説明

集電体および非水系二次電池

【課題】安全性を向上させつつ、電池性能の低下を抑制することが可能な集電体を提供する。
【解決手段】この集電体(正極集電体11)は、樹脂層13を導電層14で挟んだ多層構造を有する集電体であって、その端部を2回以上同方向に折り返した折り返し領域Eを有しており、折り返し領域Eにおいて樹脂層13を挟む各導電層14が互いに電気的に接続されている。そして、この折り返し領域Eを形成する集電体端部の内面同士が、全面では接触していない状態(離間した状態、または、一部で接触した状態)とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電体および非水系二次電池に関し、特に、絶縁層を有する集電体およびその集電体を用いた非水系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は、高容量・高エネルギ密度を有し、かつ、貯蔵性能や充放電の繰り返し特性等にも優れるため、携帯機器などの民生機器に広く利用されている。また、近年では、環境問題や省エネルギに関する意識の高まりから、電力貯蔵用途や、電気自動車などの車載用途にリチウムイオン二次電池が利用されるようになってきている。
【0003】
一方、非水系二次電池は、そのエネルギ密度の高さ故に、過充電状態や高温環境下にさらされた状態においては、異常発熱や発火などの危険性が高い。そのため、非水系二次電池では、安全性に対する種々の対応策が講じられている。
【0004】
また、従来、異常発熱による発火を防止するために、多層構造を有する集電体を用いたリチウムイオン二次電池が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
上記特許文献1では、130℃〜170℃の低融点を持つ樹脂フィルム(絶縁層)の両面に金属層が形成された集電体を用いたリチウムイオン二次電池が提案されている。このリチウムイオン二次電池は、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生すると、低融点の樹脂フィルムが溶融し、この樹脂フィルムの溶融により、電極が破損される。これにより、電流がカットされるので、電池内部の温度上昇が抑制されて、発火が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−102711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、特許文献1で提案されている集電体は、非水系二次電池の安全対策としては非常に有効である。
【0008】
しかしながら、上記集電体は、絶縁性の樹脂フィルムの両面に金属層が形成された構成を有するため、たとえば、複数の電極が積層された積層型の非水系二次電池の場合には、配線引き出し用のタブ電極を集電体に接続する際に、電極同士の導通がとれなくなるという不都合がある。すなわち、タブ電極を、全ての電極と電気的に接続することが困難になるという不都合がある。これにより、電池性能が著しく低下するという問題点がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、安全性を向上させつつ、電池性能の低下を抑制することが可能な集電体および非水系二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による集電体は、絶縁層を導電層で挟んだ多層構造を有する集電体であって、その端部を2回以上同方向に折り返した折り返し領域を有し、この折り返し領域において絶縁層を挟む各導電層が互いに電気的に接続されている。そして、上記折り返し領域を形成する集電体端部の内面同士が、離間している、または、一部で接触している。
【0011】
この第1の局面による集電体では、上記のように、集電体端部を2回以上同方向に折り返した折り返し領域を有することによって、この折り返し領域において絶縁層を挟む各導電層を互いに電気的に接続することができる。このため、このような集電体を用いて電極を形成することによって、電極同士(導電層同士)の導通をとることができる。これにより、電池性能の低下を抑制することができる。
【0012】
また、第1の局面では、上記折り返し領域を形成する集電体端部の内面同士が、離間した状態、または、一部で接触した状態とされている。換言すると、折り返し領域を形成する集電体端部の内面同士が全面では接触していない状態とされている。そのため、集電体端部を折り返した際に、集電体の折り返し部分(折り返し領域)に加わる負荷を軽減することができる。これにより、集電体の導電層に亀裂や断裂などが生じるのを抑制することができる。すなわち、集電体の導電層を保護することができる。その結果、亀裂や断裂などが生じることに起因して、折り返し領域で導電性が低下するという不都合が生じるのを抑制することができるので、集電体における集電性能を向上させることができる。
【0013】
さらに、第1の局面では、上記のように、集電体を多層構造に構成することによって、たとえば、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、集電体の絶縁層が溶融して電極が破損されるので、電流をカットすることができる。これにより、電池内部の温度上昇を抑制することができるので、発火などの異常状態が生じるのを防止することができる。
【0014】
上記第1の局面による集電体において、折り返し領域の内面に接触するスペーサーをさらに備えているのが好ましい。このように構成すれば、容易に、折り返し領域を形成する集電体端部の内面同士が全面では接触していない状態とすることができる。これにより、容易に、集電体の集電性能を向上させることができる。
【0015】
この場合において、上記スペーサーは導電体であるのが好ましい。このように構成すれば、スペーサーの延性を向上させて導通箇所の接触面積および接触強度を増加させることで、絶縁層を挟む導電層間の接触抵抗を低減することができる。このため、効果的に、集電体の集電性能を向上させることができる。加えて、スペーサーを折り返し領域の内面(導電層)に容易に固定することができる。また、長期信頼性の観点からは、導電体であり、かつ電池内部に配する部材と同じ素材であることがより好ましい。
【0016】
この発明の第2の局面による非水系二次電池は、上記第1の局面による集電体と、集電体における折り返し領域を除いた領域に形成される活物質層とを含む電極と、電極と電気的に接続されるタブ電極とを備えている。そして、上記タブ電極が、集電体の折り返し領域に溶接固定されている。
【0017】
この第2の局面による非水系二次電池では、上記のように、第1の局面による集電体を用いて電極を形成することによって、電極同士の導通をとることができるので、タブ電極を、全ての電極と電気的に接続することができる。加えて、集電体における集電性能を向上させることができる。これにより、電池性能の低下を抑制することができるので、非水系二次電池の性能を最大限活用することができる。
【0018】
また、第2の局面では、集電体の折り返し領域にタブ電極を溶接固定することによって、容易に、溶接強度を向上させることができる。これにより、耐振動性を向上させることができるので、電池性能の経時劣化を抑制することができる。
【0019】
なお、第2の局面では、絶縁層を有する集電体を用いて電極を形成することによって、発火などの異常状態が生じるのを防止することができるので、安全性をより向上させることができる。
【0020】
上記第2の局面による非水系二次電池において、好ましくは、電極における折り返し領域の厚みは、活物質層が形成されている領域の厚みよりも大きい。このように構成すれば、折り返し領域と活物質層が形成されている領域との間での屈折を小さくすることができるので、折り返し領域と活物質層が形成されている領域との間の領域に加わる負荷を軽減することもできる。また、電極の屈折を小さくすることによって、振動による負荷も加わりにくくすることができるので、耐振動性を向上させることもできる。
【0021】
この場合において、好ましくは、タブ電極が、集電体とかみ合うように溶接固定されている。このように構成すれば、溶接強度を高めることができる。このため、集電体に折り返し領域を形成した場合でも、折り返し領域とタブ電極との溶接強度の低下を抑制することができるため、溶接抵抗を低減し、耐振動性を向上させることもできる。
【0022】
上記第2の局面による非水系二次電池において、導電性材料から構成され、集電体の前記折り返し領域を厚み方向に貫通する貫通部材をさらに備えているのが好ましい。このように構成すれば、この貫通部材によっても、絶縁層を挟む各導電層を互いに電気的に接続することができる。これにより、電極同士の導通をとることができるので、電池性能の低下をより抑制することができる。また、積層した折り返し領域同士をより強固に接続固定できるので、耐振動性を向上させることもできる。
【0023】
上記第2の局面による非水系二次電池において、好ましくは、電極は、正極および負極を含み、正極および負極の少なくとも一方は、多層構造を有する集電体を用いて形成されている。このように構成すれば、効果的に、非水系二次電池の安全性を向上させることができる。
