集積化された核酸分析
本開示は核酸分析を行う完全に集積化されたマイクロ流体システムを提供する。これらのプロセスはサンプル収集、核酸抽出および精製、増幅、配列決定、ならびに分離および検出を含む。また、本開示は光学検出システムおよび生体分子の分離および検出の方法を提供する。具体的に、本発明のさまざまな態様は、1つまたは複数のマイクロ流体チャンバーまたはチャネル内で、複数の生体分子、典型的に蛍光染料標識した核酸の同時分離および検出を可能にする。核酸は少なくとも6染料で標識することができ、各々独自のピーク発光波長を有する。本システムおよび方法は、遺伝子指紋によるヒトの識別などのDNAフラグメントサイズ決定用途、および臨床診断などのDNA配列決定用途に特に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
間連出願の相互参照文献
本出願は、35U.S.C第119号(e)項に基づき、2007年4月4日出願の米国特許仮出願第60/921,802号、2007年8月13日出願の米国特許仮出願第60/964,502号、2008年2月12日出願の米国特許仮出願第61/028,073号の出願日付の優先権を請求するものであり、これらはいずれもその全体を参照して本出願に援用される。また、本出願は、2つの米国特許出願;一つは「“Methods for Rapid Multiplexed Amplification of Target Nucleic Acids”(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」 (Attorney Docket No. 08-318-US)と題され;もうひとつは「“Plastic Microfluidic separation and detection platforms”(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」 (Attorney Docket No. 07-865-US)と題される同日出願の2つの米国出願もそれらの全体を参照して援用する。
【0002】
本発明は、マイクロ流体の分野における核酸分析に関する。
【背景技術】
【0003】
所与のヒト、動物、植物、または病原体ゲノムのサブセットの迅速同定(核酸の配列決定またはフラグメントサイズ決定による)として定義される、完全に集積化された(すなわち、サンプル入力から結果の出力まで)標的核酸分析のための機器および技術の開発は未解決である。標的核酸配列は最終ユーザーに実時間の臨床、法医学、または他の判断を可能にする。例えば、多くの一般的なヒトの病気は、完全なヒトのゲノムを形成するために必要なものよりも少ない1000個未満のDNA配列塩基対に基づいて診断することができる。同様に、短鎖縦列反復配列分析(short tandem repeat analysis)によって形成される20個未満の特定のDNAフラグメントサイズの正確な測定は所与の個体を識別するのに十分である。用途に応じて、病院の研究室、医者の事務所、ベッドの脇、または法医学または環境用途の場合の現場を含んで、標的核酸分析は様々な設定で実施することができる。
【0004】
DNA配列決定およびフラグメントサイズ決定システムにはいくつかの未解決の改善要求がある。第1に、使用が容易であり高度に訓練された作業者を必要としないDNA配列決定およびフラグメントサイズ決定機器が必要とされている。第2に、すべての手動プロセスを省くシステムの要求がある。結果として、最小の作業者訓練で済み、例えば、危険物着衣を着た初動対応者が遭遇するような困難な環境を強いられた個人もシステムを容易に操作することができる。
【0005】
第3に、完全で正確な信頼性の高いデータの必要性を断念しない極めて迅速な分析が必要とされる。ヒトの識別用途にとって、結果までの適切な時間は、従来の技術を用いる数日から数週間よりも十分短い45分以下である。適切な処置法を決定するための感染病原体配列決定などの臨床用途にとって、患者が救急室に到着した後、抗菌性および抗ウィルス性薬物療法での処置を短時間に開始することのできる90分以下が回答までの妥当な時間である。用途にかかわらず、実時間での実行可能なデータを形成する必要がある。また、回答までの短い時間は同時にサンプル処理量を増加させる。
【0006】
第4に、小型化が必要とされる。多くのDNA分析システムは研究所全体および関連支援を必要とする。例えば、高い処理量のゲノム配列FLX(Roche Diagnosis Corp, Indianapolis,IN)DNA配列決定システムは設置にベンチ台を必要とするだけであるが、必要なライブラリー構築を行うために大きな研究室を必要とする。小型化は研究所および処置場所での使用ならびに現場操作の両方にとって重要である。また、サンプルあたりのコスト低減にとっても重要である。
【0007】
第5に、耐久性が必要とされる。多くの用途、特に法医学、軍事、および国家防衛用途において、DNA分析機器は現場で操作可能でなければならない。したがって、機器は兵士の肩に背負われ、または警察車両で運ばれ、またはヘリコプターから戦闘場所に投下されて運搬できなければならない。同様に、機器は温度、湿度、および空気中の粒子(例えば砂)を含む過酷な環境下に耐えて機能しなければならない。
【0008】
第6に、複数のサンプル種を受け入れ、並列して高度に複雑な分析を行うことのできるシステムが必要とされる。多くの用途にとって、単一サンプル種の単一反応からのDNA分析能力は有意義なDNA分析を行うためには許容できない。
【0009】
複数の研究室の操作をバイオチップ上に濃縮することを探究しているマイクロ流体(マイクロトータル分析システム(μTAS)またはチップ上ラボ技術とも言われる。Manz et al.,Sens.Actuators B 1990,1,244−248参照)の開発者は、これらの必要性のいくつかを認識したが、今日まで、これらの必要性に対処するためのマイクロ流体核酸分析を可能にする、必要かつ望ましい全ての生物化学および物理的プロセスを行う集積化されたバイオチップおよび機器を設計することはできなかった。その結果、今日、着目された核酸分析は社会的に広く使用されるに至っていない。
【0010】
マイクロ流体システムの開発は、マイクロスケールの分離、反応、マイクロバルブおよびポンプなどのマイクロ加工されたコンポーネントとさまざまな検出スキームを集積化して完全な機能デバイスにすることを含む(例えば、Pal et al.,Lab Chip 2005,5,1024−1032を参照)。1990年初めにManzら(上記)がチップ上のキャピラリー電気泳動を発表して以来、人々はそれの改善を探究した。いくつかのグループはDNAプロセシング機能をバイオチップの分離および検出と集積化することを発表した。ガラス−PDMS(ポリジメチルシロキサン)のハイブリッド構造上に集積されたデバイスが報告された(Blazej et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2006,103,7240−5、Easley et al.,Proc.Natl,Acad.Sci USA 2006,103,19272−7、およびLiu et al.,Anal.Chem.2007,79,1881−9)。Liuは短鎖縦列反復(STR)サイズ決定によるヒトの識別のために複数のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、分離および四染料検出を結合した。BlazejはpUC18単位複製配列のDNA配列のためにSanger配列反応、Sanger反応清浄化、電気泳動分離および四染料検出を結合した。Easleyは血液中の細菌性感染の存在を識別するためにDNAの固相抽出、PCR、電気泳動分離および単一色検出を結合した。Burns(Pal,2005,Id.)によって、PCR、電気泳動分離および単一色検出を結合した集積化シリコン−ガラスデバイスが発表された。細菌DNAの存在を識別するために、PCR用のガラス−PDMS部分と気泳動分離用のポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)部分、および単一色検出を結合するハイブリッドデバイスがHuang(Huang et al.,Electrophoresis 2006,27,3297−305)によって報告された。
【0011】
Kohらは細菌DNAの存在を識別するために、PCRをバイオチップ電気泳動分離および単一色検出に結合したプラスチックデバイスを報告する(Koh et al.,Anal.Chem.2003,75,4591−8)。DNA抽出、PCR増幅、バイオチップ電気泳動分離および単一色検出を結合するシリコンベースのデバイスがAsogawaによって報告された(Asogawa M,Development of portable and rapid human DNA analysis System Aiming on−site Screening,18th International Symposium on Human Identification,Poster,Oct,1−4,2007,Hollywood,CA,USA)。米国特許第7,332,126号(Tooke et al.)は核酸の単離とサイクル配列決定に必要なマイクロ流体操作を行うために遠心力を用いることを述べている。しかし、この手法は少量のサンプル容量(1〜数μL程度)に基づくものである。結果として、流体サンプルは静止状態でデバイスに加えなければならないので、すなわち、遠心分離の前に(高度に並列のデバイスでは100mLまで可能)、ディスクは運転に必要な全ての流体を収容することが可能でなければならないので、このデバイスは、核酸の単離と分析のために大量のサンプルを、特に高度な並列様式で、プロセシングするには有用ではない。第2に、デバイスは細菌クローン(例えばプラスミドDNA)のサンプル調製およびサイクル配列決定に制限される。
【0012】
DNAプロセシングをバイオチップ電気泳動分離に集積化することを試みるこれらのデバイスにはいくつかの欠点がある。第1に、検出はアッセイ毎の情報内容(多くは単一色検出を用いるが、いくつかは4色までの検出システムを有する)または処理量(単一サンプルまたは2つのサンプル能力)のいずれかによって制限される。第2に、これらのデバイスはサンプリングから回答までの完全な集積化の代表ではなく、例えば、Blazejのデバイスはサイクル配列決定の前にテンプレートDNAの外部での増幅を必要とし、他はある種の予備処理の必要なサンプルを用いる(例えば、EasleyおよびTookeは添加の前にサンプルの溶解が必要である)。第3に、これらのデバイスのために行った処理選択のいくつかは回答までの時間に影響を与える。例えば、Blazejのハイブリダイゼーションに基づく方法はサイクル配列決定の産物の清浄化に20分以上を要する。第4に、これらのデバイスの多くは部分的または全体的にガラスまたはシリコンで作られる。これらの基板の使用および対応する製造技術は本質的にコスト高になり(Gardeniers et al.,Lab−on−a−Chip (Oosterbroeck RE,van den Berg A,Eds)Elsevier:London,pp37−64(2003))、それらのデバイスを再使用しなければならない用途に制限を与え、これは多くの用途(例えばヒトの識別)においてサンプルの汚染の危険を招く。最終的に、発表された技術は2つの用途、STR分析および配列決定によるヒトの識別には不適である。例えば、EasleyとPalデバイスの両方とも解像度が低くなり、単一ベースよりも悪い。フラグメントサイズ決定用途(例えば、短鎖縦列反復プロファイルの分析によるヒトの識別)および配列の両方とも単一ベースの解像度を必要とする。
【0013】
マイクロ流体の集積化に関する先行技術の制約に加えて、蛍光検出に関する問題も従来の研究所の仕事を超える核酸分析の広い用途を制限する。最も広く用いられる市販の配列決定キット(BigDye(登録商標)v3.1(Applied Biosystems)およびDYEnamic(登録商標)ET(GE Healthcare Biosciences Corp,Piscataway,NJ)は、20年前の四色検出方法に基づく(例えば、米国特許第4,855,225、第5,332,666号、第5,800,996号、第5,847,162号、第5,847,162号を参照)。この方法は染料で標識されたヌクレオチドの放射信号の4つの異なる色への解像に基づき、それは4つの塩基の各々を表す。これらの四色染料システムは、蛍光染料の不十分な励起、スペクトルの顕著な重なり合い、および不十分な放射信号の収集を含む、いくつかの欠点を有する。四色染料システムはそれらが配列決定された産物の所与の電気泳動(または他の)分離から得ることのできる情報量を制限するので、特に問題である。
【0014】
フラグメントサイズおよび色(染料の波長)の両方によるDNAフラグメントの分離と検出に基づく電気泳動において、高い情報量のアッセイを達成することのできるシステムが必要とされる。電気泳動によって識別することのできるDNAフラグメントの最大数は分離の読み取り長さとデバイスの解像度によって決定される。検出することのできる色の最大数は部分的に蛍光染料の入手可能性と検出システムの波長識別力によって決定される。現在のバイオチップ検出システムは典型的に単一色に制限されるが、4色までの検出が報告されている。
【0015】
ヒトの識別用のSTR分析は、色多重化に基づくDNAフラグメントサイズ決定の例であり、16座までの同時分析を可能にする(AmpFISTR Identifiler kit:Applied Biosystems,Foster City,CA)およびPowerPlex16 kit(Promega Corporation,Madison,WI)。単一の分離チャネルは、4つまたは5つの蛍光染料を用いて各染色体座の多くの対立する変形サイズを区別することができる。いくつかのフラグメントサイズ決定の用途は、16個以上のフラグメントが分離され単一レーンで検出されることが必要であろう。例えば、指紋による病原体の識別(すなわち、多数の特性DNAフラグメントの分離と検出)およびヒトのゲノム全体の検査による異数体の診断は、それぞれ数ダースまたは数百の染色体座を観察することによって得ることができる。
【0016】
単一分離チャネルで検出することのできる染色体座の数を増加させる1つの手法は、追加の染色体座のフラグメントサイズを部分的に増加させることによって、発生したフラグメントサイズの範囲を広くすることである。しかし、フラグメントのより大きな増幅は抑制剤およびDNA変性に対してより敏感であり、短いフラグメントに対して長いフラグメントの生成が少なくなるので、追加の染色体座のためにより長いフラグメントを使用するのは理想的ではない。さらに、より長いフラグメントの生成は伸張時間の増加が必要であり、したがって、総アッセイ時間の増加が必要になる。染料の色数を増加させることによって所与の分離チャネル中で同時に検出することのできる染色体座の数を増加させる必要がある。
【0017】
単一分離チャネル中で分析することのできるDNA配列の数を増加させることによって、Sanger配列分離の能力を増加させること(したがって、コスト、労力、および処理空間を低減すること)が必要である。さらに、いくつかの用途において、複数のDNAフラグメントは「混合配列」データを読み取ることが難しく配列され、その混合配列を正しく解釈することのできる手法を開発する必要がある。
【0018】
Sanger分離チャネルの能力を増加させ混合された配列を解釈する能力を開発する1つの手法は配列決定反応に用いられる染料の色数を増加させることである。DNA配列決定とフラグメントサイズ決定の両方において、異なる染料で標識された複数のフラグメントを同時に検出することができる。一般に、隣接染料のピーク発光波長は染料のピーク幅に比べて十分大きくなければならない。したがって、各分離チャネルの処理量は、例えば、2つの独立配列決定反応において2セットの四染料を用い、産物を結合させ、それらを単一チャネル中で分離することによって2倍にすることができる。この方法は全部で8つの染料色の使用が必要であり、第1の配列反応はジデオキシヌクレオチド・ターミネーターを標識するために加えられた四染料のセットを用い、第2反応はターミネーターを標識するために加えられたもうひとつの四染料のセットを用い、各セットの染料色は、2つの配列の解釈が重なり合わないように独立である。この同じ手法を用いて、12染料のセットを用いて単一チャネル中の3つのDNAフラグメントの配列の同時分析が可能であり、16染料のセットは4つの配列の分析を可能にし、このようにしてSanger分離の情報能力を劇的に増加させることができる。
【0019】
この用途の新しい機器およびバイオチップは上述のものを含んで多くの必要性を満足する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は核酸分析を行う完全に集積化されたマイクロ流体システムを提供する。これらのプロセスはサンプル収集、DNA抽出、および精製、増幅(高次に多重化できる)、配列決定、およびDNA産物の分離と検出を含む。
【0021】
本発明の分離と検出のモジュールは耐久性があり、単一ベースの解像度よりも良好な能力とすることができる。それらは6つ以上の色の検出が可能であり、したがって、配列およびフラグメントサイズ決定用途から高い情報量を発生するのに有用である。
【0022】
バイオチップ上での高度の多重化迅速PCRは本出願と同時に出願した「METHODS FOR RAPID MULTIPLEXED AMPLIFICATION OF TARGET NUCLEIC ACIDS(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」と題される米国特許出願、弁理士事件番号08−318−USの主題であり、その全体を参照して本出願に援用されている。さらに、その全体を参照して本出願に援用している「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」と題される米国特許出願、弁理士事件番号第07−865−USに記載の通り、PCR産物はバイオチップ内で分離し検出することができる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
したがって、第1態様において、本発明は、光学検出器であって、基板上の1または複数の検出位置を照射するために配置された1つ以上の光源;基板上の検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1の光学エレメント;および第1光学エレメントからの光を受容するために配置された光検出器であって、前記光検出器が、第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、かつ、分離された光の一部を検出エレメントに提供するように配置された波長分散エレメントを含む光検出器を備え、ここに、検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が、1つ以上の生体分子を標識した少なくとも6つの染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク発光波長を有する、光学検出器を提供する。
【0024】
第2態様において、本発明は、生体分子の分離と検出のためのシステムであって、基板上の1つまたは複数のチャネル中の複数の生体分子を同時に分離するためのコンポーネントであって、ここに、各チャネルが検出位置を含むコンポーネント;基板上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、前記光検出器は、前記光検出器が第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、分離された光の一部を検出エレメントに提供するように配置された波長分散エレメントを備え、ここに、前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上の生体分子を標識する少なくとも6染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク発光波長を有する光検出器を備える、システムを提供する。
【0025】
第3態様において、本発明は、複数の生体分子を分離し検出する方法であって、基板上の1つまたは複数のマイクロ流体チャネル中に1つまたは複数の分析サンプルを提供し、各マイクロ流体チャネルが検出位置を含み、ここに、各分析サンプルが独立に複数の生体分子を含み、各々が独立に少なくとも6染料の1つで標識され、各染料が独自のピーク波長を有すること;各マイクロ流体チャネル中の複数の標識された生体分子を同時に分離すること;および各マイクロ流体チャネル中の複数の分離された標的分析物を、(i)各検出位置を光源で照射し;(ii)核検出位置から放射された光を収集し;(iii)収集された光を光検出器に導き;(iv)収集された光を光波長によって分離し;ついで、(v)1つ以上の生体分子を標識した少なくとも6染料からの蛍光を同時に検出し、各染料が独自のピーク波長を有することによって、検出すること、を含む方法を提供する。
【0026】
第4態様において、本発明は、集積化されたバイオチップシステムであって、(a)1つまたは複数のマイクロ流体システムを含むバイオチップであって、各マイクロ流体システムが分離チャンバーにマイクロ流体的に連絡する第1反応チャンバーを含み、ここに、第1反応チャンバーが、(i)核酸抽出、(ii)核酸精製、(iii)予備核酸増幅清浄化、(iv)核酸増幅、(v)後核酸増幅清浄化、(vi)予備核酸配列決定清浄化、(vii)核酸配列、(viii)後核酸配列決定清浄化、(ix)逆転写、(x)予備逆転写清浄化、(xi)後逆転写清浄化、(xii)核酸ライゲーション、(xiii)核酸ハイブリダイゼーション、または(xiv)定量化に適合され、前記分離チャンバーが検出位置を含むバイオチップ;および(b)分離および検出システムであって、(i)前記分離チャンバー中の複数の標的分析物を同時に分離するための分離エレメント;(ii)前記バイオチップ上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;(iii)前記検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および(iv)前記第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、ここに、前記光検出器が、前記第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、前記分離された光の一部を少なくとも6つの検出エレメントに提供する波長分散エレメントを含み、ここに、前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上の生体分子を標識する少なくとも6染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク波長を有する光検出器、を備えるバイオチップシステムを提供する。
【0027】
第5態様において、本発明は、集積化されたバイオチップシステムであって、(a)1つまたは複数のマイクロ流体システムを含むバイオチップであって、各マイクロ流体システムが分離チャンバーにマイクロ流体的に連絡する第1反応チャンバーを含み、ここに、第1反応チャンバーが、(i)核酸抽出、(ii)核酸精製、(iii)予備核酸増幅清浄化、(iv)核酸増幅、(v)後核酸増幅清浄化、(vi)予備核酸配列決定清浄化、(vii)核酸配列、(viii)後核酸配列決定清浄化、(ix)逆転写、(x)予備逆転写清浄化、(xi)後逆転写清浄化、(xii)核酸ライゲーション、(xiii)核酸ハイブリダイゼーション、または(xiv)定量化に適合され、前記分離チャンバーが検出位置を含むバイオチップ;および(b)分離および検出システムであって、(i)前記分離チャンバー中のDNAを含む複数の生体分子を同時に分離するための分離エレメント;(ii)前記バイオチップ上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;(iii)前記検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および(iv)前記第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、ここに、前記光検出器が、前記第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、前記分離された光の一部を少なくとも6つの検出エレメントに提供する波長分散エレメントを含み、ここに、前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上のDNA配列を標識する少なくとも8染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク波長を有し、各染料が少なくとも2つの四染料含有サブセットのメンバーであって、前記サブセットが基板上の単一検出位置で少なくとも2つのDNA配列を識別可能であり、ここに、染料の数が4の倍数であり、検出されるDNA配列の数がその倍数に等しくて、異なる染料の各々が1つのサブセットだけに存在する、光検出器、を備えるバイオチップシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】4つの個別サンプル用の溶解とテンプレート増幅のための集積化されたバイオチップの一実施形態の概略図。
【図2】図1のバイオチップの第1層の一実施形態の概略図。
【図3】図1のバイオチップの第2層の一実施形態の概略図。
【図4】図1のバイオチップの第3層の一実施形態の概略図。
【図5】図1のバイオチップの第4層の一実施形態の概略図。
【図6】図1のバイオチップの組み立てと結合の一実施形態の概略図。
【図7】面内および貫通孔バルブの2バルブ式について、脱イオン水とサイクル配列決定試薬のためのバルブの逆水力学的直径の関数としての毛管バルブ動作圧力を示すグラフ。
【図8】PCRによるテンプレート増幅について、図1のバイオチップの流体ステップの一実施形態を示す概略図。
【図8a】サンプルとPCR試薬が本発明のバイオチップに装填された状態を示す概略図。
【図8b】チャネルからサンプルチャンバー(それらは流路を示すためにサンプルチャネルに沿う異なる位置で示される)へのサンプル送達を示す概略図。
【図8c】サンプルチャンバー中のサンプルを示す概略図。
【図8d】試薬チャンバーへのPCR試薬の送達を示す概略図。
【図8e】過剰PCR試薬の引き抜きを示す概略図。
【図8f−8g】第1の毛管バルブセットによる液体の初期混合ステップおよび保持を示す概略図。
【図8h−8j】PCRチャンバーに送達された混合液体を示す概略図、その時点で熱サイクルが開始される。
【図9】集積化されたバイオチップの流体ステップの一実施形態を示す概略図。
【図9a−9e】第1層中の計量チャンバーへのサイクル配列決定試薬の送達およびチャンバー近傍からの過剰の薬剤の除去を示す概略図。
【図9f−9g】Sanger反応チャンバーへのPCR産物の導入を示す概略図。
【図9h−9j】往復動によるSanger剤とPCR産物の混合を示す概略図。
【図9l】分析のために取り出すことのできるサイクルされた産物を示す概略図。
【図10】図1のバイオチップ中で製造された配列決定産物のための配列決定トレース(電気泳動図)を示す概略図。
【図11】サイクル配列決定産物の限外濾過の実施のための集積化されたバイオチップの一実施形態を示す概略図、チップ組み立て体は層3と4の間の限外濾過(UF)フィルター1116の追加を除いてバイオチップ1と同じである。
【図12】配列決定産物の精製中の図11のバイオチップの流体ステップを示す概略図。
【図12a−12b】UF入力チャンバーへのSanger産物の送達を示す概略図。
【図12c】濾過チャンバーへ送達された配列決定産物を示す概略図。
【図12d】配列決定産物のほとんど完全な濾過を示す概略図。
【図12e−12g】UF入力チャンバーへの洗浄の送達および続いて送達チャネルからの過剰の洗浄の除去を示す概略図。
【図12h】第1洗浄サイクルの開始を示す概略図、図12dの濾過および後続の洗浄サイクルが続く。
【図12i−12j】溶出液体(洗浄と同じ液体)がUF入力チャンバーに送達されていることを示す概略図。
【図12k−12m】出力口を閉じてUF入力チャンバーを加圧し、次いで圧力を開放して往復動させる単一サイクルを示す概略図。
【図12n】他のプロセスまたは取り出しの準備のできた精製された産物を示す概略図。
【図13】テンプレート増幅、サイクル配列決定、配列決定産物の清浄化、電気泳動による分離、およびレーザー誘起蛍光による検出を実施するための集積化されたバイオチップの一実施形態を示す概略図。
【図14】対電極による標識された核酸フラグメントの濃縮および分離チャネル中への注入を示す概略図。
【図15】励起および検出システムの一実施形態を示す概略図。
【図16】励起および検出システムの一実施形態を示す概略図。
【図17】6染料サンプルの分離および検出のために形成された電気泳動図、グラフの各トレースは32アノードPMTの32要素の各々からの信号を表し、各トレースはデータを見やすくするために互いに偏っている。
【図18】電気泳動図から抽出された6染料の各々の染料スペクトルを示すグラフ、背景の蛍光スペクトルも示される。
【図19】6−FAM、VIC、NED、PET、およびLIZ染料の染料放射スペクトルを示すグラフ。
【図20】5−FAM、JOE、NED、およびROX染料の染料放射スペクトルを示すグラフ。
【図21】4染料サンプルの分離および検出のために形成された電気泳動図、グラフの各トレースは32アノードPMTの32要素の各々からの信号を表し、各トレースはデータを見やすくするために互いに偏っている。
【図22】配列決定トレース。
【発明を実施するための形態】
【0029】
I.集積化および集積化されたシステム
A.集積化の全般的な説明
マイクロ流体の使用は単一バイオチップ上に1つ以上の機能を実行する造作の製作を可能にする。これらの2つ以上の機能をマイクロ流体的に接続してサンプルのシーケンシャルプロセスを可能にすることができる。この結合は集積化と呼ばれる。
【0030】
可能な機能またはコンポーネントプロセスには、任意の所与の用途を達成するために集積化しなければならない範囲があるが、任意の所与の用途のために全てのプロセスを実行しなくてもよい。結果として、選択された集積化方法は多くの異なる成分プロセスを異なる順序で有効に接続するために適切でなければならない。集積化することのできるプロセスは制限なしに以下を含む。
(1)サンプル挿入
(2)異物(例えば、塵、繊維などの大きな粒子)の除去
(3)細胞の分離(すなわち、ヒト細胞(したがってヒトのゲノムDNA)の除去など、分析すべき核酸を含むもの以外の細胞の除去)
(4)対象核酸を含む細胞の濃縮
(5)細胞の溶解と核酸の抽出
(6)溶解物からの核酸の精製、可能な限りより小さな容量へ核酸の濃縮
(7)予備増幅核酸清浄化
(8)後増幅清浄化
(9)予備配列決定清浄化
(10)配列決定
(11)後配列決定清浄化(例えば、組み込まれない染料標識されたターミネーターおよび電気泳動を妨害するイオンを除去するため)
(12)核酸分離
(13)核酸検出
(14)RNAの逆転写
(15)予備逆転写清浄化
(16)後逆転写清浄化
(17)核酸ライゲーション
(18)核酸定量化
(19)核酸ハイブリダイゼーション
(20)核酸増幅(例えば、PCR、ローリングサークル増幅(rolling circle amplification)、ストランド転移増幅、多重転移増幅)
【0031】
これらのプロセスのいくつかを結合できる多くの方法の1つはSTR分析によるヒトの識別のための集積化システムである。それらのシステムはDNA抽出、ヒトの特定のDNA定量化、PCR反応への所定量のDNAの添加、多重化されたPCR増幅、および分離と検出(選択肢として、反応成分またはプライマーを除去する清浄化ステップも組み込むことができる)を必要とする。全血、乾燥血液、頬内部表面、指紋、性的暴行、接触、または他の法医学関連サンプルのスワッビングなどの技術で1つ以上のサンプルを収集することができる(Sweet et al.,J.Forensic Sci.1997,42,320−2を参照)。溶解物(選択的に攪拌しながら)に曝すとスワッブから管にDNAが放出される。
【0032】
B.集積化コンポーネントおよびその使用の一般的な説明
1.サンプル収集および初期処理
