集団HLAタイピングとその使用
本発明は、フィールド環境における即時集団HLA遺伝子タイピング及び/または対立遺伝子タイピングのための携帯システム、及びその様な集団HLA遺伝子タイピングの方法を供する。システムの個々の構成要素は、フィールド環境に携帯可能で、同環境で操作可能であり、それにより、遺伝子または対立遺伝子の即時ハイスループットタイピングを提供する。HLA遺伝子特異的プライマー及びHLA対立遺伝子特異的または一塩基多型特異的ハイブリダイゼーションプローブも提供する。さらに、本発明はハイブリダイゼーションプローブからなるマイクロアレイを提供する。HLA遺伝子特異的プライマーとマイクロアレイからなるキットも提供する。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2006年2月27日出願(放棄済)の米国仮特許出願第60/777,078号の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、マイクロアレイ技術と集団遺伝子タイピングの分野に関係する。より具体的には、本発明は、フィールド環境で即時ハイスループット集団HLA遺伝子タイピングを行う携帯システムと方法に関係する。
【背景技術】
【0003】
バイオテロリズムと軍事上の関心から、米国国防省は、高速、柔軟かつ高生産性のワクチン開発法に重点投資した。最近の研究は、基礎免疫学が予測したこと、すなわち大規模な暴露集団内において感染に対する各個人の反応及びワクチンに対する各個人の反応は、HLA型によって大きく変化し得るということを立証し始めた(非特許文献1−2)。しかし、HLAタイピングが感染症の疫学またはワクチン開発の臨床疫学の一部として実行されるにはあまりに高価であることもあり、そのような研究は現在までほんの僅かしか実行されていない。さらに、国防の観点からは、たとえHLA型と感染またはワクチン応答の関係について完全な知識が得られ、また、たとえ「カスタマイズされた」ワクチンがHLA型に基づいて利用可能となったとしても、現在のHLAタイピング技術は、迅速なフィールド応答能力に欠け、集団規模の非常事態において実施するには高価かつ複雑すぎる。
【0004】
病原体やワクチン接種に対するヒトの免疫応答は、HLA遺伝子座に依存する。病原体に対する応答は、HLA遺伝子座にコードされる2つの別々のクラスの多型細胞表面糖タンパク質による(非特許文献3)。HLAクラスI分子は、細菌やウイルスの感染により細胞質に存在する内在性抗原を認識し、それを、感染細胞を殺すCD8+細胞傷害性Tリンパ球に提示する。HLAクラスII分子は、外来エピトープを抗原提示細胞の表面に提示することによって、感染細胞をCD4+ヘルパーT細胞のために標識し、侵襲する病原体に対する免疫応答を引き起こす。エピトープ−HLA結合相互作用に必要な多様な特異性は、HLA遺伝子座の広範な多型性に依存する。
【0005】
HLA遺伝子座の多型性は、組み換え、遺伝子変換、突然変異、及び病原体や感染症に応答したそれらの自然淘汰によってもたらされる(非特許文献4)。それゆえ、HLA対立遺伝子の多様性は、感染性及び病原性因子に対する集団規模におけるヒトの応答及び抵抗能力を強化する。HLA多型性は、いくつかの疾病と、最も最近ではエイズウイルスに対する抵抗性と関連付けられている(非特許文献5)。大部分のウイルスワクチンは低用量のウイルス表面抗原であるので、そのような予防接種に応答する能力は、HLA遺伝子座の多型性に依存する。例えば、ハプロタイプHLA-B8、SC01、DR3は、B型肝炎ウイルス表面抗原への応答遺伝子を欠く(非特許文献6)。予防接種の開発には、HLA型を発見し、全既知ハプロタイプについてワクチン応答を分類することが不可欠である。
【0006】
従来の血清学的方法によるHLAタイピングは、一塩基多型による構造の相違を同定するための対立遺伝子特異的な血清の有無に制限されていた(非特許文献7)。従来法で使用される抗体は、HLA表面に特異的である。しかし、単一または複数のヌクレオチド多型に起因するHLA重鎖のペプチド結合溝構造の違いは、抗体法を使用して容易に確認することは出来ない。
【0007】
核酸法は、配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ(SSOP)または配列特異的プライマー(SSP)を利用する。配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ法は、個々のDNAサンプル、または配列特異的オリゴヌクレオチドプローブを多様性の同定に使用する(非特許文献8)。現在のプライマー設計方法は、BLAST様の単純な整列に依ってプライマーを同定しており、特有なプライマー集の発見において常に良好に機能するわけではない。遺伝子座特有と同定された個々のプライマーは全遺伝子座の増幅に使用され、特異的プローブは多型の特定に使用される。
【0008】
これらは低−中程度の解像度の段階的方法であり、特異的プローブを用いてさらに探査することによって高解像度が達成できる。この方法には、DNAサンプルを膜担体に固定し、標識付配列特異的オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせて固定化サンプル中の多型を特定するドットブロット、または、配列特異的オリゴヌクレオチドプローブを固定化し、標識付DNAサンプルを配列特異的オリゴヌクレオチドプローブに加えて多型を特定する逆ドットブロットの2つのバージョンがある。配列特異的オリゴヌクレオチドプローブの固定化は数種の多型のテストを可能にするのに対し、DNAサンプルの固定化は数種のサンプルをある特定の多型に対して検定することを可能にする。
【0009】
配列特異的プライマー法は、各々の多型に特異的なプライマーを使用する(非特許文献9)。一遺伝子座の分析に要するプライマー数は、その特定遺伝子座中の多型数によって決まる。通常、HLAタイピングを完了するには多数のPCR反応が必要である。これは、多型性の有無がPCR生成物の増幅を引き起こす、PCRに基づく方法である。PCR生成物の有無は、簡便なゲル電気泳動を用いて確認することが出来る。PCR反応は、保存領域を増幅する陽性対照プライマーを含む。
【0010】
他の方法は、構造に依拠するか、あるいは配列決定法を用いる。構造に依拠した多型特定方法は、輪状にはみ出した領域を持つ配列にミスマッチのある二本鎖は、配列にミスマッチのない二本鎖とは非変性ゲル中での移動が異なるという事実に基づいている(非特許文献10)。DNA配列決定の自動化に伴い、HLAタイピングは配列決定機でなされた(非特許文献11−12)。その方法論は、多型数とエクソン数に依存している―例えば、HLAクラスIIに関しては、多型は数百塩基を持つエクソン2中にある。対照的に、クラスIタイピングには、多型性は数エクソンの配列分析を要し、それゆえ、より複雑となり、誤った結果を与えることがある。
【0011】
HLA型の一塩基多型は、対立遺伝子のいくつかのサブタイプによって共有されている。このことは、従来法の使用において曖昧さの原因となることがある。交差ハイブリダイゼーションに起因するこの問題を解決するには、遺伝子多型についての知識と結びついたプローブとプライマーとの組み合わせが重要である。それゆえに、単純なSSOPまたは配列特異的プライマーハイブリダイゼーションは、HLA型の特定に至らないことがある。
【0012】
HLA型の正確な特定は、いくつかのサブタイプ用のプローブの組み合わせのパターンを注意深く精査することによって行われる。PCRに依拠する方法、またはドットブロット法は、多量の検体を必要とし、非常に高コストとなる。従って、より少ないサンプル量を要し、無駄のない小型化された技術が必要である。マイクロアレイとパターン認識ソフトウェアとの併用は、明白にHLA型を同定するための2次元バーコードを生成するための、そのようなプラットホームを提供する(非特許文献13)。
【0013】
マイクロアレイは、HLAタイピングにおけるハイスループット要求性を完全に満たす。マイクロアレイは、小型化の利便性と、単一の実験で何千ものハイブリダイゼーションを実行する能力を提供する。マイクロアレイは、その高度な並列処理性と特徴的なフォーマットにより、フィールド使用に完全に適している。これらの潜在的利点にも関わらず、マイクロアレイはフィールドHLAタイピング用に完成されていない。コスト、品質及び携帯性は、制限因子の一つで、製造方法に依存する。
【0014】
現在の市販マイクロアレイは、特殊な染色剤を使用し、かつ特殊な画像化装置を使用する必要がある。理想的には、画像化装置は、どんな染色剤の像も画像化することが出来るべきである。また、現在市販されている画像化装置は携帯できない。その上、現在の分析キットは、どれも使用が厄介で、パターン同定の一部は手動で行う必要がある。
【0015】
対立遺伝子の異型の発見のための最初のオリゴヌクレオチドマイクロアレイは1989年に報告された (非特許文献14)。配列特異的オリゴヌクレオチドプローブはナイロン膜上に染み込まされ、DNA検体のビオチン化されたPCR産物とハイブリダイゼーションされた。対立遺伝子の遺伝子型は、スポットの染色強度によって同定された。最近になって、別の研究は、クラスII多型の対立遺伝子バリエーションの同定のための、130種のプローブからなるDNAマイクロアレイの使用を報告した(非特許文献15)。マイクロアレイが中−高分解度HLAタイピングに応用できることは明白であるが、その技法は現形ではまだいくつかの技術的及び経済的制約を受ける。
【0016】
その上、例えば配列特異的オリゴヌクレオチドプローブの様な従来法を用いる場合、DNA検体は二重鎖であり、プローブは一本鎖である。二重鎖産物の存在は、ハイブリダイゼーションの効率を低下させる。T7またはT3ポリメラーゼ配列は、試験管内転写によって一本鎖の標的分子をつくるのに用いられてきた。RNAの標識は困難であり、それゆえに、全ての産物が標識されるよう、増幅法にはビオチンまたは蛍光色素で末端標識されたプライマーを利用する。ビオチンの存在は、増幅手順に影響を与えることもある。
【0017】
さらに、集団HLAタイピングの実施上の重要な制限は、検体の収集である。従来のサンプル収集方法は、侵襲的技法による10−15mlの採血が中心であった。この収集形式は、分解、汚染及び不正確な結果につながる。このように集められた血液サンプルは、HLAタイピングの費用と実務の複雑さを増す大規模な処理、保管及び輸送の問題を要する。採血法に関する処理と収集の問題に加えて、単離したDNAの保管が問題となる。従って、集団HLAタイピングのためのどんな技術も、サンプル収集及び抽出されたDNAの保管の互換法がなければならない。
【非特許文献1】Charron, D. (1997) Genetic Diversity of HLA: Functional and Medical Implications. EDK, Paris, France
【非特許文献2】Marsh, et al. (2000) HLA FactsBook. Academic Press, London, UK
【非特許文献3】Trowsdale and Campbell (1992) Eur J Immunogenet. 19, 45-55
【非特許文献4】Little, A. M. and Parhams P. (1999) Rev Immunogenet. 1999, 105-123
【非特許文献5】Trachtenberg, et al. (2003) Nat Med., 9, 928-935
【非特許文献6】Kruskall, et al. (1992) J Exp Med. 175, 495-502
【非特許文献7】McCloskey, et al. (1993) Handbook of HLA typing techniques. Hui, K. M., Bidwell, J. L., Eds. Boca Raton, FL. CRC Press, Inc, 175-247
【非特許文献8】Wordswoth, P. (1991) Immunol Lett., 29, 37-39
【非特許文献9】Olerup and Setterquist (1993) Handbook of HLA typing techniques. Hui, K. M., Bidwell, J. L., Eds. Boca Raton, FL. CRC Press, Inc, 149-174
【非特許文献10】Teutsch, et al. (1996) Eur J Immunogenet., 23, 107-120
【非特許文献11】Hurley, C. K. (1997) Tissue Antigens, 49, 323-328
【非特許文献12】Dinauer, et al. (2000) Tissue Antigens, 55, 364-368
【非特許文献13】Schena, et al. (1995) Science 270, 467-70
【非特許文献14】Saiki, et al. (1989) Proc Natl Acad Sci USA 86 6230-6234
【非特許文献15】Guo, et al. (2001) Genome Res., 12, 447-457
【非特許文献16】Wang, et al. (2003) The Eighth Annual Structural Biology Symposium of Sealy Center for Structural Biology, p 157, Galveston, Texas
【非特許文献17】Belosludtsev, et al. (2001) Anal. Biochem. 292, 250-256
【非特許文献18】Robinson, et al. (2003) Nuc. Acids Res. 31, 311-314
【非特許文献19】Fofanov, et al. (2002) The 2002 Bioinformatics Symposium, Keck/GCC Bioinformatics Consortium, p 14
【非特許文献20】Fofanov, et al. (2002) The Seventh Structural Biology Symposium of Sealy Center for Structural Biology, p 51, Galveston, Texas
【非特許文献21】Hayney, et al. (1995) Mayo Clin Proc. 70, 951-954
【非特許文献22】Mitra, et al. (2003) Analytica Chemica Acta, 469, 141-148
【非特許文献23】Lemeshko, et al. (2001) Nuc. Acids Res. 29, 3051-3058
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
集団遺伝子タイピングのシステムと方法の改良が、当該技術分野において必要とされている。具体的には、先行技術には、大規模集団の迅速HLAタイピングのための先進的ゲノム分析法を使用した、低コストで、大量生産された、現地で直ちに使用可能な携帯マイクロアレイシステムが欠けている。本発明は、当該技術における、この長年の必要と要望を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、HLA遺伝子を増幅するためのプライマーを目的とする。HLA遺伝子は、HLA A、BまたはDRB1、またはその中のエクソンであってもよい。プライマーは、配列番号14−37に示される配列を含む。
【0020】
本発明は、HLA遺伝子中の一塩基多型(SNP)を検出するための、ハイブリダイゼーションプローブも目的とする。ハイブリダイゼーションプローブは、SNPを含む領域と5’及び3’末端側の配列に相補的な約9−15残基のオリゴヌクレオチドを含む。SNPは、HLA-Aエクソン2またはエクソン3、またはHLA-Bエクソン2またはエクソン3中に位置してよい。プローブは、配列番号48−291に示される配列を含む。
【0021】
本発明は、さらに、陽イオン表面を持つ基板を含むマイクロアレイ装置、及び、そこに吸着された一種以上の上記ハイブリダイゼーションプローブを含む単分子層も目的とする。関連した発明では、マイクロアレイは、上記ハイブリダイゼーションプローブと共吸着されたオリゴチミジンを含んでもよい。別の関連発明においては、オリゴチミジンは、それに付いた蛍光色素を含んでもよい。もう一つの関連発明では、オリゴチミジンは、それに付加された蛍光色素を含んでよい。さらにもう一つの関連した発明では、マイクロアレイ装置は、キャップ剤を含んでよい。
【0022】
本発明はさらに、HLA遺伝子を増幅するための前記遺伝子特異的プライマー及び前記マイクロアレイ装置を含むキットをも目的とする。関連した発明では、キットはさらにPCR反応用緩衝剤及びポリメラーゼ、または蛍光色素、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。
【0023】
本発明はさらに、フィールド環境における即時ハイスループット集団HLA対立遺伝子タイピングのためのシステムも目的とする。本システムは、上記マイクロアレイ装置、集団を構成する個人からDNAサンプルを採取及び精製する手段、採取されたDNAからPCRによって1つ以上の対象とするHLA遺伝子のcRNA標的アンプリコンを生成する手段、及び、各個人の対象とするHLA遺伝子のHLA対立遺伝子型を決定する手段を有してなる。ここでいうシステムを構成する個々の手段及び装置は、携帯可能であって、フィールド環境において即時使用可能である。前記プライマーは、cRNA標的アンプリコンを生成するために有用である
本発明はさらに、フィールド環境における即時集団HLA対立遺伝子型決定のための方法も目的とする。その方法は、集団の一人以上のメンバーからのDNA採取、分析のためのDNA精製、及びDNAを構成する、対象とするHLA遺伝子からの、前記遺伝子特異的プライマーを使った標的アンプリコンの生成を含む。前記マイクロアレイを構成するハイブリダイゼーションプローブを標的に接触させ、接触後形成される各HLA対立遺伝子型に特有なハイブリダイゼーションパターンを画像化する。本発明は、決定された対立遺伝子型に基づく各個人の生物剤や兵器による感染リスクの評価のための関連方法も目的とする。本発明は、各個人の生物剤や兵器に対する特定のワクチン応答の評価のための別の関連方法も目的とする。
【0024】
本発明の、他の、及びさらなる態様、特徴、及び長所は、後述の現時点における発明の好ましい実施例から明白となろう。これらの実施例は、開示を目的として提供される。
【0025】
上記発明の特徴、長所及び対象が、これから明白になるであろう他の事柄とともに掌握され、かつ詳細に理解されるよう、上で簡単に要約した発明のより具体的な説明は、添付図面に示した具体的な実施例を参照することによって得られるであろう。これらの図は、明細の一部を成す。しかしながら、添付の図面は、発明の好ましい実施例を例示するのであり、従って、発明の範囲を制限すると捉えられることを意図していないことに注意されたい。
【0026】
本発明の1つの実施の形態は、HLA遺伝子の増幅のためのプライマーである。この実施の形態では、HLA遺伝子はHLA A、BまたはDRB1、またはそれらのエクソンであってよい。
【0027】
本実施の形態の一態様では、HLA-Aプライマーは配列番号14−15に示す配列を有してよく、HLA-Aエクソン2プライマーは、配列番号20−21に示す配列を有してよく、HLA-Aエクソン3プライマーは配列番号22−26に示す配列を有してよい。別の態様では、HLA-Bプライマーは配列番号16−19に示す配列を有してよく、HLA-Bエクソン2プライマーは、配列番号27−28に示す配列を有してよく、HLA-Bエクソン3プライマーは配列番号29−31に示す配列をもってよい。さらに別の態様において、HLA-DRB1プライマーは配列番号32−37に示す配列を有してよく、HLA-Bエクソン2プライマーは、配列番号38−47に示す配列を有してよい。
【0028】
本発明のもう一つの実施の形態では、HLA遺伝子中の一塩基多型(SNP)を検出するための、SNPを含む領域と相補的な9−15塩基のオリゴヌクレオチドと、5’及び3’末端両フランキング配列からなるハイブリダーゼーションプローブが提供される。
【0029】
この実施の形態の全ての態様において、フランキング配列は、オリゴチミジンまたはオリゴチミジン様ポリアニオン系ポリマーであってよい。同じく全ての態様において、SNPはHLA-Aエクソン2またはエクソン3、HLA-Bエクソン2またはエクソン3、またはHLA-DRB1エクソン2に位置してよい。ある特定の態様では、HLA-Aエクソン2プローブは、配列番号48−99に示す配列を有してよく、HLA-Aエクソン3プローブは配列番号100−155に示す配列を有してよい。別の特定の態様では、HLA-Aエクソン2プローブ配列番号156−239に示す配列を有してよく、HLA-Aエクソン3プローブは配列番号240−291に示す配列を有してよい。
【0030】
さらに別の実施の形態では、陽イオン表面をもつ基材、及び、それに吸着した一種以上の上記ハイブリダイゼーションプロ−ブを含む単分子層を含む、HLA遺伝子の対立遺伝子型決定用マイクロアレイ装置が提供される。さらにこの実施の形態に加えて、マイクロアレイは、ハイブリダイゼーションプローブと共吸着されたオリゴチミジンを含んでよい。オリゴチミジンは、約20から約40のチミジンを有してよい。さらに、オリゴチミジンは、それに結合した蛍光色素を含んでよい。さらに別の実施の形態では、マイクロアレイ装置は、キャップ剤を含んでよい。全ての実施の形態において、陽イオン性表面は、アミノシラン、グアニジン塩、酸化スズ、酸化アルミニウム、または酸化ジルコニウム、または、他の同等の荷電部分を含んでよい。また、全ての実施の形態において、基材は、ガラス、プラスティック、または金属であってよい。
【0031】
関連した実施の形態において、本発明は、HLA遺伝子増幅用遺伝子特異的プライマー、及び上記マイクロアレイ装置を含む、集団HLAタイピング用のキットを提供する。この実施の形態に加えて、キットは、PCR反応用緩衝剤及びポリメラーゼ、または蛍光色素、またはそれらの組合せを含んでよい。遺伝子特異的プライマーは配列番号14−47に示した配列であってよい。
【0032】
本発明のさらに別の実施の形態においては、集団の一人以上の構成員からDNAを採取し、分析のためにDNAを精製し、そのDNAに含まれる対象とするHLA遺伝子から遺伝子特異的プライマーを用いて標的アンプリコンを産生し、上記マイクロアレイに含まれるハイブリダイゼーションプローブと標的を接触させ、接触後に形成される各HLA対立遺伝子型特有のハイブリダイゼーションパターンを画像化する、各工程を有してなる、フィールド環境における即時集団HLA対立遺伝子タイピングのための方法を提供する。
【0033】
この実施の形態のすべての態様において、HLA遺伝子は、HLA-A、HLA-BまたはHLA-DRB1であって差し支えない。また、すべての態様において、即時ハイスループット対立遺伝子タイピングは、一時間一稼動システムあたり約200〜約300のHLA対立遺伝子型である。この実施の形態のある態様では、DNAサンプルを回収する手段は、個人から採取した口腔洗浄サンプル、口腔綿サンプル、または血液サンプルを収容するのに適した容器を含んでもよい。別の態様では、標的アンプリコンを生成する手段は、対象とするHLA遺伝子を増幅するためのHLA遺伝子特異的プライマーを含んでいて差し支えない。遺伝子特異的プライマーの例としては、配列番号14-17に示される配列を有しているものが挙げられる。さらに別の態様では、HLA対立遺伝子型を各個人に割り当てる手段は、マイクロアレイ装置上に吸着されたハイブリダイゼーションプローブに標的をハイブリダイゼーションした後に、該マイクロアレイ装置上に形成されるハイブリダイゼーションパターンを検出するのに適合した画像化装置、及び、画像化されたハイブリダイゼーションパターンをHLA対立遺伝子型として認識するのに適合したアルゴリズム集を含むパターン認識ソフトウェアを含んでいて構わない。
【0034】
本発明のさらに別の実施の形態では、集団の一人以上の構成員からDNAを採取し、前記DNAを分析用に精製し、遺伝子特異的プライマーを用いて、前記DNAに含まれる、対象とするHLA遺伝子から標的アンプリコンを生成し、上記マイクロアレイを構成するハイブリダイゼーションプローブを前記標的と接触させ、前記接触後に形成される、ハイブリダイゼーションパターンを画像化し、ここで、各HLA対立遺伝子型はそれに関連するパターンを有する、各工程を有してなる、フィールド環境における即時集団HLA対立遺伝子タイピングの方法を提供する。
【0035】
この実施の形態に加えて、本方法は、採取されたDNAを保存する工程を含んでよい。さらに別の実施の形態では、本方法は、決定された対立遺伝子型に基づく各個人の生物剤及び兵器による感染リスクの評価を含んでよい。さらに別の実施の形態では、本方法は、各個人の生物剤・兵器に対する特定のワクチンへの応答を評価する工程を含んでよい。
【0036】
すべての実施の形態において、DNAは血液から、口腔洗浄、または口腔綿によって採取されて差し支えない。また、遺伝子特異的プライマーは、配列番号14−47に示す配列を有してよい。さらには、ハイブリダイゼーションプローブは、配列番号48−291に示す配列を有してよい。
【0037】
本明細書では、単数冠詞「a」あるいは「an」は、一つ以上を意味してよい。本願の請求項では、「含む」なる語とともに用いられる場合、単数冠詞「a」または「an」は、1つ以上を意味してよい。本明細書では、「別の」または「他の」は、少なくとも2番目またはそれ以上を意味してよい。
