説明

集積電気配列コネクタ

【課題】絶縁性材料から成る絶縁領域の所望の箇所に選択的に光を照射して、前記絶縁領域中に存在する複数の孤立した導電領域を形成することによって、絶縁領域と導電領域とが境界調整され、導電領域のピッチが狭く、サイズが小さく、環境温度の変化に強く、安定した性能を発揮することができるようにする。
【解決手段】絶縁性材料から成る絶縁領域と、該絶縁領域内に存在する複数の孤立した導電領域とを有する集積電気配列コネクタであって、前記導電領域は、前記絶縁領域に選択的に光を照射して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積電気配列コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル通信システム、特に、無線デジタル通信システムの発展に伴い、デジタル通信システムにおいて使用される電気素子及び電子素子は、性能が向上するとともに、構造が複雑化している。その結果、帯域幅が広く、サイズが小さい電気素子及び電子素子が製造されている。そして、このような小型の電気素子又は電子素子同士を接続するために、サイズが小さく、信頼性の高い電気コネクタが必要とされている。
【0003】
従来、電気コネクタは、2個の電気素子又は電子素子を接続するために、多数の電気配線を利用する。この場合、電気コネクタの電極は、通常、2つのグループから成り、各グループの幾何学的パターンが画一的に繰返されている。このような電極のグループは電極配列又は電極アレイと呼ばれ、該電極アレイが含まれている電気コネクタが電気配列コネクタ又は電気アレイコネクタと呼ばれる。また、電極アレイにおける電極と電極との間の幅が電極ピッチと呼ばれる。
【0004】
電気配列コネクタが正しく2個の電気素子又は電子素子を接続するためには、電気配列コネクタの一方の電極グループと他方の電極グループとの境界を調整し、対応する電極同士を接触させる必要がある。すなわち、短絡あるいはオープンといったコネクタの機能不全を起こさないため、一方の電極グループの電極の配列、形状及び大きさ等を調整するとともに、他方の電極グループもそれに合せ調整する必要がある(以下、このような電極の配列、形状及び大きさ等を調整することを境界調整という)。この条件が満足されると、電気信号は、一方の電極グループの電極から他方の電極グループの電極へ流れることができる。
【0005】
従来の電気配列コネクタにおいて、電極及びハウジングは、それぞれ、金属及び電気的絶縁性を備えるプラスチックによって形成される。このように、材料が相違するので、電極の温度膨張係数とハウジングの温度膨張係数とは同一ではない。そのため、電気配列コネクタの環境温度が変化すると、電極グループの境界に影響があり、その結果、電気配列コネクタの機能が不全になる可能性がある。さらに、電極とハウジングとが物理的に異なる部分であるため、電気配列コネクタの接続及び分離の繰返しが電極グループの境界に影響を及ぼし、その結果、電気配列コネクタの機能が不全になる可能性がある。
【0006】
電気配列コネクタの基本的な幾何学的フォームを維持しながら、電気配列コネクタの全体的なサイズを減少するためには、電極ピッチを狭くすることが1つの方法である。しかし、電極ピッチを狭くすると、電極グループの境界調整の公差が付随的に小さくなるという問題があった。
【0007】
もっとも、電気素子又は電子素子を実装する基板において、電気素子又は電子素子の小型化に対応して、金属やプラスチック以外の材料を使用して配線等を微細化する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
図4は従来の基板上に配線を形成する方法を示す図である。
【0009】
図において、800は配線基板であり、ベース基板802及び該ベース基板802上に積層された相変化層801を有する。ここで、該相変化層801は、カルコゲナイド(chalcogenide)化合物から成る半導体である。そして、半導体レーザ805のレーザ光806を相変化層801の所望の箇所に照射することによって、前記半導体を相変化させ、導電性線路としてビア803を形成することができる。該ビア803の直径は、例えば、1〔μm〕以下にすることができる。
【特許文献1】特開2005−294811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記カルコゲナイド化合物を使用する方法においては、配線基板800にビア803等の配線を形成する技術は開示されていても、電気配列コネクタを製造する技術は何ら開示されていない。