多くの用途にとって、以下の個々のコンポーネントが有利にはバイオチップに集積化される。サンプル挿入、異物の除去、妨害核酸の除去、および対象細胞の濃縮。一般に、バイオチップの予備処理コンポーネントはサンプルを受容し、粒子と細胞を含む外部の核酸の初期除去を行い、対象細胞を小さな容量に濃縮する。1つの手法はスワッブを受容することができ(例えば、「Qチップ」に類似する)、溶解溶液で充填されて溶解と抽出ステップを行うサンプル管を用いることである。スワッブは血痕、指紋、水、空気フィルター、または臨床現場(例えば、口内スワッブ、創傷スワッブ、鼻汁スワッブ)を含んで、多くの細胞含有部位に接触させることができる。バイオチップの他のコンポーネントとこれらの管のインターフェースは異物除去のためのフィルターを含むことができる。他の手法は大容量の血液または1〜100mLのサンプルを保持する環境サンプル取得カートリッジを使用することである。血液の場合、白血球低減媒体は対象核酸を含有する細菌が通過する間にヒトの白血球細胞と妨害DNAを除去することができる。環境サンプルについては、大メッシュのフィルターを用いて塵や泥を除去することができるが、小メッシュのフィルター(例えば、<20μm、<10μm、<5μm、<2.5μm、<1μm、<0.5μm、<0.2μm、<0.1μm)を用いて細菌を捕獲し、それらを小容量に濃縮することができる。これらの予備処理コンポーネントは分離して使い捨て可能とすることができ、または製造時に集積化されたバイオチップに取り付けることができる。替わりに、バイオチップは示差溶解を行って種類によって細胞を分離することができる(例えば、膣上皮細胞からの精液または細菌からの赤血球細胞)。
【0033】
2.溶解および抽出
さまざまな溶解および抽出の方法を用いることができる。例えば、典型的な手順は、細胞壁を破壊して核酸を放出する少量のプロテイナーゼ−Kなどの分解酵素とサンプルを混合した後に熱を加えることを含む。他の有用な方法は音波処理および超音波処理であり、いずれもまたは両方ともしばしばビーズを存在下で行われる。
例えば、溶解および抽出は106個以下の細胞を含むサンプルで行うことができる。本発明のバイオチップおよび方法には、用途に応じてより少数の出発細胞を用いることができ、105未満、104未満、103未満、102未満、10未満、および多重複写配列が用いられる場合には1未満である。
【0034】
3.核酸の精製
核酸生成の1つの形は入力および出力チャネルの間に精製媒体を挿入することによって達成することができる。この精製媒体はシリカファイバー系とすることができ、カオトロピック塩薬試薬を用いて生物サンプルを溶解し、DNA(およびRNA)を露出させ、DNA(およびRNA)を精製媒体に結合させることができる。次いで、溶解物は入力チャネルを経由して精製媒体中を輸送して、核酸に結合させる。結合した核酸はエタノール系緩衝剤で洗って汚染物を除去する。これは入力チャネルを経由して洗浄剤を精製膜に通すことによって達成することができる。次いで、結合した核酸は適切な低塩緩衝剤(例えば、Boomの米国特許5,234,809号)を流すことによって膜から溶出される。この方法の変形は異なる構成の固体相の使用を含む。例えば、シリカゲルを用いて核酸を結合することができる。常磁性シリカビーズを使用することができ、その磁気的特性を用いて結合、洗浄、および溶出ステップの間、それらをチャネルまたはチャンバーの壁に対して固定する。また、非磁化シリカビーズも、密な「カラム」に充填しフリットで保持する(典型的にデバイスのプラスチック中に作られるが、それらは組み立て中に挿入することもできる)か、またはその運転のある相の間「自由」な状態で用いることができる。自由ビーズは核酸と混合することができ、次いで、デバイス中のフリットまたは堰に向かって流動させて、それらを捕捉し、それらが下流のプロセスを妨害しないようにすることができる。他の形式はゲル媒体中に分散されたシリカ粒子とシリカ粒子を含有するポリマーモノリスを有するゾル−ゲルを含み、キャリアは機械的安定性を高めるために架橋される。本質的に、従来の設定において任意の機能的な核酸精製方法が本発明の集積化バイオチップに適用することができる。
【0035】
4.核酸増幅
PCRおよび逆転写PCRなどのさまざまな核酸増幅方法を用いることができ、これは少なくとも2つの温度、またはより典型的には3つの温度間の熱サイクルが必要であった。ストランド転移増幅などの等温方法を用いることができ、多重転移増幅は全てのゲノム増幅に用いることができる。「METHODS FOR RAPID MULTIPLEXED AMPLIFICATION OF TARGET NUCLEIC ACIDS(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」と題される米国特許、弁理士事件番号第08−318−US(上述)の教示は、その全体を参照して本出願に援用されている。
【0036】
5.核酸定量化
マイクロ流体形式における定量化の1つの手法はリアルタイムPCRに基づく。この定量化方法において、反応チャンバーは入力および出力のチャネルの間に作られる。反応チャンバーは熱循環器および光学励起に結合され、検出システムは反応チャンバーに結合されて反応溶液からの蛍光の測定を可能にする。サンプル中のDNAの量は反応チャンバーからのサイクル毎の蛍光の強度に相関がある。例えば、Heid et al.,Genome Research 1996,6,986−994を参照されたい。他の定量化方法はいずれも増幅の前または後にピコGreen、SYBRまたは臭化エチジウムなどの挿入染料の使用を含み、これは次いで蛍光または吸収のいずれかを用いて検出することができる。
【0037】
6.二次精製
STR分析では、多重増幅され、かつ、標識されたPCR産物を分析に直接用いることができる。しかし、電気泳動分離性能は、分離その他の後続のステップを妨害するPCRに必要なイオンを除去する産物の精製によって大きく改善することができる。同様に、サイクル配列決定または他の核酸操作に続く精製は有用である。まとめれば、核酸の初期抽出または精製に続く任意の精製ステップは二次精製と考えることができる。限外濾過を含んでさまざまな方法を用いることができ、これは小さなイオン/プライマー/組み込まれなかった染料標識がフィルターを通して動かされ、フィルター上に望ましい産物が残り、次いでこれは溶出されて分離または後続のモジュールに直接適用できる。限外濾過媒体はポリエーテルスルホンおよび再生セルロース「織布」フィルター、ならびに、極めて薄い(1〜10μm)膜に高度に均一なサイズの孔が形成された溝エッチ膜を含む。後者は、表面下のある深さに産物を捕捉するのではなく、フィルターの孔サイズよりも大きなサイズの産物を集める利点を有する。また、増幅された核酸は上で概説した同じ方法を用いて精製することもできる(すなわち、古典的なシリカ上の固相精製)。さらに他の方法は、可変孔サイズ特性、すなわち、熱、pHなどの環境変数に対応して孔サイズを変化させる特性を有する架橋ポリマーであるヒドロゲルを含む。1つの状態において、孔は細かく、PCR産物は通過できない。孔が広がると、孔を通して流体力学または電気泳動的な産物の流動が可能になる。他の方法は、表面(ビーズの表面など)に固定されたランダムDNAへの産物の非特異的ハイブリダイゼーション、または固体表面上で産物への配列標識が補足される特異的ハイブリダイゼーションのいずれかのハイブリダイゼーションを用いることである。この手法において、対象産物はハイブリダイゼーションによって固定され、望ましくない材料は洗浄によって除去され、後続の加熱が二本鎖DNA分子を溶かし、精製された産物を放出する。
【0038】
7.サイクル配列決定反応
古典的なサイクル配列決定はPCRなどの熱サイクルが必要である。好ましい方法は、各伸張産物が伸張反応の最終塩基に相当する単一の蛍光標識を有するように染料標識を付けたターミネーターを用いるものである。
【0039】
8.注入、分離、および検出
電気泳動チャネルへの標識された核酸フラグメントの注入、分離、および検出はさまざまな方法で行うことができ、これは本出願と同時出願になる、「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」と題される米国特許出願、弁理士事件番号第07−865−USに記載されており、これはその全体を参照して本出願に援用されている。第1に、本出願に議論されている交差注入器を用いてサンプルの一部を注入することができる。代替の実施形態において、動電学的な注入(「EKI」)を用いることができる。いずれの場合も、電極近くの産物を静電気的に濃縮することによって、装填チャネルの開放終端近傍(交差注入の場合)または分離チャネル(EKIの場合)の配列決定産物のさらなる濃縮を行うことができる。チップの電気泳動部分の2つの電極サンプルウェルは図14に示される。両方の電極は浸透層でコーティングされ、それは、DNAが電極の金属に接触するのを防止するが、イオンと水はサンプルウェルと電極の間に接近することを許容する。それらの浸透層は架橋ポリアクリルアミドから形成することができる(米国特許出願公開US2003−146145−A1を参照されたい)。チャネル開口部から最も遠い電極は分離電極であるが、チャネル開口部に最も近い電極は対電極である。対電極の分離電極に対して正に印加することによってDNAは対電極に引っ張られ、分離チャネルの開放部近くで濃縮される。対電極を電源から切り離し、分離電極と分離チャネルの遠い端部のアノードを用いて注入することによって、濃縮された産物が動電学的に注入される。
【0040】
C.集積化方法
また、バイオチップは機能モジュールを集積化するいくつかの異なる手段を含む。これらの手段は、バイオチップ上の点から点へ液体を輸送すること、流量依存のプロセスについては流量の制御(例えば、いくつかの洗浄ステップ、粒子分離、および溶出)、バイオチップ上で流体の運動を時間と空間でゲート制御すること(例えば、ある形態のバルブを用いることによって)、および流体の混合を含む。
【0041】
流体輸送および流体流れの制御のために様々な方法を用いることができる。1つの方法は能動的な転移ポンピングであり、流体または介在ガスまたは流体に接触するプランジャーが、運動中のプランジャーによって転移された容積に基づいて流体を正確な距離動かす。それらの方法の一例はシリンジポンプである。他の方法は空気力学的にまたは磁気的に、または他の方法で起動される集積化された弾性膜の使用である。これらの膜は所定の空間中の流体を含むバルブとして、および/または流体の早期混合または送達を防止するために単一で使用することができる。しかし、直列に用いるとき、これらの膜は蠕動ポンプに類似のポンプを形成することができる。先端側の膜は運動流体を受け取る(およびデバイスのチャネル中の転移された空気を排気する)ように開放しているので、同期させた逐次的な膜の起動によってその流れ側から流体を「押し出す」ことができる。これらの膜を起動する好ましい方法は空気力学的起動である。それらのデバイスにおいて、バイオチップは流体層から構成され、少なくともその1つは膜を有し、その一方の側はデバイスの流体チャネルおよびチャンバー内部に露出される。膜の他の側は圧力源に配管された空気力学的マニホールド層に露出する。膜は圧力または真空の印加によって解放または閉じられる。通常開放または通常閉鎖のバルブを用いることができ、圧力または真空の下で状態を変化させる。ガスが分析下の流体に接触しないので、起動のために任意のガスを使用できることに留意されたい。
【0042】
流体を駆動し流量を制御するさらに他の方法は、流体の先端、流路、または両方のメニスカスの圧力を変化させることによって真空または圧力を流体自体に直接加えることである。適切な圧力(典型的に0.05〜3psigの範囲)が加えられる。また、流量は流体と水力学的直径の圧力差の4乗に比例し、チャネルの長さまたは液体栓と粘度に反比例するので、流体チャネルを適切なサイズにすることによって、流量を制御することもできる。
【0043】
流体ゲート制御はさまざまな能動バルブを使用して達成することができる。前者は圧電バルブまたはソレノイドバルブを含むことができ、チップに直接組み込み、または主要チップ本体のポートがバルブに連絡して流体をバルブに導き、次いでチップに戻すようにバイオチップに加えることができる。これらの種類のバルブの1つの欠点は多くの用途についてそれらの製造が困難になり、使い捨て集積化デバイスに組み込むのが高価なことである。好ましい手法は、上述のようにバルブとして膜を使用することである。例えば、10psigで起動される膜はPCRを行う流体を都合よく含むことができる。
【0044】
いくつかの用途において、受動バルブであるキャピラリーマイクロバルブが好ましい。本質的に、マイクロバルブは流路中の狭窄である。マイクロバルブにおいて、流体に加えられた圧力がバースト圧力と呼ばれる臨界バルブ以下であるとき、表面エネルギーおよび/または鋭い縁などの幾何形状を用いて流れに抵抗することができ、これは一般に関係、
【0045】
【数1】
【0046】
で与えられ、式中、γは液体の表面張力であり、dHはバルブの水力的直径(4*(断面積)/断面周で定義される)であり、θcは液体のバルブ表面との接触角である。
【0047】
いくつかの用途について受動バルブを好ましくする特性は、極めて小さなデッド容積(典型的にピコリットルの範囲である)、および物理的な小ささ(各々はバルブに行き来するチャネルよりもわずかに大きいだけである)を含む。物理的な小ささはバイオチップの所与の表面上で高いバルブ密度を可能にする。さらに、いくつかのキャピラリーバルブは製造が非常に簡単であり、本質的にプラスチックシート中の小さな孔からなり、表面処理はあってもなくても良い。キャピラリーバルブの賢明な使用は必要な膜バルブの数を低減することができ、全体的に製造が単純化され、堅牢なシステムを作る。
【0048】
本発明のデバイスに実施されるキャピラリーバルブには2つの種類がある。すなわち、1つの層の中に「溝」を作って、この層を造作のない蓋(典型的にデバイスの他の層)に接合することにより、バルブの小さなチャネルと鋭い角が形成される面内バルブ、および、小さな(典型的に250μm以下)孔がデバイスの2つの流体保持層の間の中間層に作られるスルーホールバルブである。両方とも、フルオロポリマーによる処理を用いてバルブに接触する流体の接触角を増加させることができる。
【0049】
図7はこれらのバルブの対象液体、すなわち、脱イオン水およびサイクル配列決定試薬のためのフルオロポリマー処理の場合のバルブサイズの関数としてバルブ性能を示す。両方とも、バルブ寸法に対するバルブ操作圧力に、予想される依存性(圧力〜1/直径)が観察される。スルーホールバルブは面内バルブよりも大きな利点を有する。第1に、それらは製造が容易であり、プラスチックシート中の小さなスルーホールは、バルブ層が作られた後に、ポストの周りの成型、打ち抜き、金型切断、ドリル穴あけ、またはレーザードリル穴あけのいずれかによって容易に作ることができる。面内バルブはかなり精密な加工を必要とし、非常に細かなバルブ(高いバルブ作動圧力を有する)は必要な成型または型押し工具を作るためにリソグラフ技術を用いる必要がある。第2に、スルーホールバルブは「全ての側」をフルオロポリマーでより完全にコーティングすることができる。孔に表面張力の低いフルオロポリマー溶液を添加することによって、毛細管作用による孔内壁の完全なコーティングがもたらされる。面内バルブの全ての側をコーティングするには、バルブ並びにバルブを封止する嵌合層の領域の両方にフルオロポリマーを添加する必要がある。結果として、典型的な面内バルブはバルブの「屋根」上がコーティングされないで形成される。
【0050】
機械加工された試作品において、スルーホールバルブは実施が容易であり、図7に示すように、より大きなバルブ作動圧力を有する。
混合はさまざまな方法で達成することができる。第1に、所与の流量で拡散時間が、
【0051】
【数2】
【0052】
を満足するように、通常小さな横方向寸法と十分な長さの単一チャネルに2つの流体を共注入することによって、拡散を用いて流体を混合することができる。都合の悪いことに、拡散または混合時間はチャネル幅の二乗で増加するので、この種の混合は典型的に急速に大容量を混合するには不十分である。混合は、流体の流れが分割され再結合される積層(CampbellおよびGrzybowski Phil.Trans.R.Soc.Lond.A 2004,362,1069−1086)、または流れチャネル内に無秩序の移流を形成する微小構造の使用(Stroock et al.,Anal.Chem.2002.74,5306−4312)など、さまざまな方法で高めることができる。能動ポンプを使用するシステムにおいて、混合はデバイス上の2つの点の間に流体を循環させることによって達成することができる。最終的に、後者はキャピラリーバルブを用いるシステムにおいても達成することができる。2つのチャネルまたはチャンバーの間に配設されたキャピラリーバルブは流体流れの旋回軸として働き、流体がキャピラリーを通して1つのチャネルから他へ流れる際に、流体のポンピングに十分低い圧力が用いられる場合、流路のメニスカスが捕捉される。逆向きの圧力は流体を第1チャネル中に戻し、それは再びキャピラリーで動かなくなる。複数のサイクルを用いて成分を十分混合することができる。
【0053】
マイクロ流体形式における分離および検出の手法は、本出願と同日出願の「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」と題される米国特許出願、弁理士事件番号第07−865−USに記載され、これはその全体を参照して本出願に援用されている(例えば、その中のパラグラフ68〜79、94〜98を参照されたい)。
【0054】
図13の上部は2つのコンポーネントから製造中に接合されて集積化されたバイオチップ(1301)の構造を示す。第1に、溶解、増幅、および図1のバイオチップの配列決定造作を図11のバイオチップの配列決定産物精製造作と組み合わせる16サンプルのバイオチップ(1302)であり、第2に、16レーンのプラスチック分離バイオチップ(1303)である。また、精製された配列決定産物は分離の前に動電的に注入することもできる。
【0055】
D.製造方法
本発明のデバイスは主としてプラスチックから構成することができる。有用なプラスチックの種類は、制限なしに、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、(その両方とも優れた光学品質、低い吸湿性、および分子量が十分であるとき高い動作温度を有する)、ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)(機械加工が容易であり、優れた光学特性を得ることができる)、ポリカーボナート(PC)(成型性が高く、衝撃抵抗が良好であり動作温度が高い)を含む。材料および製造方法のさらに多くの情報は、「METHODS FOR RAPID MULTIPLEXED AMPLIFICATION OF TARGET NUCLEIC ACIDS(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」と題される米国特許出願(弁理士事件番号第08−318−US)(上記)に含まれ、これは参照して本出願に援用されている。
【0056】
さまざまな方法を用いてバイオチップの個々の部品を製造し、それらを最終デバイスに組み立てることができる。バイオチップは挿入コンポーネントを含むことの可能な1つ以上の種類のプラスチックから構成することができるので、対象の方法は、個々の部品の製造および部品と組み立て体の後続の後処理が付随する。
【0057】
プラスチックコンポーネントは射出成型、熱型押し、および機械加工を含んで、いくつかの方法で作ることができる。射出成型部品は大きな造作(流体貯蔵器など)と微細造作(キャピラリーバルブなどの両方から構成される。いくつかの場合において、異なるサイズの造作の射出成型の手法は変化し得るので、微細造作を1組の部品に作り、大きな造作を他の組に作るのが望ましい。大きな貯蔵器(1方の側に数mm(約1〜50mm)および数mmの深さ(約1〜10mm)、および数百μLを収容できる)については、機械加工された射出成型工具、または工具のネガ型に機械加工されたグラファイト電極を用いて鋼または他の金属に焼成することによって作られた工具を使用する従来の成型を用いることができる。
【0058】
微細造作については、工具作成および成型プロセスは変化することができる。工具は典型的に対象基板上にリソグラフプロセス(例えば、ガラスの異方性エッチング、または深い反応性イオンエッチング、またはシリコン上の他のプロセス)を用いて作られる。次いで、基板はニッケルで電気メッキ(通常接着を向上するクロム層を堆積した後)し、例えば酸中のエッチングによって基板を除去することができる。このニッケル「娘」プレートは射出成型工具である。成型プロセスは上述とはいくらか異なることができる。細い浅い造作については、プラスチックが空洞に注入された後金型が物理的にわずかに圧縮される圧縮射出成型が標準的な射出成型よりも忠実度、精度、および再現性において優れることが判明している。
【0059】
熱型押しについては、上述の大きな造作と微細造作に関する類似の論点は保たれ、工具は上述のようにして作ることができる。熱型押しにおいて、ペレットの形のプラスチック樹脂または成型または型押しによって予備成形された材料の打ち抜き材を工具表面または平坦な基板に貼ることができる。次いで、プラスチックをそのガラス転移温度以上に昇温させ、材料が流動して工具の空洞を充填するように、第2工具に正確に制御された温度と圧力を加える。真空中の型押しは空気が工具とプラスチックの間に捕捉される問題を回避することができる。
【0060】
また、部品を作るのに機械加工を用いることもできる。高速コンピュータ制御(CNC)機械を用いて、成型された、または押し出された、または溶媒鋳造されたプラスチックから1日に多くの個別部品を作ることができる。フライス盤、作業パラメーター、および切断工具の適切な選択によって高い表面品質を達成することができる(50nmの表面粗さはCOCの高速フライスで達成可能である(Bundgaard et al.,Proceedings of IMechE Part C:J.Mech.Eng.Sci.2006,220,1625−1632)。また、フライスを用いて、成型または型押しで達成するのが困難な幾何形状を作り、容易に造作のサイズを単一部品中に混合することができる(例えば、大きな貯蔵器および微細キャピラリーバルブを同じ基板中に機械加工することができる)。成型または型押しよりもフライスが優れる他の利点は、作成した部品を成型工具から取り出すために成型剥離剤を必要としないことである。
【0061】
個々の部品の後処理は光学検査(自動化することができる)、バリや飛び出したプラスチックなどの欠陥を除去する洗浄作業、および表面処理を含む。機械加工されたプラスチックに光学品質表面が必要ならば、プラスチック用溶媒の蒸気による研磨を用いることができる。例えば、PMMAについてはジクロロメタンを用いることができ、COCおよびCOPについてはシクロヘキサンまたはトルエンを用いることができる。
【0062】
組み立ての前に、表面処理を加えることができる。表面処理は、濡れ性を促進または低減すること(すなわち、部品の親水性/疎水性を変化させる)、マイクロ流体内のバブルの形成を抑制すること、キャピラリーバルブのバルブ動作圧力を増加すること、および/または表面へのタンパク質の吸着を抑制することができる。濡れ性を低減するコーティングは、分子がデバイスの表面に吸着されまたは結合されるとき流体に露出されるフルオロポリマーおよび/またはフッ素部を有する分子を含む。コーティングは吸着または堆積させることができ、またはそれらは表面に共有結合することができる。それらのコーティングを作るのに用いることのできる方法は、浸漬コーティング、組み立てられたデバイスのチャネルを通してコーティング剤を通過させること、インク、化学的気相堆積、およびインクジェット堆積を含む。コーティング分子と表面の間の共有結合は、活性化された表面を作る酸素または他のプラズマまたはUVオゾンでの処理によって形成することができ、続いて、表面に表面処理分子の堆積または共堆積が続く(Lee et al.,Electrophoresis 2005,26,1800−1806、およびCheng et al.,Sensors and Actuators B 2004,99,186−196を参照されたい)。
【0063】
コンポーネント部品の最終デバイスへの組み立ては様々な方法で行うことができる。フィルターなどの挿入デバイスは金型切断し、次いで取り出し−配置機械で配置することができる。
【0064】
均一な厚さの2層以上の同じ材料層の接合には熱拡散接合を用いることができる。一般に、部品を積み重ね、温度が部品を含む材料のガラス転移温度近傍まで上昇することのできる熱プレス中に積み重ねを置き、部品間のインターフェースで融合させる。この方法の利点は、接合が「全体的」である、すなわち、熱と圧力が層全体に均一に加えられるので、層の内部構造に拘わらず、概略同じ寸法の任意の2つの層を接合できることである。
【0065】
また、熱拡散を用いて、特別に作られた接合受台を用いることによって、その接合または対向面が平面ではないものなど、より複雑な部品を接合することができる。それらの受台は接合すべき層の外側表面に整合する。
【0066】
他の接合の変形は溶媒援用熱接合を含み、これはメタノールなどの溶媒が部分的にプラスチック表面を溶解し、低い接合温度で接合強度を高める。さらに他の変形は低分子量材料のスピンコーティングを用いることである。例えば、接合すべき少なくとも1層に同じ化学構造であるが基板コンポーネントよりも低分子量のポリマーをスピンコーティングし、コンポーネントを組み立て、拡散接合によって接合された積み重ねを得ることができる。熱拡散接合の間に、低分子量成分はコンポーネントよりも低い温度でそのガラス転移温度を通過し、基板プラスチック中に拡散することができる。
【0067】
接着剤およびエポキシは、異なる材料を接合するのに用いることができ、異なる方法で作られたコンポーネントを接合するとき、使用が有望である。接着剤フィルムは金型切断しコンポーネント上に配置することができる。また、液体接着剤もスピンコーティングによって塗布することができる。構造部品上への接着剤のインク塗布(ナノコンタクト印刷など)を成功裏に用いて、接着剤を特別の領域へ「導く」必要なしに、接着剤を構造体表面に貼付することができる。
【0068】
一例において、本発明のバイオチップは図6に示すように組み立てることができる。層1および2は含まれる造作によって整列することができ(例えば、ピンとソケット)、別々に、含まれる造作によって層3と4を同様に整列することができる。層1と層2の積み重ねは逆にすることができ、層3と層4の積み重ねに加え、次いで積み重ね全体を接合することができる。
【0069】
E.実施例
実施例1
核酸抽出および核酸増幅用集積バイオチップ
PCRによる核酸抽出および核酸増幅用集積バイオチップを図1に示す。この4サンプル装置は、試薬の分配および計量、試薬とサンプルの混合、チップの熱サイクル部へのサンプルの送達、熱サイクリング、の機能を集積化する。同バイオチップは以下の実施例2で使用され、サイクル配列決定を実行するための追加の構造を有する。
【0070】
バイオチップは、図2〜5に示すように熱可塑性物質の4層で構成した。4層は加工したPMMAであり、それぞれ0.76mm、1.9mm、0.38mm、0.76mmの厚さを有し、バイオチップの横寸法は124mm×60mmとした。一般的に、3層以上のバイオチップでは、複数の検定間で分割される不定数の共通の試薬を使用することができる。2つの流体層と少なくとも貫通孔を含む1つの層では、外側の層の流体路がお互いを乗り越えることができる(複数のサンプル間で1つのみの試薬を使用するような、3層構造を必要としない特別な場合が存在すると認識される)。4層の選択は、限外濾過(実施例3)や完全集積化(実施例4)などの他の機能用のチップの構造との適合性のために行った。
【0071】
バイオチップのチャネルの127μm×127μm〜400μm×400μmの範囲であり、リザーバの断面寸法は400μm×400μm〜1.9×1.6mmである。チャネルとリザーバはいずれも0.5mm〜数十mm程度の短い距離を延在する。バイオチップ内で使用されるキャピラリーバルブは、「面内」バルブの場合は127μm×127μmの寸法で、貫通孔キャピラリーバルブの場合は直径100μmとした。
【0072】
4加工層の特定のチャネル、リザーバ、およびキャピラリーバルブを、疎水性/疎油性物質、PFC 502A(Cytonix,Beltsville,MD)で処理した。表面処理は、湿ったQチップで被覆した後、室温で空気乾燥した。乾燥したフルオロポリマー層は、光学顕微鏡で判定したところ厚さ10μm未満だった。表面処理は、液体が急速にチャネルまたはチャンバーの壁を濡らす際に生じうる、液体内、特にサイクル配列決定試薬などの低表面張力液体内での気泡の生成を防止し、(および、空気が移動できる前に気泡を「孤立させ」)、キャピラリーバルブが液体流に抵抗するキャピラリー破壊圧力を増大させるという2つの目的に供する。処理されずに残った領域は、PCRおよびサイクル配列決定用の熱サイクリングチャンバである。
【0073】
表面処理後、層を図6に示すように接合した。接合は、多量の成分がプラスチックのガラス転移温度(Tg)近傍の温度まで圧力下で加熱される熱拡散接合を用いて行った。45lbsの力を15分間、11.5平方インチのバイオチップ全体に印加し、うち7.5分は気温から130℃までの傾斜から成る熱接合プロファイルで、後の7.5分は130℃を維持してから急速に室温まで冷却した。
【0074】
本発明のバイオチップ内で流体を動かすために空気式機器を開発した。2個の小さな蠕動ポンプが圧力と真空を提供する。約0.05〜3psigの範囲の3つのレギュレータ間で正圧を分割した。真空は約(−0.1)〜(−3)psigの出力真空を有するレギュレータに移した。4つ目の高圧を別のレギュレータへのN2のシリンダからまたは高容量ポンプから取り出した。正圧と負圧を一連の8つの圧力選択モジュールに印加した。各モジュールには、5入力の中からバイオチップに送られる出力圧力を選択することのできるソレノイドバルブを備えた。出力圧力ラインは、少なくとも1つの空気圧インタフェースを終端とした。このインタフェースは、チップの入力側のチップポート(図面の最上部に沿うポート)上に配置されるOリングでチップに固定した。
【0075】
バイオチップポートの真上には、圧力選択モジュールからの出力圧力ラインを受け入れる追加のソレノイドバルブ(すなわち、ゲートバルブ、1インタフェースにつき8個)を設けた。チップに近接するこれらのバルブは、圧力ラインとチップ間に低デッドボリュームインタフェース(約13μL)を提供する。低デッドボリュームインタフェースは、圧力が別の液体を動かすように印加される際、バイオチップ上の特定の液体の意図しない移動を防止する(液体の栓と閉鎖したバルブの間の小さなガス体積が、たとえば、圧力が印加されるときのガスの圧縮によって栓が移動しうる最大量を決定する)。すべての圧力選択バルブとゲートバルブとを、スクリプトベースのLab ViewTMプログラムを用いてコンピュータの制御下で動作させた。このシステムの重要な特徴は、短い圧力サイクル時間が可能なことである。30msec程度の短い圧力パルスしか必要としない流体制御イベントを実行することができる、および/または、圧力をある値から別の値に(すなわち、あるレギュレータから別のレギュレータに)、迅速に(すなわち、わずか10〜20msecのタイムラグで)切替え可能な複雑な圧力プロファイルを利用することができる。
【0076】
サンプルは、pGΕMシーケンシングプラスミドインサートで転換された約106細胞/mLのE.coli DH5(pUC18シーケンシングターゲット)の細菌懸濁液から成る。PCR試薬は、0.1μMの濃度のdNTPs KOD Taq ポリメラーゼ(Novagen,Madison,WI)から成る。
【0077】
細菌懸濁液1.23μLのサンプルを4つのポート104それぞれに追加し、各ポートは層1および2にそれぞれ貫通孔202および336を有する。その後、サンプルは層2のサンプルチャネル303に配置した。次に、10μLのPCR試薬を層1および2に貫通孔217および306を備えるポート105に追加した。その後、PCR試薬を層2のチャンバー307に配置した(図8aを参照)。PCR試薬のために移動した空気の排気用ポートは、109および貫通孔203と305を備えるポート107である。
【0078】
動作中、サンプルおよび下流工程(試薬の計量や流体の混合など)により移動した空気は、貫通孔227を備えるチップの出力端上のポート108を通じて排気した。PCR反応の最終体積は所望に増大または減少させることができる。
【0079】
バイオチップを上述の空気マニホールド内に配置した。ステップ間の遅延なく、以下の自動圧力プロファイルを実行した。特段他に指摘のない限り、チップの入力側に沿ったポートに対応する空気圧インタフェースバルブは、全ステップの間中閉じている。
【0080】
15秒間ポート104に0.12psigの圧力を印加して、チャネル303を下って貫通孔304までサンプルを動かした。サンプルは貫通孔304を通過し、層2の反対側の層1のサンプルチャンバー204に現れ、第1の混合ジャンクション205まで動かされた。第1の混合ジャンクションでは、サンプルはキャピラリーバルブ210によって保持された(図8b〜cを参照)。
【0081】
10秒間ポート105に0.12psigの圧力を印加して、PCR試薬を貫通孔320を貫通して動かした。PCR試薬は分配チャネル208の層2の反対側に現れ、サンプル量と等しい試薬量を確定する計量チャンバー209まで移動し、混合ジャンクション205でキャピラリーバルブ211によって保持された(図8dを参照)。
【0082】
ポート107(貫通孔203および305を備える)に0.12psigの圧力を印加しポート105を3秒間大気に開放し、チャネル208を空にした(図8eを参照)。
【0083】
0.03秒間ポート107および105に0.8psigの圧力を印加すると同時に、0.03秒間、0.7psigの圧力をポート104に印加して、キャピラリーバルブ210および211を越えて液体を決壊させることによってサンプルとPCR試薬との混合を開始させた(図8fを参照)。