【0038】
本明細書では、簡単、携帯可能、かつフィールド環境対応の集団HLAタイピングを可能にする、ヒト白血球抗原(HLA)チップ及びマイクロアレイ技術を提供する。HLAチップは、ヒトHLA-B遺伝子型を全体的に分析するよう設計されている。HLAチップが、ヒトHLA遺伝子座全体を分析するように設計されることが意図されている。このマイクロアレイ技術は、限定はしないが、例えば1週間に100,000人の、暴露された大規模集団を、わずか5−10の低コストで携帯可能なフィールド実験設備によってHLAタイピングするのに有効である。
【0039】
また、集団タイピングを通して得られたデータをリアルタイムで使用し、生物兵器による感染の個々の危険性を、HLAレベルで予想したり、あるいは、同じ感染種に対するワクチン接種への個別の応答を予想したりすることも想定されている。さらに、HLAチップの変異体を、第三世界環境におけるフィールドで即使用可能な新生児スクリーニング、あるいは、戦場で即使用可能な人員識別に使用して構わない。さらに、HLAタイピング技術は、災害時または災害後の民間人識別、または法医学的用途に使用されてよい。従って、集団HLAタイピングは、軍事的、反バイオテロリズム、または疫学的な面での用途がある。
【0040】
マイクロアレイデータの即時解釈は、フィールド使用環境において熟練していない者によって行われることが可能である。これは、低コストで、コンパクトで、容易に携帯可能なマイクロアレイ画像化装置によって、フィールドで実行されてよい。容易に車載可能な器材を使った完全HLA分析は、サンプル収集から最終的なHLA識別までの全プロセス時間が4時間未満であってよい。この任務サイクルは、4時間につき一人あたりおよそ20検体の手動のみによる処理で維持することが可能である。検体操作の最小の自動化で、処理効率は、移動可能なフィールド対応環境で、1ワークステーションにつき1時間あたり、約200から約300の完全HLA遺伝子型の処理を定常的に行うよう、簡単にスケールアップすることができる。
【0041】
さらにまた、パターン認識ソフトウェア、例えば画像分析器(非特許文献16)は、画像分析とマイクロアレイの蛍光パターンからHLA対立遺伝子型への変換において、バーコード様の単純さを提供する。パターン認識ソフトウェアのアルゴリズムは、限定はしないが、例えば、ユークリッドと相互情報に基づく距離、及びフーリエやウェーブレット変換のような、伝統的及び新規統計データマイニング手法を使用する。マイクロアレイパターン認識ソフトウェアは、ハイブリダイゼーションのパターンを認識したり、時としてあいまいなハイブリダイゼーションパターンに基づいて、どんなゲノム/種が存在するかという情報を自動的に引き出したりするのに効果的である。この情報は、それから、HLAサブタイプごとの予想されるスポットパターンに基づく既存のパターンデータベースと比較される。そのようなシステムは、ラップトップコンピュータ上で機能し得る、ユーザーフレンドリーなGUIインターフェイスを含んでよい。「ビデオカメラ」サイズの携帯マイクロアレイイメージャーは、高度な移動データ収集環境における作業に適している。
【0042】
マイクロアレイ設計及び製造または微細加工は、プローブ末端の化学修飾を必要としない、すなわち、表面にオリゴヌクレオチドプローブを固定するのにリンカーを必要としない(非特許文献17)。オリゴヌクレオチドによる表面の飽和は、共有結合による固定に要するオリゴヌクレオチド濃度のほんの何分の一かの濃度で起こる。従って、表面に送達されたオリゴヌクレオチド全部が、正味正電荷を持ち、疎水性または親水性であってよい単分子層表面との吸着会合によって固定される。スポットの形状及び形態は、マイクロアレイヤーによって分配された液滴の初期接触に依存する。共有結合形成がないので、スポット間の変動は最小化される。
【0043】
本発明は、標的内の一塩基多型を区別するための、約9から約15残基の短鎖オリゴヌクレオチドプローブを提供する。これらのプローブは、オリゴチミジン(オリゴT)配列が側面にある。望ましくは、フランキング配列を持つプローブは、合計約30ヌクレオチドを含む。さらに、オリゴT類似物がフランキング配列として使用されてもよいことが意図されている。限定はしないが、例えばポリスルホン酸塩などのオリゴチミジン様のポリアニオン系ポリマーで、オリゴTフランキング配列を置換してよい。プローブは、すべての臨床的に有意義なHLAサブタイプ用に設計されることが意図されている。IMGT/HLA配列データベースにおける現時点の対立遺伝子数は、HLAクラスIが977対立遺伝子、HLAクラスIIが652対立遺伝子である(非特許文献18)。本明細書で提供した有用なプローブは、HLA‐Aエクソン2(配列番号48−99)及びエクソン3(配列番号100−155)、HLA‐Bエクソン2(配列番号156−239)及びエクソン3(配列番号240−291)、そしてHLA-DRB1エクソン2内の識別に効果的である。
【0044】
本明細書で用いられるマイクロアレイの製造は、正荷電または陽イオン性表面への短鎖オリゴヌクレオチドプローブの吸着的、非共有結合的な付加を用いた、非常に単純で再現性の方法である(非特許文献17)。例えば、陽イオン性表面は、限定はしないが、アミノシランなどのアミン官能基を含むか、またはそれらでコーティングされてよく、あるいは、グアニジニウム基を含んでいてよい。あるいは、表面は、陽イオン性金属、または金属酸化物、例えば、酸化スズ、酸化ジルコニウムや酸化アルミニウム、またはその他の正味正電荷を持つ金属酸化物や同等の電荷部分で構成されてよい。そのような酸化物のコーティングは、微粒子状であってよいし、平滑であってガラス、プラスティックまたは金属基材上に塗布されてもよい。
【0045】
通常、方法は、水に溶解したオリゴTを側面にもつオリゴヌクレオチドプローブの、陽イオン性または正味正電荷をもつ基材表面上への沈着または印刷を必要とする。あるいは、オリゴTを側面にもつプローブを、第2の恒常的なオリゴヌクレオチドプローブと共印刷してもよい。このプローブは、印刷のすべての事例において同一であって、約T20から約T40塩基のオリゴT配列からなってよい。 オリゴT配列は、それに結合した色素を含んでよい。色素の例は、Cy-5であってよいが、これに限定されない。
【0046】
オリゴT配列は、HLAタイピングのためのヒトDNAへの核酸ハイブリダイゼーションに関して不活性であることが意図されている。オリゴTは、核酸プローブがプリントされた場所を、色素に結合したオリゴTの直接検出、またはオリゴTのWatson−Crick相補体である色素ラベルしたオリゴアデニン(オリゴA)とのオリゴTハイブリダイゼーションによって特定するためのマーカーとして導入される。オリゴTを含めることにより、ハイブリダイゼーション画像データを分析のために正しく配置させる能力を向上させ、マイクロアレイ製造中の品質管理に役立つ。
【0047】
加えて、アミンでコーティングした表面上に、プローブを沈着させた後、乾燥し、吸着プローブ分子との直接結合に関与しない残存表面電荷または荷電部分をキャップ化してよい。例えば、当該技術分野において既知であり標準的な、アミノシラン表面のキャップ化は、未使用のアミノ基を、界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウムなどのキャップ剤と反応させることによって実施できる。あるいは、セラミックまたは金属酸化物表面に対しては、表面をホウ酸、フッ化物イオンまたはリン酸塩と反応させることによってキャップ化を実施してよい。乾燥・キャップ化の後、取り付けられたオリゴヌクレオチドは、高濃度塩、5M塩化ナトリウム、及び高pH処理を含む、標準的なハイブリダイゼーション及び洗浄条件下において、表面から除去することはできない。従って、完成したマイクロアレイ中において、吸着したオリゴヌクレオチドはおそらく表面との複数の接触によって結合しており、従ってその結合標的と完全な2重らせんを形成するのに必要な立体配置自由度を失っている可能性があるが、この様な吸着的結合後、表面の過剰電荷中和する慎重なキャップ化を行った産物は、標準的な溶液状態でのハイブリダイゼーション反応や一点で表面と共有結合したプローブに対する表面ハイブリダイゼーションで見られるのと同等に高い二重鎖形成の特異性を示す。
【0048】
HLA遺伝子座用のPCRプライマーは、短いサブ配列、すなわち、あらゆるゲノム中でnが5-25+ヌクレオチド長のn残基のオリゴヌクレオチド配列が妥当な時間内、例えば分、の発現頻度を計算するための新しいアルゴリズムを用いて設計される(非特許文献19−20)。これらのアルゴリズムは、250以上の微生物、ウイルス、ヒトを含む多細胞生物のゲノム中に、全ての可能な「n残基配列」の存在の比較統計分析を実行するのに用いられる。その結果は、全てのゲノム中の異なるn−残基配列の存在/不在分布の注目に値する類似性を示す。総ゲノム配列長をMとし、M≪4nの条件が成立する場合、考慮される全てのゲノム中のn−残基配列の存在/不在分布は、ほぼランダムと取り扱うことができることを示唆する。短配列の複数ゲノム中の同時存在/不在についての膨大な計算分析は、公開された全ての、すなわち2002年5月以前の微生物及びウイルスゲノムに対して実行され、2003年5月までに利用可能であった1600+のゲノムについて再度行われた。これは、所定のゲノムのどこにも繰り返されない、独特の配列を産生する。
【0049】
これらの新しいアルゴリズムとデータ構造は、1600+の完全ゲノムの集積とともに、PCRプライマーの設計プロセスそのものの品質を大幅に改善することを可能にする。これらのアルゴリズムを使用して、既知のSNPを含め、全ヒトゲノム中に正確に一度だけ出現し、残りのn残基構造と少なくとも2または3ミスマッチのあるプライマーを見つけることが可能である。さらに、いくつかの細菌やウイルスのゲノムに存在するプライマーは除外される。そのような大規模並列プライマー設計は、口腔洗浄を集団DNA源として考える場合、そのようなサンプルは最大で50%までのいくつかの他の汚染物を含む可能性があるという点で特に重要である。このアプローチの有効性は、ここに示される例において、PCRマイクロアレイ研究中に報告した1組のプライマーが数種の他のクロモソームをもプライムするということで示される。
【0050】
従って、本発明は、HLAクラスI及びクラスII遺伝子座の増幅に有効なプライマーまたはプライマー対を提供する。例えば、一次PCR反応には、配列番号14−15のプライマーはクラスIHLA-A遺伝子座の増幅に有用であり、配列番号16−19のプライマーはHLA-B座の増幅に有用である。二次PCR反応においては、HLA-Aエクソン2及び3は、各々配列番号20−21及び配列番号22−26を用いて増幅してよい。HLA-Bエクソン2及び3は、各々配列番号27−28及び配列番号29−31を用いて増幅してよい。さらに、クラスII HLA-DRB1座は、配列番号32−37のプライマーを用いた一次PCR反応において増幅されてよい。HLA-DBR1エクソン2を増幅するには、配列番号38−47のプライマーを用いた二次PCRが有効である。これらのプライマーは、遺伝子を構成する全ての対立遺伝子の増幅に有効、すなわち、これらのプライマーは遺伝子特異的かつ対立遺伝子非特異的である。全増幅遺伝子中の対象とする対立遺伝子の精密構造は、本明細書で提供されるマイクロアレイ中のプローブに対するPCR産物のハイブリダイゼーションによって決定される。
【0051】
DNA検体は、乾燥血液のスポットから、口腔洗浄DNAから、指穿刺一回分10μlから、またはパラフィルム包埋薄切片から採取してよい。望ましくは、DNAサンプルは、「口腔洗浄」法によって採取された口腔DNAサンプル、または、Fitzco社製ダクロン口腔綿上に採取した口腔綿サンプルである(非特許文献21)。サンプルから抽出したDNAは、FTA紙(GenVault社、カールスバッド、カリフォルニア)に保存または保管してよい。この方法による処理FTA紙上へのサンプル固定は、分解のないPCRに適したDNAの保管、及び、その後の完全回収を提供する。
【0052】
本明細書で使用した短鎖オリゴヌクレオチドプローブの標的は、増幅されたDNAサンプルから転写された一本鎖DNA、または変性二本鎖PCR産物である。ここで記述した増幅方法は、標識付dsDNA PCR産物を生ずる。DNAは、修飾PCRプライマーまたはシス−プラチナ錯体と接合した色素を用いた簡単な一段階反応で、直接化学的に標識することができ(非特許文献22)、調節されたアルカリ処理で同時に加水分解することができる。これは、ハイブリダイゼーション用の均一に標識されたDNAを産生する。
【0053】
本発明は、DNAサンプル中の単一、または数箇所のDNA領域を増幅するのに適した、HLA対立遺伝子のフォワードプライマー及びリバースプライマーの1対以上のプライマーからなるキットも提供する。キットは、任意に、本明細書に記載のHLAプローブをもつ1つ以上のマイクロアレイを更に含んでよい。特に、これらのキットは、プライマー対と、任意にHLA-A、HLA-BまたはHLA-DRB1座とハイブリダイズし、どのSNPがサンプルに存在するか決定し、それによって個人または集団を遺伝子タイピングするよう設計されたマイクロアレイを持ってよい。さらにまた、キットはPCR反応用の緩衝剤及びポリメラーゼを含んでよい。
【0054】
特に、本発明は、血液、口腔綿または口腔洗浄から採取されたヒトDNAを使用する遺伝子タイピングまたは対立遺伝子タイピングの方法を提供する。回収したサンプルは、すぐに使われてもよいし、乾燥状態で保管してもよい。ここに開示されたプライマーを用いた遺伝子特異的PCRは、対立遺伝子の偏りのない精製DNA中の対象とするHLA遺伝子、例えば、HLA-A、-B、または-C、またはHLA-DRB1、または他のHLA遺伝子を増幅する。どのようなヒトDNAサンプルの正確な対立遺伝子型も、マイクロアレイ上の配列特異的プローブに対するハイブリダイゼーションのパターンを測定することによって決定される。ハイブリダイゼーションのパターンは対立遺伝子を決定する。
【0055】
以下の例は、発明のいろいろな実施例を例示する目的で挙げられており、本発明を如何なる形でも制限することは意図していない。
【実施例】
【0056】
実施例1
クラスI及びII HLA遺伝子座の増幅のためのプライマー
SNP特異的プライマーの設計アルゴリズムの検証
フォワードプライマー、5’GCTCCCACTCCATGAGGTAT3’(配列番号1)、及び、リバースプライマー、5’ATACCTCATGGAGTGGGAGC3’(配列番号2)は、クラスI HLA-B型エクソン2のPCR産物を増幅し、456塩基対の特異的生成物を産生するために使用された(非特許文献文献15)。ここに提示したアルゴリズムは、これらのプライマーが特異的で、クラスI HLA-B座エクソン2のみをプライムするかどうかを確認するために使用された。フォワードプライマーは、クロモソーム6中の11の他の位置に結合し、またクロモソームx中の1箇所にも結合すると決定された。クラスI HLA-B座エクソン2用リバースプライマーは、クロモソーム6中の5つの他の位置に結合し、かつクロモソーム4及び13中の1箇所にも結合することが見出された。クラスI HLA-Bエクソン3増幅用の別のプライマー、5’ACCCGGTTTACCCGGTTTCATTTG3’(配列番号 6)は、クロモソーム6中イントロン2、164−184位以外に8箇所、及びその他数クロモソームに結合することが見出された(表1)。表1は、下線で示したプライマーまたはプライマーの部分配列が、正しい場所以外で見出された回数を示す。アルゴリズム(19-20)は、プライマーのデザインが高分解度HLAタイピングを実行するために非常に重要であることを明白に示す。問題は、ヒト体液中に存在する他の細菌やウイルス由来の夾雑物の可能性によってさらに複雑になる。
【表1】
【0057】
HLA-B及びHLA遺伝子群の増幅用プライマーの設計
各HLA遺伝子の対象とする領域全域にわたる単純な500塩基対長のアンプリコン、及び一対の約250塩基対長の産物が作成された。これは、HLA-A、BまたはDRB1の単純PCRアッセイに適している。しかし、全HLA遺伝子群は、この方法によって設計された14または28対のプライマーを必要とするであろう。
【0058】
14のHLA遺伝子座、すなわち10のクラスI HLA座と4つのクラスII座の各々の対象とする超可変領域は、およそ500塩基対にわたる。したがって、プライマー設計の問題は、熱力学的に類似しているが、ヒトヒトゲノムと口腔DNAを汚染する可能性のある他のゲノムと比較して異なる、一組のフォワード及びリバースプライマーを見つけることである。プロセスを開始するために、およそ100塩基対の領域が、14箇所のおよそ500塩基対のHLA座の各末端で特定される。すべての可能な18−20残基のプライマーのセットが、これらの100塩基対領域用に、ここに記述される計算ツールを使用してすぐに得られる。およそ1400のフォワードプライマー及び1400のリバースプライマーからなるこのセットは、それから、同程度の計算熱力学安定性のサブセットを得るためにふるいにかけられる。次に、セット中の他のものとワトソン−クリック相補性を持つものを除去し、ヘアピン形成能を無くすために、さらにふるいにかけられる。
【0059】
残りのセットは、それからさらに、誤プライミング能を除くために18−20残基のヒトゲノムセットの残りと比較してふるいにかけられる。望ましいPCR産物は比較的小さいので、2000塩基対以下のPCR産物を生じるフォワードプライマーとリバースプライマーの可能なペアの会合以外に最も重点が置かれる。これは、2000塩基対を超える生成物を産生する擬似反応は非常に能率が悪いという、実際的な観察に基づいている。
【0060】
上記フィルタリングプロセスは、14のHLA座の各々につき数組の可能なフォワード/リバースの組合せを与えると予想される。これらのプライマー対は、96穴サーマルサイクラー環境で個々に試験され、生成物は、実験上最適な機能を発揮するサブセットを得るために電気泳動によって分析される。この最終段階のプライマー選別は、血液から得られた純粋なヒトDNA及び口腔洗浄法によって得られたヒト−非ヒト混合物の両者を用いて行われる。
【0061】
表2は、HLA-A、B及びDRB遺伝子座、及び特定されたエクソンの増幅に効果的な一次及び二次プライマーの代表的なリストである。
【表2】
【0062】
実施例2
クラスI及びII HLA遺伝子座の一次及び二次増幅
HLA-A及びB座及びエクソン2及び3
一次PCR反応では、HLA-A座用プライマー対A-LOC-FP1/A-LOC-RP1及びHLA-B座用プライマー対B-LOC-FP1/B-LOC-RP1は、種々のUCLA標準品、陽性対照及び陰性対照の増幅産物を生成するのに用いられた。PCRのプロトコルは、96穴プレート中で50μlの体積用である:94℃で4分間の前PCR変性1サイクル、98℃で1分、71℃で1分、72℃で1分のPCR35サイクル、72℃で7分の保持サイクル(ポリメラーゼ:ロシュ社製ファストスタートTaq)。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで35分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:C1-034、レーン2:C1-035、レーン3:C1-036 、レーン4:CCR1)、陽性対照(レーン5:ロッシュ社製DNA)、及び陰性対照(レーン6:H2O );最終レーンは質量標準である。ゲルはHLA-Aの980塩基対産物(図1A)及びHLA-Bの1007塩基対産物(図1B)を示す。
【0063】
二次PCR反応では、HLA-Ax2及びHLA-Ax3エクソン用プライマー対、A-X2--FP1/A-X2-RP1及びA-X3--FP1/A-X3-RP1が増幅産物を生成するのに用いられる。PCRのプロトコルは、96ウェルプレートで50μlの体積用である: 94℃で4分間の前PCR変性1サイクル、98℃で1分間、及び58.3℃、60.7℃、63.3℃、66.0℃、68.6℃または71.0℃のうち一つで30秒間のPCR35サイクル、72℃7分間の保持サイクル(ポリメラーゼ:ルシジェン社製エコノTaq)。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで45分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:Aex2またはAex3の陰性対照、レーン2: 58.3℃、レーン3: 60.7℃、レーン4: 63.3℃、レーン5: 66.0℃、レーン6: 68.6℃、レーン7: 71.0℃;図1C−1D)。
【0064】
二次PCR反応においては、HLA-Bx2及びHLA-Bx3エクソン用プライマー対、B-X2-FP1/B-X2-RP1及びB-X3-FP1/B-X3-RP1が、増幅産物を生成するのに用いられる。PCRのプロトコルは、96穴プレート中で50μlの体積用である: 94℃で4分間の前PCR変性1サイクル、98℃で1分間、及び60.7℃、63.3℃、66.0℃、68.6℃、71.0℃、または73.0℃のうち一つで30秒間のPCR35サイクル、72℃7分間の保持サイクル(ポリメラーゼ:ロッシュ社製ファストスタートTaq)。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで45分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:Aex2またはAex3の陰性対照、レーン2: 60.7℃、レーン3: 63.3℃、レーン4: 66.0℃、レーン5: 68.6℃、レーン6: 71.0℃、レーン7: 73.0℃;図1E−1F)。ゲルは、1018塩基対付近の生成物を示す。
【0065】
HLA-DRB1遺伝子座及びエクソン2及び3
一次PCR反応において、HLA-A座用プライマー対DRB-LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1及びHLA-B座用プライマーB-LOC-FP1/B-LOC-RP1は、増幅産物を生成するのに用いられる。PCRプロトコルは、96ウェルプレート中で25μlの体積用である: 94℃で4分間の前PCR変性1サイクル、98℃で1分間、及び55.2℃、56.5℃、58.3℃、60.7℃、63.3℃、66.0℃、68.6℃、71.0℃、73.0℃、74.4℃、または75.2℃のうち一つで30秒間のPCR35サイクル、72℃7分間の保持サイクル(ポリメラーゼ:ロッシュ社製ファストスタートTaq)。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで35分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:DRB1陰性対照、レーン2: 55.2℃、レーン3: 56.5℃、レーン4: 58.3℃、レーン5: 60.7℃、レーン6: 63.3℃、レーン7: 66.0℃、レーン8: 68.6℃、レーン9: 71.0℃、レーン10: 73.0℃、レーン11:74.4℃、レーン12: 75.2℃;図1G)。
【0066】
HLA-DRB1の増幅には、プライマー対の組み合わせが用いられた。PCRプロトコルは、96ウェルプレート中で25μlの体積用である: 94℃で4分間の前PCR変性1サイクル、98℃1分間、74℃で1分間、72℃で1分間のPCR35サイクル、72℃で7分間の保持サイクル(ポリメラーゼ:ロッシュ社製ファストスタートTaq)。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで35分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:DRB-LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1a、レーン2:DRB- LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1b、レーン3:DRB-LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1c、レーン4:DRB-LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1d、レーン5:DRB-LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1a、レーン6: DRB-LOC-FP1b/DRB-LOC-FP1a);最終レーンは質量標準である(図1H)。
【0067】
二次PCR反応は、HLA-DRB1エクソン2ゲノムDNAテンプレートを増幅するため、図1Gで述べた条件下 、プライマー対DRB-x2-FP1g/DRB-x2-RP1aを用いて行われた。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで35分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:DRB1ex2陰性対照、レーン2: 55.2℃、レーン3:56.5℃、レーン4:58.3℃、レーン5: 60.7℃、レーン6:63.3℃、レーン7:66.0℃、レーン8:68.6℃、レーン9:71.0℃、レーン10:73.0℃、レーン11:74.4℃、レーン12:75.2℃;図1I)。HLA-DRB1エクソン2ゲノムDNAテンプレートを増幅するため、図1Hで述べた条件下 、プライマー対の組み合わせを用いて行われた。増幅産物(10μlのサンプル)を、150ボルトで35分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:DRB-x2-FP1g/ DRB-x2-RP1a、レーン2:DRB-x2-FP1g/ DRB-x2-RP1b、レーン3:DRB-x2-FP1g/ DRB-x2-RP1c、レーン4:DRB-x2-FP1a/ DRB-x2-RP1a、レーン5:DRB-x2-FP1b/ DRB-x2-RP1a、レーン6:DRB-x2-FP1c/ DRB-x2-FP1a、レーン7:DRB-x2-FP1d/ DRB-x2-FP1a、レーン8:DRB-x2-FP1e/ DRB-x2-FP1a、レーン9:DRB-x2-FP1f/ DRB-x2-FP1a、レーン10:DRB-x2-FP1g/ DRB-x2-FP1a); 最終レーンは質量標準である(図1J)。
