説明

集光装置および該集光装置を備える太陽電池

【課題】太陽光発電装置に好適に用いられ、小型かつ姿勢制御が容易な集光装置を提供する。
【解決手段】複数の微小電極が配列されてなる第1の透明電極11aおよび第2の透明電極11bと、透明電極の間に回転可能に保持され、正に帯電した第1部分と、負に帯電した第2部分とからなる透明ボール状部材13と、を含む集光装置10。第1の透明電極および第2の透明電極の少なくとも一方に電圧を印加することで、電極からの電界の作用により透明ボール状部材の姿勢を制御することで、集光装置全体を動作させるなくとも、異なる方向からの光線を任意の位置に集光することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光装置、より具体的には太陽光発電装置の集光機構として好適に用いられる集光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低い発電システムとして、太陽電池を用いた太陽光発電が注目されている。太陽光発電装置としては、太陽電池素子を隙間無く敷き詰めた非集光固定型の平板式構造が一般的である。しかしながら、単に太陽電池素子を配置しただけでは、太陽の位置によっては、太陽電池素子の表面による太陽光の反射などにより太陽電池素子に取り込まれる光が少なくなってしまう。また、太陽電池素子は効率の高いものは非常に高価であり、さらに大型の太陽電池素子を製造することが困難であることから、太陽光を比較的小型の太陽電池素子に集光し、太陽電池素子の発電効率を高める技術が提案されている。
【0003】
例えば、広い範囲に照射される太陽光を光学レンズや反射鏡などを用いて集光し、比較的小さな太陽電池素子に高エネルギー密度の太陽光を照射することで、太陽電池素子の単位面積あたりの発電電力を大きくすることが提案されている。これにより、太陽電池の効率を高めると共に、太陽電池素子を小型することで、太陽電池素子の使用量を減らし、太陽電池モジュールの低価格化を図ることが提案されている。
【0004】
一方、太陽は時々刻々とその位置を変えるが、太陽光が太陽電池素子に効率的に集光されるためには、常に太陽光を正面で受光するように太陽を追尾する必要がある。このため、高集光倍率の太陽電池発電装置では、太陽を追尾する機構を備えているものが一般的である。(たとえば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−53914
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の高集光倍率の太陽電池発電装置は、集光レンズや反射鏡などの集光装置が非常に大形であり、また、太陽光発電に用いられる集光装置は、太陽が移動するにつれて、太陽光を集光する焦点が太陽電池パネルの位置となるように、集光装置の姿勢を制御する必要があるが、大形の集光装置の姿勢を制御するためには姿勢の制御装置も大形となり、また比較的大きな動力が必要であるという問題点があった。また、大形の集光装置全体を動かし、比較的小さな太陽電池素子に太陽光を集光させるためには、非常に精密な追尾機構が必要であり、さらに、太陽電池発電装置は屋外に設置されることが一般的であるが、風などの外的な力が太陽電池装置に働くことが多く、集光された太陽光を正確に太陽電池に集光し続けることが困難であるという問題点もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における集光装置は、複数の微小電極が配列されてなる第1の透明電極および第2の透明電極と、透明電極の間に回転可能に保持され、正に帯電した第1部分と、負に帯電した第2部分とからなる透明ボール状部材と、を含み、前記第1の透明電極および前記第2の透明電極の少なくとも一方に電圧を印加し、前記透明ボール状部材の姿勢を制御することで、異なる方向からの光線を任意の位置に集光することができるように構成したことを特徴とする。また、本発明の一能様においては、透明ボール状部材は第1部分と第2部分ごとに屈折率の異なる透明樹脂からなり、その界面に全反射面および/または光屈折面が構成される。本発明の別の能様では、第1部分と第2部分との界面に金属蒸着膜が形成される。
【0008】
このように構成された集光装置を用いると、従来の集光装置と比較して、非常に小型かつ太陽の追尾に要する電力が非常に小さくてすむ集光装置を提供することができる。また、追尾装置全体の姿勢を制御せずに、太陽光を集光することができるため従来の集光装置とは異なり風などの影響を受けにくく、安定的に太陽光を集光することができる集光装置を提供することができる。さらに、電極に印加する電圧を調整することで太陽光を集光する場所を変更することができるために、従来のように追尾システムと太陽光発電素子とを正確に位置合わせを行わなくとも、安定的に太陽光を集光できる集光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の集光装置を断面図である。
【図2】図2は、本発明の集光装置におけるツイストボールの断面図である。