【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、絶縁性材料から成る絶縁領域の所望の箇所に選択的に光を照射して、前記絶縁領域中に存在する複数の孤立した導電領域を形成することによって、絶縁領域と導電領域とが境界調整され、導電領域のピッチが狭く、サイズが小さく、環境温度の変化に強く、安定した性能を発揮することができる集積電気配列コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのために、本発明の集積電気配列コネクタにおいては、絶縁性材料から成る絶縁領域と、該絶縁領域中に存在する複数の孤立した導電領域とを有する集積電気配列コネクタであって、前記導電領域は、前記絶縁領域に選択的に光を照射して形成される。
【0013】
本発明の他の集積電気配列コネクタにおいては、さらに、前記絶縁領域は、光が照射されることによって相変化を起こして絶縁性から導電性に変化する相変化材料から成る。
【0014】
本発明の更に他の集積電気配列コネクタにおいては、さらに、前記絶縁領域は、カルコゲン化合物重合体から成る。
【0015】
本発明の更に他の集積電気配列コネクタにおいては、さらに、前記絶縁領域は、相手側コネクタと当接する当接面を備える板状の領域であり、前記導電領域は、前記絶縁領域の厚さ方向に延在する柱状の領域であり、少なくとも一方の端面が前記当接面に露出する。
【0016】
本発明の更に他の集積電気配列コネクタにおいては、さらに、前記絶縁領域は、光が照射されることによって還元されて絶縁性から導電性に変化する酸化材料から成る。
【0017】
本発明の更に他の集積電気配列コネクタにおいては、さらに、前記絶縁領域は、アルミナから成る。
【0018】
本発明の更に他の集積電気配列コネクタにおいては、さらに、前記絶縁領域は板状の領域であり、前記導電領域は、前記絶縁領域の一方の面に沿って延在する帯状の領域であり、導電性金属層が上面に形成される。
【0019】
本発明の更に他の集積電気配列コネクタにおいては、さらに、前記導電領域は、一方の端面が前記当接面に露出するとともに、他方の端面が前記当接面と対向する背面に露出し、前記他方の端面に電極が接続されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、集積電気配列コネクタは、絶縁性材料から成る絶縁領域の所望の箇所に選択的に光を照射して形成された前記絶縁領域中に存在する複数の孤立した導電領域を有する。これにより、絶縁領域と導電領域とが精度よく境界調整され、導電領域のピッチが狭く、サイズが小さく、環境温度の変化に強く、安定した性能を発揮する集積電気配列コネクタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態における集積電気配列コネクタを示す斜視図である。
【0023】
図において、1A及び1Bは本実施の形態における集積電気配列コネクタとしての第1コネクタ及び第2コネクタであり、例えば、図示されない電気素子又は電子素子同士を電気的に接続するために使用されるものであるが、電気素子又は電子素子と電気ケーブルとを電気的に接続するために使用されてもよく、電気素子又は電子素子と回路基板等の基板とを電気的に接続するために使用されてもよく、電気ケーブル同士を電気的に接続するために使用されてもよく、いかなる用途に使用されるものであってもよい。そして、前記第1コネクタ1Aと第2コネクタ1Bとは互いに双方の相手側コネクタとして機能する。
【0024】
なお、本実施の形態において、第1コネクタ1Aと第2コネクタ1Bとは互いに同様の構造を有し、第1コネクタ1Aに付随するものと第2コネクタ1Bに付随するものとも互いに同様の構造を有するので、第1コネクタ1A及びそれに付随するものに「第1」の呼称を付すとともに符号の末尾に「A」の文字を追加し、第2コネクタ1B及びそれに付随するものに「第2」の呼称を付すとともに符号の末尾に「B」の文字を追加することによって識別を行うこととする。また、第1コネクタ1A及びそれに付随するものと第2コネクタ1B及びそれに付随するものとを識別することなく説明する場合には、「第1」及び「第2」の呼称並びに「A」及び「B」の文字を省略することとする。
【0025】