【0068】
実施例3
マイクロアレイ用プローブの設計
適切に設計されたマイクロアレイは、所定のミスマッチに対して全ての可能な最も近い類似体のハイブリダイゼーションパターンをテストするのに使用された。これは、どんな一塩基多型の競合も考慮する。3塩基の配列には64の組み合わせがあり、それらは、最も近い類似体中の中央塩基の対形成及び非形成によって研究された。これらの全ての組み合わせから得られた結果は、どのHLAサブタイプに対する一塩基多型の結合特性の予測も可能にする。これは、熱融解特性によるよりもはるかに優れた推定である。
【0069】
手短に言うと、HLA-Bモデルに関して、HLA-Bの既知対立遺伝子の多様性は、臨床的または疫学的価値のある137の多型を定義しており、従って完全なハイブリダイゼーション分析を行うには137の対立遺伝子特異的プローブが必要である。前記の通りマイクロアレイ製造に吸着法を使用すると、12−15塩基長のプローブで優れた単一ヌクレオチド特異性が得られる。末端偽効果を避けるため、算定した中心近傍、すなわち3位からN−2位に多型を含む、全て11−16塩基長の候補プローブ群が計算により生成された。このプローブ群は、完全に相補的な標的との結合において同一の計算熱力学的安定性をもつサブセットを得るため選別される。0.1M塩化ナトリウム中における55℃の計算値Tmを、その標準とする。
【0070】
一次選別を経たプローブ候補のサブセットから他の繰り返し配列中やHLA遺伝子座の他のどこかにも出現するプローブ候補を除去するため、残りのヒト遺伝子との比較による二次選別ステップが実施される。ハイブリダイゼーションはPCR増幅された標的について実施されるので、原理的にはこれ以上厳密である必要はない。しかし完璧を期すため、二次選別を経たものは、さらに本明細書に記載の微生物及びヒト以外の脊椎動物配列の1600のゲノムライブラリーの全てとの類似性をも分析される。これらのプローブが、マイクロアレイの製造に用いられる。
【0071】
特異的プローブの配列
表3−6は、各々HLA-A及びHLA-B遺伝子座エクソン2及び3用プローブの配列を特定する。オリゴ-Tフランキングセグメントは、フランキングセグメントがアレイ表面には吸着するが、溶液状態の標的核酸に対してほとんど、または全く親和性を持たないように、各プローブの3‘及び5’末端に導入される。プローブ認識サイズは約9−15塩基であり、オリゴ-Tセグメントは、全てのマイクロアレイプローブが最終全長30塩基長となるよう3‘及び5’末端の両方に付加された。
【表3】
【表4−1】
【表4−2】
【表5−1】
【表5−2】
【表6】
【0072】
実施例4
マイクロアレイの製造
マイクロアレイは、Belosludtsevらの方法を使用して製造される(非特許文献17)。手短に言うと、使用される基材は、界面活性剤を用い超音波槽中で洗浄(2分)後、蒸留水及びメタノールで洗浄し、乾燥(30分、40℃)したシリカスライドである。洗浄したスライドをラックに集め、(63.5cm)の25インチ水銀柱、70−80℃の真空オーブン中で終夜、50%シラン/p-キシレン溶液と平衡状態にある気相中で、3-アミノプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いてシラン化処理する。
【0073】
市販のオリゴヌクレオチド(ミッドランド・サーティファイド・リージェント社製、米国テキサス州ミッドランド所在)を、蒸留水中5μM溶液として1nl、マイクロアレイヤーを用いてアミノシラン化スライドのシラン化表面に置く。オリゴヌクレオチドを「印刷」後、スライドを40℃で15分間または室温で終夜乾燥し、55.88cm(22インチ)の水銀柱の真空オーブン中50℃で1時間、3mlの無水酢酸の3mlジメチルホルムアミド溶液を含むペトリ皿を設置することにより、気相の無水酢酸でキャップ化する。アセチル化したアミノ化スライドは、スライドを0.5Mコハク酸無水物DMF溶液のタンク中に室温で終夜漬けることによって、コハク酸無水物によってキャップ化される。スライドは、アセトン(3×)、蒸留水(2×)、そして再度アセトン(2×)中で洗浄することによってきれいにされる。品質管理として、蛍光標識オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション緩衝剤溶液30mlをスライド表面に置く。15分後背景が観察されなければ、スライドはハイブリダイゼーション実験に使用できる状態にあると考えられる。
【0074】
オリゴヌクレオチドの平面ガラス接着に関し、吸着法と共有結合法の比較を行った。共有結合は、当該技術分野における表面共有結合の標準的方法で末端2級アミン架橋を生成する、5'-アミノ修飾オリゴヌクレオチドとエポキシシラン化表面の反応によって得られた。実験上及び計算上の密度の比較は、吸着工程において高密度のオリゴヌクレオチド単分子層が形成される証拠を与え、鎖長依存性の研究は、36塩基長までのプローブで高密度プローブフィルムが形成できることを実証した。固定化標的の安定性と構造の更なる測定において、36塩基までの短鎖オリゴヌクレオチドについて、一本鎖DNAのリボン様の形態が表面上に形成されることが判明した(非特許文献23)。ハイブリダーゼーションの選択性と特異性は、表面に共有結合した、完全に直鎖状の一本鎖DNA分子と同様である。
【0075】
実施例5
サンプル採取及び抽出の検証
「口腔洗浄」法(非特許文献21)は、サンプルの採取に使用できる。このサンプル採取の技法は、大規模集団研究用の口腔由来DNAの採取、及び、地理的に分散した大規模集団研究からのサンプル収集に理想的である。「口腔洗浄」法は医学的指導を全く必要としない。この技法は、種々の温度条件にさらされても、サンプルを新鮮なDNAと比べて一週間無傷に保つことが示されている(図2A−2B)。
【0076】
簡潔に言うと、口腔細胞は、口腔洗浄液または他の生体適合性の液体で45秒間激しく口腔内を洗浄した後10mlの瓶中に吐き出すことによって採取される。瓶を封印し郵送する。到着したら細胞をペレットし、細胞ペレットを25℃でTris-EDTA及び1%SDSの溶液100μl中に、断続的に攪拌しながら1時間溶解する。この懸濁液は、GenVault要素に直接適用される(13μlずつ)。乾燥後、DNAは生理食塩水で2回洗うことによって単離され、この時DNAはまだ多孔性素子上に結合したままである。DNAはそれから、GenVault遊離緩衝剤中25℃で5分間洗うことによって遊離される。約1μg/要素の遊離したDNAは、これ以上精製することなくPCRに用いることができる。
【0077】
口腔細胞はFitzco社製のダクロン口腔綿を用いて採取することもできる。簡潔に述べると、右または左の頬から綿を採取し、綿の先端をマイクロ遠心チューブ内の回転かご中に置き、終夜空気乾燥してからふたをして保存する。必要なら綿チップは200mlのSRBを直接添加した後、55℃で4時間加熱することによって脱水する。それから、サンプルをかごから回収し、10,000Gで1分間遠心分離する。90%以上の液体回収率が得られる。得られた材料は、Argylla社製プレップパーティクル(PrepParticles)、またはQiagen社製のカラムでバッチ毎に、製造元の推奨する方法に従って処理できる。表7は、5人のボランティア各々について、口腔綿からFBIの着色抽出緩衝剤で抽出後、Argylla法(A)またはQiagen法(Q)処理におけるDNA収率を比較する。
【表7】
【0078】
図3Aは、2人のボランティアから口腔綿法によって抽出したDNAが、優れたHLA-BのPCR産物を与えることを実証する。UCLA標準品を、口腔DNAサンプル由来のPCR産物と比較さした。図3Bにおいて認められる通り、口腔綿採取物からのHLA-B特異的PCR反応は、純粋なUCLA参照標準品から得られたものと定量的に同様である。
【0079】
実施例6
画像分析とパターン認識
マイクロアレイのデジタル画像は、イメージアナライザー(ImageAnalyzer)なるソフトウェア中のアルゴリズムを用いて分析される。簡単に述べると、エッジ検出法は、画像からバックグラウンドを差し引き(図4A)、バックグラウンドよりも高い、予め定義された閾値において明確なパターンを作成する(図4B)ために使用される。HLA型決定のためのパターン認識と2次元バーコードの作成は、ハイブリダイゼーションスポットのパターンと、それらの各HLA型との位置的な相関関係に基づく。HLA型の各対立遺伝子は、決まったスポットパターンを有し、それはバーコードとして使用される。
【0080】
実施例7
K-rasモデル:吸着マイクロアレイ上における遺伝子タイピング及びSNPの検出
アンプリコンの生成とオリゴヌクレオチドプローブ
HLAタイピングに用いられるマイクロアレイは、K-ras遺伝子座の、一塩基多型によって野生型と異なる遺伝子型を成功裡に特定し決定するのに使用されてきた。152塩基対のK-rasアンプリコンは、ポリメラーゼ連鎖反応によって生成された。野生型アンプリコン(K-ras 1)は、市販のゲノムDNA原料(シグマ社製)の増幅によって得た。K-ras 2及びK-ras 7変異体は、各々、A549 及びSW480細胞株由来のヒトゲノムDNAの増幅によって得た。PCRの手順は以下の通りである: 94℃で12分間、60℃で1分間及び72℃で1分間の前PCRサイクル1回、95℃で1分間、57℃で1分間、72℃で1分間のPCR35サイクル、72℃で7分間、4℃で保持からなる保持サイクル。K-rasアンプリコン用PCRプライマーは、5’末端がジゴキシゲニンで標識されており、以下の配列を有する:
5’-DIG-ACTGAATATAAACTTGTGGTAGTTGGACCT-3’(配列番号292)、及び
5’-DIG-TCAAAGAATGGTCCTGCACC-3’(配列番号293)。K-rasアンプリコンは、コドン12に異なる点突然変異をもつ。特異的オリゴヌクレオチドは、マイクロアレイ捕獲プローブとして機能するよう表8に示すように設計した。下線を付したヌクレオチドは、点突然変異を示す。
【表8】
【0081】
ハイブリダイゼーション及びパターン検出
ナトリウムイオン濃度として150mMのコハク酸ナトリウムを含む前ハイブリダイゼーション溶液、Denhardtの5倍溶液、pH8.0は、10分以上アレイに適用された。この溶液を減圧除去し、ハイブリダーゼーション液(1nMアンプリコン、0.1mMシャペロン、ナトリウム濃度として150mMのコハク酸ナトリウム、Denhardtの5倍溶液、pH8.0)をアレイに適用した。これらの研究において、捕獲プローブK-ras 1、K-ras 2、及びK-ras 7に相補的なアンプリコンのみが使用された。2時間のハイブリダイゼーション後、アレイを、ナトリウム濃度で100mMのコハク酸ナトリウムで10分間ずつ2回洗浄した後、13SSC中で軽くすすいだ。ジゴキシゲニン標識されたアンプリコンは、ELF-97mRNA in situハイブリダイゼーションキット(ベーリンガー・マンハイム社製)のブロッキング緩衝剤中1:1000に希釈したアルカリフォスファターゼに結合した抗ジゴキシゲニン抗体の後、同キットの緩衝剤Aによる洗浄、及びアルカリフォスファターゼ基質であるELFのキット記載の通り適用して検出した。アルカリフォスファターゼによる切断後、ELF分子は沈殿し、UV励起により蛍光を発する。蛍光強度はアルファイメージャー2000装置で検出し、シグマプロット3.0ソフトウェアで処理した(図5A−5D)。
実施例8
HLA-B中のSNP検出
HLA-B検証モデル
UCLAは、HLA型既知の特性がよく明らかにされた75のDNAサンプルからなるライブラリーを収集し、世界中で参照標準品として使用される。この参照セットを入手し、参照セット中の配列バリエーションのより高分解度の理解のために、HLA-B超可変領域の配列を再分析した。図6A−6Bに示す通り、UCLA由来のデータは極めて正確で、配列の片側再分析に関し4−5の不一致しかない。
HLA-B標的の調製
HLA-Bエクソン2由来の500塩基対フラグメントは、試験的に精製したヒトゲノムDNAサンプルから上記のようにデザインされたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得られる。以下のPCR手順が、増幅500塩基対フラグメントの作成に使用される: 94℃で12分間、60℃で1分間、及び72℃で1分間の前PCRサイクル1回、95℃で1分間、57℃で1分間、72℃で1分間のPCR35サイクル、72℃で7分間、4℃で保持の保持サイクル。HLA-Bアンプリコン用のPCRプライマーは、T7ポリメラーゼ認識配列5’ ATGTAATACGACTCACTATAG 3’(配列番号317)を含むように修飾される。
【0082】
二本鎖PCR産物は、マイクロカラム精製により単離され、そして、HighYield RNA転写標識キット(Enzo Labs社製(米国ニューヨーク州ファーミングデール所在))を用いてビオチン標識したリボヌクレオチドの存在下インビトロで転写した。簡単に述べると、一本鎖cRNAを生成するためのインビトロ転写反応は、25%ビオチン化rUTPを含むrUTP画分を有する75mMのNTPs、10倍反応緩衝剤、T7ポリメラーゼ酵素(Ambion社製(米国テキサス州オースチン所在))の混合物を含む20μlの反応体積で行われた。反応混合物を、37℃で4時間インキュベートした。インビトロ転写されたビオチン標識付cRNAは、Qiagen RNeasyキット(Qiagen社製(米国カリフォルニア州バレンシア所在))によって精製され、定量され、そして1倍断片化緩衝剤(40mMトリス酢酸、pH8.0、100mM Kac、30mM MgAc)存在下、94℃で35分間断片化した。RNAの品質は、断片化前及び後ホルムアルデヒドアガロースゲルを用いて検査した。
【0083】
ハイブリダーゼーション及び検出
ナトリウムイオン濃度として150mMのコハク酸ナトリウム、5倍濃縮のDenhardtの溶液、pH8.0を含む前ハイブリダイゼーション溶液は、最低10分間アレイに適用される。前ハイブリダイゼーション溶液を減圧除去し、ナトリウムとして150mMのコハク酸ナトリウム、5倍濃縮のDenhardtの溶液、pH8.0中の標識付一本鎖cRNA標的を含むハイブリダイゼーション溶液が、HLAマイクロアレイとハイブリダイゼーションするようアレイに加えられた。2時間のハイブリダイゼーション後、アレイを、ナトリウムとして100mMのコハク酸ナトリウムで10分間ずつ2回洗浄した後、1倍SSC中で軽くすすいだ。 ストレプトアビジンと結合したフィコエリスリンが、cRNA標的上のビオチンに結合する(非特許文献22)。蛍光強度は、CCDを具えたマイクロアレイ画像化装置(Array Worx、API社製(米国ワシントン州イサクア所在))で検出する。
【0084】
HLA-Bチップ
図7A−7Fは、HLA-Bコドン9のハイブリダイゼーションデータを示す。このアレイにおいて、オリゴT フランキング配列を持たない9−12塩基長のプローブは右上に、対応するオリゴT含有30塩基誘導体はマイクロアレイの左にある。ハイブリダイゼーションは、UCLAのHLA参照DNAライブラリーから得られた既知配列バリエーション(サンプル72、21、27、57)の、Cy-3標識した281塩基対のネステッドPCR産物を用いて実施された。また、図7F−G には、ボランティア(MH、BI)から得た281塩基対産物に対するマイクロアレイハイブリダイゼーションのデータを示す。プローブ認識配列を一定に保つなら、オリゴTの付加は短鎖プローブ同族体に比べてハイブリダーゼーションシグナルが10倍向上する。
【0085】
図7Gにおいて、スポット強度は、コドン9用アレイ内で、手動で定量した。図7Gのデータは6群として提示される。最初の4群は、コドン9が既知対立遺伝子型のUCLA参照サンプルのハイブリダイゼーションデータに相当する。コドン9は3対立遺伝子であり、既知の対立遺伝子バリエーションを調べるには3種のハイブリダイゼーションプローブが必要であることから選ばれた。各群中、2組のプローブ型:「長鎖プローブ」、及び、特異性が向上するかどうか決定するために中央の配列特異的配列が1塩基ずつ減らされた「短鎖プローブ」がテストされた。重要なことに、4つのUCLA参照サンプル全てについて、測定された特異性はコドン9においてほぼ完全である(図7G)。これらのハイブリダイズすべき「スポット」は、UCLA標準品から予想される通り明白に検出される。単一ヌクレオチド分解能の特異性が、これらのプローブの10倍過剰、及びいくつかの例においては50倍過剰で認められ、曖昧さのない手を使わない分析を可能にする。
【0086】
ほぼ同等の特異性因子が、コドン50、図7Hにも認められた。図7E−7Fにおいて、マイクロアレイデータは口腔綿DNA由来である(MH、BI)。これらのサンプルはボランティアから得られた口腔DNAであり、HLA型は未知である。したがって、グラフ下の値は、これら2つのサンプルに対する外部検証ではなく「HLA予想」である:コドン9において、MHは見かけ上V2/V3ヘテロ接合体であり、BIはV2/V2ホモ接合体である。棒グラフは、図7A−7Dで4つのUCLA標準品がそうであったように、口腔DNAの明白に定義されたマイクロアレイ分析が、標準化された5ngのHLA-B特異的PCR反応から得られた。一口腔綿あたりのDNA収量は500−2000ngであるから、図7G−7Hのデータは、各口腔綿は100PCR当量以上のDNAを採取することを実証している。そのデータは、単純なデータ分析によって非常に明快なHLA予想が可能であることも示す。プローブは化学修飾されておらず、またオリゴTフランキング配列は物理的な「フィルター」であるから、これらのマイクロアレイのためのプローブ合成及び精製は非常に低コストのままである。
【0087】
実施例9
自動マイクロアレイシグナル分析
生画像(図7Aのような)から強度を抽出する前に、適切な格子作成技術の選択を行う必要がある(図8)。格子の構造情報はスポットの概算の位置を配置するために使用される。マイクロアレイスポットは中心の周りに対称であるから、最適化処理は、スポット近傍で最適なスポットの中心を探すように実行されることができる。生マイクロアレイ画像から始まり、格子作成過程は、生格子概算、局所的スポット中心調整、及び構造的スポット中心調整を含む。格子作成が完了した後、何ピクセルがスポットの一部とみなせるかを決定する必要がある。半径R(ピクセル単位で測定)なら、スポットを囲む2R+1の大きさの四角形が容易に構築できる。ピクセルがスポットの内側かどうかを決めるには、図7A−7Fに例示したように、あるピクセルと四角形の中心ピクセルとの距離Dを計算し、それが半径Rよりも小さいか同じであるかを見る。各ピクセルの情報を保存するのに効率的なデータ構造を利用することにより、上記の方法はあまり大きくないメモリーと計算時間で何千ものスポットを含むマイクロアレイ画像を取り扱うことができる。
【0088】
図7A中の典型的なスポットは、半径15(ピクセル)をもち、スポット中あると見なせるのは709ピクセルである。各スポットの境界を厳密に定義し、あるスポットに含まれるピクセルの強度が、スポットのシグナルに変換された。利用される測定基準は、s個の最も強いピクセルが考慮から除かれた後の、スポットのn個の最も強いピクセルの算術平均である。そのようにする事によって、強度値中のスパイク、ノイズ、ホコリ、及び他の無関係な因子が関与するエラーが除かれる。S及びnの選択は、画像の特性を反映すべきである。
【0089】
プローブは、12のUCLAサンプルに対し、同じ30塩基の改良プローブと共にテストされた。各テストの結果は図7Aに例示したのと同様の画像である。この技法がSNP予測の実施において成功であるという統計的に適切な説明をするために、異なる画像(サンプル)から得た同一プローブのシグナルを合わせた。これは、画像間の信号の標準化を必要とした。実験の性質から、HLAタイピングの画像は、ほとんどの場合、2極化された強度のスポットを含むと予期される(プローブがサンプル中に存在すれば、対応するスポットは極端に強い強度をもつ。一方プローブがサンプル中にないときは、対応するスポットは極端に弱い)。極端な強度をもつスポット数は、プローブとサンプルに特異的である。画像の特性にあわせるための洗練された標準化スキームが、HLAタイピングに選ばれた。それは、極端に高強度のスポットの代表例としてマーカースポット(図7Aの左下の6個の明るいスポット、典型的にはそれらはピクセル当り8ビットのフォーマットの画像において255の強度をもつ)の算術平均をとる。背景ピクセルの算術平均強度は、極端に弱いスポットの代表例として選ばれた。そして、画像の範囲は、マーカースポットと背景の算術平均の差と定義された。 画像は、各画像が標準化後同じ測定範囲を持つように標準化した。
【0090】
次に、各プローブの標準化データは2つのセット、すなわち存在セットと不在セット、に分けられた。プローブ存在セットは、プローブが存在する画像(サンプル)のシグナルを含む。一方、不在セットはプローブが存在しない画像(サンプル)のシグナルを含む。各プローブの存在セットと不在セット間で、マン−ウィットニーU検定を実施した。得られた両側検定p値は、2%から5×10-7%の範囲であり、これはプローブがサンプル中に存在するときと存在しないときのシグナルの差が、2%のレベルで統計的に有意であることを示す。これらの分析は表9に示す。検定のU統計は44であり、これはセットのサイズが22及び2の時に最大であり、すなわち、2.16×10−2がセットサイズ22及び2に対する最小のp値である。
【表9】
【0091】
マイクロアレイ画像がイメージアナライザーとデータ分析法を利用してSNP予測に変換された後、SNP予測は対立遺伝子予測に自動変換される。正確で確固たる対立遺伝子予測は、HLAチップ上の最終的な組織化したプローブのセットの以下の性質によって可能となる:(1)考慮中の各対立遺伝子はある一定の数以上のプローブによって検出可能でなくてはならない;(2)どんな2つの対立遺伝子を決定するサブセットは、ある一定数以上のプローブによって異ならなければならない。
【0092】
対立遺伝子予測は、ディシジョンツリーに基づく方法で実施される。例えば、i p , k i ,..., 1 = 個々のプローブの存在または不在であるとき、( )k p p P ,... 1 = SNP 予測の結果とする。j a , n j ,..., 1 = 個々の対立遺伝子であるとき、{ } n a a A ,... 1 = 考慮する全対立遺伝子とする。i A, k i ,..., 1 = プローブiによって同定し得る対立遺伝子のセットを示す、すなわち、i p = 存在であるとすると、i A 中に最低1対立遺伝子が存在すること、あるいはその逆が予期できる。対立遺伝子予測ディシジョンツリーを、図9に例示する。ツリーの各節は、決断の現段階に存在しそうなAの部分集合を示す。ツリーの根はAである。各々の葉は、サンプル中に存在すると決定された対立遺伝子の最終的な集合である。サンプルのSNP予測では、サンプル中に存在する対立遺伝子の集合は、各プローブの存在/不在に基づいてディシジョンツリーを根から一つの葉に向かって辿ることによって決定される。対立遺伝子予測の過程は今、単純なツリー移動であり、それは「HLAチップ」上のプローブ数に比例する時間複雑性をもつ。従って、SNP予測は、標準的なデスクトップPC(1GHzのCPU及び1GBのRAMを装備)上、秒単位の時間のうちに対立遺伝子予測に変換することができる。対立遺伝子の最終集合が空である可能性もあり、そのような場合は、考慮すべき対立遺伝子の集合について可能な全てのパターンとも異なるハイブリダイゼーションパターンに遭遇したことを意味する。この場合、サンプルは新規対立遺伝子を含むことが疑われ、追加実験、あるいは配列分析に付すべきである。
【0093】
実施例9
科学的興味のあるHLA対立遺伝子決定のための知識に基づいた文献スクリーニングツール
10,000以上のHLA対立遺伝子が知られているが、最も臨床上優位なHLAチップを開発するには、全対立遺伝子のうち科学的関心が最も蓄積した部分に集中することが重要である。その様な対立遺伝子を決定するための知識に基づく文献スクリーニングツールは、PubMedデータベース内の引用によって定義される様に本発明において開発された。一次知識ベーススクリーニングに基づき、約210の対立遺伝子が最も潜在的関心が高いものとして特定された。有意性の測定は、対立遺伝子名を検索語句としてPubMed検索を実施した時のヒット数である。Entrez PubMedは、一般的なウェッブ質問インターフェイスの外のEntrezデータにアクセスを許可するため、eUtilsとして知られる7つのサーバー側プログラムを提供する。EsearchはeUtilの一つで、主ID及び用語翻訳を検索・回収し、ユーザーの環境において将来使用するために結果を保持しておくことも出来る。それは、相対日時、日時範囲、回収モード、ソート順位等の異なるオプションに基づいてIDを回収する。各検索語句用にeUtilのURLをNCBIに通知するスクリプトが、HLA対立遺伝子を検索するために書かれた。それは、PubMed収載のタイトル、要旨、及び全文内に検索語句を探す。スクリプトは、XMLフォーマットの結果を回収する。XMLファイルの「カウント」タグに含まれている各検索語句に対するヒット数は、ファイルを構成要素に分析する事によって得られる。その様な検索は、21のHLA遺伝子由来の対立遺伝子に対して実施した。表10は、21対立遺伝子引用の自動PubMed検索の結果を列挙する。