【0024】
上記正極および負極を有する構成において、正極が、多層構造を有する上記集電体を用いて形成されている場合、正極における集電体の導電層は、アルミニウムから構成されているのが好ましい。また、負極が、多層構造を有する上記集電体を用いて形成されている場合、負極における集電体の導電層は、銅から構成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、安全性を向上させつつ、電池性能の低下を抑制することが可能な非水系二次電池を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の電極群の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の全体斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極の断面図(図7のA−A線に沿った断面の一部に対応する図)である。
【図6】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極の平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極の斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図(スペーサーが配された状態を示した図)である。
【図9】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池に用いられるスペーサーを示した斜視図である。
【図10】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の電極群の一部を模式的に示した断面図である。
【図11】本発明の第1実施形態による正極集電体とタブ電極との溶接固定の状態を示した模式的断面図である。
【図12】図11のC1−C1線に沿った模式的断面図である。
【図13】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の負極の断面図(図15のB−B線に沿った断面に対応する図)である。
【図14】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の負極の平面図である。
【図15】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の負極の斜視図である。
【図16】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池のセパレータの平面図である。
【図17】本発明の第2実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。
【図18】本発明の第2実施形態による正極集電体とタブ電極との溶接固定の状態を示した模式的断面図である。
【図19】図18のC2−C2線に沿った模式的断面図である。
【図20】第2実施形態の第1変形例によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。
【図21】第2実施形態の第2変形例によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。
【図22】本発明の第3実施形態によるリチウムイオン二次電池に用いられる正極の一部を模式的に示した平面図である。
【図23】本発明の第3実施形態によるリチウムイオン二次電池の電極群の一部を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。なお、以下の実施形態では、非水系二次電池の一例である積層型のリチウムイオン二次電池に本発明を適用した場合について説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の分解斜視図であり、図2は、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の電極群の分解斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の全体斜視図であり、図4は、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。図5〜図16は、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池を説明するための図である。まず、図1〜図16を参照して、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池について説明する。
【0029】
第1実施形態によるリチウムイオン二次電池は、図1および図3に示すように、角形扁平形状を有する大型二次電池であり、複数の電極5を含む電極群50(図1参照)と、この電極群50を非水電解液とともに封入する金属製の外装容器100とを備えている。
【0030】
上記電極5は、図1および図2に示すように、正極10および負極20を含んで構成されており、正極10と負極20との間には、正極10と負極20との短絡を抑制するためのセパレータ30が配されている。具体的には、正極10および負極20が、セパレータ30を挟んで互いに対向するように配されており、正極10、セパレータ30および負極20が順次積層されることによって、積層構造(積層体)に構成されている。なお、正極10および負極20は、1つずつ交互に積層されている。また、上記電極群50は、隣り合う2つの負極20の間に、1つの正極10が位置するように構成されている。
【0031】
また、上記電極群50は、たとえば、正極10を13枚、負極20を14枚、セパレータ30を28枚含んで構成されており、正極10および負極20がセパレータ30を挟んで交互に積層されている。さらに、上記電極群50における最も外側(最外層の負極20の外側)には、セパレータ30が配されており、外装容器100との絶縁が図られている。
【0032】
電極群50を構成する正極10は、図4および図5に示すように、正極集電体11の両面に、正極活物質層12が担持された構成を有している。
【0033】
正極集電体11は、正極活物質層12から集電を行う機能を有している。
【0034】
ここで、第1実施形態では、上記正極集電体11は、絶縁性の樹脂層13を導電層14で挟んだ多層構造(三層構造)に構成されている。このため、絶縁性の樹脂層13の両面上には、導電層14が形成されている。なお、樹脂層13は、本発明の「絶縁層」の一例である。
【0035】
正極集電体11を構成する導電層14は、たとえば、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されており、約2μm〜約15μmの厚みに形成されている。アルミニウムは不動態化して耐酸化性が高まるため、正極集電体11の導電層14として好適に用いることができる。なお、上記導電層14は、アルミニウムまたはアルミニウム合金以外であってもよく、たとえば、チタン、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属材料、または、これらの合金などから構成されていてもよい。
【0036】
導電層14の形成方法としては、特に限定されず、たとえば、蒸着、スパッタリング、電解めっき、無電解めっき、金属箔の貼り合わせ等による方法、および、これらの方法の組み合わせからなる方法が挙げられる。
【0037】
正極集電体11の樹脂層13は、熱可塑性樹脂からなるプラスチック材料から構成されている。この樹脂層13は、たとえば、シート状の樹脂フィルムからなる。なお、プラスチック材料を構成する熱可塑性樹脂としては、たとえば、熱変形温度が150℃以下であるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドなどが好適に用いられる。中でも、120℃での熱収縮率が平面方向のいずれかの方向で1.5%以上であるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどが好ましい。また、これらの複合フィルムや、これらの表面加工処理を施した樹脂フィルムも好適に用いることができる。さらに、上記セパレータ30と同材質の樹脂フィルムを用いることも可能である。また、製造工程、加工処理の差異により、熱変形温度、熱収縮率等の異なる樹脂であれば、樹脂層13とセパレータ30とのいずれにも用いることができる。なお、熱収縮率は、絶縁層(樹脂層13)を構成する層状材料を一定温度下で、一定時間保持し、加熱処理前後で測定した2点間の距離から決定することができる。また、熱変形温度は、熱収縮率が10%以上となる温度のうち、最も低い温度と定義される(ここで、熱変形温度<融点)。
【0038】
