説明

集塵機能を有するレーザ加工装置

【課題】 1台の集塵装置で複数台のレーザ加工機の集塵を行った場合、接続される各加工機の集塵シャッタが、各レーザ加工機の起動、停止により不規則に開閉するため、稼動台数により集塵力が変動する。
【解決手段】 前記レーザ加工機のそれぞれと、ワーク加工時に発生するガス及びスラグを吸気により回収する集塵設備と、の間にバイパス穴を有する切り換え器を設け、吸気する方向を、前記レーザ加工機のそれぞれと前記バイパス穴とに切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工時のガス、及びスラグを吸気することにより回収するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集塵機能を備えるレーザ加工機として、特許文献1には、ワークの加工に伴い発生する加工塵を集塵する集塵手段を備えたレーザ加工機が開示されている。
そのような従来技術においては、集塵手段によりワーク加工時に発生する加工塵などを集塵する場合、集塵シャッタを開閉して加工後の吸気を停止させることによって、加工後の騒音低下、及び、加工ワークを機械に装着する際の吸い上げを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−343269(図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1台の集塵装置で1台のレーザ加工機の集塵を行う場合には問題とならなかったが、近年、低コスト化、省スペース化のために1台の集塵装置で複数台のレーザ加工機の集塵を行うことが要求されている。1台の集塵装置で複数台のレーザ加工機の集塵を行った場合、接続される各加工機の集塵シャッタが、各レーザ加工機の起動、停止により不規則に開閉するため、稼動台数により集塵力が変動する。
【0005】
集塵力が変動すると、加工時に発生するガスを十分集塵することができず、加工される穴形状が変化してしまう。レーザ加工機の極小径加工においては、加工穴径0.05〜0.07mmで真円度90%以上の高精度の加工が要求され、上記のような集塵状態の変化が突発的な精度悪化の要因になる。
【0006】
本発明の目的は、上記した課題を解決し、1台の集塵装置で複数台のレーザ加工機の集塵を行う場合でも、集塵力の変化の少ないレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、前記レーザ加工機のそれぞれと、ワーク加工時に発生するガス及びスラグを吸気により回収する集塵設備と、の間にバイパス穴を有する切り換え器を設け、吸気する方向を、前記レーザ加工機のそれぞれと前記バイパス穴とに切り換えることを特徴とする。このとき、前記レーザ加工機が稼動している時には当該レーザ加工機から吸気する方向に前記切り換え器を切り換え、前記レーザ加工機が稼動していない時には前記バイパス穴から吸気する方向に前記切り換え器を切り換える。
【0008】
この場合、前記切り換え器の吸気する方向が、前記レーザ加工機のそれぞれの方向あっても、前記バイパス穴の方向であっても通過する風量が変わらない状態となり、前記レーザ加工機の稼働台数に変動があっても、集塵状態を常に一定に保つことが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、集塵設備で複数台のレーザ加工機それぞれの集塵を行う場合でも、集塵力の変化が少ないため、加工精度に優れたレーザ加工ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る切り換え器の概観図である。
【図2】本発明に係る切り換え器の断面図(集塵を行う状態)である。
【図3】本発明に係る切り換え器の断面図(集塵を行わない状態)である。
【図4】本発明に係るレーザ加工機の概観図である。
【図5】本発明に係る集塵配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図4は本発明に係るレーザ加工機の概観図、図5は集塵配管図である。
ベース10上にはX方向のガイド11を介してX方向に移動可能なクロステーブル12が支持され図示しない駆動機構により矢印X方向に移動可能である。Y方向に移動可能なテーブル13はY方向のガイド19を介しクロステーブル12上に支持されており、図示しない駆動機構により矢印Y方向に移動可能である。ワーク14はテーブル13上に固定されている。
【0013】