【表10】
【0094】
表9は、2179対立遺伝子中105が、PubMed内で2以上の引用をもつ。210は、一以上の引用がある。最も重要と認められた、すなわち2以上の引用があった105対立遺伝子について、アメリカ合衆国内の4つの重要な集団における頻度情報を収集した。このリストは、ワクチン応答におけるHLAの役割に関する現在の理解に関してさらに編集することが出来、元来の210対立遺伝子候補由来の対立遺伝子群を特定する、約10のPCR反応と400のSNP特異的プローブが設計されるであろう。これらは、HLAチップとそれに伴うサンプル処理プロトコルを構築するための原材料となる。全210のPubMed内で「一以上引用」される対立遺伝子は、図10中のチャートに列挙する。右側にPubMed引用数を列挙する。
【0095】
実施例10
HLAチップ用候補プローブの選択
IMGT/HLAデータベースは、各HLA遺伝子座の複数の整列を提供する。整列した配列は、SNPが明白に印付けられるようなフォーマットである。SNPは、ある対立遺伝子を他とは異ならせるものである。SNPの組合せは、対立遺伝子を特異的に示すことができる。簡単な計算から、HLA-Bエクソン2中には125、エクソン3には93のSNPがあり、各々553及び562の対立遺伝子をコードしていることが知られている。SNPが起こる各位置において、SNPの周囲の短いn量体(13−15ヌクレオチド長)は、候補プローブ配列のテンプレートから除かれる。単純テンプレートと複合テンプレートの2種類のテンプレートがある。単純テンプレートは、ただ一つのSNPを含む。例えば、エクソン3中36位にSNPがあり、両側6ヌクレオチド以内に他のSNPはない。中央のSNPとその両側の6ヌクレオチドから成る13残基のテンプレートが、このSNP用に作製された。テンプレートは、5’-TGCGACXTGGGGC(配列番号318)であり、ここでXはSNPを示す。対立遺伝子B*7301では、この場所は「A」である。対立遺伝子B*0712及び他の126対立遺伝子においては、「C」である。参照対立遺伝子を含む残りのHLA-B対立遺伝子においては、「G」である。従って、A-、C-、G-多型をもつ 3種のプローブ候補がこのテンプレートから作製された。この場合、対立遺伝子B*0712及びSNP位に「C」をもつ他の全対立遺伝子は、C-多型をもつプローブ候補により特定されるといわれる。同時に、対立遺伝子B*7301は、A-多型をもつプローブ候補によって特定される。
【0096】
複数のSNPは、隣接して、あるいは非常に短い距離内で起こることがあり、それらは同じテンプレート内に入る。その様なテンプレートは、複合テンプレートとして知られている。エクソン3中の254位からスタートする13残基は、複合テンプレートの一例である。それは、260位と一ヌクレオチド間に挟んだ位置に2つのSNPを含む。複合テンプレートは、5’-GAAGGAXAYGCTG(配列番号319)で、X及びYは2箇所のSNPを示す。SNPの組み合わせが考慮された。3つのプローブ候補が、このテンプレートから作製された。31対立遺伝子がC-及びC-多型をもつプローブ候補によって特定される。478対立遺伝子がG-及びC-多型をもつプローブ候補によって特定される。参照対立遺伝子を含む残りのHLA-B対立遺伝子は、C-及びA-多型をもつプローブ候補によって特定される。
【0097】
次のステップにおいて、残りのヒトゲノム、及び臨床サンプル中に1、2、または3ミスマッチを伴って出現することが予期される〜1000の微生物中に現れる候補プローブ配列を、更なる考察によって取り除くことが出来る。これは、「バックグラウンド−ブラインド」技術として知られる、最近開発された計算能力によって可能となる。その新技術は、ヒトゲノム並の配列(3ギガ塩基)中の22ヌクレオチド長までの全部分配列(n残基)の存在/不在の妥当な時間内での正確な分析の実行を可能にする。さらに、(BLASTに基づくプローブ/プライマーデザインアプリケーションのような伝統的な発見的教授法に基づく整列と対照的に)対象とする各配列由来の1、2、及び3のミスマッチを伴う全ての部分配列の厳密な考慮を可能にする。
【0098】
図10に示すようなマスターリストが与えられる場合、上記の計算はSNP特異的プローブの「完全セット」及び「最小セット」の作製を可能にする。「完全セット」は、図10のようなマスターリストの全対立遺伝子中の全SNPを特定する、非常に冗長な全プローブの集積である。「最小プローブセット」は、完全セットが特定するのと同じ対立遺伝子を特定することが出来るが、それを最小数のプローブで行う。この最小化は、完全セットから系統的にプローブ(SNP部位)を除去することによって行われるだろう。各ステップで、アルゴリズムが除去するプローブを選ぶ。選んだプローブ以外の残りのプローブセットが、マスターリスト中の同じ対立遺伝子セットを特定できるならば、この特定のプローブは、分析範囲を損なうことなく除くことが出来る。そうでないときは、アルゴリズムは別のプローブを選択し、上記過程を繰り返す。セット中のどのプローブを除いても特定できる対立遺伝子が減少すると、止まる。この時点で、プローブセットは最小限である。この最小限のセットに、単一の対立遺伝子を特定するプローブが対照として加えられる。2サンプルの対立遺伝子が与えられると、これらのプローブセットは2サンプル間の相同性、すなわち、どの対立遺伝子が両方のセットに存在するか、の測定に使用できる。これは、2個人間の適合性が対象とされる注目点である、移植に非常に有用であり得る。その他の場合には、個人間の違いを特定し得る。例えば、2人の患者が、HLA遺伝子の違いによって、同じ薬物または治療に対して異なった反応をする可能性がある。これは、最適セットの概念の背後にある主な動機である。一組の対立遺伝子の最適プローブセットは、最小数のプローブでその中の各対立遺伝子を特定することができる。最適セット生成のためのディシジョンツリーに基づくアルゴリズムを、開発可能である。
【0099】
実施例11
対象とする遺伝子座を増幅するための最適PCR数
表9は、10の対象とする遺伝子座を増幅するのに要する、一次及び、いくつかの例については二次PCR反応のおよその数を示す。一次及び二次(ネステッド)PCRの両方とも、A、B、Cに必要であろう。3つの一次PCRは多重進行により一つの反応にでき、その後、ネステッドステップの第2の多重反応が続く。 従って、クラスI遺伝子の全セットに、2つのPCR反応だけが必要である。
【0100】
全クラスII遺伝子(表11)に対して1つのエクソンしか、クラスII遺伝子の主要SNP種の分析には必要ない。必要なら、純粋に単離されたDRB1に対してネステッドPCRを適用してよい。DPA1、DPB1、DQA1及びDQB1は、偽遺伝子と区別するのにネスティングを必要としないかもしれない。DRB1の一次PCRが多重進行できれば、クラスII増幅は一つの一次PCRと一つの二次PCR反応で達成することが出来る。
【表11】
【0101】
本明細書で言及したいずれの特許または出版物も、本発明が関係する分野の当業者の水準を示す。さらに、これらの特許及び出版物は、個々の出版物が具体的かつ個別に参照によって収載された場合と同等に、本明細書に参照することにより援用する。
【0102】
当業者は、目的を達成し、記載された目標と利点を獲得することを目的として、本発明を、うまく適合させ、また、本明細書に固有の目的、目標及び利点を容易に認識するであろう。請求項の適応範囲によって定義されるような、本発明の精神の範囲内に含まれる変更及び他の用途は、当業者の考え得るところであろう。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1A】HLA-A遺伝子座の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1B】HLA-B遺伝子座の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1C】HLA-Aエクソン2の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1D】HLA-Aエクソン3の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1E】HLA-Bエクソン2の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1F】HLA-Bエクソン2の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1G】HLA-DRB1座の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1H】HLA-DRB1座の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1I】HLA-DRB1エクソン2の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1J】HLA-DRB1エクソン2の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図2A】「口内洗浄」法により採取しFTA紙上に保存された5個の口辺サンプルのDNA抽出物からPCRによって増幅された558塩基対のアンプリコン(図2A)が、無損傷であり、血液サンプル由来の、抽出されたばかりのヒトDNA(図2B)と同様であることを示す。DNAを抽出後、FTA紙カード上に保存し、その後GenVault(GenVault社(米国、カリフォルニア州、カールスバド所在))のDNA溶出製品によって溶出した。PCR増幅は標準的方法により実施し、アガロースゲル上で分析した。各レーンは10ngのDNA原材料由来のPCR増幅産物を含む。558塩基対アンプリコンを産生するDNAサンプルを添加した陽性標準品をレーン6に示し、レーン7にはアンプリコンは添加されていない。1キロ塩基対大のマーカーをレーン8に示した。
【図2B】血液サンプル由来の、抽出されたばかりのヒトDNA抽出物からPCRによって増幅された558塩基対のアンプリコン。手順は図2Aに準じた。
【図3A】Fitzco社製ダクロン材の口腔用綿を用いて得た558塩基対アンプリコンのゲルを示す。レーン2−4はArgylla社製プレップパーティクルを用いて回収したDNAを示し、レーン5−7はQiagen社クリーンアップカラムを用いて回収したDNAを示す。レーン1は分子量マーカーである。ゲルは、レーンあたりPCR産物の1/10を持つ。レーン1は、分子量マーカーである。
【図3B】特異的プライマーと、4種のUCLA参照標準59、15、20、及び45と、2人の自発提供者(MH及びBI)の口腔綿付着物から抽出したDNAとを用いたPCR産物を示すゲルである。ピコグリーン(サンプルの1/100-1/200当量)によって評価される通り、各DNAはHLA-Bエクソン2を増幅して281塩基対のアンプリコンを産生するネステッドPCRに使用された。ゲルは、レーンあたりPCR産物の1/10を持つ。レーン1は、分子量マーカーである。
【図4A】部分的に損傷したマイクロアレイ画像を示す。スポット格子は、円でマークされている。
【図4B】マイクロアレイ画像の先進的自動画像解析におけるソフトウェアパッケージ「画像分析器」の効果。画像分析器によるフィルタリング、背景補正、精密な格子作成後の図4Aと同じ画像を示す。スポット格子は、円でマークされている。
【図5A】K-ras 1、K-ras 2及びK-ras 7に表5に示す捕捉プローブを使用したハイブリダイゼーションの結果を表すマイクロアレイパターン。図5Aは、すべての野生型の標的及び変異体2−5のハイブリダイゼーションを示す。パターン認識は視認であった。
【図5B】K-ras 1、K-ras 2及びK-ras 7に表5に示す捕捉プローブを使用したハイブリダイゼーションの結果を表すマイクロアレイパターン。図5Bは、ホモ接合性野生型の結合を示す。パターン認識は視認であった。
【図5C】K-ras 1、K-ras 2及びK-ras 7に表5に示す捕捉プローブを使用したハイブリダイゼーションの結果を表すマイクロアレイパターン。図5Cは、ホモ接合性変異体7の結合を示す。パターン認識は視認であった。
【図5D】K-ras 1、K-ras 2及びK-ras 7に表5に示す捕捉プローブを使用したハイブリダイゼーションの結果を表すマイクロアレイパターン。図5Dは、野生型と変異体2を含むヘテロ接合性標的サンプルの結合特性を示す。パターン認識は視認であった。
【図6A】UCLA参照配列、配列再分析及びHLA‐Bチップからの主要パフォーマンスデータの比較。灰色のセルは、UCLA対立遺伝子型である。太字のセルは一方または両方の対立遺伝子のアレイアッセイを示し、下線を付したセルはアレイがUCLA対立遺伝子型と一致しないことを示し、斜体のセルは配列分析がUCLA対立遺伝子型と一致しないことを示す。その他のセルはUCLA対立遺伝子型と100%一致する結果を示す。
【図6B】UCLA参照配列、配列再分析及びHLA‐Bチップからの主要パフォーマンスデータの比較。灰色のセルは、UCLA対立遺伝子型である。太字のセルは一方または両方の対立遺伝子のアレイアッセイを示し、下線を付したセルはアレイがUCLA対立遺伝子型と一致しないことを示し、斜体のセルは配列分析がUCLA対立遺伝子型と一致しないことを示す。その他のセルはUCLA対立遺伝子型と100%一致する結果を示す。
【図7A】UCLA参照サンプル72のHLAマイクロアレイ画像。
【図7B】UCLA参照サンプル21のHLAマイクロアレイ画像。
【図7C】UCLA参照サンプル27のHLAマイクロアレイ画像。
【図7D】UCLA参照サンプル57のHLAマイクロアレイ画像。
【図7E】ボランティアMDの口腔綿付着物由来DNAのHLAマイクロアレイ画像。
【図7F】ボランティアBIの口腔綿付着物由来DNAのHLAマイクロアレイ画像。
【図7G】コドン9の最上段パネルのアレイ中でのスポット強度の定量化を例示する。図7G中のデータは、6つのクラスターとして提示される。最初の4クラスターは、コドン9に既知対立遺伝子型をもつUCLA参照サンプルのハイブリダイゼーションデータに相当する。各クラスター中、オリゴT配列を両側に含む「長鎖プローブ」、及び、特異性が向上するかどうかを決定するために、中央の配列特異的配列を一塩基ずつ短くした「短鎖プローブ」の、2種のプローブがテストされた。
【図7H】HLA‐Bコドン50に関する、同様の長鎖プローブ(外側セグメントをもつ)と短鎖プローブ(外側プローブをもたない)を用いたハイブリダイゼーションの結果。
【図8】スポットサイズを測定する過程の例示。(A2 + B2)の平方根をDとして、D≦Rのとき、Pはスポットの一部とする。
【図9】ディシジョンツリーを用いた対立遺伝子型判定法を例示する。左矢印は上の菱形中の条件が真であることを示し、右矢印は上の菱形中の条件が偽であることを示す。
【図10A】PubMedデータベースの自動検索によって特定された210個のHLA対立遺伝子をリストしたチャート。黄色の網掛け部分は、その対立遺伝子型がUCLAクラスI群中に存在することを示す。緑色の網掛け部分は、その対立遺伝子型がUCLAクラスII群中に存在することを示す。オレンジ色の網掛け部分は、その対立遺伝子型が、より高分解能またはより低い非コード分解能でUCLA群中に存在することを示す。青色の網掛け部分は、その対立遺伝子がいずれのUCLA群にも見られないことを示す。
【図10B】PubMedデータベースの自動検索によって特定された210個のHLA対立遺伝子をリストしたチャート。黄色の網掛け部分は、その対立遺伝子型がUCLAクラスI群中に存在することを示す。緑色の網掛け部分は、その対立遺伝子型がUCLAクラスII群中に存在することを示す。オレンジ色の網掛け部分は、その対立遺伝子型が、より高分解能またはより低い非コード分解能でUCLA群中に存在することを示す。青色の網掛け部分は、その対立遺伝子がいずれのUCLA群にも見られないことを示す。
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2006年2月27日出願(放棄済)の米国仮特許出願第60/777,078号の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、マイクロアレイ技術と集団遺伝子タイピングの分野に関係する。より具体的には、本発明は、フィールド環境で即時ハイスループット集団HLA遺伝子タイピングを行う携帯システムと方法に関係する。
【背景技術】
【0003】
バイオテロリズムと軍事上の関心から、米国国防省は、高速、柔軟かつ高生産性のワクチン開発法に重点投資した。最近の研究は、基礎免疫学が予測したこと、すなわち大規模な暴露集団内において感染に対する各個人の反応及びワクチンに対する各個人の反応は、HLA型によって大きく変化し得るということを立証し始めた(非特許文献1−2)。しかし、HLAタイピングが感染症の疫学またはワクチン開発の臨床疫学の一部として実行されるにはあまりに高価であることもあり、そのような研究は現在までほんの僅かしか実行されていない。さらに、国防の観点からは、たとえHLA型と感染またはワクチン応答の関係について完全な知識が得られ、また、たとえ「カスタマイズされた」ワクチンがHLA型に基づいて利用可能となったとしても、現在のHLAタイピング技術は、迅速なフィールド応答能力に欠け、集団規模の非常事態において実施するには高価かつ複雑すぎる。
【0004】
病原体やワクチン接種に対するヒトの免疫応答は、HLA遺伝子座に依存する。病原体に対する応答は、HLA遺伝子座にコードされる2つの別々のクラスの多型細胞表面糖タンパク質による(非特許文献3)。HLAクラスI分子は、細菌やウイルスの感染により細胞質に存在する内在性抗原を認識し、それを、感染細胞を殺すCD8+細胞傷害性Tリンパ球に提示する。HLAクラスII分子は、外来エピトープを抗原提示細胞の表面に提示することによって、感染細胞をCD4+ヘルパーT細胞のために標識し、侵襲する病原体に対する免疫応答を引き起こす。エピトープ−HLA結合相互作用に必要な多様な特異性は、HLA遺伝子座の広範な多型性に依存する。
【0005】
HLA遺伝子座の多型性は、組み換え、遺伝子変換、突然変異、及び病原体や感染症に応答したそれらの自然淘汰によってもたらされる(非特許文献4)。それゆえ、HLA対立遺伝子の多様性は、感染性及び病原性因子に対する集団規模におけるヒトの応答及び抵抗能力を強化する。HLA多型性は、いくつかの疾病と、最も最近ではエイズウイルスに対する抵抗性と関連付けられている(非特許文献5)。大部分のウイルスワクチンは低用量のウイルス表面抗原であるので、そのような予防接種に応答する能力は、HLA遺伝子座の多型性に依存する。例えば、ハプロタイプHLA-B8、SC01、DR3は、B型肝炎ウイルス表面抗原への応答遺伝子を欠く(非特許文献6)。予防接種の開発には、HLA型を発見し、全既知ハプロタイプについてワクチン応答を分類することが不可欠である。
【0006】
従来の血清学的方法によるHLAタイピングは、一塩基多型による構造の相違を同定するための対立遺伝子特異的な血清の有無に制限されていた(非特許文献7)。従来法で使用される抗体は、HLA表面に特異的である。しかし、単一または複数のヌクレオチド多型に起因するHLA重鎖のペプチド結合溝構造の違いは、抗体法を使用して容易に確認することは出来ない。
【0007】
核酸法は、配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ(SSOP)または配列特異的プライマー(SSP)を利用する。配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ法は、個々のDNAサンプル、または配列特異的オリゴヌクレオチドプローブを多様性の同定に使用する(非特許文献8)。現在のプライマー設計方法は、BLAST様の単純な整列に依ってプライマーを同定しており、特有なプライマー集の発見において常に良好に機能するわけではない。遺伝子座特有と同定された個々のプライマーは全遺伝子座の増幅に使用され、特異的プローブは多型の特定に使用される。
【0008】
これらは低−中程度の解像度の段階的方法であり、特異的プローブを用いてさらに探査することによって高解像度が達成できる。この方法には、DNAサンプルを膜担体に固定し、標識付配列特異的オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせて固定化サンプル中の多型を特定するドットブロット、または、配列特異的オリゴヌクレオチドプローブを固定化し、標識付DNAサンプルを配列特異的オリゴヌクレオチドプローブに加えて多型を特定する逆ドットブロットの2つのバージョンがある。配列特異的オリゴヌクレオチドプローブの固定化は数種の多型のテストを可能にするのに対し、DNAサンプルの固定化は数種のサンプルをある特定の多型に対して検定することを可能にする。
【0009】
配列特異的プライマー法は、各々の多型に特異的なプライマーを使用する(非特許文献9)。一遺伝子座の分析に要するプライマー数は、その特定遺伝子座中の多型数によって決まる。通常、HLAタイピングを完了するには多数のPCR反応が必要である。これは、多型性の有無がPCR生成物の増幅を引き起こす、PCRに基づく方法である。PCR生成物の有無は、簡便なゲル電気泳動を用いて確認することが出来る。PCR反応は、保存領域を増幅する陽性対照プライマーを含む。
【0010】
他の方法は、構造に依拠するか、あるいは配列決定法を用いる。構造に依拠した多型特定方法は、輪状にはみ出した領域を持つ配列にミスマッチのある二本鎖は、配列にミスマッチのない二本鎖とは非変性ゲル中での移動が異なるという事実に基づいている(非特許文献10)。DNA配列決定の自動化に伴い、HLAタイピングは配列決定機でなされた(非特許文献11−12)。その方法論は、多型数とエクソン数に依存している―例えば、HLAクラスIIに関しては、多型は数百塩基を持つエクソン2中にある。対照的に、クラスIタイピングには、多型性は数エクソンの配列分析を要し、それゆえ、より複雑となり、誤った結果を与えることがある。
【0011】
HLA型の一塩基多型は、対立遺伝子のいくつかのサブタイプによって共有されている。このことは、従来法の使用において曖昧さの原因となることがある。交差ハイブリダイゼーションに起因するこの問題を解決するには、遺伝子多型についての知識と結びついたプローブとプライマーとの組み合わせが重要である。それゆえに、単純なSSOPまたは配列特異的プライマーハイブリダイゼーションは、HLA型の特定に至らないことがある。
【0012】
HLA型の正確な特定は、いくつかのサブタイプ用のプローブの組み合わせのパターンを注意深く精査することによって行われる。PCRに依拠する方法、またはドットブロット法は、多量の検体を必要とし、非常に高コストとなる。従って、より少ないサンプル量を要し、無駄のない小型化された技術が必要である。マイクロアレイとパターン認識ソフトウェアとの併用は、明白にHLA型を同定するための2次元バーコードを生成するための、そのようなプラットホームを提供する(非特許文献13)。
【0013】
マイクロアレイは、HLAタイピングにおけるハイスループット要求性を完全に満たす。マイクロアレイは、小型化の利便性と、単一の実験で何千ものハイブリダイゼーションを実行する能力を提供する。マイクロアレイは、その高度な並列処理性と特徴的なフォーマットにより、フィールド使用に完全に適している。これらの潜在的利点にも関わらず、マイクロアレイはフィールドHLAタイピング用に完成されていない。コスト、品質及び携帯性は、制限因子の一つで、製造方法に依存する。
【0014】
現在の市販マイクロアレイは、特殊な染色剤を使用し、かつ特殊な画像化装置を使用する必要がある。理想的には、画像化装置は、どんな染色剤の像も画像化することが出来るべきである。また、現在市販されている画像化装置は携帯できない。その上、現在の分析キットは、どれも使用が厄介で、パターン同定の一部は手動で行う必要がある。
【0015】
対立遺伝子の異型の発見のための最初のオリゴヌクレオチドマイクロアレイは1989年に報告された (非特許文献14)。配列特異的オリゴヌクレオチドプローブはナイロン膜上に染み込まされ、DNA検体のビオチン化されたPCR産物とハイブリダイゼーションされた。対立遺伝子の遺伝子型は、スポットの染色強度によって同定された。最近になって、別の研究は、クラスII多型の対立遺伝子バリエーションの同定のための、130種のプローブからなるDNAマイクロアレイの使用を報告した(非特許文献15)。マイクロアレイが中−高分解度HLAタイピングに応用できることは明白であるが、その技法は現形ではまだいくつかの技術的及び経済的制約を受ける。
【0016】
その上、例えば配列特異的オリゴヌクレオチドプローブの様な従来法を用いる場合、DNA検体は二重鎖であり、プローブは一本鎖である。二重鎖産物の存在は、ハイブリダイゼーションの効率を低下させる。T7またはT3ポリメラーゼ配列は、試験管内転写によって一本鎖の標的分子をつくるのに用いられてきた。RNAの標識は困難であり、それゆえに、全ての産物が標識されるよう、増幅法にはビオチンまたは蛍光色素で末端標識されたプライマーを利用する。ビオチンの存在は、増幅手順に影響を与えることもある。