【0084】
10秒間ポート104および107に0.12psigの圧力を印加して、サンプルおよびPCR試薬を混合チャネル214に注入し、キャピラリーバルブ210および211で保持させた。混合バルブ212を通って狭窄部213までの通過により、追加の水圧抵抗が生成されて、先の高圧パルスによって与えられていた高速が減速した。
【0085】
0.03秒間ポート104および107に0.7psigの圧力を印加して、キャピラリーバルブ210および211から液体を分離した(図8gを参照)。
【0086】
3秒間ポート104および107に0.12psigの圧力を印加して、混合チャネル214を通過してキャピラリーバルブ219まで液体を注入し、そこで保持させた(図8hを参照)。
【0087】
0.1秒間ポート104および107に0.7psigの圧力を印加して、サンプルとPCR試薬の混合物を貫通孔315および402と層2および3とを通過させ、PCRチャンバー502内まで動かした(図8iを参照)。
【0088】
3秒間ポート104および107に0.12psigの圧力を印加して、サンプルとPCR試薬の混合物を完全にチャンバー502に注入した。その後、サンプルとPCR試薬の混合物の先端は貫通孔403および316を通過して、層1に現れ、キャピラリーバルブ220で保持された(図8jを参照)。
【0089】
その後、「METHODS FOR RAPID MULTIPLEXED AMPLIFICATION OF TARGET NUCLEIC ACIDS(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」と題され、本文書とともに出願された米国特許出願、弁理士事件番号08−318−USおよび、「DEVICES AND METHODS FOR THE PERFORMANCE OF MINIATURIZED IN VITRO ASSAYS(小型化管内検定の実行装置および方法)」と題され、2008年2月6日に出願された国際特許出願第PCT/US08/53234号、弁理士事件番号07−084−WOに記載されるガスブラダー圧縮機構を用いて、バイオチップを30psig N2まで加圧し、ペルチエを介したPCR増幅のために熱サイクルした。上記両文書とも引用により本文書に全文を組み込む。
【0090】
サンプル、試薬量、およびPCRチャンバーの寸法は、液体がバルブ219とバルブ220間の領域を満たすように選択した。その結果、小さな断面積(通常、127μm×127μm)の液体/蒸気インタフェースが、層4の熱サイクルされた底面から約3mmの位置に配置された。熱サイクリング間の圧力の印加により、サンプル内の溶存酸素によるガス放出を抑制した。液体/蒸気インタフェースの小さな断面積と、ペルチエ表面からの距離とはいずれも、蒸発を抑制した。
【0091】
サイクリング中のバイオチップの最上部で観測された温度は60℃を超えず、その結果、液体/蒸気インタフェースでの蒸気圧は、仮にインタフェースがPCRチャンバー内にあった場合の蒸気圧よりも相当低かった。2μLのサンプルの場合、そのうち1.4μLがチャンバー502内にあり、残りが貫通孔およびキャピラリーバルブ内にあり、観測される蒸発は40サイクルのPCR全体で0.2μL未満だった。未サイクルの流体量、この場合0.6μLは、より小さな貫通孔の直径を選択することにより低減することができる。
【0092】
PCRは、以下の温度プロファイルを用いて実行した。
・3分間、98℃での細菌の熱溶解
・以下を40サイクル
5秒間98℃での変性
15秒間65℃でのアニーリング
4秒間72℃で伸張
2分間72℃での最終伸張
【0093】
PCR産物を、チャンバー502を〜5μLの脱イオン水で洗浄することによって洗浄し、スラブゲル電気泳動によって分析した。PCRは、以後の配列決定反応に必要とされるよりもずっと多くの、1反応につき最大40ngを産出した。この適用では、単に細菌を溶解することによって、細菌核酸を生成した。核酸は必要に応じて精製することができ、この精製工程は、増幅、配列決定、およびその他の反応の効率を向上させることができる。
【0094】
実施例2
サイクル配列決定試薬の分配、PCR産物との混合、およびサイクル配列決定用集積バイオチップ
実施例1に記載のバイオチップを使用した。実施例1に概説したプロトコルを用いて管内で生成したPCR産物を、上述したようにサンプルとバイオチップのPCR試薬ポートの両方に追加した。50μLのサイクル配列決定試薬(BigDyeTM3.1/BDX64、MCLab、San Francisco)を、(貫通孔215および308を備える)ポート106とチャンバー309とに追加した。2つの空気式インタフェース(1つはチップの入力端用、もう1つは出力端用)の設置後、PCR産物を実施例1で説明したようにPCRチャンバーまで処理したが、PCR熱サイクリングステップは除いた。チップ内の流体の配置を図9aに示す。
【0095】
空気圧システムソフトウェアを使用して、以下の圧力プロファイルを実行した。チップポートに対応するすべてのソレノイドバルブは、特段の指摘のない限り、閉じている。
(1)ポート106に0.1psigの圧力を印加して、ポート109を10秒間大気に開放して、サイクル配列決定試薬をチャネル310に注入した(図9bを参照)。
(2)0.2秒間ポート106および108に0.7psigの圧力を(貫通孔216および314を備える)印加して、チャネル304から貫通孔311、さらに層2の本体を通って層1のサイクル配列決定試薬計量チャンバー218まで配列決定試薬を動かした(図9cを参照)。
(3)ポート106に0.1psigの圧力を印加して、ポート109を大気に開放して、サイクル配列決定試薬をキャピラリーバルブ221まで動かし、そこで保持させた(図9dを参照)。
(4)ポート108に0.1psigの圧力を印加して、ポート106を1秒間大気に開放して、過剰なサイクル配列決定試薬を後方へチャンバー101まで戻させ、チャネル310を空にした(図9eを参照)。
(5)0.1秒間ポート104および107に0.7psigの圧力を印加して、ポート109を大気に開放して、PCR産物を、キャピラリーバルブ220を通り貫通孔317まで、そして層2の本体と層3の貫通孔404を通過させ、層4のサイクル配列決定チャンバー503内へと動かした(図9fを参照)。
(6)ポート109に0.1psigの圧力を印加して、ポート104および107を5秒間大気に開放して、PCRサンプルを貫通孔に戻るように動かした。毛管管作用により貫通孔の入口で液体を保持して、閉じ込められた気泡がPCR産物とチャンバー503との間に現れるのを防止した(図9gを参照)。
(7)0.2秒間ポート108に0.7psigの圧力を印加して、ポート109を大気に開放して、サイクル配列決定試薬をチャンバー503内に動かすと同時に、ポート104および107に0.1psigを印加して、PCR産物を配列決定試薬と接触させた(図9hを参照)。
(8)10秒間ポート104、107、および108に0.1psigの圧力を印加して、ポート109を大気に開放して、PCR産物およびサンガー試薬をチャンバー内に動かした。PCR産物の後方メニスカスと配列決定試薬の後方メニスカスは、キャピラリーバルブ220および221で留められた(図9iを参照)。
(9)0.1秒間0.25psigの5真空パルスをポート108に印加して、ポート109を大気に開放して、両液体を部分的に後方へ試薬計量チャンバー218内へと引き戻した(図9jを参照)。
(10)ポート104、107、および108に0.1psigの圧力を印加して、ポート109を10秒間大気に開放して、混合物を戻しチャンバー503に注入して、後方メニスカスをステップ8と同様キャピラリーバルブで保持した(図9kを参照)。
【0096】
ステップ9〜10は、配列決定試薬とPCR産物の混合を実行するためにあと2回繰り返した。
【0097】
その後、バイオチップを30psig N2に加圧し、以下の温度プロファイルで熱サイクルを行った。
・1分間95℃で最初の変性
以下を30サイクル
5秒間95℃での変性
10秒間50℃でのアニーリング
1分間60℃での伸張
【0098】
サンプル(図9lを参照)を回収し、エタノール沈澱により精製し、後述するように(パートII、実施例5)GenebenchTM機器上で電気泳動分離およびレーザー励起蛍光検出によって分析した。Phred品質分析は、1サンプルにつき408+/−57 QV20塩基を産出する。
【0099】
実施例3
4サンプルバイオチップでの限外濾過
配列決定産物精製実行用の4サンプルバイオチップは、実施例1に記載され、図11に示されるように4層で構成した。構成内の追加要素は、適切なサイズにカットされ、熱接合前に層3と4の間に配置される限外濾過(UF)フィルター1116である。UFフィルター周りで良好な接合を形成するには、層3の使用を必要とした。フィルターまで、およびフィルターからつながる全チャネルは層2の底部にあるため、層3および4は途切れのないフィルター外周を形成する(層2と4とを直接接合すると、たとえば、チャネルがフィルターを横断する場所でフィルターの接合が不良となる)。本実施例では、分子量カットオフ(MWCO)30kDの再生セルロース(RC)フィルターを使用した(Sartorius,Goettingen,Germany)。別の材料ポリエーテルスルホン(Pall Corporation,East Hills,NY)を有する、その他各種MWCO(10kD、50kD、および100kD)を検討した。
【0100】
(1)pUC18テンプレートおよびKOD酵素を用いて管反応で生成されたサイクル配列決定産物の4つの10μLサンプルを、第1層のポート1104から、第2層のチャネル1105を通って第2層のチャンバー1106に追加した。200μLの脱イオン水を、ポート1120(第1層の貫通孔)と第2層のリザーバ1121に追加した。その後、バイオチップを2つの空気圧インタフェースに設置した。
【0101】
以下の圧力プロファイルを空気圧システムソフトウェアを用いて実行した。バイオチップポートに対応するすべてのソレノイドバルブは、特に断りのない限り閉じている。
(2)ポート1104に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を5秒間大気に開放して、配列決定産物を層1のキャピラリーバルブ1108まで動かし、そこで保持させた。
(3)ポート1104に0.6psigの圧力を印加して、ポート1119を0.1秒間大気に開放して、層1のキャピラリーバルブ1108を通ってサンプルを決壊させ、層2の貫通孔1111を通過し層2のUF入力チャンバー1112まで送達させた。
(4)ポート1104に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を10〜30秒間(実験によって異なる時間を用いた)大気に開放して、配列決定産物をチャンバー1112に送達した。配列決定産物は、層2のキャピラリーバルブ1113によって保持された(図12aおよび12bを参照)。
(5)ポート1124に0.8psigの圧力を印加して、ポート1119および1104を0.5秒間大気に開放して、バルブ113を介して濾過チャンバー1115まで配列決定産物を動かした。また、これにより、保持された液体の入力キャピラリーバルブ1108を清掃した。
(6)ポート1124に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を10〜30秒間大気に開放して、配列決定産物のチャンバー1115への送達を完了した。配列決定産物はバルブ1113で保持された(図12cを参照)。
(7)7.5psigの圧力を、限外濾過のためにチップの全ポートにゆっくりと印加した。限外濾過中、配列決定産物メニスカスは1113で留められたままで、液体がフィルター1116を通過して推進されるにつれ、液体の先端が「後退」する。10μLの配列決定産物は、濾過のために120秒までを要した。濾過後、圧力を解放した(図12cおよび12dを参照)。
(8)ポート1120に0.09psigの圧力を印加して、ポート1124を3秒間大気に開放して、水を(層4の)チャネル1122まで動かし、部分的にチャンバー1123をあふれさせた(図12eを参照)。
(9)ポート1120および1124に0.8psigの圧力を印加して、ポート1119を大気に開放して、水をチャネル1122内の貫通孔キャピラリーバルブ1110を介してチャンバー1112内へと動かした。
(10)ポート1120に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を10〜30秒間大気に開放して、液体のチャンバー1112への送達を完了させ、そこで液体はバルブ1113によって保持された。(図12fを参照)。
(11)ポート1124に0.09psigの圧力を印加して、ポート1120を解放し、チャンバー1123およびチャネル1122内の水をチャンバー1121に戻るように動かした(図12gを参照)。
(12)ポート1124に0.8psigの圧力を印加して、ポート1119および1104を0.5秒間大気に開放して、水をバルブ113を通過して濾過チャンバー1115まで動かした。また、これにより、保持された液体の入力キャピラリーバルブ1108を清掃した。
(13)ポート1124に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を10〜30秒間大気に開放して、水のチャンバー1115への送達を完了した。配列決定産物はバルブ1113で保持された(図12hを参照)。
【0102】
上記ステップ6と同様、水はUFフィルターを通じて動かされ、第1の洗浄を完了し、ステップ8〜13をあと1回繰り返した。
【0103】
ステップ8〜12を繰り返して、溶出のために使用される最終量の水でチャンバー1115を部分的に満たした(図12kを参照)。
【0104】
ポート1104に1.6psigの真空を印加して、他の全ポートを1秒間閉鎖して、チャンバー1115からチャンバー1112へと水を引き込んだ(液体のメニスカスとポート1119に対応するソレノイドバルブとの間のデッドスペースと等しい大きさの真空を生成することによって、最大の移動が指示される)(図12lを参照)。
【0105】
ポート1104を1秒間大気に開放して、液体とポート1119に対応するバルブとの間に生成される部分的真空により、液体をチャンバー1115内に戻すことができる(図12mを参照)。
【0106】
16〜17を50回繰り返して、50の溶出サイクルを生成した。
10秒間ポート1124に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を大気に開放して、後方メニスカスが1113で留められるように液体を動かした。
【0107】
0.05秒間ポート1124に0.7psigの圧力を印加して、ポート1119を大気に開放して溶出液を分離した(図12nを参照)。
サンプルを回収し、上述したようにGenebenchTM上で直接処理して、最大479のQV20塩基を産出した。
【0108】
実施例4
核酸抽出、テンプレート増幅、サイクル配列決定、配列決定産物の精製、および精製産物の電気泳動分離および検出用完全集積バイオチップ
図13は、図1のバイオチップの溶解および抽出、テンプレート増幅、およびサイクル配列決定機能と、図11のチップの限外濾過と、電気泳動分離および検出と、を組み合わせた16サンプルバイオチップ1301の実施形態を示す。限外濾過による工程はサブコンポーネント1302によって実行され、実施例1、2、および3に記載されるように遂行することができる。1302の底面の移動点1304は、分離サブコンポーネント1303上の入力ウェル1305と並んでいる。
【0109】
注入は、対向電極を用いて予備濃縮ステップで動電学的に実行される。図14に示す入力ウェル1305は、液体受入ウェル1401、主分離電極1402、および対向電極1403から成る。分離チャネル1306は、ウェルリザーバ1401の底部に開放している。分離電極は通常、白金または金で被覆されており、好ましくは、1401の内面の1、3、または4を実質上覆う平坦金被覆電極である。対向電極は、架橋化ポリアクリルアミドの薄層(〜10μm)で被覆された薄い金、鋼鉄、または白金のワイヤ(通常、直径0.25mm)である。これは、電極上にヒドロゲル保護層を形成する。パネルdでは、精製された配列決定産物(1401内の黒丸)はウェルに移送されている。1402と1403の間に正電位を印加すると、負に帯電した配列決定産物が、パネルc〜dのように1403の方に引かれる。1403上のヒドロゲル層は、配列決定産物が金属電極に接触するのを阻止し、配列決定産物の電気化学的ダメージを防止する。その後、対向電極1403は、1402に対して浮上させられる。次に、正電位が、分離チャネル1306の遠位端で主分離電極1402と陽極(図示せず)との間に印加される。これにより、産物が注入されて(パネルe)、分離および検出のために電気泳動で1306まで下る(パネルf)。図14に示すように、このスキームは、チャネル1306の端部近傍での配列決定産物の濃度を、限外濾過から導出される濃度に比べて相当高めることができる。用途によってはこのような濃度が望ましいが、すべての場合に必要なわけではない。このような場合、対向電極1403のない図14のウェルを、EKIを実行するのに直接使用することができる。もしくは、荷重ウェル中の単独の電極が、クロスTまたはダブルTインジェクタであってもよい(たとえば、「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」と題され、本文書とともに提出された米国特許出願、弁理士事件番号07−865−USを参照)。
【0110】
分離は分離チャネル1306で行い、検出は検出領域1307内のレーザー励起蛍光を介して行う。このバイオチップでは、たとえば、ペルチエブロック(図示せず)に1301の下面と結合してPCRおよびサイクル配列決定用の熱サイクリングを提供させるための凹部1308が設けられる。機器内の空気圧インタフェース(図示せず)はチップの端部に固定され、マイクロ流体制御を提供する。
【0111】
II.分離および検出システム
A.分離および検出コンポーネントおよびその使用の詳細な説明
1.分離機器
DNA分離は、米国特許出願公開第US2006−0260941−A1号に記載されるようなバイオチップおよび機器上で実行される。分離チップは、ガラスであっても(米国出願公開第US2006−0260941−A1号を参照)、プラスチックであってもよく(「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」と題され、本文書と同時に出願された米国特許出願、弁理士事件番号07−865−US)、どちらも引用により全文を本文書に組み込む。
【0112】
2.励起および検出機器
この機器は、サンプルと相互作用し、サンプルを識別する励起および検出サブシステムを備える。サンプルは通常、色素(たとえば、蛍光色素)で標識される1つまたはそれ以上の生体分子(DNA、RNA、およびタンパク質を含むがそれらに限定されない)を含む。励起サブシステムは、励起源とレンズ、ピンホール、ミラー、および対物レンズなどの光学素子を有する励起ビーム路とを備えて、励起/検出ウィンドウ内の励起源を条件づけ、焦点を結ばせる。サンプルの光励起は、400〜650nmの可視領域の発光波長で、一連のレーザー種によって達成することができる。個体レーザーは、約460nm、488nm、および532nmの発光波長を提供することができる。これらのレーザーは、Coherent社製(Santa Clara,CA)のCompass、Sapphire、およびVerdiを含む。ガスレーザは、約488nm、514nm、543nm、595nm、および632nmの可視波長での発光を有するアルゴンイオンおよびヘリウムネオンを含む。可視領域での発光波長を有するその他のレーザーは、CrystaLaser社(Reno,NV)から入手可能である。1実施形態では、488nm個体レーザーSapphire 488−200(Coherent,Santa Clara,CA)を利用することができる。別の実施形態では、可視範囲を越える波長の光源を、可視範囲を越える吸収および/または発光スペクトルを有する色素(たとえば、赤外線または紫外線発光色素)を励起するために使用することができる。もしくは、発光ダイオードやランプを含む色素励起に適した発光波長を有する非レーザー光源の使用によって、光励起を実現することができる。
【0113】
検出サブシステムは、1つまたはそれ以上の光学検知器、(波長分離を実行する)波長分散装置、および励起/検出ウィンドウに存在する蛍光色素標識化DNAフラグメントから発せられた蛍光を回収するための、レンズ、ピンホール、ミラー、および対物レンズなどを含むがそれらに限定されない1つまたは一連の光学素子を備える。蛍光は、単独の色素または色素の組み合わせから発することができる。信号を判別して発光色素からの貢献を判断するため、蛍光の波長分離を利用することができる。二色性ミラーおよびバンドバスフィルター素子(Chroma,Rockingham,VT;およびOmega Optical,Brattleboro,VTなどの多数のベンダーから入手可能)の使用によって実行可能である。この構成では、発せられた蛍光が一連の二色性ミラーを通過し、そこで波長の1部がミラーによって反射されて光路を下り続け、波長の他の部分がミラーを通過する。それぞれが二色性ミラーの端部に配置される別個の一連の光検知器が、特定範囲の波長における光を検知する。バンドバスフィルターは、検出前に波長範囲をさらに狭めるために、二色性ミラーと光検知器の間に配置することができる。波長分離された信号を検出するのに利用可能な光学検知器は、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子倍増管モジュール、およびCCDカメラなどである。これらの光学検知器は、Hamamatsu(Bridgewater,NJ)などの供給業者から入手可能である。
【0114】
1実施形態では、波長成分を二色性ミラーおよびバンドバスフィルターを使用して分離し、これらの波長成分を光電子増倍管(PMT)検知器(H7732−10、Hamamatsu)で検出する。二色性ミラーおよびバンドバスコンポーネントは、各PMTの入射光が蛍光色素の発光波長に対応する狭い波長から成るように選択することができる。バンドバスは通常、1〜50nmの波長範囲のバンドバスで蛍光発光のピークを中心とするように選択される。このシステムは8色の検知を可能とし、8つのPMTとそれに対応する、発せられた蛍光を別々の8色に分割するおよびバンドバスフィルターのセットとを備えて設計することができる。追加の二色性ミラー、バンドバスフィルター、およびPMTを適用することによって9つ以上の色素を検出することもできる。図15は、個々のバンドバスフィルターと二色性フィルターの実装用のビーム路を示す。この集積化バージョンの波長識別および検出構造は、Hamamatsu,Bridgewater,NJのH9797Rである。
【0115】
蛍光信号から成る色素を判別するもう1つの方法は、プリズム、回析格子、透過格子(ThorLabs,Newton,NJ;Newport,Irvine,CAなどの多数のベンダーから入手可能)やスペクトル写真(Horiba Jobin−Yvon,Edison,NJなどの多数のベンダーから入手可能)などの波長分散素子およびシステムの使用である。この動作モードでは、蛍光の波長成分が物理空間全体に分散される。この物理空間に沿って配置された検知器素子が光を検知し、検知器素子の物理的位置と波長との相関関係を取る。この機能に適した検知器はアレイベースであり、多要素フォトダイオード、CCDカメラ、裏面薄型CCDカメラ、多陽極PMTを含む。当業者であれば、波長分散素子と光学検知器素子との組み合わせを適用して、同システム内で使用される色素から波長を判別デイルシステムを得ることができるであろう。
【0116】
別の実施形態では、波長成分と励起された蛍光とを分離するために、二色性およびバンドバスフィルターの代わりにスペクトル写真を使用する。スペクトル写真設計の詳細は、John James,Spectrograph Design Fundamental.Cambridge,UK:Cambridge University Press,2007で入手可能である。スペクトル範囲505〜670nmの凹面ホログラフィック回折格子でのスペクトル写真P/N MF−34(P/N 532.00.570)(HORIBA Jobin Yvon Inc,Edison,NJ)がこの適用で使用される。検出は線形32要素PMT検知器アレイ(H7260−20,Hamamatsu,Bridgewater、NJ)によって実行可能である。回収された蛍光はピンホール上で撮像され、反射され、分散され、凹面ホログラフィック回折格子によってスペクトル写真の出力ポートに搭載される線形PMT検知器上に撮像される。PMTベースの検知器の使用は、低暗ノイズ、高感度、高動的範囲、および迅速な反応というPMT検知器の特徴を利用している。励起された蛍光の検出にスペクトル写真と多要素PMT検知器とを使用することによって、機器の検出システム(二色性、バンドバス、および検知器)を物理的に再構成する必要なく、システム内およびレーン内で適用可能な色素の数および色素の発光波長の自由度を高めることができる。この構成から収拾されるデータは、各レーンの各走査に関する、可視波長範囲全体にわたる波長依存スペクトルである。走査ごとに全スペクトルを生成することで、色素発光波長とサンプル内に存在しうる色素の数との両方に関して、色素の自由度が高まる。また、分光器と線形多要素PMT検知器の使用により、アレイ内のPMT素子全部が並行して読み出されるため、読出速度が極めて速くなる。図16は、多要素PMTとスペクトル写真実装用のビーム路を示す。
【0117】
機器は、複数のレーンを同時に検出し、複数の波長を同時に検出するための動作観測モードを採用することができる。1構成では、励起ビームが、すべてのレーンに同時にぶつけられる。ここからの蛍光は、CCDカメラまたはアレイなどの2次元検知器によって収集される。この収集の観測モードでは、波長分散素子が使用される。一方の次元の検知器は物理的な波長分離を表し、他方の次元の検知器は空間的またはレーン対レーンの分離を表す。
【0118】
複数のサンプルの同時励起および検出のため、バイオチップの各レーンを撮像するため、励起と検出の両方のビーム路を導く走査ミラーシステム(62)(P/N 6240HA,67124−H−0および6M2420X40S100S1,Cambridge technology,Cambridge MA)を使用する。この動作モードでは、走査ミラーがビーム路を導いて、最初のレーンから最後のレーンまでレーンからレーンへと順次走査し、最初のレーンから最後のレーンまでの工程をサイド繰り返す。レーンの位置を特定するのに、米国特許出願公報第2006−0260941−Al号に記載されるようなレーン発見アルゴリズムを使用する。
【0119】
多レーンおよび多色素同時検出のための光学検出システムの実施形態を図16に示す。蛍光励起および検出システム40は、記録、および最終的には分析のために色素から励起された蛍光を収集し、1つまたはそれ以上の光検知器に伝送しつつ、各マイクロチャネルの1部を通ってエネルギー源(たとえばレーザ光)を走査することによって、(たとえば、1セットのSTR遺伝子座の増幅後のDNAフラグメントを含む)DNAサンプルの電気泳動によって分離される成分を励起する。
【0120】
1実施形態では、蛍光励起および検出アセンブリ40は、レーザー60、スキャナ62、1つまたはそれ以上の光検知器64、各種ミラー68、スペクトル写真、およびレーザー60から放出され、開口部42を通ってテストモジュール55および光検知器64まで戻るレーザー光を伝導するレンズ72を含む。スキャナ62は、テストモジュール55に対する様々な走査位置へと入射するレーザー光を移動させる。具体的には、スキャナ62は、テストモジュール55内の各マイクロチャネルの該当部分までレーザー光を移動させて、それぞれの分離成分を検出する。多要素PMT64は、テストモジュール55からデータ(たとえば、異なる波長のDNAフラグメントの蛍光信号)を収集し、ポート75に装着されたケーブルを介して保護カバー50外に配置されるデータ獲得および記憶システムにデータを電子的に提供する。1実施形態では、データ獲得および記憶システムは、Option Industrial Computers(13 audreuil−Dorion,Quebec,Canada)社製の小型コンピュータを含むことができる。
【0121】
別の実施形態(「観測モード」)では、励起源が全検出箇所に同時に入射され、全検出箇所からの蛍光が同時に収集される。同時スペクトル分散(検出された蛍光の波長スペクトル)および空間分散(検出箇所)は2次元検知器アレイで実行可能である。この構造では、一方の次元のアレイ検知器(列)でスペクトル成分が撮像および検出され、他方の次元のアレイ検知器で空間成分が撮像および検出されるように、2次元検知器アレイを配置する。
【0122】
好適な機器は、「観測」モードではなく動作の走査モードを利用する。走査モードでは、スキャナが識別されているレーンと一致している間であって、次のチャネルに入射される前に、各チャネルの信号を収集し、積算し、読み出す必要がある。高速読出の検知器は、最適な光の収集と積算を可能とし、信号対ノイズ性能を高める。理想的には、検知器の読出時間は、スキャナがチャネルと一致している総計時間よりも相当短くあるべきである。多要素PMTは0.7ms未満での読出しが可能であり、読出時間は個々のチャネルの検出のための集積化時間よりもずっと短い。
【0123】
ピンホールに入射する蛍光は、波長成分に応じて格子により分散し、線形多陽極PMT検知器アレイ上に集束させることができる。検知器は32の電流出力を提供し、1つの出力が、入射する光子の数に対応するアレイ素子のそれぞれに関する。複数のサンプル(またはレーン)検出中、レーザーが選択されたレーンを励起する位置にあるとき、積分回路はPMT出力電流を積算して、積算されたPMT電流に比例する出力電圧を生成する。同時に、シングルエンド型出力電圧は、アナログ機器(Norwood、MA)差動ドライバIC(P/N SSM2142)を用いて差動モードに変換される。(走査速度とレーン数によって確定される)積分時間の最後に、データ獲得システムが差動信号を読み取り、データをバッファに保存する。データの保存後、データ獲得システムはスキャナを移動させて、次の選択されたレーンにレーザー光をシフトすると同時に、積分回路をリセットする。
【0124】
各単要素PMTモジュールは自身の積分回路を有する。8色検出システムの場合、8つのPMTモジュールと8つの積分回路とがある。対応する数のPMTモジュールと積分回路とを用いて、追加の色を加えることもできる。
【0125】
各PMT要素(H77260−20,Hamamatsu,Japan)が単独のPMT管(H7732−10,Hamamatsu,Japan)と同様の、またはより迅速な信号反応を有し、読出しが並列に行われるため、この検知器は非常に迅速な動作が可能である。分光器と連結されて、この分光器および多陽極検知器システムは、0.1ms未満の読出時間で可視スペクトル(450nm〜650nm)全体にわたり全スペクトル走査を提供することができる。
【0126】
速いリフレッシュ速度を提供できることで、この分光器/検知器システムを、1回の作業内で順次複数のレーンの検出を実行する走査モードに適用することができる。PMTベースの検知器の使用は、低ノイズ、高感度、広い動作範囲、高速反応を提供する。凹面ホログラフィック回折格子(Horiba Jobin−Yvon)および多陽極PMT検知器を備える140mm分光器はH7260−20検知器(日本国浜松)である。この用途に、その他の分光器構成と多陽極PMT検知器を使用することもできる。
【0127】
電気泳動図からのヌクレオチド塩基の判定は、データを訂正し、フィルタリングし、分析する信号処理アルゴリズムを用いて実行する。このプロセスは、呼出可能信号を突き止めることと、信号ベースラインを訂正することと、ノイズをろ波することと、色クロストークを除去することと、信号ピークを特定することと、関連塩基を判定することとから成る。呼出可能信号を突き止めることは、信号の最初と最後から余分なデータを除去することで実行し、閾値を採用することで達成する。次に、信号がすべての検出された色に対して共通のベースラインを有するように、信号から背景を除去する。最後に、低域通過フィルターを適用して、信号から高周波ノイズを除去する。
【0128】
検出した色の曖昧性を除去するため、加重マトリックスを算出し、ヌクレオチド色素スペクトルの色空間を増幅する信号に適用した。この色分離マトリックスの計算は、Li et al.Electrophoresis 1999、20、1433〜1442の方法を用いて達成した。この適応において、「m×n」色分離マトリックスは、検定で利用する「m」個の色素と「n」個の検知器素子とを相互に関連付けることで計算する。検知器空間(PMT要素)から色素空間への信号の変換は、以下のようなマトリックス操作によって実行する。D=CSM×PMT、ただし、Dはm個の色素のそれぞれの色素空間における信号、CSMは色分離マトリックス、PMTは検知器のn個の素子のそれぞれからの信号を有するマトリックスである。
【0129】