また、樹脂層13の厚みは、二次電池としてのエネルギ密度向上と強度維持とのバランスを取るべく、5μm以上70μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下であればより好ましい。なお、樹脂層13(樹脂フィルム)は、一軸延伸、二軸延伸または無延伸などのいずれの方法で製造された樹脂フィルムでもかまわない。また、正極集電体11の樹脂層13は、フィルム状以外に、たとえば、繊維状であってもよい。
【0039】
また、上記正極集電体11における正極活物質層12が形成された領域は、箔状以外に、フィルム状、シート状、ネット状、パンチまたはエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などの形状であってもよい。
【0040】
正極活物質層12は、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を含んで構成されている。正極活物質としては、たとえば、リチウムを含有した酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoO、LiFeO、LiMnO、LiMn、および、これら酸化物中の遷移金属を一部他の金属元素で置換した化合物などが挙げられる。中でも、通常の使用において、正極が保有するリチウム量の80%以上を電池反応に利用し得るものを正極活物質に用いるのが好ましい。それにより過充電などの事故に対する二次電池の安全性を高めることが可能となる。このような正極活物質としては、たとえば、LiMnのようなスピネル構造を有する化合物、および、LiMPO(Mは、Co、Ni、Mn、Feから選択される少なくとも1種以上の元素)で表されるオリビン構造を有する化合物などが挙げられる。中でも、MnおよびFeの少なくとも一方を含む正極活物質がコストの観点から好ましい。さらに、安全性および充電電圧の観点からは、LiFePOを用いるのが好ましい。LiFePOは、全ての酸素(O)が強固な共有結合によって燐(P)と結合しているため、温度上昇による酸素の放出が起こりにくい。そのため、安全性に優れている。
【0041】
なお、上記正極活物質層12の厚みは、20μm〜2mm程度が好ましく、50μm〜1mm程度がより好ましい。
【0042】
また、上記正極活物質層12は、正極活物質を少なくとも含んでいれば、その構成は特に制限されるものではない。たとえば、正極活物質層12は、正極活物質以外に、導電材、増粘材、結着材などの他の材料を含んでいてもよい。
【0043】
導電材は、正極10の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、炭素繊維などの炭素質材料または導電性金属酸化物などを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性および塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。
【0044】
増粘材としては、たとえば、ポリエチレングリコール類、セルロース類、ポリアクリルアミド類、ポリN−ビニルアミド類、ポリN−ビニルピロリドン類などを用いることができる。これらの中で、増粘材としては、ポリエチレングリコール類、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース類などが好ましく、CMCが特に好ましい。
【0045】
結着材は、活物質粒子および導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルピリジン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー、スチレンブタジエンゴムなどを用いることができる。
【0046】
正極活物質、導電材、結着材などを分散させる溶剤としては、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。
【0047】
上記した正極10は、たとえば、正極活物質、導電材、増粘材および結着材を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合剤としたものを、正極集電体11の表面に塗工・乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成される。
【0048】
第1実施形態では、図4に示すように、正極10における正極活物質層12が形成された領域(領域F)の厚みT2が、たとえば、約400μmとされている。なお、正極活物質層12が形成された領域Fの厚みT2が50μmより小さくなると、活物質層が薄くなりすぎるため、セルのエネルギ密度が低下する。一方、上記領域Fの厚みT2が4000μmより大きくなると、活物質層が厚くなりすぎるため、活物質重量当たりの電極性能が低下する。そのため、上記領域Fの厚みT2は、50μm以上4000μm以下が好ましい。また、上記領域Fの厚みT2は、60μm以上1000μm以下であればより好ましく、100μm以上600μm以下であればさらに好ましい。
【0049】
また、上記正極10は、図6に示すように、平面的に見て、略矩形形状を有している。具体的には、上記正極10のY方向の幅W1は、たとえば、約100mmとされており、X方向の長さL1は、たとえば、約150mmとされている。また、正極活物質層12の塗工領域(形成領域)は、Y方向の幅W11が、正極10の幅W1と同じ、たとえば、約100mmとされており、X方向の長さL11が、たとえば、約135mmとされている。
【0050】
また、図6および図7に示すように、上記正極10は、X方向の一端(端部)に、正極活物質層12が形成(塗工)されずに正極集電体11の表面(導電層14)が露出された集電体露出部(未塗工部)11aを有している。この集電体露出部11aには、外部に電流を取り出すための、タブ電極41(図6参照)が電気的に接続されている。なお、タブ電極41は、たとえば、幅約30mm、長さ約70mmの形状に形成されており、その厚みは、たとえば、約100μmである。
【0051】
ここで、第1実施形態では、図1、図2および図4に示すように、上記正極10は、正極活物質層12が形成されていない端部を2回以上(たとえば2回)同方向に折り返した折り返し領域Eを有している。すなわち、第1実施形態では、正極集電体11における集電体露出部(未塗工部)11aの端部が、2回以上同方向(正極活物質層12方向)に折り返されている。この折り返し領域Eは、折り目がつくようにきっちりと折り曲げられているのではなく、正極集電体11の端部を巻くような感じで折り返されている。そのため、図4に示すように、折り返し領域Eを形成する正極集電体11端部の内面11b同士が、全面では接触していない状態とされている。このため、折り返し領域Eにおける折り返し部分の曲率半径が大きくなっており、折り返し領域E内に空間が形成されている。これにより、正極集電体11の折り返し部分(特に、折り返し領域Eの曲面領域)に加わる負荷が軽減されている。なお、上記した正極集電体11(正極10)におけるX方向の長さL1(図6参照)は、折り返し領域Eを形成した状態での長さである。そのため、折り返し領域Eを形成する前の正極集電体11のX方向の長さは、L1(約150mm)よりも長くなっている。
【0052】
また、上記折り返し領域Eは、正極活物質層12が形成されていない正極集電体11の端部を2回以上同方向に折り返しているため、この折り返し領域Eにおいて樹脂層13を挟む各導電層14が互いに電気的に接続されている。すなわち、正極集電体11における一方側の導電層14と他方側の導電層14とが電気的に接続されている。
【0053】
さらに、第1実施形態では、折り返し領域Eを形成する正極集電体11端部の内面11b同士が、離間した状態とされている。また、第1実施形態では、図8に示すように、折り返し領域Eの内部に、スペーサー90が配されている。このスペーサー90は、折り返し領域Eの内部において折り返し領域Eの内面11bに接触している。また、スペーサー90は、折り返し領域Eの形状を保持する機能を有している。さらに、スペーサー90は、導電体からなり、図9に示すように、たとえば、円柱状に形成されている。なお、上記スペーサー90は、たとえば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属材料、または、これらの合金などから構成することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、図4および図8に示すように、折り返し領域Eの厚みT1は、正極活物質層12が形成されている領域Fの厚みT2(電極の厚み)以上とされている。具体的には、この第1実施形態では、折り返し領域Eの厚みT1は、たとえば、約850μmとされている。なお、折り返し領域Eの厚みT1が50μmより小さくなると、強度が不十分となる。一方、折り返し領域Eの厚みT1が10000μmより大きくなると、積層した際に集電部(タブ電極41の接続箇所)が厚くなってセル作製が困難となる。そのため、折り返し領域Eの厚みT1は、50μm以上10000μm以下であるのが好ましい。また、折り返し領域Eの厚みT1は、60μm以上2000μm以下であればより好ましく、100μm以上1050μm以下であればさらに好ましい。
【0055】