さらに、本実施の形態において、コネクタ1の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、コネクタ1が図に示される姿勢である場合に適切であるが、コネクタ1の姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0026】
ここで、11は絶縁性材料から成る絶縁領域としてのハウジング部であり、61は該ハウジング部11中に形成された導電領域としてのコンタクト部であり、62は金属等の導電性材料から成る電極であり、コンタクト部61に接続されている。そして、各電極62には電気素子、電子素子、電気ケーブル、基板等の備える導電線の各々が接続される。
【0027】
図示される例において、ハウジング部11は、矩(く)形の板状部材であるが、いかなる形状の部材であってもよい。ここでは、ハウジング部11が、厚さが約5〔mm〕以下、好ましくは、100〔μm〕程度の板状部材であるものとする。また、ハウジング部11において、互いに対向する面は当接面66であり、反対側の面は背面67である。そして、コンタクト部61は、ハウジング部11を厚さ方向に延在して貫通するように形成された円柱状の領域であり、その一方の端面が当接面66に露出して該当接面66と面一となり、他方の端面が背面67に露出して該背面67と面一となっている。そして、コンタクト部61の背面67側の端面に電極62が接続されている。
【0028】
これにより、第1コネクタ1Aと第2コネクタ1Bとを相互に接近させ、第1コネクタ1Aの第1当接面66Aと第2コネクタ1Bの第2当接面66Bとを互いに当接させることによって、第1電極62Aに導電線が接続された電気素子、電子素子、電気ケーブル、基板等と、第2電極62Bに導電線が接続された電気素子、電子素子、電気ケーブル、基板等とを電気的に接続することができる。この場合、第1コネクタ1Aの第1コンタクト部61Aと第2コネクタ1Bの第2コンタクト部61Bとが互いに当接して電気的に接続される。
【0029】
本実施の形態において、前記ハウジング部11は、光が照射されることによって相変化を起こして絶縁性から導電性に変化する相変化材料から成り、具体的には、カルコゲン化合物重合体としてのカルコゲナイド半導体から成る。該カルコゲナイド半導体は、カルコゲン元素、すなわち、6族元素を少なくとも一種必須元素として含む合金である。そして、Te−Ge−Sn−Au系、Sn−Te−Se系のカルコゲナイド半導体は、光照射によって非結晶又は非晶質、すなわち、アモルファスと結晶との間で相変化を起こすことができる。また、Te−As−Ge−Si系では、例えば、加熱によって、非晶質の状態と結晶化された状態との間で相変化を起こすことができる。その他のカルコゲナイド半導体としては、Ge−Sb−Te系のものや、TeをベースにしてAs、Sbを添加したものがある。そして、二成分系のカルコゲナイド半導体としては、GaSb、InSb、InSe、Sb2 Te3 、GeTe等がある。また、三成分系のカルコゲナイド半導体としては、Ge2 Sb2 Te5 、InSbTe、GaSeTe、SnSb2 Te4 、InSbGe等がある。さらに、四成分系のカルコゲナイド半導体としては、AgInSbTe、(GeSn)SbTe、GeSb(SeTe)、Te81Ge15Sb2 2 等がある。本実施の形態においては、ハウジング部11の材料が、三成分系のカルコゲナイド半導体としてのGe2 Sb2 Te5 であるものとして説明する。そして、前記カルコゲナイド半導体は、ハウジング部11において非晶質の状態で絶縁性を示し、コンタクト部61においては結晶化された状態で導電性を示している。
【0030】
次に、前記コネクタ1を製造する方法について説明する。
【0031】
まず、初期状態において、ハウジング部11を構成するカルコゲナイド半導体は、非晶質の状態であって絶縁性であるものとする。そして、当接面66又は背面67の側からハウジング部11の所定の箇所、すなわち、コンタクト部61を形成する部位のみにレーザ光を選択的に照射する。この場合、レーザ光を照射する装置は、一般的にDVD(Digital Versatile Disk)レコーダ等に使用される半導体レーザ等であるが、いかなる種類のレーザ光照射装置であってもよい。
【0032】
そして、ハウジング部11を構成するカルコゲナイド半導体のうち、レーザ光が照射された部位のカルコゲナイド半導体が、非晶質から相変化して結晶化された状態となる。これにより、図示されるように、レーザ光が照射された部位が導電性のコンタクト部61となり、レーザ光が照射されなかった部位が絶縁性のハウジング部11となる。
【0033】