次に、色分離信号のピークを、ゼロ交差フィルターと周波数分析の組み合わせを用いて特定する。最後に、フラグメントのサイジング用途の場合、訂正されたトレースは対立遺伝子を呼び出されて、各フラグメントを特定し、サイジングスタンダードに基づくフラグメントサイズを指定する。DNA配列決定用途の場合、訂正されたトレースは塩基を呼び出されて、4つのヌクレオチドのうちの1つとトレース内の各ピークとを関連付ける。塩基呼出の詳細な説明は、Ewing et al.Genome Research,1998,8,175〜185、およびEwing et al.,Genome Research、1998、8、186〜194でなされており、その開示は引用により本文書に全文を組み込む。
【0130】
3.色素標識
オリゴヌクレオチドと変性オリゴヌクレオチドに付着する色素標識は、合成する、あるいは商業的に入手する(たとえばOperon Biotechnologies、Huntsville、Alabama)ことができる。蛍光励起用途に多数の色素(50超)が入手可能である。これらの色素は、フルオレセイン、ローダミンAlexaFluor、Biodipy、Coumarin、およびCyanine色素族からの色素を含む。さらに、失活剤も、背景蛍光を最小限にするため、オリゴ配列の標識化に利用可能である。410nm(カスケードブルー)〜775nm(Alexa Fluor 750)の発光最大値を有する色素が入手可能であり、使用することができる。500nm〜700nmの色素は、可視スペクトル内にあり、従来の光電子増倍管を用いて検出できるという利点を有する。入手可能な色素の範囲が広いことで、検出範囲全体に広がる発光波長を有する色素セットを選択できる。多数の色素を区別できる検出システムは、フローサイトメトリー用途として報告されている(Perfetto et al.,Nat.Rev.Immunol.2004.4、648〜55およびRobinson et al.,Proc of SPIE 2005,5692,359〜365を参照)。
【0131】
蛍光色素は、ピーク発光波長から青にシフトした通常20〜50nmのピーク励起波長を有する。その結果、広範囲の発光波長全体にわたる色素の使用は、発光波長範囲全体で効率的な色素の励起を達成する励起波長を伴う複数の励起源の使用を必要とする。もしくは、単独の発光波長を有する単独のレーザーが当該の色素全部を励起するために使用できるように、エネルギー転移色素を利用することができる。これは、色素標識にエネルギー転移成分を付属することによって達成される。通常、この成分は、光源(たとえばレーザ)の励起波長に匹敵する吸収波長を有する別の蛍光色素である。エミッタに近接してこの吸収体を配置することで、吸収されたエネルギーを吸収体からエミッタに転移させて、長波長色素のより効率的な励起を可能とする(Ju et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1995,92,4347〜51)。
色素標識化されたジデオキシヌクレオチドが、Perkin Elmer(Waltham,MA)から入手可能である。
【0132】
B.実施例
実施例5.核酸の6色分離および検出
以下の実施例は、6つの蛍光色素で標識された核酸フラグメントの分離および検出を示し、分光器/多要素励起/検出システムの色解像度機能を実証する。DNAフラグメントを、多重化PCR増幅反応において蛍光色素標識化プライマーを適用することによって、6−FAM、VIC、NED、PET色素で標識化した。この反応では、1ngのヒトゲノムDNA(9947A)を、メーカーの推奨した条件に従い(AmpFISTR Identifiler,Applied Biosystems)、25μLの反応で増幅した。2.7μLのPCR産物を除去し、0.3μLのGS500−LIZサイジングスタンダード(Applied Biosystems)および0.3μLのHD400−ROXサイジングスタンダードと混合した。HiDi(Applied Biosystems)を計13μLに追加し、そのサンプルを分離バイオチップのサンプルウェルに挿入して、電気泳動に付した。
【0133】
Genebenchを使用するDNAの電気泳動分離は、一連の4つの動作:予備電気泳動、装填、注入、および分離から成る。これらの動作は、50℃の一定温度に加熱されるマイクロ流体バイオチップ上で実行される。バイオチップは、分離および検出並列のための16チャネルシステムを含み、それぞれがインジェクタチャネルおよび分離チャネルから成る。分析用DNAを、分離チャネルに沿ってふるい分けマトリックスを通じてDNAの電気泳動移動により分離する。バイオチップの分離長は160〜180mmである。
【0134】
第1のステップは、6分間、チャネル長に沿って160V/cmの電界を印加することによって達成される予備電気泳動である。分離バッファ(TTElX)を、陽極、陰極、および廃棄ウェルにピペットで移す。分析用サンプルをサンプルウェルにピペットで移し、18秒間、サンプルウェルから廃棄ウェルに175Vを印加し、その後、サンプルと廃棄ウェル全体に175V、72秒間陰極に390Vを印加して、サンプルを分離チャネルに装填する。サンプルの注入は、50V/cmおよび40V/cmをサンプルと廃棄ウェルにそれぞれ印加する間、分離チャネル長に沿って160V/cmの電界を印加することによって達成する。光学システムがDNAの分離バンドを検出する30分間、注入電圧パラメーターで分離を継続する。データ収集速度は5Hzであり、PMTゲインは〜800Vに設定される。
【0135】
増幅DNAを含む16のサンプルを、同時分離および検出のために装填した。PMTの32要素のそれぞれからの信号を時間の関数として収集し、電気泳動図を生成した。結果として生じる電気泳動図(図17)は、16レーンのうちの1つに関する励起/検出ウィンドウでのDNAフラグメントの存在に対応するピークを示す。さらに、各ピークに関する32要素PMTの各要素の相対信号強度は、DNAフラグメントと対応づけられる色素(2つ以上の色素が検出ウィンドウに存在する場合は複数の色素)のスペクトル内容に対応する。図18は、検出された色素の発光スペクトルと基板の背景スペクトルとを示す。基板の背景スペクトルは、各ピークからのスペクトルから差し引く。これを実行すると、結果として、6つの異なる色素スペクトルが識別される。6色素のスペクトルを同じ図面に重畳する。このデータと実際に公開された色素スペクトルとの比較が示す通り、色素の類縁は公開データに類似する。本実施例が実証するように、該システムは、反応溶液内の6色素を検出および区別することができる。このスペクトル出力は、色訂正マトリックスを生成し、検知器空間からの信号を色素空間表示に変換するために使用する(図19および20)。
【0136】
実施例6.核酸の8色素分離および検出
本実施例では、蛍光色素で標識化核酸の8色素分離および検出を示す。8遺伝子座のフォワードプライマーおよびリバースプライマー対配列は、公開配列から選択する(Butler et al.,J Forensic Sci 2003、48、1054〜64)。
【0137】
選択された遺伝子座はCSFlPO、FGA、THOl、TPOX、vWA、D3S1358、D5S818、およびD7S820であるが、文書に記載される遺伝子座ひいてはプライマー対のいずれも本実施例で使用することができる。プライマー対の各フォワードプライマーは、別々の蛍光色素で標識化する(Operon Biotechnologies,Huntsville、Alabama)。プライマーへの付着のために選択した色素は、Alexa Fluor色素488、430、555、568、594、633、647、およびTamraである。多数の他の色素も利用可能であり、標識として使用することもできる。各遺伝子座は、各自の色素で標識化されるフラグメントを有する反応溶液を得るため、PCR反応プロトコル(Butler、2003、上記文献)後に個々に増幅される。PCR反応用のテンプレートは、1ngのヒトゲノムDNAである(type 9947A from Promega,Madison WI)。
【0138】
各PCR反応を、PCR浄化カラムを通じて浄化することによって精製し、そこでプライマー(標識化プライマーおよび色素標識化プライマー)および酵素を除去し、PCRバッファをDI溶離液に置き換えた。浄化の結果として生じる産物は、DI水内の標識化DNAフラグメントの溶液である。色素標識化産物の浄化は、MinEluteTMカラムを用いてSmithのプロトコルに従う(Qiagen、Valencia、CA)。計8つの反応を実行する。8つの浄化PCR反応は、ある割合で全部混合され、等価の信号強度のピークを生成し、8つの異なる色素で標識化されたフラグメントを含む混合物を生成する。もしくは、8遺伝子座のプライマーを全部混合して、多重増幅用のマスタプライマー混合物を形成することもできる。
【0139】
この溶液は、実施例1に記載の機器とプロトコルで分離および検出する。スペクトル写真の格子は、8色素の発光が検知器素子の32画素全体に収まるように調節される。分析のために装填されるサンプルの量は、検出された信号が検出システムの動作範囲に収まるように調節すべきである。
【0140】
実施例7.分光器/多要素PMTシステム
以下の実施例は、具体的にはDNAテンプレート、この反応では0.1pmolのDNAテンプレートM13の配列を特定する図16の分光器/多要素PMTシステムでの標識化DNAフラグメントの分離/検出を示し、推奨される反応条件に従いM13配列決定プライマーをGE Amersham BigDyeTMシーケンシングキットで増幅した。反応混合物をエタノール沈澱により浄化し、13μLのDI水内に再懸濁させた。サンプルは、実施例5に記載の電気泳動分離条件に従い分離した。サンプル装填条件を変更し、サンプルウェルを渡って廃棄ウェルまで105秒間175Vを印加することによって実行した。図21はDNA配列の電気泳動図であり、着色トレースは使用する4色素それぞれのスペクトル最大値に対応する検知器素子を表す。得られた配列は、519塩基がPhred品質スコア>20で、435塩基がQV30の塩基であった(図22)。
【0141】
実施例8.2つの配列決定反応の産物の同時分離および検出
本実施例では、2つのDNAテンプレートのサイクル配列決定からのフラグメントの分離および検出を、単独の分離チャネルで実行する。サイクル配列決定反応は、以下のように、色素標識化ターミネーター反応または色素標識化プライマー反応のいずれかにより準備することができる。
【0142】
色素標識化ターミネーター反応:
当該テンプレート配列に適した配列決定プライマーと、サイクル配列決定バッファ、ポリメラーゼ、オリゴヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチド、および標識化ジデオキシヌクレオチドを含むDNA配列決定を実行する試薬とから成る各テンプレートフラグメントのサイクル配列決定反応を準備する。8つの異なる色素を標識化に使用する。第1のサイクル配列決定反応では、4つの色素標識化ジオデキシヌクレオチドの1セットを使用する。第2のサイクル配列決定反応では、(第1のサイクル配列決定反応で使用される発光波長と異なる発光波長の)4つの色素標識化ジデオキシヌクレオチドの別セットを使用する。各サイクル配列決定反応を、各反応を複数回熱サイクルするプロトコルに従い別個に実行する。各熱サイクルは、Sangerのプロトコルに応じた温度および時間での変性、アニール、および伸張ステップを含む(Sanger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1977,74,5463〜7を参照)。2つの反応からのサイクル配列決定産物を組み合わせて、2つのDNAテンプレートのそれぞれから計8つの独自の色素で標識化DNAフラグメントから成るサンプルを形成する。
【0143】
色素標識化プライマー反応:
あるいは、分離および検出用のサンプルを、プライマー 標識化サイクル配列決定を用いて作製することができる。DNAテンプレート毎に4つのサイクル配列決定反応を実行する。各反応は、標識化配列決定プライマーと、サイクル配列決定バッファ、ポリメラーゼ、オリゴヌクレオチドを含むDNA配列決定を実行する試薬とから成るサイクル配列決定反応である。さらに、各反応は、ジデオキシヌクレオチド(ddATP、ddTTP、ddCTP、またはddGTP)のうち1つと1つの標識化プライマーとを含む。プライマーと関連付けられる各色素は、発光波長が一意であり、サイクル配列決定溶液(ddATP、ddTTP、ddCTP、またはddGTP)中のジデオキシヌクレオチドと相互に関連付けられる。各サイクル配列決定反応は、各反応を複数回熱サイクルするプロトコルに従い別個に実行する。各熱サイクルは、Sangerのプロトコルに応じた温度および時間での変性、アニール、および伸張ステップを含む(Sanger,1977、上記文献を参照)。第2のDNAテンプレートのサイクル配列決定の場合、(第1のサイクル配列決定反応で使用される4色素の発光波長とは異なる発光波長の)4色素の別のセットを適用する。8つすべての反応の産物(それぞれが異なる色素)を一緒に混合して、2つのDNAテンプレートそれぞれからのDNAフラグメントから成るサンプルを形成する。
【0144】
分離および検出用サンプル:
各配列決定反応をエタノール沈澱によって浄化する。サンプルの分離および検出は実施例8のプロトコルに従う。分離および検出の結果、2つのテンプレートDNAフラグメントのそれぞれに対応する2つの異なるDNA配列が生成される。
【0145】
本実施例の方法は、4の倍数の色素を使用して、単独の分離チャネル内のDNA配列の複数の検出を可能とするように変更することができる(たとえば、3配列の同時検出のために12色素、4配列の同時検出のために16色素、5配列の同時検出のために20色素など)。最後に、標識化されたフラグメントの分離は、電気泳動に限定する必要はない。
【0146】
実施例9
単独チャネルにおける500以上の遺伝子座の分離および検出
DNAおよびRNA配列決定やフラグメントサイズ判定など、臨床診断に適用可能な核酸分析の用途がいくつかある。本実施例では、10色の同時検出の使用により、最大500の遺伝子座の照合を可能とする。たとえば、病原菌を特定したり、あるいは1個人のゲノム内の多数の遺伝子座を特徴づけたりするために、多数のフラグメントのサイズ分析を利用することができる。出生前または着床前遺伝子診断の場合、現在、核型分析および蛍光組織原位置ハイブリダイゼーション(FISH)によって異数性を診断する。FISH研究では、1細胞につき2つの信号の存在は、所与の遺伝子座の2つのコピーが細胞内に存在することを示し、1つの信号は一染色体または部分的一染色体を示し、3つの信号は三染色体または部分的三染色体を示す。FISHは通常、細胞が正常な染色体対を含むか否かを査定するのに約10のプローブを利用する。このアプローチではゲノム全体を詳細に視ることはできないが、FISHによって正常とみなされる細胞に、FISHでは検出されない重大な異常を見出す可能性がある。
【0147】
本発明の教示は、全染色体全体に広く分散される約500の染色体座を査定することができる多色分離および検出を利用して、染色体構造のより詳細な分析を可能とする。本実施例では、約500の遺伝子座に関するプライマー対配列が公開配列から選択され、各遺伝子座は、単相体ゲノムにつき1つのコピーとして存在する。さらに、50のプライマー対10セットを、各セットがDNAフラグメントの対応セットを規定し、いずれのフラグメントも同一のサイズを持たないように選択する。セット毎に、プライマー対のフォワードプライマーは1つの蛍光色素で標識化され、2つのセットは同じ色素を共有しない。プライマーへの付着のために選択される色素は、Alexa Fluor色素488、430、555、568、594、633、647、680、700、およびTamraである。他の多数の色素も利用可能であり、標識として使用することができる。遺伝子座は、「METHODS FOR RAPID MULTIPLEXED AMPLIFICATION OF TARGET NUCLEIC ACIDS(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」に記載の1つまたは複数の並列PCR反応で増幅させることができる、上記を参照。本文書に記載の方法を用いて、増幅されたプライマーを分離し検出する。単独の分離チャネルで、500フラグメントすべてを、10の色素のそれぞれに対して50ずつサイズにより正確に識別することができる。
【0148】
遺伝子座、色素、および分離チャネルの数は、所望の適用に基づき変化させることができる。所望すれば、より少ない数の色素標識を利用する、あるいは1標識につきより少ないDNAフラグメントを生成することによって、より少ない数のフラグメントを検出することができる。このようにして、所望に応じて、500未満、400未満、300未満、200未満、100未満、75未満、50未満、40未満、30未満、または20未満のフラグメントを検出することができる。1レーンにつき検出可能な最大数の遺伝子座は、検出可能な個々の色素(上述したように、数十が利用可能)の数を掛けた、分離システムの読出長と分解能(たとえば、20〜1500塩基対のDNAフラグメントの単一塩基対の分解能は、結果として何百ものフラグメントとなる)に基づく。したがって、何千もの遺伝子座を単独の分離チャネルで特定することができ、追加の色素が開発されるごとにその数は増大する。
【技術分野】
【0001】
間連出願の相互参照文献
本出願は、35U.S.C第119号(e)項に基づき、2007年4月4日出願の米国特許仮出願第60/921,802号、2007年8月13日出願の米国特許仮出願第60/964,502号、2008年2月12日出願の米国特許仮出願第61/028,073号の出願日付の優先権を請求するものであり、これらはいずれもその全体を参照して本出願に援用される。また、本出願は、2つの米国特許出願;一つは「“Methods for Rapid Multiplexed Amplification of Target Nucleic Acids”(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」 (Attorney Docket No. 08-318-US)と題され;もうひとつは「“Plastic Microfluidic separation and detection platforms”(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」 (Attorney Docket No. 07-865-US)と題される同日出願の2つの米国出願もそれらの全体を参照して援用する。
【0002】
本発明は、マイクロ流体の分野における核酸分析に関する。
【背景技術】
【0003】
所与のヒト、動物、植物、または病原体ゲノムのサブセットの迅速同定(核酸の配列決定またはフラグメントサイズ決定による)として定義される、完全に集積化された(すなわち、サンプル入力から結果の出力まで)標的核酸分析のための機器および技術の開発は未解決である。標的核酸配列は最終ユーザーに実時間の臨床、法医学、または他の判断を可能にする。例えば、多くの一般的なヒトの病気は、完全なヒトのゲノムを形成するために必要なものよりも少ない1000個未満のDNA配列塩基対に基づいて診断することができる。同様に、短鎖縦列反復配列分析(short tandem repeat analysis)によって形成される20個未満の特定のDNAフラグメントサイズの正確な測定は所与の個体を識別するのに十分である。用途に応じて、病院の研究室、医者の事務所、ベッドの脇、または法医学または環境用途の場合の現場を含んで、標的核酸分析は様々な設定で実施することができる。
【0004】
DNA配列決定およびフラグメントサイズ決定システムにはいくつかの未解決の改善要求がある。第1に、使用が容易であり高度に訓練された作業者を必要としないDNA配列決定およびフラグメントサイズ決定機器が必要とされている。第2に、すべての手動プロセスを省くシステムの要求がある。結果として、最小の作業者訓練で済み、例えば、危険物着衣を着た初動対応者が遭遇するような困難な環境を強いられた個人もシステムを容易に操作することができる。
【0005】
第3に、完全で正確な信頼性の高いデータの必要性を断念しない極めて迅速な分析が必要とされる。ヒトの識別用途にとって、結果までの適切な時間は、従来の技術を用いる数日から数週間よりも十分短い45分以下である。適切な処置法を決定するための感染病原体配列決定などの臨床用途にとって、患者が救急室に到着した後、抗菌性および抗ウィルス性薬物療法での処置を短時間に開始することのできる90分以下が回答までの妥当な時間である。用途にかかわらず、実時間での実行可能なデータを形成する必要がある。また、回答までの短い時間は同時にサンプル処理量を増加させる。
【0006】
第4に、小型化が必要とされる。多くのDNA分析システムは研究所全体および関連支援を必要とする。例えば、高い処理量のゲノム配列FLX(Roche Diagnosis Corp, Indianapolis,IN)DNA配列決定システムは設置にベンチ台を必要とするだけであるが、必要なライブラリー構築を行うために大きな研究室を必要とする。小型化は研究所および処置場所での使用ならびに現場操作の両方にとって重要である。また、サンプルあたりのコスト低減にとっても重要である。
【0007】
第5に、耐久性が必要とされる。多くの用途、特に法医学、軍事、および国家防衛用途において、DNA分析機器は現場で操作可能でなければならない。したがって、機器は兵士の肩に背負われ、または警察車両で運ばれ、またはヘリコプターから戦闘場所に投下されて運搬できなければならない。同様に、機器は温度、湿度、および空気中の粒子(例えば砂)を含む過酷な環境下に耐えて機能しなければならない。
【0008】
第6に、複数のサンプル種を受け入れ、並列して高度に複雑な分析を行うことのできるシステムが必要とされる。多くの用途にとって、単一サンプル種の単一反応からのDNA分析能力は有意義なDNA分析を行うためには許容できない。
【0009】
複数の研究室の操作をバイオチップ上に濃縮することを探究しているマイクロ流体(マイクロトータル分析システム(μTAS)またはチップ上ラボ技術とも言われる。Manz et al.,Sens.Actuators B 1990,1,244−248参照)の開発者は、これらの必要性のいくつかを認識したが、今日まで、これらの必要性に対処するためのマイクロ流体核酸分析を可能にする、必要かつ望ましい全ての生物化学および物理的プロセスを行う集積化されたバイオチップおよび機器を設計することはできなかった。その結果、今日、着目された核酸分析は社会的に広く使用されるに至っていない。
【0010】
マイクロ流体システムの開発は、マイクロスケールの分離、反応、マイクロバルブおよびポンプなどのマイクロ加工されたコンポーネントとさまざまな検出スキームを集積化して完全な機能デバイスにすることを含む(例えば、Pal et al.,Lab Chip 2005,5,1024−1032を参照)。1990年初めにManzら(上記)がチップ上のキャピラリー電気泳動を発表して以来、人々はそれの改善を探究した。いくつかのグループはDNAプロセシング機能をバイオチップの分離および検出と集積化することを発表した。ガラス−PDMS(ポリジメチルシロキサン)のハイブリッド構造上に集積されたデバイスが報告された(Blazej et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2006,103,7240−5、Easley et al.,Proc.Natl,Acad.Sci USA 2006,103,19272−7、およびLiu et al.,Anal.Chem.2007,79,1881−9)。Liuは短鎖縦列反復(STR)サイズ決定によるヒトの識別のために複数のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、分離および四染料検出を結合した。BlazejはpUC18単位複製配列のDNA配列のためにSanger配列反応、Sanger反応清浄化、電気泳動分離および四染料検出を結合した。Easleyは血液中の細菌性感染の存在を識別するためにDNAの固相抽出、PCR、電気泳動分離および単一色検出を結合した。Burns(Pal,2005,Id.)によって、PCR、電気泳動分離および単一色検出を結合した集積化シリコン−ガラスデバイスが発表された。細菌DNAの存在を識別するために、PCR用のガラス−PDMS部分と気泳動分離用のポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)部分、および単一色検出を結合するハイブリッドデバイスがHuang(Huang et al.,Electrophoresis 2006,27,3297−305)によって報告された。
【0011】
Kohらは細菌DNAの存在を識別するために、PCRをバイオチップ電気泳動分離および単一色検出に結合したプラスチックデバイスを報告する(Koh et al.,Anal.Chem.2003,75,4591−8)。DNA抽出、PCR増幅、バイオチップ電気泳動分離および単一色検出を結合するシリコンベースのデバイスがAsogawaによって報告された(Asogawa M,Development of portable and rapid human DNA analysis System Aiming on−site Screening,18th International Symposium on Human Identification,Poster,Oct,1−4,2007,Hollywood,CA,USA)。米国特許第7,332,126号(Tooke et al.)は核酸の単離とサイクル配列決定に必要なマイクロ流体操作を行うために遠心力を用いることを述べている。しかし、この手法は少量のサンプル容量(1〜数μL程度)に基づくものである。結果として、流体サンプルは静止状態でデバイスに加えなければならないので、すなわち、遠心分離の前に(高度に並列のデバイスでは100mLまで可能)、ディスクは運転に必要な全ての流体を収容することが可能でなければならないので、このデバイスは、核酸の単離と分析のために大量のサンプルを、特に高度な並列様式で、プロセシングするには有用ではない。第2に、デバイスは細菌クローン(例えばプラスミドDNA)のサンプル調製およびサイクル配列決定に制限される。
【0012】
DNAプロセシングをバイオチップ電気泳動分離に集積化することを試みるこれらのデバイスにはいくつかの欠点がある。第1に、検出はアッセイ毎の情報内容(多くは単一色検出を用いるが、いくつかは4色までの検出システムを有する)または処理量(単一サンプルまたは2つのサンプル能力)のいずれかによって制限される。第2に、これらのデバイスはサンプリングから回答までの完全な集積化の代表ではなく、例えば、Blazejのデバイスはサイクル配列決定の前にテンプレートDNAの外部での増幅を必要とし、他はある種の予備処理の必要なサンプルを用いる(例えば、EasleyおよびTookeは添加の前にサンプルの溶解が必要である)。第3に、これらのデバイスのために行った処理選択のいくつかは回答までの時間に影響を与える。例えば、Blazejのハイブリダイゼーションに基づく方法はサイクル配列決定の産物の清浄化に20分以上を要する。第4に、これらのデバイスの多くは部分的または全体的にガラスまたはシリコンで作られる。これらの基板の使用および対応する製造技術は本質的にコスト高になり(Gardeniers et al.,Lab−on−a−Chip (Oosterbroeck RE,van den Berg A,Eds)Elsevier:London,pp37−64(2003))、それらのデバイスを再使用しなければならない用途に制限を与え、これは多くの用途(例えばヒトの識別)においてサンプルの汚染の危険を招く。最終的に、発表された技術は2つの用途、STR分析および配列決定によるヒトの識別には不適である。例えば、EasleyとPalデバイスの両方とも解像度が低くなり、単一ベースよりも悪い。フラグメントサイズ決定用途(例えば、短鎖縦列反復プロファイルの分析によるヒトの識別)および配列の両方とも単一ベースの解像度を必要とする。
【0013】
マイクロ流体の集積化に関する先行技術の制約に加えて、蛍光検出に関する問題も従来の研究所の仕事を超える核酸分析の広い用途を制限する。最も広く用いられる市販の配列決定キット(BigDye(登録商標)v3.1(Applied Biosystems)およびDYEnamic(登録商標)ET(GE Healthcare Biosciences Corp,Piscataway,NJ)は、20年前の四色検出方法に基づく(例えば、米国特許第4,855,225、第5,332,666号、第5,800,996号、第5,847,162号、第5,847,162号を参照)。この方法は染料で標識されたヌクレオチドの放射信号の4つの異なる色への解像に基づき、それは4つの塩基の各々を表す。これらの四色染料システムは、蛍光染料の不十分な励起、スペクトルの顕著な重なり合い、および不十分な放射信号の収集を含む、いくつかの欠点を有する。四色染料システムはそれらが配列決定された産物の所与の電気泳動(または他の)分離から得ることのできる情報量を制限するので、特に問題である。
【0014】
フラグメントサイズおよび色(染料の波長)の両方によるDNAフラグメントの分離と検出に基づく電気泳動において、高い情報量のアッセイを達成することのできるシステムが必要とされる。電気泳動によって識別することのできるDNAフラグメントの最大数は分離の読み取り長さとデバイスの解像度によって決定される。検出することのできる色の最大数は部分的に蛍光染料の入手可能性と検出システムの波長識別力によって決定される。現在のバイオチップ検出システムは典型的に単一色に制限されるが、4色までの検出が報告されている。
【0015】
ヒトの識別用のSTR分析は、色多重化に基づくDNAフラグメントサイズ決定の例であり、16座までの同時分析を可能にする(AmpFISTR Identifiler kit:Applied Biosystems,Foster City,CA)およびPowerPlex16 kit(Promega Corporation,Madison,WI)。単一の分離チャネルは、4つまたは5つの蛍光染料を用いて各染色体座の多くの対立する変形サイズを区別することができる。いくつかのフラグメントサイズ決定の用途は、16個以上のフラグメントが分離され単一レーンで検出されることが必要であろう。例えば、指紋による病原体の識別(すなわち、多数の特性DNAフラグメントの分離と検出)およびヒトのゲノム全体の検査による異数体の診断は、それぞれ数ダースまたは数百の染色体座を観察することによって得ることができる。
【0016】
単一分離チャネルで検出することのできる染色体座の数を増加させる1つの手法は、追加の染色体座のフラグメントサイズを部分的に増加させることによって、発生したフラグメントサイズの範囲を広くすることである。しかし、フラグメントのより大きな増幅は抑制剤およびDNA変性に対してより敏感であり、短いフラグメントに対して長いフラグメントの生成が少なくなるので、追加の染色体座のためにより長いフラグメントを使用するのは理想的ではない。さらに、より長いフラグメントの生成は伸張時間の増加が必要であり、したがって、総アッセイ時間の増加が必要になる。染料の色数を増加させることによって所与の分離チャネル中で同時に検出することのできる染色体座の数を増加させる必要がある。
【0017】
単一分離チャネル中で分析することのできるDNA配列の数を増加させることによって、Sanger配列分離の能力を増加させること(したがって、コスト、労力、および処理空間を低減すること)が必要である。さらに、いくつかの用途において、複数のDNAフラグメントは「混合配列」データを読み取ることが難しく配列され、その混合配列を正しく解釈することのできる手法を開発する必要がある。
【0018】
Sanger分離チャネルの能力を増加させ混合された配列を解釈する能力を開発する1つの手法は配列決定反応に用いられる染料の色数を増加させることである。DNA配列決定とフラグメントサイズ決定の両方において、異なる染料で標識された複数のフラグメントを同時に検出することができる。一般に、隣接染料のピーク発光波長は染料のピーク幅に比べて十分大きくなければならない。したがって、各分離チャネルの処理量は、例えば、2つの独立配列決定反応において2セットの四染料を用い、産物を結合させ、それらを単一チャネル中で分離することによって2倍にすることができる。この方法は全部で8つの染料色の使用が必要であり、第1の配列反応はジデオキシヌクレオチド・ターミネーターを標識するために加えられた四染料のセットを用い、第2反応はターミネーターを標識するために加えられたもうひとつの四染料のセットを用い、各セットの染料色は、2つの配列の解釈が重なり合わないように独立である。この同じ手法を用いて、12染料のセットを用いて単一チャネル中の3つのDNAフラグメントの配列の同時分析が可能であり、16染料のセットは4つの配列の分析を可能にし、このようにしてSanger分離の情報能力を劇的に増加させることができる。
【0019】
この用途の新しい機器およびバイオチップは上述のものを含んで多くの必要性を満足する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は核酸分析を行う完全に集積化されたマイクロ流体システムを提供する。これらのプロセスはサンプル収集、DNA抽出、および精製、増幅(高次に多重化できる)、配列決定、およびDNA産物の分離と検出を含む。