また、上記折り返し領域Eの厚みT1は、正極活物質層12が形成されている領域Fの厚みT2と同程度の厚み〜[正極+負極+セパレータ2枚]程度の厚みとされているのが好ましい。特に、折り返し領域Eの厚みT1を、[正極+負極+セパレータ2枚]程度の厚みとすると、積層した際に、折り返し領域Eを重ねた領域の厚みと、活物質層が形成されている領域を重ねた領域の厚みが同程度となるため、その間での正極集電体11の屈折を抑制し、加わる負荷を軽減することができる。ここで、正極10の厚み(正極活物質層12が形成されている領域Fの厚みT2)を60μm〜850μm(好ましくは100μm〜600μm)とし、負極20(図1参照)の厚み(負極活物質層が形成されている領域の厚み)を25μm〜350μm(好ましくは35μm〜250μm)とし、セパレータ30(図1参照)の厚みを10μm〜200μm(好ましくは20μm〜100μm)とすると、[正極+負極+セパレータ2枚]の厚みは、105μm〜1600μm(好ましくは175μm〜1050μm)となる。したがって、折り返し領域Eの厚みT1を105μm〜1600μm(好ましくは175μm〜1050μm)とするのも好ましい。
【0056】
電極群50を構成する負極20は、図13に示すように、負極集電体21の両面に、負極活物質層22が担持された構成を有している。
【0057】
負極集電体21は、負極活物質層22から集電を行う機能を有している。
【0058】
なお、第1実施形態では、負極集電体21は、上記正極集電体11(図5参照)とは異なり、樹脂層を含まない構成となっている。すなわち、この第1実施形態では、正極集電体11(図5参照)だけが樹脂層を含む多層構造に構成されている。
【0059】
具体的には、負極集電体21は、たとえば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、鉄、ニッケルメッキ層などの金属箔、または、これらの合金からなる合金箔から構成されており、約1μm〜約100μm(たとえば約10μm)の厚みを有している。なお、負極集電体21は、リチウムと合金化しにくいという観点から、銅または銅合金からなる金属箔が好ましく、その厚みは、4μm以上20μm以下であるのが好ましい。
【0060】
また、上記負極集電体21は、箔状以外に、フィルム状、シート状、ネット状、パンチまたはエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などの形状であってもよい。
【0061】
負極活物質層22は、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を含んで構成されている。負極活物質としては、たとえば、リチウムを含む物質、あるいは、リチウムの吸蔵・放出が可能な物質からなる。また、高エネルギ密度電池を構成するためには、リチウムの吸蔵/放出する電位が金属リチウムの析出/溶解電位に近いものが好ましい。その典型例としては、粒子状(鱗片状、塊状、繊維状、ウィスカー状、球状、粉砕粒子状など)の天然黒鉛もしくは人造黒鉛が挙げられる。なお、負極活物質として、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ粉末、等方性ピッチ粉末などを黒鉛化して得られる人造黒鉛を使用してもよい。また、非晶質炭素を表面付着させた黒鉛粒子を使用することもできる。さらに、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物、遷移金属酸化物および酸化シリコンなども使用可能である。リチウム遷移金属酸化物としては、たとえば、LiTi12に代表されるチタン酸リチウムを使用すると、負極20の劣化が少なくなるため、電池の長寿命化を図ることが可能となる。
【0062】
なお、上記負極活物質層22の厚みは、10μm〜2mm程度が好ましく、50μm〜1mm程度がより好ましい。
【0063】
また、上記負極活物質層22は、負極活物質を少なくとも含んでいれば、その構成は特に制限されるものではない。たとえば、負極活物質層22は、負極活物質以外に、導電材、増粘材、結着材などの他の材料を含んでいてもよい。なお、導電材、増粘材、結着材などの他の材料は、正極活物質層12と同じもの(正極活物質層12に用いることが可能なもの)を用いることができる。
【0064】
上記した負極20は、たとえば、負極活物質、導電材、増粘材および結着材を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合剤としたものを、負極集電体21の表面に塗工・乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成される。
【0065】
また、上記負極20は、図14に示すように、平面的に見て、略矩形形状を有しており、正極10(図6および図7参照)より少し大きく形成されている。具体的には、第1実施形態では、上記負極20は、Y方向の幅W2が、たとえば、約110mmとされており、X方向の長さL2が、正極10の長さL1(図6参照)と同じ、たとえば、約150mmとされている。また、負極活物質層22の塗工領域(形成領域)は、Y方向の幅W21が、負極20の幅W2と同じ、たとえば、約110mmとされており、X方向の長さL21が、たとえば、約140mmとされている。
【0066】
また、図13〜図15に示すように、上記負極20は、正極10と同様、X方向の一端に、負極活物質層22が形成されずに負極集電体21の表面が露出された集電体露出部21aを有している。この集電体露出部21aには、外部に電流を取り出すためのタブ電極42(図14参照)が電気的に接続されている。なお、タブ電極42は、上記タブ電極41と同様、たとえば、幅約30mm、長さ約70mmの形状に形成されており、その厚みは、たとえば、約100μmである。
【0067】
電極群50を構成するセパレータ30(図1および図2参照)は、たとえば、電気絶縁性の合成樹脂繊維、ガラス繊維、天然繊維等の不織布、織布または微多孔質膜などのなかから適宜選択可能である。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル系樹脂、アラミド系樹脂、セルロース系樹脂等の不織布、微多孔質膜が品質の安定性等の点から好ましく、特に、アラミド系樹脂、ポリエステル系樹脂またはセルロース系樹脂からなる不織布、微多孔質膜が好ましい。
【0068】
また、セパレータ30は、正極集電体11の樹脂層13よりも高い融点を有することが好ましい。たとえば、セパレータ30は、正極集電体11の樹脂層13の融点(熱変形温度としてもよい。(ここで、熱変形温度<融点))以下の温度において、その熱収縮率が1.0%以下であるのが好ましい。また、セパレータ30は、アラミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂などを含む多孔質フィルムから構成され、180℃での熱収縮率が1.0%以下であるのが好ましい。なお、セパレータ30の熱収縮率の決定方法は、上記樹脂層13の場合と同様の方法を用いることができる。
【0069】
セパレータ30の厚みについては特に限定されるものではないが、必要量の電解液を保持することが可能であって、かつ、正極10と負極20との短絡を防ぐことが可能な厚みであるのが好ましい。具体的には、セパレータ30は、たとえば、10μm〜1000μmの厚みとすることができる。セパレータ30の厚みとしては、10μm〜200μm程度が好ましく、20μm〜100μm程度であればより好ましい。また、セパレータ30を構成する材質は、単位面積(1cm)当たりの透気度が0.1秒/cm〜500秒/cm程度であると、低い電池内部抵抗を維持しつつ、電池内部短絡を防ぐだけの強度を確保できるため好ましい。
【0070】
また、上記セパレータ30は、正極活物質層12の塗工領域(形成領域)よりも大きい形状を有している。具体的には、図16に示すように、上記セパレータ30は、矩形形状に形成されており、そのY方向の幅W3がたとえば約110mm、X方向の長さL3がたとえば約150mmに構成されている。
【0071】
上記した正極10および負極20は、図1および図2に示すように、正極10の集電体露出部11aと負極20の集電体露出部21aとが互いに反対側に位置するように配され、正極負極間にセパレータ30を介在させて積層されている。
【0072】
また、第1実施形態では、図10に示すように、上記複数の正極10は、集電体露出部(未塗工部)11aが揃うように積層されている。そして、最も外側の正極10(正極集電体11の折り返し領域E)に上記したタブ電極41が溶接固定されている。具体的には、第1実施形態では、正極10の折り返し領域Eが重ねられており、その折り返し領域Eのスペーサー90が配された部分に、タブ電極41が溶接固定されている。また、上記タブ電極41は、折り返し領域E内に空間を残して溶接されている。なお、タブ電極41は、最も外側以外の正極10に溶接固定されていてもよい。
【0073】