【図3】図3は、本発明の集光装置における球体粒子の制御方法を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の集光装置による太陽光の集光方法を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の集光装置による太陽光の追尾方法を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明の集光装置全体の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付の図面を参考にしながら、本発明の集光装置について説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明に基づく集光装置10は、第1の透明電極11a、第2の透明電極11b、透明樹脂12及び、透明電極11aと11bの間に配列された複数のツイストボール13を有している。複数のツイストボール13は、後述の図4および図6に示されるように、マトリックス状に配列されていることが好ましい。透明電極11a、11bとしては、例えばノートパソコンや携帯電話などの液晶表示素子や電子ペーパーに用いられる、酸化インジウム系のITO透明導電膜などの従来公知のものを用いても構わない。また、本発明の集光装置10とともに用いられる太陽電池素子の種類に応じて、太陽電池素子の発電が効率的に行われる周波数帯の光を透過するような電極を用いても良い。透明電極11a、11bは、図1に示されるように、各ツイストボール13に対応して、複数の電極が配列されて構成される。このような構成により、電圧を印加する電極を選択することで、後述するように各ツイストボール13の姿勢を制御することができる。
【0012】
透明電極11aと11bとツイストボール13の隙間には、透明樹脂12が充填されており、当該透明樹脂12がバインダとなってツイストボール13を結合している。また、透明電極11a、11bの外側には、保護膜や保護板などの透明部材が配置されても構わない。透明樹脂12、保護膜や保護板などの透明部材は、光の透過率が高い材料から構成されることが好ましく、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂が例示できる。特に、メタクリル樹脂が、光透過率の高さ、耐熱性、力学的特性、成形加工性に優れており、最適である。このようなメタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチルを主成分とする樹脂であり、メタクリル酸メチルが80重量%以上であるものが好ましい。
【0013】
(ツイストボール)図2にあるように、ツイストボール13は透明マイクロカプセル25中に、回転可能に支持された透明のボール状部材が配置されている。ここでは、透明ボール状部材として球体粒子20を内包した構造について説明する。マイクロカプセル25と球体粒子20との間にはシリコーンオイル等の透光性液体24が満たされているおり、各球体粒子20は当該マイクロカプセル25内でそれぞれ自由に回転可能となっている。なお、透光性液体24は、球体粒子を回転可能に支持できれるものであれば、シリコーンオイルに限定されるものではない。また、透光性液体24としては、上述の透明樹脂12や、保護膜・保護板などの透明部材と屈折率が近いものを用いることが好ましい。例えば、透明樹脂12などにメタクリル樹脂を用いる場合、シリコーンオイルの屈折率がメタクリル樹脂の屈折率と比較的に近いため、透光性液体24としてシリコーンオイルを用いることが好ましい。さらに、透光性液体24の代わりに、透明の潤滑膜等を用いても構わない。
【0014】
球体粒子20は一方の半球部分(第1部分)が透明樹脂21aからなり、他方の半球部分(第2部分)が透明樹脂21bからなる。図2(a)のように透明樹脂21aと透明樹脂21bは異なる屈折率を有している場合、透明樹脂21aと透明樹脂21bの界面では入射する太陽光41を全反射もしくは屈折させることが可能である。また図2(b)のように透明樹脂21aと透明樹脂21bが同一樹脂である場合でも、その界面に金属蒸着面を設け、光を反射させることで本発明の目的を達成してもよい。
【0015】
また図3にあるように球体粒子20は一方の半球部分がたとえば負の電荷を持ち、他方の半球部分が正の電荷をもち、双極子状態に帯電している。このため、ツイストボール13を挟み込むように設置される透明電極11a、11bの間に電圧を印加させることにより、発生させた電界の方向によって球体粒子20の向きをさまざまな方向に制御することができる。球体粒子20を構成する材料としては、透明性の高く、屈折率の異なる2種以上の材料を用いることが好ましく、従来公知の透明の導電性樹脂などを用いることができる。例えば4級アンモニウム塩由来のアミノ基をもつ正帯電性を示す透明樹脂材料から半球部分を構成し、他方の半球部分をカルボン酸やフッ素原子をもつ負帯電性を示す樹脂材料から構成することで、球体粒子20を構成しても構わない。また、透明樹脂に磁石粉や金属粉などを混入して、それぞれの半球部分が電荷を持つように構成しても構わない。なお、球体粒子20は完全な球形である必要はなく、略球形のもの、ラグビーボール状や紡錘状などの略楕円球状のもの、多面体のものなどであっても構わない。
【0016】
以下に、本発明に基づく集光装置の集光作用について説明する。図3(a)にあるように電圧をまったく印加しない場合、各球体粒子20はマイクロカプセル25内を自由に回転可能な状態であるが、たとえば図3(b)にあるように球体粒子20の直上から直下に向かう方向に電界が発生するよう電圧を印加とすると、球体粒子20はその正に帯電した半球側が電界と同じ向きを向くように、すなわち正に帯電した半球側が下を向き、負に帯電した半球側が上を向くような状態に回転し固定される。また図3(c)にあるように球体粒子20の中心を通り、装置平面に対して垂直な方向より傾いた方向に電界が発生するよう電圧を印加すると、球体粒子20はその正に帯電した半球側が電界と同じ向きを向くように回転し固定される。