【0021】
本発明の分離と検出のモジュールは耐久性があり、単一ベースの解像度よりも良好な能力とすることができる。それらは6つ以上の色の検出が可能であり、したがって、配列およびフラグメントサイズ決定用途から高い情報量を発生するのに有用である。
【0022】
バイオチップ上での高度の多重化迅速PCRは本出願と同時に出願した「METHODS FOR RAPID MULTIPLEXED AMPLIFICATION OF TARGET NUCLEIC ACIDS(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」と題される米国特許出願、弁理士事件番号08−318−USの主題であり、その全体を参照して本出願に援用されている。さらに、その全体を参照して本出願に援用している「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」と題される米国特許出願、弁理士事件番号第07−865−USに記載の通り、PCR産物はバイオチップ内で分離し検出することができる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
したがって、第1態様において、本発明は、光学検出器であって、基板上の1または複数の検出位置を照射するために配置された1つ以上の光源;基板上の検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1の光学エレメント;および第1光学エレメントからの光を受容するために配置された光検出器であって、前記光検出器が、第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、かつ、分離された光の一部を検出エレメントに提供するように配置された波長分散エレメントを含む光検出器を備え、ここに、検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が、1つ以上の生体分子を標識した少なくとも6つの染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク発光波長を有する、光学検出器を提供する。
【0024】
第2態様において、本発明は、生体分子の分離と検出のためのシステムであって、基板上の1つまたは複数のチャネル中の複数の生体分子を同時に分離するためのコンポーネントであって、ここに、各チャネルが検出位置を含むコンポーネント;基板上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、前記光検出器は、前記光検出器が第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、分離された光の一部を検出エレメントに提供するように配置された波長分散エレメントを備え、ここに、前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上の生体分子を標識する少なくとも6染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク発光波長を有する光検出器を備える、システムを提供する。
【0025】
第3態様において、本発明は、複数の生体分子を分離し検出する方法であって、基板上の1つまたは複数のマイクロ流体チャネル中に1つまたは複数の分析サンプルを提供し、各マイクロ流体チャネルが検出位置を含み、ここに、各分析サンプルが独立に複数の生体分子を含み、各々が独立に少なくとも6染料の1つで標識され、各染料が独自のピーク波長を有すること;各マイクロ流体チャネル中の複数の標識された生体分子を同時に分離すること;および各マイクロ流体チャネル中の複数の分離された標的分析物を、(i)各検出位置を光源で照射し;(ii)核検出位置から放射された光を収集し;(iii)収集された光を光検出器に導き;(iv)収集された光を光波長によって分離し;ついで、(v)1つ以上の生体分子を標識した少なくとも6染料からの蛍光を同時に検出し、各染料が独自のピーク波長を有することによって、検出すること、を含む方法を提供する。
【0026】
第4態様において、本発明は、集積化されたバイオチップシステムであって、(a)1つまたは複数のマイクロ流体システムを含むバイオチップであって、各マイクロ流体システムが分離チャンバーにマイクロ流体的に連絡する第1反応チャンバーを含み、ここに、第1反応チャンバーが、(i)核酸抽出、(ii)核酸精製、(iii)予備核酸増幅清浄化、(iv)核酸増幅、(v)後核酸増幅清浄化、(vi)予備核酸配列決定清浄化、(vii)核酸配列、(viii)後核酸配列決定清浄化、(ix)逆転写、(x)予備逆転写清浄化、(xi)後逆転写清浄化、(xii)核酸ライゲーション、(xiii)核酸ハイブリダイゼーション、または(xiv)定量化に適合され、前記分離チャンバーが検出位置を含むバイオチップ;および(b)分離および検出システムであって、(i)前記分離チャンバー中の複数の標的分析物を同時に分離するための分離エレメント;(ii)前記バイオチップ上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;(iii)前記検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および(iv)前記第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、ここに、前記光検出器が、前記第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、前記分離された光の一部を少なくとも6つの検出エレメントに提供する波長分散エレメントを含み、ここに、前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上の生体分子を標識する少なくとも6染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク波長を有する光検出器、を備えるバイオチップシステムを提供する。
【0027】
第5態様において、本発明は、集積化されたバイオチップシステムであって、(a)1つまたは複数のマイクロ流体システムを含むバイオチップであって、各マイクロ流体システムが分離チャンバーにマイクロ流体的に連絡する第1反応チャンバーを含み、ここに、第1反応チャンバーが、(i)核酸抽出、(ii)核酸精製、(iii)予備核酸増幅清浄化、(iv)核酸増幅、(v)後核酸増幅清浄化、(vi)予備核酸配列決定清浄化、(vii)核酸配列、(viii)後核酸配列決定清浄化、(ix)逆転写、(x)予備逆転写清浄化、(xi)後逆転写清浄化、(xii)核酸ライゲーション、(xiii)核酸ハイブリダイゼーション、または(xiv)定量化に適合され、前記分離チャンバーが検出位置を含むバイオチップ;および(b)分離および検出システムであって、(i)前記分離チャンバー中のDNAを含む複数の生体分子を同時に分離するための分離エレメント;(ii)前記バイオチップ上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;(iii)前記検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および(iv)前記第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、ここに、前記光検出器が、前記第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、前記分離された光の一部を少なくとも6つの検出エレメントに提供する波長分散エレメントを含み、ここに、前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上のDNA配列を標識する少なくとも8染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク波長を有し、各染料が少なくとも2つの四染料含有サブセットのメンバーであって、前記サブセットが基板上の単一検出位置で少なくとも2つのDNA配列を識別可能であり、ここに、染料の数が4の倍数であり、検出されるDNA配列の数がその倍数に等しくて、異なる染料の各々が1つのサブセットだけに存在する、光検出器、を備えるバイオチップシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】4つの個別サンプル用の溶解とテンプレート増幅のための集積化されたバイオチップの一実施形態の概略図。
【図2】図1のバイオチップの第1層の一実施形態の概略図。
【図3】図1のバイオチップの第2層の一実施形態の概略図。
【図4】図1のバイオチップの第3層の一実施形態の概略図。
【図5】図1のバイオチップの第4層の一実施形態の概略図。
【図6】図1のバイオチップの組み立てと結合の一実施形態の概略図。
【図7】面内および貫通孔バルブの2バルブ式について、脱イオン水とサイクル配列決定試薬のためのバルブの逆水力学的直径の関数としての毛管バルブ動作圧力を示すグラフ。
【図8】PCRによるテンプレート増幅について、図1のバイオチップの流体ステップの一実施形態を示す概略図。
【図8a】サンプルとPCR試薬が本発明のバイオチップに装填された状態を示す概略図。
【図8b】チャネルからサンプルチャンバー(それらは流路を示すためにサンプルチャネルに沿う異なる位置で示される)へのサンプル送達を示す概略図。
【図8c】サンプルチャンバー中のサンプルを示す概略図。
【図8d】試薬チャンバーへのPCR試薬の送達を示す概略図。
【図8e】過剰PCR試薬の引き抜きを示す概略図。
【図8f−8g】第1の毛管バルブセットによる液体の初期混合ステップおよび保持を示す概略図。
【図8h−8j】PCRチャンバーに送達された混合液体を示す概略図、その時点で熱サイクルが開始される。
【図9】集積化されたバイオチップの流体ステップの一実施形態を示す概略図。
【図9a−9e】第1層中の計量チャンバーへのサイクル配列決定試薬の送達およびチャンバー近傍からの過剰の薬剤の除去を示す概略図。
【図9f−9g】Sanger反応チャンバーへのPCR産物の導入を示す概略図。
【図9h−9j】往復動によるSanger剤とPCR産物の混合を示す概略図。
【図9l】分析のために取り出すことのできるサイクルされた産物を示す概略図。
【図10】図1のバイオチップ中で製造された配列決定産物のための配列決定トレース(電気泳動図)を示す概略図。
【図11】サイクル配列決定産物の限外濾過の実施のための集積化されたバイオチップの一実施形態を示す概略図、チップ組み立て体は層3と4の間の限外濾過(UF)フィルター1116の追加を除いてバイオチップ1と同じである。
【図12】配列決定産物の精製中の図11のバイオチップの流体ステップを示す概略図。
【図12a−12b】UF入力チャンバーへのSanger産物の送達を示す概略図。
【図12c】濾過チャンバーへ送達された配列決定産物を示す概略図。
【図12d】配列決定産物のほとんど完全な濾過を示す概略図。
【図12e−12g】UF入力チャンバーへの洗浄の送達および続いて送達チャネルからの過剰の洗浄の除去を示す概略図。
【図12h】第1洗浄サイクルの開始を示す概略図、図12dの濾過および後続の洗浄サイクルが続く。
【図12i−12j】溶出液体(洗浄と同じ液体)がUF入力チャンバーに送達されていることを示す概略図。
【図12k−12m】出力口を閉じてUF入力チャンバーを加圧し、次いで圧力を開放して往復動させる単一サイクルを示す概略図。
【図12n】他のプロセスまたは取り出しの準備のできた精製された産物を示す概略図。
【図13】テンプレート増幅、サイクル配列決定、配列決定産物の清浄化、電気泳動による分離、およびレーザー誘起蛍光による検出を実施するための集積化されたバイオチップの一実施形態を示す概略図。
【図14】対電極による標識された核酸フラグメントの濃縮および分離チャネル中への注入を示す概略図。
【図15】励起および検出システムの一実施形態を示す概略図。
【図16】励起および検出システムの一実施形態を示す概略図。
【図17】6染料サンプルの分離および検出のために形成された電気泳動図、グラフの各トレースは32アノードPMTの32要素の各々からの信号を表し、各トレースはデータを見やすくするために互いに偏っている。
【図18】電気泳動図から抽出された6染料の各々の染料スペクトルを示すグラフ、背景の蛍光スペクトルも示される。
【図19】6−FAM、VIC、NED、PET、およびLIZ染料の染料放射スペクトルを示すグラフ。
【図20】5−FAM、JOE、NED、およびROX染料の染料放射スペクトルを示すグラフ。
【図21】4染料サンプルの分離および検出のために形成された電気泳動図、グラフの各トレースは32アノードPMTの32要素の各々からの信号を表し、各トレースはデータを見やすくするために互いに偏っている。
【図22】配列決定トレース。
【発明を実施するための形態】
【0029】
I.集積化および集積化されたシステム
A.集積化の全般的な説明
マイクロ流体の使用は単一バイオチップ上に1つ以上の機能を実行する造作の製作を可能にする。これらの2つ以上の機能をマイクロ流体的に接続してサンプルのシーケンシャルプロセスを可能にすることができる。この結合は集積化と呼ばれる。
【0030】
可能な機能またはコンポーネントプロセスには、任意の所与の用途を達成するために集積化しなければならない範囲があるが、任意の所与の用途のために全てのプロセスを実行しなくてもよい。結果として、選択された集積化方法は多くの異なる成分プロセスを異なる順序で有効に接続するために適切でなければならない。集積化することのできるプロセスは制限なしに以下を含む。
(1)サンプル挿入
(2)異物(例えば、塵、繊維などの大きな粒子)の除去
(3)細胞の分離(すなわち、ヒト細胞(したがってヒトのゲノムDNA)の除去など、分析すべき核酸を含むもの以外の細胞の除去)
(4)対象核酸を含む細胞の濃縮
(5)細胞の溶解と核酸の抽出
(6)溶解物からの核酸の精製、可能な限りより小さな容量へ核酸の濃縮
(7)予備増幅核酸清浄化
(8)後増幅清浄化
(9)予備配列決定清浄化
(10)配列決定
(11)後配列決定清浄化(例えば、組み込まれない染料標識されたターミネーターおよび電気泳動を妨害するイオンを除去するため)
(12)核酸分離
(13)核酸検出
(14)RNAの逆転写
(15)予備逆転写清浄化
(16)後逆転写清浄化
(17)核酸ライゲーション
(18)核酸定量化
(19)核酸ハイブリダイゼーション
(20)核酸増幅(例えば、PCR、ローリングサークル増幅(rolling circle amplification)、ストランド転移増幅、多重転移増幅)
【0031】
これらのプロセスのいくつかを結合できる多くの方法の1つはSTR分析によるヒトの識別のための集積化システムである。それらのシステムはDNA抽出、ヒトの特定のDNA定量化、PCR反応への所定量のDNAの添加、多重化されたPCR増幅、および分離と検出(選択肢として、反応成分またはプライマーを除去する清浄化ステップも組み込むことができる)を必要とする。全血、乾燥血液、頬内部表面、指紋、性的暴行、接触、または他の法医学関連サンプルのスワッビングなどの技術で1つ以上のサンプルを収集することができる(Sweet et al.,J.Forensic Sci.1997,42,320−2を参照)。溶解物(選択的に攪拌しながら)に曝すとスワッブから管にDNAが放出される。
【0032】
B.集積化コンポーネントおよびその使用の一般的な説明
1.サンプル収集および初期処理
多くの用途にとって、以下の個々のコンポーネントが有利にはバイオチップに集積化される。サンプル挿入、異物の除去、妨害核酸の除去、および対象細胞の濃縮。一般に、バイオチップの予備処理コンポーネントはサンプルを受容し、粒子と細胞を含む外部の核酸の初期除去を行い、対象細胞を小さな容量に濃縮する。1つの手法はスワッブを受容することができ(例えば、「Qチップ」に類似する)、溶解溶液で充填されて溶解と抽出ステップを行うサンプル管を用いることである。スワッブは血痕、指紋、水、空気フィルター、または臨床現場(例えば、口内スワッブ、創傷スワッブ、鼻汁スワッブ)を含んで、多くの細胞含有部位に接触させることができる。バイオチップの他のコンポーネントとこれらの管のインターフェースは異物除去のためのフィルターを含むことができる。他の手法は大容量の血液または1〜100mLのサンプルを保持する環境サンプル取得カートリッジを使用することである。血液の場合、白血球低減媒体は対象核酸を含有する細菌が通過する間にヒトの白血球細胞と妨害DNAを除去することができる。環境サンプルについては、大メッシュのフィルターを用いて塵や泥を除去することができるが、小メッシュのフィルター(例えば、<20μm、<10μm、<5μm、<2.5μm、<1μm、<0.5μm、<0.2μm、<0.1μm)を用いて細菌を捕獲し、それらを小容量に濃縮することができる。これらの予備処理コンポーネントは分離して使い捨て可能とすることができ、または製造時に集積化されたバイオチップに取り付けることができる。替わりに、バイオチップは示差溶解を行って種類によって細胞を分離することができる(例えば、膣上皮細胞からの精液または細菌からの赤血球細胞)。
【0033】
2.溶解および抽出
さまざまな溶解および抽出の方法を用いることができる。例えば、典型的な手順は、細胞壁を破壊して核酸を放出する少量のプロテイナーゼ−Kなどの分解酵素とサンプルを混合した後に熱を加えることを含む。他の有用な方法は音波処理および超音波処理であり、いずれもまたは両方ともしばしばビーズを存在下で行われる。
例えば、溶解および抽出は106個以下の細胞を含むサンプルで行うことができる。本発明のバイオチップおよび方法には、用途に応じてより少数の出発細胞を用いることができ、105未満、104未満、103未満、102未満、10未満、および多重複写配列が用いられる場合には1未満である。
【0034】
3.核酸の精製
核酸生成の1つの形は入力および出力チャネルの間に精製媒体を挿入することによって達成することができる。この精製媒体はシリカファイバー系とすることができ、カオトロピック塩薬試薬を用いて生物サンプルを溶解し、DNA(およびRNA)を露出させ、DNA(およびRNA)を精製媒体に結合させることができる。次いで、溶解物は入力チャネルを経由して精製媒体中を輸送して、核酸に結合させる。結合した核酸はエタノール系緩衝剤で洗って汚染物を除去する。これは入力チャネルを経由して洗浄剤を精製膜に通すことによって達成することができる。次いで、結合した核酸は適切な低塩緩衝剤(例えば、Boomの米国特許5,234,809号)を流すことによって膜から溶出される。この方法の変形は異なる構成の固体相の使用を含む。例えば、シリカゲルを用いて核酸を結合することができる。常磁性シリカビーズを使用することができ、その磁気的特性を用いて結合、洗浄、および溶出ステップの間、それらをチャネルまたはチャンバーの壁に対して固定する。また、非磁化シリカビーズも、密な「カラム」に充填しフリットで保持する(典型的にデバイスのプラスチック中に作られるが、それらは組み立て中に挿入することもできる)か、またはその運転のある相の間「自由」な状態で用いることができる。自由ビーズは核酸と混合することができ、次いで、デバイス中のフリットまたは堰に向かって流動させて、それらを捕捉し、それらが下流のプロセスを妨害しないようにすることができる。他の形式はゲル媒体中に分散されたシリカ粒子とシリカ粒子を含有するポリマーモノリスを有するゾル−ゲルを含み、キャリアは機械的安定性を高めるために架橋される。本質的に、従来の設定において任意の機能的な核酸精製方法が本発明の集積化バイオチップに適用することができる。
【0035】
4.核酸増幅
PCRおよび逆転写PCRなどのさまざまな核酸増幅方法を用いることができ、これは少なくとも2つの温度、またはより典型的には3つの温度間の熱サイクルが必要であった。ストランド転移増幅などの等温方法を用いることができ、多重転移増幅は全てのゲノム増幅に用いることができる。「METHODS FOR RAPID MULTIPLEXED AMPLIFICATION OF TARGET NUCLEIC ACIDS(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」と題される米国特許、弁理士事件番号第08−318−US(上述)の教示は、その全体を参照して本出願に援用されている。
【0036】
5.核酸定量化
マイクロ流体形式における定量化の1つの手法はリアルタイムPCRに基づく。この定量化方法において、反応チャンバーは入力および出力のチャネルの間に作られる。反応チャンバーは熱循環器および光学励起に結合され、検出システムは反応チャンバーに結合されて反応溶液からの蛍光の測定を可能にする。サンプル中のDNAの量は反応チャンバーからのサイクル毎の蛍光の強度に相関がある。例えば、Heid et al.,Genome Research 1996,6,986−994を参照されたい。他の定量化方法はいずれも増幅の前または後にピコGreen、SYBRまたは臭化エチジウムなどの挿入染料の使用を含み、これは次いで蛍光または吸収のいずれかを用いて検出することができる。
【0037】
6.二次精製
STR分析では、多重増幅され、かつ、標識されたPCR産物を分析に直接用いることができる。しかし、電気泳動分離性能は、分離その他の後続のステップを妨害するPCRに必要なイオンを除去する産物の精製によって大きく改善することができる。同様に、サイクル配列決定または他の核酸操作に続く精製は有用である。まとめれば、核酸の初期抽出または精製に続く任意の精製ステップは二次精製と考えることができる。限外濾過を含んでさまざまな方法を用いることができ、これは小さなイオン/プライマー/組み込まれなかった染料標識がフィルターを通して動かされ、フィルター上に望ましい産物が残り、次いでこれは溶出されて分離または後続のモジュールに直接適用できる。限外濾過媒体はポリエーテルスルホンおよび再生セルロース「織布」フィルター、ならびに、極めて薄い(1〜10μm)膜に高度に均一なサイズの孔が形成された溝エッチ膜を含む。後者は、表面下のある深さに産物を捕捉するのではなく、フィルターの孔サイズよりも大きなサイズの産物を集める利点を有する。また、増幅された核酸は上で概説した同じ方法を用いて精製することもできる(すなわち、古典的なシリカ上の固相精製)。さらに他の方法は、可変孔サイズ特性、すなわち、熱、pHなどの環境変数に対応して孔サイズを変化させる特性を有する架橋ポリマーであるヒドロゲルを含む。1つの状態において、孔は細かく、PCR産物は通過できない。孔が広がると、孔を通して流体力学または電気泳動的な産物の流動が可能になる。他の方法は、表面(ビーズの表面など)に固定されたランダムDNAへの産物の非特異的ハイブリダイゼーション、または固体表面上で産物への配列標識が補足される特異的ハイブリダイゼーションのいずれかのハイブリダイゼーションを用いることである。この手法において、対象産物はハイブリダイゼーションによって固定され、望ましくない材料は洗浄によって除去され、後続の加熱が二本鎖DNA分子を溶かし、精製された産物を放出する。
【0038】
7.サイクル配列決定反応
古典的なサイクル配列決定はPCRなどの熱サイクルが必要である。好ましい方法は、各伸張産物が伸張反応の最終塩基に相当する単一の蛍光標識を有するように染料標識を付けたターミネーターを用いるものである。
【0039】
8.注入、分離、および検出
電気泳動チャネルへの標識された核酸フラグメントの注入、分離、および検出はさまざまな方法で行うことができ、これは本出願と同時出願になる、「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」と題される米国特許出願、弁理士事件番号第07−865−USに記載されており、これはその全体を参照して本出願に援用されている。第1に、本出願に議論されている交差注入器を用いてサンプルの一部を注入することができる。代替の実施形態において、動電学的な注入(「EKI」)を用いることができる。いずれの場合も、電極近くの産物を静電気的に濃縮することによって、装填チャネルの開放終端近傍(交差注入の場合)または分離チャネル(EKIの場合)の配列決定産物のさらなる濃縮を行うことができる。チップの電気泳動部分の2つの電極サンプルウェルは図14に示される。両方の電極は浸透層でコーティングされ、それは、DNAが電極の金属に接触するのを防止するが、イオンと水はサンプルウェルと電極の間に接近することを許容する。それらの浸透層は架橋ポリアクリルアミドから形成することができる(米国特許出願公開US2003−146145−A1を参照されたい)。チャネル開口部から最も遠い電極は分離電極であるが、チャネル開口部に最も近い電極は対電極である。対電極の分離電極に対して正に印加することによってDNAは対電極に引っ張られ、分離チャネルの開放部近くで濃縮される。対電極を電源から切り離し、分離電極と分離チャネルの遠い端部のアノードを用いて注入することによって、濃縮された産物が動電学的に注入される。
【0040】
C.集積化方法
また、バイオチップは機能モジュールを集積化するいくつかの異なる手段を含む。これらの手段は、バイオチップ上の点から点へ液体を輸送すること、流量依存のプロセスについては流量の制御(例えば、いくつかの洗浄ステップ、粒子分離、および溶出)、バイオチップ上で流体の運動を時間と空間でゲート制御すること(例えば、ある形態のバルブを用いることによって)、および流体の混合を含む。
【0041】
流体輸送および流体流れの制御のために様々な方法を用いることができる。1つの方法は能動的な転移ポンピングであり、流体または介在ガスまたは流体に接触するプランジャーが、運動中のプランジャーによって転移された容積に基づいて流体を正確な距離動かす。それらの方法の一例はシリンジポンプである。他の方法は空気力学的にまたは磁気的に、または他の方法で起動される集積化された弾性膜の使用である。これらの膜は所定の空間中の流体を含むバルブとして、および/または流体の早期混合または送達を防止するために単一で使用することができる。しかし、直列に用いるとき、これらの膜は蠕動ポンプに類似のポンプを形成することができる。先端側の膜は運動流体を受け取る(およびデバイスのチャネル中の転移された空気を排気する)ように開放しているので、同期させた逐次的な膜の起動によってその流れ側から流体を「押し出す」ことができる。これらの膜を起動する好ましい方法は空気力学的起動である。それらのデバイスにおいて、バイオチップは流体層から構成され、少なくともその1つは膜を有し、その一方の側はデバイスの流体チャネルおよびチャンバー内部に露出される。膜の他の側は圧力源に配管された空気力学的マニホールド層に露出する。膜は圧力または真空の印加によって解放または閉じられる。通常開放または通常閉鎖のバルブを用いることができ、圧力または真空の下で状態を変化させる。ガスが分析下の流体に接触しないので、起動のために任意のガスを使用できることに留意されたい。
【0042】
流体を駆動し流量を制御するさらに他の方法は、流体の先端、流路、または両方のメニスカスの圧力を変化させることによって真空または圧力を流体自体に直接加えることである。適切な圧力(典型的に0.05〜3psigの範囲)が加えられる。また、流量は流体と水力学的直径の圧力差の4乗に比例し、チャネルの長さまたは液体栓と粘度に反比例するので、流体チャネルを適切なサイズにすることによって、流量を制御することもできる。
【0043】
流体ゲート制御はさまざまな能動バルブを使用して達成することができる。前者は圧電バルブまたはソレノイドバルブを含むことができ、チップに直接組み込み、または主要チップ本体のポートがバルブに連絡して流体をバルブに導き、次いでチップに戻すようにバイオチップに加えることができる。これらの種類のバルブの1つの欠点は多くの用途についてそれらの製造が困難になり、使い捨て集積化デバイスに組み込むのが高価なことである。好ましい手法は、上述のようにバルブとして膜を使用することである。例えば、10psigで起動される膜はPCRを行う流体を都合よく含むことができる。
【0044】
いくつかの用途において、受動バルブであるキャピラリーマイクロバルブが好ましい。本質的に、マイクロバルブは流路中の狭窄である。マイクロバルブにおいて、流体に加えられた圧力がバースト圧力と呼ばれる臨界バルブ以下であるとき、表面エネルギーおよび/または鋭い縁などの幾何形状を用いて流れに抵抗することができ、これは一般に関係、
【0045】
【数1】
【0046】
で与えられ、式中、γは液体の表面張力であり、dHはバルブの水力的直径(4*(断面積)/断面周で定義される)であり、θcは液体のバルブ表面との接触角である。
【0047】
いくつかの用途について受動バルブを好ましくする特性は、極めて小さなデッド容積(典型的にピコリットルの範囲である)、および物理的な小ささ(各々はバルブに行き来するチャネルよりもわずかに大きいだけである)を含む。物理的な小ささはバイオチップの所与の表面上で高いバルブ密度を可能にする。さらに、いくつかのキャピラリーバルブは製造が非常に簡単であり、本質的にプラスチックシート中の小さな孔からなり、表面処理はあってもなくても良い。キャピラリーバルブの賢明な使用は必要な膜バルブの数を低減することができ、全体的に製造が単純化され、堅牢なシステムを作る。
【0048】
本発明のデバイスに実施されるキャピラリーバルブには2つの種類がある。すなわち、1つの層の中に「溝」を作って、この層を造作のない蓋(典型的にデバイスの他の層)に接合することにより、バルブの小さなチャネルと鋭い角が形成される面内バルブ、および、小さな(典型的に250μm以下)孔がデバイスの2つの流体保持層の間の中間層に作られるスルーホールバルブである。両方とも、フルオロポリマーによる処理を用いてバルブに接触する流体の接触角を増加させることができる。
【0049】
図7はこれらのバルブの対象液体、すなわち、脱イオン水およびサイクル配列決定試薬のためのフルオロポリマー処理の場合のバルブサイズの関数としてバルブ性能を示す。両方とも、バルブ寸法に対するバルブ操作圧力に、予想される依存性(圧力〜1/直径)が観察される。スルーホールバルブは面内バルブよりも大きな利点を有する。第1に、それらは製造が容易であり、プラスチックシート中の小さなスルーホールは、バルブ層が作られた後に、ポストの周りの成型、打ち抜き、金型切断、ドリル穴あけ、またはレーザードリル穴あけのいずれかによって容易に作ることができる。面内バルブはかなり精密な加工を必要とし、非常に細かなバルブ(高いバルブ作動圧力を有する)は必要な成型または型押し工具を作るためにリソグラフ技術を用いる必要がある。第2に、スルーホールバルブは「全ての側」をフルオロポリマーでより完全にコーティングすることができる。孔に表面張力の低いフルオロポリマー溶液を添加することによって、毛細管作用による孔内壁の完全なコーティングがもたらされる。面内バルブの全ての側をコーティングするには、バルブ並びにバルブを封止する嵌合層の領域の両方にフルオロポリマーを添加する必要がある。結果として、典型的な面内バルブはバルブの「屋根」上がコーティングされないで形成される。
【0050】
機械加工された試作品において、スルーホールバルブは実施が容易であり、図7に示すように、より大きなバルブ作動圧力を有する。
混合はさまざまな方法で達成することができる。第1に、所与の流量で拡散時間が、
【0051】
【数2】
【0052】
を満足するように、通常小さな横方向寸法と十分な長さの単一チャネルに2つの流体を共注入することによって、拡散を用いて流体を混合することができる。都合の悪いことに、拡散または混合時間はチャネル幅の二乗で増加するので、この種の混合は典型的に急速に大容量を混合するには不十分である。混合は、流体の流れが分割され再結合される積層(CampbellおよびGrzybowski Phil.Trans.R.Soc.Lond.A 2004,362,1069−1086)、または流れチャネル内に無秩序の移流を形成する微小構造の使用(Stroock et al.,Anal.Chem.2002.74,5306−4312)など、さまざまな方法で高めることができる。能動ポンプを使用するシステムにおいて、混合はデバイス上の2つの点の間に流体を循環させることによって達成することができる。最終的に、後者はキャピラリーバルブを用いるシステムにおいても達成することができる。2つのチャネルまたはチャンバーの間に配設されたキャピラリーバルブは流体流れの旋回軸として働き、流体がキャピラリーを通して1つのチャネルから他へ流れる際に、流体のポンピングに十分低い圧力が用いられる場合、流路のメニスカスが捕捉される。逆向きの圧力は流体を第1チャネル中に戻し、それは再びキャピラリーで動かなくなる。複数のサイクルを用いて成分を十分混合することができる。
【0053】
マイクロ流体形式における分離および検出の手法は、本出願と同日出願の「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」と題される米国特許出願、弁理士事件番号第07−865−USに記載され、これはその全体を参照して本出願に援用されている(例えば、その中のパラグラフ68〜79、94〜98を参照されたい)。
【0054】