【0017】
さらに、集団HLAタイピングの実施上の重要な制限は、検体の収集である。従来のサンプル収集方法は、侵襲的技法による10−15mlの採血が中心であった。この収集形式は、分解、汚染及び不正確な結果につながる。このように集められた血液サンプルは、HLAタイピングの費用と実務の複雑さを増す大規模な処理、保管及び輸送の問題を要する。採血法に関する処理と収集の問題に加えて、単離したDNAの保管が問題となる。従って、集団HLAタイピングのためのどんな技術も、サンプル収集及び抽出されたDNAの保管の互換法がなければならない。
【非特許文献1】Charron, D. (1997) Genetic Diversity of HLA: Functional and Medical Implications. EDK, Paris, France
【非特許文献2】Marsh, et al. (2000) HLA FactsBook. Academic Press, London, UK
【非特許文献3】Trowsdale and Campbell (1992) Eur J Immunogenet. 19, 45-55
【非特許文献4】Little, A. M. and Parhams P. (1999) Rev Immunogenet. 1999, 105-123
【非特許文献5】Trachtenberg, et al. (2003) Nat Med., 9, 928-935
【非特許文献6】Kruskall, et al. (1992) J Exp Med. 175, 495-502
【非特許文献7】McCloskey, et al. (1993) Handbook of HLA typing techniques. Hui, K. M., Bidwell, J. L., Eds. Boca Raton, FL. CRC Press, Inc, 175-247
【非特許文献8】Wordswoth, P. (1991) Immunol Lett., 29, 37-39
【非特許文献9】Olerup and Setterquist (1993) Handbook of HLA typing techniques. Hui, K. M., Bidwell, J. L., Eds. Boca Raton, FL. CRC Press, Inc, 149-174
【非特許文献10】Teutsch, et al. (1996) Eur J Immunogenet., 23, 107-120
【非特許文献11】Hurley, C. K. (1997) Tissue Antigens, 49, 323-328
【非特許文献12】Dinauer, et al. (2000) Tissue Antigens, 55, 364-368
【非特許文献13】Schena, et al. (1995) Science 270, 467-70
【非特許文献14】Saiki, et al. (1989) Proc Natl Acad Sci USA 86 6230-6234
【非特許文献15】Guo, et al. (2001) Genome Res., 12, 447-457
【非特許文献16】Wang, et al. (2003) The Eighth Annual Structural Biology Symposium of Sealy Center for Structural Biology, p 157, Galveston, Texas
【非特許文献17】Belosludtsev, et al. (2001) Anal. Biochem. 292, 250-256
【非特許文献18】Robinson, et al. (2003) Nuc. Acids Res. 31, 311-314
【非特許文献19】Fofanov, et al. (2002) The 2002 Bioinformatics Symposium, Keck/GCC Bioinformatics Consortium, p 14
【非特許文献20】Fofanov, et al. (2002) The Seventh Structural Biology Symposium of Sealy Center for Structural Biology, p 51, Galveston, Texas
【非特許文献21】Hayney, et al. (1995) Mayo Clin Proc. 70, 951-954
【非特許文献22】Mitra, et al. (2003) Analytica Chemica Acta, 469, 141-148
【非特許文献23】Lemeshko, et al. (2001) Nuc. Acids Res. 29, 3051-3058
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
集団遺伝子タイピングのシステムと方法の改良が、当該技術分野において必要とされている。具体的には、先行技術には、大規模集団の迅速HLAタイピングのための先進的ゲノム分析法を使用した、低コストで、大量生産された、現地で直ちに使用可能な携帯マイクロアレイシステムが欠けている。本発明は、当該技術における、この長年の必要と要望を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、HLA遺伝子を増幅するためのプライマーを目的とする。HLA遺伝子は、HLA A、BまたはDRB1、またはその中のエクソンであってもよい。プライマーは、配列番号14−37に示される配列を含む。
【0020】
本発明は、HLA遺伝子中の一塩基多型(SNP)を検出するための、ハイブリダイゼーションプローブも目的とする。ハイブリダイゼーションプローブは、SNPを含む領域と5’及び3’末端側の配列に相補的な約9−15残基のオリゴヌクレオチドを含む。SNPは、HLA-Aエクソン2またはエクソン3、またはHLA-Bエクソン2またはエクソン3中に位置してよい。プローブは、配列番号48−291に示される配列を含む。
【0021】
本発明は、さらに、陽イオン表面を持つ基板を含むマイクロアレイ装置、及び、そこに吸着された一種以上の上記ハイブリダイゼーションプローブを含む単分子層も目的とする。関連した発明では、マイクロアレイは、上記ハイブリダイゼーションプローブと共吸着されたオリゴチミジンを含んでもよい。別の関連発明においては、オリゴチミジンは、それに付いた蛍光色素を含んでもよい。もう一つの関連発明では、オリゴチミジンは、それに付加された蛍光色素を含んでよい。さらにもう一つの関連した発明では、マイクロアレイ装置は、キャップ剤を含んでよい。
【0022】
本発明はさらに、HLA遺伝子を増幅するための前記遺伝子特異的プライマー及び前記マイクロアレイ装置を含むキットをも目的とする。関連した発明では、キットはさらにPCR反応用緩衝剤及びポリメラーゼ、または蛍光色素、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。
【0023】
本発明はさらに、フィールド環境における即時ハイスループット集団HLA対立遺伝子タイピングのためのシステムも目的とする。本システムは、上記マイクロアレイ装置、集団を構成する個人からDNAサンプルを採取及び精製する手段、採取されたDNAからPCRによって1つ以上の対象とするHLA遺伝子のcRNA標的アンプリコンを生成する手段、及び、各個人の対象とするHLA遺伝子のHLA対立遺伝子型を決定する手段を有してなる。ここでいうシステムを構成する個々の手段及び装置は、携帯可能であって、フィールド環境において即時使用可能である。前記プライマーは、cRNA標的アンプリコンを生成するために有用である
本発明はさらに、フィールド環境における即時集団HLA対立遺伝子型決定のための方法も目的とする。その方法は、集団の一人以上のメンバーからのDNA採取、分析のためのDNA精製、及びDNAを構成する、対象とするHLA遺伝子からの、前記遺伝子特異的プライマーを使った標的アンプリコンの生成を含む。前記マイクロアレイを構成するハイブリダイゼーションプローブを標的に接触させ、接触後形成される各HLA対立遺伝子型に特有なハイブリダイゼーションパターンを画像化する。本発明は、決定された対立遺伝子型に基づく各個人の生物剤や兵器による感染リスクの評価のための関連方法も目的とする。本発明は、各個人の生物剤や兵器に対する特定のワクチン応答の評価のための別の関連方法も目的とする。
【0024】
本発明の、他の、及びさらなる態様、特徴、及び長所は、後述の現時点における発明の好ましい実施例から明白となろう。これらの実施例は、開示を目的として提供される。
【0025】
上記発明の特徴、長所及び対象が、これから明白になるであろう他の事柄とともに掌握され、かつ詳細に理解されるよう、上で簡単に要約した発明のより具体的な説明は、添付図面に示した具体的な実施例を参照することによって得られるであろう。これらの図は、明細の一部を成す。しかしながら、添付の図面は、発明の好ましい実施例を例示するのであり、従って、発明の範囲を制限すると捉えられることを意図していないことに注意されたい。
【0026】
本発明の1つの実施の形態は、HLA遺伝子の増幅のためのプライマーである。この実施の形態では、HLA遺伝子はHLA A、BまたはDRB1、またはそれらのエクソンであってよい。
【0027】
本実施の形態の一態様では、HLA-Aプライマーは配列番号14−15に示す配列を有してよく、HLA-Aエクソン2プライマーは、配列番号20−21に示す配列を有してよく、HLA-Aエクソン3プライマーは配列番号22−26に示す配列を有してよい。別の態様では、HLA-Bプライマーは配列番号16−19に示す配列を有してよく、HLA-Bエクソン2プライマーは、配列番号27−28に示す配列を有してよく、HLA-Bエクソン3プライマーは配列番号29−31に示す配列をもってよい。さらに別の態様において、HLA-DRB1プライマーは配列番号32−37に示す配列を有してよく、HLA-Bエクソン2プライマーは、配列番号38−47に示す配列を有してよい。
【0028】
本発明のもう一つの実施の形態では、HLA遺伝子中の一塩基多型(SNP)を検出するための、SNPを含む領域と相補的な9−15塩基のオリゴヌクレオチドと、5’及び3’末端両フランキング配列からなるハイブリダーゼーションプローブが提供される。
【0029】
この実施の形態の全ての態様において、フランキング配列は、オリゴチミジンまたはオリゴチミジン様ポリアニオン系ポリマーであってよい。同じく全ての態様において、SNPはHLA-Aエクソン2またはエクソン3、HLA-Bエクソン2またはエクソン3、またはHLA-DRB1エクソン2に位置してよい。ある特定の態様では、HLA-Aエクソン2プローブは、配列番号48−99に示す配列を有してよく、HLA-Aエクソン3プローブは配列番号100−155に示す配列を有してよい。別の特定の態様では、HLA-Aエクソン2プローブ配列番号156−239に示す配列を有してよく、HLA-Aエクソン3プローブは配列番号240−291に示す配列を有してよい。
【0030】
さらに別の実施の形態では、陽イオン表面をもつ基材、及び、それに吸着した一種以上の上記ハイブリダイゼーションプロ−ブを含む単分子層を含む、HLA遺伝子の対立遺伝子型決定用マイクロアレイ装置が提供される。さらにこの実施の形態に加えて、マイクロアレイは、ハイブリダイゼーションプローブと共吸着されたオリゴチミジンを含んでよい。オリゴチミジンは、約20から約40のチミジンを有してよい。さらに、オリゴチミジンは、それに結合した蛍光色素を含んでよい。さらに別の実施の形態では、マイクロアレイ装置は、キャップ剤を含んでよい。全ての実施の形態において、陽イオン性表面は、アミノシラン、グアニジン塩、酸化スズ、酸化アルミニウム、または酸化ジルコニウム、または、他の同等の荷電部分を含んでよい。また、全ての実施の形態において、基材は、ガラス、プラスティック、または金属であってよい。
【0031】
関連した実施の形態において、本発明は、HLA遺伝子増幅用遺伝子特異的プライマー、及び上記マイクロアレイ装置を含む、集団HLAタイピング用のキットを提供する。この実施の形態に加えて、キットは、PCR反応用緩衝剤及びポリメラーゼ、または蛍光色素、またはそれらの組合せを含んでよい。遺伝子特異的プライマーは配列番号14−47に示した配列であってよい。
【0032】
本発明のさらに別の実施の形態においては、集団の一人以上の構成員からDNAを採取し、分析のためにDNAを精製し、そのDNAに含まれる対象とするHLA遺伝子から遺伝子特異的プライマーを用いて標的アンプリコンを産生し、上記マイクロアレイに含まれるハイブリダイゼーションプローブと標的を接触させ、接触後に形成される各HLA対立遺伝子型特有のハイブリダイゼーションパターンを画像化する、各工程を有してなる、フィールド環境における即時集団HLA対立遺伝子タイピングのための方法を提供する。
【0033】
この実施の形態のすべての態様において、HLA遺伝子は、HLA-A、HLA-BまたはHLA-DRB1であって差し支えない。また、すべての態様において、即時ハイスループット対立遺伝子タイピングは、一時間一稼動システムあたり約200〜約300のHLA対立遺伝子型である。この実施の形態のある態様では、DNAサンプルを回収する手段は、個人から採取した口腔洗浄サンプル、口腔綿サンプル、または血液サンプルを収容するのに適した容器を含んでもよい。別の態様では、標的アンプリコンを生成する手段は、対象とするHLA遺伝子を増幅するためのHLA遺伝子特異的プライマーを含んでいて差し支えない。遺伝子特異的プライマーの例としては、配列番号14-17に示される配列を有しているものが挙げられる。さらに別の態様では、HLA対立遺伝子型を各個人に割り当てる手段は、マイクロアレイ装置上に吸着されたハイブリダイゼーションプローブに標的をハイブリダイゼーションした後に、該マイクロアレイ装置上に形成されるハイブリダイゼーションパターンを検出するのに適合した画像化装置、及び、画像化されたハイブリダイゼーションパターンをHLA対立遺伝子型として認識するのに適合したアルゴリズム集を含むパターン認識ソフトウェアを含んでいて構わない。
【0034】
本発明のさらに別の実施の形態では、集団の一人以上の構成員からDNAを採取し、前記DNAを分析用に精製し、遺伝子特異的プライマーを用いて、前記DNAに含まれる、対象とするHLA遺伝子から標的アンプリコンを生成し、上記マイクロアレイを構成するハイブリダイゼーションプローブを前記標的と接触させ、前記接触後に形成される、ハイブリダイゼーションパターンを画像化し、ここで、各HLA対立遺伝子型はそれに関連するパターンを有する、各工程を有してなる、フィールド環境における即時集団HLA対立遺伝子タイピングの方法を提供する。
【0035】
この実施の形態に加えて、本方法は、採取されたDNAを保存する工程を含んでよい。さらに別の実施の形態では、本方法は、決定された対立遺伝子型に基づく各個人の生物剤及び兵器による感染リスクの評価を含んでよい。さらに別の実施の形態では、本方法は、各個人の生物剤・兵器に対する特定のワクチンへの応答を評価する工程を含んでよい。
【0036】
すべての実施の形態において、DNAは血液から、口腔洗浄、または口腔綿によって採取されて差し支えない。また、遺伝子特異的プライマーは、配列番号14−47に示す配列を有してよい。さらには、ハイブリダイゼーションプローブは、配列番号48−291に示す配列を有してよい。
【0037】
本明細書では、単数冠詞「a」あるいは「an」は、一つ以上を意味してよい。本願の請求項では、「含む」なる語とともに用いられる場合、単数冠詞「a」または「an」は、1つ以上を意味してよい。本明細書では、「別の」または「他の」は、少なくとも2番目またはそれ以上を意味してよい。
【0038】
本明細書では、簡単、携帯可能、かつフィールド環境対応の集団HLAタイピングを可能にする、ヒト白血球抗原(HLA)チップ及びマイクロアレイ技術を提供する。HLAチップは、ヒトHLA-B遺伝子型を全体的に分析するよう設計されている。HLAチップが、ヒトHLA遺伝子座全体を分析するように設計されることが意図されている。このマイクロアレイ技術は、限定はしないが、例えば1週間に100,000人の、暴露された大規模集団を、わずか5−10の低コストで携帯可能なフィールド実験設備によってHLAタイピングするのに有効である。
【0039】
また、集団タイピングを通して得られたデータをリアルタイムで使用し、生物兵器による感染の個々の危険性を、HLAレベルで予想したり、あるいは、同じ感染種に対するワクチン接種への個別の応答を予想したりすることも想定されている。さらに、HLAチップの変異体を、第三世界環境におけるフィールドで即使用可能な新生児スクリーニング、あるいは、戦場で即使用可能な人員識別に使用して構わない。さらに、HLAタイピング技術は、災害時または災害後の民間人識別、または法医学的用途に使用されてよい。従って、集団HLAタイピングは、軍事的、反バイオテロリズム、または疫学的な面での用途がある。
【0040】
マイクロアレイデータの即時解釈は、フィールド使用環境において熟練していない者によって行われることが可能である。これは、低コストで、コンパクトで、容易に携帯可能なマイクロアレイ画像化装置によって、フィールドで実行されてよい。容易に車載可能な器材を使った完全HLA分析は、サンプル収集から最終的なHLA識別までの全プロセス時間が4時間未満であってよい。この任務サイクルは、4時間につき一人あたりおよそ20検体の手動のみによる処理で維持することが可能である。検体操作の最小の自動化で、処理効率は、移動可能なフィールド対応環境で、1ワークステーションにつき1時間あたり、約200から約300の完全HLA遺伝子型の処理を定常的に行うよう、簡単にスケールアップすることができる。
【0041】
さらにまた、パターン認識ソフトウェア、例えば画像分析器(非特許文献16)は、画像分析とマイクロアレイの蛍光パターンからHLA対立遺伝子型への変換において、バーコード様の単純さを提供する。パターン認識ソフトウェアのアルゴリズムは、限定はしないが、例えば、ユークリッドと相互情報に基づく距離、及びフーリエやウェーブレット変換のような、伝統的及び新規統計データマイニング手法を使用する。マイクロアレイパターン認識ソフトウェアは、ハイブリダイゼーションのパターンを認識したり、時としてあいまいなハイブリダイゼーションパターンに基づいて、どんなゲノム/種が存在するかという情報を自動的に引き出したりするのに効果的である。この情報は、それから、HLAサブタイプごとの予想されるスポットパターンに基づく既存のパターンデータベースと比較される。そのようなシステムは、ラップトップコンピュータ上で機能し得る、ユーザーフレンドリーなGUIインターフェイスを含んでよい。「ビデオカメラ」サイズの携帯マイクロアレイイメージャーは、高度な移動データ収集環境における作業に適している。
【0042】
マイクロアレイ設計及び製造または微細加工は、プローブ末端の化学修飾を必要としない、すなわち、表面にオリゴヌクレオチドプローブを固定するのにリンカーを必要としない(非特許文献17)。オリゴヌクレオチドによる表面の飽和は、共有結合による固定に要するオリゴヌクレオチド濃度のほんの何分の一かの濃度で起こる。従って、表面に送達されたオリゴヌクレオチド全部が、正味正電荷を持ち、疎水性または親水性であってよい単分子層表面との吸着会合によって固定される。スポットの形状及び形態は、マイクロアレイヤーによって分配された液滴の初期接触に依存する。共有結合形成がないので、スポット間の変動は最小化される。
【0043】
本発明は、標的内の一塩基多型を区別するための、約9から約15残基の短鎖オリゴヌクレオチドプローブを提供する。これらのプローブは、オリゴチミジン(オリゴT)配列が側面にある。望ましくは、フランキング配列を持つプローブは、合計約30ヌクレオチドを含む。さらに、オリゴT類似物がフランキング配列として使用されてもよいことが意図されている。限定はしないが、例えばポリスルホン酸塩などのオリゴチミジン様のポリアニオン系ポリマーで、オリゴTフランキング配列を置換してよい。プローブは、すべての臨床的に有意義なHLAサブタイプ用に設計されることが意図されている。IMGT/HLA配列データベースにおける現時点の対立遺伝子数は、HLAクラスIが977対立遺伝子、HLAクラスIIが652対立遺伝子である(非特許文献18)。本明細書で提供した有用なプローブは、HLA‐Aエクソン2(配列番号48−99)及びエクソン3(配列番号100−155)、HLA‐Bエクソン2(配列番号156−239)及びエクソン3(配列番号240−291)、そしてHLA-DRB1エクソン2内の識別に効果的である。
【0044】
本明細書で用いられるマイクロアレイの製造は、正荷電または陽イオン性表面への短鎖オリゴヌクレオチドプローブの吸着的、非共有結合的な付加を用いた、非常に単純で再現性の方法である(非特許文献17)。例えば、陽イオン性表面は、限定はしないが、アミノシランなどのアミン官能基を含むか、またはそれらでコーティングされてよく、あるいは、グアニジニウム基を含んでいてよい。あるいは、表面は、陽イオン性金属、または金属酸化物、例えば、酸化スズ、酸化ジルコニウムや酸化アルミニウム、またはその他の正味正電荷を持つ金属酸化物や同等の電荷部分で構成されてよい。そのような酸化物のコーティングは、微粒子状であってよいし、平滑であってガラス、プラスティックまたは金属基材上に塗布されてもよい。
【0045】
通常、方法は、水に溶解したオリゴTを側面にもつオリゴヌクレオチドプローブの、陽イオン性または正味正電荷をもつ基材表面上への沈着または印刷を必要とする。あるいは、オリゴTを側面にもつプローブを、第2の恒常的なオリゴヌクレオチドプローブと共印刷してもよい。このプローブは、印刷のすべての事例において同一であって、約T20から約T40塩基のオリゴT配列からなってよい。 オリゴT配列は、それに結合した色素を含んでよい。色素の例は、Cy-5であってよいが、これに限定されない。
【0046】
オリゴT配列は、HLAタイピングのためのヒトDNAへの核酸ハイブリダイゼーションに関して不活性であることが意図されている。オリゴTは、核酸プローブがプリントされた場所を、色素に結合したオリゴTの直接検出、またはオリゴTのWatson−Crick相補体である色素ラベルしたオリゴアデニン(オリゴA)とのオリゴTハイブリダイゼーションによって特定するためのマーカーとして導入される。オリゴTを含めることにより、ハイブリダイゼーション画像データを分析のために正しく配置させる能力を向上させ、マイクロアレイ製造中の品質管理に役立つ。
【0047】
加えて、アミンでコーティングした表面上に、プローブを沈着させた後、乾燥し、吸着プローブ分子との直接結合に関与しない残存表面電荷または荷電部分をキャップ化してよい。例えば、当該技術分野において既知であり標準的な、アミノシラン表面のキャップ化は、未使用のアミノ基を、界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウムなどのキャップ剤と反応させることによって実施できる。あるいは、セラミックまたは金属酸化物表面に対しては、表面をホウ酸、フッ化物イオンまたはリン酸塩と反応させることによってキャップ化を実施してよい。乾燥・キャップ化の後、取り付けられたオリゴヌクレオチドは、高濃度塩、5M塩化ナトリウム、及び高pH処理を含む、標準的なハイブリダイゼーション及び洗浄条件下において、表面から除去することはできない。従って、完成したマイクロアレイ中において、吸着したオリゴヌクレオチドはおそらく表面との複数の接触によって結合しており、従ってその結合標的と完全な2重らせんを形成するのに必要な立体配置自由度を失っている可能性があるが、この様な吸着的結合後、表面の過剰電荷中和する慎重なキャップ化を行った産物は、標準的な溶液状態でのハイブリダイゼーション反応や一点で表面と共有結合したプローブに対する表面ハイブリダイゼーションで見られるのと同等に高い二重鎖形成の特異性を示す。
【0048】
HLA遺伝子座用のPCRプライマーは、短いサブ配列、すなわち、あらゆるゲノム中でnが5-25+ヌクレオチド長のn残基のオリゴヌクレオチド配列が妥当な時間内、例えば分、の発現頻度を計算するための新しいアルゴリズムを用いて設計される(非特許文献19−20)。これらのアルゴリズムは、250以上の微生物、ウイルス、ヒトを含む多細胞生物のゲノム中に、全ての可能な「n残基配列」の存在の比較統計分析を実行するのに用いられる。その結果は、全てのゲノム中の異なるn−残基配列の存在/不在分布の注目に値する類似性を示す。総ゲノム配列長をMとし、M≪4nの条件が成立する場合、考慮される全てのゲノム中のn−残基配列の存在/不在分布は、ほぼランダムと取り扱うことができることを示唆する。短配列の複数ゲノム中の同時存在/不在についての膨大な計算分析は、公開された全ての、すなわち2002年5月以前の微生物及びウイルスゲノムに対して実行され、2003年5月までに利用可能であった1600+のゲノムについて再度行われた。これは、所定のゲノムのどこにも繰り返されない、独特の配列を産生する。
【0049】