なお、コンタクト部61は、各々がハウジング部11中において孤立し、隣接するもの同士が互いに離間した状態となるのであれば、いかなる形状を有するものであってもよいが、図示される例においては、前述のように、ハウジング部11を厚さ方向に貫通するように形成された円柱状の形状を有している。また、コンタクト部61の数や配列も任意に設定することができるが、図示される例においては、9個であり、当接面66及び背面67において正方格子を形成するように配列されている。さらに、コンタクト部61の寸法は、任意に設定することができるが、例えば、半径が200〔μm〕であり、長さはハウジング部11の厚さと同一、すなわち、100〔μm〕程度となっている。さらに、隣接するコンタクト部61間の距離、すなわち、コンタクト部61のピッチは約200〔μm〕となっている。
【0034】
また、コンタクト部61を形成するために照射される光は、必ずしもレーザ光である必要はなく、コヒーレントでない光であってもよい。この場合、フォトリソグラフィの技術を応用してフォトマスク等を使用し、コンタクト部61を形成する部位のみに光を選択的に照射する。また、照射される光の波長は、いかなる波長であってもよく、例えば、紫外線〜赤外線のいずれの帯域であってもよいし、電子線であってもよい。
【0035】
これにより、図示されるように、絶縁性材料から成るハウジング部11の絶縁領域中に存在する複数、例えば、9個の孤立した導電領域としてのコンタクト部61を形成することができる。なお、コンタクト部61の背面67側の端面には、電極62が任意の接続手段によって接続される。
【0036】
次に、前記コネクタ1の抵抗について説明する。
【0037】
電気コネクタのフイギュア・オブ・メリット(Figure of Merit)として最も広く使用されている数値は、端子の動作抵抗Rd である。電気コネクタの目的は、電気素子又は電子素子を電気的に接続するため、つまり、接続された電気素子又は電子素子の間に電力を伝導するためであるから、理想的には、前記動作抵抗Rd は零である。もっとも、実際の場合、前記動作抵抗Rd の値は、電気コネクタの構造や用途に応じて様々に変化しているが、ほとんどの電気コネクタにおいては、前記動作抵抗Rd の値が数ミリ〔Ω〕から、大きくても約1〔Ω〕となっている。したがって、実用的な電気コネクタにおいて、前記動作抵抗Rd の最大値は、約1〔Ω〕であると言える。
【0038】
本実施の形態において、コネクタ1の端子としてのコンタクト部61は断面が円形の円柱状の形状を有する。そこで、コンタクト部61の半径、長さ及び電気伝導率を、各々、r、L、及びσとすると、コンタクト部61の動作抵抗Rd は、次の式(1)のように表される。
【0039】
【数1】


そして、コンタクト部61が前述のようにカルコゲナイド半導体としてのGe2 Sb2 Te5 から成るものであるところ、Ge2 Sb2 Te5 の電気伝導率σが約2000〔Ω-1-1〕であり、コンタクト部61の半径及び長さは200〔μm〕及び100〔μm〕であるから、コンタクト部61の動作抵抗Rd は、約0.8〔Ω〕となる。このことから、本実施の形態におけるコネクタ1は、実際的な電気コネクタであることが分かる。
【0040】
このように、本実施の形態において、コネクタ1のハウジング部11は、光が照射されることによって相変化を起こして絶縁性から導電性に変化する相変化材料から成り、該相変化材料から成る絶縁領域の所望の箇所に選択的に光を照射して、前記絶縁領域中に存在する複数の孤立した導電領域としてのコンタクト部61が形成される。これにより、ハウジング部11とコンタクト部61とが境界調整され、コンタクト部61のピッチが狭く、全体としてのサイズが小さいコネクタ1を得ることができる。すなわち、集積度の高い集積電気配列コネクタを得ることができる。
【0041】
また、ハウジング部11とコンタクト部61とが同一の材料から一体的に形成されているので、コネクタ1の環境温度が変化しても、ハウジング部11とコンタクト部61との境界に熱応力が加えられることがなく、ハウジング部11とコンタクト部61との境界が安定する。したがって、コネクタ1は、環境温度の変化に対して高い耐性を有し、安定した性能を発揮することができる。
【0042】
さらに、ハウジング部11の所望の箇所に選択的に光を照射するだけでコンタクト部61を形成することができるので、容易に、かつ、正確にコネクタ1を製造することができる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0044】