図13の上部は2つのコンポーネントから製造中に接合されて集積化されたバイオチップ(1301)の構造を示す。第1に、溶解、増幅、および図1のバイオチップの配列決定造作を図11のバイオチップの配列決定産物精製造作と組み合わせる16サンプルのバイオチップ(1302)であり、第2に、16レーンのプラスチック分離バイオチップ(1303)である。また、精製された配列決定産物は分離の前に動電的に注入することもできる。
【0055】
D.製造方法
本発明のデバイスは主としてプラスチックから構成することができる。有用なプラスチックの種類は、制限なしに、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、(その両方とも優れた光学品質、低い吸湿性、および分子量が十分であるとき高い動作温度を有する)、ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)(機械加工が容易であり、優れた光学特性を得ることができる)、ポリカーボナート(PC)(成型性が高く、衝撃抵抗が良好であり動作温度が高い)を含む。材料および製造方法のさらに多くの情報は、「METHODS FOR RAPID MULTIPLEXED AMPLIFICATION OF TARGET NUCLEIC ACIDS(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」と題される米国特許出願(弁理士事件番号第08−318−US)(上記)に含まれ、これは参照して本出願に援用されている。
【0056】
さまざまな方法を用いてバイオチップの個々の部品を製造し、それらを最終デバイスに組み立てることができる。バイオチップは挿入コンポーネントを含むことの可能な1つ以上の種類のプラスチックから構成することができるので、対象の方法は、個々の部品の製造および部品と組み立て体の後続の後処理が付随する。
【0057】
プラスチックコンポーネントは射出成型、熱型押し、および機械加工を含んで、いくつかの方法で作ることができる。射出成型部品は大きな造作(流体貯蔵器など)と微細造作(キャピラリーバルブなどの両方から構成される。いくつかの場合において、異なるサイズの造作の射出成型の手法は変化し得るので、微細造作を1組の部品に作り、大きな造作を他の組に作るのが望ましい。大きな貯蔵器(1方の側に数mm(約1〜50mm)および数mmの深さ(約1〜10mm)、および数百μLを収容できる)については、機械加工された射出成型工具、または工具のネガ型に機械加工されたグラファイト電極を用いて鋼または他の金属に焼成することによって作られた工具を使用する従来の成型を用いることができる。
【0058】
微細造作については、工具作成および成型プロセスは変化することができる。工具は典型的に対象基板上にリソグラフプロセス(例えば、ガラスの異方性エッチング、または深い反応性イオンエッチング、またはシリコン上の他のプロセス)を用いて作られる。次いで、基板はニッケルで電気メッキ(通常接着を向上するクロム層を堆積した後)し、例えば酸中のエッチングによって基板を除去することができる。このニッケル「娘」プレートは射出成型工具である。成型プロセスは上述とはいくらか異なることができる。細い浅い造作については、プラスチックが空洞に注入された後金型が物理的にわずかに圧縮される圧縮射出成型が標準的な射出成型よりも忠実度、精度、および再現性において優れることが判明している。
【0059】
熱型押しについては、上述の大きな造作と微細造作に関する類似の論点は保たれ、工具は上述のようにして作ることができる。熱型押しにおいて、ペレットの形のプラスチック樹脂または成型または型押しによって予備成形された材料の打ち抜き材を工具表面または平坦な基板に貼ることができる。次いで、プラスチックをそのガラス転移温度以上に昇温させ、材料が流動して工具の空洞を充填するように、第2工具に正確に制御された温度と圧力を加える。真空中の型押しは空気が工具とプラスチックの間に捕捉される問題を回避することができる。
【0060】
また、部品を作るのに機械加工を用いることもできる。高速コンピュータ制御(CNC)機械を用いて、成型された、または押し出された、または溶媒鋳造されたプラスチックから1日に多くの個別部品を作ることができる。フライス盤、作業パラメーター、および切断工具の適切な選択によって高い表面品質を達成することができる(50nmの表面粗さはCOCの高速フライスで達成可能である(Bundgaard et al.,Proceedings of IMechE Part C:J.Mech.Eng.Sci.2006,220,1625−1632)。また、フライスを用いて、成型または型押しで達成するのが困難な幾何形状を作り、容易に造作のサイズを単一部品中に混合することができる(例えば、大きな貯蔵器および微細キャピラリーバルブを同じ基板中に機械加工することができる)。成型または型押しよりもフライスが優れる他の利点は、作成した部品を成型工具から取り出すために成型剥離剤を必要としないことである。
【0061】
個々の部品の後処理は光学検査(自動化することができる)、バリや飛び出したプラスチックなどの欠陥を除去する洗浄作業、および表面処理を含む。機械加工されたプラスチックに光学品質表面が必要ならば、プラスチック用溶媒の蒸気による研磨を用いることができる。例えば、PMMAについてはジクロロメタンを用いることができ、COCおよびCOPについてはシクロヘキサンまたはトルエンを用いることができる。
【0062】
組み立ての前に、表面処理を加えることができる。表面処理は、濡れ性を促進または低減すること(すなわち、部品の親水性/疎水性を変化させる)、マイクロ流体内のバブルの形成を抑制すること、キャピラリーバルブのバルブ動作圧力を増加すること、および/または表面へのタンパク質の吸着を抑制することができる。濡れ性を低減するコーティングは、分子がデバイスの表面に吸着されまたは結合されるとき流体に露出されるフルオロポリマーおよび/またはフッ素部を有する分子を含む。コーティングは吸着または堆積させることができ、またはそれらは表面に共有結合することができる。それらのコーティングを作るのに用いることのできる方法は、浸漬コーティング、組み立てられたデバイスのチャネルを通してコーティング剤を通過させること、インク、化学的気相堆積、およびインクジェット堆積を含む。コーティング分子と表面の間の共有結合は、活性化された表面を作る酸素または他のプラズマまたはUVオゾンでの処理によって形成することができ、続いて、表面に表面処理分子の堆積または共堆積が続く(Lee et al.,Electrophoresis 2005,26,1800−1806、およびCheng et al.,Sensors and Actuators B 2004,99,186−196を参照されたい)。
【0063】
コンポーネント部品の最終デバイスへの組み立ては様々な方法で行うことができる。フィルターなどの挿入デバイスは金型切断し、次いで取り出し−配置機械で配置することができる。
【0064】
均一な厚さの2層以上の同じ材料層の接合には熱拡散接合を用いることができる。一般に、部品を積み重ね、温度が部品を含む材料のガラス転移温度近傍まで上昇することのできる熱プレス中に積み重ねを置き、部品間のインターフェースで融合させる。この方法の利点は、接合が「全体的」である、すなわち、熱と圧力が層全体に均一に加えられるので、層の内部構造に拘わらず、概略同じ寸法の任意の2つの層を接合できることである。
【0065】
また、熱拡散を用いて、特別に作られた接合受台を用いることによって、その接合または対向面が平面ではないものなど、より複雑な部品を接合することができる。それらの受台は接合すべき層の外側表面に整合する。
【0066】
他の接合の変形は溶媒援用熱接合を含み、これはメタノールなどの溶媒が部分的にプラスチック表面を溶解し、低い接合温度で接合強度を高める。さらに他の変形は低分子量材料のスピンコーティングを用いることである。例えば、接合すべき少なくとも1層に同じ化学構造であるが基板コンポーネントよりも低分子量のポリマーをスピンコーティングし、コンポーネントを組み立て、拡散接合によって接合された積み重ねを得ることができる。熱拡散接合の間に、低分子量成分はコンポーネントよりも低い温度でそのガラス転移温度を通過し、基板プラスチック中に拡散することができる。
【0067】
接着剤およびエポキシは、異なる材料を接合するのに用いることができ、異なる方法で作られたコンポーネントを接合するとき、使用が有望である。接着剤フィルムは金型切断しコンポーネント上に配置することができる。また、液体接着剤もスピンコーティングによって塗布することができる。構造部品上への接着剤のインク塗布(ナノコンタクト印刷など)を成功裏に用いて、接着剤を特別の領域へ「導く」必要なしに、接着剤を構造体表面に貼付することができる。
【0068】
一例において、本発明のバイオチップは図6に示すように組み立てることができる。層1および2は含まれる造作によって整列することができ(例えば、ピンとソケット)、別々に、含まれる造作によって層3と4を同様に整列することができる。層1と層2の積み重ねは逆にすることができ、層3と層4の積み重ねに加え、次いで積み重ね全体を接合することができる。
【0069】
E.実施例
実施例1
核酸抽出および核酸増幅用集積バイオチップ
PCRによる核酸抽出および核酸増幅用集積バイオチップを図1に示す。この4サンプル装置は、試薬の分配および計量、試薬とサンプルの混合、チップの熱サイクル部へのサンプルの送達、熱サイクリング、の機能を集積化する。同バイオチップは以下の実施例2で使用され、サイクル配列決定を実行するための追加の構造を有する。
【0070】
バイオチップは、図2〜5に示すように熱可塑性物質の4層で構成した。4層は加工したPMMAであり、それぞれ0.76mm、1.9mm、0.38mm、0.76mmの厚さを有し、バイオチップの横寸法は124mm×60mmとした。一般的に、3層以上のバイオチップでは、複数の検定間で分割される不定数の共通の試薬を使用することができる。2つの流体層と少なくとも貫通孔を含む1つの層では、外側の層の流体路がお互いを乗り越えることができる(複数のサンプル間で1つのみの試薬を使用するような、3層構造を必要としない特別な場合が存在すると認識される)。4層の選択は、限外濾過(実施例3)や完全集積化(実施例4)などの他の機能用のチップの構造との適合性のために行った。
【0071】
バイオチップのチャネルの127μm×127μm〜400μm×400μmの範囲であり、リザーバの断面寸法は400μm×400μm〜1.9×1.6mmである。チャネルとリザーバはいずれも0.5mm〜数十mm程度の短い距離を延在する。バイオチップ内で使用されるキャピラリーバルブは、「面内」バルブの場合は127μm×127μmの寸法で、貫通孔キャピラリーバルブの場合は直径100μmとした。
【0072】
4加工層の特定のチャネル、リザーバ、およびキャピラリーバルブを、疎水性/疎油性物質、PFC 502A(Cytonix,Beltsville,MD)で処理した。表面処理は、湿ったQチップで被覆した後、室温で空気乾燥した。乾燥したフルオロポリマー層は、光学顕微鏡で判定したところ厚さ10μm未満だった。表面処理は、液体が急速にチャネルまたはチャンバーの壁を濡らす際に生じうる、液体内、特にサイクル配列決定試薬などの低表面張力液体内での気泡の生成を防止し、(および、空気が移動できる前に気泡を「孤立させ」)、キャピラリーバルブが液体流に抵抗するキャピラリー破壊圧力を増大させるという2つの目的に供する。処理されずに残った領域は、PCRおよびサイクル配列決定用の熱サイクリングチャンバである。
【0073】
表面処理後、層を図6に示すように接合した。接合は、多量の成分がプラスチックのガラス転移温度(Tg)近傍の温度まで圧力下で加熱される熱拡散接合を用いて行った。45lbsの力を15分間、11.5平方インチのバイオチップ全体に印加し、うち7.5分は気温から130℃までの傾斜から成る熱接合プロファイルで、後の7.5分は130℃を維持してから急速に室温まで冷却した。
【0074】
本発明のバイオチップ内で流体を動かすために空気式機器を開発した。2個の小さな蠕動ポンプが圧力と真空を提供する。約0.05〜3psigの範囲の3つのレギュレータ間で正圧を分割した。真空は約(−0.1)〜(−3)psigの出力真空を有するレギュレータに移した。4つ目の高圧を別のレギュレータへのN2のシリンダからまたは高容量ポンプから取り出した。正圧と負圧を一連の8つの圧力選択モジュールに印加した。各モジュールには、5入力の中からバイオチップに送られる出力圧力を選択することのできるソレノイドバルブを備えた。出力圧力ラインは、少なくとも1つの空気圧インタフェースを終端とした。このインタフェースは、チップの入力側のチップポート(図面の最上部に沿うポート)上に配置されるOリングでチップに固定した。
【0075】
バイオチップポートの真上には、圧力選択モジュールからの出力圧力ラインを受け入れる追加のソレノイドバルブ(すなわち、ゲートバルブ、1インタフェースにつき8個)を設けた。チップに近接するこれらのバルブは、圧力ラインとチップ間に低デッドボリュームインタフェース(約13μL)を提供する。低デッドボリュームインタフェースは、圧力が別の液体を動かすように印加される際、バイオチップ上の特定の液体の意図しない移動を防止する(液体の栓と閉鎖したバルブの間の小さなガス体積が、たとえば、圧力が印加されるときのガスの圧縮によって栓が移動しうる最大量を決定する)。すべての圧力選択バルブとゲートバルブとを、スクリプトベースのLab ViewTMプログラムを用いてコンピュータの制御下で動作させた。このシステムの重要な特徴は、短い圧力サイクル時間が可能なことである。30msec程度の短い圧力パルスしか必要としない流体制御イベントを実行することができる、および/または、圧力をある値から別の値に(すなわち、あるレギュレータから別のレギュレータに)、迅速に(すなわち、わずか10〜20msecのタイムラグで)切替え可能な複雑な圧力プロファイルを利用することができる。
【0076】
サンプルは、pGΕMシーケンシングプラスミドインサートで転換された約106細胞/mLのE.coli DH5(pUC18シーケンシングターゲット)の細菌懸濁液から成る。PCR試薬は、0.1μMの濃度のdNTPs KOD Taq ポリメラーゼ(Novagen,Madison,WI)から成る。
【0077】
細菌懸濁液1.23μLのサンプルを4つのポート104それぞれに追加し、各ポートは層1および2にそれぞれ貫通孔202および336を有する。その後、サンプルは層2のサンプルチャネル303に配置した。次に、10μLのPCR試薬を層1および2に貫通孔217および306を備えるポート105に追加した。その後、PCR試薬を層2のチャンバー307に配置した(図8aを参照)。PCR試薬のために移動した空気の排気用ポートは、109および貫通孔203と305を備えるポート107である。
【0078】
動作中、サンプルおよび下流工程(試薬の計量や流体の混合など)により移動した空気は、貫通孔227を備えるチップの出力端上のポート108を通じて排気した。PCR反応の最終体積は所望に増大または減少させることができる。
【0079】
バイオチップを上述の空気マニホールド内に配置した。ステップ間の遅延なく、以下の自動圧力プロファイルを実行した。特段他に指摘のない限り、チップの入力側に沿ったポートに対応する空気圧インタフェースバルブは、全ステップの間中閉じている。
【0080】
15秒間ポート104に0.12psigの圧力を印加して、チャネル303を下って貫通孔304までサンプルを動かした。サンプルは貫通孔304を通過し、層2の反対側の層1のサンプルチャンバー204に現れ、第1の混合ジャンクション205まで動かされた。第1の混合ジャンクションでは、サンプルはキャピラリーバルブ210によって保持された(図8b〜cを参照)。
【0081】
10秒間ポート105に0.12psigの圧力を印加して、PCR試薬を貫通孔320を貫通して動かした。PCR試薬は分配チャネル208の層2の反対側に現れ、サンプル量と等しい試薬量を確定する計量チャンバー209まで移動し、混合ジャンクション205でキャピラリーバルブ211によって保持された(図8dを参照)。
【0082】
ポート107(貫通孔203および305を備える)に0.12psigの圧力を印加しポート105を3秒間大気に開放し、チャネル208を空にした(図8eを参照)。
【0083】
0.03秒間ポート107および105に0.8psigの圧力を印加すると同時に、0.03秒間、0.7psigの圧力をポート104に印加して、キャピラリーバルブ210および211を越えて液体を決壊させることによってサンプルとPCR試薬との混合を開始させた(図8fを参照)。
【0084】
10秒間ポート104および107に0.12psigの圧力を印加して、サンプルおよびPCR試薬を混合チャネル214に注入し、キャピラリーバルブ210および211で保持させた。混合バルブ212を通って狭窄部213までの通過により、追加の水圧抵抗が生成されて、先の高圧パルスによって与えられていた高速が減速した。
【0085】
0.03秒間ポート104および107に0.7psigの圧力を印加して、キャピラリーバルブ210および211から液体を分離した(図8gを参照)。
【0086】
3秒間ポート104および107に0.12psigの圧力を印加して、混合チャネル214を通過してキャピラリーバルブ219まで液体を注入し、そこで保持させた(図8hを参照)。
【0087】
0.1秒間ポート104および107に0.7psigの圧力を印加して、サンプルとPCR試薬の混合物を貫通孔315および402と層2および3とを通過させ、PCRチャンバー502内まで動かした(図8iを参照)。
【0088】
3秒間ポート104および107に0.12psigの圧力を印加して、サンプルとPCR試薬の混合物を完全にチャンバー502に注入した。その後、サンプルとPCR試薬の混合物の先端は貫通孔403および316を通過して、層1に現れ、キャピラリーバルブ220で保持された(図8jを参照)。
【0089】
その後、「METHODS FOR RAPID MULTIPLEXED AMPLIFICATION OF TARGET NUCLEIC ACIDS(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」と題され、本文書とともに出願された米国特許出願、弁理士事件番号08−318−USおよび、「DEVICES AND METHODS FOR THE PERFORMANCE OF MINIATURIZED IN VITRO ASSAYS(小型化管内検定の実行装置および方法)」と題され、2008年2月6日に出願された国際特許出願第PCT/US08/53234号、弁理士事件番号07−084−WOに記載されるガスブラダー圧縮機構を用いて、バイオチップを30psig N2まで加圧し、ペルチエを介したPCR増幅のために熱サイクルした。上記両文書とも引用により本文書に全文を組み込む。
【0090】
サンプル、試薬量、およびPCRチャンバーの寸法は、液体がバルブ219とバルブ220間の領域を満たすように選択した。その結果、小さな断面積(通常、127μm×127μm)の液体/蒸気インタフェースが、層4の熱サイクルされた底面から約3mmの位置に配置された。熱サイクリング間の圧力の印加により、サンプル内の溶存酸素によるガス放出を抑制した。液体/蒸気インタフェースの小さな断面積と、ペルチエ表面からの距離とはいずれも、蒸発を抑制した。
【0091】
サイクリング中のバイオチップの最上部で観測された温度は60℃を超えず、その結果、液体/蒸気インタフェースでの蒸気圧は、仮にインタフェースがPCRチャンバー内にあった場合の蒸気圧よりも相当低かった。2μLのサンプルの場合、そのうち1.4μLがチャンバー502内にあり、残りが貫通孔およびキャピラリーバルブ内にあり、観測される蒸発は40サイクルのPCR全体で0.2μL未満だった。未サイクルの流体量、この場合0.6μLは、より小さな貫通孔の直径を選択することにより低減することができる。
【0092】
PCRは、以下の温度プロファイルを用いて実行した。
・3分間、98℃での細菌の熱溶解
・以下を40サイクル
5秒間98℃での変性
15秒間65℃でのアニーリング
4秒間72℃で伸張
2分間72℃での最終伸張
【0093】
PCR産物を、チャンバー502を〜5μLの脱イオン水で洗浄することによって洗浄し、スラブゲル電気泳動によって分析した。PCRは、以後の配列決定反応に必要とされるよりもずっと多くの、1反応につき最大40ngを産出した。この適用では、単に細菌を溶解することによって、細菌核酸を生成した。核酸は必要に応じて精製することができ、この精製工程は、増幅、配列決定、およびその他の反応の効率を向上させることができる。
【0094】
実施例2
サイクル配列決定試薬の分配、PCR産物との混合、およびサイクル配列決定用集積バイオチップ
実施例1に記載のバイオチップを使用した。実施例1に概説したプロトコルを用いて管内で生成したPCR産物を、上述したようにサンプルとバイオチップのPCR試薬ポートの両方に追加した。50μLのサイクル配列決定試薬(BigDyeTM3.1/BDX64、MCLab、San Francisco)を、(貫通孔215および308を備える)ポート106とチャンバー309とに追加した。2つの空気式インタフェース(1つはチップの入力端用、もう1つは出力端用)の設置後、PCR産物を実施例1で説明したようにPCRチャンバーまで処理したが、PCR熱サイクリングステップは除いた。チップ内の流体の配置を図9aに示す。
【0095】
空気圧システムソフトウェアを使用して、以下の圧力プロファイルを実行した。チップポートに対応するすべてのソレノイドバルブは、特段の指摘のない限り、閉じている。
(1)ポート106に0.1psigの圧力を印加して、ポート109を10秒間大気に開放して、サイクル配列決定試薬をチャネル310に注入した(図9bを参照)。
(2)0.2秒間ポート106および108に0.7psigの圧力を(貫通孔216および314を備える)印加して、チャネル304から貫通孔311、さらに層2の本体を通って層1のサイクル配列決定試薬計量チャンバー218まで配列決定試薬を動かした(図9cを参照)。
(3)ポート106に0.1psigの圧力を印加して、ポート109を大気に開放して、サイクル配列決定試薬をキャピラリーバルブ221まで動かし、そこで保持させた(図9dを参照)。
(4)ポート108に0.1psigの圧力を印加して、ポート106を1秒間大気に開放して、過剰なサイクル配列決定試薬を後方へチャンバー101まで戻させ、チャネル310を空にした(図9eを参照)。
(5)0.1秒間ポート104および107に0.7psigの圧力を印加して、ポート109を大気に開放して、PCR産物を、キャピラリーバルブ220を通り貫通孔317まで、そして層2の本体と層3の貫通孔404を通過させ、層4のサイクル配列決定チャンバー503内へと動かした(図9fを参照)。
(6)ポート109に0.1psigの圧力を印加して、ポート104および107を5秒間大気に開放して、PCRサンプルを貫通孔に戻るように動かした。毛管管作用により貫通孔の入口で液体を保持して、閉じ込められた気泡がPCR産物とチャンバー503との間に現れるのを防止した(図9gを参照)。
(7)0.2秒間ポート108に0.7psigの圧力を印加して、ポート109を大気に開放して、サイクル配列決定試薬をチャンバー503内に動かすと同時に、ポート104および107に0.1psigを印加して、PCR産物を配列決定試薬と接触させた(図9hを参照)。
(8)10秒間ポート104、107、および108に0.1psigの圧力を印加して、ポート109を大気に開放して、PCR産物およびサンガー試薬をチャンバー内に動かした。PCR産物の後方メニスカスと配列決定試薬の後方メニスカスは、キャピラリーバルブ220および221で留められた(図9iを参照)。
(9)0.1秒間0.25psigの5真空パルスをポート108に印加して、ポート109を大気に開放して、両液体を部分的に後方へ試薬計量チャンバー218内へと引き戻した(図9jを参照)。
(10)ポート104、107、および108に0.1psigの圧力を印加して、ポート109を10秒間大気に開放して、混合物を戻しチャンバー503に注入して、後方メニスカスをステップ8と同様キャピラリーバルブで保持した(図9kを参照)。
【0096】
ステップ9〜10は、配列決定試薬とPCR産物の混合を実行するためにあと2回繰り返した。
【0097】
その後、バイオチップを30psig N2に加圧し、以下の温度プロファイルで熱サイクルを行った。
・1分間95℃で最初の変性
以下を30サイクル
5秒間95℃での変性
10秒間50℃でのアニーリング
1分間60℃での伸張
【0098】
サンプル(図9lを参照)を回収し、エタノール沈澱により精製し、後述するように(パートII、実施例5)GenebenchTM機器上で電気泳動分離およびレーザー励起蛍光検出によって分析した。Phred品質分析は、1サンプルにつき408+/−57 QV20塩基を産出する。
【0099】
実施例3
4サンプルバイオチップでの限外濾過
配列決定産物精製実行用の4サンプルバイオチップは、実施例1に記載され、図11に示されるように4層で構成した。構成内の追加要素は、適切なサイズにカットされ、熱接合前に層3と4の間に配置される限外濾過(UF)フィルター1116である。UFフィルター周りで良好な接合を形成するには、層3の使用を必要とした。フィルターまで、およびフィルターからつながる全チャネルは層2の底部にあるため、層3および4は途切れのないフィルター外周を形成する(層2と4とを直接接合すると、たとえば、チャネルがフィルターを横断する場所でフィルターの接合が不良となる)。本実施例では、分子量カットオフ(MWCO)30kDの再生セルロース(RC)フィルターを使用した(Sartorius,Goettingen,Germany)。別の材料ポリエーテルスルホン(Pall Corporation,East Hills,NY)を有する、その他各種MWCO(10kD、50kD、および100kD)を検討した。
【0100】
(1)pUC18テンプレートおよびKOD酵素を用いて管反応で生成されたサイクル配列決定産物の4つの10μLサンプルを、第1層のポート1104から、第2層のチャネル1105を通って第2層のチャンバー1106に追加した。200μLの脱イオン水を、ポート1120(第1層の貫通孔)と第2層のリザーバ1121に追加した。その後、バイオチップを2つの空気圧インタフェースに設置した。
【0101】
以下の圧力プロファイルを空気圧システムソフトウェアを用いて実行した。バイオチップポートに対応するすべてのソレノイドバルブは、特に断りのない限り閉じている。
(2)ポート1104に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を5秒間大気に開放して、配列決定産物を層1のキャピラリーバルブ1108まで動かし、そこで保持させた。
(3)ポート1104に0.6psigの圧力を印加して、ポート1119を0.1秒間大気に開放して、層1のキャピラリーバルブ1108を通ってサンプルを決壊させ、層2の貫通孔1111を通過し層2のUF入力チャンバー1112まで送達させた。
(4)ポート1104に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を10〜30秒間(実験によって異なる時間を用いた)大気に開放して、配列決定産物をチャンバー1112に送達した。配列決定産物は、層2のキャピラリーバルブ1113によって保持された(図12aおよび12bを参照)。
(5)ポート1124に0.8psigの圧力を印加して、ポート1119および1104を0.5秒間大気に開放して、バルブ113を介して濾過チャンバー1115まで配列決定産物を動かした。また、これにより、保持された液体の入力キャピラリーバルブ1108を清掃した。
(6)ポート1124に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を10〜30秒間大気に開放して、配列決定産物のチャンバー1115への送達を完了した。配列決定産物はバルブ1113で保持された(図12cを参照)。
(7)7.5psigの圧力を、限外濾過のためにチップの全ポートにゆっくりと印加した。限外濾過中、配列決定産物メニスカスは1113で留められたままで、液体がフィルター1116を通過して推進されるにつれ、液体の先端が「後退」する。10μLの配列決定産物は、濾過のために120秒までを要した。濾過後、圧力を解放した(図12cおよび12dを参照)。
(8)ポート1120に0.09psigの圧力を印加して、ポート1124を3秒間大気に開放して、水を(層4の)チャネル1122まで動かし、部分的にチャンバー1123をあふれさせた(図12eを参照)。
(9)ポート1120および1124に0.8psigの圧力を印加して、ポート1119を大気に開放して、水をチャネル1122内の貫通孔キャピラリーバルブ1110を介してチャンバー1112内へと動かした。
(10)ポート1120に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を10〜30秒間大気に開放して、液体のチャンバー1112への送達を完了させ、そこで液体はバルブ1113によって保持された。(図12fを参照)。
(11)ポート1124に0.09psigの圧力を印加して、ポート1120を解放し、チャンバー1123およびチャネル1122内の水をチャンバー1121に戻るように動かした(図12gを参照)。
(12)ポート1124に0.8psigの圧力を印加して、ポート1119および1104を0.5秒間大気に開放して、水をバルブ113を通過して濾過チャンバー1115まで動かした。また、これにより、保持された液体の入力キャピラリーバルブ1108を清掃した。
(13)ポート1124に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を10〜30秒間大気に開放して、水のチャンバー1115への送達を完了した。配列決定産物はバルブ1113で保持された(図12hを参照)。
【0102】
上記ステップ6と同様、水はUFフィルターを通じて動かされ、第1の洗浄を完了し、ステップ8〜13をあと1回繰り返した。
【0103】
ステップ8〜12を繰り返して、溶出のために使用される最終量の水でチャンバー1115を部分的に満たした(図12kを参照)。
【0104】
ポート1104に1.6psigの真空を印加して、他の全ポートを1秒間閉鎖して、チャンバー1115からチャンバー1112へと水を引き込んだ(液体のメニスカスとポート1119に対応するソレノイドバルブとの間のデッドスペースと等しい大きさの真空を生成することによって、最大の移動が指示される)(図12lを参照)。
【0105】
ポート1104を1秒間大気に開放して、液体とポート1119に対応するバルブとの間に生成される部分的真空により、液体をチャンバー1115内に戻すことができる(図12mを参照)。
【0106】
16〜17を50回繰り返して、50の溶出サイクルを生成した。
10秒間ポート1124に0.09psigの圧力を印加して、ポート1119を大気に開放して、後方メニスカスが1113で留められるように液体を動かした。
【0107】
0.05秒間ポート1124に0.7psigの圧力を印加して、ポート1119を大気に開放して溶出液を分離した(図12nを参照)。
サンプルを回収し、上述したようにGenebenchTM上で直接処理して、最大479のQV20塩基を産出した。
【0108】
実施例4
核酸抽出、テンプレート増幅、サイクル配列決定、配列決定産物の精製、および精製産物の電気泳動分離および検出用完全集積バイオチップ
図13は、図1のバイオチップの溶解および抽出、テンプレート増幅、およびサイクル配列決定機能と、図11のチップの限外濾過と、電気泳動分離および検出と、を組み合わせた16サンプルバイオチップ1301の実施形態を示す。限外濾過による工程はサブコンポーネント1302によって実行され、実施例1、2、および3に記載されるように遂行することができる。1302の底面の移動点1304は、分離サブコンポーネント1303上の入力ウェル1305と並んでいる。
【0109】
注入は、対向電極を用いて予備濃縮ステップで動電学的に実行される。図14に示す入力ウェル1305は、液体受入ウェル1401、主分離電極1402、および対向電極1403から成る。分離チャネル1306は、ウェルリザーバ1401の底部に開放している。分離電極は通常、白金または金で被覆されており、好ましくは、1401の内面の1、3、または4を実質上覆う平坦金被覆電極である。対向電極は、架橋化ポリアクリルアミドの薄層(〜10μm)で被覆された薄い金、鋼鉄、または白金のワイヤ(通常、直径0.25mm)である。これは、電極上にヒドロゲル保護層を形成する。パネルdでは、精製された配列決定産物(1401内の黒丸)はウェルに移送されている。1402と1403の間に正電位を印加すると、負に帯電した配列決定産物が、パネルc〜dのように1403の方に引かれる。1403上のヒドロゲル層は、配列決定産物が金属電極に接触するのを阻止し、配列決定産物の電気化学的ダメージを防止する。その後、対向電極1403は、1402に対して浮上させられる。次に、正電位が、分離チャネル1306の遠位端で主分離電極1402と陽極(図示せず)との間に印加される。これにより、産物が注入されて(パネルe)、分離および検出のために電気泳動で1306まで下る(パネルf)。図14に示すように、このスキームは、チャネル1306の端部近傍での配列決定産物の濃度を、限外濾過から導出される濃度に比べて相当高めることができる。用途によってはこのような濃度が望ましいが、すべての場合に必要なわけではない。このような場合、対向電極1403のない図14のウェルを、EKIを実行するのに直接使用することができる。もしくは、荷重ウェル中の単独の電極が、クロスTまたはダブルTインジェクタであってもよい(たとえば、「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」と題され、本文書とともに提出された米国特許出願、弁理士事件番号07−865−USを参照)。