これらの新しいアルゴリズムとデータ構造は、1600+の完全ゲノムの集積とともに、PCRプライマーの設計プロセスそのものの品質を大幅に改善することを可能にする。これらのアルゴリズムを使用して、既知のSNPを含め、全ヒトゲノム中に正確に一度だけ出現し、残りのn残基構造と少なくとも2または3ミスマッチのあるプライマーを見つけることが可能である。さらに、いくつかの細菌やウイルスのゲノムに存在するプライマーは除外される。そのような大規模並列プライマー設計は、口腔洗浄を集団DNA源として考える場合、そのようなサンプルは最大で50%までのいくつかの他の汚染物を含む可能性があるという点で特に重要である。このアプローチの有効性は、ここに示される例において、PCRマイクロアレイ研究中に報告した1組のプライマーが数種の他のクロモソームをもプライムするということで示される。
【0050】
従って、本発明は、HLAクラスI及びクラスII遺伝子座の増幅に有効なプライマーまたはプライマー対を提供する。例えば、一次PCR反応には、配列番号14−15のプライマーはクラスIHLA-A遺伝子座の増幅に有用であり、配列番号16−19のプライマーはHLA-B座の増幅に有用である。二次PCR反応においては、HLA-Aエクソン2及び3は、各々配列番号20−21及び配列番号22−26を用いて増幅してよい。HLA-Bエクソン2及び3は、各々配列番号27−28及び配列番号29−31を用いて増幅してよい。さらに、クラスII HLA-DRB1座は、配列番号32−37のプライマーを用いた一次PCR反応において増幅されてよい。HLA-DBR1エクソン2を増幅するには、配列番号38−47のプライマーを用いた二次PCRが有効である。これらのプライマーは、遺伝子を構成する全ての対立遺伝子の増幅に有効、すなわち、これらのプライマーは遺伝子特異的かつ対立遺伝子非特異的である。全増幅遺伝子中の対象とする対立遺伝子の精密構造は、本明細書で提供されるマイクロアレイ中のプローブに対するPCR産物のハイブリダイゼーションによって決定される。
【0051】
DNA検体は、乾燥血液のスポットから、口腔洗浄DNAから、指穿刺一回分10μlから、またはパラフィルム包埋薄切片から採取してよい。望ましくは、DNAサンプルは、「口腔洗浄」法によって採取された口腔DNAサンプル、または、Fitzco社製ダクロン口腔綿上に採取した口腔綿サンプルである(非特許文献21)。サンプルから抽出したDNAは、FTA紙(GenVault社、カールスバッド、カリフォルニア)に保存または保管してよい。この方法による処理FTA紙上へのサンプル固定は、分解のないPCRに適したDNAの保管、及び、その後の完全回収を提供する。
【0052】
本明細書で使用した短鎖オリゴヌクレオチドプローブの標的は、増幅されたDNAサンプルから転写された一本鎖DNA、または変性二本鎖PCR産物である。ここで記述した増幅方法は、標識付dsDNA PCR産物を生ずる。DNAは、修飾PCRプライマーまたはシス−プラチナ錯体と接合した色素を用いた簡単な一段階反応で、直接化学的に標識することができ(非特許文献22)、調節されたアルカリ処理で同時に加水分解することができる。これは、ハイブリダイゼーション用の均一に標識されたDNAを産生する。
【0053】
本発明は、DNAサンプル中の単一、または数箇所のDNA領域を増幅するのに適した、HLA対立遺伝子のフォワードプライマー及びリバースプライマーの1対以上のプライマーからなるキットも提供する。キットは、任意に、本明細書に記載のHLAプローブをもつ1つ以上のマイクロアレイを更に含んでよい。特に、これらのキットは、プライマー対と、任意にHLA-A、HLA-BまたはHLA-DRB1座とハイブリダイズし、どのSNPがサンプルに存在するか決定し、それによって個人または集団を遺伝子タイピングするよう設計されたマイクロアレイを持ってよい。さらにまた、キットはPCR反応用の緩衝剤及びポリメラーゼを含んでよい。
【0054】
特に、本発明は、血液、口腔綿または口腔洗浄から採取されたヒトDNAを使用する遺伝子タイピングまたは対立遺伝子タイピングの方法を提供する。回収したサンプルは、すぐに使われてもよいし、乾燥状態で保管してもよい。ここに開示されたプライマーを用いた遺伝子特異的PCRは、対立遺伝子の偏りのない精製DNA中の対象とするHLA遺伝子、例えば、HLA-A、-B、または-C、またはHLA-DRB1、または他のHLA遺伝子を増幅する。どのようなヒトDNAサンプルの正確な対立遺伝子型も、マイクロアレイ上の配列特異的プローブに対するハイブリダイゼーションのパターンを測定することによって決定される。ハイブリダイゼーションのパターンは対立遺伝子を決定する。
【0055】
以下の例は、発明のいろいろな実施例を例示する目的で挙げられており、本発明を如何なる形でも制限することは意図していない。
【実施例】
【0056】
実施例1
クラスI及びII HLA遺伝子座の増幅のためのプライマー
SNP特異的プライマーの設計アルゴリズムの検証
フォワードプライマー、5’GCTCCCACTCCATGAGGTAT3’(配列番号1)、及び、リバースプライマー、5’ATACCTCATGGAGTGGGAGC3’(配列番号2)は、クラスI HLA-B型エクソン2のPCR産物を増幅し、456塩基対の特異的生成物を産生するために使用された(非特許文献文献15)。ここに提示したアルゴリズムは、これらのプライマーが特異的で、クラスI HLA-B座エクソン2のみをプライムするかどうかを確認するために使用された。フォワードプライマーは、クロモソーム6中の11の他の位置に結合し、またクロモソームx中の1箇所にも結合すると決定された。クラスI HLA-B座エクソン2用リバースプライマーは、クロモソーム6中の5つの他の位置に結合し、かつクロモソーム4及び13中の1箇所にも結合することが見出された。クラスI HLA-Bエクソン3増幅用の別のプライマー、5’ACCCGGTTTACCCGGTTTCATTTG3’(配列番号 6)は、クロモソーム6中イントロン2、164−184位以外に8箇所、及びその他数クロモソームに結合することが見出された(表1)。表1は、下線で示したプライマーまたはプライマーの部分配列が、正しい場所以外で見出された回数を示す。アルゴリズム(19-20)は、プライマーのデザインが高分解度HLAタイピングを実行するために非常に重要であることを明白に示す。問題は、ヒト体液中に存在する他の細菌やウイルス由来の夾雑物の可能性によってさらに複雑になる。
【表1】
【0057】
HLA-B及びHLA遺伝子群の増幅用プライマーの設計
各HLA遺伝子の対象とする領域全域にわたる単純な500塩基対長のアンプリコン、及び一対の約250塩基対長の産物が作成された。これは、HLA-A、BまたはDRB1の単純PCRアッセイに適している。しかし、全HLA遺伝子群は、この方法によって設計された14または28対のプライマーを必要とするであろう。
【0058】
14のHLA遺伝子座、すなわち10のクラスI HLA座と4つのクラスII座の各々の対象とする超可変領域は、およそ500塩基対にわたる。したがって、プライマー設計の問題は、熱力学的に類似しているが、ヒトヒトゲノムと口腔DNAを汚染する可能性のある他のゲノムと比較して異なる、一組のフォワード及びリバースプライマーを見つけることである。プロセスを開始するために、およそ100塩基対の領域が、14箇所のおよそ500塩基対のHLA座の各末端で特定される。すべての可能な18−20残基のプライマーのセットが、これらの100塩基対領域用に、ここに記述される計算ツールを使用してすぐに得られる。およそ1400のフォワードプライマー及び1400のリバースプライマーからなるこのセットは、それから、同程度の計算熱力学安定性のサブセットを得るためにふるいにかけられる。次に、セット中の他のものとワトソン−クリック相補性を持つものを除去し、ヘアピン形成能を無くすために、さらにふるいにかけられる。
【0059】
残りのセットは、それからさらに、誤プライミング能を除くために18−20残基のヒトゲノムセットの残りと比較してふるいにかけられる。望ましいPCR産物は比較的小さいので、2000塩基対以下のPCR産物を生じるフォワードプライマーとリバースプライマーの可能なペアの会合以外に最も重点が置かれる。これは、2000塩基対を超える生成物を産生する擬似反応は非常に能率が悪いという、実際的な観察に基づいている。
【0060】
上記フィルタリングプロセスは、14のHLA座の各々につき数組の可能なフォワード/リバースの組合せを与えると予想される。これらのプライマー対は、96穴サーマルサイクラー環境で個々に試験され、生成物は、実験上最適な機能を発揮するサブセットを得るために電気泳動によって分析される。この最終段階のプライマー選別は、血液から得られた純粋なヒトDNA及び口腔洗浄法によって得られたヒト−非ヒト混合物の両者を用いて行われる。
【0061】
表2は、HLA-A、B及びDRB遺伝子座、及び特定されたエクソンの増幅に効果的な一次及び二次プライマーの代表的なリストである。
【表2】
【0062】
実施例2
クラスI及びII HLA遺伝子座の一次及び二次増幅
HLA-A及びB座及びエクソン2及び3
一次PCR反応では、HLA-A座用プライマー対A-LOC-FP1/A-LOC-RP1及びHLA-B座用プライマー対B-LOC-FP1/B-LOC-RP1は、種々のUCLA標準品、陽性対照及び陰性対照の増幅産物を生成するのに用いられた。PCRのプロトコルは、96穴プレート中で50μlの体積用である:94℃で4分間の前PCR変性1サイクル、98℃で1分、71℃で1分、72℃で1分のPCR35サイクル、72℃で7分の保持サイクル(ポリメラーゼ:ロシュ社製ファストスタートTaq)。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで35分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:C1-034、レーン2:C1-035、レーン3:C1-036 、レーン4:CCR1)、陽性対照(レーン5:ロッシュ社製DNA)、及び陰性対照(レーン6:H2O );最終レーンは質量標準である。ゲルはHLA-Aの980塩基対産物(図1A)及びHLA-Bの1007塩基対産物(図1B)を示す。
【0063】
二次PCR反応では、HLA-Ax2及びHLA-Ax3エクソン用プライマー対、A-X2--FP1/A-X2-RP1及びA-X3--FP1/A-X3-RP1が増幅産物を生成するのに用いられる。PCRのプロトコルは、96ウェルプレートで50μlの体積用である: 94℃で4分間の前PCR変性1サイクル、98℃で1分間、及び58.3℃、60.7℃、63.3℃、66.0℃、68.6℃または71.0℃のうち一つで30秒間のPCR35サイクル、72℃7分間の保持サイクル(ポリメラーゼ:ルシジェン社製エコノTaq)。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで45分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:Aex2またはAex3の陰性対照、レーン2: 58.3℃、レーン3: 60.7℃、レーン4: 63.3℃、レーン5: 66.0℃、レーン6: 68.6℃、レーン7: 71.0℃;図1C−1D)。
【0064】
二次PCR反応においては、HLA-Bx2及びHLA-Bx3エクソン用プライマー対、B-X2-FP1/B-X2-RP1及びB-X3-FP1/B-X3-RP1が、増幅産物を生成するのに用いられる。PCRのプロトコルは、96穴プレート中で50μlの体積用である: 94℃で4分間の前PCR変性1サイクル、98℃で1分間、及び60.7℃、63.3℃、66.0℃、68.6℃、71.0℃、または73.0℃のうち一つで30秒間のPCR35サイクル、72℃7分間の保持サイクル(ポリメラーゼ:ロッシュ社製ファストスタートTaq)。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで45分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:Aex2またはAex3の陰性対照、レーン2: 60.7℃、レーン3: 63.3℃、レーン4: 66.0℃、レーン5: 68.6℃、レーン6: 71.0℃、レーン7: 73.0℃;図1E−1F)。ゲルは、1018塩基対付近の生成物を示す。
【0065】
HLA-DRB1遺伝子座及びエクソン2及び3
一次PCR反応において、HLA-A座用プライマー対DRB-LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1及びHLA-B座用プライマーB-LOC-FP1/B-LOC-RP1は、増幅産物を生成するのに用いられる。PCRプロトコルは、96ウェルプレート中で25μlの体積用である: 94℃で4分間の前PCR変性1サイクル、98℃で1分間、及び55.2℃、56.5℃、58.3℃、60.7℃、63.3℃、66.0℃、68.6℃、71.0℃、73.0℃、74.4℃、または75.2℃のうち一つで30秒間のPCR35サイクル、72℃7分間の保持サイクル(ポリメラーゼ:ロッシュ社製ファストスタートTaq)。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで35分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:DRB1陰性対照、レーン2: 55.2℃、レーン3: 56.5℃、レーン4: 58.3℃、レーン5: 60.7℃、レーン6: 63.3℃、レーン7: 66.0℃、レーン8: 68.6℃、レーン9: 71.0℃、レーン10: 73.0℃、レーン11:74.4℃、レーン12: 75.2℃;図1G)。
【0066】
HLA-DRB1の増幅には、プライマー対の組み合わせが用いられた。PCRプロトコルは、96ウェルプレート中で25μlの体積用である: 94℃で4分間の前PCR変性1サイクル、98℃1分間、74℃で1分間、72℃で1分間のPCR35サイクル、72℃で7分間の保持サイクル(ポリメラーゼ:ロッシュ社製ファストスタートTaq)。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで35分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:DRB-LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1a、レーン2:DRB- LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1b、レーン3:DRB-LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1c、レーン4:DRB-LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1d、レーン5:DRB-LOC-FP1a/DRB-LOC-RP1a、レーン6: DRB-LOC-FP1b/DRB-LOC-FP1a);最終レーンは質量標準である(図1H)。
【0067】
二次PCR反応は、HLA-DRB1エクソン2ゲノムDNAテンプレートを増幅するため、図1Gで述べた条件下 、プライマー対DRB-x2-FP1g/DRB-x2-RP1aを用いて行われた。増幅産物(10μlのサンプル)を、150Vで35分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:DRB1ex2陰性対照、レーン2: 55.2℃、レーン3:56.5℃、レーン4:58.3℃、レーン5: 60.7℃、レーン6:63.3℃、レーン7:66.0℃、レーン8:68.6℃、レーン9:71.0℃、レーン10:73.0℃、レーン11:74.4℃、レーン12:75.2℃;図1I)。HLA-DRB1エクソン2ゲノムDNAテンプレートを増幅するため、図1Hで述べた条件下 、プライマー対の組み合わせを用いて行われた。増幅産物(10μlのサンプル)を、150ボルトで35分間、2%アガロースゲル上を泳動させる(レーン1:DRB-x2-FP1g/ DRB-x2-RP1a、レーン2:DRB-x2-FP1g/ DRB-x2-RP1b、レーン3:DRB-x2-FP1g/ DRB-x2-RP1c、レーン4:DRB-x2-FP1a/ DRB-x2-RP1a、レーン5:DRB-x2-FP1b/ DRB-x2-RP1a、レーン6:DRB-x2-FP1c/ DRB-x2-FP1a、レーン7:DRB-x2-FP1d/ DRB-x2-FP1a、レーン8:DRB-x2-FP1e/ DRB-x2-FP1a、レーン9:DRB-x2-FP1f/ DRB-x2-FP1a、レーン10:DRB-x2-FP1g/ DRB-x2-FP1a); 最終レーンは質量標準である(図1J)。
【0068】
実施例3
マイクロアレイ用プローブの設計
適切に設計されたマイクロアレイは、所定のミスマッチに対して全ての可能な最も近い類似体のハイブリダイゼーションパターンをテストするのに使用された。これは、どんな一塩基多型の競合も考慮する。3塩基の配列には64の組み合わせがあり、それらは、最も近い類似体中の中央塩基の対形成及び非形成によって研究された。これらの全ての組み合わせから得られた結果は、どのHLAサブタイプに対する一塩基多型の結合特性の予測も可能にする。これは、熱融解特性によるよりもはるかに優れた推定である。
【0069】
手短に言うと、HLA-Bモデルに関して、HLA-Bの既知対立遺伝子の多様性は、臨床的または疫学的価値のある137の多型を定義しており、従って完全なハイブリダイゼーション分析を行うには137の対立遺伝子特異的プローブが必要である。前記の通りマイクロアレイ製造に吸着法を使用すると、12−15塩基長のプローブで優れた単一ヌクレオチド特異性が得られる。末端偽効果を避けるため、算定した中心近傍、すなわち3位からN−2位に多型を含む、全て11−16塩基長の候補プローブ群が計算により生成された。このプローブ群は、完全に相補的な標的との結合において同一の計算熱力学的安定性をもつサブセットを得るため選別される。0.1M塩化ナトリウム中における55℃の計算値Tmを、その標準とする。
【0070】
一次選別を経たプローブ候補のサブセットから他の繰り返し配列中やHLA遺伝子座の他のどこかにも出現するプローブ候補を除去するため、残りのヒト遺伝子との比較による二次選別ステップが実施される。ハイブリダイゼーションはPCR増幅された標的について実施されるので、原理的にはこれ以上厳密である必要はない。しかし完璧を期すため、二次選別を経たものは、さらに本明細書に記載の微生物及びヒト以外の脊椎動物配列の1600のゲノムライブラリーの全てとの類似性をも分析される。これらのプローブが、マイクロアレイの製造に用いられる。
【0071】
特異的プローブの配列
表3−6は、各々HLA-A及びHLA-B遺伝子座エクソン2及び3用プローブの配列を特定する。オリゴ-Tフランキングセグメントは、フランキングセグメントがアレイ表面には吸着するが、溶液状態の標的核酸に対してほとんど、または全く親和性を持たないように、各プローブの3‘及び5’末端に導入される。プローブ認識サイズは約9−15塩基であり、オリゴ-Tセグメントは、全てのマイクロアレイプローブが最終全長30塩基長となるよう3‘及び5’末端の両方に付加された。
【表3】
【表4−1】
【表4−2】
【表5−1】
【表5−2】
【表6】
【0072】
実施例4
マイクロアレイの製造
マイクロアレイは、Belosludtsevらの方法を使用して製造される(非特許文献17)。手短に言うと、使用される基材は、界面活性剤を用い超音波槽中で洗浄(2分)後、蒸留水及びメタノールで洗浄し、乾燥(30分、40℃)したシリカスライドである。洗浄したスライドをラックに集め、(63.5cm)の25インチ水銀柱、70−80℃の真空オーブン中で終夜、50%シラン/p-キシレン溶液と平衡状態にある気相中で、3-アミノプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いてシラン化処理する。
【0073】
市販のオリゴヌクレオチド(ミッドランド・サーティファイド・リージェント社製、米国テキサス州ミッドランド所在)を、蒸留水中5μM溶液として1nl、マイクロアレイヤーを用いてアミノシラン化スライドのシラン化表面に置く。オリゴヌクレオチドを「印刷」後、スライドを40℃で15分間または室温で終夜乾燥し、55.88cm(22インチ)の水銀柱の真空オーブン中50℃で1時間、3mlの無水酢酸の3mlジメチルホルムアミド溶液を含むペトリ皿を設置することにより、気相の無水酢酸でキャップ化する。アセチル化したアミノ化スライドは、スライドを0.5Mコハク酸無水物DMF溶液のタンク中に室温で終夜漬けることによって、コハク酸無水物によってキャップ化される。スライドは、アセトン(3×)、蒸留水(2×)、そして再度アセトン(2×)中で洗浄することによってきれいにされる。品質管理として、蛍光標識オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション緩衝剤溶液30mlをスライド表面に置く。15分後背景が観察されなければ、スライドはハイブリダイゼーション実験に使用できる状態にあると考えられる。
【0074】
オリゴヌクレオチドの平面ガラス接着に関し、吸着法と共有結合法の比較を行った。共有結合は、当該技術分野における表面共有結合の標準的方法で末端2級アミン架橋を生成する、5'-アミノ修飾オリゴヌクレオチドとエポキシシラン化表面の反応によって得られた。実験上及び計算上の密度の比較は、吸着工程において高密度のオリゴヌクレオチド単分子層が形成される証拠を与え、鎖長依存性の研究は、36塩基長までのプローブで高密度プローブフィルムが形成できることを実証した。固定化標的の安定性と構造の更なる測定において、36塩基までの短鎖オリゴヌクレオチドについて、一本鎖DNAのリボン様の形態が表面上に形成されることが判明した(非特許文献23)。ハイブリダーゼーションの選択性と特異性は、表面に共有結合した、完全に直鎖状の一本鎖DNA分子と同様である。
【0075】
実施例5
サンプル採取及び抽出の検証
「口腔洗浄」法(非特許文献21)は、サンプルの採取に使用できる。このサンプル採取の技法は、大規模集団研究用の口腔由来DNAの採取、及び、地理的に分散した大規模集団研究からのサンプル収集に理想的である。「口腔洗浄」法は医学的指導を全く必要としない。この技法は、種々の温度条件にさらされても、サンプルを新鮮なDNAと比べて一週間無傷に保つことが示されている(図2A−2B)。
【0076】
簡潔に言うと、口腔細胞は、口腔洗浄液または他の生体適合性の液体で45秒間激しく口腔内を洗浄した後10mlの瓶中に吐き出すことによって採取される。瓶を封印し郵送する。到着したら細胞をペレットし、細胞ペレットを25℃でTris-EDTA及び1%SDSの溶液100μl中に、断続的に攪拌しながら1時間溶解する。この懸濁液は、GenVault要素に直接適用される(13μlずつ)。乾燥後、DNAは生理食塩水で2回洗うことによって単離され、この時DNAはまだ多孔性素子上に結合したままである。DNAはそれから、GenVault遊離緩衝剤中25℃で5分間洗うことによって遊離される。約1μg/要素の遊離したDNAは、これ以上精製することなくPCRに用いることができる。
【0077】
口腔細胞はFitzco社製のダクロン口腔綿を用いて採取することもできる。簡潔に述べると、右または左の頬から綿を採取し、綿の先端をマイクロ遠心チューブ内の回転かご中に置き、終夜空気乾燥してからふたをして保存する。必要なら綿チップは200mlのSRBを直接添加した後、55℃で4時間加熱することによって脱水する。それから、サンプルをかごから回収し、10,000Gで1分間遠心分離する。90%以上の液体回収率が得られる。得られた材料は、Argylla社製プレップパーティクル(PrepParticles)、またはQiagen社製のカラムでバッチ毎に、製造元の推奨する方法に従って処理できる。表7は、5人のボランティア各々について、口腔綿からFBIの着色抽出緩衝剤で抽出後、Argylla法(A)またはQiagen法(Q)処理におけるDNA収率を比較する。
【表7】
【0078】
図3Aは、2人のボランティアから口腔綿法によって抽出したDNAが、優れたHLA-BのPCR産物を与えることを実証する。UCLA標準品を、口腔DNAサンプル由来のPCR産物と比較さした。図3Bにおいて認められる通り、口腔綿採取物からのHLA-B特異的PCR反応は、純粋なUCLA参照標準品から得られたものと定量的に同様である。
【0079】
実施例6
画像分析とパターン認識
マイクロアレイのデジタル画像は、イメージアナライザー(ImageAnalyzer)なるソフトウェア中のアルゴリズムを用いて分析される。簡単に述べると、エッジ検出法は、画像からバックグラウンドを差し引き(図4A)、バックグラウンドよりも高い、予め定義された閾値において明確なパターンを作成する(図4B)ために使用される。HLA型決定のためのパターン認識と2次元バーコードの作成は、ハイブリダイゼーションスポットのパターンと、それらの各HLA型との位置的な相関関係に基づく。HLA型の各対立遺伝子は、決まったスポットパターンを有し、それはバーコードとして使用される。
【0080】
実施例7
K-rasモデル:吸着マイクロアレイ上における遺伝子タイピング及びSNPの検出
アンプリコンの生成とオリゴヌクレオチドプローブ
HLAタイピングに用いられるマイクロアレイは、K-ras遺伝子座の、一塩基多型によって野生型と異なる遺伝子型を成功裡に特定し決定するのに使用されてきた。152塩基対のK-rasアンプリコンは、ポリメラーゼ連鎖反応によって生成された。野生型アンプリコン(K-ras 1)は、市販のゲノムDNA原料(シグマ社製)の増幅によって得た。K-ras 2及びK-ras 7変異体は、各々、A549 及びSW480細胞株由来のヒトゲノムDNAの増幅によって得た。PCRの手順は以下の通りである: 94℃で12分間、60℃で1分間及び72℃で1分間の前PCRサイクル1回、95℃で1分間、57℃で1分間、72℃で1分間のPCR35サイクル、72℃で7分間、4℃で保持からなる保持サイクル。K-rasアンプリコン用PCRプライマーは、5’末端がジゴキシゲニンで標識されており、以下の配列を有する:
5’-DIG-ACTGAATATAAACTTGTGGTAGTTGGACCT-3’(配列番号292)、及び
5’-DIG-TCAAAGAATGGTCCTGCACC-3’(配列番号293)。K-rasアンプリコンは、コドン12に異なる点突然変異をもつ。特異的オリゴヌクレオチドは、マイクロアレイ捕獲プローブとして機能するよう表8に示すように設計した。下線を付したヌクレオチドは、点突然変異を示す。
【表8】
【0081】
ハイブリダイゼーション及びパターン検出
ナトリウムイオン濃度として150mMのコハク酸ナトリウムを含む前ハイブリダイゼーション溶液、Denhardtの5倍溶液、pH8.0は、10分以上アレイに適用された。この溶液を減圧除去し、ハイブリダーゼーション液(1nMアンプリコン、0.1mMシャペロン、ナトリウム濃度として150mMのコハク酸ナトリウム、Denhardtの5倍溶液、pH8.0)をアレイに適用した。これらの研究において、捕獲プローブK-ras 1、K-ras 2、及びK-ras 7に相補的なアンプリコンのみが使用された。2時間のハイブリダイゼーション後、アレイを、ナトリウム濃度で100mMのコハク酸ナトリウムで10分間ずつ2回洗浄した後、13SSC中で軽くすすいだ。ジゴキシゲニン標識されたアンプリコンは、ELF-97mRNA in situハイブリダイゼーションキット(ベーリンガー・マンハイム社製)のブロッキング緩衝剤中1:1000に希釈したアルカリフォスファターゼに結合した抗ジゴキシゲニン抗体の後、同キットの緩衝剤Aによる洗浄、及びアルカリフォスファターゼ基質であるELFのキット記載の通り適用して検出した。アルカリフォスファターゼによる切断後、ELF分子は沈殿し、UV励起により蛍光を発する。蛍光強度はアルファイメージャー2000装置で検出し、シグマプロット3.0ソフトウェアで処理した(図5A−5D)。
実施例8
HLA-B中のSNP検出
HLA-B検証モデル
UCLAは、HLA型既知の特性がよく明らかにされた75のDNAサンプルからなるライブラリーを収集し、世界中で参照標準品として使用される。この参照セットを入手し、参照セット中の配列バリエーションのより高分解度の理解のために、HLA-B超可変領域の配列を再分析した。図6A−6Bに示す通り、UCLA由来のデータは極めて正確で、配列の片側再分析に関し4−5の不一致しかない。
HLA-B標的の調製
HLA-Bエクソン2由来の500塩基対フラグメントは、試験的に精製したヒトゲノムDNAサンプルから上記のようにデザインされたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得られる。以下のPCR手順が、増幅500塩基対フラグメントの作成に使用される: 94℃で12分間、60℃で1分間、及び72℃で1分間の前PCRサイクル1回、95℃で1分間、57℃で1分間、72℃で1分間のPCR35サイクル、72℃で7分間、4℃で保持の保持サイクル。HLA-Bアンプリコン用のPCRプライマーは、T7ポリメラーゼ認識配列5’ ATGTAATACGACTCACTATAG 3’(配列番号317)を含むように修飾される。
【0082】
二本鎖PCR産物は、マイクロカラム精製により単離され、そして、HighYield RNA転写標識キット(Enzo Labs社製(米国ニューヨーク州ファーミングデール所在))を用いてビオチン標識したリボヌクレオチドの存在下インビトロで転写した。簡単に述べると、一本鎖cRNAを生成するためのインビトロ転写反応は、25%ビオチン化rUTPを含むrUTP画分を有する75mMのNTPs、10倍反応緩衝剤、T7ポリメラーゼ酵素(Ambion社製(米国テキサス州オースチン所在))の混合物を含む20μlの反応体積で行われた。反応混合物を、37℃で4時間インキュベートした。インビトロ転写されたビオチン標識付cRNAは、Qiagen RNeasyキット(Qiagen社製(米国カリフォルニア州バレンシア所在))によって精製され、定量され、そして1倍断片化緩衝剤(40mMトリス酢酸、pH8.0、100mM Kac、30mM MgAc)存在下、94℃で35分間断片化した。RNAの品質は、断片化前及び後ホルムアルデヒドアガロースゲルを用いて検査した。
【0083】
ハイブリダーゼーション及び検出
ナトリウムイオン濃度として150mMのコハク酸ナトリウム、5倍濃縮のDenhardtの溶液、pH8.0を含む前ハイブリダイゼーション溶液は、最低10分間アレイに適用される。前ハイブリダイゼーション溶液を減圧除去し、ナトリウムとして150mMのコハク酸ナトリウム、5倍濃縮のDenhardtの溶液、pH8.0中の標識付一本鎖cRNA標的を含むハイブリダイゼーション溶液が、HLAマイクロアレイとハイブリダイゼーションするようアレイに加えられた。2時間のハイブリダイゼーション後、アレイを、ナトリウムとして100mMのコハク酸ナトリウムで10分間ずつ2回洗浄した後、1倍SSC中で軽くすすいだ。 ストレプトアビジンと結合したフィコエリスリンが、cRNA標的上のビオチンに結合する(非特許文献22)。蛍光強度は、CCDを具えたマイクロアレイ画像化装置(Array Worx、API社製(米国ワシントン州イサクア所在))で検出する。
【0084】
HLA-Bチップ
図7A−7Fは、HLA-Bコドン9のハイブリダイゼーションデータを示す。このアレイにおいて、オリゴT フランキング配列を持たない9−12塩基長のプローブは右上に、対応するオリゴT含有30塩基誘導体はマイクロアレイの左にある。ハイブリダイゼーションは、UCLAのHLA参照DNAライブラリーから得られた既知配列バリエーション(サンプル72、21、27、57)の、Cy-3標識した281塩基対のネステッドPCR産物を用いて実施された。また、図7F−G には、ボランティア(MH、BI)から得た281塩基対産物に対するマイクロアレイハイブリダイゼーションのデータを示す。プローブ認識配列を一定に保つなら、オリゴTの付加は短鎖プローブ同族体に比べてハイブリダーゼーションシグナルが10倍向上する。
【0085】
図7Gにおいて、スポット強度は、コドン9用アレイ内で、手動で定量した。図7Gのデータは6群として提示される。最初の4群は、コドン9が既知対立遺伝子型のUCLA参照サンプルのハイブリダイゼーションデータに相当する。コドン9は3対立遺伝子であり、既知の対立遺伝子バリエーションを調べるには3種のハイブリダイゼーションプローブが必要であることから選ばれた。各群中、2組のプローブ型:「長鎖プローブ」、及び、特異性が向上するかどうか決定するために中央の配列特異的配列が1塩基ずつ減らされた「短鎖プローブ」がテストされた。重要なことに、4つのUCLA参照サンプル全てについて、測定された特異性はコドン9においてほぼ完全である(図7G)。これらのハイブリダイズすべき「スポット」は、UCLA標準品から予想される通り明白に検出される。単一ヌクレオチド分解能の特異性が、これらのプローブの10倍過剰、及びいくつかの例においては50倍過剰で認められ、曖昧さのない手を使わない分析を可能にする。
【0086】
ほぼ同等の特異性因子が、コドン50、図7Hにも認められた。図7E−7Fにおいて、マイクロアレイデータは口腔綿DNA由来である(MH、BI)。これらのサンプルはボランティアから得られた口腔DNAであり、HLA型は未知である。したがって、グラフ下の値は、これら2つのサンプルに対する外部検証ではなく「HLA予想」である:コドン9において、MHは見かけ上V2/V3ヘテロ接合体であり、BIはV2/V2ホモ接合体である。棒グラフは、図7A−7Dで4つのUCLA標準品がそうであったように、口腔DNAの明白に定義されたマイクロアレイ分析が、標準化された5ngのHLA-B特異的PCR反応から得られた。一口腔綿あたりのDNA収量は500−2000ngであるから、図7G−7Hのデータは、各口腔綿は100PCR当量以上のDNAを採取することを実証している。そのデータは、単純なデータ分析によって非常に明快なHLA予想が可能であることも示す。プローブは化学修飾されておらず、またオリゴTフランキング配列は物理的な「フィルター」であるから、これらのマイクロアレイのためのプローブ合成及び精製は非常に低コストのままである。
【0087】
実施例9
自動マイクロアレイシグナル分析
生画像(図7Aのような)から強度を抽出する前に、適切な格子作成技術の選択を行う必要がある(図8)。格子の構造情報はスポットの概算の位置を配置するために使用される。マイクロアレイスポットは中心の周りに対称であるから、最適化処理は、スポット近傍で最適なスポットの中心を探すように実行されることができる。生マイクロアレイ画像から始まり、格子作成過程は、生格子概算、局所的スポット中心調整、及び構造的スポット中心調整を含む。格子作成が完了した後、何ピクセルがスポットの一部とみなせるかを決定する必要がある。半径R(ピクセル単位で測定)なら、スポットを囲む2R+1の大きさの四角形が容易に構築できる。ピクセルがスポットの内側かどうかを決めるには、図7A−7Fに例示したように、あるピクセルと四角形の中心ピクセルとの距離Dを計算し、それが半径Rよりも小さいか同じであるかを見る。各ピクセルの情報を保存するのに効率的なデータ構造を利用することにより、上記の方法はあまり大きくないメモリーと計算時間で何千ものスポットを含むマイクロアレイ画像を取り扱うことができる。
【0088】
図7A中の典型的なスポットは、半径15(ピクセル)をもち、スポット中あると見なせるのは709ピクセルである。各スポットの境界を厳密に定義し、あるスポットに含まれるピクセルの強度が、スポットのシグナルに変換された。利用される測定基準は、s個の最も強いピクセルが考慮から除かれた後の、スポットのn個の最も強いピクセルの算術平均である。そのようにする事によって、強度値中のスパイク、ノイズ、ホコリ、及び他の無関係な因子が関与するエラーが除かれる。S及びnの選択は、画像の特性を反映すべきである。
【0089】
プローブは、12のUCLAサンプルに対し、同じ30塩基の改良プローブと共にテストされた。各テストの結果は図7Aに例示したのと同様の画像である。この技法がSNP予測の実施において成功であるという統計的に適切な説明をするために、異なる画像(サンプル)から得た同一プローブのシグナルを合わせた。これは、画像間の信号の標準化を必要とした。実験の性質から、HLAタイピングの画像は、ほとんどの場合、2極化された強度のスポットを含むと予期される(プローブがサンプル中に存在すれば、対応するスポットは極端に強い強度をもつ。一方プローブがサンプル中にないときは、対応するスポットは極端に弱い)。極端な強度をもつスポット数は、プローブとサンプルに特異的である。画像の特性にあわせるための洗練された標準化スキームが、HLAタイピングに選ばれた。それは、極端に高強度のスポットの代表例としてマーカースポット(図7Aの左下の6個の明るいスポット、典型的にはそれらはピクセル当り8ビットのフォーマットの画像において255の強度をもつ)の算術平均をとる。背景ピクセルの算術平均強度は、極端に弱いスポットの代表例として選ばれた。そして、画像の範囲は、マーカースポットと背景の算術平均の差と定義された。 画像は、各画像が標準化後同じ測定範囲を持つように標準化した。
【0090】
次に、各プローブの標準化データは2つのセット、すなわち存在セットと不在セット、に分けられた。プローブ存在セットは、プローブが存在する画像(サンプル)のシグナルを含む。一方、不在セットはプローブが存在しない画像(サンプル)のシグナルを含む。各プローブの存在セットと不在セット間で、マン−ウィットニーU検定を実施した。得られた両側検定p値は、2%から5×10-7%の範囲であり、これはプローブがサンプル中に存在するときと存在しないときのシグナルの差が、2%のレベルで統計的に有意であることを示す。これらの分析は表9に示す。検定のU統計は44であり、これはセットのサイズが22及び2の時に最大であり、すなわち、2.16×10−2がセットサイズ22及び2に対する最小のp値である。
【表9】
【0091】
マイクロアレイ画像がイメージアナライザーとデータ分析法を利用してSNP予測に変換された後、SNP予測は対立遺伝子予測に自動変換される。正確で確固たる対立遺伝子予測は、HLAチップ上の最終的な組織化したプローブのセットの以下の性質によって可能となる:(1)考慮中の各対立遺伝子はある一定の数以上のプローブによって検出可能でなくてはならない;(2)どんな2つの対立遺伝子を決定するサブセットは、ある一定数以上のプローブによって異ならなければならない。
【0092】
対立遺伝子予測は、ディシジョンツリーに基づく方法で実施される。例えば、i p , k i ,..., 1 = 個々のプローブの存在または不在であるとき、( )k p p P ,... 1 = SNP 予測の結果とする。j a , n j ,..., 1 = 個々の対立遺伝子であるとき、{ } n a a A ,... 1 = 考慮する全対立遺伝子とする。i A, k i ,..., 1 = プローブiによって同定し得る対立遺伝子のセットを示す、すなわち、i p = 存在であるとすると、i A 中に最低1対立遺伝子が存在すること、あるいはその逆が予期できる。対立遺伝子予測ディシジョンツリーを、図9に例示する。ツリーの各節は、決断の現段階に存在しそうなAの部分集合を示す。ツリーの根はAである。各々の葉は、サンプル中に存在すると決定された対立遺伝子の最終的な集合である。サンプルのSNP予測では、サンプル中に存在する対立遺伝子の集合は、各プローブの存在/不在に基づいてディシジョンツリーを根から一つの葉に向かって辿ることによって決定される。対立遺伝子予測の過程は今、単純なツリー移動であり、それは「HLAチップ」上のプローブ数に比例する時間複雑性をもつ。従って、SNP予測は、標準的なデスクトップPC(1GHzのCPU及び1GBのRAMを装備)上、秒単位の時間のうちに対立遺伝子予測に変換することができる。対立遺伝子の最終集合が空である可能性もあり、そのような場合は、考慮すべき対立遺伝子の集合について可能な全てのパターンとも異なるハイブリダイゼーションパターンに遭遇したことを意味する。この場合、サンプルは新規対立遺伝子を含むことが疑われ、追加実験、あるいは配列分析に付すべきである。
【0093】
実施例9
科学的興味のあるHLA対立遺伝子決定のための知識に基づいた文献スクリーニングツール
10,000以上のHLA対立遺伝子が知られているが、最も臨床上優位なHLAチップを開発するには、全対立遺伝子のうち科学的関心が最も蓄積した部分に集中することが重要である。その様な対立遺伝子を決定するための知識に基づく文献スクリーニングツールは、PubMedデータベース内の引用によって定義される様に本発明において開発された。一次知識ベーススクリーニングに基づき、約210の対立遺伝子が最も潜在的関心が高いものとして特定された。有意性の測定は、対立遺伝子名を検索語句としてPubMed検索を実施した時のヒット数である。Entrez PubMedは、一般的なウェッブ質問インターフェイスの外のEntrezデータにアクセスを許可するため、eUtilsとして知られる7つのサーバー側プログラムを提供する。EsearchはeUtilの一つで、主ID及び用語翻訳を検索・回収し、ユーザーの環境において将来使用するために結果を保持しておくことも出来る。それは、相対日時、日時範囲、回収モード、ソート順位等の異なるオプションに基づいてIDを回収する。各検索語句用にeUtilのURLをNCBIに通知するスクリプトが、HLA対立遺伝子を検索するために書かれた。それは、PubMed収載のタイトル、要旨、及び全文内に検索語句を探す。スクリプトは、XMLフォーマットの結果を回収する。XMLファイルの「カウント」タグに含まれている各検索語句に対するヒット数は、ファイルを構成要素に分析する事によって得られる。その様な検索は、21のHLA遺伝子由来の対立遺伝子に対して実施した。表10は、21対立遺伝子引用の自動PubMed検索の結果を列挙する。
【表10】
【0094】
表9は、2179対立遺伝子中105が、PubMed内で2以上の引用をもつ。210は、一以上の引用がある。最も重要と認められた、すなわち2以上の引用があった105対立遺伝子について、アメリカ合衆国内の4つの重要な集団における頻度情報を収集した。このリストは、ワクチン応答におけるHLAの役割に関する現在の理解に関してさらに編集することが出来、元来の210対立遺伝子候補由来の対立遺伝子群を特定する、約10のPCR反応と400のSNP特異的プローブが設計されるであろう。これらは、HLAチップとそれに伴うサンプル処理プロトコルを構築するための原材料となる。全210のPubMed内で「一以上引用」される対立遺伝子は、図10中のチャートに列挙する。右側にPubMed引用数を列挙する。
【0095】
実施例10
HLAチップ用候補プローブの選択
IMGT/HLAデータベースは、各HLA遺伝子座の複数の整列を提供する。整列した配列は、SNPが明白に印付けられるようなフォーマットである。SNPは、ある対立遺伝子を他とは異ならせるものである。SNPの組合せは、対立遺伝子を特異的に示すことができる。簡単な計算から、HLA-Bエクソン2中には125、エクソン3には93のSNPがあり、各々553及び562の対立遺伝子をコードしていることが知られている。SNPが起こる各位置において、SNPの周囲の短いn量体(13−15ヌクレオチド長)は、候補プローブ配列のテンプレートから除かれる。単純テンプレートと複合テンプレートの2種類のテンプレートがある。単純テンプレートは、ただ一つのSNPを含む。例えば、エクソン3中36位にSNPがあり、両側6ヌクレオチド以内に他のSNPはない。中央のSNPとその両側の6ヌクレオチドから成る13残基のテンプレートが、このSNP用に作製された。テンプレートは、5’-TGCGACXTGGGGC(配列番号318)であり、ここでXはSNPを示す。対立遺伝子B*7301では、この場所は「A」である。対立遺伝子B*0712及び他の126対立遺伝子においては、「C」である。参照対立遺伝子を含む残りのHLA-B対立遺伝子においては、「G」である。従って、A-、C-、G-多型をもつ 3種のプローブ候補がこのテンプレートから作製された。この場合、対立遺伝子B*0712及びSNP位に「C」をもつ他の全対立遺伝子は、C-多型をもつプローブ候補により特定されるといわれる。同時に、対立遺伝子B*7301は、A-多型をもつプローブ候補によって特定される。
【0096】
複数のSNPは、隣接して、あるいは非常に短い距離内で起こることがあり、それらは同じテンプレート内に入る。その様なテンプレートは、複合テンプレートとして知られている。エクソン3中の254位からスタートする13残基は、複合テンプレートの一例である。それは、260位と一ヌクレオチド間に挟んだ位置に2つのSNPを含む。複合テンプレートは、5’-GAAGGAXAYGCTG(配列番号319)で、X及びYは2箇所のSNPを示す。SNPの組み合わせが考慮された。3つのプローブ候補が、このテンプレートから作製された。31対立遺伝子がC-及びC-多型をもつプローブ候補によって特定される。478対立遺伝子がG-及びC-多型をもつプローブ候補によって特定される。参照対立遺伝子を含む残りのHLA-B対立遺伝子は、C-及びA-多型をもつプローブ候補によって特定される。
【0097】
次のステップにおいて、残りのヒトゲノム、及び臨床サンプル中に1、2、または3ミスマッチを伴って出現することが予期される〜1000の微生物中に現れる候補プローブ配列を、更なる考察によって取り除くことが出来る。これは、「バックグラウンド−ブラインド」技術として知られる、最近開発された計算能力によって可能となる。その新技術は、ヒトゲノム並の配列(3ギガ塩基)中の22ヌクレオチド長までの全部分配列(n残基)の存在/不在の妥当な時間内での正確な分析の実行を可能にする。さらに、(BLASTに基づくプローブ/プライマーデザインアプリケーションのような伝統的な発見的教授法に基づく整列と対照的に)対象とする各配列由来の1、2、及び3のミスマッチを伴う全ての部分配列の厳密な考慮を可能にする。
【0098】
図10に示すようなマスターリストが与えられる場合、上記の計算はSNP特異的プローブの「完全セット」及び「最小セット」の作製を可能にする。「完全セット」は、図10のようなマスターリストの全対立遺伝子中の全SNPを特定する、非常に冗長な全プローブの集積である。「最小プローブセット」は、完全セットが特定するのと同じ対立遺伝子を特定することが出来るが、それを最小数のプローブで行う。この最小化は、完全セットから系統的にプローブ(SNP部位)を除去することによって行われるだろう。各ステップで、アルゴリズムが除去するプローブを選ぶ。選んだプローブ以外の残りのプローブセットが、マスターリスト中の同じ対立遺伝子セットを特定できるならば、この特定のプローブは、分析範囲を損なうことなく除くことが出来る。そうでないときは、アルゴリズムは別のプローブを選択し、上記過程を繰り返す。セット中のどのプローブを除いても特定できる対立遺伝子が減少すると、止まる。この時点で、プローブセットは最小限である。この最小限のセットに、単一の対立遺伝子を特定するプローブが対照として加えられる。2サンプルの対立遺伝子が与えられると、これらのプローブセットは2サンプル間の相同性、すなわち、どの対立遺伝子が両方のセットに存在するか、の測定に使用できる。これは、2個人間の適合性が対象とされる注目点である、移植に非常に有用であり得る。その他の場合には、個人間の違いを特定し得る。例えば、2人の患者が、HLA遺伝子の違いによって、同じ薬物または治療に対して異なった反応をする可能性がある。これは、最適セットの概念の背後にある主な動機である。一組の対立遺伝子の最適プローブセットは、最小数のプローブでその中の各対立遺伝子を特定することができる。最適セット生成のためのディシジョンツリーに基づくアルゴリズムを、開発可能である。
【0099】
実施例11
対象とする遺伝子座を増幅するための最適PCR数
表9は、10の対象とする遺伝子座を増幅するのに要する、一次及び、いくつかの例については二次PCR反応のおよその数を示す。一次及び二次(ネステッド)PCRの両方とも、A、B、Cに必要であろう。3つの一次PCRは多重進行により一つの反応にでき、その後、ネステッドステップの第2の多重反応が続く。 従って、クラスI遺伝子の全セットに、2つのPCR反応だけが必要である。
【0100】
全クラスII遺伝子(表11)に対して1つのエクソンしか、クラスII遺伝子の主要SNP種の分析には必要ない。必要なら、純粋に単離されたDRB1に対してネステッドPCRを適用してよい。DPA1、DPB1、DQA1及びDQB1は、偽遺伝子と区別するのにネスティングを必要としないかもしれない。DRB1の一次PCRが多重進行できれば、クラスII増幅は一つの一次PCRと一つの二次PCR反応で達成することが出来る。
【表11】
【0101】
本明細書で言及したいずれの特許または出版物も、本発明が関係する分野の当業者の水準を示す。さらに、これらの特許及び出版物は、個々の出版物が具体的かつ個別に参照によって収載された場合と同等に、本明細書に参照することにより援用する。
【0102】
当業者は、目的を達成し、記載された目標と利点を獲得することを目的として、本発明を、うまく適合させ、また、本明細書に固有の目的、目標及び利点を容易に認識するであろう。請求項の適応範囲によって定義されるような、本発明の精神の範囲内に含まれる変更及び他の用途は、当業者の考え得るところであろう。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1A】HLA-A遺伝子座の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1B】HLA-B遺伝子座の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1C】HLA-Aエクソン2の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1D】HLA-Aエクソン3の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1E】HLA-Bエクソン2の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1F】HLA-Bエクソン2の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1G】HLA-DRB1座の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1H】HLA-DRB1座の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1I】HLA-DRB1エクソン2の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図1J】HLA-DRB1エクソン2の、表2のプライマー対を使用したPCR増幅産物のゲルを示す。PCR及びゲルの条件は、実施例2で説明されている(図中bp=塩基対)。