図2は本発明の第2の実施の形態における集積電気配列コネクタを製造する方法を示す図、図3は本発明の第2の実施の形態における集積電気配列コネクタを示す斜視図である。なお、図2おいて、(a)〜(c)は各製造工程を示している。
【0045】
本実施の形態においては、集積電気配列コネクタとしてのコネクタ2を製造する方法についてのみ説明する。
【0046】
図において、17は絶縁性材料から成る絶縁領域としてのハウジング部であり、具体的にはアルミナ、すなわち、Al2 3 から成る板状部材である。まず、前記ハウジング部17の一方の面(図における上面)にはカーボンペースト91が塗布される。そして、図2(a)に示されるように、該カーボンペースト91が塗布された面の側からハウジング部17の所定の部位のみに、光92を選択的に照射する。なお、該光92は、前記第1の実施の形態と同様に、レーザ光照射装置から選択的に照射されるレーザ光であってもよいし、いかなる波長であってもよく、例えば、紫外線〜赤外線のいずれの帯域であってもよいし、電子線であってもよい。そして、光92がレーザ光でない場合には、フォトリソグラフィの技術を応用してフォトマスク等を使用し、所定の部位のみに光92を選択的に照射する。
【0047】
これにより、図2(b)及び次の式(2)に示されるように、光92が照射された部位に導電性のアルミニウム、すなわち、Alから成る導電領域としてのコンタクト基礎部68が形成される。なお、図2(b)は、カーボンペースト91を除去した状態を示している。
2Al2 3 +3C+光力→4Al+3CO2 ・・・式(2)
ここで、前記コンタクト基礎部68は、光92を照射したことによって絶縁領域が変化して形成された導電領域であり、具体的にはAl2 3 が還元されてAlとなった領域である。そして、前記コンタクト基礎部68は、各々がハウジング部17中において孤立し、隣接するもの同士が互いに離間した状態となるのであれば、いかなる形状を有するものであってもよいが、図示される例においては、ハウジング部17の上面に沿って、図面に垂直な方向に延在するように形成された帯状の形状を有している。
【0048】
続いて、図2(c)に示されるように、前記コンタクト基礎部68の上面に導電性金属層としてのコンタクト上部69が形成される。該コンタクト上部69は、導電性の高い金、銅等の金属から成る導電領域であり、電解めっき、蒸着、スパッタリング等の方法によって形成され、前記コンタクト基礎部68の上面に付着させられる。したがって、前記コンタクト上部69も、コンタクト基礎部68と同様に、各々がハウジング部17中において孤立し、隣接するもの同士が互いに離間した状態となり、図示される例においては、図面に垂直な方向に延在するように形成された帯状の形状を有している。
【0049】
なお、前記コンタクト上部69は、いかなる種類の金属であってもよいが、導電性の高い金若しくは銅又はそれらの合金であることが望ましい。また、コンタクト上部69を形成する方法は、電解めっき、蒸着、スパッタリング等の方法に限定されるものではなく、いかなる方法であってもよい。
【0050】
図3に示されるように、本実施の形態におけるコネクタ2においては、コンタクト基礎部68及びコンタクト上部69は、当接面66に沿って延在し、隣接するもの同士が平行な帯状ないし棒状の形状を有する。
【0051】
そして、コンタクト上部69の任意の箇所に、図示されない電極が任意の接続手段によって接続される。これにより、コネクタ2を得ることができる。そして、前記電極を介して、電気素子、電子素子、電気ケーブル、基板等の導電線をコンタクト上部69に接続することができる。
【0052】
なお、本実施の形態において、相手側コネクタは、コネクタ2と同様のものであるので、その説明を省略する。
【0053】
このように、本実施の形態において、コネクタ2のハウジング部17は、光が照射されることによって還元されて絶縁性から導電性に変化する酸化材料から成り、該酸化材料から成る絶縁領域の所望の箇所に選択的に光を照射して、前記絶縁領域中に存在する複数の孤立した導電領域としてのコンタクト基礎部68が形成される。これにより、ハウジング部17とコンタクト基礎部68とが境界調整され、コンタクト部基礎66及びその上に形成されるコンタクト上部69のピッチが狭く、全体としてのサイズが小さいコネクタ2を得ることができる。すなわち、集積度の高い集積電気配列コネクタを得ることができる。
【0054】