【0110】
分離は分離チャネル1306で行い、検出は検出領域1307内のレーザー励起蛍光を介して行う。このバイオチップでは、たとえば、ペルチエブロック(図示せず)に1301の下面と結合してPCRおよびサイクル配列決定用の熱サイクリングを提供させるための凹部1308が設けられる。機器内の空気圧インタフェース(図示せず)はチップの端部に固定され、マイクロ流体制御を提供する。
【0111】
II.分離および検出システム
A.分離および検出コンポーネントおよびその使用の詳細な説明
1.分離機器
DNA分離は、米国特許出願公開第US2006−0260941−A1号に記載されるようなバイオチップおよび機器上で実行される。分離チップは、ガラスであっても(米国出願公開第US2006−0260941−A1号を参照)、プラスチックであってもよく(「PLASTIC MICROFLUIDIC SEPARATION AND DETECTION PLATFORMS(プラスチックマイクロ流体分離および検出プラットフォーム)」と題され、本文書と同時に出願された米国特許出願、弁理士事件番号07−865−US)、どちらも引用により全文を本文書に組み込む。
【0112】
2.励起および検出機器
この機器は、サンプルと相互作用し、サンプルを識別する励起および検出サブシステムを備える。サンプルは通常、色素(たとえば、蛍光色素)で標識される1つまたはそれ以上の生体分子(DNA、RNA、およびタンパク質を含むがそれらに限定されない)を含む。励起サブシステムは、励起源とレンズ、ピンホール、ミラー、および対物レンズなどの光学素子を有する励起ビーム路とを備えて、励起/検出ウィンドウ内の励起源を条件づけ、焦点を結ばせる。サンプルの光励起は、400〜650nmの可視領域の発光波長で、一連のレーザー種によって達成することができる。個体レーザーは、約460nm、488nm、および532nmの発光波長を提供することができる。これらのレーザーは、Coherent社製(Santa Clara,CA)のCompass、Sapphire、およびVerdiを含む。ガスレーザは、約488nm、514nm、543nm、595nm、および632nmの可視波長での発光を有するアルゴンイオンおよびヘリウムネオンを含む。可視領域での発光波長を有するその他のレーザーは、CrystaLaser社(Reno,NV)から入手可能である。1実施形態では、488nm個体レーザーSapphire 488−200(Coherent,Santa Clara,CA)を利用することができる。別の実施形態では、可視範囲を越える波長の光源を、可視範囲を越える吸収および/または発光スペクトルを有する色素(たとえば、赤外線または紫外線発光色素)を励起するために使用することができる。もしくは、発光ダイオードやランプを含む色素励起に適した発光波長を有する非レーザー光源の使用によって、光励起を実現することができる。
【0113】
検出サブシステムは、1つまたはそれ以上の光学検知器、(波長分離を実行する)波長分散装置、および励起/検出ウィンドウに存在する蛍光色素標識化DNAフラグメントから発せられた蛍光を回収するための、レンズ、ピンホール、ミラー、および対物レンズなどを含むがそれらに限定されない1つまたは一連の光学素子を備える。蛍光は、単独の色素または色素の組み合わせから発することができる。信号を判別して発光色素からの貢献を判断するため、蛍光の波長分離を利用することができる。二色性ミラーおよびバンドバスフィルター素子(Chroma,Rockingham,VT;およびOmega Optical,Brattleboro,VTなどの多数のベンダーから入手可能)の使用によって実行可能である。この構成では、発せられた蛍光が一連の二色性ミラーを通過し、そこで波長の1部がミラーによって反射されて光路を下り続け、波長の他の部分がミラーを通過する。それぞれが二色性ミラーの端部に配置される別個の一連の光検知器が、特定範囲の波長における光を検知する。バンドバスフィルターは、検出前に波長範囲をさらに狭めるために、二色性ミラーと光検知器の間に配置することができる。波長分離された信号を検出するのに利用可能な光学検知器は、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子倍増管モジュール、およびCCDカメラなどである。これらの光学検知器は、Hamamatsu(Bridgewater,NJ)などの供給業者から入手可能である。
【0114】
1実施形態では、波長成分を二色性ミラーおよびバンドバスフィルターを使用して分離し、これらの波長成分を光電子増倍管(PMT)検知器(H7732−10、Hamamatsu)で検出する。二色性ミラーおよびバンドバスコンポーネントは、各PMTの入射光が蛍光色素の発光波長に対応する狭い波長から成るように選択することができる。バンドバスは通常、1〜50nmの波長範囲のバンドバスで蛍光発光のピークを中心とするように選択される。このシステムは8色の検知を可能とし、8つのPMTとそれに対応する、発せられた蛍光を別々の8色に分割するおよびバンドバスフィルターのセットとを備えて設計することができる。追加の二色性ミラー、バンドバスフィルター、およびPMTを適用することによって9つ以上の色素を検出することもできる。図15は、個々のバンドバスフィルターと二色性フィルターの実装用のビーム路を示す。この集積化バージョンの波長識別および検出構造は、Hamamatsu,Bridgewater,NJのH9797Rである。
【0115】
蛍光信号から成る色素を判別するもう1つの方法は、プリズム、回析格子、透過格子(ThorLabs,Newton,NJ;Newport,Irvine,CAなどの多数のベンダーから入手可能)やスペクトル写真(Horiba Jobin−Yvon,Edison,NJなどの多数のベンダーから入手可能)などの波長分散素子およびシステムの使用である。この動作モードでは、蛍光の波長成分が物理空間全体に分散される。この物理空間に沿って配置された検知器素子が光を検知し、検知器素子の物理的位置と波長との相関関係を取る。この機能に適した検知器はアレイベースであり、多要素フォトダイオード、CCDカメラ、裏面薄型CCDカメラ、多陽極PMTを含む。当業者であれば、波長分散素子と光学検知器素子との組み合わせを適用して、同システム内で使用される色素から波長を判別デイルシステムを得ることができるであろう。
【0116】
別の実施形態では、波長成分と励起された蛍光とを分離するために、二色性およびバンドバスフィルターの代わりにスペクトル写真を使用する。スペクトル写真設計の詳細は、John James,Spectrograph Design Fundamental.Cambridge,UK:Cambridge University Press,2007で入手可能である。スペクトル範囲505〜670nmの凹面ホログラフィック回折格子でのスペクトル写真P/N MF−34(P/N 532.00.570)(HORIBA Jobin Yvon Inc,Edison,NJ)がこの適用で使用される。検出は線形32要素PMT検知器アレイ(H7260−20,Hamamatsu,Bridgewater、NJ)によって実行可能である。回収された蛍光はピンホール上で撮像され、反射され、分散され、凹面ホログラフィック回折格子によってスペクトル写真の出力ポートに搭載される線形PMT検知器上に撮像される。PMTベースの検知器の使用は、低暗ノイズ、高感度、高動的範囲、および迅速な反応というPMT検知器の特徴を利用している。励起された蛍光の検出にスペクトル写真と多要素PMT検知器とを使用することによって、機器の検出システム(二色性、バンドバス、および検知器)を物理的に再構成する必要なく、システム内およびレーン内で適用可能な色素の数および色素の発光波長の自由度を高めることができる。この構成から収拾されるデータは、各レーンの各走査に関する、可視波長範囲全体にわたる波長依存スペクトルである。走査ごとに全スペクトルを生成することで、色素発光波長とサンプル内に存在しうる色素の数との両方に関して、色素の自由度が高まる。また、分光器と線形多要素PMT検知器の使用により、アレイ内のPMT素子全部が並行して読み出されるため、読出速度が極めて速くなる。図16は、多要素PMTとスペクトル写真実装用のビーム路を示す。
【0117】
機器は、複数のレーンを同時に検出し、複数の波長を同時に検出するための動作観測モードを採用することができる。1構成では、励起ビームが、すべてのレーンに同時にぶつけられる。ここからの蛍光は、CCDカメラまたはアレイなどの2次元検知器によって収集される。この収集の観測モードでは、波長分散素子が使用される。一方の次元の検知器は物理的な波長分離を表し、他方の次元の検知器は空間的またはレーン対レーンの分離を表す。
【0118】
複数のサンプルの同時励起および検出のため、バイオチップの各レーンを撮像するため、励起と検出の両方のビーム路を導く走査ミラーシステム(62)(P/N 6240HA,67124−H−0および6M2420X40S100S1,Cambridge technology,Cambridge MA)を使用する。この動作モードでは、走査ミラーがビーム路を導いて、最初のレーンから最後のレーンまでレーンからレーンへと順次走査し、最初のレーンから最後のレーンまでの工程をサイド繰り返す。レーンの位置を特定するのに、米国特許出願公報第2006−0260941−Al号に記載されるようなレーン発見アルゴリズムを使用する。
【0119】
多レーンおよび多色素同時検出のための光学検出システムの実施形態を図16に示す。蛍光励起および検出システム40は、記録、および最終的には分析のために色素から励起された蛍光を収集し、1つまたはそれ以上の光検知器に伝送しつつ、各マイクロチャネルの1部を通ってエネルギー源(たとえばレーザ光)を走査することによって、(たとえば、1セットのSTR遺伝子座の増幅後のDNAフラグメントを含む)DNAサンプルの電気泳動によって分離される成分を励起する。
【0120】
1実施形態では、蛍光励起および検出アセンブリ40は、レーザー60、スキャナ62、1つまたはそれ以上の光検知器64、各種ミラー68、スペクトル写真、およびレーザー60から放出され、開口部42を通ってテストモジュール55および光検知器64まで戻るレーザー光を伝導するレンズ72を含む。スキャナ62は、テストモジュール55に対する様々な走査位置へと入射するレーザー光を移動させる。具体的には、スキャナ62は、テストモジュール55内の各マイクロチャネルの該当部分までレーザー光を移動させて、それぞれの分離成分を検出する。多要素PMT64は、テストモジュール55からデータ(たとえば、異なる波長のDNAフラグメントの蛍光信号)を収集し、ポート75に装着されたケーブルを介して保護カバー50外に配置されるデータ獲得および記憶システムにデータを電子的に提供する。1実施形態では、データ獲得および記憶システムは、Option Industrial Computers(13 audreuil−Dorion,Quebec,Canada)社製の小型コンピュータを含むことができる。
【0121】
別の実施形態(「観測モード」)では、励起源が全検出箇所に同時に入射され、全検出箇所からの蛍光が同時に収集される。同時スペクトル分散(検出された蛍光の波長スペクトル)および空間分散(検出箇所)は2次元検知器アレイで実行可能である。この構造では、一方の次元のアレイ検知器(列)でスペクトル成分が撮像および検出され、他方の次元のアレイ検知器で空間成分が撮像および検出されるように、2次元検知器アレイを配置する。
【0122】
好適な機器は、「観測」モードではなく動作の走査モードを利用する。走査モードでは、スキャナが識別されているレーンと一致している間であって、次のチャネルに入射される前に、各チャネルの信号を収集し、積算し、読み出す必要がある。高速読出の検知器は、最適な光の収集と積算を可能とし、信号対ノイズ性能を高める。理想的には、検知器の読出時間は、スキャナがチャネルと一致している総計時間よりも相当短くあるべきである。多要素PMTは0.7ms未満での読出しが可能であり、読出時間は個々のチャネルの検出のための集積化時間よりもずっと短い。
【0123】
ピンホールに入射する蛍光は、波長成分に応じて格子により分散し、線形多陽極PMT検知器アレイ上に集束させることができる。検知器は32の電流出力を提供し、1つの出力が、入射する光子の数に対応するアレイ素子のそれぞれに関する。複数のサンプル(またはレーン)検出中、レーザーが選択されたレーンを励起する位置にあるとき、積分回路はPMT出力電流を積算して、積算されたPMT電流に比例する出力電圧を生成する。同時に、シングルエンド型出力電圧は、アナログ機器(Norwood、MA)差動ドライバIC(P/N SSM2142)を用いて差動モードに変換される。(走査速度とレーン数によって確定される)積分時間の最後に、データ獲得システムが差動信号を読み取り、データをバッファに保存する。データの保存後、データ獲得システムはスキャナを移動させて、次の選択されたレーンにレーザー光をシフトすると同時に、積分回路をリセットする。
【0124】
各単要素PMTモジュールは自身の積分回路を有する。8色検出システムの場合、8つのPMTモジュールと8つの積分回路とがある。対応する数のPMTモジュールと積分回路とを用いて、追加の色を加えることもできる。
【0125】
各PMT要素(H77260−20,Hamamatsu,Japan)が単独のPMT管(H7732−10,Hamamatsu,Japan)と同様の、またはより迅速な信号反応を有し、読出しが並列に行われるため、この検知器は非常に迅速な動作が可能である。分光器と連結されて、この分光器および多陽極検知器システムは、0.1ms未満の読出時間で可視スペクトル(450nm〜650nm)全体にわたり全スペクトル走査を提供することができる。
【0126】
速いリフレッシュ速度を提供できることで、この分光器/検知器システムを、1回の作業内で順次複数のレーンの検出を実行する走査モードに適用することができる。PMTベースの検知器の使用は、低ノイズ、高感度、広い動作範囲、高速反応を提供する。凹面ホログラフィック回折格子(Horiba Jobin−Yvon)および多陽極PMT検知器を備える140mm分光器はH7260−20検知器(日本国浜松)である。この用途に、その他の分光器構成と多陽極PMT検知器を使用することもできる。
【0127】
電気泳動図からのヌクレオチド塩基の判定は、データを訂正し、フィルタリングし、分析する信号処理アルゴリズムを用いて実行する。このプロセスは、呼出可能信号を突き止めることと、信号ベースラインを訂正することと、ノイズをろ波することと、色クロストークを除去することと、信号ピークを特定することと、関連塩基を判定することとから成る。呼出可能信号を突き止めることは、信号の最初と最後から余分なデータを除去することで実行し、閾値を採用することで達成する。次に、信号がすべての検出された色に対して共通のベースラインを有するように、信号から背景を除去する。最後に、低域通過フィルターを適用して、信号から高周波ノイズを除去する。
【0128】
検出した色の曖昧性を除去するため、加重マトリックスを算出し、ヌクレオチド色素スペクトルの色空間を増幅する信号に適用した。この色分離マトリックスの計算は、Li et al.Electrophoresis 1999、20、1433〜1442の方法を用いて達成した。この適応において、「m×n」色分離マトリックスは、検定で利用する「m」個の色素と「n」個の検知器素子とを相互に関連付けることで計算する。検知器空間(PMT要素)から色素空間への信号の変換は、以下のようなマトリックス操作によって実行する。D=CSM×PMT、ただし、Dはm個の色素のそれぞれの色素空間における信号、CSMは色分離マトリックス、PMTは検知器のn個の素子のそれぞれからの信号を有するマトリックスである。
【0129】
次に、色分離信号のピークを、ゼロ交差フィルターと周波数分析の組み合わせを用いて特定する。最後に、フラグメントのサイジング用途の場合、訂正されたトレースは対立遺伝子を呼び出されて、各フラグメントを特定し、サイジングスタンダードに基づくフラグメントサイズを指定する。DNA配列決定用途の場合、訂正されたトレースは塩基を呼び出されて、4つのヌクレオチドのうちの1つとトレース内の各ピークとを関連付ける。塩基呼出の詳細な説明は、Ewing et al.Genome Research,1998,8,175〜185、およびEwing et al.,Genome Research、1998、8、186〜194でなされており、その開示は引用により本文書に全文を組み込む。
【0130】
3.色素標識
オリゴヌクレオチドと変性オリゴヌクレオチドに付着する色素標識は、合成する、あるいは商業的に入手する(たとえばOperon Biotechnologies、Huntsville、Alabama)ことができる。蛍光励起用途に多数の色素(50超)が入手可能である。これらの色素は、フルオレセイン、ローダミンAlexaFluor、Biodipy、Coumarin、およびCyanine色素族からの色素を含む。さらに、失活剤も、背景蛍光を最小限にするため、オリゴ配列の標識化に利用可能である。410nm(カスケードブルー)〜775nm(Alexa Fluor 750)の発光最大値を有する色素が入手可能であり、使用することができる。500nm〜700nmの色素は、可視スペクトル内にあり、従来の光電子増倍管を用いて検出できるという利点を有する。入手可能な色素の範囲が広いことで、検出範囲全体に広がる発光波長を有する色素セットを選択できる。多数の色素を区別できる検出システムは、フローサイトメトリー用途として報告されている(Perfetto et al.,Nat.Rev.Immunol.2004.4、648〜55およびRobinson et al.,Proc of SPIE 2005,5692,359〜365を参照)。
【0131】
蛍光色素は、ピーク発光波長から青にシフトした通常20〜50nmのピーク励起波長を有する。その結果、広範囲の発光波長全体にわたる色素の使用は、発光波長範囲全体で効率的な色素の励起を達成する励起波長を伴う複数の励起源の使用を必要とする。もしくは、単独の発光波長を有する単独のレーザーが当該の色素全部を励起するために使用できるように、エネルギー転移色素を利用することができる。これは、色素標識にエネルギー転移成分を付属することによって達成される。通常、この成分は、光源(たとえばレーザ)の励起波長に匹敵する吸収波長を有する別の蛍光色素である。エミッタに近接してこの吸収体を配置することで、吸収されたエネルギーを吸収体からエミッタに転移させて、長波長色素のより効率的な励起を可能とする(Ju et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1995,92,4347〜51)。
色素標識化されたジデオキシヌクレオチドが、Perkin Elmer(Waltham,MA)から入手可能である。
【0132】
B.実施例
実施例5.核酸の6色分離および検出
以下の実施例は、6つの蛍光色素で標識された核酸フラグメントの分離および検出を示し、分光器/多要素励起/検出システムの色解像度機能を実証する。DNAフラグメントを、多重化PCR増幅反応において蛍光色素標識化プライマーを適用することによって、6−FAM、VIC、NED、PET色素で標識化した。この反応では、1ngのヒトゲノムDNA(9947A)を、メーカーの推奨した条件に従い(AmpFISTR Identifiler,Applied Biosystems)、25μLの反応で増幅した。2.7μLのPCR産物を除去し、0.3μLのGS500−LIZサイジングスタンダード(Applied Biosystems)および0.3μLのHD400−ROXサイジングスタンダードと混合した。HiDi(Applied Biosystems)を計13μLに追加し、そのサンプルを分離バイオチップのサンプルウェルに挿入して、電気泳動に付した。
【0133】
Genebenchを使用するDNAの電気泳動分離は、一連の4つの動作:予備電気泳動、装填、注入、および分離から成る。これらの動作は、50℃の一定温度に加熱されるマイクロ流体バイオチップ上で実行される。バイオチップは、分離および検出並列のための16チャネルシステムを含み、それぞれがインジェクタチャネルおよび分離チャネルから成る。分析用DNAを、分離チャネルに沿ってふるい分けマトリックスを通じてDNAの電気泳動移動により分離する。バイオチップの分離長は160〜180mmである。
【0134】
第1のステップは、6分間、チャネル長に沿って160V/cmの電界を印加することによって達成される予備電気泳動である。分離バッファ(TTElX)を、陽極、陰極、および廃棄ウェルにピペットで移す。分析用サンプルをサンプルウェルにピペットで移し、18秒間、サンプルウェルから廃棄ウェルに175Vを印加し、その後、サンプルと廃棄ウェル全体に175V、72秒間陰極に390Vを印加して、サンプルを分離チャネルに装填する。サンプルの注入は、50V/cmおよび40V/cmをサンプルと廃棄ウェルにそれぞれ印加する間、分離チャネル長に沿って160V/cmの電界を印加することによって達成する。光学システムがDNAの分離バンドを検出する30分間、注入電圧パラメーターで分離を継続する。データ収集速度は5Hzであり、PMTゲインは〜800Vに設定される。
【0135】
増幅DNAを含む16のサンプルを、同時分離および検出のために装填した。PMTの32要素のそれぞれからの信号を時間の関数として収集し、電気泳動図を生成した。結果として生じる電気泳動図(図17)は、16レーンのうちの1つに関する励起/検出ウィンドウでのDNAフラグメントの存在に対応するピークを示す。さらに、各ピークに関する32要素PMTの各要素の相対信号強度は、DNAフラグメントと対応づけられる色素(2つ以上の色素が検出ウィンドウに存在する場合は複数の色素)のスペクトル内容に対応する。図18は、検出された色素の発光スペクトルと基板の背景スペクトルとを示す。基板の背景スペクトルは、各ピークからのスペクトルから差し引く。これを実行すると、結果として、6つの異なる色素スペクトルが識別される。6色素のスペクトルを同じ図面に重畳する。このデータと実際に公開された色素スペクトルとの比較が示す通り、色素の類縁は公開データに類似する。本実施例が実証するように、該システムは、反応溶液内の6色素を検出および区別することができる。このスペクトル出力は、色訂正マトリックスを生成し、検知器空間からの信号を色素空間表示に変換するために使用する(図19および20)。
【0136】
実施例6.核酸の8色素分離および検出
本実施例では、蛍光色素で標識化核酸の8色素分離および検出を示す。8遺伝子座のフォワードプライマーおよびリバースプライマー対配列は、公開配列から選択する(Butler et al.,J Forensic Sci 2003、48、1054〜64)。
【0137】
選択された遺伝子座はCSFlPO、FGA、THOl、TPOX、vWA、D3S1358、D5S818、およびD7S820であるが、文書に記載される遺伝子座ひいてはプライマー対のいずれも本実施例で使用することができる。プライマー対の各フォワードプライマーは、別々の蛍光色素で標識化する(Operon Biotechnologies,Huntsville、Alabama)。プライマーへの付着のために選択した色素は、Alexa Fluor色素488、430、555、568、594、633、647、およびTamraである。多数の他の色素も利用可能であり、標識として使用することもできる。各遺伝子座は、各自の色素で標識化されるフラグメントを有する反応溶液を得るため、PCR反応プロトコル(Butler、2003、上記文献)後に個々に増幅される。PCR反応用のテンプレートは、1ngのヒトゲノムDNAである(type 9947A from Promega,Madison WI)。
【0138】
各PCR反応を、PCR浄化カラムを通じて浄化することによって精製し、そこでプライマー(標識化プライマーおよび色素標識化プライマー)および酵素を除去し、PCRバッファをDI溶離液に置き換えた。浄化の結果として生じる産物は、DI水内の標識化DNAフラグメントの溶液である。色素標識化産物の浄化は、MinEluteTMカラムを用いてSmithのプロトコルに従う(Qiagen、Valencia、CA)。計8つの反応を実行する。8つの浄化PCR反応は、ある割合で全部混合され、等価の信号強度のピークを生成し、8つの異なる色素で標識化されたフラグメントを含む混合物を生成する。もしくは、8遺伝子座のプライマーを全部混合して、多重増幅用のマスタプライマー混合物を形成することもできる。
【0139】
この溶液は、実施例1に記載の機器とプロトコルで分離および検出する。スペクトル写真の格子は、8色素の発光が検知器素子の32画素全体に収まるように調節される。分析のために装填されるサンプルの量は、検出された信号が検出システムの動作範囲に収まるように調節すべきである。
【0140】
実施例7.分光器/多要素PMTシステム
以下の実施例は、具体的にはDNAテンプレート、この反応では0.1pmolのDNAテンプレートM13の配列を特定する図16の分光器/多要素PMTシステムでの標識化DNAフラグメントの分離/検出を示し、推奨される反応条件に従いM13配列決定プライマーをGE Amersham BigDyeTMシーケンシングキットで増幅した。反応混合物をエタノール沈澱により浄化し、13μLのDI水内に再懸濁させた。サンプルは、実施例5に記載の電気泳動分離条件に従い分離した。サンプル装填条件を変更し、サンプルウェルを渡って廃棄ウェルまで105秒間175Vを印加することによって実行した。図21はDNA配列の電気泳動図であり、着色トレースは使用する4色素それぞれのスペクトル最大値に対応する検知器素子を表す。得られた配列は、519塩基がPhred品質スコア>20で、435塩基がQV30の塩基であった(図22)。
【0141】
実施例8.2つの配列決定反応の産物の同時分離および検出
本実施例では、2つのDNAテンプレートのサイクル配列決定からのフラグメントの分離および検出を、単独の分離チャネルで実行する。サイクル配列決定反応は、以下のように、色素標識化ターミネーター反応または色素標識化プライマー反応のいずれかにより準備することができる。
【0142】
色素標識化ターミネーター反応:
当該テンプレート配列に適した配列決定プライマーと、サイクル配列決定バッファ、ポリメラーゼ、オリゴヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチド、および標識化ジデオキシヌクレオチドを含むDNA配列決定を実行する試薬とから成る各テンプレートフラグメントのサイクル配列決定反応を準備する。8つの異なる色素を標識化に使用する。第1のサイクル配列決定反応では、4つの色素標識化ジオデキシヌクレオチドの1セットを使用する。第2のサイクル配列決定反応では、(第1のサイクル配列決定反応で使用される発光波長と異なる発光波長の)4つの色素標識化ジデオキシヌクレオチドの別セットを使用する。各サイクル配列決定反応を、各反応を複数回熱サイクルするプロトコルに従い別個に実行する。各熱サイクルは、Sangerのプロトコルに応じた温度および時間での変性、アニール、および伸張ステップを含む(Sanger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1977,74,5463〜7を参照)。2つの反応からのサイクル配列決定産物を組み合わせて、2つのDNAテンプレートのそれぞれから計8つの独自の色素で標識化DNAフラグメントから成るサンプルを形成する。
【0143】
色素標識化プライマー反応:
あるいは、分離および検出用のサンプルを、プライマー 標識化サイクル配列決定を用いて作製することができる。DNAテンプレート毎に4つのサイクル配列決定反応を実行する。各反応は、標識化配列決定プライマーと、サイクル配列決定バッファ、ポリメラーゼ、オリゴヌクレオチドを含むDNA配列決定を実行する試薬とから成るサイクル配列決定反応である。さらに、各反応は、ジデオキシヌクレオチド(ddATP、ddTTP、ddCTP、またはddGTP)のうち1つと1つの標識化プライマーとを含む。プライマーと関連付けられる各色素は、発光波長が一意であり、サイクル配列決定溶液(ddATP、ddTTP、ddCTP、またはddGTP)中のジデオキシヌクレオチドと相互に関連付けられる。各サイクル配列決定反応は、各反応を複数回熱サイクルするプロトコルに従い別個に実行する。各熱サイクルは、Sangerのプロトコルに応じた温度および時間での変性、アニール、および伸張ステップを含む(Sanger,1977、上記文献を参照)。第2のDNAテンプレートのサイクル配列決定の場合、(第1のサイクル配列決定反応で使用される4色素の発光波長とは異なる発光波長の)4色素の別のセットを適用する。8つすべての反応の産物(それぞれが異なる色素)を一緒に混合して、2つのDNAテンプレートそれぞれからのDNAフラグメントから成るサンプルを形成する。
【0144】
分離および検出用サンプル:
各配列決定反応をエタノール沈澱によって浄化する。サンプルの分離および検出は実施例8のプロトコルに従う。分離および検出の結果、2つのテンプレートDNAフラグメントのそれぞれに対応する2つの異なるDNA配列が生成される。
【0145】
本実施例の方法は、4の倍数の色素を使用して、単独の分離チャネル内のDNA配列の複数の検出を可能とするように変更することができる(たとえば、3配列の同時検出のために12色素、4配列の同時検出のために16色素、5配列の同時検出のために20色素など)。最後に、標識化されたフラグメントの分離は、電気泳動に限定する必要はない。
【0146】
実施例9
単独チャネルにおける500以上の遺伝子座の分離および検出
DNAおよびRNA配列決定やフラグメントサイズ判定など、臨床診断に適用可能な核酸分析の用途がいくつかある。本実施例では、10色の同時検出の使用により、最大500の遺伝子座の照合を可能とする。たとえば、病原菌を特定したり、あるいは1個人のゲノム内の多数の遺伝子座を特徴づけたりするために、多数のフラグメントのサイズ分析を利用することができる。出生前または着床前遺伝子診断の場合、現在、核型分析および蛍光組織原位置ハイブリダイゼーション(FISH)によって異数性を診断する。FISH研究では、1細胞につき2つの信号の存在は、所与の遺伝子座の2つのコピーが細胞内に存在することを示し、1つの信号は一染色体または部分的一染色体を示し、3つの信号は三染色体または部分的三染色体を示す。FISHは通常、細胞が正常な染色体対を含むか否かを査定するのに約10のプローブを利用する。このアプローチではゲノム全体を詳細に視ることはできないが、FISHによって正常とみなされる細胞に、FISHでは検出されない重大な異常を見出す可能性がある。
【0147】
本発明の教示は、全染色体全体に広く分散される約500の染色体座を査定することができる多色分離および検出を利用して、染色体構造のより詳細な分析を可能とする。本実施例では、約500の遺伝子座に関するプライマー対配列が公開配列から選択され、各遺伝子座は、単相体ゲノムにつき1つのコピーとして存在する。さらに、50のプライマー対10セットを、各セットがDNAフラグメントの対応セットを規定し、いずれのフラグメントも同一のサイズを持たないように選択する。セット毎に、プライマー対のフォワードプライマーは1つの蛍光色素で標識化され、2つのセットは同じ色素を共有しない。プライマーへの付着のために選択される色素は、Alexa Fluor色素488、430、555、568、594、633、647、680、700、およびTamraである。他の多数の色素も利用可能であり、標識として使用することができる。遺伝子座は、「METHODS FOR RAPID MULTIPLEXED AMPLIFICATION OF TARGET NUCLEIC ACIDS(標的核酸の迅速多重増幅の方法)」に記載の1つまたは複数の並列PCR反応で増幅させることができる、上記を参照。本文書に記載の方法を用いて、増幅されたプライマーを分離し検出する。単独の分離チャネルで、500フラグメントすべてを、10の色素のそれぞれに対して50ずつサイズにより正確に識別することができる。
【0148】
遺伝子座、色素、および分離チャネルの数は、所望の適用に基づき変化させることができる。所望すれば、より少ない数の色素標識を利用する、あるいは1標識につきより少ないDNAフラグメントを生成することによって、より少ない数のフラグメントを検出することができる。このようにして、所望に応じて、500未満、400未満、300未満、200未満、100未満、75未満、50未満、40未満、30未満、または20未満のフラグメントを検出することができる。1レーンにつき検出可能な最大数の遺伝子座は、検出可能な個々の色素(上述したように、数十が利用可能)の数を掛けた、分離システムの読出長と分解能(たとえば、20〜1500塩基対のDNAフラグメントの単一塩基対の分解能は、結果として何百ものフラグメントとなる)に基づく。したがって、何千もの遺伝子座を単独の分離チャネルで特定することができ、追加の色素が開発されるごとにその数は増大する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学検出器であって、