【図2A】「口内洗浄」法により採取しFTA紙上に保存された5個の口辺サンプルのDNA抽出物からPCRによって増幅された558塩基対のアンプリコン(図2A)が、無損傷であり、血液サンプル由来の、抽出されたばかりのヒトDNA(図2B)と同様であることを示す。DNAを抽出後、FTA紙カード上に保存し、その後GenVault(GenVault社(米国、カリフォルニア州、カールスバド所在))のDNA溶出製品によって溶出した。PCR増幅は標準的方法により実施し、アガロースゲル上で分析した。各レーンは10ngのDNA原材料由来のPCR増幅産物を含む。558塩基対アンプリコンを産生するDNAサンプルを添加した陽性標準品をレーン6に示し、レーン7にはアンプリコンは添加されていない。1キロ塩基対大のマーカーをレーン8に示した。
【図2B】血液サンプル由来の、抽出されたばかりのヒトDNA抽出物からPCRによって増幅された558塩基対のアンプリコン。手順は図2Aに準じた。
【図3A】Fitzco社製ダクロン材の口腔用綿を用いて得た558塩基対アンプリコンのゲルを示す。レーン2−4はArgylla社製プレップパーティクルを用いて回収したDNAを示し、レーン5−7はQiagen社クリーンアップカラムを用いて回収したDNAを示す。レーン1は分子量マーカーである。ゲルは、レーンあたりPCR産物の1/10を持つ。レーン1は、分子量マーカーである。
【図3B】特異的プライマーと、4種のUCLA参照標準59、15、20、及び45と、2人の自発提供者(MH及びBI)の口腔綿付着物から抽出したDNAとを用いたPCR産物を示すゲルである。ピコグリーン(サンプルの1/100-1/200当量)によって評価される通り、各DNAはHLA-Bエクソン2を増幅して281塩基対のアンプリコンを産生するネステッドPCRに使用された。ゲルは、レーンあたりPCR産物の1/10を持つ。レーン1は、分子量マーカーである。
【図4A】部分的に損傷したマイクロアレイ画像を示す。スポット格子は、円でマークされている。
【図4B】マイクロアレイ画像の先進的自動画像解析におけるソフトウェアパッケージ「画像分析器」の効果。画像分析器によるフィルタリング、背景補正、精密な格子作成後の図4Aと同じ画像を示す。スポット格子は、円でマークされている。
【図5A】K-ras 1、K-ras 2及びK-ras 7に表5に示す捕捉プローブを使用したハイブリダイゼーションの結果を表すマイクロアレイパターン。図5Aは、すべての野生型の標的及び変異体2−5のハイブリダイゼーションを示す。パターン認識は視認であった。
【図5B】K-ras 1、K-ras 2及びK-ras 7に表5に示す捕捉プローブを使用したハイブリダイゼーションの結果を表すマイクロアレイパターン。図5Bは、ホモ接合性野生型の結合を示す。パターン認識は視認であった。
【図5C】K-ras 1、K-ras 2及びK-ras 7に表5に示す捕捉プローブを使用したハイブリダイゼーションの結果を表すマイクロアレイパターン。図5Cは、ホモ接合性変異体7の結合を示す。パターン認識は視認であった。
【図5D】K-ras 1、K-ras 2及びK-ras 7に表5に示す捕捉プローブを使用したハイブリダイゼーションの結果を表すマイクロアレイパターン。図5Dは、野生型と変異体2を含むヘテロ接合性標的サンプルの結合特性を示す。パターン認識は視認であった。
【図6A】UCLA参照配列、配列再分析及びHLA‐Bチップからの主要パフォーマンスデータの比較。灰色のセルは、UCLA対立遺伝子型である。太字のセルは一方または両方の対立遺伝子のアレイアッセイを示し、下線を付したセルはアレイがUCLA対立遺伝子型と一致しないことを示し、斜体のセルは配列分析がUCLA対立遺伝子型と一致しないことを示す。その他のセルはUCLA対立遺伝子型と100%一致する結果を示す。
【図6B】UCLA参照配列、配列再分析及びHLA‐Bチップからの主要パフォーマンスデータの比較。灰色のセルは、UCLA対立遺伝子型である。太字のセルは一方または両方の対立遺伝子のアレイアッセイを示し、下線を付したセルはアレイがUCLA対立遺伝子型と一致しないことを示し、斜体のセルは配列分析がUCLA対立遺伝子型と一致しないことを示す。その他のセルはUCLA対立遺伝子型と100%一致する結果を示す。
【図7A】UCLA参照サンプル72のHLAマイクロアレイ画像。
【図7B】UCLA参照サンプル21のHLAマイクロアレイ画像。
【図7C】UCLA参照サンプル27のHLAマイクロアレイ画像。
【図7D】UCLA参照サンプル57のHLAマイクロアレイ画像。
【図7E】ボランティアMDの口腔綿付着物由来DNAのHLAマイクロアレイ画像。
【図7F】ボランティアBIの口腔綿付着物由来DNAのHLAマイクロアレイ画像。
【図7G】コドン9の最上段パネルのアレイ中でのスポット強度の定量化を例示する。図7G中のデータは、6つのクラスターとして提示される。最初の4クラスターは、コドン9に既知対立遺伝子型をもつUCLA参照サンプルのハイブリダイゼーションデータに相当する。各クラスター中、オリゴT配列を両側に含む「長鎖プローブ」、及び、特異性が向上するかどうかを決定するために、中央の配列特異的配列を一塩基ずつ短くした「短鎖プローブ」の、2種のプローブがテストされた。
【図7H】HLA‐Bコドン50に関する、同様の長鎖プローブ(外側セグメントをもつ)と短鎖プローブ(外側プローブをもたない)を用いたハイブリダイゼーションの結果。
【図8】スポットサイズを測定する過程の例示。(A2 + B2)の平方根をDとして、D≦Rのとき、Pはスポットの一部とする。
【図9】ディシジョンツリーを用いた対立遺伝子型判定法を例示する。左矢印は上の菱形中の条件が真であることを示し、右矢印は上の菱形中の条件が偽であることを示す。
【図10A】PubMedデータベースの自動検索によって特定された210個のHLA対立遺伝子をリストしたチャート。黄色の網掛け部分は、その対立遺伝子型がUCLAクラスI群中に存在することを示す。緑色の網掛け部分は、その対立遺伝子型がUCLAクラスII群中に存在することを示す。オレンジ色の網掛け部分は、その対立遺伝子型が、より高分解能またはより低い非コード分解能でUCLA群中に存在することを示す。青色の網掛け部分は、その対立遺伝子がいずれのUCLA群にも見られないことを示す。
【図10B】PubMedデータベースの自動検索によって特定された210個のHLA対立遺伝子をリストしたチャート。黄色の網掛け部分は、その対立遺伝子型がUCLAクラスI群中に存在することを示す。緑色の網掛け部分は、その対立遺伝子型がUCLAクラスII群中に存在することを示す。オレンジ色の網掛け部分は、その対立遺伝子型が、より高分解能またはより低い非コード分解能でUCLA群中に存在することを示す。青色の網掛け部分は、その対立遺伝子がいずれのUCLA群にも見られないことを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA遺伝子を増幅するためのプライマー。
【請求項2】
前記HLA遺伝子がHLA A、B、またはDRB1、またはそれらのエクソンであることを特徴とする請求項1記載のプライマー。
【請求項3】
前記HLA-Aプライマーが配列番号14−15に示す配列を有し、前記HLA-Aエクソン2プライマーが配列番号20−21に示す配列を有し、前記HLA-Aエクソン3プライマーが配列番号22−26に示す配列を有することを特徴とする請求項2記載のプライマー。
【請求項4】
前記HLA-Bプライマーが配列番号16−19に示す配列を有し、前記HLA-Bエクソン2プライマーが配列番号27−28に示す配列を有し、HLA-Bエクソン3プライマーが配列29−31に示す配列を有することを特徴とする請求項2記載のプライマー。
【請求項5】
前記HLA-DRB1プライマーが配列番号32−37に示す配列を有し、前記HLA-Bエクソン2プライマーが配列番号38−47に示す配列を有することを特徴とする請求項2記載のプライマー。
【請求項6】
HLA遺伝子内の一塩基多型(SNP)を検出するためのハイブリダイゼーションプローブであって、
前記SNPを含む領域に相補的な約9−15残基のオリゴヌクレオチドと、
5’末端及び3’末端側のフランキング配列と、
を含むことを特徴とするプローブ。
【請求項7】
前記フランキング配列がオリゴチミジンまたはオリゴチミジン様ポリアニオン系ポリマーであることを特徴とする請求項6記載のハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項8】
前記SNPがHLA-Aエクソン2またはエクソン3、HLA-Bエクソン2またはエクソン3、またはHLA-DRB1エクソン2内に位置することを特徴とする請求項6記載のハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項9】
前記HLA-Aエクソン2プローブが配列番号48−49に示す配列を有し、前記HLA-Aエクソン3プローブが配列番号100−153に示す配列を有することを特徴とする請求項8記載のハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項10】
前記HLA-Bエクソン2プローブが配列番号154−237に示す配列を有し、前記HLA-Bエクソン3プローブが配列番号238−239に示す配列を有することを特徴とする請求項8記載のハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項11】
陽イオン性表面を有する基材と、
吸着された、1つ以上の請求項6記載のハイブリダイゼーションプローブを含む、単分子層と、
を有してなる、
HLA遺伝子の対立遺伝子タイピング用のマイクロアレイ装置。
【請求項12】
前記陽イオン性表面が、アミノシラン、グアニジニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、または酸化ジルコニウム、あるいは、他の同等の荷電部分を含むことを特徴とする請求項11記載のマイクロアレイ装置。
【請求項13】
前記基材がガラス、プラスティック、または金属であることを特徴とする請求項11記載のマイクロアレイ装置。
【請求項14】
前記ハイブリダイゼーションプローブとともに共吸着されたオリゴチミジンをさらに含むことを特徴とする請求項11記載のマイクロアレイ装置。
【請求項15】
前記オリゴチミジンが約20から約40のチミジンを有することを特徴とする請求項14記載のマイクロアレイ装置。
【請求項16】
オリゴチミジンに結合した蛍光色素をさらに含むことを特徴とする請求項14記載のマイクロアレイ装置。
【請求項17】
キャップ剤をさらに含むことを特徴とする請求項11記載のマイクロアレイ装置。
【請求項18】
HLA遺伝子を増幅するための遺伝子特異的プライマーと、
請求項11記載のマイクロアレイ装置と、
を含む、
集団HLA遺伝子タイピング用のキット。
【請求項19】
前記プライマーが配列番号14−47に示す配列を有することを特徴とする請求項18記載のキット。
【請求項20】
PCR反応用緩衝剤及びポリメラーゼ、または蛍光色素、またはこれらの組合せをさらに含むことを特徴とする請求項18記載のキット。
【請求項21】
フィールド環境における即時ハイスループット集団HLA対立遺伝子タイピング用のシステムであって、
請求項11記載のマイクロアレイ装置と、
集団を構成する個人からDNAサンプルを採取及び精製する手段と、
採取したDNAから1つ以上の対象とするHLA遺伝子のcRNA標的アンプリコンをPCRによって生成する手段と、
対象とする各個人のHLA遺伝子にHLA対立遺伝子型を割り当てる手段と、
を有してなり、
前記システムを構成する個々の手段及び装置が、携帯可能であって、フィールド環境で即時操作可能であることを特徴とする、
システム。
【請求項22】
前記HLA遺伝子がHLA-A、HLA-BまたはHLA-DRB1であることを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項23】
前記DNAサンプルを採取するための手段が、
個人から採取した口腔洗浄サンプル、口腔綿サンプル、または血液サンプルを収容するのに適した容器
を含むことを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項24】
前記標的アンプリコンを生成するための手段が、対象とする前記HLA遺伝子を増幅するためのHLA遺伝子特異的プライマーを含むことを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項25】
前記遺伝子特異的プライマーが配列番号14−47に示す配列を有することを特徴とする請求項24記載のシステム。
【請求項26】
前記各個人にHLA対立遺伝子型を割り当てるための手段が、
マイクロアレイ装置上に吸着されたハイブリダイゼーションプローブに標的をハイブリダイゼーションした後に、該マイクロアレイ装置上に形成されるハイブリダイゼーションパターンを検出するのに適合した画像化装置と、
画像化されたハイブリダイゼーションパターンをHLA対立遺伝子型として認識するのに適合したアルゴリズム集を含むパターン認識ソフトウェアと、
を含むことを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項27】
前記ハイブリダイゼーションプローブが配列番号48−289に示す配列を有することを特徴とする請求項26記載のシステム。
【請求項28】
即時ハイスループット遺伝子タイピングが、一時間一稼動システムあたり約200から約300のHLA対立遺伝子型であることを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項29】
フィールド環境における即時集団HLA対立遺伝子タイピングの方法であって、
前記集団の一人以上の構成員からDNAを採取し、
前記DNAを分析用に精製し、
遺伝子特異的プライマーを用いて、前記DNAに含まれる対象とするHLA遺伝子から標的アンプリコンを生成し、
請求項11記載のマイクロアレイを構成するハイブリダイゼーションプローブを前記標的と接触させ、
前記接触後に形成される、ハイブリダイゼーションパターンを画像化し、ここで、各HLA対立遺伝子型はそれに関連するパターンを有する、
各工程を有してなる、
方法。
【請求項30】
前記採取したDNAを保存する工程をさらに含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記DNAが、血液から、口腔綿を用いて、または口腔洗浄により採取されることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記遺伝子特異的プライマーが配列番号14−47に示す配列を有することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記ハイブリダイゼーションプローブが配列番号48−289に示す配列を有することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項34】
決定された対立遺伝子型に基づいて、各個人の生物剤または兵器による感染リスクを評価する工程をさらに含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項35】
各個人の生物剤または兵器に対する特定のワクチンに対する応答を評価する工程をさらに含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項36】
前記集団の各個人に割り当てられた対立遺伝子型が、それらの決定手段を含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項1】
HLA遺伝子を増幅するためのプライマー。
【請求項2】
前記HLA遺伝子がHLA A、B、またはDRB1、またはそれらのエクソンであることを特徴とする請求項1記載のプライマー。
【請求項3】
前記HLA-Aプライマーが配列番号14−15に示す配列を有し、前記HLA-Aエクソン2プライマーが配列番号20−21に示す配列を有し、前記HLA-Aエクソン3プライマーが配列番号22−26に示す配列を有することを特徴とする請求項2記載のプライマー。
【請求項4】
前記HLA-Bプライマーが配列番号16−19に示す配列を有し、前記HLA-Bエクソン2プライマーが配列番号27−28に示す配列を有し、HLA-Bエクソン3プライマーが配列29−31に示す配列を有することを特徴とする請求項2記載のプライマー。
【請求項5】
前記HLA-DRB1プライマーが配列番号32−37に示す配列を有し、前記HLA-Bエクソン2プライマーが配列番号38−47に示す配列を有することを特徴とする請求項2記載のプライマー。
【請求項6】
HLA遺伝子内の一塩基多型(SNP)を検出するためのハイブリダイゼーションプローブであって、
前記SNPを含む領域に相補的な約9−15残基のオリゴヌクレオチドと、
5’末端及び3’末端側のフランキング配列と、
を含むことを特徴とするプローブ。
【請求項7】
前記フランキング配列がオリゴチミジンまたはオリゴチミジン様ポリアニオン系ポリマーであることを特徴とする請求項6記載のハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項8】
前記SNPがHLA-Aエクソン2またはエクソン3、HLA-Bエクソン2またはエクソン3、またはHLA-DRB1エクソン2内に位置することを特徴とする請求項6記載のハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項9】
前記HLA-Aエクソン2プローブが配列番号48−49に示す配列を有し、前記HLA-Aエクソン3プローブが配列番号100−153に示す配列を有することを特徴とする請求項8記載のハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項10】
前記HLA-Bエクソン2プローブが配列番号154−237に示す配列を有し、前記HLA-Bエクソン3プローブが配列番号238−239に示す配列を有することを特徴とする請求項8記載のハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項11】
陽イオン性表面を有する基材と、
吸着された、1つ以上の請求項6記載のハイブリダイゼーションプローブを含む、単分子層と、
を有してなる、
HLA遺伝子の対立遺伝子タイピング用のマイクロアレイ装置。
【請求項12】
前記陽イオン性表面が、アミノシラン、グアニジニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、または酸化ジルコニウム、あるいは、他の同等の荷電部分を含むことを特徴とする請求項11記載のマイクロアレイ装置。
【請求項13】
前記基材がガラス、プラスティック、または金属であることを特徴とする請求項11記載のマイクロアレイ装置。
【請求項14】
前記ハイブリダイゼーションプローブとともに共吸着されたオリゴチミジンをさらに含むことを特徴とする請求項11記載のマイクロアレイ装置。
【請求項15】
前記オリゴチミジンが約20から約40のチミジンを有することを特徴とする請求項14記載のマイクロアレイ装置。
【請求項16】
オリゴチミジンに結合した蛍光色素をさらに含むことを特徴とする請求項14記載のマイクロアレイ装置。
【請求項17】
キャップ剤をさらに含むことを特徴とする請求項11記載のマイクロアレイ装置。
【請求項18】
HLA遺伝子を増幅するための遺伝子特異的プライマーと、
請求項11記載のマイクロアレイ装置と、
を含む、
集団HLA遺伝子タイピング用のキット。
【請求項19】
前記プライマーが配列番号14−47に示す配列を有することを特徴とする請求項18記載のキット。
【請求項20】
PCR反応用緩衝剤及びポリメラーゼ、または蛍光色素、またはこれらの組合せをさらに含むことを特徴とする請求項18記載のキット。
【請求項21】
フィールド環境における即時ハイスループット集団HLA対立遺伝子タイピング用のシステムであって、
請求項11記載のマイクロアレイ装置と、
集団を構成する個人からDNAサンプルを採取及び精製する手段と、
採取したDNAから1つ以上の対象とするHLA遺伝子のcRNA標的アンプリコンをPCRによって生成する手段と、
対象とする各個人のHLA遺伝子にHLA対立遺伝子型を割り当てる手段と、
を有してなり、
前記システムを構成する個々の手段及び装置が、携帯可能であって、フィールド環境で即時操作可能であることを特徴とする、
システム。
【請求項22】
前記HLA遺伝子がHLA-A、HLA-BまたはHLA-DRB1であることを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項23】
前記DNAサンプルを採取するための手段が、
個人から採取した口腔洗浄サンプル、口腔綿サンプル、または血液サンプルを収容するのに適した容器
を含むことを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項24】
前記標的アンプリコンを生成するための手段が、対象とする前記HLA遺伝子を増幅するためのHLA遺伝子特異的プライマーを含むことを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項25】
前記遺伝子特異的プライマーが配列番号14−47に示す配列を有することを特徴とする請求項24記載のシステム。
【請求項26】
前記各個人にHLA対立遺伝子型を割り当てるための手段が、
マイクロアレイ装置上に吸着されたハイブリダイゼーションプローブに標的をハイブリダイゼーションした後に、該マイクロアレイ装置上に形成されるハイブリダイゼーションパターンを検出するのに適合した画像化装置と、
画像化されたハイブリダイゼーションパターンをHLA対立遺伝子型として認識するのに適合したアルゴリズム集を含むパターン認識ソフトウェアと、
を含むことを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項27】
前記ハイブリダイゼーションプローブが配列番号48−289に示す配列を有することを特徴とする請求項26記載のシステム。
【請求項28】
即時ハイスループット遺伝子タイピングが、一時間一稼動システムあたり約200から約300のHLA対立遺伝子型であることを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項29】
フィールド環境における即時集団HLA対立遺伝子タイピングの方法であって、
前記集団の一人以上の構成員からDNAを採取し、
前記DNAを分析用に精製し、
遺伝子特異的プライマーを用いて、前記DNAに含まれる対象とするHLA遺伝子から標的アンプリコンを生成し、
請求項11記載のマイクロアレイを構成するハイブリダイゼーションプローブを前記標的と接触させ、
前記接触後に形成される、ハイブリダイゼーションパターンを画像化し、ここで、各HLA対立遺伝子型はそれに関連するパターンを有する、
各工程を有してなる、
方法。
【請求項30】
前記採取したDNAを保存する工程をさらに含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記DNAが、血液から、口腔綿を用いて、または口腔洗浄により採取されることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記遺伝子特異的プライマーが配列番号14−47に示す配列を有することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記ハイブリダイゼーションプローブが配列番号48−289に示す配列を有することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項34】
決定された対立遺伝子型に基づいて、各個人の生物剤または兵器による感染リスクを評価する工程をさらに含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項35】
各個人の生物剤または兵器に対する特定のワクチンに対する応答を評価する工程をさらに含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項36】
前記集団の各個人に割り当てられた対立遺伝子型が、それらの決定手段を含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【公表番号】特表2009−528060(P2009−528060A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557340(P2008−557340)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/005121
【国際公開番号】WO2008/048355
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(508259320)ジェノミックス ユーエスエイ (1)
【氏名又は名称原語表記】Genomics USA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/005121
【国際公開番号】WO2008/048355
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(508259320)ジェノミックス ユーエスエイ (1)
【氏名又は名称原語表記】Genomics USA
【Fターム(参考)】
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