1について図14を参照しながら説明する。
【0126】
本実施形態の集光レンズ1の基本構成は実施形態4と略同じである。本実施形態の集光レンズ1は、第一面10の形状が実施形態4と相違する。なお、実施形態4と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0127】
ところで、実施形態4〜6の集光レンズ1では、レンズ材料としてポリエチレンを採用した場合、レンズ厚さ(肉厚)が1mmでも、第一面10に垂直入射する波長10μm付近の赤外線の透過率が40%であり、レンズ厚さが厚くなるほど透過率が低下する。そして、集光レンズ1の第一面10に対して垂直でない方向から入射する入射光は、集光レンズ1の最大レンズ厚さ(最大肉厚)よりも光路長が長くなって透過率が低くなりすぎる懸念がある。また、ポリエチレンにより形成された集光レンズ1では、肉厚の変化が大きい場合、射出成形の冷却、固化過程で生じる収縮むらなどにより、ひけ(sink mark)が発生し、外観が損なわれてしまう懸念がある。
【0128】
そこで、レンズ材料としてポリエチレンを採用し射出成形により製作する場合、集光レンズ1は、例えば、図14に示すように、第一面10を、第二面20側とは反対側に凸となる曲面とすることが好ましい。この場合、レンズ厚さ方向は、第一面10上の各点の各々における法線方向である。本実施形態の集光レンズ1は、第一面10を、第二面20側とは反対側に凸となる曲面とすることにより、うねりの方向を一方向に抑制することが可能となり、外観が損なわれるのを防止することが可能となる。
【0129】
図14に示した例では、第一面10が曲率半径の大きな球面(曲率の小さな曲面)の一部からなるが、球面の一部に限定するものではない。ここで、曲率半径が大きいとは、第一面10を平面とみなすことができる程度の曲率半径を意味しているが、第一面10の曲率半径については、集光レンズ1のレンズ径などに基づいて適宜設計すればよい。
【0130】
つまり、集光レンズ1は、軸外収差が許容値を超えない範囲(例えば、上述の光電変換素子2の大きさ以下)で、第一面10の曲率を設計すれば、レンズ材料としてポリエチレンを採用して且つレンズ厚さの薄肉化を図りながらも、軸外収差の発生を抑制しつつ、ひけやうねりの発生を抑制することが可能となる。本明細書では、このような曲率を有する第一面10と、平面からなる第一面10とを包含する形態を、平面状の第一面10と称することとする。図10(a),(b)、図11それぞれを参照しながら説明した各集光レンズ1における第一面10についても、第二面20側とは反対側に凸となる曲面とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0131】
1 集光レンズ
10 第一面
20 第二面
21 レンズ面
21a 中央レンズ面
23 レンズ機能面
25 双曲面(非球面)
30 楕円錐
30,30,30,3001,3002,3011,3012,3021,3022 楕円錐
100 多分割レンズ
100a レンズ
,H,H,H01,H02,H11,H12,H21,H22 法線
CA,CA,CA,CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22 中心軸
θ,θ,θ,θ01,θ02,θ11,θ12,θ21,θ22 角度
OP1 回転軸(対称軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面とは反対側の第二面が少なくとも1つのレンズ面を有する集光レンズであって、前記レンズ面は、複数のレンズ機能面からなり、前記各レンズ機能面が、楕円錐の側面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記楕円錐の側面の一部からなる前記レンズ機能面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する前記レンズ機能面に対応する前記楕円錐の中心軸とが、非平行であり、且つ、互いの前記中心軸が非平行であることを特徴とする集光レンズ。
【請求項2】
外側に位置する前記レンズ機能面に対応する前記楕円錐ほど、前記中心軸と前記法線とのなす角度が大きいことを特徴とする請求項1記載の集光レンズ。
【請求項3】
複数の前記レンズ面を有するフレネルレンズであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の集光レンズ。
【請求項4】
複数の前記レンズ面と当該複数の前記レンズ面よりも内側にある中央レンズ面とを有し、前記中央レンズ面は、曲率が連続的に変化する非球面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記非球面の一部からなる前記中央レンズ面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する前記中央レンズ面に対応する前記非球面の対称軸とが、非平行であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の集光レンズ。
【請求項5】
前記非球面は、双曲面であることを特徴とする請求項4記載の集光レンズ。
【請求項6】
レンズ材料がポリエチレンであり、前記第一面が前記第二面側とは反対側に凸となる曲面であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の集光レンズ。
【請求項7】
複数個のレンズが一面上で組み合わされた多分割レンズであって、前記各レンズが、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の集光レンズからなることを特徴とする多分割レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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