基板上の1または複数の検出位置を照射するために配置された1つ以上の光源;
基板上の検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1の光学エレメント;および
第1光学エレメントからの光を受容するために配置された光検出器であって、前記光検出器が、第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、かつ、分離された光の一部を検出エレメントに提供するように配置された波長分散エレメントを含む光検出器を備え、ここに、
検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が、1つ以上の生体分子を標識した少なくとも6つの染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク発光波長を有する、光学検出器。
【請求項2】
前記生体分子が核酸である請求項1に記載の光学検出器。
【請求項3】
前記核酸がDNAである請求項2に記載の光学検出器。
【請求項4】
前記光検出器が少なくとも8つの異なる染料からの蛍光を検出し、各染料が少なくとも2つの四染料含有サブセットのメンバーであって、前記サブセットが基板上の単一検出位置で少なくとも2つのDNA配列を識別可能であり、ここに、染料の数が4の倍数であり、検出されるDNA配列の数がその倍数に等しくて、異なる染料の各々が1つのサブセットだけに存在する、請求項3に記載の光学検出器。
【請求項5】
前記生体分子がタンパク質である請求項1に記載の光学検出器。
【請求項6】
少なくとも1つの光源がレーザーである請求項1に記載の光学検出器。
【請求項7】
各検出エレメントが紫外線光、可視光、赤外光、またはその組み合わせを検出可能である請求項1に記載の光学検出器。
【請求項8】
複数の検出位置の間で光源を逐次的に走査するミラーをさらに備える請求項1に記載の光学検出器。
【請求項9】
2次元光学検出器エレメントをさらに備え、前記エレメントが光学スペクトルを検出するために少なくとも2つの列を有し、第1列が第1の独立レーンの光学スペクトルを検出し、第2列が第2の独立レーンの光学スペクトルを検出する請求項1に記載の光学検出器。
【請求項10】
各検出エレメントが単一アノード光倍増管であり、
前記波長分散エレメントが第1光学エレメントからの光の一部を前記検出エレメントの各々に提供するように配置された1つまたは複数の二色性ミラーを含み、各二色性ミラーが独立に定めた光の波長を反射する請求項1に記載の光学検出器。
【請求項11】
バンドパスフィルターをさらに備え、各々独立に定めた光の波長が少なくとも1つの検出位置に存在する蛍光染料の蛍光放射最大値に本質的に対応する請求項10に記載の光学検出器。
【請求項12】
前記波長分散エレメントが、プリズム、回折格子、透過格子、スペクトルまたはホログラフ回折格子である請求項10に記載の光学検出器。
【請求項13】
生体分子の分離と検出のためのシステムであって、
基板上の1つまたは複数のチャネル中の複数の生体分子を同時に分離するためのコンポーネントであって、ここに、各チャネルが検出位置を含むコンポーネント;
基板上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;
検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および
第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、前記光検出器は、前記光検出器が第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、分離された光の一部を検出エレメントに提供するように配置された波長分散エレメントを備え、ここに、
前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上の生体分子を標識する少なくとも6染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク発光波長を有する光検出器を備える、システム。
【請求項14】
前記生体分子が核酸である請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記核酸がDNAである請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記光検出器が少なくとも8つの異なる染料からの蛍光を検出し、各染料が少なくとも2つの四染料含有サブセットのメンバーであって、前記サブセットが基板上の単一検出位置で少なくとも2つのDNA配列を識別可能であり、ここに、染料の数が4の倍数であり、検出されるDNA配列の数がその倍数に等しくて、異なる染料の各々が1つのサブセットだけに存在する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記生体分子がタンパク質である請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記生体分子が独立に蛍光染料を含み、各独自の光学スペクトルが独自の蛍光最大値を含む請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記コンポーネントが電気泳動デバイスである請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記光源がレーザーである請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
各検出エレメントが紫外線光、可視光、赤外光、またはその組み合わせを検出可能である請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
複数の検出位置の間で光源を逐次的に走査するミラーをさらに備える請求項13に記載の光学検出器。
【請求項23】
各検出エレメントが単一アノード光倍増管であり、
前記波長分散エレメントが第1光学エレメントからの光の一部を前記検出エレメントの各々に提供するように配置された1つまたは複数の二色性ミラーを含み、各二色性ミラーが独立に定めた光の波長を反射する請求項13に記載のシステム。
【請求項24】
バンドパスフィルターをさらに備え、各々独立に定めた光の波長が少なくとも1つの検出位置に存在する蛍光染料の蛍光放射最大値に本質的に対応する請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
線形多重アノード光倍増管が前記検出エレメントを備える請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記波長分散エレメントが、プリズム、回折格子、透過格子、スペクトルまたはホログラフ回折格子である請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
複数の生体分子を分離し検出する方法であって、
基板上の1つまたは複数のマイクロ流体チャネル中に1つまたは複数の分析サンプルを提供し、各マイクロ流体チャネルが検出位置を含み、ここに、各分析サンプルが独立に複数の生体分子を含み、各々が独立に少なくとも6染料の1つで標識され、各染料が独自のピーク波長を有すること;
各マイクロ流体チャネル中の複数の標識された生体分子を同時に分離すること;および
各マイクロ流体チャネル中の複数の分離された標的分析物を、
(i)各検出位置を光源で照射し;
(ii)核検出位置から放射された光を収集し;
(iii)収集された光を光検出器に導き;
(iv)収集された光を光波長によって分離し;ついで、
(v)1つ以上の生体分子を標識した少なくとも6染料からの蛍光を同時に検出し、各染料が独自のピーク波長を有することによって、検出すること、
を含む方法。
【請求項28】
前記分離することが前記複数のマイクロ流体チャネルに電位を印加することによって行われる請求項27に記載の方法。
【請求項29】
各検出位置が逐次的に照射される請求項27に記載の方法。
【請求項30】
各検出位置が同時に照射される請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記染料が、各々独立に約450nm〜約1500nmの範囲の波長で蛍光最大値を有する請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記標的分析物が核酸フラグメントを含む請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記核酸フラグメントが、1つ以上の核酸増幅反応の産物であり、蛍光染料がプライマーに付着されている請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記核酸フラグメントが1つ以上のSanger配列決定反応の産物であり、蛍光染料がジデオキシヌクレオチド・ターミネーターに付着されている請求項32に記載の方法。
【請求項35】
各検出エレメントが蛍光染料の1つを検出するように適合される請求項27に記載の方法。
【請求項36】
集積化されたバイオチップシステムであって、
(a)1つまたは複数のマイクロ流体システムを含むバイオチップであって、各マイクロ流体システムが分離チャンバーにマイクロ流体的に連絡する第1反応チャンバーを含み、ここに、
第1反応チャンバーが、
(i)核酸抽出、
(ii)核酸精製、
(iii)予備核酸増幅清浄化、
(iv)核酸増幅、
(v)後核酸増幅清浄化、
(vi)予備核酸配列決定清浄化、
(vii)核酸配列、
(viii)後核酸配列決定清浄化、
(ix)逆転写、
(x)予備逆転写清浄化、
(xi)後逆転写清浄化、
(xii)核酸ライゲーション、
(xiii)核酸ハイブリダイゼーション、または
(xiv)定量化
に適合され、
前記分離チャンバーが検出位置を含むバイオチップ;および
(b)分離および検出システムであって、
(i)前記分離チャンバー中の複数の標的分析物を同時に分離するための分離エレメント;
(ii)前記バイオチップ上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;
(iii)前記検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および
(iv)前記第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、ここに、前記光検出器が、前記第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、前記分離された光の一部を少なくとも6つの検出エレメントに提供する波長分散エレメントを含み、ここに、
前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上の生体分子を標識する少なくとも6染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク波長を有する光検出器、
を備えるバイオチップシステム。
【請求項37】
集積化されたバイオチップシステムであって、
(a)1つまたは複数のマイクロ流体システムを含むバイオチップであって、各マイクロ流体システムが分離チャンバーにマイクロ流体的に連絡する第1反応チャンバーを含み、ここに、
第1反応チャンバーが、
(i)核酸抽出、
(ii)核酸精製、
(iii)予備核酸増幅清浄化、
(iv)核酸増幅、
(v)後核酸増幅清浄化、
(vi)予備核酸配列決定清浄化、
(vii)核酸配列、
(viii)後核酸配列決定清浄化、
(ix)逆転写、
(x)予備逆転写清浄化、
(xi)後逆転写清浄化、
(xii)核酸ライゲーション、
(xiii)核酸ハイブリダイゼーション、または
(xiv)定量化
に適合され、
前記分離チャンバーが検出位置を含むバイオチップ;および
(b)分離および検出システムであって、
(i)前記分離チャンバー中のDNAを含む複数の生体分子を同時に分離するための分離エレメント;
(ii)前記バイオチップ上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;
(iii)前記検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および
(iv)前記第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、ここに、前記光検出器が、前記第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、前記分離された光の一部を少なくとも6つの検出エレメントに提供する波長分散エレメントを含み、ここに、
前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上のDNA配列を標識する少なくとも8染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク波長を有し、各染料が少なくとも2つの四染料含有サブセットのメンバーであって、前記サブセットが基板上の単一検出位置で少なくとも2つのDNA配列を識別可能であり、ここに、染料の数が4の倍数であり、検出されるDNA配列の数がその倍数に等しくて、異なる染料の各々が1つのサブセットだけに存在する、光検出器、
を備えるバイオチップシステム。
【請求項38】
前記第1反応チャンバーが核酸抽出に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項39】
前記第1反応チャンバーが核酸精製に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項40】
前記第1反応チャンバーが核酸増幅に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項41】
前記第1反応チャンバーが清浄化に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項42】
前記第1反応チャンバーが核酸配列に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項43】
前記第1反応チャンバーが逆転写に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項44】
前記第1反応チャンバーが核酸ライゲーションに適合するようにされた請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項45】
前記第1反応チャンバーが核酸ハイブリダイゼーションに適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項46】
前記第1反応チャンバーが定量化に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項1】
光学検出器であって、
基板上の1または複数の検出位置を照射するために配置された1つ以上の光源;
基板上の検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1の光学エレメント;および
第1光学エレメントからの光を受容するために配置された光検出器であって、前記光検出器が、第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、かつ、分離された光の一部を検出エレメントに提供するように配置された波長分散エレメントを含む光検出器を備え、ここに、
検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が、1つ以上の生体分子を標識した少なくとも6つの染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク発光波長を有する、光学検出器。
【請求項2】
前記生体分子が核酸である請求項1に記載の光学検出器。
【請求項3】
前記核酸がDNAである請求項2に記載の光学検出器。
【請求項4】
前記光検出器が少なくとも8つの異なる染料からの蛍光を検出し、各染料が少なくとも2つの四染料含有サブセットのメンバーであって、前記サブセットが基板上の単一検出位置で少なくとも2つのDNA配列を識別可能であり、ここに、染料の数が4の倍数であり、検出されるDNA配列の数がその倍数に等しくて、異なる染料の各々が1つのサブセットだけに存在する、請求項3に記載の光学検出器。
【請求項5】
前記生体分子がタンパク質である請求項1に記載の光学検出器。
【請求項6】
少なくとも1つの光源がレーザーである請求項1に記載の光学検出器。
【請求項7】
各検出エレメントが紫外線光、可視光、赤外光、またはその組み合わせを検出可能である請求項1に記載の光学検出器。
【請求項8】
複数の検出位置の間で光源を逐次的に走査するミラーをさらに備える請求項1に記載の光学検出器。
【請求項9】
2次元光学検出器エレメントをさらに備え、前記エレメントが光学スペクトルを検出するために少なくとも2つの列を有し、第1列が第1の独立レーンの光学スペクトルを検出し、第2列が第2の独立レーンの光学スペクトルを検出する請求項1に記載の光学検出器。
【請求項10】
各検出エレメントが単一アノード光倍増管であり、
前記波長分散エレメントが第1光学エレメントからの光の一部を前記検出エレメントの各々に提供するように配置された1つまたは複数の二色性ミラーを含み、各二色性ミラーが独立に定めた光の波長を反射する請求項1に記載の光学検出器。
【請求項11】
バンドパスフィルターをさらに備え、各々独立に定めた光の波長が少なくとも1つの検出位置に存在する蛍光染料の蛍光放射最大値に本質的に対応する請求項10に記載の光学検出器。
【請求項12】
前記波長分散エレメントが、プリズム、回折格子、透過格子、スペクトルまたはホログラフ回折格子である請求項10に記載の光学検出器。
【請求項13】
生体分子の分離と検出のためのシステムであって、
基板上の1つまたは複数のチャネル中の複数の生体分子を同時に分離するためのコンポーネントであって、ここに、各チャネルが検出位置を含むコンポーネント;
基板上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;
検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および
第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、前記光検出器は、前記光検出器が第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、分離された光の一部を検出エレメントに提供するように配置された波長分散エレメントを備え、ここに、
前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上の生体分子を標識する少なくとも6染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク発光波長を有する光検出器を備える、システム。
【請求項14】
前記生体分子が核酸である請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記核酸がDNAである請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記光検出器が少なくとも8つの異なる染料からの蛍光を検出し、各染料が少なくとも2つの四染料含有サブセットのメンバーであって、前記サブセットが基板上の単一検出位置で少なくとも2つのDNA配列を識別可能であり、ここに、染料の数が4の倍数であり、検出されるDNA配列の数がその倍数に等しくて、異なる染料の各々が1つのサブセットだけに存在する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記生体分子がタンパク質である請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記生体分子が独立に蛍光染料を含み、各独自の光学スペクトルが独自の蛍光最大値を含む請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記コンポーネントが電気泳動デバイスである請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記光源がレーザーである請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
各検出エレメントが紫外線光、可視光、赤外光、またはその組み合わせを検出可能である請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
複数の検出位置の間で光源を逐次的に走査するミラーをさらに備える請求項13に記載の光学検出器。
【請求項23】
各検出エレメントが単一アノード光倍増管であり、
前記波長分散エレメントが第1光学エレメントからの光の一部を前記検出エレメントの各々に提供するように配置された1つまたは複数の二色性ミラーを含み、各二色性ミラーが独立に定めた光の波長を反射する請求項13に記載のシステム。
【請求項24】
バンドパスフィルターをさらに備え、各々独立に定めた光の波長が少なくとも1つの検出位置に存在する蛍光染料の蛍光放射最大値に本質的に対応する請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
線形多重アノード光倍増管が前記検出エレメントを備える請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記波長分散エレメントが、プリズム、回折格子、透過格子、スペクトルまたはホログラフ回折格子である請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
複数の生体分子を分離し検出する方法であって、
基板上の1つまたは複数のマイクロ流体チャネル中に1つまたは複数の分析サンプルを提供し、各マイクロ流体チャネルが検出位置を含み、ここに、各分析サンプルが独立に複数の生体分子を含み、各々が独立に少なくとも6染料の1つで標識され、各染料が独自のピーク波長を有すること;
各マイクロ流体チャネル中の複数の標識された生体分子を同時に分離すること;および
各マイクロ流体チャネル中の複数の分離された標的分析物を、
(i)各検出位置を光源で照射し;
(ii)核検出位置から放射された光を収集し;
(iii)収集された光を光検出器に導き;
(iv)収集された光を光波長によって分離し;ついで、
(v)1つ以上の生体分子を標識した少なくとも6染料からの蛍光を同時に検出し、各染料が独自のピーク波長を有することによって、検出すること、
を含む方法。
【請求項28】
前記分離することが前記複数のマイクロ流体チャネルに電位を印加することによって行われる請求項27に記載の方法。
【請求項29】
各検出位置が逐次的に照射される請求項27に記載の方法。
【請求項30】
各検出位置が同時に照射される請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記染料が、各々独立に約450nm〜約1500nmの範囲の波長で蛍光最大値を有する請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記標的分析物が核酸フラグメントを含む請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記核酸フラグメントが、1つ以上の核酸増幅反応の産物であり、蛍光染料がプライマーに付着されている請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記核酸フラグメントが1つ以上のSanger配列決定反応の産物であり、蛍光染料がジデオキシヌクレオチド・ターミネーターに付着されている請求項32に記載の方法。
【請求項35】
各検出エレメントが蛍光染料の1つを検出するように適合される請求項27に記載の方法。
【請求項36】
集積化されたバイオチップシステムであって、
(a)1つまたは複数のマイクロ流体システムを含むバイオチップであって、各マイクロ流体システムが分離チャンバーにマイクロ流体的に連絡する第1反応チャンバーを含み、ここに、
第1反応チャンバーが、
(i)核酸抽出、
(ii)核酸精製、
(iii)予備核酸増幅清浄化、
(iv)核酸増幅、
(v)後核酸増幅清浄化、
(vi)予備核酸配列決定清浄化、
(vii)核酸配列、
(viii)後核酸配列決定清浄化、
(ix)逆転写、
(x)予備逆転写清浄化、
(xi)後逆転写清浄化、
(xii)核酸ライゲーション、
(xiii)核酸ハイブリダイゼーション、または
(xiv)定量化
に適合され、
前記分離チャンバーが検出位置を含むバイオチップ;および
(b)分離および検出システムであって、
(i)前記分離チャンバー中の複数の標的分析物を同時に分離するための分離エレメント;
(ii)前記バイオチップ上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;
(iii)前記検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および
(iv)前記第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、ここに、前記光検出器が、前記第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、前記分離された光の一部を少なくとも6つの検出エレメントに提供する波長分散エレメントを含み、ここに、
前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上の生体分子を標識する少なくとも6染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク波長を有する光検出器、
を備えるバイオチップシステム。
【請求項37】
集積化されたバイオチップシステムであって、
(a)1つまたは複数のマイクロ流体システムを含むバイオチップであって、各マイクロ流体システムが分離チャンバーにマイクロ流体的に連絡する第1反応チャンバーを含み、ここに、
第1反応チャンバーが、
(i)核酸抽出、
(ii)核酸精製、
(iii)予備核酸増幅清浄化、
(iv)核酸増幅、
(v)後核酸増幅清浄化、
(vi)予備核酸配列決定清浄化、
(vii)核酸配列、
(viii)後核酸配列決定清浄化、
(ix)逆転写、
(x)予備逆転写清浄化、
(xi)後逆転写清浄化、
(xii)核酸ライゲーション、
(xiii)核酸ハイブリダイゼーション、または
(xiv)定量化
に適合され、
前記分離チャンバーが検出位置を含むバイオチップ;および
(b)分離および検出システムであって、
(i)前記分離チャンバー中のDNAを含む複数の生体分子を同時に分離するための分離エレメント;
(ii)前記バイオチップ上の検出位置を照射するように配置された1つ以上の光源;
(iii)前記検出位置から放射された光を収集し導くために配置された1つまたは複数の第1光学エレメント;および
(iv)前記第1光学エレメントから導かれた光を受容するように配置された光検出器であって、ここに、前記光検出器が、前記第1光学エレメントからの光を光波長に従って分離し、前記分離された光の一部を少なくとも6つの検出エレメントに提供する波長分散エレメントを含み、ここに、
前記検出エレメントの各々が、前記検出エレメントの各々からの検出情報を同時に収集するための第1制御エレメントに連絡し、前記光検出器が1つ以上のDNA配列を標識する少なくとも8染料からの蛍光を検出し、各染料が独自のピーク波長を有し、各染料が少なくとも2つの四染料含有サブセットのメンバーであって、前記サブセットが基板上の単一検出位置で少なくとも2つのDNA配列を識別可能であり、ここに、染料の数が4の倍数であり、検出されるDNA配列の数がその倍数に等しくて、異なる染料の各々が1つのサブセットだけに存在する、光検出器、
を備えるバイオチップシステム。
【請求項38】
前記第1反応チャンバーが核酸抽出に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項39】
前記第1反応チャンバーが核酸精製に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項40】
前記第1反応チャンバーが核酸増幅に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項41】
前記第1反応チャンバーが清浄化に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項42】
前記第1反応チャンバーが核酸配列に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項43】
前記第1反応チャンバーが逆転写に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項44】
前記第1反応チャンバーが核酸ライゲーションに適合するようにされた請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項45】
前記第1反応チャンバーが核酸ハイブリダイゼーションに適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【請求項46】
前記第1反応チャンバーが定量化に適合された請求項36に記載の集積化されたバイオチップシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8−1】
【図8−2】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図8H】
【図8I】
【図8J】
【図9−1】
【図9−2】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図9J】
【図9K】
【図10】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図12−4】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図12G】
【図12H】
【図12I】
【図12J】
【図12K】
【図12L】
【図12M】
【図12N】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図18−1】
【図18−2】
【図19−1】
【図19−2】
【図20−1】
【図20−2】
【図21−1】
【図21−2】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8−1】
【図8−2】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図8H】
【図8I】
【図8J】
【図9−1】
【図9−2】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図9J】
【図9K】
【図10】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図12−4】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図12G】
【図12H】
【図12I】
【図12J】
【図12K】
【図12L】
【図12M】
【図12N】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図18−1】
【図18−2】
【図19−1】
【図19−2】
【図20−1】
【図20−2】
【図21−1】
【図21−2】
【図22】
【公表番号】特表2010−523115(P2010−523115A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502152(P2010−502152)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/004462
【国際公開番号】WO2008/124104
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(507382050)ネットワーク・バイオシステムズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/004462
【国際公開番号】WO2008/124104
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(507382050)ネットワーク・バイオシステムズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
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