さらに、第1実施形態では、図11および図12に示すように、上記タブ電極41は、正極集電体11とかみ合うように溶接固定されている。すなわち、図12に示すように、タブ電極41および正極集電体11(折り返し領域E)には、互いにかみ合う凹凸部95が形成されており、この凹凸部95の領域で溶接固定されている。この凹凸部95の形成によって、かみ合う効果と溶接ヵ所の接触面積が増大される効果の相乗効果が生じて、溶接強度が高められている。
【0074】
上記凹凸部95は、たとえば、プレス加工などによって容易に形成することが可能である。この場合、正極10を積層した状態で、タブ電極41とともにプレス加工を施すのが好ましい。このように構成すれば、容易に、上記タブ電極41を、正極集電体11とかみ合った状態にすることができる。また、たとえば、溶接固定に超音波溶接を用いる場合、溶接ヘッドに凹凸形状を設けることによって、積層された正極集電体11を溶接ヘッドで加圧した際に、上記凹凸部95を形成することも可能である。この場合、凹凸部95の形成と溶接固定とを同時に行うことができる。なお、図11および図12では、積層された正極10の一部を取り出して示している。
【0075】
また、集電体露出部11aの折り返し領域Eでタブ電極41が溶接されることにより、積層された全ての正極10(全ての導電層14)が、タブ電極41と電気的に接続された状態となっている。上記タブ電極41は、正極集電体11(正極10)の幅方向(Y方向)の略中央部に溶接固定されている。
【0076】
なお、図8に示したように、折り返し領域Eの厚みT1が、正極活物質層12が形成されている領域Fの厚みT2以上とされている。そのため、図10に示すように、電極(正極10)を積層した状態で、折り返し領域Eと正極活物質層12が形成されている領域F(図8参照)との間の領域Gにおける屈折が小さくなっている。また、上述したように、折り返し領域Eを[正極+負極+セパレータ2枚]程度の厚みとすれば、折り返し領域Eと正極活物質層12が形成されている領域F(図8参照)との間の領域Gを平坦(正極活物質層12とほぼ平行)にして、より屈折を小さくすることが可能となる。
【0077】
複数の負極20は、図1および図2に示すように、正極10と同様、集電体露出部21aが揃うように積層されている。そして、最も外側の負極20(負極集電体21)に上記したタブ電極42が溶接固定されている。なお、正極の場合と同様、タブ電極42は、最外層以外の負極20に溶接固定されていてもよい。これにより、積層された全ての負極20が、タブ電極42に溶接固定され、タブ電極42と電気的に接続された状態となっている。なお、上記タブ電極42は、負極集電体21(負極20)の幅方向(Y方向)の略中央部に溶接固定されている。
【0078】
タブ電極41および42の溶接は、超音波溶接が好ましいが、超音波溶接以外であってもよく、たとえば、レーザ溶接や抵抗溶接、スポット溶接などを用いてもよい。ただし、樹脂層13を挟んだ正極集電体11にタブ電極41を溶接する場合、レーザ溶接や抵抗溶接、スポット溶接などの熱を加えて接合する手法では、樹脂層13が熔解してしまうおそれがある。そのため、上記タブ電極41の溶接には、熱を加えない超音波溶接を用いるのが好ましい。
【0079】
また、正極10に接続されるタブ電極41は、アルミニウムから構成されているのが好ましく、負極20に接続されるタブ電極42は、銅から構成されているのが好ましい。タブ電極41および42は、集電体と同材質のものを用いるのが好ましいが、異なる材質であってもよい。さらに、正極10に接続されるタブ電極41と負極20に接続されるタブ電極42とは、同材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。また、タブ電極41および42は、上記のように、正極集電体11および負極集電体21の幅方向の略中央部に溶接されているのが好ましいが、中央部以外の領域に溶接固定されていてもよい。
【0080】
外装容器100内に電極群50とともに封入される非水電解液は、特に限定されるものではないが、溶媒として、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどのエステル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタンなどのエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチルなどの極性溶媒を使用することができる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して混合溶媒として使用してもよい。
【0081】
また、非水電解液には、電解質支持塩が含まれていてもよい。電解質支持塩としては、たとえば、LiClO、LiBF(ホウフッ化リチウム)、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiCFSO(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiF(フッ化リチウム)、LiCl(塩化リチウム)、LiBr(臭化リチウム)、LiI(ヨウ化リチウム)、LiAlCl(四塩化アルミン酸リチウム)などのリチウム塩が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0082】
なお、電解質支持塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.5mol/L〜2.5mol/Lが好ましく、1.0mol/L〜2.2mol/Lがより好ましい。電解質支持塩の濃度が、0.5mol/L未満の場合には、非水電解液中において電荷を運ぶキャリア濃度が低くなり、非水電解液の抵抗が高くなるおそれがある。また、電解質支持塩の濃度が、2.5mol/Lより高い場合には、塩自体の解離度が低くなり、非水電解液中のキャリア濃度が上がらないおそれがある。
【0083】
電極群50を封入する外装容器100は、図1および図3に示すように、大型の扁平角形容器であり、電極群50などを収納する外装缶60と、この外装缶60を封口する封口板70とを含んで構成されている。また、電極群50を収納した外装缶60には、たとえば、レーザ溶接によって、封口板70が取り付けられている。
【0084】
外装缶60は、たとえば、金属板に深絞り加工などを施すことによって形成されており、底面部61と側壁部62とを有する略箱状に形成されている。また、図1に示すように、外装缶60の一端(底面部61の反対側)には、電極群50を挿入するための開口部63が設けられている。また、外装缶60は、電極群50が、その電極面が底面部61と対向するようにして収納することが可能な大きさに形成されている。
【0085】
また、図1および図3に示すように、上記外装缶60は、X方向の一方側(短辺側)の側壁部62に、電極端子64(たとえば、正極端子)が形成されており、X方向の他方側(短辺側)の側壁部62に、電極端子64(たとえば、負極端子)が形成されている。また、外装缶60の側壁部62には、非水電解液を注液するための注液孔65が形成されている。この注液孔65は、たとえば、φ2mmの大きさに形成されている。また、注液孔65の近傍には、電池内圧を開放するための安全弁66が形成されている。
【0086】
さらに、外装缶60の開口部63の周縁には、折り曲げ部67が設けられており、この折り曲げ部67に、封口板70が溶接固定されている。
【0087】
外装缶60および封口板70は、たとえば、鉄、ステンレススチール、アルミニウムなどの金属板や鉄にニッケルメッキを施した鋼板などを用いて形成することができる。鉄は安価な材料であるため価格の観点では好ましいが、長期間の信頼性を確保するためには、ステンレススチール、アルミニウムなどからなる金属板または鉄にニッケルメッキを施した鋼板などを用いるのがより好ましい。金属板の厚みは、たとえば約0.4mm〜約1.2mm(たとえば約1.0mm)とすることができる。
【0088】
また、上記した電極群50は、正極10および負極20が、外装缶60の底面部61と対向するようにして、外装缶60内に収納されている。収納された電極群50は、正極10の集電体露出部11aおよび負極20の集電体露出部21aが、それぞれ、タブ電極41および42を介して、外装缶60の電極端子64と電気的に接続されている。
【0089】
また、非水電解液は、外装缶60の開口部63が封口板70で封口された後に、注液孔65から、たとえば、減圧注液されている。そして、注液孔65とほぼ同じ直径の金属球(図示せず)や、注液孔65より少し大きい金属板(図示せず)を注液孔65に設置した後、抵抗溶接やレーザ溶接などにより、注液孔65が封口されている。
【0090】
また、折り返し領域Eの厚みT1(図8参照)が、正極活物質層12が形成されている領域F(図8参照)の厚みT2以上とされているため、外装容器100内の隙間が折り返し領域Eによって低減されている。そのため、電極群50が外装容器100内で振動しにくくなっている。
【0091】