コラム15は、ベース10上に固定されている。集光レンズ21はベースプレート20を介しコラム15に固定されている。レーザビーム24はコラム15上に固定されたレーザ発振器23より出射され反射ミラー22、集光レンズ21を介しワーク14上に照射され27の位置に加工される。
【0014】
集塵ダクト17は、ブラケット18を介しコラム15に固定されており、ホース8A、切り換え器9、ホース8Bを介し集塵設備26に接続される。
【0015】
前記ワーク14は、図示しない制御回路からの指定により、クロステーブル12、テーブル13の移動により、任意の位置に位置決めされた後、図示しない制御回路からの指令によりレーザ発振器23より出射されたレーザビーム24で加工される。
【0016】
このとき発生するガス、およびスラグはダクト17、ホース8A、切り換え器9、ホース8Bを介し集塵設備26によって回収される。レーザ加工機25は複数台あり図5に示すようにそれぞれが集塵配管8Cを介し、常時稼動している集塵設備26に接続されている。レーザ加工機25A、25B、25C、25Dは稼動時に各々の切り換え器9A、9B、9C、9Dを開き集塵を行う。
【0017】
図1は本発明に係る切り換え器9の構成を示す。
【0018】
図2は図1に示す切り換え器9のZ−Z断面図である。
【0019】
スライダ2は、ケーシング1内に摺動可能に嵌合されている。シリンダ4は、ケーシング1に固定され、シリンダ4のロッド4Aの端はスライダ2に固定されている。スライダ2には集塵穴5とバイパス穴6が設けられており、図示しない空気回路により、シリンダ4が駆動されるとロッド4Aが移動し、ケーシング1に摺動可能に嵌合されたスライダ2が移動する。
【0020】
図3はシリンダ4が駆動され、スライダ2が移動した状態を示す。
【0021】
ケーシングには接続口7A、7Bがあり接続されるホース8Bの端は図示しない集塵設備に接続されており、矢印C方向に空気が流れる。接続口7Aには、ホース8Aが接続され、図示しない接続ダクトに接続されている。シリンダ4の駆動によりスライダ2が移動し接続口7Aと7Bはスライダ2により遮断されると共に接続口7Bにバイパス口6が位置決めされる。また、この位置は、ケーシング1に設けられたバイパス穴6Aがスライダ6側のバイパス穴と結合される位置であり、吸気はケーシング1のバイパス穴6Aに勘合されているフィルタ3を通して行われる。
【0022】
以上により、切り換え器9のスライダ2の移動により吸気が遮断されたとしても吸気されるエアーはバイパス穴6、6Aを介し流れるため吸気側Cの圧力、風量の変動は発生しない。
【符号の説明】
【0023】
1 ケーシング
2 スライダ
3 フィルタ
4 シリンダ
4A ロッド
5 集塵穴
6 バイパス穴(スライダ)
6A バイパス穴(ケーシング)
7A、7B 接続口
8A、8B ホース
8C 集塵配管
9、9A、9B、9C、9D 切り換え器
10 ベース
11 X方向のガイド
12 クロステーブル
13 テーブル
14 ワーク
15 コラム
16 ブラケット
17 ダクト
18 ダクトブラケット
19 Y方向のガイド
20 ベースプレート
21 集光レンズ
22 反射ミラー
23 レーザ発振器
24 レーザビーム
25、25A、25B、25C、25D レーザ加工機
26 集塵設備
C 集塵の流れ方向
X X軸方向
Y Y軸方向
Z 断面方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク加工時に発生するガス、及びスラグを吸気することにより回収する集塵機能を有するレーザ加工装置において、
前記ワークに穴加工を行う複数のレーザ加工機と、
前記ワーク加工時に発生するガス、及びスラグを吸気により回収する集塵設備と、
各々の前記レーザ加工機と前記集塵設備とを接続する集塵配管と、
前記レーザ加工機ごとに前記集塵配管に設けられ、前記レーザ加工機ごとに吸気する方向とバイパス穴から吸気する方向とを切り換えるための、切り換え器と、を備え、
前記レーザ加工機が稼動している時には当該レーザ加工機から吸気する方向に前記切り換え器を切り換え、
前記レーザ加工機が稼動していない時には前記バイパス穴から吸気する方向に前記切り換え器を切り換える、
ことを特徴とする集塵機能を有するレーザ加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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