また、ハウジング部17とコンタクト基礎部68とが同一の材料から一体的に形成されているので、コネクタ2の環境温度が変化しても、ハウジング部17とコンタクト基礎部68との境界に熱応力が加えられることがなく、ハウジング部17とコンタクト基礎部68との境界が安定する。したがって、コネクタ2は、環境温度の変化に対して高い耐性を有し、安定した性能を発揮することができる。
【0055】
さらに、ハウジング部17の一方の面にカーボンペースト91を塗布して所望の箇所に選択的に光を照射するだけでコンタクト基礎部68を形成することができるので、容易に、かつ、正確にコネクタ2を製造することができる。
【0056】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態における集積電気配列コネクタを示す斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態における集積電気配列コネクタを製造する方法を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における集積電気配列コネクタを示す斜視図である。
【図4】従来の基板上に配線を形成する方法を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1A、2A 第1コネクタ
1B、2B 第2コネクタ
2 コネクタ
11A 第1ハウジング部
11B 第2ハウジング部
17 ハウジング部
17A 第1ハウジング部
17B 第2ハウジング部
61A 第1コンタクト部
61B 第2コンタクト部
62A 第1電極
62B 第2電極
66A 第1当接面
66B 第2当接面
67A 第1背面
67B 第2背面
68 コンタクト基礎部
68A 第1コンタクト基礎部
68B 第2コンタクト基礎部
69 コンタクト上部
69A 第1コンタクト上部
69B 第2コンタクト上部
91 カーボンペースト
92 光
800 配線基板
801 相変化層
802 ベース基板
803 ビア
805 半導体レーザ
806 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)絶縁性材料から成る絶縁領域(11、17)と、
(b)該絶縁領域(11、17)中に存在する複数の孤立した導電領域(61、68)とを有する集積電気配列コネクタ(1、2)であって、
(c)前記導電領域(61、68)は、前記絶縁領域(11、17)に選択的に光を照射して形成されることを特徴とする集積電気配列コネクタ(1、2)。
【請求項2】
前記絶縁領域(11)は、光が照射されることによって相変化を起こして絶縁性から導電性に変化する相変化材料から成る請求項1に記載の集積電気配列コネクタ(1)。
【請求項3】
前記絶縁領域(11)は、カルコゲン化合物重合体から成る請求項1に記載の集積電気配列コネクタ(1)。
【請求項4】
(a)前記絶縁領域(11)は、相手側コネクタと当接する当接面(66)を備える板状の領域であり、
(b)前記導電領域(61)は、前記絶縁領域(11)の厚さ方向に延在する柱状の領域であり、少なくとも一方の端面が前記当接面(66)に露出する請求項1に記載の集積電気配列コネクタ(1)。
【請求項5】
前記絶縁領域(17)は、光が照射されることによって還元されて絶縁性から導電性に変化する酸化材料から成る請求項1に記載の集積電気配列コネクタ(2)。
【請求項6】
前記絶縁領域(17)は、アルミナから成る請求項1に記載の集積電気配列コネクタ(2)。
【請求項7】
(a)前記絶縁領域(17)は板状の領域であり、
(b)前記導電領域(68)は、前記絶縁領域(17)の一方の面に沿って延在する帯状の領域であり、導電性金属層(69)が上面に形成される請求項1に記載の集積電気配列コネクタ(2)。
【請求項8】
(a)前記導電領域(61)は、一方の端面が前記当接面(66)に露出するとともに、他方の端面が前記当接面(66)と対向する背面(67)に露出し、
(b)前記他方の端面に電極が接続されている請求項4に記載の集積電気配列コネクタ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−77904(P2008−77904A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253938(P2006−253938)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレーテッド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】