第1実施形態では、上記のように、正極集電体11に、集電体端部を2回以上同方向に折り返した折り返し領域Eを設けることによって、この折り返し領域Eにおいて樹脂層13を挟む導電層14同士を互いに電気的に接続することができる。このため、多層構造を有する集電体を用いた場合でも、このような正極集電体11を用いて電極(正極10)を形成することによって、電極同士の導通をとることができる。これにより、タブ電極41を、全ての電極と電気的に接続することができる。加えて、折り返し領域E内に空間を形成することで、正極集電体11からの集電性能を向上させることができる。これにより、電池性能の低下を抑制することができるので、リチウムイオン二次電池の性能を最大限活用することができる。
【0092】
また、第1実施形態では、上記折り返し領域Eを形成する集電体端部の内面11b同士が、離間した状態、すなわち、折り返し領域Eを形成する集電体端部の内面11b同士が全面では接触していない状態とすることによって、集電体端部を折り返した際に、正極集電体11の折り返し部分(折り返し領域Eの曲面領域)に加わる負荷を軽減することができる。これにより、正極集電体11の導電層14に亀裂や断裂などが生じるのを抑制することができる。すなわち、正極集電体11の導電層14を保護することができる。その結果、亀裂や断裂などが生じることに起因して、折り返し領域Eで導電性が低下するという不都合が生じるのを抑制することができるので、正極集電体11における集電性能を向上させることができる。
【0093】
また、第1実施形態では、折り返し領域E内に、その内面11bと接触するスペーサー90を配することによって、容易に、折り返し領域Eを形成する集電体端部の内面11b同士が全面では接触していない状態とすることができる。加えて、このような折り返し領域Eの形状をスペーサー90によって保持することができる。これにより、容易に、正極集電体11の集電性能を向上させることができる。
【0094】
また、上記スペーサー90を導電体から構成することによって、スペーサー90の延性を向上させて導通箇所の接触面積および接触強度を増加させることで、絶縁層を挟む導電層間の接触抵抗を低減することができるので、効果的に、集電体の集電性能を向上させることができる。加えて、スペーサー90を折り返し領域Eの内面11b(導電層)に容易に固定することができる。
【0095】
また、第1実施形態では、正極集電体11の折り返し領域Eにタブ電極41を溶接固定することによって、容易に、溶接強度を向上させることができる。これにより、耐振動性を向上させることができるので、電池性能の経時劣化を抑制することができる。
【0096】
なお、第1実施形態では、樹脂層13を有する正極集電体11を用いて電極(正極10)を形成することによって、発火などの異常状態が生じるのを防止することができるので、安全性をより向上させることができる。
【0097】
また、第1実施形態では、正極10における折り返し領域Eの厚みT1を、正極活物質層12が形成されている領域Fの厚みT2よりも大きくすることによって、折り返し領域Eと正極活物質層12が形成されている領域Fとの間の領域Gでの屈折を小さくすることができるので、折り返し領域Eと正極活物質層12が形成されている領域Fとの間の領域Gに加わる負荷を軽減することもできる。また、正極10の屈折を小さくすることによって、振動による負荷も加わりにくくすることができるので、耐振動性を向上させることもできる。さらに、外装容器100内の隙間を折り返し領域Eによって低減することができる。すなわち、折り返し領域Eによって溶接ヵ所に厚みをもたせることで、その部分を、外装容器100内の隙間を埋めるスペーサーとして機能させることができる。そのため、電極群50を外装容器100内で振動しにくくすることができる。このため、これによっても、耐振動性を向上させることができる。なお、折り返し領域Eによって、外装容器100内の隙間が完全には埋められていなくても、上記折り返し領域Eを有することで、外装容器100内の隙間が小さくなる。そのため、外装容器100内の隙間が完全には埋められていない場合でも、耐振動性を向上させることができる。
【0098】
また、第1実施形態では、タブ電極41を、正極集電体11とかみ合うように溶接固定することによって、溶接強度を高めることができる。ここで、正極集電体11に折り返し領域Eを形成した場合、溶接強度の低下が懸念される。しかしながら、タブ電極41を、正極集電体11とかみ合うように溶接固定することにより、正極集電体11に折り返し領域Eを形成した場合でも、折り返し領域Eとタブ電極41との溶接強度の低下を抑制することができる。
【0099】
なお、第1実施形態では、上記のように、多層構造を有する集電体を用いることによって、たとえば、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、集電体の樹脂層13が溶融して電極が破損されるので、電流(短絡電流)をカットすることができる。これにより、電池内部の温度上昇を抑制することができるので、発火などの異常状態が生じるのを防止することができる。
【0100】
また、第1実施形態では、正極集電体11の樹脂層13を、熱可塑性樹脂から構成し、120℃での熱収縮率が、平面方向のいずれかの方向で1.5%以上となるようにすることで、たとえば、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、電極が破損され易くすることができる。これにより、効果的に、発火などの異常状態が生じるのを防止することができるので、リチウムイオン二次電池の安全性を効果的に向上させることができる。
【0101】
また、第1実施形態では、セパレータ30を、樹脂層13の融点(熱変形温度としてもよい(熱変形温度<融点))以下の温度において、その熱収縮率が1.0%以下となるように構成することによって、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、容易に、電極(正極10)が破損され易くすることができる。すなわち、セパレータ30の融点(熱変形温度)を、樹脂層13の融点(熱変形温度)より高くすることによって、セパレータ30のシャットダウン機能が作動する前に、正極集電体11を構成する樹脂層13を溶断させることができる。これにより、樹脂層13およびセパレータ30による電流遮断効果により、2段階で電流遮断が可能となるので、リチウムイオン二次電池の安全性をより向上させることができる。
【0102】
さらに、上記セパレータ30の180℃での熱収縮率を、1.0%以下とすれば、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、セパレータ30の熱収縮に起因する内部短絡(電極端部にて生じる電池の内部短絡)の発生を抑制することができるので、急激な温度上昇が生じるのを抑制することができる。その結果、リチウムイオン二次電池の安全性をさらに向上させることができる。さらに、このように構成すれば、180℃の温度でも、セパレータ30の溶融・流動化を抑制することもできるので、溶融・流動化に起因してセパレータ30の孔が大きくなるという不都合が生じるのを抑制することができる。このため、電池内部が180℃に達した際に、何らかの理由で電極(正極10)の破損が起こらなかった場合でも、セパレータ30の孔が大きくなることに起因して、正負極の短絡箇所が広がるという不都合が生じるのを抑制することもできる。
【0103】
(第2実施形態)
図17は、本発明の第2実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。図18は、本発明の第2実施形態による正極集電体とタブ電極との溶接固定の状態を示した模式的断面図である。図19は、図18のC2−C2線に沿った模式的断面図である。次に、図17〜図19を参照して、本発明の第2実施形態によるリチウムイオン二次電池について説明する。なお、各図において、対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明は適宜省略する。
【0104】
この第2実施形態では、図17に示すように、折り返し領域Eを形成する正極集電体11端部の内面11b同士が、全面では接触せずに、一部で接触した状態とされている。具体的には、折り返し領域Eの上部が下方側に変形しており、その部分で、正極集電体11端部の内面11b同士が接触している。そのため、この第2実施形態では、折り返し領域E内に2つの空間が形成されている。
【0105】
なお、折り返した形状を保持させるために溶接を行い、形状を保持させてもよい。
【0106】
また、図18および図19に示すように、タブ電極41が、正極集電体11とかみ合うように溶接固定されている。すなわち、図19に示すように、タブ電極41および正極集電体11(折り返し領域E)には、互いにかみ合う凹凸部95が形成されており、この凹凸部95の領域で溶接固定されている。この凹凸部95の形成によって、かみ合う効果と溶接ヵ所の接触面積が増大される効果の相乗効果が生じて、溶接強度が高められている。
【0107】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。また、第2実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0108】