【0017】
各透明電極11a、11bの間に電圧を印加することにより、球状粒子20の向きを任意の方向に固定すると、同時に各球体粒子20内に形成された光反射面22、又は光屈折面23の向きも回転し、所定の方向をもって固定することが可能となる。
【0018】
所定の方向に固定された光反射面22、又は光屈折面23に太陽光が入射すると、その光反射面22、又は光屈折面23の向きによって光の進行方向が所定の方向に曲げられる。このように電圧印加により球体粒子20の向きを制御することで、球体粒子に入射された太陽光の進行方向を任意に制御することができる。
【0019】
この集光装置10では、各球体粒子20を各々互いに向かい合う透明電極11a、11b間に配置しているため、各透明電極間に発生させる電界を制御することにより、各球体粒子20の向きを任意に制御することができる。
【0020】
すなわち、各球体粒子20の向きを最適に制御することによって、集光装置10全体として太陽光41を任意の位置に集光することが可能である。また上記球体粒子20は、電圧の印加を停止した後も、電圧印加時の向きを長時間保持する特性を有しているため、上記太陽光41を一定の位置に集光し続けることができる。
【0021】
また、再度電圧を印加することで、各球体粒子20の向き、すなわち集光位置を変更可能であり、各球体粒子20の向きを時々刻々と変化する太陽60の位置に対応させることによって、太陽60を正確に追尾することが可能となる。
【0022】
図4は、集光装置10によって太陽光が集光される様子を表した概略図である。各球体粒子20の向きは、各球体粒子20に入射される太陽光が全反射又は屈折により太陽電池セル40に向かうよう、それぞれの位置によって決定される。各球体粒子20によってその進行方向を曲げられた太陽光41は、全体として太陽電池セル40上に集光される。
【0023】
図5(a)は、集光装置10に対して太陽光41が45°の角度をもって入射したときの、球体粒子20の向きと光の進行方向を示す概念図である。太陽光41はそれぞれの位置において各球体粒子20の光反射面22によって全反射され、集光装置10を通過し太陽電池セル40上に集光される。
【0024】
また図5(b)は、集光装置10に対して太陽光41が90°の角度をもって入射したときの、球体粒子20の向きと光の進行方向を示す概念図である。太陽光41はそれぞれの位置において各球体粒子20の光屈折面23によって屈折され、集光装置10を通過し太陽電池セル40上に集光される。
【0025】
図6にあるように、各球体粒子20の向きの制御、すなわち各透明電極11a、11b間の印加電圧の制御は制御装置62によって行う。各球体粒子20の向きは、太陽光センサ等63により太陽60の位置を検出することで決定してもよく、また太陽電池の設置位置(緯度、経度)や日時から算出される太陽の位置から決定してもよい。
【0026】
なお、本発明に係る集光装置は、上述の説明に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲で種々の変更が加えられても構わない。
【符号の説明】
【0027】
10 集光装置
11a 透明電極
11b 透明電極
12 透明樹脂
13 ツイストボール
20 球体粒子
21a 透明樹脂(n1)
21b 透明樹脂(n2)
22 光反射面
23 光屈折面
24 シリコーンオイル等透光性液体
25 マイクロカプセル
40 セル
41 太陽光
60 太陽
61 集光された光
62 制御装置
63 太陽光センサ
70 従来の追尾集光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集光装置であって、
複数の微小電極が配列されてなる第1の透明電極および第2の透明電極と、
透明電極の間に回転可能に保持され、正に帯電した第1部分と、負に帯電した第2部分とからなる透明ボール状部材と、を含み
前記第1の透明電極および前記第2の少なくとも一方の透明電極に電圧を印加し、前記透明ボール状部材の姿勢を制御することで、異なる方向からの光線を任意の位置に集光することができる集光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の集光装置であって、前記第1部分と前記第2部分とが屈折率の異なる
透明樹脂からなることを特徴とする集光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の集光装置であって、前記透明ボール状部材は、前記第1部分と前記第2部分との間に全反射面が形成されていることを特徴とする集光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の集光装置であって、前記集光装置は太陽光を前記任意の位置に集光する装置であって、前記透明ボール状部材の姿勢が、太陽の位置に応じて制御されることを特徴とする集光装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−3625(P2011−3625A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143831(P2009−143831)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】