図20は、第2実施形態の第1変形例によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。図20に示すように、第2実施形態の第1変形例では、折り返し領域Eの上部が下方側に変形しているとともに、折り返し領域Eの下部が上方側に変形している。そして、各々の変形した部分で、正極集電体11端部の内面11b同士が接触している。
【0109】
第1変形例のその他の構成は、上記第2実施形態と同様である。また、第1変形例の効果は、上記第1および2実施形態と同様である。
【0110】
図21は、第2実施形態の第2変形例によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。図21に示すように、第2実施形態の第2変形例では、上記第2実施形態の構成において、折り返し領域Eの空間内にスペーサー90が配されている。なお、第2実施形態の第2変形例では、上記第1実施形態とは異なり、折り返し領域Eを形成する正極集電体11端部の内面11b同士が接触している部分に、タブ電極(図示せず)が溶接固定されている。すなわち、折り返し領域Eのスペーサー90が配されていない部分に、タブ電極(図示せず)が溶接固定されている。ただし、上記第1実施形態と同様、折り返し領域Eのスペーサー90が配された部分に、タブ電極(図示せず)を溶接固定することも可能である。
【0111】
第2変形例のその他の構成は、上記第2実施形態と同様である。また、第2変形例の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。なお、上記した第2実施形態の第1変形例の構成においても、第2変形例と同様、折り返し領域の空間内にスペーサー90を配した構成とすることができる。
【実施例1】
【0112】
実施例1では、上記第1および第2実施形態の構成において、正極集電体に、Al層−ポリエチレン樹脂層−Al層構造の三層構造を持つ導電性シートを用いた。そして、この導電性シートからなる正極集電体を用いて積層型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0113】
上記正極集電体は角型形状である。また、この正極集電体を有する正極には、その端部(正極活物質層未塗工部)を、空間を持たせて2回同方向に折り返すことで折り返し領域を形成した。そして、この正極を、未塗工部(折り返し領域)を揃えて積層し、その箇所(折り返し領域)で集電部材(タブ電極)と溶接した。なお、実施例1のその他の構成は、上記第1および第2実施形態と同様とした。
【0114】
このように構成した実施例1のリチウムイオン二次電池では、集電体の折り返し領域に空間を残して集電部材を溶接することで、その箇所の集電性能が向上するだけでなく、耐振動性が向上し、電池性能の経時劣化も軽減した。
【0115】
(第3実施形態)
図22は、本発明の第3実施形態によるリチウムイオン二次電池に用いられる正極の一部を模式的に示した平面図である。図23は、本発明の第3実施形態によるリチウムイオン二次電池の電極群の一部を模式的に示した断面図である。次に、図22および図23を参照して、本発明の第3実施形態によるリチウムイオン二次電池について説明する。なお、各図において、対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明は適宜省略する。
【0116】
この第3実施形態では、図22および図23に示すように、上記第2実施形態の構成において、正極集電体11の折り返し領域Eを厚み方向に貫通する貫通部材80をさらに備えている。この貫通部材80は、導電性材料から構成されており、積層されている正極10(同極性の電極5)の全てを連続して貫通している。また、貫通部材80は、正極集電体11の折り返し領域Eを貫通した後、その先端部分がかしめられている。これにより、この貫通部材80によって、積層された正極10が固定されている。なお、正極集電体11の折り返し領域Eだけでなく、タブ電極41まで貫通してかしめることで、積層された正極10とタブ電極41をまとめて固定することもできる。
【0117】
上記貫通部材80は、電気伝導性や耐酸化性などの観点から、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されているのが好ましい。ただし、貫通部材80は、アルミニウムまたはアルミニウム合金以外であってもよく、たとえば、チタン、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属材料、または、これらの合金などから構成されていてもよい。
【0118】
また、図22に示すように、貫通部材80は、正極集電体11の集電体露出部11a(折り返し領域E)の複数箇所に設けられているのが好ましい。このように、集電体露出部11aの複数箇所に貫通部材80を設ける(貫通させる)ことにより、正極同士の接触抵抗が低減するため、電極間(正極間)の導電性が向上する。
【0119】
なお、上記貫通部材80の表面には凹凸(図示せず)が設けられているのが好ましい。貫通部材80の凹凸は、たとえば、削りだし、エッチング、鋳造等により形成することができる。また、凹凸の高さは、たとえば、0.1μm〜5mmの範囲であるのが好ましい。凹凸の突起(凸部分)の形状は特に制限されることはなく、たとえば、台形形状、三角錐形状、かまぼこ型形状(略半楕円形状)などの形状であってもよい。
【0120】
また、上記貫通部材80は、ステープラ針(ステープル)のような針状であってもよいし、リベット状の円柱状または円筒状形状であってもよい。リベット状の貫通部材80の場合、貫通部材80が挿入される貫通孔を予め正極集電体11の集電体露出部11a(折り返し領域E)に設けておくのが好ましい。
【0121】
第3実施形態のその他の構成は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0122】
第3実施形態では、上記のように、正極集電体11の折り返し領域Eを厚み方向に貫通する貫通部材80を備えることによって、この貫通部材80によっても、樹脂層13を挟む導電層14同士を互いに電気的に接続することができる。これにより、電極同士の導通をとることができるので、電池性能の低下をより抑制することができる。
【0123】
第3実施形態のその他の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0124】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0125】
たとえば、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)では、非水系二次電池の一例であるリチウムイオン二次電池に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、リチウムイオン二次電池以外の非水系二次電池に適用してもよい。また、今後開発される非水系二次電池に本発明を適用することもできる。
【0126】
また、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)では、集電体の樹脂層(絶縁層)にフィルム状の樹脂層を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、フィルム状以外に、たとえば、繊維状の樹脂層を用いてもよい。繊維状の樹脂層としては、たとえば、織布または不織布などからなる層が挙げられる。
【0127】
また、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)では、集電体端部を同方向に2回折り返すことで折り返し領域を形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、3回以上同方向に折り返した場合も、2回以上同方向へ折り返した後逆方向に折り返した場合も含まれる。
【0128】
また、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)では、正極および負極の少なくとも一方を、三層構造を有する集電体を用いて形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、上記集電体は、三層構造以外の多層構造に構成されていてもよい。たとえば、金属箔上にメッキ層などを形成することにより、三層以上の多層構造に構成されていてもよい。
【0129】
また、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)では、電極群を収容する外装容器に扁平角形容器を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、外装容器の形状は、扁平角形以外であってもよい。たとえば、上記外装容器は、薄い扁平筒型、円筒型、角筒型等であってもよい。ただし、組電池として使用することを考慮すると、薄い扁平型または角型であるのが好ましい。さらに、上記外装容器は、金属製の缶以外に、たとえば、ラミネートシートなどを用いた外装容器であってもよい。
【0130】
また、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)では、正極(正極活物質層)よりも負極(負極活物質層)の方が大きくなるように構成した例を示したが、負極(負極活物質層)と正極(正極活物質層)とが同じ大きさになるように構成されていてもよい。ただし、正極(正極活物質層)よりも負極(負極活物質層)の方が大きくなるように構成されているのが好ましい。このように構成されていれば、正極活物質層の形成領域(正極活物質領域)が、面積の大きい負極活物質層の形成領域(負極活物質領域)で覆われることにより、積層ずれの許容範囲を広げることもできる。
【0131】
なお、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)において、集電体の折り返し領域内にスペーサーを配した構成としてもよいし、スペーサーを配さない構成としてもよい。たとえば、上記第3実施形態において、集電体の折り返し領域内にスペーサーを配した構成とすることもできる。また、上記スペーサーは、その形状等は特に制限されない。上記第1および第2実施形態では、円柱状のスペーサーを用いた例を示したが、円柱状以外にたとえば楕円柱状のスペーサーを用いてもよい。また、多角柱状(たとえば4角以上の多角柱状)のスペーサーを用いることも可能である。
【0132】
また、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)において、外装容器は形状だけでなく、大きさや構造等についても種々変更することができる。また、電極(正極、負極)の形状、寸法、使用枚数なども、適宜変更することができる。さらに、セパレータの形状、寸法などについても、適宜変更することができる。セパレータの形状としては、たとえば、正方形または長方形等の矩形、多角形、円形等種々の形状が挙げられる。
【0133】
さらに、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)では、集電体の折り返し領域内に配されるスペーサーを導電体から構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、上記スペーサーは、絶縁体であってもよい。たとえば、上記スペーサーは、絶縁性の樹脂から構成されていてもよい。なお、スペーサーを導電体から構成する場合、金属材料以外のたとえば導電性樹脂を用いてもよい。ただし、導電体、特に電池内部に配する部材と同じ金属材料から構成することがより好ましい。
【0134】
また、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)では、集電体の両面に活物質層を形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、集電体の片面にのみ活物質層を形成してもよい。また、集電体の片面にのみ活物質層を形成した電極(正極、負極)を電極群の一部に含むように構成してもよい。
【0135】
また、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)では、リチウムイオン二次電池の電解質として非水電解液を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、非水電解液以外のたとえばゲル状電解質、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩などを電解質として用いてもよい。
【0136】
また、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)では、正極側の集電体(正極集電体)を、樹脂層(絶縁層)を含む多層構造に構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、負極側の集電体(負極集電体)を、樹脂層および導電層を含む多層構造に構成してもよい。たとえば、正極および負極の両方を、多層構造(三層構造)を有する集電体を用いて形成してもよいし、正極および負極の一方を、多層構造(三層構造)を有する集電体を用いて形成してもよい。なお、正極および負極の一方を、多層構造(三層構造)を有する集電体を用いて形成する場合、正極側を、多層構造(三層構造)を有する集電体を用いて形成するのが好ましい。
【0137】
また、負極側の集電体を、多層構造に構成する場合、導電層は、銅または銅合金から構成されているのが好ましい。具体的には、導電層として、たとえば、約2μm〜約15μmの厚みに形成された銅または銅合金を用いることができる。なお、負極集電体の導電層は、銅または銅合金以外であってもよく、たとえば、ニッケル、ステンレス鋼、鉄、または、これらの合金などから構成されていてもよい。また、負極集電体の樹脂層は、たとえば、正極集電体の樹脂層と同じもの(正極集電体の樹脂層に用いることが可能なもの)を用いることができる。
【0138】
なお、負極側の集電体を多層構造に構成した場合、上記第1〜第3実施形態(変形例を含む)で示した正極(正極集電体)と同様、集電体端部を同方向に2回以上折り返した折り返し領域を負極に形成するのが好ましい。
【0139】
また、上記第2および第3実施形態(変形例を含む)では、折り返し領域を形成する集電体端部の内面同士が、一部で接触するように構成した例を示したが、この場合の接触ヵ所は、1ヵ所でもよいし、2ヵ所以上であってもよい。
【0140】
なお、上記で開示された技術を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
5 電極
10 正極(電極)
11 正極集電体
11a 集電体露出部
12 正極活物質層
13 樹脂層(絶縁層)
14 導電層
20 負極(電極)
21 負極集電体
21a 集電体露出部
22 負極活物質層
30 セパレータ
41、42 タブ電極
50 電極群
60 外装缶
61 底面部
62 側壁部
63 開口部
64 電極端子
65 注液孔
66 安全弁
67 折り曲げ部
70 封口板
80 貫通部材
90 スペーサー
95 凹凸部
100 外装容器
E 折り返し領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を導電層で挟んだ多層構造を有する集電体であって、
その端部を2回以上同方向に折り返した折り返し領域を有し、
前記折り返し領域において前記絶縁層を挟む各導電層が互いに電気的に接続されており、
前記折り返し領域を形成する集電体端部の内面同士が、離間している、または、一部で接触していることを特徴とする、集電体。
【請求項2】
前記折り返し領域の内面に接触するスペーサーを備えることを特徴とする、請求項1に記載の集電体。
【請求項3】
前記スペーサーは導電体であることを特徴とする、請求項2に記載の集電体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の集電体と、前記集電体における前記折り返し領域を除いた領域に形成される活物質層とを含む電極と、
前記電極と電気的に接続されるタブ電極とを備え、
前記タブ電極は、前記集電体の前記折り返し領域に溶接固定されていることを特徴とする、非水系二次電池。
【請求項5】
前記電極における前記折り返し領域の厚みは、前記活物質層が形成されている領域の厚みよりも大きいことを特徴とする、請求項4に記載の非水系二次電池。
【請求項6】
前記タブ電極が、前記集電体とかみ合うように溶接固定されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の非水系二次電池。
【請求項7】
導電性材料から構成され、前記集電体の前記折り返し領域を厚み方向に貫通する貫通部材をさらに備えることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載の非水系二次電池。
【請求項8】
前記電極は、正極および負極を含み、
前記正極および前記負極の少なくとも一方は、多層構造を有する前記集電体を用いて形成されていることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の非水系二次電池。
【請求項9】
前記正極が、多層構造を有する前記集電体を用いて形成されている場合、前記正極における集電体の前記導電層は、アルミニウムから構成されており、
前記負極が、多層構造を有する前記集電体を用いて形成されている場合、前記負極における集電体の前記導電層は、銅から構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の非水系二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−16321(P2013−16321A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147529(P2011−147529)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】